団野 薫
 団野 薫
  
 
ごあいさつ~
                    
                 一昨年(2016) 秋 
 
          突然、俳句作りを始めました。
   
         平成28年から平成29年の一年間に
 
              詠みました7000余の句集を、
 
              未熟、稚拙なもの達ばかりですが、
 
             掲載させて頂きます。
 
          ご一顧賜れば、幸甚に存じます。
 
 
          平成30年 春
 
                                    団野薫女
 
 
 
 
 
                    
             *******************
 
             平成28年(2016) 10月 1日
 
                        < 23首 >
 
           淡紅の  木芙蓉(もくふよう) 
                            見しや  
                    白き彼(か)を
        
            
            見上げれば、 石垣の上、 芙蓉見ゆ
 
             木芙蓉 朝開 夕閉 一日花                      
 
        木芙蓉 一日(ひとひ)の間(あいだ) の華やぎ
 
           木芙蓉 ひとときの華やぎ 
                          いとおしき
 
          酔芙蓉よ 
              と指さし、告げし、君 何方(いずち)
 
              酔芙蓉  
                 白から紅への変(へんげ) 玄妙 
 
 
                咲き初みぬ 我が庭に生う 木芙蓉
 
            木芙蓉 窄みて寂し 秋の夕暮れ
 
            フェンスから 食み出づ 芙蓉花 
                        誰(た)を恋うや
 
            
              
              濃緑の葉葉 突き出づる 葛(くず)の花
 
          葛の花 薄紫色暗紅紫色⋆ 妖し気な
 
                      〔 ⋆ 漢字一語扱い 〕
 
             葛の花 何を告げるや 空見上げ
 
            葛、萩、薄の他は見ぬ
                            秋の七草
 
                 我が庭の 秋の七種 数えれば 
 
         実紫、銀水引、背高泡立草、虎杖、十字草、馬酔木⋆
 
        (みむらさき、ぎんみずひき、せいたかあわだちそう、 
 
                いたどり、じゅうじそう、あせび)
 
                     〔 ⋆ 漢字一語扱い 〕
 
 
            ー 〔詞書:〕 紅よりも、白(銀)水引きが、
 
                     小紫に隣合いて咲くを見て   
 
             小紫 銀水引きと 織り成す秋の庭
 
 
     あせびの蕾(らい) 淡紅色(うすべにいろ)に染み初みぬ
 
              馬酔木 (ばすいぼく) と云うなり
                       
                          あせびの又の名
 
              馬食(は)めば 酔っぱらうらし 馬酔木
 
              可憐な蕾 馬酔力を秘めるとは
 
           
                             平成28年 (2016) 10 2
                                   < 38首 >
 
 
                  ー 某美術館の庭で出会った馬酔木の大きな美樹
                           を想い出しつつ
 
               山野より豪邸を彩りぬ 馬酔木
 
              山野にあれば、如何にあるらむ 馬酔木
 
             
                        ー 或る年の春の我が庭を想い出して
 
          鹿の子草 白菊と共に 貰われぬ 〔和が庭へ〕
 
           次の春 鹿の子草の姿見ず
 
          秋の日に 白菊可憐な 姿見せぬ
 
          それからも、白菊ばかりが独り 咲き
 
          その内に、白菊も在らず 我(あ)独り在り
 
               鹿の子草も白菊も在らざる定めなりしかや
 
          またの日を 望みつ佇みぬ 秋の庭
 
 
                                  ー 坂路 を上っている時のこと
           足竦む 蜈蚣(むかで)に似たる 小枝あり 
 
       
          紋白蝶 見ゆ 柿色付く 今に
 
          秋茜 飛び交う空や 鱗雲 〔鰯雲〕
 
           赤蜻蛉 見たり 五羽 三羽 飛び舞うを
 
            赤とんぼ 色薄めおり どうしたの
 
              秋茜 色浅くなりおり 猛暑のせい?
 
           昔日の 秋茜の群れ 今何方
 
      
           柿の実は、熟して、割れて、土に落つ
 
          紋白蝶 尾花を回り、不思議そうに
 
            紋白蝶 春を知らずや 秋の庭
 
  
          色渋く 紫陽花枯れぬ 野趣のあり
 
           あの花は、コスモス似の風姿 オレンジ色
 
          黄コスモス 我(あ)と触れ合いは 他生の縁や
 
 
                   ー 山葡萄の這う垣根を通り過ぎて
             山葡萄 ハート形の葉蔭に 実を結び 
 
            山葡萄 実のまだ青きも有りぬ 色々に
 
            山葡萄の 実描けば難し 瑠璃色に
 
             啄まれず 山葡萄の実 黒紫色
 
 
          我が庭は、西洋薄荷に気に入られ 〔たらし〕
 
            スペアミント 刈り取られても 直ぐ(すぐ)若生えす
       
                           
                          ー 散歩しつつのこと  
             蕾見つけ もう直ぐ花ねと ネリネに云い
     
              咲ぬれば 花は白色 彼岸花 
 
              垣根越し 花覗くネリネ 濃桃色
 
                 
            薄紫に スペアミント 咲き誇り
 
                     スペアミント 多くば 小さき〔小花〕 にも賑わい
             
                       
              夕化粧(白粉い花) 今宵は何処へ お出掛けか
 
               白粉花 紅白の絞り 黄色もあり
 
              夕化粧 他の色よりも 黄なるが好き
 
      
                          ー 銀杏が雌雄異株と知り  
 
               我(あ)が庭の銀杏(いちょう) 銀杏(ぎんなん) 実らず
 
                                 がっかりせり
 
               鴨脚樹(いちょう)下 黄色の足〔脚〕型 埋め尽くし
 
 
                            ー 平成28年(2016) 10.3
 
                                  
               キチィッー キチッ 誰の囀り 秋のあさ
              
               夜冷えの朝 蔦紅葉の景色あり
 
 
                             ー 秋愁をおぼえて
               
               永らえば 世の中のことども をかしけれ 
 
               永らえば すべて水泡 うたかた(泡沫)のごと    
 
              振りむけば 一日花 の我(あ)が人生
 
               秋桜の花 我(あ)は何ぞ かりそめの花
 
                永らえば 泡沫は なお うたかたのまま
 
                永らえば 露のことにぞ 思わるる
 
            
         野路菊と野菊の違い 知るは難し(かたし)
 
           曼珠沙華 濃緑の真中 朱を放ち
 
          この秋も ネリネの側を 通り過ぎ
 
            尾花に蔦 絡む風姿は、秋草の図
 
 
          り~ん り~ん 聞くや あの音(ね)は 幻か
 
          虫の音の聞こえぬ 悲し 秋の夜長
 
          
            五色蔦 延(は)う様 妙玄 秋の芸術
 
           銀水引きの花枯れ 紅に見紛いぬ
 
           見間違え 御所水引き⋆は 幻想なり
 
                        〔⋆ 御所水引きの花は 紅白混ざり合い〕
 
 
          屁糞葛 (へくそかずら) 愛らしき小花を 次々と
 
               中芯に紅おく小花 いとあはれ
 
            屁糞葛 どうして 屁なの どうして糞
 
            屁糞葛 匂いぞ知れば 理(ことわり) あり
 
            屁糞葛 遠くより見れば 美(うま)し けれ
 
             屁糞葛 絡み 絡みぬ 要餅 (かなめもち)
 
               執拗に絡みつく様 うんざりなり
 
 
             茫々の雪柳 刈り整えるは、秋の仕事
 
           大きなる実を付くるなり 秋椿
 
             春は花 秋は実結ぶ 椿かな
 
        
             烏二羽 嘴寄せつ 何語る
 
                 高みから 柿の熟しの 品定め
 
             柿の実の また1つ落ちぬ 夕暮れ路
 
 
            幾年の 秋を偲ぶは 老いの楽 〔らく:たのしみ〕
 
 
             
                         平成28年 (2016) 10月 4日
                             <46首> 
                                              
                    柿の葉葉 の間(ま)に
                        斑(まだら)模様 の一葉
                         
           柿の木の まだ向こうに
                          5、6本の柿
 
           渋か甘 品定め 着いたか 烏2羽
 
           やはり 渋 啄んだ形跡〔あと〕 なし 熟し柿
                       
               この秋は、柿の実たわわ 酢橘(すだち) 無く
 
 
          花薄と蓬と 二人ありての宴哉
 
          花薄 朝露多きに 穂先垂れ
 
          秋暑過ぎ 涼風吹く朝 萩の花
 
           曇り空 青空の行方知るや 萩
 
              秋曇り 誰が知るらむ 秋晴れを
 
           秋晴れを 心待ちする  萩と我
 
     
                      ー  電線に止る雀らを眺めつつ
             五羽 三羽 電線に雀 秋の朝
 
            また一羽 三羽飛び立つ 雀らおり 
 
                  餌捜しに飛び行くのと 我は問い
 
               彼方此方へ飛び交う雀 秋寒し
  
              餌 如何 雀の飛行 まだ続きぬ
 
 
              あの声は 小鳥の囀り 虫の音(ね)や
 
               一声あり 姿の見えぬ 秋の空
 
              
             要黐 小白花の手毬 真綿の如
 
              姫昔蓬⋆ 枯れ 幾多の綿毛 飛ばし
 
             黄焔吐く 勢い得たり 背高泡立草⋆
 
                           〔⋆ 漢字一語扱い〕
 
                          ー 秋曇りの打ち続いた後
                風 爽やか 空晴れ渡り 秋 明か(さやか)
 
            キ~ィ キィ~ヨ  
                       姿を見たり 松の枝に 
 
             チキ チキッ キ~  地鳴きの声は 何の鳥 
 
 
           綿毛飛ぶ 紫苦菜の 秋は終わりぬ
        
            秋曇り 尚 曇りて 曇り空
 
           急ぎ足 釣瓶落としの 宵迫り
 
           紅白の水引き 今ぞ 花盛り
 
            枯れ水引き 渋茶色に なりにけり
 
  
           高みから 窺う雀に 食(じき)を撒き
 
            
         あの声は 雀 椋鳥 やはり 鵯
 
                      ー 昔 二階のヴェランダに
                          鵯の番いが啄みに来ていたこと思い出して
 
            鵯は、先ず雌が見張りて 雄啄む
 
             次は 雄 見張り役 雌 食事
 
              亭主関白 かかあ天下 どちらか 鵯
     
            鵯 何時も番いて 共行動 
 
 
          (河原)撫子の 折重なりぬ 野分かな
 
          初嵐 もろとも倒れり 撫子ら
 
           倒るとも 頭(こうべ)擡げて 咲くや撫子   
 
           撫子の色は ピンク と人の云う
 
             ピンク〔pink〕 とは 英語圏では 撫子のこと
 
 
              撫子は 優しく 嫋やかに咲くに在り
 
                      撫子はすらり 細身の美人草
 
              撫子は 昔 河原に 今 我庭
 
           撫子の消えて久しき 我庭寂し
 
                              
            蟋蟀(こおろぎ)の音(ね) 絶えて久しく 聞かぬ宵
 
            秋の虫の 鳴かぬ夜長の 閑かさよ
 
 
                            平成28年 10月 6日
                                  < 10首 >
 
             黄金色 夕陽に映える 背高泡立草⋆
                                〔⋆ 漢字一語扱〕
 
              葛(くず)のなか やっと4・5本〔立つ〕背高泡立草
 
           秋晴れの楽しみは 朝の少逍遙
 
           秋晴れの空 飛び舞いぬ 秋茜
 
            蜆蝶(しじみちょう) ひら ひら ひら と 秋麗 
 
            秋麗 影とデュエット 姫蜆(蝶)
 
               
             姫柘榴(ひめざくろ)主(あるじ)なき庭 独り咲き
 
             あわれ〔情趣〕あり 姫柘榴の色 秋の夕辺
 
            
           影法師 長々と 伸びぬ 秋の夕
 
            影法師 そは 秋翳(しゅうえい)か 我(あ)の翳(かげ)か
 
 
 
                            平成28年 10月 7日
                              〈 23首〉
 
             夕焼けや 曼珠沙華 姿なく 珠簾(たますだれ) 
 
              彼岸花 見ぬこの時節の山辺かな
 
             咲くべきを 咲かぬは如何 曼珠沙華
 
               珠簾 珠の塊 あちこちに
 
                珠簾 舗装路〔アスファルト〕 突き出で 花咲かせぬ
 
              来秋も そこで咲くらむ 珠簾
 
             珠簾 石垣と松影 お気に入り 
               
              珠簾 ほんわり咲ぬ 秋日和
 
               珠簾 根元に 小さき友〔草〕を 呼び
 
             珠簾 柿の木見上げ 何話すらむ (/何のお喋り)
                           
                   この柿を 友垣にするや 珠簾
 
 
             ボォ~ ボォ ~ 船出見送る 秋の港
 
              船のドラ 響き渡りぬ 霧の海
 
    
              姫柘榴 実弾け独り 託(こか)ち顔 
 
               姫柘榴 独りも楽しと 風に揺れ
 
               秋麗ら 花薄揺れ 白萩も
 
 
              白雲一つ無き 秋空 冴え渡り
 
                   秋麗 うらら うららや 秋麗ら
 
                       秋晴れに誘われ 小径を少逍遙
 
 
            鬱陶しき 秋雨 何時まで続くのやら
 
                秋雨は鬱陶しきかな 我(あ) 萩もかも
 
               枯れ紫陽花 七変化(しちへんげ)の色 渋き秋
 
                夕化粧 芙蓉と並びぬ 紅と白
 
 
                               平成28年 10月 8日
                                  < 19首 >
           柿の葉は 
                  縁に斑入り 黄橙斑
  
           
           誰の仕業 葉蘭根こそぎ 掘り返されぬ
 
                 我が庭は、猪の鼻に耕されぬ
 
            猪(しし)さん それで団子虫 見つかったの 
 
             嗅ぎ出すや 小さき虫を あの大きな鼻
 
           猪に狙わるる悲運の団子虫
              
                           〔可哀想 ・・・ 〕
 
          実りの秋 山には実りの無きや如何
   
            今秋は 実りの知らずや 山に問い
 
            
              熟しては落つる 渋柿 あちこちに
 
 
           色々な草花の饗宴 秋日和
 
            ぽつねんと 白百合独り 寂しきや
 
                    のんびりと 白百合 独居 楽し気な
 
                   雛罌粟は 独りゴーイング・マイ・ウエイ
 
        
                     ー  我が庭に生う さるとり茨を観つつ 
         幾年も 姿見せるも 実は見せず
 
          さるとり茨 実を結ばぬまま 秋終わりぬ
 
  
          忙し気 雀ら飛び交う 秋の空
 
 
          白萩の垂れ下りる坂路 秋日傘
 
             秋日傘 まだまだ 措けぬ 昼下がり
 
 
                         平成28年 10月 9日
                            < 39首 >
 
                 嵐〔の夜〕明け 名残りの風に 驚かれぬる
                   
          嵐過ぎ 秋も愈々 深まれり
 
          嵐の音 鎮(しず)まり 秋の静(しず)けさや
 
 
          朝ぼらけ 微かにに聞こゆ 秋の声
 
          朝ぼらけ 秋の囀り 誰の声
 
               朝まだき 一日の始めの音 聞こえ来ぬ
 
             
          蓬の葉 春は柔らか 愛らしい
 
          初秋には 茫々となりぬ 蓬かな
 
          薙ぎ倒され 蓬 愈々 茫々に
 
       
        秋日傘 俯き加減に 揺れる径
 
        何方へ 綿毛飛ばすや 秋野芥子
 
                    紫苑咲く 昔かなたに 今ここに
 
                 紫苑咲く 豪華に 薄紫に 咲きぬ
 
        
       やはり 甘 蜂柿の実に 舞舞しおり
 
       朝烏 鳴き続けるは 一寸 不気味 
  
 
         木の実落つ音聞ゆ いずれの木
 
          見当たらす 実の落つる 音聞こえたに
 
           不意を衝く 木の実落つ音 秋の道路
 
         夜来の風 木の実吹き落とし 吹き寄せり
 
 
              遅かりし 盗人萩(ぬすびとはぎ)野 盛り過ぎぬ
 
            ユニークな形の莢の 盗人萩
 
           盗人萩 再会期するも 日は遠し
 
    
          韮の実は 黒曜石の如 いと美(うま)し
 
           秋の韮 片や咲き 片や実るの 魔訶不思議
 
          韮の臭気 小鳥も猪(しし)も 近づかぬ
 
          韮の臭味 愛でるは 人類ばかりなりや
 
   
                 ー 嵐に倒されても 尚 立ち上がろうとする姿を見て
           地縛り(じしばり)は 横臥しつつも 花擡げ
 
 
          嵐の後 ”庭荒らし”の 猪(しし) 出現す
 
         スペアミントミント 香(か) 猪(しし)に嫌われ 生き残りぬ
 
          藪蘭も そこだけ残され けろりの顔
 
       
            露草の青き色 枯草の間に 見え隠れ
 
          露草の青と秋空の 二重奏
 
              露草の青き花びら 秋の空
 
 
          野に生いぬ猫じゃらし〔=狗尾草〕の花穂 猫じゃれ〔に来〕ぬ
 
          或るは 枯れ 或るは盛りの 狗尾草(えのころぐさ)
 
 
          万年草 秋から芽生え 春気分
 
          溝底に 実弾くなり 野路菫
    
           咲き並ぶ 珠簾や フェンスの外 
 
           吹く風に 障子の影絵 戦ぐ尾花
 
 
                             平成28年(2016) 10月11日
                               < 17首  >
 
           銀杏(いちょう)の樹 一葉 (いちよう)落ちて 秋思あり
 
               猪はミント嫌いぬ 我は好き
 
           実 落ちぬ 見上げれば 銀杏の樹
 
           萩 鴨脚樹 (いちょう)
                     黄葉の朝 我も在り
 
           白萩の零れる坂路 我の行く
 
           
           猪(しし)の乱(らん) 植え直すらむ 葉蘭らを
 
            茫々の蓬枯れ果て 物寂し
 
             花穂枯れて くるん くるんな 花薄
      
              尾花の穂 末枯れ(うらがれ)すれば くるん くるん
 
 
           要黐(かなめもち)の紅葉見たり 夜寒の朝(あした)
 
            山際は まだ緑濃く 小菊咲く
 
             藪蘭は 黒紫の珠 疎らにつけ
 
             垣根から 花房垂れる 藪蘭や
 
           坂上れば 山の紅葉 近づけり
 
                枯草の多くなりけり 冬至の庭
 
              見渡せば 一面 枯山の世界なり
              
             何処もかも 枯れ山となりぬ 冬至過ぎ
 
 
                       平成28年(2016) 10月 12日
                                <23首>
                        
             金水引き 銀水引きと 隣り合い
 
              気が合うの それとも偶然の巡り合い?
 
                                ー 花の盛りを迎えて 
                      金水引き 今宵の宴 如何にせむ
 
              この秋は 山の芋の蔓 零余子(むかご)を観ず
 
             竜の髭(りゅうのひげ) スペアミントに 場 譲りぬ
 
 
                        実紫(みむらさき) 花満るも 実淋しき 今の秋
 
              春紫苑 今は秋なり 狂い咲き
 
                春紫苑 綿毛飛ばしぬ 秋空へ
 
              紋白蝶もう飛び回らぬ 秋 寒し
 
             さるとり茨 今秋 来ぬや猿 実もまた
 
             秋紫陽花 葉ばかり盛ん 花芽見ぬ
 
               彼(あれ)は何 近づき見れば 白百合の莢
 
              現の証拠(げんのしょうこ) オクラ似の莢 空を向き
 
                験の証拠 とんがり帽子で 何方へお出掛け?
 
            
             窓開けぬ 慌て占めるや 秋冷ややか
 
             秋深し ものみな鎮まりぬ 冷え冷えと
 
                        篠笹の 斑入りの葉や 枯れ入りぬ
 
               露草は 葉枯れども なお 青残し
 
                        金水引き 花穂から実穂へ まだ盛ん
 
 
              現の証拠 秋寒の空 花一輪
 
             栴檀(せんだん)草 実のくっつき虫 の懐かしき
 
              松の枝 烏の一羽 秋思ありや
 
                   ー 巣立ちした猫ちゃんに出会いたく 
              誰にも会えず 帰り来ぬ 秋の黄昏
 
              無事であれと願う心の虚しき秋       
 
          
           虎杖(いたどり)や いずれがいずれ 雄と雌
 
           石垣の 秋は 虎杖と源平菊
 
            虎杖と 蕺(どくだみ)芽生え 冬支度
 
              鰯雲 大空の下は 小さき哉
 
 
                      平成28年(2016) 10月 13日
                                < 27首 >
 
          我(あ)が庭は、葉ばかり茂り 花寂し
 
           風吹けば 虎杖の花 揺れ鈴の音 
 
                       
           一切は 澄み渡る空の下
 
           小逍遙 ここに見つけたり 茱萸の幼き
 
            誰なのか ロゼット残しつ 消えて彼(あれ)
 
                  ロゼットを残し消えたは どの野草
 
           遠近で 黄なる花穂見る 背高泡立草
 
            背高泡立草 咲て 咲くなり 秋闌
 
                      ー 探し求めていた御所水引きにようよう出会えて
          見つけたり 御所水引き 見つけたり
 
           御所水引き 白に紅をぼかして 乱れ咲き
 
       
          処替え 生き残る強〔きょう:つよさ〕  米国栴檀草【アメリカせんだんぐさ)
 
        
          芙蓉花 萎みて浮かぶ 秋の夕日       
 
          白花酢漿草 白花芙蓉の足元に
 
              白と白 芙蓉と酢漿草の 二重奏
 
            石垣に 秋草来寄りて 三重奏
 
          虎杖(いたどり)は 幼葉(おさなば) 寄せて冬備え
 
           蕺も直ぐ後 花散り 若葉萌え 
 
   
           アディアンタム 鴨脚樹の葉似の葉 可憐なり
 
           アディアンタムの葉 溝の格子蓋より出 
 
             側溝の せせらぎの音 アディアンタム
 
            アディアンタム 流水が好き? 溝が好き? 
 
 
           十字草 何処でも会えぬ 今の秋 寂し   
 
           十字草出会えぬ秋こそ 寂しけれ
 
            久し振り 山鳩の声 秋の朝
 
 
                     ー 前の生息地と離れた場処で思いがけず出会って
          烏瓜 此処に住処を 見つけたの
 
         蔦の這う崖 烏瓜の実 ぶら下り
 
           烏瓜 黄朱橙色の実 実りの色
 
          
                    平成28年(2016) 10月 14日
                               < 18首 >
 
         何処からか せせらぎの音 栗の毬(いが)
 
         龍舌蘭(りゅうぜつらん) 幾十年に一度の花宴
 
         龍舌蘭 居並ぶ風姿や 大名行列
 
                      ー 昔日 龍舌蘭の花の話をしせり 彼の人のことを
                           想い出して
          龍舌蘭 花見損ねり と君は云い
 
                  花見損ね 残念がりぬ 人のあり
 
        
           源平菊 石垣を 小さき花園に
 
          いつの間にか 石垣 源平菊のお花畑
 
            秋冷にも 源平菊 咲きぬ 少しだけ
 
 
          木通(あけび)の実 一度も見ずや 山の里
 
           公園は 野草一掃 秋寂し
 
           茱萸(ぐみ) 酢橘(すだち) 実のなき庭は 寂寂なり
 
           意外とは 花梨(かりん) の実の大きなこと
 
                    花梨の実 可憐とばかり 思いしが
  
 
           山鳩の鳴く秋の朝 ぐる~ぐるッ ポォッ ポッぽ
 
 
            バスの帰路 釣瓶落としに 心細く
 
            釣瓶落とし 急ぎ足や 急かされる
 
           釣瓶落とし 闇夜の帳(とばり) 開けりたり
 
        小逍遥 野草の風情 秋の楽しみ
 
 
                         平成28年(2016) 10月 15日
                             < 12首 >
 
           盗人萩(ぬすびとはぎ) 菱形連ねの莢を 垂れ
 
         蜆超 (しじみちょう) 春恋い 舞うや 秋の庭
 
         蜆蝶 (しじみちょう) デュエットfで舞う 秋寒に
 
   
           三つ 四つ 葉陰に二つ 実烏瓜
 
          ページ繰るは 秋の夜長の 習いなり
       
         枯れ果てて 悉皆(しっかい) 閑かに鎮まれり
 
          我(あ)が庭は まだ緑あり 冬枯れ中
 
 
            驚きぬ 童話の世界の キノコ出ず
 
          丸い屋根 黄朱色の茸 愛らしい
 
           彼(か)の茸 紅茸(べにたけ)と知りぬ その名前
 
          紅茸の家 小人は何処 林の中や 
 
           ひょっこりと 小自然に生えたる 茸らし
 
 
                                          平成28年(2016) 10月 16日
                          < 38首 >
            枯れ葉巻き 蓑虫(みのむし)の葉巻 誰のため
 
             蓑虫の 蓑揺れぬなり 姫椿
  
                珍しき 蓑虫の蓑 そのままの
 
          花を観ず 黄葉を待つ 暫し 萩                        
              
                            ー  背高泡立ち草の蜜を求めて来る虫を眺めつ
            蜜求め 飛び来る 鉄(くろがね)の虫 何の虫
 
              黄色の花穂止りて 懸命 鉄色〔虫〕
 
                          ー 他処で
           白花の周り 舞うなり 白き翅 
 
            猪(しし)嵐〔=荒らし) 葉蘭こそ哀れ 秋の夜半
 
                      枯草の 間(あいだ)に見つけり 若草を
 
               要黐(かなめもち) 秋の紅葉 心許なげ
 
            野路菊は 小さき蕾 固く付けぬ
 
             小さき虫 小菊の蕾と 見紛えり
 
             
            秋冷むや くしゃみ一つで 肌を刺す
 
             くしゃみあり 秋冷え 今や 秋寒むに
 
            虎杖(いたどり)や 少し間を置く 蔓どくだみと
 
              絞り入れ ほんに お洒落な 夕化粧
 
           
             夕方に咲き これから誰に 待つ宵草
 
           待つ宵草 何時まで待つや 夜明けまで
 
 
                         ー 窄むと花色が黄から朱赤に変わるを観て
              窄みても 猶 艶のあり 待つ宵草
 
            秋野罌粟 綿毛の一つ 三つ 飛びぬ 
 
             花薄 銀波掠める 秋茜
 
               紋黄蝶 紋白蝶 飛ぶ 秋の空
 
                歩き疲れ 帰り路の 遠き哉
 
             花薄 小さきも枯れて くるるん くるる
 
             
                         ー 野分の後に通りた時のこと
               大地縛り もう 花冠擡げ 始(そ)めおりぬ 
 
                 次の週 大地縛りは 茎を立てぬ
 
               秋野罌粟 其処だけ 野辺の風趣あり
 
      
             団扇形の実に 秋風吹きぬ 花大根
 
              花大根 葉の縁 棘げ棘げ 痛っ 痛
 
               花酢漿草 咲き乱れ 咲き零れ 秋闌(あきたけなわ)
 
              切れ葉野葡萄の実 まだ青き 秋の暮れ
 
               虎杖 (いたどり)の 葉隠れに花 源平菊の
 
             
              喘ぎ あえぎ 上る坂路 秋の雲
 
              坂の上 振り返れば 海のっと出ず
 
               
                小菊らは 群れてフェンズに 顔を寄せ
 
               草毟られ 秋ぞ寂しき 山際は
 
              枯れ紫陽花の下 露草は 生き生き 生き
 
                 菫の実 白百合の実に似る 極小型
 
               萩 薄 直立のまま 何処か 怪 
 
    
                          平成28年(2016) 10月 17日
                              < 10首 >
 
                                            ー 木の葉を滴り落ちる雨滴を眺めつつ
                ぽつん ぽつん 滑って落つる 秋雨かな
  
                ぽとり ぽとり 紅葉を伝う 雨雫
 
            立ち止まり 遠見の秋海 輝けり | 秋の空 遠望一面 光る海 
 
           
             現実は 避けて回れど 現実なり
 
             すべからく 一日花の如きかな
 
               気が付けば 還暦を越え 古稀を越え
 
          
           野分の明日 静謐に在り 我(あ)が庭は
        
           一雨毎肌寒憶えぬ 神無月  | 一雨ごと 辺り 秋冷 秋寒 増し
 
           もどかしき 夏疲れの 己(おのれ)の身
 
 
                          平成28年(2016) 10月 18日
                             < 26首 >
 
           団栗(どんぐり)2個 紅葉一枚 秋拾う| 色々の紅葉拾いぬ 秋思あり 
 
          真葛(さねかずら)実 何時朱になるや と問う秋日和
 
           柿の葉も 紅葉すれば また 秋意
 
           白萩は 大茎揺れぬ 風に揺れ
 
            石畳 並ぶロゼット 秋の装飾
 
               源平菊 何処にでも出会う 秋の日に
 
         ガッツン 道路打つ音 見れば銀杏の実 |銀杏の落つる音 初耳なり
  
           銀杏の 外被柔らか 驚きぬ
      
             銀杏の実〔外被付き〕 梅の白漬けに似たり
           
          秋野草 刈り取られぬ 秋見えぬ
 
 
           秋風に 銀杏の落ちぬ 団栗(どんぐり) 落ち
 
          散歩道 団栗見つけり 小秋みつけり
 
          散歩道 団栗拾い 秋拾い |道路脇 屈みて拾う我(あ)と団栗
   
           テーブルに団栗 一つ もの思う
 
             テーブルに団栗飾りて 秋静か
 
           
          紫大根 此処に咲きおり 今 何処
 
          蕺(どくだみ)は 花咲かずば 誰(た)が気付くや
 
          芋酢漿草(いもかたばみ) 咲き遅れたかや 少し咲きぬ
 
          スペアミント 散らす小花や 秋の雫
 
          空へ飛ぶ飛蝗の観るは 虫眼図や
 
           花(蜜)追う蜂 花愛でる我 それぞれの秋
 
           背高泡立草を 挟む我(あ)と蜂との間(ま) 微妙
 
          花から花 蜜蜂 夢中 我に気付かぬ 
 
           と思いきや 羽音鋭く スクランブル
 
            朝顔は 窄みても 猶 其処に
 
           紅葉すば 枯れるを知らずや 出遅れ若葉
 
 
                     平成28年 (2016) 10月 19日
                               < 29首 >
     
          秋の萌え 生命(いのち)継ぎぬ 春の序曲
 
           酢橘(すだち) の実 いつもの処 いつももの樹
 
                       ー 一株だけだった菫が 一年後の秋
                             多数の株を増やしているの観て
              野路菫 新しき友 次次と 〔来るらし〕   
 
            温暖化 たんぽぽ春秋 取違えたり
 
             溝底の 野葡萄の実 空写し(映し)
 
           天高く 足元見れば 栗の毬(いが) 毬 毬
 
       
                唯 ひとり 秋に残りて 咲くや菜の花                           
 
              残花なれど 菜の花強し 蜂誘う
 
            夕化粧 夜の世界や 如何にあらむ
 
                夕化粧 出会うは 窄んだ後(のち)の花
 
        
           此処は何処 訝る(いぶかる)たんぽぽ 秋の野辺
 
           ミステリアス 朱花は誰やら 謎のまま⋆
 
                               〔 ⋆ サージでした〕
 
           野原薊(のはらあざみ) ロゼット残しぬ また合う日まで
  
             植え込みの蔭 水仙 萌え出づる
 
            水仙の若葉 整列 冬近し 
 
            菫など 春草 あちこち 秋賑わう
 
              秋の路 落ち葉転がり 銀杏無く
 
            
           秋の夜長 緩やかな穏やかな 静けさあり
 
             秋の夜長 森閑と冷え渡り
 
             秋の夜の 長々しきを 持て余し
 
            嵐なくば 単調かな 秋の夜長
 
             秋の夜長 広々と広く 大海想う
 
 
         冴え冴えと 白き月残りぬ 秋の朝  
    
               白き月 白き雲浮かぶ 秋の朝
 
           空の彼方 有明月の白き哉
 
           残月 白く冴え行き 秋寒し
 
         小さき花 小さき蜂呼ぶ 秋の園
 
          たんぽぽが綿毛 飛び出づ 秋の空へ
 
          蚊蜻蛉(かとんぼ)も 蛾も 憩う花穂 秋日なか 
 
                      ー ’働きバチ’の名にし負うが如く 蜜集めに
                            精出す蜜蜂を観て
             蜜蜂や 唯 せっせと蜜集めぬ
 
 
                           平成28年(2016) 10月 20日
                             < 11 首 >
 
        露を置く 枯れ篠笹の 朝(あした)かな
 
         秋雨に 大犬蓼(おおいぬたで)の 哀れ増し
 
        秋闌(たけなわ) まだ青青の 銀杏の樹  
 
        秋寒に 萌え出(いづ)りぬ 〔皐月〕躑躅(〔さつき〕つつじ)かな
 
         羽根一本 落ちおり誰(た)のか 秋の空
 
 
          霧立ちぬ 今朝の視界は 朦朧に
 
         朝霧に 辺りの景色 乳白色
 
 
         団栗(どんぐり)を 逆さに持ちて 目鼻描き
 
          この団栗 樫(かし) 楢(なら)櫟(くぬぎ) どの樹から
 
           団栗に蹴躓きそうな 秋の夕昏
 
          団栗や お帽子⋆被って これから何処へ
 
                     〔 ⋆団栗の椀状の殻斗(からと)のこと〕
 
   
                       平成28年 10月 21日
                         < 38首 >
          
          山葡萄 葉蔭に 実房 そ(っ)と結び
 
           山葡萄 小鳥は知るや 熟したを
 
 
              水仙は 山肌に咲く 水辺遠く
 
 
           小夜更けて 草木眠れど 我(あ)は眠れぬ
 
           鎮まりぬ 無音の夜寒 静まりぬ
 
                
                    ー 待ち続けているも いまだ紅葉せぬ夏蔦に苛立って
           五色蔦〔夏蔦〕 秋色に染まらず 物足りず
              
            秋は来ぬ 紅葉見ぬば 秋は来ぬ
 
            紅葉の泥む秋こそ 不協和音
 
                      ー 柿の葉には、春=萌黄 夏=青緑 秋=紅葉
                          冬=枯葉 の色々の妙ありて
            柿の落葉 春夏秋冬 見つけたり
 
             切れ葉野葡萄 曲線の妙 素敵なり
 
 
             秋の夜の怪 人の足音 百鬼のか
 
        
            小夜更けて 団栗今は 夢の中や
  
        
           チッチッチ 秋空見上げど 姿見ぬ
 
           羽根ひとつ ひらり 舞い降りぬ 我(あ)が許へ
 
           彼(か)の声は 椋鳥(むくどり) 鵯(ひよどり)か
 
        
             秋の野のロゼット と共に 春待つらむ
 
             秋ロゼット 春待ち草と呼ぶは 如何
 
            柿熟し 音なく落ちぬ 秋深し
 
               次次と 熟柿(じゅくし)増えるも 鳥は来ず
            
             熟柿(うみがき)や 日毎に落ちぬ 秋の畑 
 
            渋柿は 熟せど 渋いの? 鳥の来ぬ
 
       
          我(あ)が人生 省て見れば 虚無:虚夢の世界
 
           古稀過ぎて 八十路もうすぐ 秋静か
 
           人生の残照に浮かぶ 君浮かぶ
 
     
         熟し柿 落つ 如何なる音や 我(あ)は聞かず
   
         熟柿(うみがき)の落音知らぬ 如何な音
 
         柿の実も葉も熟したり 空冴え 冴え
 
         撓(たわわ)なる 柿の実 青と朱黄混じり
 
           実撓(たわわ) 柿枝垂れおり 秋静か
 
         柿と毬(いが) 落ちて辺りに 秋意あり
    
        
          大根葉 石蕗(つわぶき)の 秋  瑞々しき
 
          大根の 葉瑞々しき 秋の畑(はた)
 
          瑞々し 彼(か)大根の葉 秋の空
 
          青緑 大根畑にあらずや 秋
 
            
               雨の粒 ぽつりぽつりと 額の上
 
            雨ぽつり 急いで家路に 降る前に
 
          ぽつり ぽつり 急いで急いで 帰り路
 
            
               冬枯れは 下草からと 覚えけり
 
 
       
                   平成28年(2016) 10月 23日
                      < 21首 > 
  
          鼠黐(ねずみもち) 春には 白花 秋 黒き実
 
           白花嫁菜 何処か寂しげ 秋意あり
 
              花梨の実 可憐な風姿 を偲びおり
 
                花梨の実の 大きさにこそ 驚かれぬ
 
           霜月を 花芽開きつ 待つ 小菊
 
              もう咲きぬ 実生えの芙蓉 石垣下
 
           御所水引き 遅れて咲きぬ 慎まし気
 
 
            木瓜(ぼけ)の枝 棘あり 遠くより 眺めおり
 
                 小さき頃 出会うは いつも緋色の木瓜
 
               白色の 木瓜(ぼけ) 邂逅 初めてのこと
 
           赤芽柏(あかめかしわ) 春の芽 鮮紅 秋 紅葉
 
 
             秋晴れや 出掛ける我に 小鳥の声
 
              チッチ ピュ~ピュ 
 
               行ってらっしゃい 気を付けて
 
             見上げれば 旋回し飛ぶ 小鳥 5 6羽 
 
            
            花梨と柚子 実の蒼と青 秋日和
 
             青き柚子 これからなのね 待ちましょう
 
               凸凹の肌 柚の宿命 なりや
 
            木瓜の花 街でも 鄙の佇まい
 
           金木犀(きんもくせい) 樹齢過ぎしか 匂いこぬ
 
             姫椿 花芽(かが)仲よく 樹を被いぬ
 
                 野路菊と見紛う 嫁菜の花盛り
 
 
                        平成28年(2016) 10月 24日
                               < 22首 >
 
         沈まりぬ かと思えば 荒(すさ)ぶ 夜半の嵐
 
               沈まりぬ 夜半の嵐 また 荒れぬ
 
          この秋は 茱萸(ぐみ)の朱実 見ず 寂しけれ
 
         気が付けば 萩は黄葉 下草枯れ
 
             野葡萄の実の色 七変化(へんげ) 紫陽花の如
 
 
          木蔭下 嫁菜群れ咲きぬ か細げに
 
          水引きと嫁菜 隣り合う木蔭哉
 
                     ー 数年前の庭の萩の黄葉を想い出しつつ
           萩の葉の 黄金に輝く秋 惜しむ
 
            枯草に 萩の黄葉 輝きぬ 
 
            草草の枯れ果てぬ庭 萩黄葉
 
 
           落葉し 実と枝ばかりの柿の木哉
 
            秋明菊 秋風に揺れ 栗の毬(いが)
 
           常緑の蔦 緑濃し 行く秋に
 
             くっつき虫⋆ くっつかぬ秋 いと寂し
 
                     〔⋆ くっつかないのは 米国栴檀草の実
                                           くっつく実は 日本の栴檀草〕
 
          盗人萩の実 くっつきおりぬ 我(あ)がコート
 
 
               秋の日を 楽しみ探しと 眺めおり
 
          秋の日を こかち顔にて 眺む君
 
          人生の春夏秋冬 シーソー・ゲーム
 
      
           庭追われ 石垣に生い咲く 米国栴檀草
 
         
          小夜の嵐(あらし)不気味に響く 物音あり
 
           小夜更けて 不気味な物音 リフレイン
 
           断続的 響く風音 小夜の嵐
 
         
                          平成28年(2016) 10月 25日
                                  < 23首 >
                    
          だんだんと 目覚め遠退く 秋深し
 
          枯草と緑の間に 酢漿草の黄
 
          石蕗(つわぶき) の 艶やかな緑 冬近し
 
           石蕗の花茎 遠近(おちこち) 冬近し
 
            石蕗の真直ぐな茎 黄色の花冠
 
          公園の入口の隅 犬蓼(いぬたで) 独り生う
 
           蜆蝶 秋の野原に 春見るや
 
             茱萸(ぐみ)の実の 痺れる渋さ 想い出す
 
          犬蓼(いぬ)の 集いて咲ける 大樹下
 
          紅飯(あかまま)の飯事(ままごと)の想い出 君の云い
 
           薔薇一輪 咲き残りて 冬迎え
 
           柿の実撓(たわわ) 枝垂るる 秋深し
 
          石段を踏み外し 老いを知る   
 
                 やがて来る 秋草の終焉 秋の終焉
 
              冬椿 蕾付けるや 秋の暮れ
 
           盗人萩 莢青きが 枯れ色に  
 
            袖振れば 枯れ色の 莢くっつきぬ
 
           狗尾草(えのころぐさ)の枯れ穂に 犬蓼 晩秋かな
 
           長芋の蔓 垣根に巻き付き 零余子(むかご)負う
 
             落葉踏めば 松毬(まつかさ)転がる 秋の夕暮れ
 
             落ち葉から 松ぼっくり 踊り出づ
 
             蜜柑の実 蜜柑色なす 冬来る
 
               花梨(かりん)の実 未だ 熟すを見るは 何時
 
 
                         平成28年(2016) 10月 26日
                             < 11首 >
 
              仙人草 十字 十字の 白花ら
 
               川辺りに 仙人草咲き ときめきぬ
 
                仙人草 懸崖の如 麗しき
 
                 いつの間にか 仙人草咲きぬ 我(あ)が庭に
 
                   仙人草 人里離れ 山際に
 
  
            何探す 真夜中の音 誰の音
 
             あくる朝 猪(しし) 耕耘の跡 庭にありぬ
 
         
           道すがら 樹になる林檎() 君 指さしぬ
 
            初めてなり 樹になる林檎との邂逅
 
            3つ 2つ 寄り添いて実る 林檎かな
 
             林檎の実 浅緑を 仄紅(ほのあか)く 染
 
 
                        平成28年(2016) 10月 27日
                                 < 22首 >
 
            山桃も 山法師 (やまぼうし) も 実 未だ青き
 
            山法師 桜桃(桜ん坊)と 見間違い
 
              山法師 思い出語る君 幼な顔
 
 
            柿 食(は)んだは 誰? 彼方より 鳴き声あり
 
             柿 啄んだは誰 甘かった?
 
              柿朱く 啄まれる頃となりにけり
 
            啄まれる 其(そ)は 甘柿の定めなりや
 
 
             色々の花色 残れり 秋の薔薇 
 
             淡紫色の花の残れり 薔薇の秋
 
     
          朱黄のカンナ 大きく咲くも 庭寂しき
 
          秋に梅 咲く一輪 君見つけ
 
           ほら 彼処 君指す枝に 梅一輪
 
           
             ビュッ ビュー  嫁菜咲く間は 野分待て
 
              幸せは ほどほどが良きかな 我(あ)が人生
             
             
               松ぼっくり 拾うて 空の鱗雲
 
                         -大空を被い尽くすような鱗雲を見上げつつ
               鱗雲 空の果てまで 行き渡りぬ
 
                天空はぐるり 一面 鱗雲
 
                壮大な天空のパノラマ 鱗雲
 
               もこもこと 羊の大群 高積雲
 
                 鱗雲 夕陽に輝く 花薄
 
                  余りにも 壮観 何の予兆や 鱗雲
 
                   凶思うも 鰯の大漁の吉兆とか 
 
 
               平成28年 (2016) 10月 28日
                     < 15首 >
 
       裏山を 喘ぎつ上りぬ 秋 遠く
 
         この実(団栗) 誰の実(団栗) 樫? 櫟(くぬぎ)?
 
       下り坂 団栗 コロコロ 後追う我(あ)
 
       下り坂団栗 転べば 我(あ)も転び
 
        一望すれば 尾花の銀波 海 彼方(かなた)
 
         彼(あ)の空は 思い出の秋 皆 美(うま)し
 
 
                     寒冷の夜に 紅葉 紅葉すと 聞きおりぬ
          
          生温い 夜半に 紅葉は 如何にあらむ
 
             撓(たわわ)なる蜜柑も 少々 色づきぬ
 
 
                    ー 朝霧の立ち込めた庭を眺めつ
           霧立ちぬ 庭の景色や 朧影(おぼろかげ)
 
           朝霧や 悉皆(しっかい)包み 乳白色 
 
             朝霧は 小鳥の声さえ 包み込み           
 
            朝霧は 小鳥の視界も 閉ざすらし
 
           朝霧や 奥深き宇宙 造り出しぬ
 
 
                      平成28年(2016) 10月 29日
                         < 11 首 >
 
           仙人草の白花に 黒揚羽蝶 (くろあげはちょう) 舞い降りぬ
 
          途方に暮れ 立ち止まる我(あ) 秋逍遙
 
            立ち止まり 辺り見渡せば 秋の夕暮れ
 
           
           秋草の名問えば 待ってね 明日まで
         
           花の名は? 待って明日まで 秋の末
 
             花の名も 君に名も 出づ 老いぬれば
 
              君は誰? 寝覚めても 分かぬ 秋の夜半
 
             彼(あ)の君は? と思い巡らす 秋の末
 
 
           団栗を拾い 遠き日 想い出す
 
           野分吹き 吹かれる我が身 踏ん張りぬ
 
            野分立つ 我(あ)が身 家路へ追い立てられ
 
 
                              平成28年 10月 30日
                                < 24首 >
  
              ほどほどの幸せ得たり 喜寿の秋
            
            幸せをほんわり得たり 喜寿の秋
 
               生き抜いて 得るほどほどの 幸せ哉
  
 
           行く秋を惜しむ声あり 朝ぼらけ
 
            朝露に光る 草草 足を止め
 
 
            帳(とばり)おり 闇夜は 見えぬ 美しさ
 
                     闇夜こそ 何事も見えぬ 美のありき
 
            
            団栗を 拾うや 弾け 指竦む
 
             団栗は 樹の上 地の上 どちらにも
    
             団栗や 樹に生り 地に落ち 秋日和
 
              
             苺は何処 春まで待つらむ 遠けれど
 
             仙人草 黒揚羽蝶 青き空
 
 
              秋の夜や 思い巡りて 回り灯籠
 
 
                       柿の樹は 実も葉の落とし 冬支度
 
             背高泡立草 黄花も 枯れれば 虫も寄り付かぬ
 
           木枯らしに 萩も 尾花も なぎ倒されぬ
 
           撓(たわわ)なる蜜柑は 蒼から黄まで グラデーション
 
              姫椿 蕾艶やか 〔花〕時はまだ
 
             南天の実 色付き初めし 冬近し
 
              南天の実 色づき初めぬ 鳥待つや
 
 
               静穏な 秋の夜長や 平穏な
 
                秋の夜の 長々しきを ゆったりと
 
                  山々の樹木(きぎ) 未だ 紅葉せぬ
                                          温暖化?
      
                  山吹きの色 鮮やか 秋の庭
 
             
                        平成28年 (2016) 10月 31日
                                 <  首 >
 
           秋草の中 犬鬼灯(いぬほおずき) ここに在り と
 
           完熟し 柿 透き通るような 柿色に
 
             野紺菊 蕾を見ぬは 如何なること
 
            秋散歩 姫菫並ぶ 路の縁
 
                此処は 嘗て 紫大根 実結んだ処
 
             人知らずや 蜜柑 撓(たわわ)に実りけるを
 
         木通(あけび) の嫩葉(わかば) 
            柿の枯れ木と 生まれ変わり 〔役者交代〕  
 
          溝底に 三つ葉木通の嫩葉 見つけたり
    
           秋日和 蒴果弾けぬ 姫菫
 
            薄紫の嫁菜 咲けり  待ってましたの
 
          何故(なにゆえ)に 姿を消したの 紫大根
 
 
          野分の後 銀杏 彼方此方 転がりぬ
 
          白色の嫁菜 薄紫と 顔合わせ
 
           姫菫 見ぬと想えば 他処に棲み
 
           水仙の嫩葉 すいすい 生う 秋の末
 
           垣根越し 石蕗(つわぶき)の黄花 覗きおり
 
             小鬼田平子(こおにたびらこ) 春を違(たが)えて 咲く今 秋
 
            花穂 見事 彼(あ)は紫狗尾草か
 
             紫狗尾草 天を衝く 勢いあり
 
 
           銀杏(いちょう)と桜 落葉の黄と紅 重なり合い
 
            銀杏の落葉(らくよう) 散り 乱れ舞う 野分の夕
 
 
            茜色の雲 広々と流れ行く 秋の夕
 
             茜雲 夕烏の声 秋山へ
 
            茜色 小菊花々 包み籠みぬ
 
                         初見なり 夕化粧の 絞り入り
 
             遠目には 黄葉 黄花に見えにけり
 
 
                              平成28年(2016) 11月 1日
                                〈 17首 >
 
         秋 撓(たけなわ) 過ぎて草草 枯色の庭 
 
                          枯れ行きて 秋の草草 物悲し
 
          銀杏の皮剥ぐ 二つで 悪臭立つ
 
             やはり銀杏 外被外せば あの臭気
 
 
           猪(しし) は 食(は)まずや 銀杏 地の上に
 
                       - 銀杏と云えば、茶碗蒸しの実しか
                             知らなかったので
               銀杏は 翡翠色しか 知らずおり
 
          大根の畝 青青と 木守柿(きもりがき)
 
           柿の木に 実一つ 残るや 木守柿
 
          秋草枯れ 日一日の 寒さかな
 
           秋景色 寒風一掃 冬景色
 
          この道は? 少逍遙に 小冒険 
 
            晩秋に 迷子になるも 亦 楽し
 
             朝霧に 雑木林に 迷い入り
   
                霧晴れて もと来た道へ 帰り来む
 
           山際の小菊や 寒さに強かりき
 
             芙蓉の花 実になり枯れて 冬模様
 
           鴨脚樹(いちょう)の葉 葉 黄金色に はらはらと
 
             
                          平成28年11月3日
                            <  首 >
 
         秋の空 啄み 近づく 山鳩二羽
 
           リズム取り 首振り振り 歩く 山鳩や
 
            それぞれに 歩く山鳩 秋深し
  
 
          烏二羽 何を眺むや 枯れ木の枝(え)
 
           カァ~カァ ニ羽 顔見合わせ 亦カァ~カァ~  
 
           空の彼方へ 並んで飛び立ちぬ さようなら
 
 
          ゆっくりと 登る坂道  もう晩秋
 
           山際は 草 茫茫 秋の末
 
           山際は 荒れ野となるなり 秋侘し
 
           茫茫の枯れ草のなか 黄花 鮮やかな
 
            唯ひとり 桜紅葉 枯れ山辺
 
          南向き たんぽぽの咲く 晩秋野辺
 
 
          光る海 晩秋の静けさ 其処にあり
 
           高見から 秋一望 光る海
 
              浅緑のメキシコ万年草 も 枯色の秋
 
 
         小秋の小夜 聞こえる物音 風や猪(しし)や
 
         時折の 風音 愈々 目冴えぬ秋
 
         青空に 吹く風の冷たさ 冬近し
 
           ひたひたと迫りぬ冷気 秋晴れに
 
         黒レース 木の葉の影の 綾なせり
 
         雲一つ無き青空や 秋日傘
 
           高見から花薄望む 茅渟の海
 
          枯れ木下 松ぼっくりの 日向ぼこり
 
         影法師 長々と伸びぬ 晩秋の夕
 
 
                           平成28年(2016) 11月 3日
                              < 16 首 >
 
          驚きて 飛び立つ雀 晩秋
 
           雀ら 飛び立つ 晩秋の草叢
 
          盗人萩 枯れ実に 和毛(にこげ)*捕まえり
                        〔⋆ 和毛は鳥や獣の柔らかな毛のことで
                           どういう訳か盗人萩の枯れ莢の
                            引っかかっていました〕
 
           盗人萩 その和毛 盗んだの
 
       
         卵形 長卵形 あり 樫の実は
 
          団栗(どんぐり) は いろいろありて 品定め
        
          団栗と殻斗(かくと)も拾いぬ 此処彼処
 
  
           あれこれを 詠みたる後の 秋静か
 
          秋思い 千々にに乱れる 句作哉
 
 
                   苦瓜 二つ 実の垂れ下りぬ 秋の実り  
 
         犬蓼(いぬたで)の横這いに立つ 金狗尾草(きんえのころぐさ)
 
           犬鬼灯 此処にも出合えり 晩秋 楽し                    
 
           夕化粧の 絞りの花にも 楽しけれ
 
             冠毛 凛然 晩秋野の 蒲公英
 
           実紫(みむらさき) 紫の実落とし 黄葉し
 
 
          振り放け見れば 暮れ泥む空  白き三日月
 
 
                          平成28年(2016) 11月5日
                                  < 16首 >
           風駆ける 花薄の野 銀色ウエーブ
 
            嫋やかな 時の流るる 萩の庭
 
             響き合う 山々の紅葉 秋のシンフォニー
 
           二人あり 流るる時や 秋思あり  
 
            時折吹く 風 紅葉の 香 寄越しおり   
 
             紅葉を映す 水面や そよ吹く風
 
             樹の幹 耳を当てれば 行く秋の音(ね)
 
               行き行きて 何処まで行くや 秋野原
 
             秋の野に 吹き荒ぶ風 独り佇む
 
             木漏れ日を さ迷うは 秋の風趣
 
             
              喧噪消え 波打つ浜辺 静かの秋
           
              遠近で 眺むる人あり 秋の浜
 
              秋の海 ひとり 座りて 静寂(しじま)あり
 
 
             奥山へ 踏み入る秋道 風の道
 
             独り在り ひとりも楽し 秋日和(あきびより)
              
              澄み渡る大空の下 お握りを
 
 
 
                           平成28年 (2016) 11月 6日
                                 < 15首>
         庭へ出で 枯れ草抜きぬ 秋の夕
 
          障子の影絵 尾花に雀の飛び交いぬ
 
 
                   ー 芦屋川辺りで小鷺と烏の飛来を観たこ立つ とを、
                      不図、想い出して
 
         夏の川 小鷺 足踏み 小魚追う
 
          嘴(くちばし) 鋭く  小鷺 川床突きおり
 
         小鷺立つ 初夏の川中 細き脚
 
                     ー 当時は 川沿いの道路を行き交う車達の
                          排気ガスが濃く
 
          真白き筈の 小鷺 暗灰色              
 
                   真白の 小鷺佇む 青き田圃(たんぼ) 
 
       小鷺去り 川辺り一変 烏飛び来ぬ
 
         太き脚 夏川につけ 涼し気烏
  
           首に手拭 おやじ姿似の烏哉 
 
        夏の川 烏バシャバシャ 水浴びし
 
         夏の夕 ”烏の行水” する 烏
 
       
        奥池⋆は 今は人里 紅葉せり
 
        奥池⋆の 松林昔日の 今如何
                 〔⋆ 奥池は芦屋市の地名 昔山の奥にあった池の名〕
                    
      山際は仄明るく 秋の三日月
          
 
                       平成28年(2016) 11月7日
                             <15首>
 
         小春日和 草 枯れ行くを 少し待ちぬ
 
         蜆蝶(しじみちょう) 小春日和に 飛ばないの?
 
          小春日和 雀飛び交い 柿枯れ樹  
 
 
           朝寒に 両手を 重ね息吹く童(こ)
 
           朝寒に トレイの銀杏 肩を寄せ
 
           酢橘(すだち)一つ 緑葉のなかで 色付きぬ
 
          
            橋に立てば 一望あり 初冬の海
 
             橋渡れば 琵琶の蕾や 円錐形の
 
            
            バサッ 忍び寄る冬の音 鈴懸の落葉
 
              行く秋や 濃緑の樹木(きぎ) 瀧の音 
 
             落水の飛沫(しぶき) 冷たし 冬近し
 
 
             行楽をせぬ間に 秋は行きにけり
 
               秋の空 行楽日和 行けぬ 我 
 
                喘ぎ喘ぎ 仰げば 紅葉迫りくる坂
 
              朝まだき 6時なれども冬 朝まだき
 
            
                       平成28年(2016) 11月 8日      
                            < 11首 >
 
        夜寒の朝(あした) ミントの紅葉 紅紫に
 
         花芽(かが)開きぬ 小菊の花弁(はなびら) 渋橙色
 
          野路菊は 何処で咲くのや 人知らず
 
         蔦の色 紅葉の色 晩秋の色
 
          狗尾草(えのころぐさ) 草色 金色 紫も
 
          霜焼けや 紅紫色のロゼット〔:根生葉〕 在り
 
           水仙は 花見ず 香(か)も来ぬ 山の里
 
          莢弾け 黒き実落とす 金雀枝(えにしだ)の枝(え)
 
             金雀枝(えにしだ)の莢 薄渋茶色 狗尾草も
 
   
        薄墨の 初冬の景色 鬱の兆し
 
                    ー 非常に珍しく 雪が降って驚いた朝
        南天の実 雪冠しおり 朝の庭
 
            
                          平成28年(2016) 11月 9日
                                     < 14首 >
 
          蒲公英(たんぽぽ)の綿毛 初冬野に 興を添え
        
        小菊咲く 喜寿の人生 猶 咲くや       
         
          彼方より聞こゆ 足音 冬のおとない
 
           姫菫 莢三裂 秋闌(たけなわ)⋆
                    〔⋆少し盛りを過ぎたさまをいう意〕
 
 
          霜月にも 山々未だ紅葉せず 待ち遠し
 
           嫁菜強し 寒風に晒されつ 花盛り
 
           小春日和 矢庭に 木枯らし吹き荒ぶ
 
            小夜の風 吹く度に 寒気 運び込む
 
           あの音は 冬の足音 寒 寒 と
 
          木枯らしに 身を縮かませる 小菊と我(あ)
 
          鬱陶しい 冬到来に 気の沈みぬ
 
           木枯らしに 吹きあそばれるるも 常磐は緑
 
           冬始む 寒風光る 椿哉
 
            日毎増す 寒気 姫椿の花芽 萌え
 
 
 
                                             平成28年(2016) 11月 10日
                                       < 24首 >
 
           団栗の多きに驚きぬ 猪(しし)は何処
 
       団栗の豊穣 しし〔猪〕 喜ばずや
 
         奥山で 団栗頬ばる 猪(しし)想う
 
 
      セコイヤの実2つずつ 実る晩秋
 
        朱茶色の セコイヤの樹の 和名 赤杉 (:redwood)
 
         
            団栗 紅葉(もみじ) それぞれの秋深む
 
        膨ら雀(ふくらすずめ)膨らみ 冬の寒暖計
 
        霜月末 雀元気 未だ細身
 
        
       寒風に 秋の夜長や 駘蕩と知る
 
         寒風や秋の夜長ぞ 懐かしき
 
        夜寒かな 行き方思えば 愈々 寒気
 
      目覚めれば 木枯らし荒ぶ 冬の朝
 
      
           風と光 梢の照葉戦ぐ庭
 
         木枯らしや 団栗 枯れ葉 転びつ(まろびつ) 転びつ
 
           団栗の子 帽子(:殻斗)落として 大寒 小寒
 
           団栗は 地に落ち 落ち葉羽織おり
 
 
        光る海 黒い島影 初冬の午後
 
         茫茫の蓬 とうとう枯れぬ 初冬哉
 
       鹿威し(ししおどし) ししおどし(猪威し)無し しし(猪)の来ぬ
 
        烏鳴き 釣瓶落としや 闇の帳(とばり)
 
      
        花梨(かりん)の実 ジャム残りたまま と君の云う
 
           桜紅葉 落ち葉の蔭から 団栗 コロコロ
 
            吹き寄せられ 団栗互いに 肩を寄せ    
 
         掃き溜められ 枯れ草 畑の肥やしとなりぬ
 
 
                            平成28年(2016) 11月 11日
                                       < 20首 >
          枯れ芒 陽光に 有終の輝
 
           萩 鴨脚樹 (いちょう) 黄葉 黄落 惜別の情
 
          今朝の萩 はや黄落 始まれり 
 
          冬近し 庭の萩の 黄落初めば
 
          初冬野辺 小菊ら 唯 残菊の宴
 
            もの寂し 晩秋から初冬 もの厳し
 
           見つけたり 小さき小さき 水仙の郷(さと)
 
           雨しとしと 草草 少々 蘇りぬ
 
           枯萩刈りて 庭は無となりぬ  冬曇天
 
             行く秋を惜しむや 垣根の残り菊
 
              行く秋に 惜別の情 枯れ尾花
 
            姫椿 今盛りなり 残菊哀れ
 
                 穏やかな  吹き荒ぶ木枯らし 収まれり
 
           朝霧に 響く鼓動や 何処から
 
             冬枯れに 野辺の草草 蔭潜めぬ
 
           残菊の後も 犬鬼灯(いぬほおずき) 残りおり
 
          渋紅色の 名残の蓬 庭の隅
 
          さるとり茨 猿捕らぬうちに 冬枯れに
 
           寒空に 篠竹 ますます  勢い増せり
 
            次々と 紅葉続きぬ お多福南天
 
                          平成28年(2016) 11月 12日
                                 <19 首 > 
 
           夜冷えに 蓬 茎も穂も 渋紅色
 
             渇水の堰堤に 枯れ尾花 揺れ
 
              辿り着けば 堰堤ひっそり 冬枯れに
 
            透かし見れば 其処は もう 初冬の奥山
 
             蔓絡む 葉陰に 紅の莢見つけり
 
            紅の莢 黒き実 見つけり そは誰ぞ
 
                        痰(たん)きり豆と知りぬ 初見なり
 
            地を這いつ 蔓どくだみの 花盛ん 
 
                         竹林 を透かして紅葉見ゆ  散歩路
 
                疲れ果て ベッドに沈みぬ 冬散歩
 
             紅葉せり お多福南天 実を見ぬ間
           
              紅葉に若草色も お多福南天
 
 
              波瀾 哀れ 猪(いにしし)に根こそぎ 掘られ
 
 
             風花の舞う日 犬鬼灯(いぬほおずき) 実を結びぬ
 
             芙蓉の容姿 枯れ果つるとも 一興あり
 
             白珠の 露滴るや 寒椿
 
             
             月光と見しや 隣家の灯なり
 
              初冬の庭 月の光の 雫かな
 
 
             姫椿 蕾晴れやか 萩哀れ
 
 
                            平成28年(2016) 11月 13日
                               < 24 首 >
 
             陰湿な山際 野草は 緑を残し置き
 
              三つ 二つ 藪蘭 実を留めたり 
 
             道路打つ 音 鈴懸(:ぷらたなす)の堅果なり
 
              プラタナス 母国の黄葉 惜しむらむ 
 
               プラタナス 落葉の大きに 秋覚えぬ
 
 
             芳香を放つや 花梨(かりん) 初冬の小夜
 
             葛(くず)の花 紫苑も消えて 冬景色
 
              アスファルト 大樹の影絵 伸びる初冬
 
             
             月や何処(いずこ) 闇夜に浮かぶ 小菊 白
 
              君知るや 闇夜を憂う 枯れ尾花
 
                        ー スーパー・ムーン(超満月) 68年振りが
                            雨降りの夜と天気予報で知りて
              名月を 闇夜に想うも 情けあり
 
              スーパームーン もしや今ありと 雨戸開けぬ
-
               月影も 星影も無く 唯 闇夜
 
               擦り硝子 人影映しぬ 怪と怖
 
                冬茜 やがて山際 仄明かり
 
             冬景色 やがて 闇夜に閉ざされぬ
 
                         ー 遠い昔 京都高尾へ紅葉狩りに行ったことを
                               不図 想い出して
              見上げれば 紅葉 紅葉 猶 紅葉
 
               紅葉路は 錦の絨毯 敷き詰めり
 
 
              鈍色(にびいろ)の海 枯れ薄も揺れぬ 冬厳し
 
              霜枯れに 海蘭 龍の髭 青々なり
 
               名の知らぬ小花 一人天下の 冬の路地
 
 
              若草萌え スペアミントの 若草萌えぬ
 
             スペアミント 集いて生いぬ 若草色
 
              スペアミント 見目麗しく 開く若草
 
 
                           平成28年〔2016〕 11月 14日
                                 < 22首 >
 
           見越しの蜜柑 豊穣なり 100余りも
 
            蜜柑熟れ 黄金色に 煌めきぬ
 
           柿 5本 皆枯れ木となりぬ 冬に入る
 
           荒れ肌の実 9つ 柚子 数えれば
 
    
          姫椿 蕾 綻び 唇〔:花びら〕 覗く
 
          姫椿 咲初めし 花弁(はなびら) 濃桃色
 
          
          野路菊と見しや 違いぬ 白き小菊⋆
                      〔⋆園芸品種が逸出して 山野に戻って
                          先祖返りした小菊たちの一群〕
 
            野路菊を見つけ 間違い 回り道 
 
            ひらり 落つ 見上げれば 紅葉乱舞
 
             ひらひらと 無音の世界 ひらひらと
 
            紅葉(もみじ) もしや 胡蝶と見紛う 冬空に
 
 
           待ちわびぬ 咲き初めし 小菊 黄鮮やかな
 
             渋橙色の蕾の小菊 黄花となりぬ
 
              嫁菜小さく 秋の末から 咲き残りぬ
 
             韮 大地縛り 山芋消え 冬寒し
 
               下草枯れ 落葉の木立 見透し良し
 
                逆光に 生垣の緑 白葉となりぬ
 
              逆光に 全ては 無色 ホワイト・アウト
 
              去年(こぞ)の秋 闌に紅葉(もみじ)伐採 怒
     
              この秋は、茸型の紅葉樹 一興あり
 
               猪(いのしし)の団子虫探し 鉢反し
 
               反されし鉢 転がる方向 様々に
 
 
                        平成28年(2016) 11月15日
                                 < 23 首 >
 
           ミント萌え ランダムな叢生 自然の妙
 
                           ー 13日待ちたる超・満月の続き
          スーパー・ムーン 1.5倍の大きな満月
 
           予報当たり 待てども満月 姿見せぬ
 
            見えぬども 満月待つは 情趣あり
 
           スーパー・ムーン 小菊も見ずや 惜しき夜や
 
           満月の 隠れつも照らす 夜空 藍
 
            
            谷間の冬 堰堤(ダム)涸れ無音 烏一声
 
          谷間の紅葉 沈まりおりて 冬支度
 
           
          夜の冬空 唯 夜の空 霜月 半ば
 
          夕闇の 空 果てまでも 藍にあり
 
          闇夜ならぬ 濃藍の夜空 沈沈と
 
           今冬は 水仙少な 侘びぬれぬ
 
           山蔭に 一つ 二つの 寒灯 あり
 
           辺り冬 外灯ばかり 寒寒し
 
            
            草木枯れ 南天の朱実 艶やかな
 
           啄まれ 南天の実 疎ら(まばら)なり
 
           南天の実 1つだに無き 哀れなり
 
             厳しさは 愈 増すばかり 冬の寒
 
            枯れ枝に 木守柿(きもりがき) 鳥は来ぬ
 
            
           姫椿の 一斉に咲きぬ 寒さ哉
 
           辺り皆 枯れ木 枯草 冬備い
 
           思い切り 萩伐り取り 新芽待つらむ
 
            乳白色 円錐形の 枇杷の花
 
       
                      平成28年(2016) 11月 15日
                                  < 28 首 >
           白珠の露  南天の 赤き実に
 
            朝霧に 遠見は 悉皆 不分明
 
             朝霧は 大凡(おおよそ)包みぬ 微粒子の氷珠
 
 
           風荒み 尾花波立つ 何事ぞ
 
           彼方より 不気味な響き 嵐の兆しや
 
 
             キッチンの窓 雀飛び込みぬ 冬の朝
 
            朝霧は 生温く 穏やかな
 
             朝霧に 山際の佇まい 朦朧なり
 
            要黐(かなめもち) 紅の花芽(かが)や 朝露光る
            
 
             萎れおりぬ 大犬蓼(おおいぬたで) 夜霧に蘇りぬ
 
             大犬蓼 蘇生 有終の 輝き
 
            霧晴れり 冬椿 愈々 艶やかに
 
           霧の朝 萩 一気の 黄葉かな
 
           陽光に 萩紅葉(もみじ)の朝 美(うま)し
 
           霧立ちぬ 山荘幻想 ロマンティック
 
          
            寒風に 薄陽(うすらび) 戦ぐ 枯れ尾花
 
            初冬の庭 枯れ尾花 光る 曇り空
 
              朝は霧 昼下がり 小雨 初冬の顔
 
              華やぎに 一抹の愁いあり 萩黄葉(もみじ)
 
             日暮れの空 まだ青きに 白雲 
 
               初冬の空 薄墨のなかに 白雲光る
 
            山の端(は)は 幻と玄かな 夕映えの空
 
               日暮れ後は 悉(ことごと)く 濃紺の闇
 
              初冬黄昏 空 雲 薄墨  山 黒蔭
 
             
             桜と銀杏(いちょう)
                〔紅葉 黄葉〕 落葉重なる 晩秋かな
 
 
              一番星 初冬の西天 仄明るく
 
                一番星 地上の光を携えり
 
              宵の明星 消え 地上の灯 残りぬ
 
 
 
                        平成28年(2016) 11月 17日
                                  < 20首 >
           黄落 一葉 枯草の上 何処からか
 
            路傍にや 残映〔:残花〕の小苑 初冬のこと
 
             水引も鬼田平子(おにたびらこ))も 小さく咲きぬ
 
           匂い菫 こんな処に 初冬の路傍
 
            フェンス添い 黄菊 美し 屏風絵の如
 
             黄菊 盛ん 野路菊 何処か憂い顔
 
              崖に咲く 白菊 彼(あれ)は 野路菊や
 
             奢莪(しゃが)に追われ 水仙 大樹の蔭におり
 
 
                        ー 先の我が庭に生えり 酢橘(すだち)を
                           ふと 思い出しつ
               酢橘の嫩葉 芋虫に食(は)まれ 柄だけに
 
               初夏の空 黒揚羽蝶や 優雅な舞い
 
                思い起こせば 秋 酢橘の実り 皆無なり
 
              鈴懸(プラタナス)の 落葉 の大きに 驚きぬ            
        
              朱夏なれば 団扇(うちわ)に良しかな この大葉
 
 
               枯れ草の掃除の後 爽やかさよ
 
               枯草を刈れば 藪蘭の実 艶やかに
 
 
             すわ 厳冬 身構える我(あ)に 小春日和
 
              小春日和 駘蕩ひととき 夕茜
 
              風和ぎて もの皆 静穏 小春日和
 
              小さき黄花の 満開の如く 萩黄葉(もみし)
 
              樹木 垣間見れば 夜景や 煌々
 
           
                    平成28年(2016) 11月 18日
                              < 27 首 >
              
              この秋はの紅葉  渋きに沈みおり
 
              舗装路の 右 紅葉 左 黄葉 秋深し 
 
              萩黄葉の黄 幸福を思わしむ
 
               犬鬼灯 と藪蘭 残りぬ 晩秋の庭
 
             亡び行く 尾花が原や 自然の定め
 
              暫くは 再生を待つが 人の定め
 
                 疎ましき 生い茂る夏草 今は恋しき
 
               枯草下 藪蘭の実を 結びおり
             
               赤と黒 南天と藪蘭 の果実なり
 
             穏やかな 冬日に 駘蕩の情けあり
 
 
                                               ー 遠い昔 誘われて茸狩りに出かけた日のこと
             茸刈 松茸刈れずも 想い出楽し
 
               里山も 踏み分けいれば 深山の匂い
 
             幽霊茸(ゆうれいたけ) 驚きて見ゆ 色の妖し
 
              幽霊茸⋆ 茸にあらず 水晶蘭
                         〔 ⋆ 幽霊茸は腐生食物。 正式名は金竜草 
                             或いは、 水晶蘭〕
 
               名違えば 幻想的な響き 風姿
 
 
              苔枯れぬ と思うや咲きぬ 苔の花
 
              湿り気なき 寒風に耐えぬ 苔の花
 
 
              朝ぼらけ 地窓の明かり 少しずつ
 
             朝冷えや しんしんと 身に凍む 辛きかな
 
              駆け下るヒールの響き 朝の響き
 
                いま少し ベッドに眠らむ 朝冷えに
 
                 朝の動き ゆるゆる ぬるぬる 冬寒し
 
             朝焼け残り 淡藍の空 白き月
 
   
         尾花の枯穂の綿毛揺れ 白光し
 
         夕日一瞬 視界喪失 後期中
 
          十三夜 月に叢雲(むらくも) 枯れ芒
 
         枯木立 新芽揃えて 凛然と
 
 
                        平成28年〔2016) 11月19日
                                 < 36 首 >
          額紫陽花 落葉の枯れ樹 冬芽萌えぬ
 
                         ー 蚯蚓(みみず)を探す猪に波瀾を掘り返され
                               植え直し折に
              葉蘭植え直す我(あ)が手に 実一つ転がりぬ
 
            葉蘭の実 初めての邂逅 70余年目
 
            葉蘭の実 姿小さき 酢橘(すだち)の実
 
            根こそぎにも 葉蘭 生々 生(いのち)強し
 
 
             蒲公英(たんぽぽ)のロゼット 絶え絶えに 路の縁
 
 
             黄落の 一葉飛び来ぬ 我(あ)の許へ 
 
              溝底に 韮点々 花も伴
 
              どくだみの葉 紫紅色 冬の路傍    
 
       
             佇めば 鯉近づきぬ 冬の池
 
             あちこちから 鯉泳ぎ来 集まれり
 
              いと愛らし 藻蔭から出づ 鯉の子等
 
               泳ぐ鯉 優雅な動き 魅せられぬ
 
 
              八つ手の花 天狗の羽団扇(はうちわ)*の上
                           〔 * 天狗の羽団扇は 八つ手の葉の例え〕
 
         落ち葉踏む音 谷間のせせらぎ 鳥の声
 
            舗装路止まり ここからは 山道 Uターン
 
            この道で いつか出会いし 雄猪と
 
          我(あ)を見しや 身を隠しし 猪(しし) 優し
 
 
                     ー 団子虫を探す猪にひっくり返された植木鉢を見て
            転がりぬ 鉢 あちこち 無作為のアート
 
 
          枯れ芒 巻き穂のカール 芸術的
 
          鬱陶し 冬の梅雨空(つゆぞら) 鬱陶し
 
            空どんより やがて晴れ間の 萩黄葉(はぎもみじ)
 
             スペアミント 勢い増すも 自然のままに
 
 
           我が庭の 樫も苔むす 齢(よわい)となりぬ
 
            樫の樹も 新芽を抱く 冬日向
 
           ライラック そぼ降る寒雨 何想う
 
           ライラックの 黄落 冬の始まり 寒 !
 
            日一日 黄葉艶やか 萩 鴨脚樹(いちょう)
  
            初時雨(はつしぐれ) 束の間の 萩黄葉(はぎもみじ) 終
 
         桜ん坊似の 小さき実 千両(せんりょう)の実
 
        黄昏の空 白菊一輪 鳥渡(ちょっと) 笑む
 
         我(あ)が庭も 枯葎(かれむぐら) となりにしか
 
         枯葎 我(あ)が庭の如し哉
 
          南天の 葉 実に光る 白き露
 
          冬凪や 靄立ち込めぬ はや 夕暮れ
 
          冬凪や 遠望の山々 霞こむ
 
         風騒めき 暗雲垂れこめ 小鳥何処(いずこ)
 
 
                         平成28年(2016) 11月 19日
                               < 20首 >       
 
         いつの間にか 夜露光り 夕焼け見ぬ
 
          冬麗ら 日差し差し込む 長々と
 
          柿の木は 実も蔕(へた)も 落ちぬ 悉く
 
         残り蔦 フェンスに独り 友は亡く
 
           山芋の蔓 絡みてブランコ 誰のため
 
            ブランコ揺れ 山芋の葉 楽しけれ
 
         ぬっと出づ 垣根を突き出づ 百合の枯莢 
 
         植え込みのバランス乱しぬ 自生の水仙
 
         
          姫菫 春夏秋冬 路の縁
 
                匂い菫 邂逅 望外の幸
 
          姫菫 春野想うや 冬の空
 
           ひっそりと 野辺に咲く菫 ノスタルジー
 
         ハート形の葉 匂い菫か もしかして
        
         
          冬は朝 晩秋は夕 白き月
 
          小夜更けて 草木眠るや 我(あ)揺蕩(たゆた)う
 
          深々と しんしんと深けぬ 冬の夜半
      
           内 朝冷え 外 薄靄(うすもや) 小春日和
 
            絶えぬると 諦めし水仙 我(あ)が許へ
 
          香ばしき 香り何処から 銀木犀(ぎんもくせい)
           
 
           チッ チッチ 鳴く声の彼方 鳥の影
 
          雀より 尾長き鳥 誰や知る
 
 
                        平成28年(2016) 11月 21日
                                < 22 首 >
            鵯 烏も 食(は)む渋柿 人 干し柿に 〔して食す〕
 
         路の縁 ロゼット色々 葉を開きぬ
 
         枯れ草に 若芽萌えぬ 冬の路傍
 
         石蕗(つわぶき)とネリネ 咲きぬ 初冬のデュオ
 
 
         聳え(そびえ)立つ 鴨脚樹(いちょう)の黄葉 見惚(みと)れおり
 
         鴨脚樹の葉 黄金色の オーラ放ちおり
 
         桜紅葉 葉 一・二 残りぬ 梢あり
 
        桜 落葉 梢に新芽(にいめ) 膨らみぬ 
 
         鵯 何処に 蜜柑 今や啄み時
 
      
         濃藍の夜空に雲あり 月や何処
 
          
         夕化粧 花に 別れの日来たりぬ
 
        切れ葉野葡萄 新しき土地へ 新しき生
 
        鳴く声は聞けども 未だ見るぬ 小鳥 誰
     
         黄花コスモス 何時の間にやら 姿消えぬ
 
         苔一面 小さき浅緑の コンペイトウ⋆
                           〔⋆ 金平糖は’苔の花’ の比喩〕
 
          植え込みの 皐月躑躅(さつきつつじ)下 双葉の小苑
 
          浅緑 双葉の春は 如何にかあらむ
 
          ネリネ すらり 花酢漿草(はなかたばみ)の 鉢の中 
 
           南天の実 葉にも宿りぬ 白珠の露
 
           
           南瓜食(は)む 冬至 昼の最短日
 
 
          苔生き生き 先の冬雨は 慈雨なりや
 
           蘇りぬ 苔青青と ふっくらと
 
 
                          平成28年(2016) 11月22日
                                   < 12 首 >
 
           日日(にちにち)に 雀飛び込みぬ キッチンの窓
 
            窓の内 異次元の世界ありや 雀達
 
        
           上へ下へ 萩の枝移りせり 雀
 
                         ー 初冬になると猪も冬籠りするようで                                
              石垣に 桜紅葉 残りぬ 猪(しし)は見ぬ
 
           冬の野や 桜落葉 尾花枯れ   
            
            草木枯れ されば出番ぞ 苔と羊歯(しだ)
 
            苔映す 木漏れ日揺れぬ 岩蔭に
 
 
            冬来たりなば 秋恋ふるは 人の常
 
            何事も 思いようなり 人の春秋
 
            人 憂い 沈みこむ冬 楽しみは
 
 
            月夜ならぬ 闇夜にもならぬ 冬の夜半
 
            深深と深け行く 冬の夜 朝を待つ
 
 
  
                            平成28年(2016) 11月 22日
                                         < 39 首 >
          葉 繊細 レース編みのような アディアンタム
 
          自然生の アディアンタムの生き方 賛
 
           アディアンタム 自生選ぶや 溝底に
 
           育て難し と云えり アディアンタム 自然には強
 
             アディアンタム 孔雀の如く 葉葉 広げ
 
 
           団栗落ち 集く 此処 猪知らずや
 
           垣根越し 蜜柑と柚子の饗宴
 
            実柚子 蜜柑色 蜜柑 柿色 冬到来
 
           紅葉 黄葉 落葉の絨毯 そっと歩き
 
            落葉(おちば)朽葉(くちば) 転ばぬよう 滑らぬよう
 
         
          寒風吹く 朝 窓明けそびれぬ
 
          不気味な音 寒風何を 運び来るや
 
        
          餌見つけたり 雀飛び去る 冬の空
 
          仲間呼ぶや 雀 五・六羽 彼方より
 
           餌 横取りされ 一口だけは 残されて 
 
            さっと飛び来 去る雀 餌咥え
 
 
                       ー 前の我が家の庭で鵯の飛来を想い出して
           鵯(ひよどり)の 早春の渡り 我(あ)が風物詩
 
           目白(めじろ)も来たり 梢に蜜柑の輪切り
 
           鵯の一声 目白 追い払い
 
            雌見張り 雄啄む間 鵯の食事
 
              雌と雄 見張りと食事 代わる 代わる
 
 
           冬麗ら 君と散策 是 佳日
 
            葛折り 上りぬ 山桃 此処に昔から
 
            樫の実の まだ青きかな 此の山合い
 
           花 淡桃 実 黒紫 葉 卵形⋆ 誰ぞ 蔓紫(つるむらさき)
                               〔 ⋆漢字一語扱い 〕
           
           丘の上 眺望 絶佳 茅渟の海
 
             悉く 朦朧のなか 冬景色
 
            黄 橙 紅 金 緑 五色の錦 山装(よそお)う
 
        
 
                       ー 古き良き時代の洋館が改装されて
            久し振り 昔日の面影 幻に
 
            趣と落ち着き 消しぬ 新しきは
 
            また一つ 古き良き時代 消えにけり
 
 
            また聞こゆ 烏の鳴き声 冬空騒ぐ
 
            枇杷の花 円錐形の実は 来春
 
             石燈籠 沈沈(しんしん)と佇む 冬の庭
 
            枝垂桜 梢に蕾 春を待ちぬ
 
             冬の日は 茶房でお喋り また 楽し
 
          
          冬麗 昨日遠足 今日休足
 
           新芽と 見しや やがては 団栗に
       
           午後三時 黄昏始じむ 冬短し
 
    
                        平成28年(2016) 11月 24日
                                   < 9 首 >
          月星見ぬ 濃藍の闇 冬の小夜
 
          冬六時 草木眠るや 早々に
 
          夏蔦は 紅葉色々 五色蔦
 
            新しき想い出 一つ 冬逍遙
 
           木枯らし去りて 物皆 沈沈 冬の夜半
 
          樹木(きぎ)振らす 寒風 冬の序曲なり
 
          風荒(あら)み 葉吹き上げ 樹木(きぎ)揺らす 冬
 
          冬風荒(すさ)び 紅葉 黄葉 別れの曲
 
            風和ぎぬ 後(のち)冬茜 庭の石
 
 
                         平成28年(2016) 11月 25日
                                  < 30 首 >
 
          枯れ葎(かれむぐら) 枯れ実一つや 冬景色
 
           薄墨の 叢雲むらくも) 山際 仄白く
 
           あっと云う間 釣瓶も驚く 晩秋の夕
 
           風僅か されど 冷ややか 庭静か
 
           寒風に 銀杏の黄葉震えぬ 小刻みに 
 
           冬枯れに 鴨脚樹の 黄葉 黄金の輝き
 
           アディアンタム 葉盛り 溝の上下(うえした)に
 
           梢刈られ 赤き実見ず 悲し茱萸(ぐみ)
 
            枯れ草野 独り佇む 犬蓼(いぬたで)の花
 
             せせらぎ無く アディアンタム無く 冬の溝
  
          アディアンタム 何処 今闌と思いしが
 
          懐かしき ヒマラヤ杉見上ぐ 誰(た)がの庭
 
             
          赤飯(あかまんま)⋆ 溝底に花盛り 冬寒に
                                 〔⋆ 犬蓼の別称 〕
          赤飯 柵から這い出す 忘れ花
 
          石垣の蒲公英(たんぽぽ) 咲きぬ 冬日向
 
    
           幸せは 数えるが幸(さち) 冬の小夜
 
            幸 幾つ 数えられが 幸せよ 
 
 
         踏みそうに 金柑の実 散歩路に
 
         蜜柑より 橙好みは 誰でしょか
 
         木の実鳥(このみどり) 橙好むは 鳥か 猿か
 
         啄まれぬ跡なく 蜜柑 丸いまま
 
     
       池の畔 鯉一匹見ぬ 冬深深
 
         と思いしが 鯉泳ぎ来ぬ 次次と
 
          池面静か 急に揺らぎて 鯉群れ 出
 
        子鯉 15匹 2匹の他は 初のお目見え
 
        藻蔭から 一番小さきも いと愛らし
 
        子鯉との 出会い 喜び 一入(ひとしお)なり
 
 
         枯れ木立 紅葉疎ら 冬の空
 
          烏瓜(からすうり) 紅葉終わり 秋終わり
 
         崖の端(は)に 烏瓜の実 乾涸(ひから)び垂れ
 
 
                          平成28年(2016) 11月 26日
                                   < 22首 >
 
         実南天 辛うじて 残りぬ 小鳥残すや
 
         冬霞 浮かぶ島影 棚引けり
 
         冬の靄(もや) 薄墨色の幻かな
 
         クッキーを 庭に出で 砕き撒きぬ 冬の空
 
          渋色紅葉 一層 渋きに沈みけり
 
                      ー 外出からの無事帰宅を待っていて
                         くれたよう。 体調不良のまま出掛けたので
         チッ チッ チ
                雀 五・六羽 庇(ひさし)の上
 
         心配掛けて 御免なさいね 有難う
 
        秋草よ 枯れなば枯れよ 冬厳し
 
        朝焼けの雲 棚引く空 映す冬海
 
        谷 寂寥 せせらぎ弱み 崖の小菊
 
           星影なく 山影に灯 一つ 三つ
 
              空 淡蘭 光る白雲 冬の海
 
 
         句作 三昧の一日 早 夕暮れ
 
 
           落ち葉踏み 聞く声 烏 鹿に非ず
 
         撓(たわわ)な実 今は 一つ 垂れぬ 姫柘榴
 
         葉落ちて 姫柘榴 実ばかりなり
 
          ’蜜柑狩り’ され 庭の蜜柑は緑葉ばかり
 
          ひらひらと 木の葉時雨(このはしぐれ)の 無音を行く
 
        
         堰堤涸れ 草木も枯れ 寂寞の谷間
 
 
        壁 壁 壁 茜 茜の 朝焼けかな
 
 
        金雀枝 (えにしだ)の黄花 一輪 忘れ咲き
 
         黄の小菊 悄然と咲きぬ 冬の垣根
 
 
                          平成28年(2016) 11月 27日
                                  < 20首 >
 
                枯れ草取り ほっこり微睡 もの 静か
 
          雲間から 一条の日差し 冬の庭
 
         新しき 蔓茱萸 実生え 古き衰え
 
          蔓茱萸や 実生えに 新生(いのち)託すなり
 
      黄落し 鴨脚樹(いちょう)の大樹 枯木となりぬ
 
       銀杏(ぎんなん)の実 七つは 此処 卓上に
 
                           ー 昔日 毎年早春に 連翹が黄花を
                               咲かせていたことを思い出して
        連翹’れんぎょう)の花見ぬ早春 憂思あり
 
 
       ひたひたと忍び寄る冷気や 冬の宵
 
       窓の外 ぐるり一帯 冬の 黄昏
 
            刻一刻 日暮れて 冬寒し
 
          
       烏瓜 実如何 小路分け入りぬ
 
       烏瓜の実 干し柿の如し 冬厳し
 
        風和ぎぬ 万象静止 冬の夕
 
      うらぶれた野辺に見つけり 忘れ花
 
      絶え絶えに 枯れ行く冬野や 心(うら)寂し 
 
       藪蘭の実青きが 黒紫に 艶やかな 
 
 
      ライラック 黄葉 落葉 梢に新芽
 
      朝靄(もや)は 白露残し 消え去りぬ
 
     南天に 枯れ尾花に 白露(はくろ) 冬暖か
 
      鴨脚樹(いちょう)見事 黄落暫し 待〔っ〕て給(たも)れ 
 
 
                             平成28年(2016) 11月28日      
                                     < 42首 >
      霧立ちぬ 朦朧(もうろう)迫る 深深と
 
        霧のヴェール 向こうの世界や 幻や
 
         霧晴れて 紅葉の山 且つ 姿見せ
     
      山 紅葉霧に朦朧 薄すら映え
 
      紅葉山 濃淡の霧 墨絵の景
 
       
        夕化粧 実(み)は何処 見〔み)当たらぬ
 
       蜜柑 酢橘(すだち) 金柑 皆々 垣根越し
 
        散歩路 垣根の山茶花(さざんか=姫椿) 花盛り
 
       散りて後(のち) 吹き溜まり寄りぬ 枯れ葉 哀れ
 
         木の葉雨 風無くも 散りぬる 散歩路
 
         萩黄葉 はらはらと散りぬ 風なくに
 
 
          靄 霞 霧 雨 靄の 冬一日(ひとひ)
 
        和ぎ一日 温かな冬 空鈍色
 
 
        一段と 花冠 大きく咲く ネリネ
 
        連翹(れんぎょう) 弓形(ゆみなり)に枝垂れぬ 優雅は風姿
 
        馬酔木(あせび)の実 今は冬 膨らまぬ
 
         晴れ後曇り 後晴れ給(たも)れ 冬の空
 
         束の間の 晴れ間に憩う 冬の庭
 
        紫陽花の葉 霜焼けしおり 紫紅色
 
       
         空小春 麗らに拡がりぬ 地は 厳寒
 
        蔦葉海蘭(つたばうんらん) 葉 大小変化(へんげ)に生う 強か
 
              薄紫の小花も 我ここに在り と 
 
                撓(たわわ)なる 南天の実 光る 朝陽   
 
           竹林を抜ける細道 氷雨降る
 
           冬野に立ちぬ 振り放け見れば 白き月
 
          昼下がり 枯れ尾花の 微睡(まどろみ)あり
 
 
          寒椿 山中に咲きぬ 艶やかに
 
     
         綿雲の 広がりぬ朝 柿紅葉
 
          背に陽光 歩む度揺れぬ 影法師
 
          ヴェランダから 眺む夜景 煌々と
 
           紅葉散る 耿耿(こうこう)たる小夜 深けにける
 
 
                       ー 実生えの地の日当たりが悪く 生長しづらく、けれども             
                          生き続け行く背高泡立ち草を詠んで 
  
        背高泡立草⋆(せいたかあわだちそう) 小花かすかに この寒空に 
                                          〔⋆ 漢字一語扱い〕
        咲き忘れ ならぬ ようよう咲きぬ 背高泡立ち草
 
         背ばかりの 茎先(くきさき) 小さき花 咲きぬ
 
           仲間最盛 君 ひたすら 生命(いのち)延ぶ
 
       葉 枯れ落つるとも 君 生き抜きぬ風姿 感嘆
 
       生ある限り 生 貫きぬ君の情 深き
 
       誰(た)ぞ知るや 耐えに耐え 君 終(つい)に咲くを
 
 
       横臥せぬ 冬一切 虚と無 なり
     
      薄日射す 庭は沈鬱 冬の候
 
       小逍遙 すれば何処も 冬模様
 
       鬱 打ち続く 鬱の冬 唯 寂寥
 
 
        太い根を にゅうと突き出す 大根畑
 
 
                       平成28年(2016) 11月 30日
                                  < 6首 >
 
       落ち葉焚き 渋柿吊るせぬ 日々遠き
 
        蜜柑狩り 腰下ろし 食(は)めば 夕陽傾く
 
         夕闇深み 灯 一層 光明なり  
 
        垣間見る 夜景 全景偲ばせる
 
   
          名作や いずれも哀れ 夢の中 
 
         目覚めれば 句作残らず 名作となりぬ 
 
 
                   
                    平成28年(2016) 12月1日 
                             < 18 首 >
 
      菊葉野老(きくばところ) 蔓ゆらゆら 隣の小菊へ
 
       石垣の蔓蕺(つりどくだみ) いのち(生命) 長し
 
       野路菊の 花色 鮮やか 寒空に
 
      葉 ハート形 匂い菫や 春知るや
 
        懸崖の如 咲く 白菊 冬の華やぎ
 
         悉く 枯れぬる山辺 野路菊 可憐 
 
        
         鈴懸(すずかけのき)の落ち葉も縮みぬ 山嵐(やまおろし)
 
          夕化粧(ゆうげしょう) 実落ちて 咢 また 花咲く如
 
         木に纏う 夏蔦 五色の錦となりぬ
 
                 
         小楢(こなら)の樹 団栗落ちて 新芽萌え
 
         枯れ木立 彼方に仄か 紅葉見え
 
         雑木林 澄み渡る光に 透けて見え
 
           紅葉(もみじ)木立 座敷へ移せば 錦の襖絵
 
         冬木立 深閑として 凄涼なり
 
         躑躅(つつじ) 一輪 狂い咲きや ひ〔っ〕そり咲き 
 
         松ぼっくり 拾いぬ 枯れ松葉の上
 
          枯れ園に 葉蘭叢生  ひっそりと
 
                         - 木に垂れ下がる柿を見て
          あの柿は 樽抜き⋆用なり 思い出す
                      〔⋆ 樽抜きとは 渋柿と酒精を樽に密封し
                                   渋を抜いた柿のこと〕
 
 
                         平成28年(2016) 12月2日 
                                < 21 首 >
       
        一夜の慈雨 葉蘭の生命(いのち) 蘇りぬ
 
        我(あ)が庭の 鴨脚樹(いちょう)黄落 花莚(はなむしろ)
 
                       ー 昨年の如月の梅を想い出して
         去年(こぞ) 如月(きさらぎ) 梅一輪に 春待ちぬ
 
         梅一輪 また一輪 春 間近か
 
         春待つ庭 梅一輪の いとおしく
 
           
         微風 寒(さむ) 綿毛飛ばすや 枯れ尾花
 
         寒風に乗る 尾花の綿毛 何方へ
 
 
         置物の 狛(こま)にじゃれつく 猫冬暖
 
         雲流れ 日差し 且つ消えぬ 庭の冬
 
 
        山颪(やまおろし) 姫椿 早 盛り過ぎ
 
        蔦葉海蘭(つたばうんらん) この寒空に 青々と
 
        蔦葉海蘭 蔦と絡みて生いぬ 防寒かな
 
        
        ミント華やぐ 冬 春と違(たが)えしか
 
         銀色に きらきら 尾花の綿毛 揺れ
 
         黄落集め 寝そべる夢見る幸せ
 
         黄葉(もみじ)敷 独り読書 黄金の時間(とき)
 
         
         松ぼっくり 見上ぐれば 黒松枝重ね
 
         赤松 雌(めまつ) 黒松 雄松 とと云い
 
         赤松 黒松 離れて生うも 近くなり
 
         松笠(まつかさ)転がり カサカサ 音立てぬ
 
          赤松や 松茸見ずや 哀れ 我(あ)も
 
 
                      平成28年(2016) 12月 3日
                                     < 24 首>
 
                 遠〔と〕く近く 山々の紅葉 今 闌(たけなわ)
 
          山霞 晴れれば 空冴え 清清と
 
          谷間 茫茫 冬 寂しさ 愈(いよ)増せり
 
              冬寂し 草木消沈の 候なれば
 
           沈静す 秋の賑わい〔紅葉〕 今何処
 
 
          登り坂 唯独り 歩む 冬麗ら
 
           散歩道 会釈交わすも また 楽し
 
            逆光に 人影幽(かす)か 誰(た)にあらむ
 
            遠き路 ゆったり歩くも 一興なり
 
           冬真昼 無風 日当たり ゆっくり過ぎぬ
 
 
            久し振り 小公園の 梅立派に
 
            梅に苔 幾星霜 経たのかしら
 
            知らぬ間に 歳月流れ 我(あ)も 苔むしぬ
 
            梅林 鶯は何処 声聞かぬ
 
 
           柿紅葉 散りぬ枯れ木に 柿〔実〕撓(たわわ)
 
            遅かりし 紅葉散りて 枯れ木立
 
             落紅葉 歩道の縁の 吹き溜まりに
 
           ピラカンサの実 赤松の下 朱く燃え
 
            山法師(やまほうし) 落葉 朱き実 一つ 残
 
              花水木似なり 山法師 咢⋆ 四片(よひら)
                          〔⋆ 花びらと見えるは 実は 咢〕
           
           辛夷(こぶし) 花 もの優し気 実 夜叉(やしゃ)の如
 
            辛夷の実 紅の種連ね 悍ましき
 
             枯れ草刈られ 野辺や 寒寒(さむざむ) 広がりぬ
 
            草草や 地下に潜みて 春待たむ
 
 
                                             平成28年(2016) 12月 4日
                                 < 15首 >
 
 
            朝の冬 三色刷り 山影 墨 藍 空 茜
 
             晴天 一転 曇天 仰天 冬天 
 
                       夕焼けや 映える枯れ庭 侘しけれ
 
             山路を 行き交う車窓に 寒椿
 
           
              霜月に 月夜なくに 今宵は 三日月  
  
             三日月に 月っぱく⋆(げっぱく) を見ず 冬の宵
                             〔 ⋆ 月の精のこと 〕
 
              一番星 三日月の隣り 輝けり
 
               今宵 冬 三日月甘く 黄色く 映えぬ
 
                三日月や 生命(いのち) 短し  屋根白む
 
                三日月 消えぬ 山際仄か 開けるなり
 
            
             散歩路 無風 無音 小鳥の声
 
 
             鈍色の濃淡 海と空を分け
 
             靄(もや)かかり 島影虚ろ 冬の朝
 
                光る海 天空映す 冬の昼
 
            夜景 冬 不夜城の風情 あり
 
 
                     平成28年(2016) 12月 5日
                                  < 19首 >
 
             歩めども 赤松続きぬ 秋山路
 
              赤松の林の果てや 秋日和
 
               赤松林 風一陣 駆け抜けて
 
                空気冴え 赤松の針葉 震えおり
 
                  赤松に 人手入(はい)らず 草茫茫
 
              赤松の下草茫茫 誰ぞ 刈るや
 
              見渡せば 赤松の林 彼方まで
 
             赤松林 さ迷うは 我(あ)が夢か
 
               
              松葉 松毬(まつかさ)と遊ぶ 団栗の子ら
 
             黄葉も 枯れ果てぬれば うら寂し
 
              玉椿(たまつばき)⋆ 黒紫の実 冬模様
                         〔⋆ 玉椿は 鼠黐(ねずみもち)の別称〕
 
               玉椿 実 何故 緋色や橙色 に 非ずんや
 
 
               朱赤の実 鋭き棘 野薔薇の枯れ枝に
 
               枯れ山辺 野薔薇の朱実 野路菊の白花
 
                春は花 冬 朱き実 野薔薇の梢
 
 
                 ピラカンサ 独り 際立ちぬ 冬の枯園
 
                刈りこまれ 姫椿の垣根 紅の花
 
                 彼(あ)の常磐樹 見覚えあるも 名覚えぬ
 
                霜枯れて 白菊 二変化(にへんげ) 紅紫
 
 
                            平成28年(2016) 12月 6日
                                     < 19首 >
                この秋の 紅葉の錦 濁り絵なり
 
                冬なれば 紅葉 消えて 紅紫葉
 
 
               冬の庭 草木 静穏 朝まだき
 
              朝露置き 萩 枯れ灌木となりにけり
 
             朝露の光る 南天の 葉と実かな
 
            光る椿 朝の陽光 冬麗ら
 
           
              猪(しし) 荒らしぬ 山中 不作や 団栗は?
 
             げっそりと 痩せ 猪 夜の徘徊
 
 
              冬空 蒼 姿形 千々なり 白き雲
 
              三日月消えぬ 西 薄明り 東 藍
  
               目覚めれば 辺り 未だ闇 朝まだき
 
              月白(つきしろ)も 朝ぼらけも見ず 冬空(むな)し  
 
             朝ぼらけ 天空の東 ほんのりと
 
                裏山や 仄かに浮かぶ 朝ぼらけ
 
        
             朝の冬 外へ出づれば 冷気 凍みこむ
 
            灼熱の太陽 恋うる冬 寒冷
 
           冬は夏 夏は夏 恋ふる我儘 如何にせむ
 
                      冬は冬 冬を楽しむ術(すべ) もあり
 
                         ー 何の樹か分からない樹の実の房が
                              いつまでも垂れている姿を観て
 
              枯れ枝に 灰黒の実 撓(たわわ)に垂れぬ
 
 
                           平成28年(2016) 12月7日
                                  < 18首 >
 
             雑木林 近づけば 木の葉時雨(このはしぐれ)
 
              木も草も 鈍色(にびいろ)に沈む 冬の山辺
 
               草も木も 濁り絵となりぬ 冬の野辺
 
              草萎れ むさぐるしき哉 冬木立
 
                 苔と羊歯(しだ) 寒風 寒気 物ともせずに
 
                林の中 朽ち葉 枯れ草 羊歯 青々
 
                薔薇一輪 咲残りたや 忘れ花
 
 
                冬紅葉(ふゆもみじ) 若草色から柿色まで
 
                 鈍色(にびいろ)空 侘しさ募る 冬紅葉
 
 
                  葛(くず)緑 衰えにけり 冬黄葉
 
                蒲公英(たんぽぽ)の咲きたる野辺や 冬日向い
 
                 小高き丘 出会うは夏草 枯れ姿
 
                  姫椿 紅と白が 向かい合い
 
                   落葉で 鏤(ちりば)められし 山路行き
 
                 枯れ果てぬ 木立や 風の吹き抜けぬ
 
                  ハート形の葉 やはり 君は 匂い菫
 
                     冬木蔭 下草朽ちぬ 忘れ花
 
                蜜柑 柚子 金柑 皆(みんな) 一つ庭
 
 
                           平成28年(2016) 12月 8日
                                < 18首 >
              
 
                 朝ぼらけ 小鳥飛び交う 障子影絵
 
                   
                冬の夕陽 照り映えぬ雲 真珠色
    
                 真珠雲の奥 輝光あり 冬の夕
 
                  見しや 雲間に隠れ居 一番星
 
                 叢雲(むらくも)や 見え 且つ 隠れぬ 冬の月
 
                 山 赤褐色に燃ゆ 冬夕映え
 
                  枯れ尾花 独り 残照に浮かびおり
 
                    夕陽なか 枯れ尾花 また 輝きぬ
 
                 はらはらはら 静心(しずこころ)知らぬ 木の葉時雨
 
                冬時雨 庭の草木 心(うら)寂し
 
                 龍の髭(りゅうのひげ) 石畳に根張りぬ 冬備(もよ)いか
 
                  現の証拠(げんのしょうこ) 幼な葉開きぬ 冬過すや
 
                 石畳み あちこちに 冬芽 勢揃い
 
                    用水路 見下ろせば 枯れ草の苑
 
                     紫虎の尾 灰黒の実 侘し冬日
 
                  なにもかも 長々と 影落とす 冬景色
 
                 影法師 刻一刻 伸びる冬日かな
 
                   長々と伸ぶ 影法師 冬日 傾きぬ
 
 
                                                            平成28年(2016) 12月9日
                                         < 首 >
       
            珠簾(たますだれ) 花も葉も見ず 路傍冬
 
             用水路 淀みの水面 冬空青み
 
             青き苔 落ち葉と 溝底 水涸れの
 
              吹き溜まり 春の野辺にす 小さき花
 
             束ねられ 路傍の白菊 紅に染む
 
            次々と 石段に芽萌え 冬の花やぎ
 
            石垣の苔 羊歯 緑 冬日陰 
                   
                            ー 山 豊作らし 猪 里へ降りて来ず
             吹き寄せられし 団栗 いまだ 桜樹の下
 
 
             桜木に生う 地衣(苔)は 冬の木衣ならむ
 
              梢に蕾 残りぬ紅葉 冬の桜木
 
                桜木の影 歩む毎揺れぬ 冬日なか
 
               桜木の紅葉 悉皆(しっかい) 散りぬ 心(うら)寂し
 
 
              坂の路 残る紅葉や 愛しき哉
 
              道路 左 鬱蒼の森 冬日影
 
               常磐樹 紅葉仄か 小鳥の声
 
                 谷底を飾るや紅葉 冬麗ら
 
 
             小さき自然 悉く消えぬ 寂しき冬
     
               小さき自然 弥増し消えぬ 何とせむ
 
              
            柿枯れ木 梢に宿存(しゅくそん) 蔕(へた) 蔕 蔕
 
             犬鬼灯(いぬほうずき) 我が庭にも 残り咲き
 
              門出でれば 眩いばかりの 冬陽光
 
 
            切れ切れに 冬空に浮かぶ 茜雲
 
            空淡藍 雲茜色 冬曙
 
 
             弦月 出ぬ 濃藍の宵 星は観ぬ  
          
              月白 に 見仰げば 一星 他 シルエット
 
             冬三日月 庭の草木や 深深や
 
              目覚めれば 小鳥も眠れぬ 冬暁
 
               目覚めれば 底冷え厳し 朝まだき
 
 
                              平成28年(2016) 12月10日
                                    < 20首 >
                 水仙の 新しき叢 冬日向い
 
              音もなく 木の葉 且つ散りぬる 冬日和
 
               柚子(ゆず) 久し振り 大きくなりぬ 楽し
 
            ネリネの花 薬玉(くすだま)の如 誰(た)に贈らむや
 
                糸瓜(へちま)の棚 実ぶらり 下がりおり
 
                     霜枯れの 小菊の姿 また 愛(いと)し
 
          鬼田平子(おにたびらこ) 冬の溝底 勘違い 狂い咲き
 
           格子蓋 覗けば アディアンダム 孔雀葉 広げぬ
 
           蔦葎(つたむぐら) 茂れる庭隅(すみ) 冬深み
 
           お多福南天 紅葉 色とりどり
 
             東屋や 眺む紅葉や 散歩路
 
 
             花八つ手 小さき手毬 集めるしか
 
             霜枯れの 紫陽花の花 凛然と
 
               落葉し 枯れ花紫陽花 艶めかし
 
                        植え込みの 水仙いまだ 花芽見ぬ 
 
           銀杏(いちょう)の梢 冬空を突く 気概あり
 
            冬の崖 鮮橙色の花⋆ 終熄(しゅうそく)
                           〔 ⋆凌霄花(のうぜかずら)の花のこと 〕
 
          冬枯るる 冬草(青草)生うも 寂しき庭
    
           白き実の南天に 出会いぬ 通りすがり
 
            白雲の流るる 冬空 蒼と鈍(にび)
 
         北颪(きたおろし) 寒冷の気 吹き下ろしぬ
 
              
                           平成28年(2016) 12月 11日
                                  < 15 首 >
 
          長き路 振り返れば 玉響(たまゆら)
                        
            千両の撓(たわわ)なる実の赤きかな
 
             残照に 草木輝く 色の濃く
 
             冬凪の日差し 柔らか 枯れ尾花
 
             窓の内 陽光(ひかり) 春めき 外 寒風
 
              蓬 幼な葉愛らし 冬日影
 
               犬鬼灯(いぬほおずき) 枯れ尾花被り 防風林や
 
            萎れ 且つ 咲きぬ 姫椿 冬景色
 
             あの紅は? 石段登れば 姫椿
 
               枯れ葉 散り 且つ芽吹きぬ 庭の梅木
 
             白雲の棚引く 冬空 枯れ紫陽花
 
                       夕陽映え 薄の綿毛 光りぬ庭
 
 
             朝 凍てつきぬ 夕 雲 円やかな凪
 
               朝茜 山々 赤褐色に 衣替え
 
               寒風に吹かるる 尾花 西日 強
 
 
                             平成28年(2016) 12月 12日
                                       < 28首 >
 
                ライラック 残りぬ 黄葉 光る冬日
 
             谷間や せせらぎの音 冬紅葉
 
              木洩れ日(こもれび)の 煌めく径(こみち) 声遠く
 
             日脚伸ぶ テーブル越え ソファー越え
 
             塀の枯れ蔦 線描画の 風趣あり
 
              枯れ葎(むぐら) 寒風に舞う 一葉 あり
 
                山葡萄 絡む枯れ蔦 古木の如 
 
    
              早 沈む 夕陽 影落としぬ 冬の庭
 
               冬 雲流れ 明星現れ かつ 隠れ
 
              耿耿たる 月影落としぬ 地上 冬
 
               
              枯れ樹 増え 堰堤の爆水 音高く
 
               冬木影 草草萎れ 侘しさ 深深
 
                雑木林 唯 落ち葉 朽ち葉の積み重ね
 
             雑木林 常磐(みどり)陰鬱 疎ましき
 
              冬日向 嫁菜残り咲く 径(こみち)行く
 
 
               見渡せば 光る海 鈍色の雲
 
              光る海 大空 浩浩 広広 なり
 
               雲雲は 浮かび 且つ 流るる 冬の空
 
                  大空の雲雲 万象の形(けい) 冬の空
 
               
               放置され 庭 自然へ帰るらむ
 
                 空き地あり 空き家あり 冬 空し
 
                 篠竹の 凍て 縮みおりぬ 寒厳なり
 
                冬日中 篠竹続く路 散歩路
 
                 大きな空地 荒地のままや 冬の空
 
               空地 荒地 広々とした心地 あり
 
                  蝶も見ず 虫の音も聞かず 冬野 寂し
 
                   垣根の小菊 色々の色に 咲き残りぬ 
 
 
 
                              平成28年(2016) 12月 13日
                                      < 16首 >
               下草取り 紅葉の花莚(かえん) 情のあり
 
                  野路菊の忘れ花ありて 冬日影
 
                 枯れ木 且 枯れ 堰堤の音響き
 
               紅葉消え 枯れ葉に移ろいぬ 山の冬   
 
                溝底に 落ち葉の吹き寄せ 冬の景
 
                溝底の流れ 落ち葉の堰きや 網代垣
 
                
             手摺持ち 石段ゆるゆる 老いの冬
 
              松葉 落葉 松毬(まつかさ)尽くしの 枯野かな
 
                 赤松の松葉 若葉の冬模様
       
                     冬野一面 双葉生いぬ 目白押し(めじろおし)
    
            枯れ草刈り 空缶一つ 転がりおり
 
             空き地の葛(くず) 電線伝い 枯れ葉垂れ
 
               冬散歩 万事 沈みぬ 生気見ぬ
 
 
           冬空飛ぶ 番の鳥(つがいのとり)や 悠然と
 
           番(つがい)寄れば 離れて飛びぬ 冬烏
 
             烏二羽 飛ぶ冬空に 円舞かな
 
 
                           平成28年(2016) 12月14日
                                    < 34首 >
 
            花を見ぬ この寒中に 木瓜(ぼけ)の花
 
              木瓜の花 垣根から出づ 梢に咲き
 
               芳香あり 近づけば 木瓜の花
 
                垣根の向こう 賢く咲く花 木瓜と知る
 
             木瓜の花鄙びて 可憐棘なくば
 
             冬空に 咲く木瓜の花 円(まど)やかに
 
 
             そぼ濡れぬ 庭の草木や 霧雨に
 
             霧晴れぬ と思えど小雨 降り注ぎぬ
 
     
              柿の古木 枝振り見事 芸術家
 
              騒めきぬ 寒林 風吹き抜けば
 
              空耳や 嵐の夜に聞く 虫の声
 
               嵐過ぎ 夜半に静寂 戻りけり
 
             十三夜 月なく 星なく 濃藍の空
 
              十五夜も 明星ばかり 姿見せ
 
                
               水仙の 剣状葉の蔭 蕾 見ゆ
              
               ようように 水仙の花芽(かが) 見つけたり
 
              夕陽映え 羊雲 彩雲(さいうん) 美景 冬
 
 
               床の間に 侘助(わびすけ) 一輪 飾れおりぬ
 
             侘助の鄙びた風姿 愛でられり
 
               門の脇 侘助に出会いぬ 通りすがり
 
 
               寒林 幽玄な景色 仄か見ゆ
 
                 霧雨に 梢そぼ濡れ 露宿る
 
               嵐の朝(あした) 揺れる草木 穏やかな
 
               陽光に 枯れ葉 黄葉 今一度
 
 
                 真っ赤なトマト 齧(かじ)れば 広がる日向味
 
 
               深山遠く 人里近く 冬深し
 
      
               夜半 荒ぶりぬ アディアンタム無事 苔も無事
        
                樫の葉蔭 団栗や 転がり出でぬ
 
                 青木の実 赤く艶やか 庭の一隅
 
               目覚めれば 寒夜に響く 音寒し
 
                               
                          ー 昔 鎮守の森で山桃の大樹に出会いしことを
                                  思い出して
 
                幽幽の 鎮守の森 山桃の樹
 
                  山桃の 古木の辺り 森閑と
 
              
              軒伝い 冬雨の雫 土穿つ
 
               霜枯れの蒲公英(たんぽぽ) 意気軒高や 今咲きぬ
 
                    
                          平成28年(2016) 12月15日
                                       < 22首 >
 
                  石蕗(つわぶき)や 大葉艶やか 花模様
 
              優艶な 大輪の菊 観賞
 
               谷間の 白百合想う 幽艶な
 
                牡丹の花 妖艶な真紅の色
 
                          冬 夕され 庭眺むれば 幽思あり
 
               冬日暮れ 憂色の覆う 庭の樹木
 
                冬暮色 山辺の草木 一気なり
   
                   漫ろ歩き 不図見れば 一面双葉
 
                     此処からは 幽径なり 如何にせむ
 
 
                侘助(わびすけ)を愛でし 君 如何に御座(おわ)すや
 
                         ー 我が庭のバード・テーブルに立ち寄り
                                  急ぎ飛び去る雀を観て
               夕漁り(ゆうあさり) 急ぎ帰りなむ 冬の空
 
                10メートル余で 寒風の散歩 諦めぬ
 
                 
               夕星(ゆうづつ) 消えぬ 濃藍の闇 月何処
 
                十五夜の月見ぬ 極月(ごくづき)の庭 幽思あり
 
                 窓開き 満月捜しぬ 真夜中に
    
                 十五夜の 一人月見や 一興あり
 
                枯れ尾花 一人月見の友とせむ
 
                  望月(もちづき)や 一人月見に 団子無く
 
                  十五夜の月 耿耿と 極月の庭
 
                  
                嵐過ぎ 浮雲流るる 冬空 蒼き
 
                  茜雲 薄墨の雲 真珠雲 冬
 
                 夕星(ゆうづつ)見ゆ まだ茜雲 山の際
 
                  
                                平成28年(2016) 12月16日
                                        < 24首 >
                 夕暮れ 速し 午睡覚めれば もう 夕闇
 
                 冬 夕さり 万象 藍染めの 影絵なり
 
                  冬嵐 枯れ芒 薙ぎ 吹き抜けり
 
                    嵐過ぎ 浮雲流るる ゆるりと冬
 
                 日差し 深し 緑深し 冬深し
 
                 冬日差し 寂寥の影 径(こみち)あり
 
                       冬木蔭 踏み滑りぬ 枯れ葉路(みち)
                   
                   森閑と 唯そこに生う 松木立
 
                    妖し気の 月光 心狂わせらむ
 
                  風花 舞う 水仙の季節 来たりけり
 
                  水仙 自生 木蔭にも 日影にも
 
                   ミントの葉 霜枯れの紅 冬の華
 
                    ミントの葉 幾重にも生い 冬凌ぐや
 
                  霜枯れの ロゼット 春の花 如何
 
                    石垣の隙間 冬芽の 萌え 出づる
 
                     石垣の ここかしこに 春の気配
 
                   
                  草木光る 寒雨の後(のち)の 日和かな
 
                   小夜の雨 朝(あした)草木に 露光る
 
                  光風や 吹かれ戸惑う 古木 枯草
 
   
                  紺碧の海 空浩々 島影一つ
 
                                                           
             蔦日日草(つたにちにちそう)⋆ 春 青紫の花 壁に垂れぬ
 
              蔓桔梗(つるききょう)⋆ 斑入り 壁から蔓を垂れ
                              〔⋆ 蔓桔梗は 蔦日日草の別称〕
              
                             冬木蔭 蔓桔梗や 葎 (むぐら)生い
 
               漫ろ歩き 枯木の下草 ビンカ*の葎
                                                〔ビンカは 蔓桔梗の別称〕
 
            
 
                   平成28年(2016) 12月 17日
                                <   首 >
 
                 南天の実 赤く残りぬ 迎春のためや
 
                  白雲の動かぬ冬空 梅 芽吹きぬ
 
                    冬空に そのまま白雲 陽を待つや
 
 
               寒風に 枯れ葉 転(まろ)びりぬ 水仙下
 
                 冬 鬱鬱 水仙 生生 我(あ)萎れ
 
                  水仙は 追われて崖下り 冬迎えぬ
 
                犬鬼灯(いぬほおずき) 独り 冬庭 咲き続き
 
                〔犬鬼灯の〕 小さき花の 大きな精気 我に来よ
 
                  凄き哉 厳寒に花 犬鬼灯
 
          
              寒雀 餌啄みぬ 寒の入り
  
                 寒雀 飛び交う寒天 餌捜しや
   
                  人影に 一斉 飛び立つ 寒雀
 
              枯れ枝の 寒雀や 目鋭く
 
             冬の空 膨ら雀らの 梢かな
 
              凍(こご)え雀 電線の上 肩寄せ合いぬ
 
             枝に雪 雀止まらず 飛び去りぬ
               
             膨ら雀 屋根の上なり 雪被り
 
 
              じんじんと 冷え込む朝(あした) 厳冬来ぬ
 
              牡丹雪 降っては消え 積もっても消え
 
               寒風吹き込み 急ぎ窓閉め ぶるっ
 
 
             満月に 犬の遠吠え 何事ぞ
 
             遠吠え続く 満月の夜の物狂い
 
              遠吠えや 月夜から闇へ 沈みゆく
 
    
               枯れ樹ばかり 山路枯れ葉で 埋まり居り
 
               水涸るる 用水路 冬草の草苑
 
 
             紅と白 花姫椿 盛り過ぎ 
            
               姫椿 白に紅入りて またいとし
 
 
              池の畔 鯉の午睡を 起こしたり
 
               親鯉や 子鯉も泳ぎ 来たぬれば
 
 
              遠吠えせぬ 今宵 静かに深け行きぬ
 
            
              枯れ芒 弥弥枯れぬ 薙ぎ倒され
 
               夜凪ありや ゆるゆる 時間(とき)の流るる哉
 
                              静穏な時 流るる 冬の夜半
 
              今宵静か 冬月 ゆっくり 傾ぶきぬ
 
            冬日あり 枯れ草も 庭の賑やかさ
 
             側溝の 流水に落葉 一景あり
 
              アディアンタム もう嫩葉萌え 冬の溝
 
                枯れ蔦や 用水路の壁 棚引きぬ 
 
             濃淡の線画 枯れ蔦 壁一面
 
              
            菊野老(きくどころ) フェンスに絡み 黄落せぬ
 
             菊葉野老 フェンスに独り 友もなく
 
              小菊もまた 独り 菊葉野老 遠く
 
 
            黒松と赤松 睦みぬ 玄妙かな
 
                        赤松の 生う庭の小邸 住みたき哉
 
                           我(あ)庵(いお) 赤松林の中が 佳き
 
               
                             平成28年(2016) 12月19日
                                     < 23 首 >
 
 
         谷川の 流光 紅葉落ちぬ
 
            流光に影落とす 枯れ樹あり
 
 
         星二つ 一つよりまし 凍て月もあり
 
 
        枯れ芒 綿毛飛び舞う 冬日和
 
         萩枯れ木 真直ぐ跳ね伸び 空(くう)を突く
 
        石畳み 冬草に 小さき忘れ咲き
 
         冬日差し 枯れ草輝く 庭 宴
 
          寒雀 寒菊の庭 飛び去りぬ
 
 
         冬至の南瓜 眺むる 暇(いとま)あり
 
         冬至の日溜まり 南瓜眺むる 暇あり
 
          冬青草 光る空や 真珠雲
 
           寒椿の花 真珠雲の下 
 
 
          谷川のせせらぎ 低し 冬深し
          
           月影に映える枯草 冬の庭
 
            冬至 日脚(ひあし)の延ぶは この日から
 
           菊枯るる 冬庭 弥 増し 心(うら)寂し
 
           東屋の 冷たき腰掛け 冬逍遙
 
            満天の 夜空夕星(ゆうずつ) 独り占め   
 
                          ー遠い昔 浜辺の渚を歩きし日を 
                                不図 想い出して
            桜外貝 小さきを見つけぬ 渚歩き
 
             波打ち寄せ 波紋の残れる 渚かな
 
          
          吉や凶や 冬雲 斜め 一条は
    
            朝ぼらけ 淡藍の空 白き月
 
           東雲(しののめ) 茜色 西天 白き月
 
 
                           平成28年(2016) 12月 20日
                                    < 21首 >
             柿の大樹 枝拡げ 実吊るしぬ 冬景色
 
            実 枝にそのまま 熟れ 吊るし柿の如
 
             細く 薄く 渋柿剥(む)いた 想い出遠く
 
          
            木蓮(もくれん)の梢 それぞれ 花芽(かが)付けぬ
 
            枯枝払われ 辺り 蕭条(しょうじょう)なり
 
             霜枯れの紫陽花 且つ 霜枯れぬ
 
                          ー 御影石=花崗岩の石英片が日差しに
                               映え 星のように輝いているの観つ
               冬日差し 石垣 銀鏡の真砂の如
 
             石英片 満天の星屑の如 冬日差し
 
           桜枯木 枝の間に間に 望む空 碧く
 
            桜枯木 影落としぬ路 登る我
 
                         ー 桜の枯れ木を眺めている間に
                                     昔話を思い出し
 
             雑木林 芝刈りする 爺 昔話
 
               竈(かまど)の火 芝 焼べれば 湯気立ちぬ
 
            
              花芽(かが) 六つ 五つ もう咲くや 水仙や
 
              水仙の一番咲き 見つけり 吉兆や
 
                     日に向かい 黄色な小花や 狂い咲き
 
                       菊枯るる 花 渋茶に 痛ましき
 
             残菊あり 花 白 或は 淡紫紅
 
             山牛蒡(やまごぼう) 萎れ 実黒黒 艶艶な
 
                            漫ろ歩き 寒冷気に 胸痛得
 
              櫨(はぜ) 漆(うるし) 枯れ実房 冬蕭蕭
  
                実の枯れ房 渋茶 灰黒 こそ 冬の景
 
 
                                 平成28年(2016) 12月21日
                                        < 17首 >
 
                 外へ出れば 枯れ果てぬ庭 広き哉
 
 
              枯れ草に 青 此処にも 青 春の息吹き
 
                紫陽花 若葉霜枯れ 春如何
 
              藪蘭に 落ち葉寄り来て 日向ぼっこ
 
                       花水木 冬芽 霜枯れ 零れぬる
 
             梅の花芽(かが) 小さく膨らみぬ 冬日向
 
 
             犬鬼灯(いぬほおずき) 実も 蕾もあり 冬日影
 
              犬鬼灯(いぬほおずき) 指さし数えば 花十輪
 
 
                霜枯れの 薄 黄葉 庭の不思議
 
              ロゼット(根生葉)の花 分からぬ 春まで待たむ
 
             蔦茫茫 蛇 蛙 棲めると云えり
 
              残りおる 冬草抜きて 腰痛あり
 
              万両古木 消え 若木や 実はまだなり
 
              路傍の柿 梢に 枯れ葉 蕾もあり
 
             水仙の叢生う 堰堤 茫茫の 
             
              鈴懸の樹 葉落ち 幹青灰の斑
 
               根元から伐採 芙蓉 春備い
 
 
                          平成28年(2016) 12月 22日
                                      <  首 >        
                 石段を上れば 紫陽花の黄葉かな
 
             
              悉皆(しっかい)払われ 虚無の間(ま) 冬の空
   
              穏やかな 冬穏やかな 一人逍遙
 
 
                 枯れ泥む 隈笹(くまざさ) 縁まだ緑
 
               隈笹の下 野薔薇 葉残しぬ 冬日影
 
                隈笹 縁白となりぬ 初春 来
 
 
                 杉木立 釣鐘形の実 弾けおり
 
                水涸るる 落葉乾き 苔渇き
 
 
                 黄水仙 可憐な風姿 冬の華
 
                   黄水仙 近づき見れば 犬吠える
 
                  黄水仙 初写生の日 懐かしき
 
                 金柑の実 青から黄まで 色々あり
 
                金柑の実 完熟あり 小鳥ぞ知る
 
              冬逍遙 歩む先先 鳥の声
 
                            冬の空 鳥の声あり 漫ろ歩き
 
                                滑らぬよう そろそろ歩きぬ 漫(そぞ)ろ歩き
 
               冬の雨 降り頻りおり せせらぎの音
 
 
                    風花舞い 駆け抜ける子ら 赤い頬っぺ
 
               窓の外 風花眺めつ 炬燵(こたつ)守り
 
            
             吊るし柿 食(は)めば 冬の香り あり
 
              夕陽沈む 残照映える 梢西
 
               我(あ)が庵(いお)は山際にあり 夕烏
 
    
                                 ー クローバーの写真を見て
                クローバーの 草原 駆ける風 爽やかな
 
 
                            ー 過ぎし日のクローバーの思い出を
                 草叢に白き花 其は クローバー
 
                クローバー 花の末待ち 実(種) 窺う
            
                  クローバー種子(たね)摘み 滑らせポッケトへ
 
                 クローバーの種子 何処へ撒くらむ 我(あ)が庭の
  
                
                次の春 クローバーの 双葉 萌え出づる
 
                 クローバーの叢 広がりぬ 四つ葉捜し
 
                                 見つけたり やうやう 四つ葉のクローバー
 
                     それからは 次々 四つ葉 見つけ出しぬ
 
                 その年が最後 忽然と 姿を消しぬ     
 
                   もう一度 我(あ)が庭へ還り来たれよ
 
                    四つ葉なくとも 我は待つらむ クローバー
 
                 クローバーの 冠編んだ日 もう一度
 
 
                                ー 苺の思い出
                 思い掛けず 苺の鉢や 我(あ)が庭へ
 
                ハート形の葉 愛らしき 鉢の苺
 
                 ハート形の 葉蔭に苺の 白き花
 
                  白き花の可憐な苺 春を見る
             
                 苺の花終わり 結実まで待つらむ
 
                   何時の事 実となりたるは 花苺
 
               指先で そっと葉を上げ 実苺探しぬ
  
                小さき苺 小さく眺める 初夏の朝
 
                      葉蔭に苺 赤き実 そっと垂れぬ
 
                       葉陰に 苺 密かに 赤き実垂れ
 
                気がつけば 苺 鉢から 姿消しぬ
 
              ランナー〔走出枝〕 出し 苺 新たな旅立ちらし
 
              あら 此処に 苺芽ぐむや 庭の一隅
 
               早春 苺の 嫩葉(わかば) 蓬と隣り合い
 
               夏過ぎぬ 蓬茫茫 苺何処(いずこ)
 
                来春まで 芽生え待つこと 長き哉
 
                          ー 幼き日 母に連れられ 苺畑
 
                     手を繋がれ 苺畑へ 幼き日
 
                   苺刈り 苺二粒 青き風
 
 
                                平成28年(2016) 12月 24日
                                        <  首 >
 
         一夜雨 苔蘇り 水仙咲き
 
          小手毬(こてまり)の葉 冬日に映え 黄茶色
 
           小手毬 紫陽花 尾花の冬 穏やか
 
          蓬叢 枯れず残れり 冬至の庭
 
             仏の座(ほとけのざ) 春待てずに 咲くや 今
 
            苔 こんもり 冬草に 落ち葉や より来たり
 
           路の縁 冬草 千草生いぬ 狭し
 
           枯草払われ 春の息吹の 仄(ほの)聞こえぬ
 
            吹き寄せられ 且つ 転びつ散りぬ 落ち葉
 
                     ネリネ 枯れ 石蕗(つわぶき) 消沈 冬深み
 
            冬日影 石蕗の緑 濃艶に
 
             花酢漿草(かたばみ) 花枯れぬれど 葉 若緑
 
               冬至過ぎ 柿 まだ梢の 彼方此方に
 
                 渋柿や 枯れ枝に 実撓(たわわ) 冬の空
 
              水仙や 陽の当たる場所より 咲き初めぬ
 
              葛(くず) 黄落し 谷間(谷間)は 枯れ木立
 
          秋の名残り 蓬の二番咲き 冬寂し
 
                      背高泡立草⋆枯れ姿に 冬日差し
                          〔⋆ 一漢字一語扱い〕
              落ち葉上 紅の花弁 姫椿        
                     
      
                                              平成28年(2016) 12月 25日
                                    <   首 >
              涸れ庭や 枯れに枯れ葉て 冬厳し
 
           菊葉野呂(きくばどころ) 蔓延べ 手招きし
 
             萩 すっかり 黄葉 黄落 芝となりぬ
 
              庭の青木 今年は実を見ぬ 他処も同じ
 
          冬の雨そぼ濡れる 庭 春遠し
 
           石蕗(つわぶき)の のんびり座する 石垣下
 
             冬の路傍 枯れ 且 芽生え 春の兆し
 
              苔 若緑 叢(むら)の復活 冬麗ら
 
           枯れ草の側 青草萌え出るを 見ゆ
 
            枯れ庭に 鬼田平子(おにたびらこ)や 見つけたり 
 
             冬日差し 枯れ庭にも 小さき華やぎ
 
              万年草 野芥子と隣り 黄花の縁や
 
             春を待つ ロゼット〔根生葉〕の数 また 増えり  
 
                 あちこちにロゼット 春を待つ風姿
 
                   枯草と青草扱き混ぜぬ 冬の庭
 
               
             冬逍遥 明日は何処まで 行けるやら
 
               漫ろ歩き コースを試案や 寝覚めぬ 夜半
 
                 雨風 無音 今宵 静穏 明日や晴天
 
 
             淡桃小花 溝堰き止め 枯れ葉留め
 
               淡桃小花 溝流るる枯れ葉 通せん坊
 
 
              水涸るる 冬草茫々 自然のまま
 
                    石垣の 枯草茫々 冬景色
          
               唯 流るる 流るる水や 冬の溝
 
                溝の水 キラキラ行きぬ 冬陽映え
 
                            小さく残りぬ 竹林や 雀の声
      
                 崖の下まで 水仙の叢 あちこちに
 
 
                  大樹落葉 水仙晴れやか 冬日差し
 
                葉牡丹の 勢揃いや 迎春ムード
 
                大樹二本 寄り添う狭間 水仙咲く
 
                   枯れ木立 小径通れば 水仙の叢
 
                   
              谷川流れぬ ひたすら流れぬ 水源は何処
 
 
                 いつの間にか 水仙の叢 フェンス際
 
                 向こう側の水仙咲きぬ こちら側も
     
                  茫茫の小堰(せき) 水仙 独り咲きぬ
 
                 笹薮に 枯れ芒の河原 蕭条
 
 
                   桜 悉く 落葉 空 明瞭
 
                   苔むす桜 梢の芽吹きぬ 冬麗ら
               
                     藪虱(やぶしらみ) 花のまま立ち枯れ 哀れ
 
 
                  残照に 影木立 聳え立ちぬ
 
                    夕陽映え 丘の家々 冬のタペストリー
 
                   炬燵 ほっこり 窓外 梅に蕾
 
                  葉牡丹 開く 日一日の 明るさ哉
 
                    冬雀 枝移り 且 餌狙い
 
                             
                                 平成28年(2016) 12月27日
                                         < 19 首 >
                     雪柳 橙褐色 燃ゆ 冬の庭
      
                    金水引きの葉 黄橙色の火焔なり
 
                   星二つ 濃藍の空 冬寂寞
 
                                      外へ出でば 青 浅緑 春近し
 
                      石畳み濡れ 知るなり 冬の小雨
 
                    極月の空 満目鈍色 なり
 
                     彼方此方の 門灯 点灯 冬の夕闇
 
                                  - TVの映像を観て
                 団栗(どんぐり)齧(かじ)る 栗鼠(りす) 枯れ葉のテーブル
 
                   黙々と 頬膨らませ木登りぬ 栗鼠
 
                  下草緑  幾重にも栗鼠の棲む
 
                     木の洞(ほこら) 緑の下草 栗鼠の貯蔵庫
 
  
                 我(あ)が山里 栗鼠に会えりと ひとの云う
 
                  栗鼠との邂逅 思いつ散歩 山際を
 
 
                   雪原をひたすら走る列車 炬燵守り
 
                    雪掻きの映像 思わず 手を擦りぬ
 
                  
                   小夜の雨 ふと 止まりぬ 朝ぼらけ
 
                 山際 薄茜 冬雲 棚引く
 
                  月明かり 混じる門灯 冬の宵
 
                   薄墨の刷毛 一刷き 冬の薄雲
 
 
                               平成28年(2016) 12月 28日
                                         <  首 >  
                 冬季 鬱 無為に一日過ぎにけり 
 
                  悉く 朦朧のなか 冬の一日(ひとひ)
 
                  身怠き 何事も鬱陶し 冬季鬱
 
                   チャイムの音 驚き目醒めぬ 昼下がり
 
 
                             - 庭の落ち葉を眺めつつ
             落ち葉掻き 焚き火の煙 遠い昔
 
              焚火の煙 目に沁み 痛! 逃げ惑う 
             
                目に滲みる 焚火の煙 今は懐かし
 
             焼き芋 熱! 両手の転がし お手玉し
 
              焼き芋を 頬張る童 嬉し顔
 
              
             今はもう 何処にも 焚火の煙 見ぬ
 
             落ち葉焚き 昔の行事となりにけり
 
             落ち葉 袋に入れられ 塵置き場
 
 
             風の唸り 遠く近く 冬の夜半
 
               雨戸揺らし かつ 轟く音 山颪
 
 
             平穏な小夜破る 冬の嵐哉
 
                水仙 どうしているかしら
 
                 大樹の元 嵐過ぐるを 待つらむや
 
              山颪 過ぎ 満天の空 朝茜
 
   
             コンクリートの壁 排水の滴り 苔緑艶
 
             溝底の苔 青々 冬雨 慈雨哉
 
              紫陽花 最後の落葉 溝底に
 
 
               唯歩く 歩く 冬散歩や 虚(むな)しけれ
 
              
             大型の落ち葉 何処から ’落とし主’ は誰?
 
               大き枯れ葉 茨にひっかり おいで おいで 
 
                遠目には お化けゆらゆら 立ち竦みぬ
 
              風に乗り 飛来したらし プラタナスの葉
 
 
             薄日洩れ 陰鬱な木立 下草仄か
 
              雑木林 落ち葉の絨毯 何処までも
 
 
             白花蒲公英(たんぽぽ) 萎れるも 枯れずにおりぬ
 
              白花蒲公英 蓬(よもぎ)と共に 越冬や
 
               白花蒲公英 蓬 霜枯れもせず 生き抜きおり
 
 
                            平成28年(2016) 12月29日
                                      < 14首 >
 
               夜半の雨 堰 水量 音量 増量
 
              
             冬深し こんな処に 姫菫
 
              春の野に咲く菫想う 冬の庭
 
             今は 冬 春の何時咲くの 菫草
 
           花を見ぬ 菫見つけぬ 閉鎖花(へいさばな)
 
             種子(たね)零れ 蒴果茎 立ち枯れぬ 冬菫
     
                車道側 轟音知らぬ気 咲く菫
 
               風に種子 運ばれ新天地へ 其は 何処
 
             鉄柵下 歩道沿い 陽当たりの良きに 菫草
 
 
                     — 昔 庭や路傍 生垣など彼方此方で匂い菫に
                         出会った頃を思いだし
 
           匂い菫 彼方此方に出会い 食傷気味に
             
            或る春に 忽然と姿消しぬ 匂い菫
 
             葉 ハート形 同じを見つけぬ 匂い菫と
 
                      花 如何 匂い菫で あらまほし
 
             今一度 会わむとぞ想う 匂い菫
 
 
                      平成28年(2016) 12月 30日
                                    < 14 首 >
             日差し背に 冬庭巡り 小春探し
 
               雲間から 日差しあり 光る冬庭
 
             蔦 蔓 払い 塵袋並ぶ 年の暮れ
 
             庭掃除 我(あ)が暦(こよみ)の 仕事仕舞
 
               庭掃除 紅の花びら 御褒美や
 
                冬の庭 黒土弄(いじ)り 春想う
 
              冬の庭 ’置き土産’あり 誰の仕業
                               〔猪ではなく 犬のよう〕
 
               朽ち葉 枯れ草 春の堆肥になるや
 
               庭掃除 一息(ひといき)つけば 日傾きぬ
 
               夕凪に 満目停留 静かの冬
 
               朝茜の 美しを見ぬ 冬厳し
 
               日昇りぬ 悉皆 光 冬輝けり
 
                日脚伸ぶ朝 鉄柵過ぎ 堰堤まで
 
              何事も 気忙しき哉 年の暮れ
 
 
                            平成28年(2016) 12月31日
                                         < 18首 >
                 野薔薇の実 赤きの鮮やか 枯野かな
 
                  金雀枝(えにしだ) の枝枝 緑 冬の山辺
 
                  大寒に 芽生う 仏の座 気早しき
 
               石段に 独り 野路菊 冬日向
 
                 歩道の縁 杉の朽葉の 吹き寄せられ
 
 
                  整備され 情趣消えぬ路地 寂し
 
                 冬日あり 銀盤の海 船の影
 
                 冬の海(湾) 対岸の街並み 霞おり
 
                  桜貝 探せし 渚 遠き昔
 
                   冬日差し 遥かげの対岸 眺めおり
 
                     木の葉舞う 山颪(やまおろし) 大寒 小寒
 
                厳冬や 顔厳しく 引き締まり
 
                 淡藍の冬空 白雲 悠然と
             
                    満天の白雲 動かぬ 年の暮れ 
 
                  ヒマラヤ杉 葉刈り すっきり 冬日向
 
               
              福良雀(ふくらすずめ) ダウンジャッケト 冬厳し
 
              
              蒼き空 白き千切れ雲(ちぎれぐも) 大晦日
 
                気忙しさ消え 穏やかなり 大晦日
 
 
 
                                平成28年(2016) 1月1日
                                          < 14 首>
          迎春の飾り シンプル 老いぬれば
 
           玄関に 七五三縄(しめなわ)飾り 唯それだけ
 
           旧年中 いろいろな事 ありました
 
            昨年(こぞ)や まあ良き年なりと 思えれば 〔それで良き〕
 
                   安泰に 過ぐることこそ 難しき
 
                                      除夜の鐘 聴かぬ夜の久しけり
 
                   初春の 独り祝いや 暖気(のんき)哉 
 
                     穏やかな 初春の空気 暢気(のんき)かな
             
                 日の出拝まぬ 元旦 めでたさどの位?
 
                  初春や 酉年(とりどし)の良きや 如何あらむ
 
                      炬燵守り 句作指折る 初春楽し
 
 
                  冬逍遥 枯れ樹 枯れ草 友となり
           
                  漫ろ歩き 冬野歩けば 草臥れ儲け
 
                    蔦紅葉 初春の日に 朱く燃え
 
 
                            平成28年(2016) 1月2日
                                      <  首 >
   
                   車 車 轟音響く 初詣で
 
                  初詣で 幽幽の社 躊躇いぬ
 
                    初詣で 着物姿見ぬ 淋し
 
 
                  ショベルカー また一つ 屋敷消えぬ
 
                    古き良き時代 愛惜 屋敷町
 
                                      古き良き時代の風趣 今何処 
 
                   幾星霜 過ぐれば 今ぞ 昔に非ず
 
 
                初春の大空 鵯(ひよどり)二羽 おおどかに
 
                 遠回り いつか来た径 冬逍遥
 
                           — 水仙の花より剣状葉の青青と生うを観て
                    野草の小径 水仙の列 剣の列
 
     
                落葉せぬ 冬の常磐樹 陰鬱なり
 
                 ベンチあり 枯れ草 枯れ樹 蕭条(しょうじょう)
 
                狗尾草(えのころぐさ) 枯れ 戦ぐ小苑 独り居り
 
                 紅色の姫椿も 独り 佇みおり
 
                蔓茱萸(つるぐみ)の 青き実塊りて 結びおり
 
                蔓茱萸の実 何時朱く 実るや 次の初夏
 
                 フェンスから蔓突き出して 何望む
 
 
                                 平成28年(2016) 1月3日
                                        < 24 首 >
         青木の花芽(かが) 苞葉に包まれ 慎ましき
 
          石垣に 芽生え 点点 若葉愛らし
 
           竹藪 森閑 雀ら 何処まで 初詣で
 
              チューリップ二輪 早咲き 初春月
 
                チューリップ二輪 初春のめでたきを
 
            姫椿 満開 寒椿の咲くを待つや
 
             寒椿 花芽(かが))揃え もうすぐ 咲くらむ
 
 
          冬公園 一人三輪車 漕ぐ童
 
          家族連れ それぞれの佇まい あり
 
     
           水仙の 花二輪 淋しき庭
 
             ひっそりと 佇む 水仙 庭の奥
 
         木瓜(ぼけ)の花 赤きにときめく 冬景色
 
          次々と 青木の蕾 冬深し 
 
          睦み月 木瓜も 青木も 狂い咲き?
 
         
          柿の木枯れ 大根の葉枯れ 寂寥(せきりょう)
 
          大根畑 打ち置かれ 葉枯れぬ
 
                      夕陽浴び 柚子 黄金に輝けり 
 
           枝(え)枝(え)払われ 枯れ樹の春や 如何にあらむ
 
           枯れ樹に絡みぬ 蔦 冬のオブジェ
 
            犬鬼灯(いぬほおずき) まだ 花盛り 睦み月
 
               溝底のアジアンタム 寒からずや 冬深し
 
                鈍色の陽射し 冬庭 和らぎぬ
      
              寝覚めて はや 覚えぬ 老いの初夢
 
                   覚えねど 心地好さあり 老いの初夢
 
 
                                           平成29年 1月 4日
                                  < 21 首 >
            馬酔木(あせび)の 花芽(かが) 房 垂れれおり 晩秋から
 
            馬酔木の蕾 渋紅色 越年し
      
             馬酔木 可憐 釣鐘形の花の風姿
 
              花は 春 馬酔木 唯 春を待つらし
 
                 馬酔木 春恋うるや 冬の今
      
              淡紅の小花誇るや 春 馬酔木
 
           馬酔木 白より淡紅 念じた花の色
 
            馬酔木(あせび) 花芽(かが)膨らみぬ 冬最中(さなか)
 
            冬日差し 独り佇む 寒椿 
 
             寒椿 寒椿ならぬ 花咲かぬば
     
           寒椿 咲かぬは 夜半の嘆息に
 
               枯れ庭に 椿 緑に輝けり
 
                              
                - 昔日 贈り物の椿 大震災で枯死
                     させてしまった事を想い起こして 
          椿の若木 明くる春には
 
                    ピンクの八重
 
        淡桃色の 椿想えば 春の匂い
 
         淡桃色の 花弁重ね 椿優し
 
          八重の椿 地震に枯れぬ 哀悼
 
         今も猶、想い出しぬ 八重の椿
 
 
           今明るしと想えば 最早 宵の明星
 
              新月の明星 睦び月の宵
 
                  新年の新月明るく 冴え渡り
 
       
                     平成29年 1月5日
                             <21首>
        姫菫  花見つけたり 裂花と共に
  
           石段に隠れ 姫菫 咲きおりぬ。
                  
              蔦葉海蘭(つたばうんらん) 葉茂し 冬の庭
 
         大寒に 藤色の花や 蔦葉海蘭
 
         
          花続き* 蔦葉海蘭 群れ合いぬ 溝の上
                 (*花続きは、雌の万年草の別称)
 
         万年草 溝上を 若草色に
 
        朽ち葉垂れ 紫陽花芽ぐむ 冬の庭
 
         鬼田平子(おにたびらこ)一輪 二輪 冬の溝
 
         寒椿と見しや 姫椿* 惑わされぬ 
                   (* 姫椿は山茶花/さざんかの別称)
 
            遠目には 同じ 椿も 姫椿も
 
         花一輪 寒椿に居りぬ 庭の奥処(おくか)         
 
         美(うま)しき哉 白に紅絞り 寒椿
 
          姫椿 散り花弁(はなびら)や 花莚(はなむしろ)
 
        
                   平成29年 1月6日
                      <27首>
 
          逆さ富士 不二(ふじ)の二山(ふたやま)芽出度き哉
 
        
          スペアミント 萌え且萌えぬ 庭の縁
 
           ライラック 梢に新芽 春呼ぶや
 
               北側枯れ 南茂りぬ 源平小菊
 
            姫椿 花弁(はなびら)ひらり 鬼田平子上
 
              鬼田平子 蒲公英似の 小さきの咲き
 
       早乙女花 枯れぬとも絡む 要黐(かなめもち)に
 
         お多福南天 濃い紅差しぬ 寒化粧(かんげしょう)や
 
           要黐 紅なる新芽 彼方此方(おちこち)に
 
 
          打ち出れば 凍て風頬刺すや 寒椿 
 
                         -晩秋には、葉蘭は、根元に好物のダンゴ虫が
                         いるのか猪に幾度となく根元からひっくり
                    返されて 受難の日々
           猪(しし) 冬眠? 葉蘭安心 冬最中
    
      
       冬日差し 枯れ尾花の穂 銀に映え                  
 
            額紫陽花 枯れ尽して 新芽待つらむ
 
             蓬の側(そば) 在りし苺や まだ萌えぬ
 
           蓬芽生え 灰緑の 叢造り
 
        藪蘭 実 零落 冬庭 寂寂
 
       冬の庭 枯れ草朽ちて 土を見ゆ
 
         萩枯れ木 黄葉(こうよう)の輝(こう)今何処
 
  
                -’昔昔 おじいさんは山へ柴刈りに、
                   おばあさんは川へ洗濯に...’
                               の昔話を想い出して
            
          萩枯れて 柴木となるも 爺は来ぬ
 
           水涸るる 婆は 川辺で託(かこ)ち顔
 
 
        大寒の朝 突き破る 暴音 酷
 
         我(あ)が棲み処 山際にあり 夜は底冷え
 
        冬夜(とうや)静寂 聴こえるは 我(あ)が動悸
 
           雪降らぬ夜 寒さや愈(いよよ) 増しにけり
 
       実生えなりや 溝底に 茱萸(ぐみ)の若木
 
        冬木立 径(こみち)の行く手 霧屏風
 
         霞籠(こ)む 冬木立 愈(いよ) 霞籠む
 
 
                  平成29年 1月7日
                      <  首>     
           奔流の 凍て水受けぬ 手痺れぬ
 
          迸(ほとばし)る 岩清水の 清冷さ
 
           水仙や 一斉咲きぬ 花壇の賑〔しん/にぎわい〕 
 
           霜枯れの寒菊 寒風 猶咲きぬ。
 
            逆光眩し 日陰に入れば 水仙の群
 
           水涸るる 溝底 冬草萌える小園
 
 
          姫椿 花弁散りて 庭侘し
 
                        -別の場処で
            姫椿 零れむばかりに咲誇りぬ 
 
           通り過ぎ 亦戻りきぬ 姫椿
 
 
        天 白雲 春めき 地 冬枯れのまま
 
             夕陽背に 丘の枯れ樹やシルエット
 
            冬の野辺 唯 荒寥 荒涼と
 
           冬木立 重なる彼方 薄霞
 
                                              冬木立 枝の間(ま)に間に夕陽洩れ
 
               冬烏 朝 飛び行く 忙し気に
 
           北颪 唸り声上げ 通り抜けぬ
 
                   -藤の枯れ蔦の間を’枝移り’ならぬ
                     ’蔦移り’している様子を見て
 
             子雀ら 枯れ蔦移り ’鬼ごっこ’? 
 
                   冬烏 鳴き飛び回る  雀ら何(いず)らへ
 
            
           満天に響く爆音 彼方に機影
 
             海満面 銀鏡の如 冬最中
 
          枯れ木立 待つ独 緑(みど) 凍て曇
 
           冬の空 雲無 青 珍し
 
               青空や 薄日(うすび)の月 昼日中
 
         白月(つ)見ずや 枯れ木()の古柿(か) 
 
                   柿(か)枯れ木()見ずや淡月(つ
 
 
            柿〔み〕乾き縮むも 枝に泰然と
 
          散歩路 枯れ木に 淡月 見え隠れ
 
         灌木の葉 葉 葉 三彩 三変化(へんげ)
 
           灌木の葉 浅緑 渋黄 濃赤紫* へ移ろいぬ
                     (*漢字一語扱い)
 
         ガラス越し差す 冬日の柔らかな
 
          ガラス窓 銀に映えぬる 冬日差し
 
        寒椿 寒威(かんい)に悴(かじか)む 白き指
 
            入日との 道連れ延ぶや 影法師の冬 
 
          夕星(ゆうずつ)冴え 辺り冷え冷え 寒暮哉