Ⅲ
<間合> と タイミング/timing
前稿 《 <間>と対人関係性 》 においては、
<間>の概念を 空間的な構成素、〈距離〉として捉え、 その対人
関係性との関わりを巡る考察・検討を、専ら、この角度からの
アプローチに絞りつつ試みて参りました。
けれども、
<間>の概念には、今一つの構成素、時間的要件を看過しては
ならないでしょう。
本稿では、 <間>の時間的構成素を、特に、タイミング/timing
と絡めつつ、考察・検討を進めて行く所存です。
そこで、手始めに、タイミングの概念の導入部として、〈距離〉だけ
では、<間>の概念を明確化し得なかった語句/用語、‹間合›を
取り挙げることに致しましょう。
言うまでもなく、此処での対人関係性の当事者は、飽くまでも、
2人。ですから、ダイアド(dyad)的関係を指しています。
ご了承下さるように。
Ⅰ ‹間合›と関連語
‹間合›は、対人関係性の当事者2人の間(あいだ)の間(ま)
に関する事象と想定されます。
この‹間合›を、広辞苑*に拠りつつ、もう少し詳しく調べますと、
* SHARP電子辞書(PW-AC920)
所収
ま-あい
【間合】
➀何かをするのに適当な距離や時機*。 あいだ。 ころあい。
「__をはかる」
* イタリックは引用者注、以下同様。
②舞踏、音曲などで調子や拍子がかわるときのわずかな休止の
時間。
③剣道などで、相手との距離。
‹間合›の構成素は、空間的な距離。
それと同時に、 時間的な構成素、時機、ころあい〔頃合い〕、そして
休止の時間が深く関わっていることに気付かされます。
‹間合›には、多様な時間的様相が認められます。 そこで、
間合の関連語として幾つかの語句/用語を挙げてみましょう。
上掲の語釈のなかから、イタリック部分を検索しますと、先ず、
時機は:
じ-き
【時機】
適当な機会。 ちょうどよい時。 ころあい。 おり。
しおどき。 「__をうかがう」 「__到来」
ころ-あい
【頃合】
➀程度。 そのぐらい。
②適当な程度。 てごろ。 「__の大きさ」
③適当な時機。 好機。 「__を見はからって」
きゅう-し
【休止】
運動・進行・活動などが、一時とまること。 また、一時とめる
こと。 「小__」 「運転を__する」
更に、
おり
【折】
➀ 〔割愛〕
② 同上
③季節。 時季。
④機会。 その際。 場合。 「___を見て」
き-かい
【機会】
何かをするのに好都合な時機。 おり。 しおどき。 チャンス。
「絶好の__をのがす」
しお-どき
【潮時】
➀潮水のさしひきする時刻
②ある事をするための、ちょうどよい時期。 好機。 時機。
「__を見て辞去する」
こう-き
【好機】
よい機会。 チャンス。 「千歳一遇の__」
き
【機】
➀ 〔割愛〕
②物事のおこるきっかけ。 はずみ。 しおどき。
「__を逸せず」 「__が熟す」 「__に乗ずる」
「__をうかがう」
③ 〔割愛〕
④ 同上
更にもう一つの関連語句:
じ-ぎ
【時宜】
➀時の丁度よいこと。 また、 その判断。 程よいころあい。
「__にかなう」 「__を得る」
以上に列挙しました語釈(の抜粋)の流れを瞥見しますと、
‹間合›は、間(ま)が、空間的概念の≺距離≻よりも時間的要素へ
移調、移行。 抜粋語釈は、時機に端を発して、ころあい【頃合】、
おり【折】、機会、潮時、好機、機、時宜とその連なりに間の時間的
概念的関連性が認められてもよいのではないでしょうか。
更に、此処で、
‹間合›に関連する語句の注目すべき特色を挙げてみましょう。
その一つとして、特に、
時機を中心に関連語句の語釈から修飾語を掬い上げますと:
’適当な’(機会);
’丁度よい’(時);
’よい’(機会);
’適当な’(程度、時機、好機);
’ちょうどよい’(時機);
’好都合な’(時機)
適当な、そして、丁度よい/ちょうどよいは、
間合の特色を修飾、表現する -- 時機を始め他の関連語の
語釈を通じても -- 必要要件として解釈されてもよいでしょう。
今一つの特色は、 語釈の用例に見出されます。
「〔時機〕をうかがう」
「〔頃合い〕を見はからって」
「〔折り〕をみて」
「〔潮時〕を見て辞去する」
「絶好の〔機会〕をのがす」
「〔時宜〕にかなう」
「〔機〕が熟す」
「〔機〕に乗ずる」
此処での文脈関係では、各成句には、動詞的要素が存在します。
例えば、「間合をはかる」--間合の語釈➀の用例 ーーは、それに
連なる動詞群が上掲の用例に覗えます。
'はかる'を調べますと、
はかる
【計る・測る・量る・図る・謀る・諮る】
❶ 〔割愛〕
❷《図・計・測・量》物事を押し考える。
〔用例割愛、以下同様〕
➀考える。 分別する。 考慮する。
②物事の内容・程度を推しはかる。
③予測する。
+ ❸《諮・計》 よいわるいなど見当をつける。
➀相談する。
②機会をうかがう。 見はからう。
❹《謀・計・図》企てる。 もくろむ。 工夫する。
❺ 〔割愛〕
「間合をはかる」の"はかる"は、《計・測・量・図》の’はかる’。
換言しますと、推測、推考、推察などの動詞、つまり認知行動を
含意するということです。
Ⅱ タイミング/timing
前節における‹間合›とその関連語句・成句を巡る広辞苑の諸解釈
及び(筆者の)恣意的解釈は、一点に集中、集約、総括されます。
即ち、タイミング/timing。
タイミングは、 広辞苑に拠りますと、
タイミング
【timing】
適当な時を見計らうこと。 時宜を得ること。
また、ちょうどよいころあい。
因みに、ジーニアス英和辞典*を調べますと、
* SHARP電子辞書所収
timing
タイミング。 好機の選択; 時間調整;(演技・打撃・
リズムの)間のとり方。 〔以下割愛〕
更に、OXHORD英英辞典へ進みますと、
timing
1. the act of choosing when sth happens ;
a particular point or period of time when sth happens
or is planned
* The timing of the decision was a complete
surprise.
2. the skill of doing sth at exactly the right time
* an actor with a great sense of comic timing
* your timing is perfect. I was just about to
call you.
3. the repeated rhythm of sth: the skill of producing this
* She played the piano confidently, but her
timing was not good.
〔引用者和訳〕
タイミング
1.何かが起こった時の選択する行為; 何かが起こった、
或いは、図られた時の特定のポイント、また、時点。
*決定のタイミングは、完全に驚きだった。
2.丁度よい時に、何かをする技能〔スキル〕
*喜劇〔を演じる場合〕のタイミングについて凄い
センスを持っている役者
*貴女のタイミングは完璧よ。私は丁度貴女に
会いに行くところだったのよ。
3. 何かの反復されるリズム; それを産み出す技能
*彼女は自信をもってピアノを弾いたが、彼女の
タイミングはそれほどよくなかった。
上掲のtimingの語釈(/翻訳)は、<間>よりも‹間合›と解釈されて
良いと想われます。 ‹間合›は、丁度良い/都合のよい空間・時間、
つまり、適度な距離(=<間>)と 時機(=タイミング)を含意します
から。
更に、‹間合›の’合い’は、timing/タイミングの技能/skillを指す
と見てよいでしょう。
重言しますと、
‹間合›は、 <間>とタイミング/timing。
そして、タイミング/timingには、今一つの要件が加わります。
時機を図る、覗う、見定める‥など 選択や決定という行動の技能
であり、 いうまでもなく、これは、‹間合›とも共有されます。
‹間合›とタイミング/timingは、時機を実現、実行するための
技能を随伴する時空的過程と想定されます。
此処で、‹間合›とタイミングの関連性についてお浚いし、確認して
置きましょう。
‹間合›には、2種の構成素、即ち、距離と時機が在り、この両者の
組み合わせが‹間合›。 <間>=距離は、どのようにそれを置くか/
取るか、その構成過程がポイント、そこに焦点が絞られます。
時機は、<間>=距離の構成過程に介入、介在する過程的技能、
そこに、タイミングが出現します。 と言うことは、タイミングもまた、
<間>=距離に介入、介在すること、 「適当な時を見はからうこと」、
或いは、「時宜をうること」の技能、そして過程を意味すると見てよい
でしょう。
ですから、
タイミングは、時機とほとんど等価的。 或る意味で、‹間合›の第3の
の構成素とも想定されます。
更に、<間>には、距離が主構成素として含蓄されますが、
‹間合›は、そのような空間的よりも時間的要素に傾斜する傾向があり、
それは、即ち、時機をさし、タイミングへの連動、関連性が示唆されて
よいでしょう。
と言うことで、これから、
タイミングについて今少しの深耕を試みることに致しましょう。
タイミングは、時の流れに介入します。
換言しますと、
テンポが注視、重視されます。 広辞苑に拠りますと、
テンポ
【tempo】
(時間の意)
➀楽曲が演奏される速度。
➁速さ。 速度。 「試合の__が早い」
テンポは、音楽用語として定着しているようですが、ここでは、日常
生活場面へ立ち還ってすこし考察・検討しますと、
例えば、対話、会話におけるテンポ、つまり、話しを進める際の
‹間>の置き方、‹間合›の取り方、引いては、タイミングの取り方を、
どんなテンポで行うか、行動を発動する 〔打って出る〕時機の遅速が
問われます。
テンポのずれは、タイミングのずれ。 タイミングを逃します。
更に、 ‹間合›におけるタイミングには、
ポーズとの関わりが覗えます。
広辞苑を調べますと:
ポーズ
【pause】
休止。中止。間。 「__をいれる」
ジーニアス英和辞典では:
pause
【原義:休止、停止】
❶〈人が〉休止する。 〔・・・するために/・・・するために〕ちょっと
止まる。《進行中の動作を一時的に中止すること》
*pause for 〔to have〕a cup of tea
お茶を飲むため一休みする。
❷〔・・・について〕ためらう、思案する。
〔以下割愛〕
ポーズを取ることは、‹間合›的文脈関係で見れば、動作/行動と動作/
行動の間(あいだ)に小休止、一時的中止を試みること、その時機を
見図ることがタイミングと想定されます。
「間髪をいれず」は、行動と行動の間(あいだ)に、小さなポーズ/
小休止すら入れないこと。即断・即決、咄嗟の動きを意味すると云える
でしょう。 ですから、ポーズを取るということは、時機を図る、タイミング
を見るということの1つ方策とになりと考えられます。
此処で、今一度、タイミングを整理、再把握を試みましょう。
タイミングには、2っの過程が特色づけられます。
* 時機/時宜の推量・推察;
「適当な時を見はからい」(広辞苑)
⋆ 実行性・実践性の見当と検討
じっ-こう
【実行】
➀実際に行うこと。 「公約__する」
➁ 〔割愛〕
じっ-せん
【実践】
➀実際に履行すること。 一般に人間が何かを行動に
よって実行すること。 「考えを__する」
➁ 〔割愛〕
タイミングは、なによりも、’適当な時’ を推し測/量り、実際の行動
を起こす実践の時機、機会を見定め、思案し、且つ、選択・決定
する過程と想われます。
Ⅲ タイミングと<間>
タイミング、或いは、「適当な時機を見はからうこと」、「時宜を得ること」
(広辞苑)は、先ずは、適当なテンポ/速度を得ること、見極めること。
つまり、時間的行動の速攻ー遅延、 〈速ー遅〉が注視されます。
例えば、
対話、会話における<間>の、タイミングの取り方は、
〈速過ぎもせず、遅過ぎもせず〉/〈早過ぎもせず、後過ぎもせず〉
と言うことと解釈されます。
’速過ぎ/早過ぎること’は、話し相手に対して、(また、自身にも)
時には、過度の緊張感を与え、強め、状況は、どの種類・タイプ、
どのレヴェルの話し合いであろうとも、硬直し易くなり、更には、
一層の困惑、混乱を招致することになるでしょう。
逆に、
’遅過ぎ後過ぎ’は、間(ま)延びを起こし、間(ま)怠くなります。
緊張感は薄れ、リラックスし、緩和し、話しのテンポは崩れること
でしょう。 話い合いのキッカケは喪失され、やはり、破局へと
導かれます。
テンポのよい対話、会話には、適度な<間>、或いは、時機、時宜、
つまり、適度なタイミングを得る、取ることから産まれます。
更に、付け加えますと、
その失敗と成功は、継続の行動状況から判断されます。
タイミング、つまり、時機/時宜を逸したことは、<間>を置くこと
を誤ったこと。 ぐずぐずしていて、情報不足で状況判断などの
ために、タイミングの選択、決定が適わなかった場合、
反対に、
好機を掴むことに成功した場合は、どのような困難に遭遇したと
しても、なんとか克服し、行動を発する機会、つまり、タイミングを
獲得した時。 会話は、心地良く弾むことでしょう。
ところで、
タイミングの取り方には、もう一つの要件、
〈遠過ぎず、近過ぎず〉があります。〈遠ー近〉の尺度です。
間(ま)延びせず、間(ま)遠くなく、 間近でなく...
ま-のび
【間延び】
➀普通より間(ま)の長いこと。
「__した拍子」
➁どことなくしまりのないこと。
ま-どおい
【間遠い】
場所または時間が遠く隔たっている。
ま-ぢかい
【間近い】
距離・時間などの間隔が近くなっている。
もうすぐにせまっている。
タイミングは、そのはかり方、取り方が、’遠’にも’近’にもどちらにも
偏らない--だらしなく、遠く隔たらない、間隔を狭めない、近づか
ない時空間の想定・構成であること、その動き、過程が、最適な
<間>を実現、実践することになるでしょう。
もう少し続けましょう。
<間>の語釈➄には: 既に広辞苑を調べましたように、
➄芝居で、余韻を残すために台詞(せりふ)と台詞の間に
置く無言の時間
と記載されています。
この場合の<間>の語釈、’無言の時間’は、‹間合›と解釈されて
よいでしょう。そして、この<間>/‹間合›の取り方を成立させる
動きが、タイミング。
台詞と次の台詞の間(あいだ)に入り、両者を繋ぐタイミングは、
’絶妙’であればあるほど、<間>は、’無言の時間’は生き、そして、
台詞に、芝居に、新たな生命が吹き込まれるでしょう。
’絶妙な’タイミングとは、タイミングの最適時。 それは、’丁度良い
頃合い、’ ’ほどよい時宜’をはかる過程を意味します。
まだ、’間に合う’ようですので、もう一言:
‹間合›には、「間に合う」と言う語句も隠れているようです。
まにあう
【間に合う】
➀ 〔割愛〕
➁定めの時刻・期限に遅れない。 「終電車に__・う」
この場合の<間>は、時機、好機、タイミングの問題です。
ぐずぐずしていれば、機会・チャンスを逃し、且つ、次の行動が
迫ってきます。 ’機を見るに敏’に行動することです。ポーズを、
小休止を置かずに。
そうすれば、「間に合う」でしょう。 ‹間合›をはかることに成功
したと言えます。
「間がある」はどうでしょう。
まだ、間があるということならば、行動と行動の間(あいだ)に余裕
があること。 余裕があれば、‹間合›をはかる、つまり、丁度
良い行動状況を選択、決定することが可能となります。タイミング
の絶好のチャンスを逃したりしないでしょう。
更に、
「間に合う」から「間を合わせる」にスライドしますと:
まをあわせる
【間を合わせる】
➀拍子を合わせる。
➁ 〔割愛〕
「間を合わせる」は、タイミングが要。 それは、拍子を合わせる
タイミング。 拍子は、当事者の産出するテンポ、ポーズに深く関わり
ます。 例えば、間延び。 もし拍子と拍子の間(あいだ)に適度の
<間>と適時のタイミングがあれば、間延びはしないでしょう。
また、相手の奏する拍子に合わせる時、この場合、相手の動き
(拍子)との兼合い、バランスを見計う結果が、’丁度よいタイミング、’
つまり、好機を得るか逸するを決定し、前者なれば、「間を合わせる」
ことが出来たのであり、後者なれば、’合わせ’られなかったと言う
ことに終止するでしょう。
Ⅳ ‹間合›とタイミング
前節では、<間>とタイミングの関連性を巡って、両者の置き方、
取り方、つまり、構成過程について、更に、‹間合›も加えて、若干の
考察・検討を重ねて参りました。
本節では、更に、続けて、
‹間合›とタイミングの取り方、構成過程についての明確化を、
今までを反芻しつつ、また、今までよりも角度を変え、視野を広げ
ながら、試みることに致します。
‹間合› そして 間隔・間隙
<間>を、今一度、反芻してみましょう。
間(ま)の特色の1つとして、間隔が挙げられます。
広辞苑に依りますと、
(以下同様です)
かん-かく
【間隔】
➀物と物との距離。へだたり。
「充分に__をとる」 「__を詰める」
➁事と事のあいだの時間。 「運転__」
間隔は、二者、物また事、の間(あいだ)の時空間的隔たり。
行動と継続する行動との間(あいだ)の動き。 この場合の間(
あいだ)は、間隙とも解釈されてよいでしょう。
かん-げき
【間隙】
➀ひま。 すきま。 「__をつく」
➁へだたり。
〔以下割愛〕
イタリック部分を検索しますと、
す-きま
【隙間・透き間】
➀物と物との間の少しあいている所。 すき。
➁あいている時間。 ひま。 てすき。 いとま。
➂乗ずべき機会。 油断。てぬかり。
更に、イタリック部分を、今一度検索しますと、
き-かい
【機会】
何かをするのに好都合な時機。 おり。 しおどき。 チャンス。
「絶好の__をのがす」
ところで、 「間合をはかる」とは --
それは、行動と行動に間隔をどのように取るか、行動と行動の間
(あいだ)の間隙をどう対処すれば、と言う課題、過程に落ち着きます。
其処には、前節で触れましたように、タイミングが介入します。
‹間合›の主要構成素は、適当な距離と適当な時機/時宜。
タイミングは、時宜に関わる間隔・間隙に生じる技能・過程。
対人関係性的文脈関係で捉え直しますと、
「間合をはかる」は、2人の間の距離、間隔・間隙見計らい、
次の行動をどのように打って出るか、実行・実践に移すに適した
機会、時機/時宜の過程と想定され、且つ、その技能が要求されます。
間隔・間隙とのタイミングは、
既述のように、前者をどのようなタイミングで対処されるかが
注目されます。
例えば、 ’タイミングが悪い、を逸した’という場合は、次の動き、
行動に出る間隔がずれている時など。 或いは、行動に出る間隙が
つかめない、見当が付かない時。
’良いタイミング’は、次の拍子を打つ時機が、ぴったり、最適。
対話、会話の流れにうまく乗って、楽しい一時を過ごすことが出来る
でしょう。
間隔は、短くも長くも。
間隙は、間(ま)に生じる隙間。 狭過ぎることも。
どちらにも、丁度よい時機、時宜をもたらす過程が、‹間合›/タイミング。
では、どのようなタイミングで?
’良いタイミング’ ’好機/good timinng ’とは?
時機と好機
タイミングは、時機・好機を掴むことが、命(いのち)。
つかむ
【掴む】
➀ 〔割愛〕
➁手に入れる。わが物とする。
➂相手を理解し、自分に惹きつけた後、離れていかないように
する。 掌握。
➃物事の要点をとらえる。 理解する。 「大意を__・む」
時機・好機を掴むには、なによりも、待つこと。 待機すること。
まつ
【待つ】
➀来るはずの人や物事を迎えようとして時をすごす。
「春を_・つ」 「できるまで_・つ」 「説明を_・たずして明かだ」
「相手の出方を_・つ」
たい-き
【待機】
準備をととのえて機会の来るのを待つこと。 「自宅__」
待つこと、待機することは、まさに、その時、その機会の到来を準備、
万端備えつつ、迎えること、対応すること。
雌伏十年
鳴かず飛ばず
千歳一隅(の機会)
上掲の成句は、全て、行動を打って出る、実行、実践する機会、
時機・好機を窺い、待っている状況を含蓄しています。
タイミングの主要件、待機・好機の特色は、繰り返しますと、
⋆ その時が来るまで、待つ、動かない;
⋆ 時の流れ/経過・過程を見る、窺うこと;
⋆ 突然、その時が開示され;
⋆ その瞬間、間(ま)が、間隔/間隙が出現します;
或る年のことです。
TVでサッカーのゲームを観戦中のこと。
選手が、ボールをゴール・ポストへ蹴り込む寸前、彼の前に、ゴール
へのルートが開かれました。 行動(蹴り)と行動(蹴り)の間に、
間隙が現れたのです。 その瞬間を彼は見逃しませんでした。
彼は、よく時機を掴み、絶妙のタイミングで彼のボールはネットを
揺らせたでした。
このような好機の獲得は、当事者の経験と勘、そして、多分、
‹気-感覚›が想定されます。
時機・好機を掴む、 一般的な基盤としては、2種類、内的と外的、
が挙げられてよいでしょう。
内的要因としては、当事者個人の主観的過程。 自身の持つ主観的
尺度。 私人的・個人的なレヴェルから社会/文化的、更には、
普遍的なものまで重層的に。
外因としては、当事者個人を取り巻く客観的環境。
狭義には、状況、場面、場合。 そして、状況次第という要素も
含蓄されるでしょう。 その都度修正されうる柔軟性も。
此処で再び反芻しますと:
‹間合›の時機・時宜は、動きと動きの間(あいだ)に、間隔を、
間隙を見る、計る、或いは、入れること。 ですから、
タイミングは、適当な機会を窺うこと。
それは、その過程は、既に示唆しましたように、時間の流れ。
意識の時間的流れ。意識時間の経緯の中の出来事。
そこで、時間を中断することではないのです。 ポーズを置くことは、
小休止を入れること。
時と時の間(あいだ)にポーズを入れることで、間隔・間隙が出現し、
次の動きを発動する余裕が産出されます。 この余裕こそが、
当事者に時機・好機を窺い、はかる(計る/図る)契機を与えると
考えられてよいでしょう。
また、
‹間合›やタイミングを窺い、計ることは、中断することではありません。
繰り返しになりますが、
‹間合›をはかり、時機/タイミングを窺う経緯、過程は、力動的。
流れる意識的時間を計る‹間合›。 ですから、中断しますと、
間(ま)も、‹間合›、タイミングも死んでしまうでしょう。 それらは、
意識の時間的流れのなかでこそ、生の輝きを放つのですから。
では、好機を掴むには、どのようにすれば、より具体的やり方の
1つとして、スパンと言う尺度を考えてみましょう。
スパン
【span】
➀ 〔割愛〕
➁ 同上
➂時間的な幅。 「長い__で考える」
span は、じーにあす英和大辞典に拠りますと:
span
➀(ある一定の短い)期間。 (時間の)長さ; (力の及ぶ)
範囲。
➁全長。 さしわたり; 全期間(範囲)
スパン/時間的な幅・範囲と言う角度から‹間合›/タイミングを眺め
ますと、‹間合›にも、タイミングにも、スパン/時間的幅・範囲は
長短、速遅、遠近 様々。
短いものは、一拍、一拍子。
殆ど瞬時。どんぴしゃ。 間延びをしない。 テンポも間怠く無く...
時間的幅・範囲は、狭い。
長い場合は、 例えば、雌伏十年。 鳴かず飛ばすの期間。
非常に長い幅・期間が存在します。 そしてそれは、勿論、
次に打って出る機会、好機を窺っている長さであることは言うまでも
ないこと。
対人関係性状況の2人の対話、会話を、スパン/範囲で捉えますと、
発言の遣り取り〔の間(あいだ)の〕テンポを遅くしたり、速くしたり、
或いは、二人の発言の間に置くポーズを長くしたり、短くしたり...
することに依って、遣り取りに適度なスパン/範囲が構成され、
提供されれば、良い時機/時宜、つまり、好機が産まれるということ
です。
外(はず)す
今までは、専ら、時機/時宜、好機を関心の対象にして参りましたが、
これからは、すこし外れて、つまり、角度を変えて、’タイミングを外す’
ことから、時機/時宜、好機についての考察、検討を進めてみること
に致しましょう。
対人関係性の当事者2人にとって、その維持、存続、発展のためには
相手と ’息を合わせること、’ ’呼吸を合わせること、’ 更に、
’調子を合わせること’の3要件が挙げられてよいでしょう。
いき
【息】
➀口や鼻から呼吸する空気。
➁ 〔割愛〕
➂(二人以上の者がいっしょに一つの事を行う場合の)呼吸。
調子。
こ-きゅう
【呼吸】
➀respiration
〔以下割愛〕
➁物事を行う微妙なこつ。 調子。 要領。
➂動作をともにする人と人との間の調子。
「__をそろえる}
ちょう-し
【調子】
➀ 〔割愛〕
➁ 同上
➂物事の動きのほどあい。 ぐあい。
‹間合›とタイミングの時機/時宜、好機を窺うには、上掲の3つの要素、
息、呼吸、調子のコンビネーション、
そして、息が、呼吸が、調子が合うこと。 を合わせること。
ハーモニーが必要です。
ハーモニー
【harmony】
➀和声(わせい)
➁調和。 諧調。
かいちょう
【諧調】
よく調和のとれた調子。 整った調子。 「__の妙」
ちょう-わ
【調和】
うまくつり合い、全体がととのっていること。
いくつかのものが矛盾なく互いにほどよいこと。
息が合うこと、呼吸が合うこと、調子を合わせることは、息、呼吸、
調子のハーモニー、諧調/調和を奏でること。その時にこそ、
適度な‹間合›、と絶妙なタイミングの出現が可能性が覗えます。
対人関係性の状況下で、
当事者二人の間(あいだ)で、会話が弾み、’息が合い、’’意気投合’
した場合、この種のハーモニーが生じます。 そのためには、適度な
‹間合›と時機、好機の演出が、産出と共に望まれます。
そして、更に付け加えるならば、その際、二人の間に何らかの
心理的紐帯が想定されます。 その最も基底に横たわるものは、
二人の間(あいだ)で体験、感得される一体感。
逆に、
息、呼吸、調子の三要素のハーモニーから外れることは、‹間合›を
外し、タイミングを外します。 ‹間合›を失念し、時機/時宜、好機を
逃すということです。
タイミングが’ずれる’ということは、打って出るタイミングが上手く
発揮されない、 どんぴしゃでなく、 絶好の機会を逸して、次の
動きや、相手の動きが、そして、全体の、例えば、会話の流れと
噛み合わない場合。
かみ-あう
【噛み合う】
➀ 〔割愛〕
➁歯車などがぴったり組み合わさる。
➂意見や考えのやりとりがうまく合う。
「議論が__・わない」
タイミングが、’ずれる’場合は、動きが上手く噛み合うように、
’軌道修正’すること。 そして、丁度好い頃合いの演出、産出を。
ですから、
動き、行動、或いは、発言のタイミングがずれると言うことは、
‹間合›を取る技能/skillの上手、下手。 下手なのです。
”タイミングが悪い、悪かった、” は、
タイミングをはかり(図り/計り)、窺うことがまずく、好機を見出せ
なかったこと。 動きと動きの間(あいだ)の間隔を上手く調整する
ことが出来ず、滑ってしまう、しまった場合。
けれども、
時によっては、外すこともあります -- 意図的に。
これは、謂わば、”高等戦術。”
例えば、メロディ・旋律が奏でられる場合。
せん-りつ
【旋律】
一連の音の流れによって何らかの心情を表したもの。
〔以下、割愛〕
タイミングを’外す’ことは、この「何らかの心情」のより深い奥義を
強調、浮彫りしつつ、所与の旋律・メロディに更なる風趣を与えようと
する時の動き。 技能 -- 高等な技能。
旋律・メロディは、このような演奏者の意図的な’タイミング外し’
によって、より一層伸びやかに、自由に、独創の世界に飛翔すること
でしょう。
<間>を、‹間合›を外す場合も同じ:
相手との適度な<間>、‹間合›を取りながら、そこへ打って出る
時機・時宜、好機を見ず -- 正確には、見乍ら見ず --
今一度の機会を窺う。 はかる(計る/図る)。
息を、呼吸を、調子を合わせながら、‹間合›の一瞬の隙を見つけ、
行動を起こす、実行、実践するタイミングが、好機。絶好のタイミング。
一拍ずらす、 一寸ずらすが、粋。
ずらす
➀すべらす。 動かす。特に、位置・時間などがいっしょに
ならないように、形や内容を変えずに動かす。
「日程を1週間_・す」
➁ 〔割愛〕
‹間合›の取り方を、大きくずらす、すべらす、動かすことが、
無粋・不粋でないこともあります。 そうして、絶好のタイミング、好機を
得るのでしたら。
巌流島の決闘。
宮本武蔵は、佐々木巌流〔通称、小次郎〕との決闘の約束の
時間に遅れました。
ぴったり、定刻に立ち会うタイミングを
外した、ずらしたのでした。
佐々木巌流は、多分、随分、苛立ち、勘を狂わせたこと
でしょう。 すっかり、平常心を失ったところで、
宮本武蔵は、登場。 まさに、絶妙のタイミング。
小次郎は、剣を合わせる決闘だけでなく、
武蔵の息、呼吸、調子のハーモニー外し、ずらし、つまり、
‹間合›の取り方に、まず、敗れてしまっていたようです。
‹間合›を、タイミングを’ずらす’は、時機/時宜、或いは、その技能を
得ながらも、つまり、状況を掴まえながら、その好機を実現せず、
他の機会を窺う、狙う際に、 一息、一呼吸、一拍ほど調子を
ずらすこと。
それを、敢えて -- つまり、意図的に、恣意的に行えるならば、
それは、タイミングを操る、操縦する技能であり、自由に 熟(こな)す
ことが出来れば、タイミングの達人、達人の芸域です。
但し、
‹間合›、タイミングの取り方が、エゴイスティック/egoisticな場合。
利己志向に駆られたタイミングは、相手のタイミングを狂わせ、
それが目的であれば、対人関係性における息、呼吸、調子の
ハーモニーは、破壊的になるでしょう。 換言しますと、当事者
2人にとって、’win-win’にならず、 一方にのみ利することに。
日常生活場面での対人関係性にある、
2人の間(あいだ)に置かれる間(ま)は、ポーズ。小休止。
此のポーズの使い方の奥深さが、好機、絶妙なタイミングを創造
するのであり、それは、やはり、当事者両方に利する、利他・愛他主義/
altruisme的なものであるべきでしょう。
対人関係性の円滑な維持、発展に必要な要素は、
‹間合›とタイミング。
それは、例えば、発言と発言の間(あいだ)、言葉の遣り取りの間に
間隔、間隙が置かれること、それは、また、<間>をどのように
使用、活用するかは、‹間合›とタイミングが要となることを意味します。
<間>は、或いは、間隔、間隙は、
空地。 余白。 虚。 無。
其処は、静止の世界、 休止であって、中断ではない世界。
この世界に生を吹き込み、呼び覚ます行動が、‹間合›とタイミングを
窺い、見はかる(図る、計る)過程。
‹間合›とタイミングをどう生かすか、それは当事者の意識過程に
掛かっています。 次節で、考察・検討を試みましょう。
Ⅳ ‹間合›・タイミングの力動
‹間合›・タイミングをはかる(図る/計る)過程、別言しますと、
それらの産出、演出という力動を構成過程と想定しましょう。
では、
どのように‹間合›・タイミングは構成されているのしょうか。
この構成過程の明確化の試みが、本節の課題です。
まず、日常生活世界へ立ち還って、構成過程に纏わる語句、
成句を掬い上げることから着手しましょう。
思いつくまま、ランダムに列挙しまずと;
⋆ 満を持す
⋆ 千載一遇
⋆ 十中八九
⋆ 静観の構え
⋆ 小手調べ
⋆ 短刀直入
⋆ 我田引水
⋆ 機が熟す
⋆ 頃合
⋆ ’満を持す’
まんをじす
【満を持す】
➀弓を十分に引いてそのまま構える。
➁準備を十分にして機会を待つ。
‹間合›・タイミングの時機/時宜は、行動に出る前に、十分な準備が
必要。 余裕が生まれる程の。
切羽詰まった、極限の状況では、‹間合›をはかり(図り/計り)、
タイミングを窺う当事者の心理的余裕は喪失、消失するでしょう。
広辞苑に拠りますと、
(以下同様です)
せっぱつまる
【切羽詰まる】
物事がさしせまる。 全く窮する。
最後のどたん場になる。
切羽詰まらないように、
周囲に十分な目配りが出来てこそ、タイミングの機会、時機、好機を
掴むことが出来るというもの。 それは、前もっての十分な準備と
余裕から結実します。
めくばり
【目配り】
よく注意して、必要なところに落ちなく目を行きとどかせる
こと。 「_がきく」 「細かく_する」
⋆ ’千載一遇’
せんさいいちぐう
【千載一遇】
千年に一回しかあえないようなめったにないこと。
「__のチャンス」
日常生活世界での普通の対人関係性では、 極めて稀なこと。
一生に一度の邂逅のような。
憧れのパーソナリティー(歌手や俳優、アスリート)と偶然居合わせた
などの場合に、握手を、或いはサインを、とお願いする時の‹間合›・
タイミングは? どのように?
通常の感覚では、はかる(図る/計る)の殆ど不可能なハプニング。
多分、’出た所勝負’で、 ’一か八’で、或いは、’成り行き任’で、
時機/時宜を選択、決定することになるでしょう。
でたとこ-しょうぶ
【出た所勝負】
ばくちで、出た賽(さい)の目で勝負をきめるように、
あらかじめ手段をめぐらさないで、その時の状態で
事をきめること。成否を運にまかせてともかくやってみること。
いちかばちか
【一か八(ばち)か】
(もとカルタ博打(ばくち)からでた語)運を天にまかせて
冒険すること。 のるかそるか。
どちらも、握手やサインをねだる‹間合›・タイミングをあれこれ思案、
計って/図っている時ではありません。 「成否を運にまかせて」、
「運を天にまかせて、」 先ずは、行動に打って出ることです。
’成り行きまかせ’にしますと、
なり-ゆき
【成行き】
➀物事が移り変わってゆく様子や過程。 また、その結果。
「__にまかせる」 「自然の__」
’運にまかせ、’ ’運を天にまかせ、’ ’成り行きにまかせ’ますと、
成否は、どちらかと言えば、失敗の危険性が高くなります。
そうなると、後込んで、萎縮して、’‹間合›・タイミングをはかる’状況は、
’お手上げ。’ もう、運を天にまかせて... 好機を掴むことです。
⋆ ’十中八九’
じっ-ちゅう-はっく
【十中八九】
10のうち8か9の割合で。 おおかた。 ほとんど。
大部分。 「生還は___のぞめない」
‹間合›・タイミングの構成確率は、上掲の場合よりもかなり高い。
けれども、正鵠を射ることは、なかなか難しいようです。
せい-こく
【正鵠】
➀弓の的(まと)の中央の黒ぼし。
➁ねらいどころ。 物事の急所。 要点。
「__を誤る」
‹間合›・タイミングの構成過程は、いつも正鵠を射ることが出来るのでは
無く、むしろ、誤ってしまう場合が多い。 気を付けねばなりません。
前節で触れましたように、時機を’外す’ことは、’ずらす’場合も含めて、
屡々、生起するようです。
⋆ 静観の構え
せい-かん
【静観】
➀静かに観察すること。 自らは行動することなく、静かに成行き
を見守ること。 「事態を__する}
➁ 〔割愛〕
かまえ
【構え】
➀くみたて。 つくり。 また、構造物。
➁準備を整えること。 思慮・工夫を十分にめぐらすこと。
「和戦両様__の構え」
➂こしらえごと。また、計略。
➃みがまえ。 身体のそなえ。 特に、武道の姿勢。
「正眼の__」
➄ 〔割愛〕
⑥ 同上
‹間合›・タイミングにおける’静観’は、
時機/時宜をはかる(図る/計る)ことはあっても、自身の側から
打って出る行動(実行)は、差し控え、状況の行方、成行きを見据える
こと、一方、’構え’は、時機を得る、打って出る時宜を得たその時の
ために、色々、思案を巡らせ、準備しつつ、’満を持して’ 待機する
姿勢を意味すると解釈し得るでしょう。
逆の場合も: ’音無しの構え’
おとなしのかまえ
【音無しの構え】
音を全く立てない姿勢・態度。 転じて、働きかけに対して
何の反応も示さないこと。
この構えの場合、こちら側が、‹間合›・タイミングの構成契機になる
ような行動を見せても、見ると、相手側は、無反応、時には、無視で
対応します。それでは、‹間合›も、タイミングも消滅の危機に瀕します。
どうすれば、ようのでしょう。 一寸動きを、相手が行動を誘発する
ような行動に出るのも、1つの手。
⋆ 小手調べ
‹間合›・タイミングの時機/時宜を知るために、眼前の状況を、当事者の
相手の様子を、探ります。 その1つの方策として、’小手調べ’。
こて-しらべ
【小手調べ】
本式にとりかかる前に、てさきの調子をととのえること。
ちょっとためしてみること。
「ほんの__にやってみる」
行動に出る前に、この‹間合›・タイミングでどうか、如何か、
当事者が自身の動きを、ちょっと披露し、相手の反応、様子を
窺い、見計らい、眼前の状況の判断の材料、根拠にすること。
それは、亦、小手先を働かして、‹間合›・タイミングをはかることも
意味するということです。
こてさき
【小手先】
手の先。 転じて、ちょっとした技能や才知。
「___が利く」 「__の仕事」
いずれにせよ、‹間合›・タイミングの発動(構成と実行)は、用心深く、
慎重に、ということです。
⋆ ’短刀直入’
たんとう-ちょくにゅう
【短刀直入】
➀ 〔割愛〕
➁余談・前置をぬきにして、直截に問題の要点に入ること。
「__に尋ねる」
この場合は、’機が熟す’ことを待たない。
言葉を切り出す‹間合›・タイミングの環境/状況造りもしない。
余談、雑談などの話合いの手始めとしての’前奏曲’や’前哨戦’も無く、
つまり、小手調べも試みずに、いきなり、本件、テーマへ切り込んで
行くやり方。
突如、出し抜けの発言なので、その結果、‹間合›・タイミングを外す
ことになり兼ね無い。 相手は、’不意襲(うち)を食った’感じで、こちらの
行動に合わせられず、狼狽ばかりが大きくなるばかり、 では、状況の
混乱を招くばかり。 こちら側も、時機/時宜を外され、外してしまいます。
’短刀直入’に切り出すには、通常のタイミングよりタイミングが必要
のようです。 ’電光石火’な...
⋆ ’我田引水’
がでんいんすい
【我田引水】
(自分の田にだけ水を引く意) 自分の利益となるようにひきつけて
言ったり、したりすること。
「その理屈は__に過ぎる」
自身の発言を、何とか、或いは、強引に、自身の望む方向へ持って
行くために、‹間合›・タイミングを図り、計り、創り出そうとするやり方。
このようなやり方は、得てして、相手の発言の機会を封じる傾向が
強く、無理強い、ごり押しを結果し、究極的には、行動を発動する機会
を失ってしまう可能性が高くなるばかり、と言えましょう。
⋆ ’機が熟す’
きがじゅくす
【機が熟す】
物事を始めるのに丁度よい時となる
機は、
き
【機】
➀ 〔割愛〕
➁物事のおこるきっかけ。 弾み。しおどき。
「__を逸せず」 「__が熟す」 「__に乗ずる」
「__をうかがう」
➂ 〔割愛〕
➃ 同上
’機が熟す’は、待ち、待機の姿勢を含意すると見てよいでしょう。
丁度よい機会が出現するまで待つということ、或いは、機が熟すように
仕向ける、積極的な攻勢を。 静観、成り行き(まかせ)とは逆の
構えでもあります。
’機が熟す’とは、少し趣を異としますが、
’雑談の効用’が挙げられます。
本件、本題へ入る前に、暫くの間軽い会話、雑談を交わします。
この経緯は、謂わば、’小手調べ’の時とも云えるでしょう。 つまり、
’機が熟す’時を、探りつつ、待っている時。
そして、お互いに気が盛り上がり、息、呼吸の合った処で、本件へ。
この過程こそ、‹間合›・タイミングを、本題に入る時機/時宜を
はかっている時。
’雑談の効用’。
一見、取り止めのない無駄話が、本件、本題へ入る≴間合›・
タイミング構成の環境/状況造りをしていると言うことです。 そして、
その過程が終わった時、終止符が打たれた時が、’機が熟した’
時と、想定されます。
⋆ ’頃合’
’機が熟す’は、或る意味、’頃合い’を見はからいつつ、その時、
つまり、適当な機会、時機、時宜、好機の訪れを待つ、よりもむしろ、
得ると言うこととも考えられます。
ころあい
【頃合】
➀程度。そのぐらい。
➁適当な程度。 てごろ。
➂適当な時機。好機。 「__を見はからって」
時機の語釈には、’適当な機会、’ ’ちょうどよい時、’ ’ころあい’が。
時宜には、’程よいころあい’が記載されています。
’頃合’には、2つの要素が抽出されます: 適当 と 程よい。
てきとう
【適当】
➀ある状態や目的などに、ほどよくあてはまること。
「_した人物」 「_な広さ」
➁その場に合わせて要領よくやること。 いい加減。
「_にあしらう」
ほどよい
【程好い】
よい程度である。 ちょうど都合がよい。
「__・い湯かげん」 「_・く煮える」
因みに、程度は:
ていど
【程度】
➀ 〔割愛〕
➁ 適当と考えられる度合い。 ころあい。 ほど。
対人関係性の状況下では、当事者2人の間(あいだ)、或いは、行動と
行動の間(あいだ)、の間隔が近過ぎる、狭すぎると、間詰まり。
時機・時宜を逸するでしょう。
間隔が、遠すぎても、離れ過ぎても、やはり、タイミングを失います
-- 勿論、既述しましたように、敢えて外すと言う’高等戦術’も
ありますが。
何はともあれ、 ’適当な機会、’が、’機が熟す’頃合い。
それは、換言しますと、’程の好い、’ ’このぐらい/この程度。’
其処では、大凡(おおよそ)の処、この辺、近辺と言う意味が隠蔽されて
ているようです。 と言うことは、
’頃合’ -- 適当な機会、時機、時宜、好機は、必ずしも、
どんぴしゃの、丁度ぴったりな場合許りではなく、凡そこの辺りと
言う曖昧さも漂うということです。
’機が熟す’のは、つまり、タイミングをはかり、その実行可能性は、
100%確実性を意味するのではないと想定されます。
Ⅴ 状況の構築
-- 或いは、判断
前節では、対人関係性の当事者2人の間(あいだ)において、
行動、発言などを切り出す‹間合›・タイミングを窺い、はかり(図り・
計り)ーー 換言しますと、構成*そして実行する過程の考察・検討
を試みました。
*因みに、本節では、‹間合›・ダイミングを窺い
(図る/計る)過程を簡略化し、’構成’として一括し、
捉えることに致し ました。 ご了承下さるように。
本節では、‹間合›・タイミングの構成、実行に必要な幾つかの
要件を探って行くことに致しましょう。
状況の判断
‹間›・タイミングは、時機の選択と決定の行為。
それには、状況の判断が必要、望まれます。
例えば、猫の写真撮影。 所謂、シャッター・チャンス、撮影の好い
機会、時機を掴まねばなりません。 そのためには:
ⅰ) 猫の生態観察。 成猫は、一日20時間以上寝ています。
動くのは、テリトリー内のパトロールと食事の時だけ。
ⅱ) 撮影者の意図、望み。
歩いている猫を撮りたいのならば、戸外へ。 眠っている猫
ならば、室内でシャッター・チャンスを狙います。どちらも、
撮影者の主観の範囲。
以上の2つの要件が合致した時、撮影の‹間合›・タイミングを
攫む状況判断が可能になります。
上掲の例解を踏まえて、状況の判断を想定しますと、
‹間合›・タイミングの構成・実行要件には、2種が挙げられます。
外的な要因と内的な要因。
外的なものは、環境的なもの。 ‹間合›・タイミングの構成当事者の
立ち位置、物理的から社会的、文化的なものまで、当事者を取り囲む
時空間。
内的な要因は、当事者の個人-内的過程。 つまり、主観的過程。
知情意に関わる意識過程、知見、知識、感情、願望、意思、意図など。
このような2種の要因を基に、総合的な状況判断が下された時、
‹間合›・タイミングの適度な選択と実行へ導かれることになるでしょう。
状況の判断は、更に、状況の把握と観察と言う当事者の認知過程を
必要とします。
広辞苑に拠りますと、
(以下同様です)
はあく
【把握】
①にぎりしめること。 手中におさめること。
➁しっかりと理解すること。 「状況を__する」
状況の把握は、気心が知れている相手の場合、無意識的。
いちいち意識をせず、状況把握をせず、理解は相互承知の上で、
‹間合›・タイミングをはかっていると見えます。
けれども、状況の把握、理解が難しい場合、ですから、‹間合›・
タイミングの構成が困難となる場合、状況の観察の用が浮上します。
かんさつ
【観察】
物事の真の姿を間違いなく理解しようとよく見る。
「動物の生態を__する」 「__が鋭い__力」
ここでの文脈関係の観察は、その対象として、当事者が相対する相手、
そして、当事者2人が織り成す関係性の状況、その経緯、流れ、成行き
などが注目されます。 その際の要請として、’物事の真の姿を間違え
なく理解しょうと’するには、客観性。
きゃっかん-せい
- 【客観性】
(objectivity)客観的であること。
きゃっ-かん
【客観】
(object)
①主観の認識及び行動の対象となるもの。
➁主観の作用とは独立に存在すると考えられたもの。 客体。
客観性には、冷静さが伴われます。
れい-せい
【冷静】
感情に動かされることなく、落ち着いていて物事に動じないこと。
「__な態度」 「__に判断する」 「沈着__」
状況の判断に必要な要件、把握/理解と客観的観察には、’感情に
動かされない’冷静さが要請されます。
と同時に、対人関係性上の相手に対し、’感情に動かされない’主観的
構え、即ち、「相手の立場に立つ、」 「相手の身になって考える」姿勢も
要請されると想定されねばならないでしょう。
此処で、ちょっと立ち止まって、状況の判断を巡って、
今一度、別の角度から、つまり、外と内の2極型ではなく、3極型での
考察を試みてみることに致しましょう。
例えば、 <天地人>。
てん-ち-じん
【天地人】
①天と地と人。 宇宙の万物。 三才。
➁三つに区分して、その順位・区別を表す語。
➂ 〔割愛〕
三才は、
さん-さい
【三才】
①(「才」は働き) 天と地と人。 三元。 三儀。 三極。
➁ 〔割愛〕
➂ 同上。
聊か乱暴、’方向音痴’的な解釈かもしれませんが、
天を、 機運。 気運;
地を、環境 -- 具体的、実際的な;
人を、 対人関係性の当事者
と捉え、順次、恣意的な考察、解釈を試みましょう。
何よりも先ず、天に注目:
てん
【天】
①地平線にかぎられ、はるかに高く遠く穹窿(きゅうりゅう)状を
呈する視界。 そら。
➁地球をとりまく空間。
➂天地万物の主宰者。創物主。 帝。 神。 また、大自然の力。
➃自然に定まった運命的なもの。 うまれつき。
➄~⑧ 〔割愛〕
語釈➃に注目しましょう: 「運命的なもの」。
うん-めい
【運命】
人間の意志にかかわりなく、身の上めぐって来る吉凶禍福。
それを齎す人間の力を超えた作用。人生は天の命(めい)
によって支配されているという思想に基づく。 めぐりあわせ。
転じて、将来のなりゆき。
本節のテーマに沿って、分かり易い部分のみを掬いますと、それは、
めぐりあわせ。
めぐり-あわせ
【巡り合わせ】
自然にまわってくる運命。 まわりあわせ。
「__が悪い」
連想し得る関連語は、天運、天命、機運。
てん-うん
【天運】
①天体の運行。
➁自然のまわりあわせ。 天与の運命。 天命。
てん-めい
【天命】
①天の命令。 上帝の命令。
➁天によって定められた人の宿命。 天運。
➂ 〔割愛〕
き-うん
【機運】
時のまわりあわせ。 おり。 時機。
「__が熟する」
色々な語釈のな冗長な列挙になってしまいました。
此処では、難解な語釈からは離れ、
’天’は、天運。 「自然のまわりあわせ」、亦、 「時のまわりあわせ」、
運命的な成行きと見ましょう。
’地’は、対人関係性の当事者を取り巻く環境。状況。 外的な、
客観的な時空間。
’人’は、 当事者自身。 自身の、特に、内的、主観的過程。 意識。
今まで、
’地’/環境 と ’人’/当事者の相互作用、相互影響について
考察・検討して参りましたが、 ‹間合›・タイミングの構成には、
いま1つの要件、天、天運 --
「自然のまわりあわせ」、 運命的な成行きが看過されてはならない、
座視してはならないのではないでしょうか。
‹間合›・タイミングの発揮は、’地’ と ’人’ ばかりだけではなく、
’天’が加わり、天・地・人の3極に、或る程度の、’適当な’調和が生起
した時、その時こそ、状況の判断が可能となると考えられます。
例えば、
人事を尽くして天命を待つ。
じんじをつくしててんめいをまつ
【人事を尽くして天命を待つ】
人間として出来るかぎりのことをして、その上は天命に任せて
心を労さない。
‹間合›・タイミングの構成には、’人’として、当事者として出来る限りの
準備、構えをし、後は、天命、換言しますと、〔大〕自然のまわりあわせ、
成行きに身をまかせ、行動を打って出る、切り出す機会を得る、と解釈
してもよいのではないでしょうか。
Ⅵ 状況の判断
-- 続き
いままで、‹間合›・タイミングの構成のために必要な要件をめっぐて
考察・検討して参りましたが、
本節では、‹間合›・タイミングの構成要件を、もう少しの深耕を試みる
ことに致しましょう。
改めて、構成要件を捉えかえしますと、それらは:
⋆ 状況の判断 -- 対人関係性の当事者が、その時、その場
の状況を見極めること。 状況の把握と客観的観察、プラス
冷静さ。
⋆ 当事者の個人的資質、傾性。 ‹間合›・タイミングには、
その時機・時宜を選択する能力、打って出る決断力、実行力が
要請されます。
⋆ 天運、気運、機運。 人知を超えた自然のまわりあわせ、
そして、
⋆ 天運、気運、機運。
これは、自然のまわりあわせ。成行きを知ること。
自然の流れ、動きを見つつ、見計いつつ、’その時’を待ち、
掴むこと。謂わば、’上昇気運・機運’を掴むこと。
下降のものは、避けるべき。‹間合›・タイミングの機会を逸します。
言うまでもなく、
‹間合›・タイミングの構成、状況の判断は、
上掲3極〔/三才〕の働きが交錯し、調和、統合した時点、地点に
おいて実現すると考えられます。
ここから、上掲3要件をもう少し明確化することに致しましょう。
先ずは、 状況の判断から。
状況は:
じょうきょう
【状況】
その場の、またはその時のありさま。 ある人を取りまく
社会的・精神的・自然的なありかたのすべてをいう。
様子。情勢。 「__が一変する」 「__を把握する}
判断は:
はんだん
【判断】
①真偽・善悪・美醜などを考え定めること。 ある物事について
自分の考えをこうだときめつけること。 また、その内容。
判定。 断定。
➁うらない。
➂ 〔割愛〕
状況の判断に必要な(下位)要件、前節で触れました把握と観察の
チャンスを図り、計ります。
では、空気は:
くう-き
【空気】
① 〔割愛〕
➁ その場の気分。 雰囲気。
此処での文脈関係でとらえますと、空気は、対人関係性という状況の
その場で醸し出される雰囲気、状況の判断材料となります。 そして
オーラも。
オーラ
【aura】
人や物が発する霊気ないし独特な雰囲気。 アウラ。
’空気を読む’は、その場の対人関係性的状況、例えば、対話、会話の
相手の(そして自身の)態度から放出されます。 相手の態度を知り、把握・
観察し、当事者が、発言を切り出し、行動に打って出る‹間合›・
タイミングを計る、図ることを含意すると言えるでしょう。
たいど
【態度】
情況に対して自己の感情や意志を外形に表したもの。
表情・身ぶり・言葉など。 〔以下割愛〕
相手の態度を知るは、例えば、相手の顔色を見ることもその1つ。
かおいろ
【顔色】
①顔の色。
➁感情を表している。 表情。 機嫌。
かおいろをみる
【顔色を見る】
相手の表情を見て、その思いを推し測る。 顔色をうかがう。
顔色を読む。
'顔色を見る’は、日常生活世界では、屡々、否定的なニュアンスを帯び、
マイナスの評価を受けています。けれども、対話、会話において、
相手の非言語的な表情や身振り、つまり、態度を把握、観察し、‹間合›・
タイミングを窺い、はかる(計る・図る)契機とすることは、決して無意味
ではない、むしろ、有効な手法の1つでしょう。
‹間合›・タイミングの構成に必要な状況の判断の要件には、
当事者の資質、傾性があります。
⋆ 当事者の知・情・意。
個人/私人的な意識過程。
知は、知識(の蒐集)や知的活動。 つまり、外的環境について
獲得した情報、整序、構築した知識体系を客観的な状況の
判断資料にすること。
情は、感情、情緒などの個人主観的なもの。
’情’的なものは、’知’的なものに彩りを与え、昇華させますが、
同時に、要注意なのは、其処に、先入観、偏見、独断などが
入り込み、適切、且つ公平な状況の判断を狂わせてしまう
可能性が忍びこんでしることです。
意は、 まさに、状況の判断力。 判断過程。
それは、当事者の意志、意思、計画、企画/projectなどを、
更に、行動の未来(目的)の可視化も含意し、選択と決断、
意思決定も。
⋆ 当事者の選択、決断(力)、及び、実行・実践。
せん-たく
【選択】
①えらぶこと。 適当なものをえらびだすこと。 良いものをとり、
悪いものをすてること。 「好きなものを__する」
「取捨__」
➁ 〔割〕
けつ-だん
【決断】
①きっぱりときめること。 「__を下す」 「即坐に__する」
➁善悪、正邪の採決をすること。
けつだん-りょく
【決断力】
判断に迷う場面で、一つに決められる能力。
じっ-こう
【実行】
①実際に行うこと。 「公約を__」
じっ-せん
【実践】
①実際に履行すること。 一般に人間が何かを行動によって
実行すること。 「考えを __に移す」
➁ 〔割愛〕
‹間合›・タイミングの構成のための状況の判断においては、
選択は、躊躇うことなく、あれこれと迷うことなく、 選び兼ねることなく、
きっぱりと決める決断力が大切。 ぐずぐずしていますと、折角の
好機をふいにしてしまうます。逸します。
’ここぞ、’ ’この時’と決断、判断を下し、実際的な行動をとる、つまり、
実行・実践することこそが、‹間合›・タイミングの構成の要となるのです
から。
好機を掴むには、当事者は自然体、 無為、自然で。
しぜんたい
【自然体】
①ごく支援に素直に立った身体の構え。 特に柔道でいう。
➁特別につくろった緊張したりすることのないありのままの姿。
むい
【無為】
①自然のままで作為のないこと。 老子で、道のあり方をいう。
ぶい。
➁ 〔割愛〕
➂ 同上
好機を掴むと言うことは、自然な、無為な、ありのままの構えで行うこと。
人為的に、つまり、無理に、強引に、正当な状況判断を捻じ曲げてでも、
機会を捻出しようとすることでは、ない。 飽くまでも、何処までも、有の
ままが良しとされます。
構えとしては、その場の状況の動き、流れ、成り行きに添う態度。
それは:
天では、天運、機運、気運。
地では、外的環境。 目下の状況。
人では、直感、第六感、気-感覚。
三者の塩梅が、構えを造り出します。
あんばい
【塩梅・按排・按配】
①塩と梅酢で調味すること。一般に、料理の味加減を整えること。
また、その味加減。 「__を見る」
➁物事のほどあい。 かげん。 特に、身体の具合。
➂ほどよく並べたり、ほどよく処理したりすること。
「材料をうまく__して話す」 「仕事の__を考える」
⋆ 天の声。
状況の判断には、時には、或いは、究極的には、
’天の声’に耳を傾けることが必要となります。
てんのこえ
【天の声】
天の考えを人に告げる声。
’天の考え’は、既に指摘しましたように、対人関係性の状況では、
自然のまわりあわせ、成り行き。 ’人に告げる声’は、予兆、前兆。
聞き取る人は、状況の当事者であり、その力は、直感、第六感、
そして気-感覚。
よちょう
【予兆】
あらかじめ現れるきざし。 事のまえぶれ。
ぜんちょう
【ぜんちょう】
事が起ころうとする前ぶれ。 まえじらせ。 きざし。
「大地震の__」
‹間合›・タイミングの構成のため状況の判断をすることは、何よりも、
’その時’を知ること。 運命のまわり合わせには、何らかの予兆、前兆が。
つまり、 ’その時’には、予めそれを知らせる兆し、予兆、前兆が現れ
ます。この前触れを、抜かりなく、しっかりと掴むこと。
掴むのは、当事者の直感、第六感、そして、気-感覚。
ちょっかん
【直感】
説明や証明を経ないで、物事の真草を心でただちに感じ取る
こと。 すぐさまの感じ。「__を働かす」 「__的に知る」
だいろくかん
【第六感】
五感のほかにあるとされる感覚で、鋭く物事の本質をつかむ
心のはたらき。
通常の状況判断は、五感覚で十分なと想定されますが、けれども、
’天の声’に関しては、直感、第六感、更に、気-感覚で応えねばなない
でしょう。 気-感覚による天ばかりでなく、地・人の把握も時には、
必要となります。
気-感覚を巡る考察・検討は、拙稿《気-感覚と息遣い》で
試みましたので、此処では、敢えて省略致します。 ご了承下さい。
因みに、
状況の判断には、その基底に臨機応変さと柔軟さが認められます。
りんきおうへん
【臨機応変】
機に臨み変に応じて適宜な手段を施すこと。
「__に対処する」
じゅうなん
【柔軟】
やわらかなこと。 しなやかなこと。 「__に対処する」
⋆ ’その時’
状況の判断を下すまさに’その時’の’判断’に、対人関係性の当事者は、
迫られます。 何時が、’その時’ なのでしょうか。
時は、
とき
【時】
①過去から現在へ、さらに未来へと連続して、とどまること
なく過ぎゆく現象。 月日の移りゆき。 時間。 光陰。
➁~➃ 〔割愛〕
➄特定の時期。
㋐その場合。そのおり。 当座。 「__と所をわきまえる」
㋑大切な時機。重大な時期。
「国家存亡の__」 「別れの__が来る」 「__に臨む」
㋒よい機会。 好機。「__が来るまで待と」う
㋓その場かぎり。 一時。臨時。 「__借り」
➅ 〔割愛〕
➆ ㋐時勢。 世のありゆき。 「__の動き」
㋑時勢にあうこと。 栄える時分。盛りの時分。
「__にあう」 「__を得る」
⑧~⑩ 〔割愛〕
時の語釈㋒には、機会が挙げられています。
’その時’は、機会と解釈されてよいでしょう。
きかい
【機会】
何かをするのに好都合な時機。 おり。 潮時。
チャンス。 「絶好の__をのがす」。
チャンスは、chance。 ジーニアス英和辞典に拠りますと、
chance
❶(特に好ましい)見込み、公算、可能性; 形勢。
❷(偶然の)機会、好機。
❸偶然;運(命);めぐり合わせ; 偶然の出来事。
❹~➐ 〔割愛〕
’その時’に絡む’時’は、大切な時機。 よい機会。
機会は、好都合な時機、chanceは、好ましい見込み、機会、好機、
運、めぐり合わせ。
いずれにせよ、 ‹間合›・タイミングを構成するための状況判断には
欠かせない材料と想定されます。
更に、状況の判断には、既に触れましたように、‹間合›・タイミングの
構成に必要な要件の1つ、待つことが挙げられます。
待つは、 時、機会、時機を待つ。 待機。
たい-き
【待機】
準備をととのえて機会のくるのをまつこと。
「自宅__」
待機には、 時機到来。 時期尚早。 機が熟す。
とうらい
【到来】
①こちらへやって来ること。 機運などの向いてくること。
「時節_」_
➁ 〔割愛〕
じきしょうそう
【時期尚早】
それを行う時期にはまだなっていない。
きがじゅくす
【機が熟す】
物事を始めるのに丁度よい時となる。
時機、時期を、時として捉え直しますと、
ときにあう
【時に遭う】
好時機にめぐりあう。 世に用いられて栄える。
ときにあたる
【時に当たる】
その時にさしあたる。 時に臨む。
ときをうる
【時を得る】
好時機にめぐりあって栄える。
ときをうしなう
【時を失う】
①好機を逃す。
➁時勢にあわず、勢力が衰える。 おちぶれる。
ときをみる
【時を見る】
適当な時機が来るのを待つ。 好機をえらぶ。
「時を見て反撃に出る」
状況の判断においては、’その時’を知ることは、待つこと、待機すること。
それは、その時に’さしあたる、’ ’臨む’から、’好機にめぐり合い、’ 選び、
或いは、’逃す。’
つまり、’適当な’時機が来るのを待つということ。
では、好機、適当な時機とは、
適当は、適宜、適度に繋がります:
てきとう
【適当】
①ある状態や目的などに、ほどよくあてはまること。
「__した人物」 「__な広さ」
➁その場に合わせて要領よくやること。いい加減。
「__にあしらう」
てきぎ
【適宜】
①その場合・状況にぴったり合っていること。 適当。
「__の処置」
➁便宜に従うこと。 随意。 「その辺のところは__でよい」
「__休みをとる」
さいてき
【最適】
最も適していること。
「彼に__の役」 「行楽に__なシーズン」
てきど
【適度】
ほどよいこと。 適当な程度。「_に_冷やす」 「__な運動
対人関係性的場面の状況判断には、最適、適宜よりも、適当、
適度のほうが、当事者双方にとって有効な時機、時宜、好機を招致
するように考えられます。
その内実は、’ほどよいこと。’ ’ほどほど’であること。
それは、程よい、 程程。
ほどよい
【程好い】
よい程度である。 ちょうど都合がよい。 「__・い湯かげん」
「__・く煮える」
ほどほど
【程程】
① 〔割合〕
➁ ちょうどよい程度。 適度。 「__にしておく」
当事者の一方にとって最適の選択・決定であっても、 他方には、
最悪の場合ということもあり得ます。 双方にとって、'win-win'で
あることが望まれる、望まれるべきでしょうから。
対人関係性下の当事者による状況の判断は、やはり、適当、適度な、
換言しますと、「程好い」、「程程(ほどほど)」の辺りーー時点、地点に
落ち着くことが、 適当、適度でしょう。
それこそが、状況判断、引いては対人関係性の維持・発展の
奥義/こつではないでしょうか。
こつ
【骨】
① 〔割愛〕
➁芸道などを会得する才能。
➂骨法の略。 礼儀・故実などの作法。
➃(多く「こつ」また「コツ」と書く)物事をなす、かんどころ。
要領。急所。呼吸。こつあい。 「__を呑み込む」
‹間合›もタイミングも、<間>と同様、踏み込めば、踏み込むほど、
混沌・渾沌。迷路、迷宮へ迷い込んでしまうばかり。
このように極度に不明瞭な視界を、晴らして下さる方の出現を
心からお待ちしております。
団野薫 拝