団野 薫
 団野 薫
  
                                                    平成29年1月8日
                                 <18首>
            寒椿 寒威(かんい)に 悴(かじか)む 白き指
 
         冬烏 辺り冷え冷え 寒暮の声
 
         夕星(ゆうずつ)冴え 辺り冷え冷え 寒暮哉
 
         絶え絶えに 脚引き摺りぬ 寒苦の坂
 
 
         入日と道連れ 延ぶ 影法師の冬
 
        冬景 寂寥(せきりょう) 自然の成り行き
 
        冬景 荒寥(こうりょう)諦観の夕昏
 
          
          壁を這い 伸び行く蔦や 背比べ
 
         藤棚の枯れ蔓渡り 雀ブランコ
 
         木下闇(こしたやみ)蠢くは何ぞ 朽ち葉下
 
          木下闇 隠微なオーラ 放ちおり
 
         冬日向 寒風も 春の柔らか
         
            思わずに 双葉踏み掛けぬ 春隣り
 
         桜枯木 梢芽吹きぬ 春の先駆け
 
         
         青空や 鵯(ひよどり)一声 春近し
 
          鵯一羽 屋根に止り来たり 凍て曇り
 
 
         残菊の長寿祝いぬ 寒の入り
         
               寒の怪獣 猛々しき朝 寒の入り
 
 
                     平成29年 1月9日
                         <25首>
 
            寒の入り雀も飛ばぬ 朝厳し
 
           枇杷の花咲くや 萎みぬ 寒の入り
  
          寒の入り 冬草震え 我(あ)も震え
 
         寒の入り 闇夜に灯 三つ 二つ
 
                外も鬱 内も鬱なり 寒の入り
 
 
          何もかも 鬱鬱と沈みぬ 冬の暮れ
 
           雲鈍色 茜に光る 冬の海
 
                雲鈍色 茜の冬海 蕭条(しょうじょう)
 
          冬雨の雫 枯れ木の梢 光る庭
 
            枯れ木の梢 雨粒の花盛り
 
          しんしんと 静か 寒夜に雪 降りぬ
 
         雪の朝 花なき梢 花の咲き
 
          悴む手 白き息 小寒の朝
 
          冬木影 青草の生う 小径(こみち)あり
 
              葉隠れの苔 枯れ葉色 雨なくば
 
              
          零雨 (れいう)そぼ降り それぞれしょぼくれ
 
           冬木風(ふゆきかせ)梢の枯れ葉 舞い散りぬ
 
             冬木風 吹かれて落ち葉 転がりぬ。
 
 
          百合鷗(ゆりかもめ) 飛来の池や 想い出の地   
 
 
           あらざらむ この世の花の あらまほし
 
 
            降りしきる 零雨 冬木を 零落す
 
          零雨止み 冬庭仄か 日和あり
 
           浮雲 流れ 枯れ芒揺れ 冬の暮れ
 
          枯れ木と緑 織り成す山々 冬模様
 
 
          冬木陰 路覆いぬ 蕭条
 
 
                平成29年 1月 10日
                          <25首>
            氷雨 明くる日の坂 転ばぬように
          
          零雨は 霊雨? 冬草悉皆 青々と
 
               落ち葉掃き せむとや庭に出 日向ぼっこ
 
           冬の空 仏の綴れ(/仏の座)此処に咲き
 
                   咲き残る 犬鬼灯(いぬほうずき)の花 愛し
 
                     枯るる庭 犬鬼灯 独り 花と緑
 
               水仙に出会う楽しみ 路すがら
 
               木瓜の花 果てぬ寂しき 冬の園
 
             椿晴れ 残菊打つや 片時雨(かたしぐれ)
 
           冬青空 浮かぶ彼方や 蝶々雲
 
                  冬山路 猪も出ぬ 寥寥
 
             寒雨止み 日差し眩しき 光る庭
 
 
 
            月耿耿 叢雲仄か 冬の小夜
   
                   月やあらむ 窓開け探す 寒満月
 
                    黄金より黄金な満月 寒夜哉
 
           耿耿たる冬空 満月 星二つ
 
               物音せり 寝覚めぬ寒夜 聞き耳たて
 
         
           冬の宵 犬の遠吠え 一頻り
 
            夕烏 飛ぶ 高く低く 寒の空  
 
             
            冬曙 淡藍の空 茜立つ
 
               柿残り 柿色映える 冬茜
 
             日一日 日差しの延ぶや 春の調べ
 
               日一日 冬の日差しの 強まれり
 
            枯れ芙蓉 枯れぬるも尚 枯れ果てず
 
            枯れ芙蓉 実枯れぬれど 風趣あり
 
 
           
                    平成29年1月11日
                                                                                              <21首>
      冬凪来 辺り辺りは 長閑(のど)けき気
 
       外出に コート忘れぬ 冬穏やか
 
      冬時雨 椿濡れ 且 輝きぬ
 
       左側 窓を開ければ 蝶々雲
 
           蝶々雲 水仙知るや 雨予兆
 
        冬茜 はや日沈みぬ 夕闇来
 
      寒月や 凍るる星影 冬深し
 
         冬日和 猫 日向ぼっこ 塀の上
 
          山眠る 空鈍色 樹木沈みぬ
 
          万両の朱き実 垂れり 庭の奥処
 
          名に負わぬ 万両の奥床しさ
     
          鵯 いつも番(つがい)で飛び来 枯れ木の枝
 
      冬日向 葉椿 色付き 黄 橙
 
         橙の実 網被されおりぬ 猿来るや
 
      石畳 若草千草 ここは春(/春景色)
 
       雪柳 朽ち葉散らして 枝透かしぬ
 
       南天や 愈茂れり 冬日和
 
        龍の髭 ミントに追われて 疎ら生い
 
      草珊瑚 朱き実集い 春待つや
 
       霧笛 出航 船 何処の港へ
 
        薙ぎ渡り 万象 無動 冬の夕
 
                   平成29年 1月12日
                      <29首>
       窓ガラス 碧空 白雲 春景色
 
        現の証拠 小さき手(葉)差し延べ 春呼ぶや
 
         枯れ枝の 枯れ葉の照葉 秋や再来
 
       雪柳 枝枝芽生えぬ 朽葉果つれば
 
                枯れ葉果て 雪柳の枝(え)芽生えそむ
 
       枯れ芒 残るる草刈り 胸痛み
 
        寒林や 蝶と見紛ふ 木の葉舞い
       
         初空月(はつそらづき) 寒灯震え 身震え
 
          凍て颪 頬刺す 睦月の月は冴え
 
        初春月(はつはるづき)凍て満月に 凍て兎
 
         初空月 月冴え冴え 庭冷え冷え
 
           満天の 月冴え渡り 山眠る
 
        寒林や 風一陣 朽ち葉舞う
 
        山颪 小径 落葉駆け抜けり
 
         風騒ぎ 枯れ葉坂路 駆け下りぬ
            
         固執せず 枯淡貫きぬ 老いの坂路
            固執せず 枯淡の境地 老いの冬
 
        寒庭の 寂寥解きぬ 春のオーラ
 
        風騒ぎ 白雲流れ 冬時雨
 
          日短し 長き日もあり 冬真中
 
         冬籠り 独り遊びの カルタ哉
 
        山際の寒灯 闇夜の標(しるべ)や
 
         寒灯が標の夜路 戦々恐々
 
          溝の壁 苔時雨色 時雨後
 
          冬日差し 白雲光りぬ 真珠雲
 
             春 庭へ訪い 待つは 久しからず
 
          庭のロゼット さ緑増しぬ 冬麗ら
 
           根生葉(ロゼット)さ緑美(うま)し 庭に生う
 
               春待てず 咲いたのかしら 源平小菊
 
 
                    平成29年 1月 13日
                           <21首> 
             冬若草時雨心地に 時めくや
 
          夕星(ゆうづつ) 独り 月未だ出でぬ 冬の宵
 
        門灯のちらほら明かりぬ 暮れ早し
 
         庭に出で 小探梅 花一輪 蕾(らい)ばかり
 
          凪となり 光 長閑けき 冬の庭
 
       稜線の 上 茜色 下 墨絵
 
        千切れ雲 ふわり柔らか 春に乗り
 
          空碧く 千切れ雲白く 春の色
 
                千切れ雲 冬烏 二羽 北山へ
 
         夕茜 暮れ早む 枯れ庭 夕眺め
 
       長々と何処まで延ぶや 午後の日脚
 
        日脚延ぶ 初冬の候より 三倍増
 
          侘びぬれば 枯れ庭の草木 しんしん(深深/沈沈)と
  
          侘びぬれば 冬烏の声 物悲し
 
        溝に生う アディアンタム 消えたり 寒の中
 
           と思いきや 溝*の間違い かん(寒/勘)の違い
                    (*他処の溝と取り違え)
          
        ぐるっ ぐるぐるー 土鳩の声や マンション屋上 
 
        寒気に震えつ 素描するや 寒菫
 
             寒菫 今咲かむとす 蕾あり
 
          長葉の菫 昨年(こぞ)の何時に消したのやら
 
         ハート形の葉の菫 姫〔菫〕や匂い〔菫〕や
 
        寒菫 萎るる側(そば)に 新しきが
 
           匂菫 何処にや咲かむ 誰(た)や知らむ
 
      
                   平成29年 1月 14日
                         <29首>
      姫菫 黄葉そのまま 寒の中
            寒中に 黄葉の匂い菫 風趣あり
 
         姫菫 あらざられば 恋し 冬の路
 
          匂い菫 今一度の 邂逅を
 
           祈念通じぬ 匂い菫 見つけたり
 
         春や春 菫 何処(いずこ)に 咲くらむや
 
        北 曇天 南 晴天 此処 風花
 
        枯れ木透かし 銀色の日差し 冬深し
 
         松葉海蘭(まつばうんらん)蔦と 春待つ二重奏
 
       葉は菫 花は石蕗(つわぶき)名は何と
 
        寒風に 枯れ葉転びぬ 冬の暮れ
 
          寒風に 抗い進み 乱れ髪
 
         藤 蔦悉く刈られ 春や如何
 
       プラタナス 枯れ木や 斑の緑と淡灰
       
         精彩欠けり 寒園の スペアミント
 
            風花舞い 身構える我(あ) 水仙悠揚
 
          風花舞う 大雪の兆し ならぬことを
 
         風花舞い 雀飛び行く 慌し
 
        山眠る 海眠る 空冴え冴える
 
         濃緑の松葉の彼方 海眠る
 
             四方 八方 空探すなり 声の主
 
        葉牡丹や トリミングされ 凛々しき風姿
 
         冬青草夫々 枯れ葉を防寒着
 
           枯れ木立 靄煙る山々 奥景色
 
         果つることなく咲く 犬鬼灯(おにほおづき)愛し
 
         寒椿咲くや 白花 雪や呼ぶ
 
          頬撫でる 風 冷と暖 春の息吹
 
           鬼田平子(おにたびらこ)寒の溝底 揃い咲き
 
         鬼田平子 五輪(いつりん)咲ぬ 春待てずや
 
  
                 平成29年 1月 15日
                                                                                       <19首>
         菊野老(きくどころ)黄葉すれど 衰えてぬ
 
         穏やかな 春色の風 庭真冬
 
         菊野老(きくどころ)黄葉するも 枯れ果てぬ
 
          水仙の小叢 見つけり 岩陰に
 
          庭の枯草 日に照り 光り 春めきぬ
 
           風戦ぐ 木の葉柔らか 暖か色
 
        冬晴るる 朝 風花も見ぬ 暖
 
          大雪の予報外れも 雪備(もよ)い
 
           雪降る夜 雀何処で過ごすらむ
 
            寒風や吹き荒びぬるも 内は暖
 
           寒風に 戦ぐ草木(そうぼく) 凍れる大地
            
          満天に輝く星屑 夢泡沫(うたかた)
 
          日射しぬ 寒椿の 葉葉 光る 緑
 
               冬日射し 濃く強き哉 昼下がり
             
            風花 光る 真昼のスター・ダスト
 
          犬鬼灯 真冬にも咲きぬ 萎れつも
 
              雪心地 庭の犬鬼灯 如何にあらむ
 
                凍て空に 風花 冬の風物詩
 
                  春心地 誘われ出でれば 寒最中(もなか)
 
  
                          平成29年 1月16日
                                 <24首>
          雪の朝 キッチンのキャベツ 割れおりぬ
 
             割れ甘藍 破顔一笑 の如見えぬ
 
             雪の路 人影のなく 足跡も
 
            雪の路足跡のなく 沈まりぬ(/沈沈と)
 
                   - 何時だったかの”大雪”の朝を
                         想い出しつ
           掻き集め 小いさき小さき 雪達磨
 
            南天の 葉で耳 実で目 雪兎
 
             雪掻きに 燥(はしゃ)ぐ童ら 歓声 響く
 
          しんしんと 雪降り続きぬ しんしんと
 
            室内2⁰c 室外零下 冬の朝
 
              窓の外 庭悉皆 冠雪(かむりゆき)
            
           椿の葉 雪冠りせぬ ふんわりと
 
            枯れ庭の 残り尾花や 雪冠り        
             
              寒雀 雪置く庭に 餌探し 
         
           真昼には 雪解け始むる 儚くも
 
           粉雪止む 晴れ間に続き 牡丹雪
 
          牡丹雪 積もると想えば 消え果てぬ
 
            碧空を見しと思えば 細雪
 
           雪解けぬ 日差しの優し 初春の空
 
              と思うに 牡丹雪 また 繁し
 
            雪解けぬ 庭に未だまた 冠り雪
 
          犬鬼灯 雪除け菰(こも)なく 雪に耐えぬ
 
             犬鬼灯 よく耐えたのネ と雪下ろし
 
          外は雪 蜜柑剥く 手の冷たき哉
 
           雪見しつ 蜜柑剥きつつ 炬燵守
 
    
                     平成29年 1月17日
                             <16首>   
        雪降りぬ 十数年ぶりの 雪眺め
 
            空模様 雪解け 且 降り 猫の目の如
 
           青空に 細雪舞い 光る 妙
 
               粉雪の後 牡丹雪  細雪
 
             見渡せば 何処(いずく)屋根も 雪冠り
 
         雪の朝 庭 山々も 薄化粧
 
          今朝も また庭雪化粧 大寒哉
 
           路も庭も 冠雪や 斑雪(はだれゆき)
 
         雪解けぬ 細雪なく 夕凪 夜風
 
          雪に耐え 霜枯れましぬ 根生葉
 
             雪消えぬ 道路は元のままとなり
 
           雪解けぬ 日差し戻りぬ 空碧く
 
             雪解けぬ 今は眩しき 日差し哉
 
        碧き空 輝き光りぬ 枯れ庭にも
 
         雪の庭 犬鬼灯 鮮緑の実 実
 
           背高泡立草 とうとう越年 春見るらむ
   
          
                    平成29年 1月18日
                          <18首>
        寒の朝 庭 残り雪 空 月白
 
          ミント枯れぬ 冬の華の面影なく
 
              ミント哀れ 霜枯れ増しぬ 積雪後
 
          積雪 1センチ 3時間 我(あ)が庭 大雪
 
            雪解けぬ 枯れ庭 泰然自若なり
 
          苔 雪冠り受け また せい(生/青)受けぬ
                 
            苔乾き 枯れ初めぬ 凍て空 遺憾
           
          山々の常磐樹(ときわぎ)雪冠り 朝日に映えぬ
          
         窓の外 濃藍の空 月冴えぬ
  
          明かり消せば 空曙 月白き
 
           細雪舞う銀色に 日差しあり
 
        雪の明日 路 斑模様の雪絵哉
 
         ひしひしと 冷え込む小夜や 明日はまた雪
 
          零下の朝 水溜まり 氷の銀盤に
 
        山眠る 初雪のブランケット掛け
           
         枯れ木に鵯(ひよ)二羽 肩寄せ合い 何語る
         
        水仙や 花茎折れおり 雪折れや
 
         雪折れの水仙 フェンスへ片寄りぬ
 
 
                                                                                平成29年 1月19日
                             <14首>
      皐月躑躅(さつきつつじ)の下 現の証拠も 雪冠り
 
        犬鬼灯 雪冠りし 花凍えぬ
 
         凍えるとも 青き実残せり 犬鬼灯
       
        冬籠り ぐるぐる居間を 回り灯籠
 
        三冬月(みふゆつき)空碧く 冴え渡りぬ
 
         日脚 また延ぶ 冬麗(うらら)
         
          冬日差し 長し 濃し 強し 日短し
 
          ー 淡路島の水仙の郷の写真を見つつ
         海望む 水仙の郷(さと) 島の影
 
           暖冬の大寒なりと 〔気象〕予報士 云いい
 
          一寸先 見えぬ吹雪や 立ち往生
       
            吹雪く夜 独り ひっそり 籠りおり
           
               足跡の 続く月夜の 雪の路
 
           雪達磨 昼 目鼻垂れ 夕消えぬ
 
             見上げれば 暗雲垂れぬ 雪や運ぶ
 
 
                     平成29年 1月20日
                         <24首>
         足掬う 吹き上ぐる寒風 谷間より
 
           冬日差し 暖かなるも 日陰 寒し
 
          三色菫 寒風に晒され 寒からずや
 
         松の内 過ぐるとも未だ 花 葉牡丹
        
           仏の座 寒風に咲く 塀の隅
  
          鈍色雲 雪模様なり 帰り路
       
             凍て風や 人 急ぎ足 路深閑
 
           急ぎ足 あちこち コツコツ 響きおり
 
           人影あり 一斉飛び立つ 寒雀
 
          木蓮や 梢 梢に 芽吹きあり
 
           枯れ木に雀 と見しや 枯れ葉 一葉
 
             冬型の菫* ますます 叢(むら)造り
                    (*菫の葉は、春と秋 冬とで
                      形が違い、冬は丸形)
 
           雀 梔子(くちなし)の生垣へ 飛び込みぬ
                    〔追われたか〕
 
        凍て空や 水仙光り 芳香放ちぬ
 
         彩雲を見しや 暗雲 雪備(もよ)い
 
           崖の上 下も水仙 萎みおり
 
       栗枯れ木 落ち葉に 乾いた毬(いが)一つ 
 
        凍て空 凍て雲 寒風 冬厳し
 
          枯れ木の柿 落ち果ておりぬ 紺碧の空
 
        枇杷の花 凋むもあれば 実も結び 
 
          枇杷 はや 青き実付けぬ 冬最中
 
               水仙や 生垣より出ず 意気軒高
 
        薄氷 張りぬキッチン 凍ての朝
     
         我(あ)がキッチン 零下の世界 野菜凝り
 
 
                                                            平成29年 1月 21日
                           <18首>
         凍て空や 凍てつく頬 睦月の朝
 
         薄氷 割り触る 童の赤き指
 
          
           アディアンタム 霜枯れよそに 友(叢)増やしぬ
 
          根生葉 雪に萎れて(しなっとなりて)冬の浅漬け
 
        降っては消え 消えては降りぬ 牡丹雪
 
              牡丹雪 降っては消え 降っては消え
 
        霙(みぞれ)降りぬ ガラス窓や 水滴模様
 
             ガラス窓 水玉模様や 霙の跡
 
        音も無く 冠雪落つ 寒椿
 
         微風(そよかぜ)に 戦ぐ樫葉の 露散りぬ 
         
           枯れ枝や 露光り 雫 ぽとり
        
        牡丹雪 空見えぬまで 降り頻り 
 
         南天の露散りぬ 微風の度 
 
          風花舞い 雀飛び交う 庭凍え
 
           風花の次 霙 且 雪 朝日射す
 
            不意を突く 空に轟く 冬の雷(らい)
 
          風花の 霙(みぞれ)に移ろいぬ 空変化(へんげ)
 
         冬 霙〔氷雨〕夏 霙〔欠き氷〕遠き想い出
 
          底冷えの夜 打ち続きぬ 終わるは何時
                     (もう 耐え難いき)
           朝まだき 風の音にぞ 寝覚めぬる
 
 
                     平成29年 1月 22日
                         <20首>
         大雪予報 身構えれば 細雪
 
         太陽燦燦(さんさん) 雪降りぬ後の庭
 
           明くる朝 満目 雪の薄化粧
 
              犬鬼灯 雪に耐えてね と エール送りぬ
 
         降りては止む 雪 草木 如何にあらむ
 
          雪降りぬ 日差しに解けぬ 斑の景
 
        霙(みぞれ)消え 路濡れ 光りぬ 人通らむ
 
         濃藍の空 星一つ 予報 雪
 
           しめ飾り そのまま置かれぬ 睦月の末
 
          雪解けぬ 碧空 綿雲 春模様
 
             南 春色 北 雪の霞籠み
 
          空晴るる 日差し穏やか 雪消(ゆきげ)の庭
 
        斑(はだれ)雪 青草 遠近(おちこち)姿見ゆ
 
          また降りぬ 今度(こたび)幾度の雪ならむ
 
           雪冠り 要黐(かなめもち)新芽 紅重ね
 
            雪冠り 薄きといえども 打ち続けば 〔もう うんざり
            雪の小夜 草木想えば 〔心〕千々に乱れ
     
         南天の朱き実 雪冠り 冬のコントラスト
 
          篠に雪 冬の風姿や 溢れおり
 
           ライラック 雪被る風姿 日本画の景
  
                                                                       平成29年 1月 23日
                         <20首> 
            雪降らぬ 日差し 眩しき 昼下がり
 
             雪降らぬ 額に差す日や 眉顰(しか)め 
               
            曇天や 晴れ間望めば 雪心地
 
          雲どんより 雀も飛ばぬ 雪備(もよ)い
 
            冬の夜の長々しきを 寝覚めぬまま
 
             長長しき冬夜 寝覚めつ 過ごしけり
 
           今の音 風やバイクや 冬夜明け
 
            絵にも 句にもならぬ 冬の夜 憂し
 
             星一つ 朧雲濃藍の 凍て夜
 
           朧雲 冬空(とうや)一面 憂色哉
 
          終日 日一日 ベッドで過ごしぬ 無為の冬
            
           背高泡立草 もう一輪や 咲きぬ冬
 
            庭の草木 淡雪被り 沈まれり
   
           朧雲 山霞こむ 冬の空
   
              凍て空に 斜め一線 飛行雲
 
            寒雀 友とせむとや 冬籠り
 
        お茶入れば 湯気淡く立ちぬ 朝 寒寒
 
        乾涸びぬ 乾き果てぬや 庭の草草
       
            手袋忘れぬ 冷たきに 息吹きかけぬ
   
          暖房せぬ 毛糸編む指 凍えぬる
 
         
                       平成29年1月 24日
                             <23首>
       狗尾草(えのころぐさ) とうとう そのまま越年せぬ
 
       実 とうに落ち  立ち枯れのまま 狗尾草
    
         寒風に 戦ぐ狗尾草 枯れつ 乾きつ
 
          水涸るる〔側溝の〕蔦葉海蘭 藤色 濃く 
   
       春野芥子(はるのげし)半日影のロッゼト 生生
 
         海蘭も 生々 生まれ〔原産〕は 何処(いずこ)の地
 
        水涸るる 苔枯るる 雪冠りせり
 
           花鉢枯れぬ 雪鉢とならむ 雪降らば
 
         小公園 寂寥 唯 風花の舞い
 
          冬の園 樫の樹 憂愁の佇まい
 
           公園や ブランコぽつねん 寒風に揺れ
  
         大寒や 金柑 乾涸び 燻(いぶ)し色
 
          散歩路 見渡す限り 枯野の如
 
            寒風に 漫ろ歩きや 緩慢に(スロー・テンポ)
 
          風花に追われ 家路を 急ぐ足
 
 
         牡丹雪 吹雪きとならむと〔不安が〕 胸過(よぎ)る
 
          霙(みぞれ)降り 牡丹雪吹く 繁く 繁く
 
          風なくに 葉揺れ 雪落つ ばさっ ばさっ  
       
        見る 見る間 要黐 雪冠り 一寸以上
 
            雪踏めば 足音聞ゆ 冬の音
 
  
          蔓茱萸(つるぐみ)の青き実にも 雪降るらむや
 
           山見えぬ 雪霞み 籠みぬ 大寒や
 
             林檎割り 蜜見つけたり 寒 の美味
 
         雪降りぬ 悉皆隠るる 雪の騙し絵
 
              
                  平成29年 1月 25日
                     < 首>
               窓の外 ほんに 見事な 銀世界
 
            降り積りぬ 牡丹雪や 庭 銀世界
         
             雪兎 作るに 二の足踏む 冷たさ
 
             窓の外 降り頻りぬ雪 庭の景
 
            雪と風 右へ左へ 鬩(せめ)ぎ合い
 
              降り頻ると 見れば止む 雪 移り気な
 
           霙(みぞれ)混じりの雪 且 風や 庭凍てぬ
 
          万象 静か 雪下に沈みおり
 
            天 春色 地 銀色〔雪色〕 冬の庭
 
           キシ キシと鳴きぬ 粉雪踏む度    
       
          絶え間なく 降り続きぬ雪 何時までなの
 
         寒の朝 静心なく 降りぬ 牡丹雪
 
             牡丹雪 淡淡(あわあわ)降りぬ 寒椿
 
           雪 一夜 明れば日差し 柔らかな
        空麗ら 千切れ雲 庭 斑雪
 
        日差しあり 雪消え 木蔭 残り雪
 
               日差しあり 雪消え 日影 雪残り
 
         雪積む 庭 日差し来れば 春心地
 
        寒風なくば 空晴れやか 春の気配
  
           仄明るき 夕闇 迫る 六時半
 
         淡藍の夕空 山に 雲見紛う
 
         笹小舟 月の雫や 冬のロマン
 
 
                   平成29年 1月 26日
                            <15首>
       雪の朝 朝焼けの山 再び 紅葉し
 
         白壁に朝焼け 美し 冬緩む
 
          空晴るる 碧色 爽やか 初夏想う
 
        雪解けば 碧空 白雲 輝く陽光
 
           天空を覆う 彩雲 真珠雲
 
          空彼方 出(いず)る雲形 松茸な
 
           千切れ雲 合体 松茸雲 見ぬ
 
             松茸雲 狩る人ありや 眺むが良し
 
                                千切れ雲消え 冬天 満天 果てしなく
 
         雪降るは 猛々しきなり 今や 長閑(のど)か
 
        霜枯れミントや 龍の髭 顔見せぬ
      
              雪柳 雪冠りの枝(え)に 早緑萌え
 
               冬深し 庭の蔦 深緑なり 
 
             犬鬼灯 雪冠り耐え 愛し哉
 
              犬鬼灯 耐えるを願う他に 術のなく
 
          陽光雪消 犬鬼灯の実 輝きぬ
 
        重なる雪 犬鬼灯 萎れぬ 青きまま
 
 
                   平成29年1月 27日
                      < 30首 >
          
          福良雀(ふくらすずめ) 枯れ木に集いぬ 餌探すらし
 
           福良雀 急降下 餌 見つけたの
   
        雪冠り なんのその 梅 萌え続けぬ
 
          匂い菫 確か此処いら 咲ぬるは
 
            仏の座* 咲くを見つけぬ 散歩路
                      (* 仏の座は春の七種の一つ)
 
          仏の座 如何におわすや 春待たずに
 
            姫椿 未だ残り咲く 生垣や
 
       霞籠む 海面に 光一点 彼(あ)は何ぞ
 
        山晴るる 海霞籠む 冬の景
 
          山 冬雲の影 刻々 移ろいぬ
 
        紫陽花や 花も葉も枯れぬ 蕭条(しょうじょう)
 
      菫の丸葉* 匂い菫の再来や
                (*匂い菫の葉はハート/心臓形)
     
       蔦葉海蘭 茎 葉裏や アントシアン色
 
        冬日差し 珠簾(すだれ)の細葉 青青と
 
         珠簾 葉緑に光りぬ 冬最中
 
       石蕗(つわぶき)や 花果て葉広げぬ 濃艶な
 
        冬日あり 石蕗の葉葉の 長閑けき哉
 
       谷間の 水仙の小叢 次々と
 
         花待てど 葉ばかり 繁るる 水仙なり
 
        黒き実 啄む小鳥 鶯ぞ
 
         実啄む 小鳥の背や 鶯色
 
           鶯の 実啄みぬ樹 鼠黐(ねずみもち)
 
            ”梅に鶯” 鶯や 知らぬらし
 
        梅の園 鶯来ぬば 春遠し
 
         紅梅 白梅 鶯 待つらむ 早春賦
 
          幾年も 鶯の声聞かぬ と 侘びおりぬ 
 
       この春や 鶯の声 待ち遠し
 
            鶯の声待つ時ぞ 時めきぬ
 
         鶯の声聞く時ぞ 春来たれり
 
          春告げ鳥 名にし負ば 春 何時来ぬ
 
 
 
                   平成29年 1月 28日
                             <17首>
      降雪一過 雀飛び交いぬ 冬麗ら
 
       雀 急降下 楽し気に
 
         雀二羽 飛び戯(じゃ)れ合いぬ 冬麗ら
 
       爆音あり ヘリ 飛び去りぬ 寒雀も
 
        雪解けば 物皆緩みぬ 穏やかに
 
       庭甦る 凍て土に 下萌えあり
 
       霜柱 足 覚束(おぼつか)ぬ 老いの朝
 
         庭へ出れば 霜萌え 彼方此方(あちこち)春隣り
 
       草萌え 苔萌え 小さき春 見つけり
 
             草萌え もの芽吹きぬ 春訪れぬ
 
         一雨ごと 庭草萌え 梢芽生え
     
         霜柱 消えぬる後や 春の芽生え
 
         草萌えぬ 且 萌え出(いづ)る 浅春や
 
           暮るる日や まだまだ早し 初春の夕
 
             鶯の初音 聞こえぬ 早春愁
 
            鶯の初音聞かずば 春遠し
 
         鶯や 歌のお稽古 何時からなの
 
            キケ キョッ キヶッ 鶯の幼声 懐かしき
 
            鶯の 幼声やがて 谷渡り
 
             鶯の 谷渡り 別れの歌や 
 
          
                      平成29年1月 29日                        
                           <19首>
             柿 最早 枯れ木に非ず 梢萌え
 
          万年草(まんねんぐさ) 春野芥子 仲よく 日向ぼっこ
 
             霜枯れや 蓬 灰緑 他は 紅紫
                  ー アメリカ栴檀草を眺めつつ
 
                立ち枯れぬ 裂果散らさず そのままに
   
                  犬鬼灯 雪冠りに耐え 実 黒紫に
 
                   根生葉や 霜枯れ 雪焼け 春遠し
 
                   寒雀 繁く 枝渡り 何事や
 
                  白頭鳥(ひよどり) 一声 雀一斉 飛び立ちぬ
              
                       ー-昔 春先 ヴェランダへよく来た           
                           鵯を思い出し
                 鵯(ひよ)昔 いつも番(つがい)で 飛び来たり
                   
           今は 鵯 単独行動 時代映すや
 
          石垣の窪み キャッツ・アイ(猫の瞳)日向ぼっこ
 
         仏の座 窪みに座しぬ 冬長閑か
 
        雲 淡く薄く棚引く 春めきぬ 
 
          ヒマラヤ杉 塀見越し 海望むらし
 
           石蕗(つわぶき)や 花立ち枯れも 風趣あり
 
        石蕗の葉や 青青 木蔭下
 
               外気 13⁰C  三月弥生の気
 
           桜木の蕾(らい)固し 梅 綻び初む
 
                   平成29年 1月 30日
                         <20首>
        南天の実に雪冠り 一幅の絵
 
            南天や 紅葉しおり 冬日差し
 
          南天 紅葉 松 常磐や 緑冴え
 
         南天の実啄みぬ 小鳥は誰
 
           啄まれ 南天の実 〔一つだに〕 無きぞ 悲しき
 
          雪降らぬ 底冷えの夜 限りなく
         
           万象 満目 鬱に沈めり 冬日暮れ
 
             灰色鬱 如何に散ずや 冬日暮れ
 
           冬季鬱 〔続けば〕耐えることもや 弱まりぬ 
         
          石垣蔭 鬼田平子(おにたびらこ)や 冬日影
 
           ミントの枯れ葉 刈らずに置きぬ 若葉のため
 
         如月の弦月か細き 星一つ
 
          雨微温(ぬる)し ロゼット(根生は)蘇生 枯れ草までも
 
             これからは 一雨毎に 春めくらむ
 
           冬霞 薄墨の空 仄(ほの)微温し
 
          明り障子 影絵や揺れぬ 南天の
 
              雨降りぬ 窓打つ 雨滴 氷雨混じり
 
 
                     平成29年 1月 31日
                           <19首>
                         山眠る 人眠る 如月の小夜
 
                       鶯も 雀も眠れぬ 山里や
 
          水仙も 眠るや 如月の夜半
           
             寒雀 夢路さ迷い 餌さがすや
 
          早春の真夜中 長閑 嬉且楽
 
        如月の小夜 寝覚めれば 春の匂い
 
         如月の小夜 物音なく 何事もなく
 
           穏やかな 長閑(のど)やかな 如月の夜
 
             寒中や 暖のありぬ 冬真中
 
         如月の三日月 冴え 一つ星冴え
                 
         冬麗ら 帽子ぽつんと 置き去られ
 
            冬帽子 独り ぽつねん 誰(た)待つや
 
            持ち主の 戻り来たりや 冬帽子
 
             秋野芥子(あきのげし)綿毛飛ばしつ 立ち枯れぬ
 
            冬の空 綿毛何処まで 飛んだやら
      
           秋野芥子 石垣を背に 仁王立ち
 
              秋野芥子 葉 鋸鮫の如 恐怖
 
                秋野芥子 たんぽぽ似の花 いと可愛い
 
            久し振り 朝露光る 冬の庭
           
           朝露や 苔生々 浅緑
 
            朝露 光る 早春の花の如
 
        
                     平成29年 2月1日
                        <  18 首>
             露消えぬ 庭の草木や 甦りぬ
 
                朝露と朝日 草木 晴れやかに
             
                 露 雫と散りぬ 儚き命
 
            冬微温(ぬる)む 束の間のこと 亦 厳冬
 
                                        ライラック 日毎に膨らむ 蕾かな
 
                                  草萌えぬ 小いさき小さき 野辺の隅
 
                 冬の野辺何時 春の野辺に 移らむや
 
            下草と草萌え 春の協奏曲
       
              空碧く 満目春好 海碧く
 
                                       水仙 咲くや 花 蕾 こき混ぜて
 
            水仙の白色 艶やか 冬麗ら
 
              黄水仙 春告げ花と 想わずや
 
             黄水仙 首傾げ咲きぬ 可愛らし
         
          枯れ草や 冬青草の 雪囲い
 
            寒椿 白咲き 紅咲き 絞り咲き
 
           一面 雲一つなき薄墨 寒の空
                 
            うつうつと 侘びぬれば 鬱 いよ 増しぬ
 
              冬季鬱 〔続けば〕耐えぬることも 弱まりぬ
             
                             
                     平成29年 2月 2日
                        < 19 首>
          木蓮や蕾膨らみぬ 春隣り
 
         蒲公英の花 黄や白や 今暫く〔待て〕
 
           岩陰の 石蕗(つわぶき)葉広げぬ 屈託なく
 
             花終わり 寂しくなきや と石蕗に問い
       
         枯れ草清掃 蕭条(しょうじょう) 一層
        清掃の小公園 青草萌えぬ 寂寥
 
     
        赤松の落ち葉敷き詰め 松毬も
          松毬や 此処其処 彼処 転がりおり
         石垣した 野路菊似 戦ぐ 早春
           鬱蒼の 冬木叢(こむら)猶 鬱蒼
            我 ここに 人に知られず 咲く水仙            
         我(あ)が秘めたる 水仙の小郷(こさと)今盛り
          大樹の下 水仙生命(いのち)長し 喜ばし
 
           玉椿(鼠黐) 鶯啄みぬ 黒き実房
 
             鶯や 梅花咲くを 知らでかや
 
 
           梅咲きぬ と云えども 鶯の姿見ぬ
 
            梅に鶯 というに 彼(か)の鳥来ぬは空し 
  
              梅咲けど 鶯来ぬは 如何あらむ
          
           梅が香も 聞こえぬばかりの 小さき花
 
             花より団子 梅より木の実 なりや
  
            観梅は? 鶯専ら 啄みぬ 
    
            枯れ木の下 篠生(ささぶ)枯れ 哀れ
        
             篠生に雪冠り ならば 墨絵にならましを
 
              
                                                     平成29年 2月3日
                                                                                        <13首>
         雪の朝 弥(いよよ)吹雪きぬ 烏一声
 
            粉雪舞う幻想 雪の精
           春の花片 舞うと見しや 牡丹雪
             積りもせぬ 止みもせぬ 淡雪かな
  
                       細雪 雀飛び行く 巣目指すや
              雪降りぬ 雀飛び行く 巣へ速く
               急いで 急いで 凍て雀になる前に 
                               泡雪ふんわり ふわり梢に 春の花
            寒椿 紅に雪冠り 白に雪冠り 庭の景
   
            日差しあり 葉と目だけになりぬ 雪兎
         粉雪舞いぬ ふりさけ見れば 空春色
          雪止めば 何時もと同じ 早春の庭  
              冬日微温(ぬる)し 歩けば 風 猶 寒と冷
 
 
                                                          
                                                                   平成29年 2月4日
                        < 20 首>
          夕星(ゆうづつ)や 月やあらむ 屋根の上
          福豆に 鬼〔邪〕 払ってネ と 手を合わせ
             鬼は外 投げずに齧る豆や 香ばしき
              福は内 何処(いずこ)にありや 内の福
           福は内 福かくれんぼ 鬼ごっこ
            置き去られ 唯 空(くう)睨む 鬼の面
         度重なる雪冠り 犬鬼灯 枯れぬ 
            と思いきや 葉も実も枯れぬるも 萌え 
      春光る 水微温みぬ 草草 せいせい(生生/青青)
        胡蝶飛ぶ を見ずば 春とは云い難し
          清明な 空色の空 穏やかな
       ものの蕾 また膨らみぬ 春近し
           鄙に出ば 満目 菜の花畑
             菜の花に 集まり来ぬや 碧き空
           菜の花に 長閑き光 風 柔ら
      
        春の野辺 菫 たんぽぽ 蓮華草見ぬ
         野に蓮華 川にメダカは 昔話    
           春の海 打ち寄せる波 独り静か
               春の海辺 小さき蟹や 鉄脚(はさみ)立て
 
 
 
                      平成29年 2月 5日
                             <25首>
          見上げれば 春色の空 木瓜(ぼけ)の花
           渋赤色 花木瓜 鄙の風趣あり
            柚子 夏蜜柑大 梢 重たからずや
              柚子 春陽 オレンジ色に輝きおり 
           石榴(さくろ)実の赤き 春陽に映え
          早春の柘榴 完熟 枯枝(こし)撓いぬ
            篠藪静か 雀遠出や 春陽
             篠藪は 雀一羽 見ぬ 春の遠出や
          谷間(たにあい)の 枯れ木立 萌え かつ萌え            
              
        横三線 棚引く空や 何(な)の予兆
           
            枯れ木蔭 水仙一輪 戦ぎおり
 
       金雀枝(えにしだ)葉落ちぬれど 枝茎 緑
         破れ莢 黒き種抱きぬ 金雀枝よ
        金雀枝 緑色 冬覚えずや
          水仙 茎折れ 花冠 垂れ 哀れ
         野芥子 一輪 凛然 色 濃紅紫〔アントシアン〕
        鼠黐(ねずみもち)/ 玉椿 黒き実房 まだ一つ 残
          まだ残りぬ 黒き実房 鶯や帰りなむ
            鵯(ひよ)の影 声のみなれど 玉椿 閑閑
        千切れ雲 ふわふわりふわ 山笑う
          早春の陽気 強にして艶のあり
          穏やかな 春の夜更けぬ 夢円か
 
 
                       平成29年 2月 6日
                          <25首> 
                      しとしとと 降る早春の雨や 柔らかき
         雨微温(ぬる)く 頬緩みぬ 春の庭
    
          雨微温く 庭の草木や 憩いおり
           雨微温し  山笑い 庭笑う
         雨微温し 濡れるや 一興 一趣あり
          微温き雨 雫ぽたり 地に消えぬ
        枯れ尾花 退色 春陽の雨
    
         今止みぬ と思うに 降りぬ 早春の雨
         春雨や 濡れて行きましょ 粋に行きましょ
          雨微温く 辺り 鈍色 憂色 あり
           雨に濡れ 石畳濡れ 草 青青
     
       春空に 聳え立つ銀杏(いちょう)萌えぬ
        木蓮の 幼き花弁 空仰ぎ
          雪柳 若葉開き 春招き
       霜枯れの ミントの下萌え 次々と
      
                     雨続き 雀も鵯(ひよ)も 何処へやら
                       そぼ降る雨 小鳥ら 影を潜めおりぬ
       雨しとしと 鶯も声すら聞かぬ 嗚呼(あぁ)
        水仙の花 フェンスに顔寄せ 何語る
         早春(はる)の夜 叢雲 朧ろ 月や見ぬ
                                       
      早春(はる)雨や 枇杷の葉 濡れぬ 雫落ち
            如月に 早 実結び初む 枇杷のあり
          花も 実もなく 雨に打たるる 枇杷哀れ
        春雨や 青木の葉 葉や 光沢一層
          青木の花芽 苞に包まれ 春待ちぬ
     平成29年 2月 7日
                         < 14首 >
              水仙や 花なく 葉ばかり 青青と
            葱ばかりと嘆きぬ 君 今は亡く
       雨忘れ 長閑やかな 春陽 影法師
         風ならぬ 春雨 駘蕩 午後の庭
           
          晴天一転 曇天 小雨そぼ降る
           一転 二転 誰(た)が心や 春の空
          早春(はる)雨 且一転 春陽 眩しき
        春暖(あたた)か 泡沫(うたたか)の日 春遠く
           春の陽 泡沫の如 寒風襲来
         風光る 葉光る やがて 寒と還
          風花舞う 過日 の陽気 何処へやら
           風花舞う 山再び 眠りおり
            風花や 温暖な早春 再び寒
          風花舞う 寒空 続き 朝焼けもなく
                    平成29年 2月8日
                        <26 首>
         日差しあり 風花の舞い トーンダウン
           且 消えぬ 且 降りぬ 風花(ふうか) 玄妙
         風花の舞 色々な形 速さ
               忙し気に舞う風花 何故と問い
         牡丹雪 粉雪 やがて 霙(みぞれ)となりぬ
        入日差す如月の庭 また 長閑か
         
          春来ぬと 思うに 庭や 雪の舞い
           枯れ木から飛び去る 鳥影 何鳥や
             大空より飛び来るる鳥 春鳥や
          入り日差す 真珠雲や 輝きぬ
          日沈みむ 万象 哀愁 春夙(まだき)
           入日影 万象 沈静 春の入り
          日沈みぬ 明るさ仄か 残しつつ
           
           遠目には 枯れ木尽しの 山辺かな
 
            近づけば 枯れ木に 芽生えの賑わい
 
          谷間の樹々や 眠るる 春朧ろ
 
           谷間は 早春 枯れ木早緑に 映え
 
          小鷺と見しや 石 これも春の景色
 
             川原に 石 石 黙然 早春の景 
 
            川原を 眺めるる我(あ)春愁あり
 
              春愁 庭眺めれば 鶯の空音
           愁雲にも 春の輝き 春の庭
                            愁雲にも 何処か時めきぬ 春への想い
         鬱の日々 春の夢すら 憂愁色
          草枯るる 川原のせせらぎ 春の声
         
        石に割れ 流るる白浪 春の川
 
 
           平成29年 2月 9日
                        <20首>
 
        朝 雪備(もよ)い 昼下がり 春備(もよ)い 嗚呼
 
         雪と陽光 降ったり 照ったり 春の移ろい
 
           春草や 昨日の雪なぞ 何の其の
 
        日脚 延ぶ 何処まで延ぶや 長 な~がく
 
 
         春入り日 影法師延ぶ 十二頭身
 
        坂路右側 木叢や まだまだ 冬影あり 
          
        八つ手 花盛り果て 若葉 手広げぬ 
      
        玉椿 実一つ残さず 啄まれぬ
            啄まれ 実一つ無き房や 残骸 哀れ
         啄ばみ尽され 玉椿の 春終わりぬ
      鶯の 賑わい消えぬ 鼠黐(/玉椿)哀愁
       小さき崖 何処も彼処も 水仙咲きぬ
           なんとまあ 感嘆するほど 水仙咲きぬ
       夕陽に向かう 一直線の路 散歩路
        石垣 冬 雲母の斑入り 遠目には
         近づけば 唯の石なり 石垣の
           葉 匂い菫似 ならば花は 如何ならむ
        ハート形の葉 花壇の隙間 埋め尽くしぬ
 
        花 黄色 匂い菫は 紫色
 
          黄花こそ 春の訪れ 告げるとか
          
         帰り来て ほっこり 一人で teatime
 
           見上げれば 空や朧ろの 春の夕暮れ
 
 
               
                            平成29年 2月 10日
                           <27首>                                                     
         冷え込みぬ 朝ぼらけ 春まだ遠し
 
           昨日 今日 底冷え続けば 耐えがたし
 
             菜の花揺れ 胡蝶舞うは 何時の日 か
 
          春麗ら 夢見つ過ごす 寒の戻り
 
         明日は雪 底冷えの夜の 予報なり
 
          朝の雪 雪の庭 恐るる通り 寒の戻り
 
 
            あした(明日)雪 恐れた通り 雪のあした(朝)
 
        音も無く 降りしきる雪 もう春と云うに
 
          降れども積もらぬ 泡雪 春間近か
 
            早春や 静心なく 雪の降りたる
         庭 亦 雪化粧 寒の試練かな
          牡丹雪 ぼたっ ぼたっ ぼた 落ちぬ昼
     
           斑雪 凍れる路や ゆっくりと
           雪止めば 庭濡れ 沸き立つ 春の匂い
         山々は 雪霞 枯木 雪冠り
          雪止みぬ 庭に出れば 霙(みぞれ)の小雨
            覚えぬ間 辺り包みぬ 春の宵
 
 
          薄氷 踏み入れ 割りぬ 寒の音
 
           雪合戦 直ぐ終わりぬ 雪足らず
 
             厳冬や 水仙萎れぬ 唯哀れ
 
           友を得て 精気得たりて 水仙 輝〔こう/かがやく〕
 
         植え込みどんより 躑躅(つつじ)こんもり 深緑
 
          桜木 春色 躑躅 未だ 冬色
 
           木叢 彼処は まだ 鈍色の冬景色
         桜木の下 躑躅 憂色 春未だ 来たらず
          霞籠み 空海 不定〔定かならず〕の 春の夕暮れ
         鵯(ひよ)飛び来 啄みぬ 寒の庭
 
 
                    平成29年 2月 11日
                          <19首>
            夜風に揺れ 南天の雪冠り 散りぬ
           南天も 雪冠りせぬ 夜の景
               月明かりなく 雪明かりや 庭の夜
             夜空 淡藍 雪の庭 仄明る
     
            耿耿の外灯 雪路 人影あり
 
          殆ど満月 耿耿冴えぬ 庭
 
       
         草木も眠る 丑三つ時(うしみつどき)眠れぬ我(あ)
 
         月冴えぬ 庭雪化粧 濃く 薄く
 
            雪夜や しんしんと冷え ベッドまでも
 
          朝の庭 一面薄すら 雪化粧
 
            庭 積雪 3センチ 一夜明ければ
 
      碧空に 風花舞うは 面妖(めんよょう)/名誉(めいよう)
 
        雪晴るる 万象光る 春晴れやか
 
           風光る 雲光る 春の序曲
 
            光り 光る 光り長閑けき 春の庭
 
         穏やかな彩雲 輝く 春の暮れ
 
                      ー-昔日を想いて
        軒下の氷柱(つらら)の長短 ドレミファソラシド 
 
          氷柱 痛っ 冷たっ 童 思わず手引こめぬ
 
         霜柱 土押し上げぬ ウエハース
 
 
              
                   平成29年 2月12日
                       <15首>
       朝焼けや 彩色さるる 屋根の雪
 
         犬鬼灯 雪冠り 萎れ果てぬ
 
        
           犬鬼灯 実青きまま 果てぬ 哀悼
 
            犬鬼灯 果てなば果てね 君忘れねで 
 
         犬鬼灯 果てぬ 君追憶すらむ
 
          犬鬼灯 追憶に入りぬ 雪に果て
 
      初夏とぞや 見しも 庭まだ 斑雪(まだらゆき)
 
 
       雪夜より 凍るる闇夜 月影なく
       
        梅の花芽(かが)雪冠り 花かとぞ見ゆ
 
         雪晴るる 椿 眩いばかりの こう〔光/輝〕
 
            雪晴るる 梅輝きぬ 春が香よ
 
          日差し 眩し 雪晴れの 昼下がり
 
         見上げれば 梅の梢や 碧き空
 
 
         
                                   底冷えの夜 探梅の夢すら ままならぬ
 
          底冷えや 月も凍るる 梅見月
 
 
  
                      平成29年 2月 13日
                            <24首>
      遠見にも 梅 綻び初む 梅見月
 
        皐月躑躅(さつきつつじ)萌えぬ おっとりの春もあり
 
       馬酔木(あせび)の花 何時綻ぶらむ 待つも春
 
 
      梅綻び 且 留まりぬ 寒の戻り
 
        寒椿 咲き果ておりぬ 一輪残しつ
 
         花水木 梢に 漸(ようよう) 芽生えたり
 
       寒肥(かんごえ)に 米の砥ぎ汁 花水木
 
      連翹(れんぎょう)の 咲かぬ春庭 愁えあり
 
 
 
        また雪降りぬ 大雪なれば 如何にせむ
 
          雪降りぬ テンション洪濤(こうとう)人騒めく
 
       雪止めば 何事もな気な 庭の草木
 
        眠るる庭 深く 雪なければこそ
 
           雪晴るる 雲間に陽光 碧いき空
 
          庭に出で 背に春陽 思わず 背伸び
 
       もう春日(はるひ) と思う傍から 吹雪き哉
 
 
         雪やとや 想えば 碧空 光る春
 
        雪降り続き 我(あ)が身 心も 縮かみぬ
 
        雪降り 間欠 身も心も 伸縮せり
 
          雪の朝 坂路凍てぬ 犬滑降
 
     
         障子開けぬ 眩しき 春の陽射し哉
 
          南天光る 障子に影絵 明と暗
 
                   -昨年(こぞ)の芝桜を想い出しつ
            芝桜 咲乱るる 春の宴
 
          花の雲 五色に棚引く 絢爛な
           芝桜 五色は 紅 白 桃色 薄青 薄紫
                     平成29年 2月 14日
                           <27首>
       しんしんと 土へ消えぬる 雪の音
        雪に怯え 雪とや見紛う 路の白映
         ぼたっ ぼたっ 後は無音に 降るる雪
           雪なくば 庭や すっかり 春心地
         春の庭 花咲かぬ 草木へ鎮魂歌
        梢より 偵察餌探し 寒雀
       春陽気 なれど まだ風の冷たき哉
        寒風 且 風花 水仙 悲哀
         雪折れの水仙悲し 春や何処(いずこ)
 
             崖に生う 水仙 雪折れ 総崩れ
 
          水仙や 存えるおりぬ 大樹の陰
 
           谷間の 枯れ木叢 漸う 芽吹き始む
 
       
        金雀枝 哀れ 青きを伐採 何故(なにゆえ)に
 
         木立影 八つ手の花 未だ咲き続き
 
          
       早(はや) 梅 零(こぼ)れ行きぬ 春爛漫覚えずや
 
           花零れぬ 命短し 梅の春
 
          水仙も 萎るるなりや 零れ梅
     
         土を突き にゅうと出づる 大根の足
 
        大根や 足し〔っ〕かりと 踏ん張りぬ
 
          畑の大根 逞し 寒風 雪に耐え
 
       
       万年草 雪冠りし 赤茶色
 
        赤茶の古葉 若葉と綯い交ぜ 万年草
 
       夏 草繁し 空地 今 枯れ地となりぬ
 
         彼方此方に 下萌え盛ん 春備(もよ)い
      小鳥一羽 明茶の翼 躍らせり
        春の空飛び行く 鳥影 見慣れぬ姿
          彼(か)は 尉鶲(じょうびたき) 独りで冒険 大丈夫
   
                      平成29年 2月 15日
                            < 21 首>
         梅見月 満月 ほんのり 梅見酒
 
          満月や 猫 円く 眠りおり
 
           満天叢雲 満月隠れ 見えぬ 
 
               春の小夜 叢雲ばかり 月を見ぬ
             
              春の月夜 光 柔らか その通り
 
           観梅も 鶯も 望めぬ この寒さ
 
          春や何処 見つけるも難し 庭に雪
 
            春の小夜 満天寒天 月朧ろ
 
             満月 凄然 春愁や ありぬ
 
            月影に 銀に光れり 枯れ尾花
 
              今宵 また 雪降るる音 梅見月
 
      
           戸外長閑か というに 予報雪大荒れ
 
            又 雪予報 またなの と 天仰ぎぬ
 
              明日 雪予報 外れむことを 祈るのみ
 
            春の日を 想えば悲し 雪の音
 
              観梅も 想うは無理なり 雪と寒
 
         日入りぬ 樹木翳り 深し 春愁
       春の小夜 満天 明る 月影なくも
 
              スイートポテト 鐘鳴らすならば 二つほど
                 〔 超 まずい!〕
         風花の如 綿毛飛ばすや 枯れ尾花
          枯れ薄 枯れても尾花 凛然と
                  平成29年 2月 16日
                       <18首>
         アディアンタム 格子蓋 上枯れるも 下青々
          溝底 涸るる 落葉一つ 無く 無の境地
         
         
        黄梅 咲き初む 初見(はつみ)なり 梅見月
 
         黄梅は モクレン科 花 梅似なれど
          
        遠見にも 梅の花にぞ見ゆ 黄梅かな
 
         黄梅花 迎春花の名あり 相応しき
 
 
           玉椿 啄み尽くされぬ 侘しき風姿
 
               侘しき玉椿 枝移りの影
    
          堰堤や 枯れ草のまま 春や何時
        堰堤の 枯れ芒 茫茫 春や見る
          堰堤は 休息状態 安泰の世 
                〔土石流なく〕
       鵯(ひよどり) やはり 番(つがい)飛びぬ 春空を
        別別に 飛び去る 鵯 頷き合い
        黄水仙 独り静か 庭守り
        
 烏 一声 帰路急げ と 春の夕
         枯れ木叢 いまなお 芽吹かぬ 春遠し
          鬼田平子と父子草 隣合いぬ 春隣り
            鬼田平子 背すらり延びぬ 花もう直ぐ
                  平成29年 2月 17日
                      <25首>
    梢にも 雀見ず日や 春〔空〕 晴れやか
            
 雀らや 今日は何処まで 行ったやら
- 啓蟄の日を想いつつ
 啓蟄や 雀忙し 餌探し
              見上げれば 実累々の房 鼠黐(ねずみもち)
                       - 別の場処にて
                          熟しぬ実房の垂れるを
名知らぬ木 雀知らずや 実苦きや
 蔓桔梗 こんな処に 新天地
               お多福南天 紅葉 入日に  紅に映え
           驚きぬ 藪蘭増しおり 枯れ草下
            枯れ草は 雪囲いとなりぬや 藪蘭の
         ミント萌え 古葉古茎 やはり 刈るべきや
             枯れミント 刈るやそのまま 未だ思案
       アディアンタム 枯れれど 新芽の備(もよ)いあり
         枯れミント やはりそのまま 自然のままに
           早春の坂 ゆっくり ゆっくり 老いの脚
         衰えぬ 昨春 歩きぬ 軽々と
          ロゼットや 夫々の春 夫々の愁え
           雪冠り なくば果てずに 存えぬらむ
         蔦葉海蘭 葉石垣覆いぬ 花淡紫
       葉蘭 萎れ 枯れ 哀れ いつもの早春
        犬鬼灯 そのまま果てぬ 風姿哀れ
          犬鬼灯 青葉残しつ 終焉か
             
              鬼鬼灯 終焉の時来たりぬ 哀悼
       犬鬼灯 よく頑張ったわね 早春までも
          犬鬼灯 冬には果てぬ 命ならむを*
                   ( 犬鬼灯は 一年草)
           鬼田平子 溝底に 点点 早春演出や
 
                    平成29年 2月 18日
                         <17首>
        早春の雨 まだ冷たくも 慈雨とぞ思う
          早春の雨 暖かきや 在り難き 
         霞籠ぬ 何処も同じ 早春の朝
       
           明けぬれば 庭の若草 萌えに萌え
            一気呵成 春萌え 燃えぬ 何処(いずこ)でも
         若草の萌ゆる庭こそ 愛(うつく)しけれ
         早春の雨 暖かくも 猶 寒の入り
        そよそよと 戦ぎぬ 草木 春光る
          朝まだき 春微温(ぬる)き哉 且 穏やか
          
      顧みれば 暖冬に雪 パラドックな 
           風の音 孰(いずれ) 嵐や 早春の夜半 
  春雷 春嵐 早春 且 乱れぬ
  花一輪 未だ見えず 庭の梅
               若草や 春雨に 光るる 昼の庭
ロゼット(根生葉) 数えれば 六つ 五月待つらむ
         早春の雨 冷たきに 蕁麻疹 ご用心を
           冷たさを雨粒に込めぬ 早春の雨
                     平成29年 2月 19日
                           < 首 >
花一輪 梅の梢に 漸うに
 花酢漿草 (はなかたばみ) 往時の勢い 何処へやら
 石段上の 公園の 桜芽生え初む
            黄水仙 黄色パンジーへ バトンパス
  水仙繚乱 花百十余輪超え
          春空を 突くや勇まし 龍舌蘭
 
           楓 細き枝枝(ええ) 芽吹きの細かき
            隈取り くっきり 隈篠茂し 春の景
         ミニダムの奔流 しぶきの白き
          早春の小川 唯 無音 せせらぎの他(ほか)
   
           静かなり 川のせせらぎ 静かなり
          早春の小川 流るる末や 早春の海
            落葉敷く 日影の小径 木漏れ日なく
          根太く 盛り上がり 木(ぼく)となりぬ落葉樹 
           木(ぼく)となりぬも 高き梢に芽生え
              べったり と 灰白の苔 桜木に
            桜の苔 梅の樹苔とや 誰に問わむ
             生いて四十路(よそじ)桜木 古木となりぬ
           石垣や 枯草の園 春や何処
            蔦葉海欄 石垣這い初む 春来るらし
             枯れ木 まだ 寒む寒しきや 冬の景
    春嵐 一過 風音残しつ
                  嵐過ぎ 微風 温和 静穏なり
             風止みぬ 辺り一帯 春長閑か
            叢雲の 狭間より覗きぬ 春日差し
     
         春憂 春愁 隣合いぬ
          ロゼットの蒲公英 野芥子 春を呼ぶらむ
           
         
          
                      平成29年2月 20日
                           < 32 首>
            満目 晴天 春陽 耿耿
                晴れぬれば 草木 挙りて 輝きぬ
             濃し 強し 曇り後晴れの 春陽哉
           早春雨* 庭の枯れ草 白化せり
 (*酸性雨?)
            馬酔木(あせび)の蕾(らい)膨らみぬ 春や遅しと
           山葡萄 未だ萌えぬ 春や遅し
          木(ぼく)の如 フェンスに絡む 蔦山葡萄 
           齢(よわい)重ね 木(ぼく)となりぬ 山葡萄の蔦
             木(ぼく)となりぬ 山葡萄の蔦 新芽未だ
             啄まれず果てぬ 金柑 幸せなり
 金柑 愈 黄金色 啄まれずば
            玉椿 入日に残り花 映えぬ
           枯れ草 下萌え 千々 春の品揃え
            若草萌えぬ庭や 春のショウウインドウ
             枯れ草を 引き抜き 腰痛 引き起こし
              枯草抜き 腰めぬ 老いの齢(よわい)
           梅の蕾 いずれも笑いぬ お多福の如
          馬酔木 馬も酔うらむ 鮮紅の蕾
            柿 葉も実も落ちぬれば 木(ぼく)の玄妙
               玉椿 実房半減 小鳥来ぬや
          鶯や 姿を見せぬ 何処へ梅見や
           春眩し 悉皆 光に消滅せり
            散歩道 せせらぎの音 春麗ら
         石垣は 枯れ草の園 春や何処
          眺望あり 海碧し 対岸の街 白く映え
           一望 一眸(いちぼう) 一切 美麗
            眺望あり 悉皆 美しに霞籠み
    
          梅の蕾 白き花びら そっと見せぬ
         薄紅色 梅咲きぬ 樹一杯に
           紅梅に 鵯飛び来ぬ 鶯は何処
            鵯(ひよどり)も 梅見に 来たるや 梅見月
         紅梅の奥 淡紅 満艦飾
   
                
                                                                          平成29年 2月 21日
                           <17首>
          枯れ草の庭の掃除や 下萌え見ゆ
             求む人手 庭の枯れ草 手に余りぬ
             今朝 晴天 浮かるるな やがて鬱に
            篠斑入り 新旧交代 春支度
             暖なれば寒 寒に暖 春の候 
                春の移ろい 暖から寒 寒から暖
             且 寒戻りぬ 寒戻りぬ この春麗らに
          風 おどろおどろ 春一番 来ぬや
            山笑う 海笑う 人もや笑う
             雪柳 萌えて 今の春 楽しけれ
          スペアミント 彼方此方 芽吹きぬ 春の興
               名の分かぬ樹 葉分け見れば 小さき萌え
     
            石垣沿い 歩めば 彼方此方 春の装い
             南天の花芽 小さく小さく 付きぬ今朝
             蕾と新芽 南天 春備(もよ)い
            
           鵯(ひよどり)も 春告げ鳥 番(つがい)来ぬ
                     
                     平成29年 2月 22日
                            <20 首>
            また 雪冠り 春椿や 春引っ込めり    
              今朝の窓 また雪冠り 二月末に
                蔦葉海蘭 雪に悠々 庇の下
            雪の今朝 蔦葉海蘭 咲きぬ 薄紫に
                  ミント萎れぬ 若葉に直撃 雪冠り
              雪冠り 椿 驚愕 蒼白なり
                雪冠り 椿 薄紅 白となるらむ
              雪嵐 視界や不能 3分間
             雪化粧 愛でる余裕なき この寒さ
               青木の花芽 雪冠り 一興あり
            昨夜(きぞ)の音 春の音ならぬ 雪の音
            
             雪消えば 椿 泰然自若なり
              雪消えば 椿も庭も 春の戻り
             南天の 雪散りぬれば 春の風
              春日差し 雪解き 椿 また光りぬ 
                                                          雪の今朝 雀 ブランコへ 留まり来ぬ
              松 雪冠りす 松毬も 落葉も 
 
  薄っすらと 若葉に降るや 牡丹雪
              雪冠り 虫 出づるやまた 冬籠り
                  花曇り 梅見月にもあり 鬱誘いぬ
                     平成29年 2月 23日
                            <25首>
        庭の梅 鵯(ひよどり)来たり 鶯何処(いずこ)
           餌咥え 鵯(ひよ) 満足気 梅の枝(え)で
            花より団子 梅より餌 鵯 食い気
              食い気の鵯 梅が香知らぬ気 悲し
   
          陽暖か なれど風の冷たき 梅見月
               足元を 吹きぬ風の 冷たき 梅見月
              下萌え しっかり 枯れミント 刈り取りぬ
直ぐ 梅林 バス下りて 二 三歩 ばかり
           早かりし 梅 未だ蕾 花夙(まだき)
             梅は花 小鳥* 花見に 鶯見ぬ
(* この小鳥 尉鶲(じょうびたき)
  とや 後知りぬ)
            この小鳥 胸茶橙色 白梅に映え
           白梅や 小鳥の独り 枝移り
             
             唯 一人 公園巡りの 梅見かな
           梅林園 一人花見も 風趣あり
              梅林(うめばやし)蕾固くも 白梅笑みぬ
            梅今や 花盛りなり 白花の
              白梅 まだ白梅ばかりの花盛り
            
           藪椿 白梅に見え隠れや かくれんぼ          
藪椿の紅 白梅に 彩添えぬ
              東屋に人影なきや 梅見も淋しき
            
         姫椿 梅林の向こうに 秘やかに
         紅梅晴れやか 白梅続きに 紅一点
          梅紅白 共に花やぐ此処 花盛り
           今一度 梅見に来むとぞ 帰りなむ
       
         また 海石 古(いにしえ)海辺やこの辺り
                   平成29年 2月 24日
                         <25首>
窓開ければ 小鳥惑い来ぬ 我(あ)が庵
            秋は雀 早春は誰? 鶯 目白
           鳴かずむば 誰か分からぬ 鶯 目白
                 歌忘れ 冒険行の 鶯ありや
            庭の梅 また一輪 咲きおりぬ
              梅の蜜 吸うは目白や 鶯に非ず
            次々と 蕾綻びぬ 梅見月末
        梅見月 尉鶲(じょうびたき)や 渡り来たりぬ
          尉鶲* ならこと問わむ 何処から何処へ
                    (* 尉鶲は渡り鳥 名は 声や火打石の
                        音に似たるが故)
          尉鶲 羽搏き 胸張り パフォーマンス       
      
         白梅に胸開き 何を語るや 尉鶲
           尉鶲 無邪気 近づき 一緒に 遊ぶ気
            近づけど 飛び立たぬ 尉鶲 いと愛(いと)し
  人恐れぬ 人なつっこい 小鳥 尉鶲
            人恐れる 雀の声聞くや 尉鶲
              人恐れぬ 尉鶲や 無事祈りおり*
                   ( *雀のように 捕らえられ
                          焼き鳥にされむことを )
         尉鶲 知るや ピラカンサ/常盤山査子)の実の熟したるを
          赤か橙 ピラカンサの実 どちら好むや 尉鶲
        悉く 野草払われぬ 菫も見ぬ
         枯れ葉 落ち葉 払われ 無機質の春
          一掃されば 舗装路や 硬質のコンクリート       
         風雅さや何処 自然 一切払われれば
          窓の外 霧立ち上る 春朧ろ
         飛行船 春空を行く のんびりと
            春空に 小鳥や吃驚 飛行船
 
                  平成29年 2月 25日
                        < 24 首>
       ご近所を 庭巡りせり 梅見月
             梅探し それぞれの庭 梅それぞれ
           探梅や 紅白 淡紅 それそれの庭
            紅白 淡紅の 探梅に 老い忘れぬ
            淡紅の枝垂れの梅や 珍しき哉
          一声あり 振り向け見れば 梅に鵯
           嘴(すい/くちばし)に花 鵯飛び立ちぬ 梅の枝
              嘴に花 鵯止まりぬ 佳き枝振りに
             屋根を越え また 帰り来む梅に 鵯
              ぐるり 巡り 鵯 またも梅の枝(え)に
                鵯ポーズ 嘴に花 気取りつつ
                                     梅に鶯 鳴かずんば 如何にせむ
          梅林 目白も来ずや 咲かぬれば
           梅は未だ 一分 二分咲き 待ち遠しき
         梅に鶯 と見しや 鶯色の目白かな
             梅の蜜 吸うは 鶯色ばかり
      
         花椿 一人静かな 山路かな
            生垣の玉椿 紅残しおり
          紫陽花や 渋紅の嫩葉 開き初む
         春椿 葉蔭に蕾 淑やかに
         
             花椿 白に紅絞り 葉濃い緑
            椿の蕾 何(な)の色に咲くらむや
            落葉の紫陽花の 枯れ茎や白く光るる 路
              紫陽花の 枯れ茎の 白きの 立ち並び
  平成29年2月 26日
 < 22首 >
          春晴るる 戸外や寒風 身竦めぬ
           耳痛し 君云う通り 風冷たし
         谷川のせせらぎの音 歩む音
            谷川 無音 唯 せせらぎの音
           水流るる 谷底の岩間や 芽吹きあり
          谷川の飛沫(しぶき)柔らか 春の音
            冬木下 せせらぎの音 もう春よ
          此処からは 山路朽ち葉路 舗装路終わり
         山路の崖 枯れ木 枯れ草 冬去らぬ
            山藤 絡まり 枯れ 土まで垂れ
          山路や 朽ち葉敷 冬枯れのまま
    
             枯れ葉路 踏み入り行けば 山の匂い
           風一陣 枯れ葉舞い上がりぬ 山路
          山藤の莢 長楕円形 黒く垂れ
            
碧空を写す 池面(いけも)や 逆さ木立
         池の面 写す碧空 鯉泳ぎぬ
             悠然と 碧空泳ぎぬ 池の鯉
              泳ぎ来れば また 去りぬ鯉 春の池
            紫陽花の枯れ茎 淡泊 一興あり
         池の辺(ほと)り 枯れ太藺(ふとい)直立不動
          松冬芽 枯れ太藺見仰ぎぬ 春の空
           冬空に チューリップ咲きぬ 春隣り
          赤 黄 白 桃 橙* 花色取り取り 春は来ぬ
(* 漢字一語扱い
 
            家建ちぬ 草草 何処 空地消え
家建ちぬ 空地消えぬ 自然消えぬ
                     平成29年2月 27日
 <17首>
 春霞 山々薄れ 梅笑う
          白木蓮 花小さく 咲き初む
          梅見せむとや 木蓮の花 一分咲き
           紅と白 惑うや目白 梅の密
            声すれど 鳥影見ずや 梅の枝
          昨日 満開 今日散り初そむ梅 果無(はかな)き かな
           坂の路 止まりて眺む 梅 花盛り
          溝流るる きらきら流る 梅の樹下
           
           金雀枝や 枯れ莢残し 緑尽くし
             野草千草 挙りて集いぬ 石垣下
           野草 一斉 日に向かいぬ 向日葵の如
          日溜まりを 見つけ上手な 春野草
             繁縷(はこべら)を 見つけ喜びぶ 我が身かな
          繁縷見つけ 鶏探す 春の庭
                            道路傍(わき) 食み出す繁縷 踏まれずや
           チューリップ 咲く花壇あり 梅見月
            チューリップの他は 寒そうな 二月の花壇
          
                      平成29年 2月 28日  
              <35首>          
           畝 二筋 大根と葱や 耕さるる
            葱枯れ色 水仙の青色 移らむや
                枯れ葱の側の水仙 心配顔
             如月末 大根と葱 青々と
            梅の花見 大根と葱や 遠見せり
             梅花びら 大根と葱へ 二つ三つ
              大根と葱 葉先枯れ 凋み初む
                 大根と葱 収穫人や 現れぬ
              誰も来ぬ 大根と葱 託(かこ)ち顔
   
               路傍の春 待てずや菫 枯れぬれば
                 菫の葉 黄色から枯れ色 春愁
             ハート形の菫葉黄色 愁え色
               
              路傍の菫 哀れ 轢かれぬ 新芽なく
               新芽なき 菫の春や 何とせむ
 菫の黄葉(きいば) 春待ち草臥れてや
菫咲き 春の喜び 弥よ 増しぬ
  菫一輪 立ち籠めおりぬ 春の香り
                 春葉 萌え 楽しからずや 菫の春
                   莢 三裂 枯れ菫佇みぬ 春愁え
 閉鎖花(へいさか)の莢 枯れ 菫 春の別れ
           夏葉 果てぬ 菫との別れとぞ 思いぬ
             細長の春葉 萌え出づ 菫草
                菫 枯れ葉に下萌え 細長の
           菫探せば 田平子(たびらこ)溝底に
             田平子や 冬越えの末 春迎えたり
              田平子の黄小花 群れ咲き 春の宴
            薺(なずな)田平子に混ざりぬ 春に興
                         梅の枝 鵯毬止まり来ぬ 金柑咥え
                驚きぬ 梅に鵯 金柑とは
  壺形の蕾 膨らみぬ 馬酔木(あせび)の春
          渋紅から淡紅へ 馬酔木咲くなり 漸うに
                ー キャッツアイ/大犬の陰嚢の咲くを見つけて
        石垣の窪みや 二輪 小さき 碧色
         陽だまりに 小花の碧きや 春長閑けき
                 石垣の二輪 碧き 春空 碧き
            陽だまりの 碧き小さき花 小さき春
           
                      平成29年 3月 1日
                          <28首>
            蒲公英(たんぽぽ)の綿毛 何処まで飛んだやら
           たんぽぽの黄色 綿毛となりぬ 春まだき
            蒲公英(たんぽぽ)二輪 仲よく綿毛飛ばしや
              春葉より生い立つ 菫 いま一輪
姫踊り子草も 小さき春を 石垣の端(は
              姫踊り子草 薄紅の唇形花突き出し おかし 
          もう 春よ と踊り出したり 姫踊り子そう
           春の調べ ステップ踏むや 姫踊り子草
             
         耳菜草(みみなぐさ) 繁縷(はこべ)の姉様の風姿
   この葉 誰(た)がもの 我がものぞと 仏の座
            拔けど猶 庭の草草 生いに生いぬ
         紅梅や 振りさけ見れば 小鳥来ぬ
          彼(あ)れは鶯 背暗緑色 胸白色 
           梅に鶯 鳴かずとも佳し 鶯ならば
            とうとう邂逅 梅に鶯 文字通りの
          鶯の 梅の枝(え)移り しばし 見惚れぬ
          ロゼット(根生葉)二種類 花待ち侘びおりぬ
            匂い菫 薄紫を 五 六輪
            ハート形の葉 懐かしき哉 匂い菫
              倦みおりし 匂い菫ばかりなりと
            花椿 淡紅絞り 艶やかな
              彼方にも 水仙の叢 春の夕
      
           姫椿 見渡せば 一輪 紅の梅
            姫椿 紅梅へ紅託しつ 消え行や
             水仙や 日は西に入り 闇に入り
            夕日影 散歩の帰り ゆらり ゆらり
             フェンス沿い 葉蘭 悲惨 枯れに枯れ
           枯れ葉蘭 打ち続きおり 春や春
                       平成29年 3月2日
               <25首>
                          眺むれば 庭の白梅 春愁え
  花笑う 庭の白梅 春来たりぬ
         紅白梅 花やぎ 樹木 芽吹く 春の景
          
 岩苦菜 (いわにがな) 我(あ)が庭は消えぬ 他処に生い
        スプーン似の 葉 葉 彼方此方に 岩苦菜
      珍しき 山鳩の声 春の空
               ボッ ボッ ボォー 珍しき哉 山鳩の鳴く
         声する方 家鳩屋根に 吃驚眼(びっくりまなこ)
        枯れ草や 漂白されり 雨?陽差し?
 烏の豌豆(からすのえんどう)巻き髭 ゆらゆら 春探すや
           白き花冠 黄色の盃 水仙 春や愛でる 
         藪虱(やぶじらみ) 嫩葉重ね生いぬ 路の端(はし)
          痰切り豆(たんきりまめ)実黒く光りて 莢のなか
             莢弾ども 小鳥の来ぬや 実そのまま
       
          現の証拠(げんのしょうこ)葉 精一杯 広げぬ 春を受け
蔓桔梗 蔓縺れ合う叢 花一輪
          蔓桔梗 風車風(かざぐるまふう)の花 淡紫の
           
         桜木の 萌え出づる 春となりにけり
           橙赤の 石榴(ざくろ)渋茶に 春の庭
              白梅散りぬ 紅梅今を時めきぬ
            枯れ木立 梅花やぎ 春誘う
          鵯(ひよどり)飛び来 且去りぬ 人影あり
         彼方此方 鵯 飛び交う 碧き空
           枯れ枝に ゆったり構え 鵯ポーズ
                             山霞む 枯れ木も常磐(ときわ)も 淡茜(うすあかね)
平成29年 3月 3日
          <27首>
          花びらを啄まれ 椿 哀れなり
              啄まれず 椿一輪 葉蔭奥
           
           椿 花びら見ずなり 誰(た)の仕業
 花椿 紅絞り散るぬ 葯(やく)悲し
             葯 黄色 茶色に萎れぬ 花弁なく
          落ち椿 若草の上 夕べの庭
            落ち椿 彼方に絞り 此方に紅
           落ち椿 紅(花冠)も 黄色(葯)もそのままに
          落ち椿 淡紅と絞り 庭 静か
            紅絞り 椿一輪 此処にも咲きぬ
             つらつら椿 ならねども 花 愛し    
            
          チューリップ 花閉じぬ 風冷たきに
             春風や 未だ冷たき 散歩道
               君亡くも 黄水仙咲きぬ 庭の夕
            山々 曇り 今宵またもや 雨なりや
          落ち椿 数えれば 幾つ 余(あんまり)なり             
            椿のがく 花冠(かかん)落として ぽかん顔
           山椿 やはり 庭より 山に咲け
            観る毎に 梅 花開きぬ 春優し
             枝垂れ梅 枝垂れ梢に 花 三つ二つ 
 枝垂れ梅 数える程の 花愛し
           蓬の幼な葉 早 お餅になるのかしら
             野芥子のロゼット 青々 春サラダ
           ベンチ 独り 人待ち顔の 春の昼
             誰も来ぬ ベンチ 鵯(ひよどり) 唯独り
            藪虱(やぶじらみ)可愛き 小さき 咲くは何時
             姫菫 春葉 より出で 低く咲きぬ
                  平成29年 3月 4日
<35首>
            満開なり 公園の入り口の梅
             梅公園 五分咲き 三分咲き まだ一分も
            梅の花 一重 白色 春小さき
             蕾開けば 紅 白 淡紅 何色に
               白 白 また白 紅梅はと探したり
             
            
             雛祭り 梅飾りたし 紅色の
               白酒に 白梅 紅梅にぞならむ
                  白酒に 白梅紅差し 紅梅や
             冬至梅(とうじうめ)冬至に咲そむと知り
              冬至梅 雪冠りの景 知るかしら
            冬至梅 遅咲きを 今 花見かな
                冬至梅 今 卯月の花見哉
           
             呉服枝垂れ(くれはしだれ)淡桃の花 艶のあり
               呉服枝垂れ 花疎らなれど 風趣あり
            冬帽子 置き忘れられぬ 梅の下
                  白き帽子 白梅に魅かれ 残りしか
              白梅の花びら一つ 床几の上
             床几に座せば 白梅 微笑む 公園や
                白梅に誘われ 床几に 花見疲れ
                                           公園に床几 梅見に備える 心延(ば)え
                        -梅公園を後にする際に
              いま再びの 一人花見をとぞ 願いぬ
                                                楽しみあり 独り梅見の 梅公園
              樹二股 別るるも 亦 縒り合いぬ  
            高き梢 松毬ちらほら 碧き空
         
                松木立 赤松 辛うじて生き残りぬ
          未だ冬景色 雑木林や 枯れ色なれば
           老松の隣 若松 春の勢い
            モノクロな 冬木立哉 春の日に
           毬栗 一つ ポツンと 路の端に
          碧小花 濃きと淡き 彼方と此方に
           似たりの野草 近からず 遠からず 生い
           枯れ草にも 春草萌えぬ 花壇の隅
            椿 蘖(ひこばえ)生いぬ 逞しき哉
             椿 此方や彼方に 咲くらむや 
           椿 蕾や固し 春の庭
 平成29年 3月 5日
                         <21首>
          苔むしぬ 白梅の樹 灰緑色
           梅の樹に 梅樹苔(うめのきごけ)や びっしりと
          梅に苔 墨絵にせむと 想いつつ
            梅と苔 水墨画の景 そこにあり
          皐月(さつき)霜枯れ葉 葉の間(ま)若芽出ず
        皐月 若芽の花芽(かが) 春の行方は
          皐月 若芽か花芽か 定かならず
         雪柳 新芽 萌黄の珠の如
          雪柳 萌黄の新芽 数増しぬ
                  篠小叢 新しきが萌えぬ 庭の隅
          額紫陽花 灰茶の冬茎に 渋紅の嫩芽(どんが)
            額紫陽花 渋紅の嫩芽 開き初みぬ
 
         椿 嫩葉 焔の如く 揺ら 揺らら
           椿 葉光る 花芽(かが)光る 庭の春
          玉椿 花芽抱くなり 日向い側   
            玉椿 実を結ぶるは 何時のこと
          生垣の要黐(かなめもち)猶 新芽出ず 
             要黐 渋紅の新芽 一斉に
               
          一枝を貰いぬ 山桃 花瓶に挿しぬ
          テーブルの 山桃眺めつ 年越しぬ
           山桃の 花芽の房や 顔を見せ
                  
                      平成29年3月 6日
                         <21首>
         
           庭へ出でば 辺り柔らか 春の息吹き
            春草や 幼な葉揃えぬ 取り取りに
            
          はこべ はこべ たんぽぽも すみれもなく
     
      
        龍の髭(りゅうのひげ) 新芽 幼き 猫の髭
         スペアミント 下萌え しかり 根付きおり
          紫苦菜 萌えい出づるや 昨年(こぞ)と同じ此処に
        庭の梅未だ 五分咲き 末が楽しみ
           水仙の細葉 結わえて 冬仕舞い
            水仙や 花を待つ間に 春は来ぬ
           苔 斑らに置きぬ 梅の樹や
            梅樹苔 長寿の兆しに あらまほし
          枯れ草抜き 引っ張り損ねて お尻餅
      
            枯れ草抜き 拔にも抜けぬ 根や強き
          
          花水木 幹斑らなり 灰白に
           花水木 梢の先や 冬のまま
         葉隠れに 椿一輪 そっと咲き
           椿一輪 葉葉の間に間に 見え隠れ
         弦月や いま(今時)何処にぞ 坐(おわ)します
          星影に 水仙浮かびぬ 春の小夜
          薄色の 桜草 鉢にぽつねんと
           微風(そよかぜ)に 桜草揺れぬ 春の色
            
                    平成29年3月 7日
                        <23首>
         菫 花色 深まれり 春日影
        蓬の幼葉 灰緑のまま 春時雨
        花冠笑む 水仙爛漫 春の虹 
          水仙繚乱 春風 吹き貫けぬ
      
         枯れ草の下萌え ミントに龍の髭
          枯れ草と春草 五分と五分 の野辺
            春草探し また 見つけたり 散歩道
        行儀よく 並ぶ 葉牡丹 春花壇
         チューリップ 巻き葉それぞれ 風趣あり
          雪柳 嫩葉 蕾(らい)抱く 春優し       
        チューリップ 咲く花想えば 春楽し
         チューリップ 大きく小さく 芽生えおり
        セコイヤ 梢の高み ぶらり 蓑虫
         セコイヤ 乾果二つづつ ぶら下がり 
           白木蓮の花芽 膨らみぬ 尖(とん)がり帽子
          槿(むくげ) 未だ芽吹かぬ 時に非ずや
       
           葉牡丹や 縮み葉広げぬ プランター
              葉牡丹や やはり 正月の縁起物
          菫咲き 咲き初む 二輪 春嬉し
                                          葉 細長の菫 揃いぬ 花は未だ
           玉椿 蕾綻びぬ 春の喜び
             僅かなれど 芽吹き初みぬ 枯れ木立
           公園 無音 静穏 滑り台も ブランコも
               
                   平成29年 3月 8日
                          <20 首>
         幾度の雪冠り 耐えたり 梅の春
          樹肌荒れ 反り返り 剥がれ 梅哀れ
            三十路(みそじ)越え 梅の幼な木 古木となりたり
           古木となりぬ 梅 梅樹苔も びしり生え
           
          蒲公英(たんぽぽ)と耳菜草(みみなぐさ)萌え 仲のよく
         シャスタ―デイジー 何処にと探すは 春の習い
         
          蔕(へた) 渋茶色 柿の梢に
 
            冬越しの蔕 柿の枝枝(ええ)や 彼処此処に
 
              柿の蔕 春風に揺蕩う 秋や想う
                見つけたり 小さき菫 花壇下
           小さき菫 花盛りなり 白色の
            小さき菫 花色 白色 春の色
          日溜まりの小さき菫 肩を寄せ
 
         嫩見ゆ 野ばらの蔓に 漸うに
        ジグザグの茎 嫩葉と棘の 野薔薇かな
          俯(うつむ)きの棘も光りぬ 野薔薇 冴え
   
 春風に 野薔薇 揺蕩(たゆた)う 長き蔓
         蒲公英(たんぽぽ)のロゼット生うや 何時もの処
        耳菜草 急なお目見え 如何許(いかばか)り
         朝曇り 鬱に打ち伏す 弥生 怨めし
                      平成29年3月 9日
<26首>
椿光る 嫩葉震える 寒の戻り
        曇天より 薄日差し来ぬ 寒の戻り
            白梅も 縮むなりや 寒の戻り
春風に誘われ 遠出 遠回り
 春風や 未だ冷たき 散歩路
 散歩路 胸痛覚えぬ 春寒し
         いつもの散歩 いつもの景色 春はいつ
      白梅を 白雪と見紛いぬ 寒の戻り
       水冷たき 指痛き哉 寒の戻り
        霙(みぞれ)急 雀身震い 梅の枝
       春時雨 霙になりぬ 弥生にぞ
         春雨と思いきや 風花舞いぬ 弥生朝
     
        スペアミント 縮みの嫩葉(わかば) 濃く厚く
         スペアミント 嫩葉 散生 石畳
           ロゼットは 桜草似 其は誰ぞ       
        何時の日か 桜草似 の花咲くや
         
        蔦葉海蘭 繁し 生い地 増やしぬ
          蔦葉海蘭 花 弥増やしぬ 春の宴
       
           金水引き 今年も同じ 半日影に
        金水引き 嫩葉懐かし 去年(こぞ)の秋
       金水引き 枯れ草に代わり 嫩葉生い
          蒲公英のロゼット 生いぬ いつもの路傍
    
        源平小菊 枯れ且萌えぬ 定めかな
         海蘭と源平小菊の嫩葉や 隣と混
          源平小菊 嫩葉繁るる 小路の縁(へり)
                   平成29年3月 10日
                       <  首>
            
                       春時雨 東 曇天 西 晴天
                  手の掌や ぽつり ぽつぽつ 春時雨
          俄か雨 春の散歩も 逆戻り
        用水路 ロゼット光る 春時雨
            傘さすも 日差し明るし 春時雨
          春時雨 傘さす人 ささぬ人
         春時雨 葉に宿るる露 キラ キラリ
          驟雨(しゅうう)あり 梅花散れども 未だ蕾(らい)あり
         降り 且 止み 且 降るる時雨 春の心や
           黄パンジー 鉢一杯に 春のダンス
            石畳み 草草生いぬ 春模様
        溝の壁 梅の樹苔 続きぬ 春の怪
        谷向こう 枇杷満開美 弥生の空
         深緑(ふかみどり)蔦葉海蘭 桜木下
           除草され 野草や悲し 春を見ず
        春風に春草 戦ぐ 庭や冷たき
           春の空 春の雲なれど 風の冷たき
         庭や冬 枯れ木 枯れ草 嫩葉見ぬ
          雀群れ 枯れ落ち葉の下 啄みぬ
        
                  平成年3月 11日 
                       <21首>
         山路の春 落葉敷き詰め 人影なく
          春の野辺 菫 たんぽぽ 蓮華草(れんげ)見ぬ  
          谷間(たにあい)の 椿や緑 枯れ木立    
 谷静か まだ眠りおりぬ もう春よ
               枯れ蔦縺れ 篠 茫茫 春遠し
            花八つ手 白きが青き 実になりぬ
           何処からか 小鳥の囀り 春の空
五葉の松 風姿麗し 苔むす岩
              五葉の松 独り佇む 杉並木前(さき)
           路沿いに 杉並木の春 黙然と
             水仙や 杉の植え込み ひそり咲きぬ
水仙咲く 可愛い顔して と君の云う
一望す 市街地白く 春日影
   栗の毬 乾れて空っぽ 春の山里
          枯れ毬栗(いがぐり) 実欠くとも 毬の鋭き
              松毬(まつかさ)落ち松葉敷 春の午睡
            落ち毬栗と落ち松毬 春の睨み合い
    ベンチあり 人待ち顔や 春の昼
             ベンチあり 独り居の君 春愁や
               ベンチ下 毬栗一つ 転げおり
              雪柳 嫩葉と蕾 花の如
                      平成29年3月 11日
                           <24首>
        クローバー 去年(こぞ)この辺りに 咲おりし
            見つけたり クローバーの幼き 葉や葉
         
             クローバー 小さき可愛き 葉一面
           クローバー 幼葉(おさなば)群れて 春楽し
            クローバーの草原 想えど 庭の片隅
          
            ピラカンサ 実悉く 啄まれおりぬ
             ピラカンサ 実啄まれたり 赤も橙も
          
            啄んだは誰か 尉鶲(じょうびたき)かや
               ピラカンサ 目白もやはり啄むや
             
          野薊(のあざみ)何処(いずこ)探すれど見ぬ 春の園
  
           もう一度 探して見つけり 野薊芽生え
      
            野薊のロゼット 数えれば 十余り
           
             一つ 二つ・・・ 野薊若芽 十余り
          幼な薊 塊りて生いぬ 夏如何
           夏来れば 豪華に咲くらむ 野薊芽生え
           草も花も 戦ぐや 春の夕べ哉
             行き交う人 急ぎ足の 春の夕
              人無言 足音(あしおと)無音 春の夕
            影法師 過ぎぬ また 影法師 春の夕
         雪柳 白きの揺れぬ 茎の末            
              姫椿 今に咲き継ぐ 春好きなの
            花椿 葉隠れに 顔見せぬ
          
          コロコロと転(まろ)ぶ 落葉や 春日影
           団栗の 転びぬ路や 池のなければ
          枝移り 鵯(ひよどり)知るや 団栗此処に
                     平成29年3月 13日
                          <27首>             枯れ山辺 芒 茫茫 春の風
              山辺 未だ冬枯れのまま 春の来ぬ
          山の辺に 一人遊びの雀おり
 
           春山辺 未だ荒寥 冬景色
 
              枯れ山辺 灰黒の莢(さや)鼬萩(いたちはぎ)
                躑躅(つつじ) 延び放題 人の手入らずば
            昔日は 手入れ丁寧 躑躅佳き 
          石段を影で織りなす 木漏れ日かな
              梅 梅 梅 梅林や 今 花盛り
            三度目の梅見 満開 時来たり
          白に 紅 淡紅 扱き混ぜ 梅繚乱
            八重の梅 淡桃色や 愛らしき
                         梅林 鶯一羽 飛び去りぬ
               飛行機雲 引く春の空 梅林
  
             椿哀れ 衰ええぬ 花弁枯れ初めば
            椿咲く 日向にあり 落ち椿
             
                  帰り来て 梅林想いぬ 今宵 楽し
             蔓茱萸の小さき 此処に我ありと招き寄せ
              遅れ馳せ 長実雛罌粟(ながみひなげし)萌え初みぬ  
            黄花 何(な)ぞ 近づきみれば 黄花酢漿草(かたばみ)
             黄花酢漿草 すらりすらり 背比べ
              眺むれば 遥か 対岸 春霞み
            春の海 一面駘蕩 ゆたり ゆらり
              春の空 愈(いよよ)広がりぬ 譬えなく
             啓蟄や 雀 無心に 啄みおりぬ
              人影にも〔気付かず〕啄む雀 啓蟄や
                歩きつつ 啄む雀 春の土
平成29年3月 14日                         
                          <22首>
          梅の下 お花見弁当 さんざめき
        
            落葉あり 夕陽に映えぬ 春小路
             冬草刈り 綺麗にさっぱり 春の園
              苔の花 萌葱の胞子 風に揺れ
雀の槍 槍より 飴ん棒は 如何かしら
            蒲公英(たんぽぽ)の黄花 目を射る 鮮やかさ
              蒲公英の茎低く 咲きぬ 春寒や
路の縁(へり) 菫咲きぬ 五つ六つ
            野豌豆 烏か雀か 今は分からぬ
              野豌豆 幼くば分かぬ 烏か雀
           白花と見しや 石なり 春の野辺
         野豌豆 嫩葉 紫紅色(/アントシアン)何故(なにゆえ)に
          碧小花 碧空 映しぬ 春麗ら
            碧き小花 碧空の雫 花となりぬや
          小鳥の瞳(/碧小花)春の野原に 心地よ気
               ご免なさい 間違って引き抜きぬ 金水引き
            梅の樹や 一輪また一輪 数増しぬ
                   
           生垣のハンカチ悲し 〔落とし〕主 来ぬ春
             生垣のハンカチ いまだ 其処にあり
            鵯(ひよどり) 飛び来 啄みぬ 落葉下
             鵯来 黄葯 啄みぬ 落ち椿の
              春風や 枯れ葉一葉 転(まろ)びつ転ぶ 
                    平成29年3月 15日
                        <15首>                       極細の 若葱の如 このロゼット
          極細の 萌葱(もえぎ) の若葉 名や知らず
         名を知らぬ ロゼット 夏には 知るらむぞ
雀の槍 槍突き上げつつ 勢揃い
          小さき花穂 小さき薬玉の如 雀の槍
 岩苦菜(いわにがな) 押し合いへし合い 嫩葉の叢
          岩苦菜 密に重なりぬ 七重八重
            公園 静か 人影も無く 春の夕べ
             
         木瓜(ぼけ)の蕾 梅の花似が 咲くらむや
刈上げの この樹 何の樹 花椿
                庭の馬酔木(あせび) 淡桃の花房 零れそう
          椿実生 石積み隅 不思議顔
               〔 私どうしてこんな処に・・・〕
           梅に岩 鶯鳴かぬ 春空(むら)し
         
         茜さす 白雲 白壁 春の夕
         
           夏蔦 佳き 冬枯れも佳き 春時雨
 
                     平成29年3月 16日
                           <19首>
          春朧ろ 漫ろ歩きに 夕闇 迫りぬ
          
        スペアミント 何処から〔我が庭へ〕来 生いぬ 幾星霜
         ミント生う 幾春巡りぬ 我(あ)が庵に
           スペアミント 放つ 芳香 春呼びぬ
        蔦葉海蘭 石垣 路傍 我が庵にも
          海蘭の淡紫(花) 愛でた 君は亡く
    
           源平小菊 嫩葉繁し 緑深し
                ― 源平小菊生うる場所、日影と日蔭で
                      様変わりなのを見つつ
       源平小菊 枯れ果て残骸 一つの春   
          
        鵯(ひよどり)や 金柑咥え 我(あ)が庭へ
                       
        鵯(ひよ)飛び来 金柑落としぬ 庭の隅
          金柑に 鵯望むや 実生え此処に
        
 花水木 漸う 芽吹きぬ 遅き春
        梅五分咲き まだ五分の 楽しみあり
       
       春の野辺 野草千草や 篠草も
         繁縷(はこべ)白花咲きぬ 鶏待つらむ
        
       仏の座 また 此処に 唇形花
        仏の座 大きく育って 日向ぼっこ
          仏の座 フェンス沿いにも 路傍にも
 
        碧き花 見ず一日花や 夕散歩
 
                    平成29年3月17日
                         <21首>
         木瓜(ぼけ)の蕾 丸々膨らみ 時や待つや
         茱萸(ぐみ)切り株 蘖(ひこばえ)生いぬ 春時雨
          生命(いのち)継ぎぬ 蘖 茱萸の切り株の
 草芽吹き 樹木眠るまま 春や如何
 
         雑木林 不意に飛び出す 番(つがい)
            枇杷嫩葉 ぐんぐん伸びぬ 春やそこ
         木蓮の花 待ち遠し まだ蕾
          山葡萄 蔓フェンスに絡み 木(ぼく)のまま
             探すれど 枯れ木の蔓に 新芽なく
         青木や苞 開きぬ 蕾姿見せ
          夕闇春 ゆったり羽搏く シルエット
          紅梅の匂うが如し 弥生空
           八重咲の 紅梅 見惚れるばかりなり。
             碧空に 萌えたつ紅梅 八重咲きの
          梅散りぬ 他処満開 春の情
           梅散りぬ 生命(いのち)果敢なき 愛おしき
         
         黄梅や 枯れ色になれど 風趣あり
           梅の古木 浮世絵に見たり その風姿
                                       直立の枝枝(ええ)に 花 蕾 梅の古木
           細長の花冠 翳(かざ)すや 水仙瀟洒
         
            柿の木(ぼく)瀟洒な水仙 墨絵の景
                      平成29年3月18日
                  <20首>      
         いざ行かむ 菜の花刈りに 春麗ら
           あな 悲況 菜の花畑は 畝一條
         春風に戦ぐ 菜の花 梅の木下
            梅花びら ひらり舞い落つ 菜の花に
              石段の姫踊り子草 梅見上げ
         桜似の梅 梅似の桜や 如何にせむ
          桜似の 梅花やかな 春の空
         刈り込み 綺麗 躑躅(つづじ)生垣続きおり
           のびやかに 姫踊り子草 躑躅下
              姫踊り子草 踊り出しそうな 春真昼
          耳菜草(みみなぐさ)繁縷(はこべ)と共に 打ち揃いぬ
                      
                  ― ずっと一重で咲き続けてきた
                     水仙が急に八重になりたるを見て
         八重に咲く花冠 水仙の終(つい)告ぐや
                 
 仏の座 此処にも 独り そっと咲きぬ
       長実雛罌粟(ながみひなげし)小さきロゼット 其処此処に
チューリップ 青き焔や 萌えぬ花壇
         チューリップ 嫩葉 めらめら萌え立ちぬ
チューリップ 青葉生き生き 花色は如何
          見渡せば 春草の宴 春闌(た)く野辺
         葉蘭 哀れ 嫩葉見ぬ間に 春過ぐや
             水仙の春 終焉来たりぬ 梅の樹下
                       平成29年3月19日
                            <28首>
          菜の花や 青葱も畑に 梅木蔭
        野薔薇の蔓 延びぬ 嫩葉と棘を着け
         散歩路 奥は山路 獣路(けものみち)
        散歩路 樹木冬枯れも 春芽生え
           散歩路 春の匂いぞ 立ち籠めぬ  
         篠 新旧交代の春 来たりけり
         要黐(かなめもち)紅色の新芽 萌え揃いぬ
          我が庵(いお)の花水木 悲惨 花芽見ぬ
                 彼方此方の花水木芽生えおりぬに
               花水木 梢に小さき 花芽載せ
           額紫陽花 新芽開きぬ 屈託なく
          這い出しぬ 柵より 萌黄の葉酢漿草(かたばみ)
         
           萌黄葉の酢漿草の花色 黄色なり
            黄花酢漿草 水仙と隣り合う 春の宴(艶)
      金瘡小草(きらんそう)又の名は 地獄の釜の蓋
        地獄の釜の蓋 葉び〔っ〕しり萌えぬ 名にし負い
       金瘡小草 地獄に蓋するほどに 萌え
        金瘡小草 七重八重 に生う葉葉 豪華なり
       
             ― 磨り硝子の拭き損ねた処が春草の
                          影絵のように
         
         磨り硝子 浮かびぬ影絵 春草の如
          驚きぬ 花瓶の山桃 蕾膨らみ 
            花瓶の山桃 根出(いづ)れば 故郷の山へ
  返さなむ 故郷は何処 花瓶の山桃
          春野芥子 大きなロゼット 小さき黄花
         山山や 茜に染めぬ 春や朝陽
           
            薄墨の空 日輪鈍き 春の朝
             菜の花や 淡藍の空 白き月
               電線に 雀一羽や 春の朝
           テーブルの 花瓶の桜 幻視なり
                      平成29年3月 20日
                              <22首>
           紅と白 梅花流る 春の川
         この菫 匂い菫や 葉を見れば
           見つけたり 匂い菫 こ〔ん〕な処に
              思いがけず 此処に見つけり 匂い菫
         点点と生う 暗紅のロゼット 何の花
       暗紅色 日焼けなの? とロゼットに問い
          どんな花 野辺を飾るや あのロゼット
            碧き瞳 遠近(おちこち)に咲きぬ 野辺の春
 歩き疲れ 不図 ベンチ見つけぬ 在り難き
         落葉一つ 転(まろ)びつ行く末 吹き溜まり
          吹き寄せられ 落葉 累々 春の野辺
           落葉敷 押し上げ 嫩葉(わかば)嫩葉 かな
 
            団栗無数 小鳥知らずや 猪も
          団栗 落葉 やがて 土に還らむ
         樫の樹の枝の合間に 小鳥の巣
          巣は空き巣 雛巣立ちたる 後らしき
            雛巣立ち 古巣ぼさぼさ 取り乱れ
          雛巣立ち 物虚しげな 巣と梢
          野辺の千種 数えれば すみれ はこべ たんぽぽ…
         紅色の梅花 繚乱 春の園
          春霞 一面朦朧 茅渟(ちぬ)の海
           チューリップ 嫩葉のだらり しどけなき
                    平成29年3月 21日
                          <28首>
           姫菫 路傍から花壇へ お里帰り?
          小さくとも 生生 繁し 姫菫
          
          花満開 花便り 聞かぬまに
           梅遅咲き 桜早咲き 春怪し
              見紛いぬ 梅か桜か 鶯如何
          
        雪柳 垣間見えたり 白き小花
   
             雪柳 垣の上下に 顔を見せ
          菜の花や 花咲く時や 暫し待て
           花便りもう直ぐ 菜の花 今暫く
 
              早咲きの桜 まだ 梅盛りなり
生垣に 残り花 一輪 姫椿
         整備され また 小さき自然や 消え行きぬ
           数年は 待たねばならぬや 小さき自然
             小さくとも 自然なき路傍 殺風景
        
         クリスマスローズ 彼方此方の前庭 賑わしぬ
          クリスマスローズ の奥に 雀不意に
         蔓桔梗 風車(かざぐるま)風の 青紫花
          明日来れば 他の花*咲くや 蔓日日草
 (* 蔓日日草/蔓桔梗は一日花)
                 春草 千草 春の七草の他
            溝底や 此処にも千草 春のえん(園/宴)
          松毬や 見上げれば 杉 何処から
           松毬に 蹴躓かぬように 坂の春
 菫あり色 姿 まさに 菫なり
          菫あり その小柄な風姿や 姫菫
        春散歩 帰り来れば また 胸痛
          大急ぎ 飛び去る雀や 餌咥え
         餌置きて 啄むや途端 横取りされぬ
           あっさりと 諦め 小雀 仲間の許へ
                                 平成29年3月22日
                            
野薔薇 今 葉の幼きを畳みおり
           野薔薇 早 複葉開きぬ 山辺哉
烏野豌豆(からすのえんどう)此方 雀*は彼方 野辺賑やか
                          (*雀野豌豆)
           姫踊り子草 烏野豌豆 ほ〔ん〕に 良く育ったこと
         
  姫菫 生う足繁し 花壇の外 
               外壁や 夏蔦這う後の 枯れ模様
 春草の 取り合わせや 自然の妙
                 樹や覆う 銀緑の嫩葉 花樹の如
           春雨や 草木光りぬ 長閑やかに
             春雨や庭の草木の 柔らかな
 
           野豌豆 烏か雀や かすま は何処
            葉も 花も 何処が似るのか 春野芥子(はるのげし)
             烏野豌豆 咲く頃 いつももの春の景
           春野芥子 葉猛々しくも 花可憐
           仏の座 姫踊り子草に 座を譲りぬ
 
              繁縷(はこべら)の 小さき白花 鄙の匂い
             野辺に咲くぬ 菫や 猶 菫色
               野辺に咲く 菫は やはり菫色
             咲き乱れぬ 野辺の想い出 黄花酢漿草(かたばみ)
            花韮(はなにら)に お久しぶりと挨拶し
                    このロゼット 紫苦菜と 思いしが...
               シクラメン 門前に置かれ お出迎え
          田平子(たびらこ)や 清楚な風姿 溝底に
                春の池 亀泳ぎ来たり 鯉の池
 平成29年3月 23日
  <20首>
    紫陽花の茎の間に間に 烏野豌豆
 雀野豌豆 巻き髭 ふらふら 当て所(あてど)なく
              細き髭 何処へ絡むや かすまぐさ
                 雀野豌豆 細くも巻き付きぬ 生垣に
             
            姫踊り子草 大きく小さく 春の野辺
          春野芥子 黄小花 七輪 春麗ら
                 酢漿草(かたばみ)や 幼な葉 重ね 植え込み下
              植え込み下 小さき土にも 春は来ぬ
        長実雛罌粟(ながみひなげし) 幼きの寄りあう 桜樹下
      繁縷(はこべら)や 此処にも咲きぬ  櫻樹下
           半日影 嫩葉や生いぬ 紫酢漿草(かたばみ)
         石垣や 春草 繚乱 春爛漫
           石垣の 匂い菫の 小さき春
          バス待ちつ 数える指に 春の風
              バス待ちつ 句作り楽し 春の午後
          不図見れば 枇杷の実たわわ 青けれど
         陽炎(かげろう)立つ 野辺の千草や 春爛漫
           若草や次次 お披露目 春の宴
          何処からか 春の口笛 散歩路
            脈拍飛び また飛びぬ 春の夜更け
                     平成29年3月 24日
                          <20首>
       観梅に 出掛け迷いぬ 春長閑か
        観梅諦め 帰りぬ 何時か復(また)(来む)
        枯れ莢裂け 種子(たね)路に散乱 春の乱や
       アカシヤも 山藤もみぬ 誰の莢
 
        匂い菫 匂い遣(おこ)すと 君は云い
          匂い菫 匂いぞ匂わぬ 春哀れ
       雀の槍 野辺に挿す簪(かんざし)哉
        雀の槍 鄙の簪 素朴なれば
       白小花 ぽつりぽつりと 雪柳 
        ぽつりぽつ 咲く雪柳の 小白花
          淡紅の椿 一輪 春麗ら
           蕾あり 一輪の蔭 春椿
         椿 葉 葉 葉ばかり光りぬ 花一輪
          花椿 もう一輪 咲くは何時
       皐月(さつき)さっき見れば 花芽 花芽
        打ち靡(なび)く 柳の木立 春風一陣
         楊柳揺れぬ 飛びつく蛙 見当たらぬ
          柳下 泥鰌(どじょう)おらぬ 鯉おれど
       鵯(ひよどり)や 囀(さえず)りと読める 春の空
        鵯番(つがい) 嘴鳴らしつ 春のダンス
                      平成29年3月25日
<21首>
          桜古木 若木育ちぬ 春真中
    
           桜まだ 蕾や堅き 弥生の空
             実ならずも 嫩葉や繁し 枇杷の樹かな
          梅散りぬ れど山の辺 春の情あり 
           忍冬(すいかずら) 緑葉残し 冬忍ぶ
             忍冬 常磐のまま 春日影
              忍冬 常磐葉 凋みぬ お疲れさま
      
          狭き土地 烏野豌豆 犇(ひし)めき合いぬ
           剪定の薔薇 芽吹き初みぬ 思うがままや
          八つ手の実 身重きの余り 枝撓みぬ
            八つ手の実 拳突き上げ 意気軒高
          路の縁 たんぽぽ独り咲く 小春かな
           このたんぽぽ 茎短き 太き 黄花 大き
            踏まれぬよう 短足短躯の 蒲公英よ
          蒲公英咲きぬ 友も伴(とも)なき 其の場所に 
         浜菊に出会えり 楽し 漫ろ歩き
          シャスタ―デイジー* 浜菊の面影残しおりぬ
                  (* シャスタ―デイジーは浜菊と
          フランス菊の交配種)
                  薺(なずな)の花 昔と違わぬ 風情あり
          郷愁誘いぬ 薺や繁縷(はこべ)もまた
            薺 小さき小さき 白花可愛い
           溝底に咲く 薺 真中にも
平成29年3月26日
                        <23首>
             溝底の苑 大風避くるも 大雨は?
          枯れ芒 一雨毎に 白化せり
           春庭の枯れ草 白化 酸性雨? 
          垣根越し クリスマスローズや 花冠垂れぬ
           黄の花冠 ラッパ水仙 垣根越し
            
        不意に覚えぬ 鬱や 春爛漫に
          鬱散ずれば 光り輝く 春麗ら
        この愁え 気候のせいよ 花曇り
             虚しくも 楽しくもあり 人の春
             
              過ぎし日を眺むる 春となりにけり
         春寒や 梅散りぬれば 春愁え
          柳枝垂れ 池の辺や 春思あり
            枝垂れ柳 池の辺りや 憩う君
         楊柳揺れ 池の面揺れ 鯉来り
          嫋やかな 枝垂れ柳や春の情
           枝垂れ柳 春風に揺れ 定めなく
        白木蓮 花片(はなびら)一片(ひとひら) 碧き空
         春草千草 類は友を呼ぶや
          古木(こぼく)のような蔓 新芽漸う 山葡萄
           耕され 家庭菜園 春麗ら
            耕され 短き畝の 庭の春
          畝作り 次は 種蒔き 何の種
            春雨や慈雨になれかし 祈りおり
               
   平成29年3月27日
 <16首>
春風や その冷たさに 襟を立て
              春麗ら 室内のこと 外寒風
             動き動き 鬱や再来 鬱陶しき
        高曇り 光暈(こううん) 鈍色 春の午後
         白雲を 薄ら刷(は)きぬ 春の碧〔空〕
           石垣の上の紫陽花 芽吹き初む 
            茎に若芽 紫陽花に 春来たるらし
         伸びに伸び 葉牡丹の花 大根似
          葉牡丹延び 円錐形に 様変わり
            
        春野芥子 何処へ行ったの 姿見ず
          手折られる 春野芥子 溝底に
           春野芥子 手折られるとも 花五輪
        遠回り 出会う春草 馴染み草
         姫踊り子草 たんぽぽ待つ間の 小さき紅
        烏野豌豆 蝶形花に はや 蟻の訪い
         登り来たり 蟻 紅紫花へ 烏野豌豆
                    平成29年3月28日
 <31首>
          路の裂け目 蒲公英低く 低く咲き
           蒲公英や 路(ろ)にへばりつくように咲き
          路に低く咲くは 蒲公英の知恵ならむ
 
       花酢漿草(はなかたばみ)葉枯れ萎れ 嫩葉まだ
    
            春風の長閑けき候や 何時ならむ
           春の宵 霞籠みて 梅朧ろ
             遅れ咲き 水仙 か細く 繊細な
          
              繊細な花冠の水仙 咲くや今
            水仙花 薬玉の如 誰(た)が為に 
           外に出て 未だ寒き哉 春の宵
            高曇り 白き太陽沈み入る
              
             姫踊り子草 此処にも咲けり 豊の春
            小篠叢 枯れ枯れるとも 生い茂り
    
          石垣の万年草 何処へ 姿消しぬ
  
            まあ こんな処に 雌の万年草
              萌黄色 雌の万年草 春愛でおり
           
            ヒマラヤ杉 懐かしき哉 幼き日
              ヒマラヤ杉 芝生に座り 見上げた日
                庭の芝生 芽吹きも知らで ブランコ遊び
            水色の小さき雫 勿忘草
           勿忘草 野辺の出会いや 始めての事
                  
            勿忘草 出会いはいつも (園芸)店か花壇
 勿忘草 此処にも彼処にも 胸ときめきぬ
            勿忘草 忘れたりなど 致しませぬ
           勿忘草 胡瓜草かも 誰にか問う
        
            葉揉んで 匂い嗅ぐれば 胡瓜草
     
              胡瓜草 勿忘草 いずれ分かぬも 愛らしき
            雀の帷子(すずめのかたびら) 白緑の花穂咲き初みぬ
              花咲けど やはり地味なり 雀の帷子
               雀野豌豆 時にあらずや 小さく萌え
 
            テーブルや 春草の幻 夢現(うつ)つ
                      平成29年3月29日
                           <20首>
草叢に 碧紫や見たり 蔓桔梗
            春時雨 悉皆 光り 入日差し
              姫菫の葉 春時雨や キラキララ
  
           膨らみぬ 桜の蕾 弥生の末
            芽吹く枝枝(ええ)透かし夕日の  残照
               霞籠む 桜芽吹きぬ 膨らみぬ
ロゼット(混生葉)見 草の名想うは 春の興
            このロゼット 軍配薺(ぐんぱいなずな)きっとそう
              野薊 もう咲きぬと 立ちよりし
          
               野薊 未だ ロゼットのまま 落葉溜め
           野薊のロゼット 合計 十五数えぬ
      
             クローバー 此処のは 大葉 密に生い
          黄花酢漿草(かたばみ)もう萎れり 春急ぐや
           雪柳 白き尾 揺るる 春半ば
            野薔薇 蔓 ゆらゆらゆら 寄る方探し
           整備され 今は懐かし 鄙びた春
          桜 蕾 今や遅しと 膨らみぬ
            木瓜(ぼけ)何時咲くのやら 梅似の花
           春時雨 晴れ間を選び 出掛けしが
          ポツリ ポッ 春雨来たり 急ぎ足
                      平成29年3月30日
                          <21首>
        水流る 溝底の苔 もっこりと
       
 路傍の苔も やはりもっこり 春時雨
       紫酢漿草(むらさきかたばみ)葉精一杯 広げおり
        蔓桔梗 嫩葉の頃や 凛々しい風姿
          蔓桔梗 やがて乱れて 棘(おどろ)蔓
 
           石垣を彩る 海蘭 薄紫に
             碧き空 桜の梢 蕾固き
        石垣の春草 皆 幼な草
          石垣や 歩く影法師 春の夕
          入日差し シルエット続く 桜並木
     
        スノードロップ 邂逅 またの喜び
          スノードロップ こんな処に 山際に
         スノードロップ 透かせば覗きぬ 黄水仙
        薔薇の下 スノードロップ 遠き想い出
          石垣背に 繁縷(はこべ)のんびり 日向ぼこ
         彼方に見ゆ 濃桃の花冠 椿や姫(椿)や
        
       その都度に 新しき出会い 春散歩
      
        頬撫でる 春風の未だ 冷たき哉
         帰り来て 空見上げれば 小鳥の影
           何事も ほどほどが良し 老いの春
        春一日 無事に過ごしぬ 有り難き
                       平成29年3月31日
 <34首>
          溝底や どっぷり 耳菜草 生い茂り
           昨夜(きぞ)の雨 どう過ごしたや 耳菜草
         春風に 南天揺れぬ 静心なく
          紫陽花や 嫩葉開きぬ 花の如
     
            白木蓮 一気に開花 碧き空
              昨日まで 窄みぬ花芽で ありたりが
           白木蓮 妖艶なりや その風姿
             艶めかし 白木蓮 花びら垂(しだ)れ
             白鳥の 羽搏(はばた)くが如 白木蓮
               白木蓮 白鳥や羽搏く 碧空へ
           白鳥の枝に止るが如 木蓮花芽
            木蓮の花影 映す 夕べの路
             木蓮のシルエット広がりぬ 路の夕べ
           葉葉広ぐ 紫陽花映すや 池の面
        コンポート〔植木鉢〕繁縷(はこべ)棘(おど)ろに 咲乱れ
 
              花影の帰路急ぐや 夕陽影
           弓張月 輝く春の 茜空
            黄昏の 春皆 深く 浮かびおり
             菜の花や 薹(とう)立ちにけり 春の雨
            紫蘇の紅 異彩を放つや 春の畑
    
             
            現の証拠(げんのしょうこ)掌状葉の 愛らしき
             現の証拠 萌えおりぬ 枯れ草下
             石畳 ミントの縮み葉 其処此処に
           龍の髭 ミントに圧され まだ猫の髭
                龍の髭 未だ 勢い得ず 猫の髭
            龍の髭 なんとか居場所 守りおり
         眩しきに 顰める顔 目 春の日影
          花蔭より 出づれば眩し 春陽射し
           遠くより 茜に染むるる 春の夕
   
         少しづつ 黄昏の春 長くなり
          淡藍の空 薄墨の雲 消えぬ 春の宵 
          暗紅色の蔦 延ぶ蔦葉海蘭 何処までや
 
            何時の間に 碧空の雫 群れ咲きぬ
             春霞 花花 咲きぬ 昨日今日
           引っ掛かり 見れば 野茨 庭の隅
            枝(え)透かすも 夕月や見えぬ 春の宵
  長閑やかに 静かに更けぬ 今宵の春
            星影なく 庭 黒影の佇まい
                      平成29年3月4月2日
                            <23首>
        
          白き刷毛 絹雲長閑か 春の昼下がり 
            絹雲や 淡く白く 春長閑か
           淡碧の空 広かれば 鳥悠然
真珠雲 陽の見え隠れ 午後の春 
雪柳 春風に揺られ 春のダンス
               風に戦ぐ 雪柳の 細長き枝
            雪柳 白き枝(え) 垂(しだ)れ 四方八方
          前庭に カフェテラス在り 野菜屋さん
                 春野菜 果物 いろいろ カフェテラス
           海棠(かいどう)邂逅 花垂れ 眠りおり
  
                    花 林檎似 色 桃似の濃き 海棠かな
            海棠 桜に魁(さきが)け咲き 見紛いぬ
          海棠や 香り聞かずも 香しき哉
スノードロップ また出会えり 春楽し
            鬼田平子 早 終焉や 花窄めり
                綻びぬ 暫く 待たむ 桜の花芽
         桜蕾 窄みぬ 今や 寒の戻り
          花椿 麗しき哉 空碧き
            一輪また一輪の 椿かな
          足元に 落椿(おちつばき) 見上げれば 花椿
         花椿 その色真紅 艶やかなり
         春風に戦ぐ 春草 春の野辺
                    平成29年4月3日
                         <29首>
白木蓮 白き焔や 萌えむが如
            梅花盛り けふ(今日)は 旧暦雛祭り
         匂い立つ 桃花 一枝 鄙飾り
        薺(なずな)小さきは可愛 路の端(は)の
           花韮(はなにら)も 野辺飾りおり 彼方此方に
        黄水仙 大きも小さきも 笑う春
                
         山桜 梅と見紛いぬ 葉のなくば
          梅散りぬ ふと見れば 山桜
                雪柳 白小花 茎に ブランコ乗り
         草叢や 酢漿草(かたばみ)の黄花 一寸笑みぬ
          嫩葉みな 渋紅色 庭の薔薇
           岩苦菜 ここそこに生えど 花は未だ
              岩苦菜 未だ幼葉ばかり 草叢中
         姫踊り子草 此処にも 薄紅色の 舌状花
          
           春野芥子 鋸葉(のこぎりば)重ね 猛猛し
                春野芥子 葉 芥子と薊似 なり
            猛々しくも 花可愛い たんぽぽ似
              春野芥子 花 虞美人草似と 夢想しおり
          
          雀野豌豆 幼葉なれど 〔巻き〕髭伸ばしぬ
    
            烏野豌豆 耳菜草と 春のデュエット
              胡瓜草 花 首傾げ こちら向き
            踏まれぬよう 引き抜かれぬよう 幼な薺(なずな)
           薺(なずな) 精一杯に生う 碧き空
  
          プリムラの白花鉢 覆いぬ 小さき春
           プリムラの白花 ふんわり 春の色
           椿の花芽 八重とぞ知りぬ 春楽し
             八重の他 未だ蕾のまま 春椿
 八重椿 妖しきまでの 濃桃色
                胸痛み 舌痺れけり 春散歩
                  平成29年4月4日
                       <24首>
          花韮や 笑顔 笑顔の 昼下がり
           花韮や フェンスの向こう 咲き乱れぬ
         
        立ち枯れに 嫩葉下萌え 芒叢(むら)
          白花蒲公英 スラリと立ちぬ 蓬叢
           白花たんぽぽ 春風に ご挨拶
         白花蒲公英 咲きぬ 一日(ひとひ)の陽に
  
          木立中 ラッパ水仙 二輪静か
           此方には 一輪静か 黄水仙
             二人連れ 老いの坂路 春日影
         花萎れぬ 命儚き 春真中
          春風や 枯れ葉転まろ)びつ 我(あ)が許に
       
          蔦葉海蘭 薄紫の さんざめき
    
        葉牡丹や 円錐形の 打ち並びぬ
         葉牡丹や 尖(とん)がり帽子 高く低く
           芝桜 未だ 花 少し許りなり
         芝桜 笑む 藤色に 桃色に
        黄花酢漿草(かたばみ)もう萎れおり しどけなく
         黄花酢漿草 萎れにけり 春短くも
          咲いたかと思えば 散りぬ 花の命
         桜一輪 他未だ梢 蕾のまま
           花一輪 控え目に笑いぬ 蕾の梢
            桜の梢 蕾綻(ほころ)びぬ 一・二輪
          桜 綻び初むは 春の時めき
                    平成29年4月5日
                         <22首>
       海蘭(うんらん) 薺(なずな) 繁縷(はこべ) 春の賑わい
         鮮緑の苔 黒緑に 春日影
       八重葎(やえむぐら)棘(おどろ)姿や 春の野辺
      菜の花や 生えば何処でも 鄙の景
       八重葎 不思議な風姿 葉の輪生
        沈丁花(じんちょうげ)山辺に静か ひとり咲き
         香しき 振り返りみれば 沈丁花
       椿木立 透かして見ゆる 菜の花畑
         
        白き半円 淡碧の空や 春の午後
           半円の白きや望む 春の空
      月や日や 問えど黄水仙 無言なり
        山際や 陰気陰湿 春来ぬや
           陰鬱な山辺 憂えば ラッパ水仙
            黄花 大輪 ラッパ水仙 大笑い
 
         黄水仙 際立つ花やぎ 陰の地に
          憂えれば 不意に目を射りぬ 黄水仙
           鬱の目に 不意をつく黄水仙 鮮やかな
 
       山桜 散りぬ梢や 渋紅の芽生え
         唯其処に 生う故生うが 草木の相(さが)
       山桜 枝透かし見ぬ 茅渟(ちぬ)の海
       紅絞り 白花椿 春爛漫
        紅絞り 椿ぞ知るや 己(おの)が艶
                         平成29年4月6日
                       <19首>
         南天の この小さき蕾(あり)や 何時かあの実に
          南天や 実ならぬ蕾 庭の春
        桜並木 バスの窓外 花 花 花
         初桜 可憐 優し気 その風姿
        花曇り 花冷え いずれも あぁ 無情
         花曇り 花見の足や 躊躇かな
          花曇り 籠りおる間に 散りぬりぬ
         一分咲き 一分の笑顔 二分は二分
         鼠黐(ねずみもち)釣鐘形の 花列(つら)ね
           名に負わぬ 可憐な小花 鼠黐
            鼠黐 花咲く間や 春の色
          要黐(かなめもち)紅色嫩葉 めらめら萌え
           要黐(かなめもち)紅の葉影や 白き花芽
         庭に 野辺に ラッパ水仙 春闌(たけなわ)
                    ー 春の街角で小ウインドーを
                         覗いた折に
          ふと映る 春の横顔 老いの顔
           不意と映る 老いの横顔 誰(た)が顔か
         雪柳 白き小花や 次々と
          雪柳 真白き雪の 積もるが如
           雪柳 丸く刈られて 綿帽子
                     平成29年4月7日
                         <28首>
            はや 散りぬ 白木蓮の花びら 春哀れ
         白木蓮 花びら 轢かれ 春無情
          白木蓮 花びら散りぬ 満開も
       雪柳 藪蘭 酸葉 繁縷*‥ 自然の寄せ植え
                  (*漢字一語扱い)
        
        姫烏頭(ひめうず)や 儚く繊細 春に揺れ
      
          鼠黐 未だ蕾の総 春日長
        椿奥 一輪見たり 残り花
          紫陽花や 嫩葉 日一日 萌えに萌え
       金水引き 抜かれ戻され 春悲し
        金水引き 花や勢い まだまだ まだ
        
       シャスタ―デイジー 蕾見つけり 花は何時?
        シャスタ―デイジー 葉葉 緑緑 春日影
       シャスタ―デイジー 去年(こぞ)より 叢(むら)広くなり
        姫菫 株 路傍に 二十一
          姫菫 紫の花 また 花 花
           黄水仙 その風姿 風姿あり
          用水路 せせらぎの小夜 花の雨
        不思議な葉 見つけたあの日 花筏(はないかだ)
       葉の上に 浅緑の小花 乗せ 花筏
         花絨毯 座りて 暫しの憩い哉
        花の雨 辺り一面 霞籠む
    嫩葉萌え 蕾開きぬ ライラック
         ライラック 蕾(らい)結び初む 春の雨
    
        花水木 嫩葉許りや 淋しき春
         花水木 花なく 嫩葉 しほしほ
          
              - 我が庭のではなく街路樹の花水木を
                       見上げれば
        花水木 梢 梢に 蕾あり
  
         三日後や 桜満開 春爛漫
           一声あり 見渡せど 鳥影見えね 
                     平成29年4月8日
                         <21首>
花見逍遙 花曇りなれば 心憂し
        花曇り 満開の下 愁えあり
  
          花の雲 見ぬ桜並木 いと侘し
        花曇り 匂わぬ桜 物寂し
          桜花 緑扱き混ぜ 春の錦
             花見逍遙 終えば また 胸痛 痺れ
         
  
        暮靄(ぼあい)濃し 花の行方や 如何にあらむ
         眠れぬ夜半 花の雲想う 花見かな
       白き花びら 路に散乱 辛夷(こぶし)なり
        春嵐や 怨めし辛夷 散りぬれば
          ひらり また 白木蓮散りぬ 音もなく
       木蓮も 辛夷も 好き哉 揺蕩いぬ
        辛夷散りぬ 花これからと思いしが
         腕曲し 頭(こうべ)垂れるや 著莪(しゃが)の花芽
          花咲けば 著莪 頭上げぬなり
        諸葛菜(しょかつさい)*邂逅 楽し 春の庭
                     (*花大根の別称)
 芋酢漿草(いもかたばみ)想わぬ出会い 春の喜び
         萌黄色 此処彼処に生いぬ 雄の万年草
      長実雛罌粟(ながみひなげし)小さき小さき蕾(らい)頭(こうべ)垂れ
蔓桔梗 紫の咲きぬ 此処彼処
        晩靄(ばんあい)や 唯 門の耿耿と
                     平成29年4月9日
                         <19首>
花冷えや 窓閉じ 花見想うらむ
          花嵐 過ぎぬ 花の春 行き過ぎぬ
         花酢漿草 まだ古葉そのまま 打ち拉(ひし)がれ
          酢漿草の黄花 窄みぬ 春の夕
        アガパンサス 剣状葉萎れぬ だらしなく
         崖に生う アガパンサス 水仙凌駕 秋の景
         冬最中 アガパンサス 衰 水仙 勢
            水仙咲きぬ アガパンサス 沈黙
         アガパンサス 淡碧紫色 何時咲くや
         春嵐 椿 遠近(おちこち) 落ち椿
            春嵐 枝の椿も 枯れ色に
         春嵐 夜叉五倍子(やしゃぶし)の花穂 路の上
       蠢(うごめ)きぬ 夜五倍子の花穂 悍(おぞ)ましき
 芋虫と見紛い 足や 竦ませぬ
          我(あ)が庵 春来るなば 猪(しし)来る
         昨夜(きぞ)の庭 乱暴狼藉 (しし)訪い
          昨夜(きぞ)音 彼(あれ)ぞ 猪の物色音 
        
       桜花 時こそ来たれり 今や満開
  
         桜花 ひらり 音なく 風もなく
                    平成29年4月10日
                        <26首>
         薄曇り 高曇りの空 花曇り
           桜花下  菜の花見ぬ 春や寂しき
               桜花 右 菜の花 左 散歩路
         菜の花や 日 白く光りぬ 花曇り
           蔓桔梗 対生の葉葉 青青と
             雪柳 小花 満載 枝(え)重そう
              雪柳 白き枝垂れ尾 揺れに揺れ
           風無くに 雪柳の枝垂れ尾 ゆらりゆら
          雪柳 大揺れ 小揺れ 春風に
             雪柳 おいで おいでと 誰招く
         白木蓮 無情 花びら 散り果てぬ
             白木蓮 あっと云う間や 花盛り
                瞬く間 白木蓮の 花盛り
           白木蓮  昨日の華やぎ 今何処(いずく)
          花韮 海蘭 蔓桔梗 紫濃淡 色々に
           花々の淡紫や 初夏呼ぶ色
             落ち椿 花韮の隣に 身を潜めぬ
           花韮や 今盛なり 椿下
            花韮盛り 青紫も 淡紫も
           花曇り たんぽぽの花 花やかに
             花曇り たんぽぽの黄色 ハレーション
          幻か 朝靄にのっと 桜花
    
            紅嫩葉 紅蕾 萌えぬ 要黐(かなめもち)
           生垣の要黐 刈り込みぬ 花曇り
            あっ ご免ね 蕾剪(き)込みぬ 要黐 
            淡桃の 椿 また笑みぬ 小さき幸
                      平成29年4月11日
                           <23首>
         春雨に 散り初むるや 初桜
          花屑の 散らばる路や 暫しそのまま
        花曇り 揺蕩(たゆた)う心 春の心
           薄曇り はや迫り来るや 春の宵
            花曇り ひたひた寄する 藍の闇
      姫烏頭(ひめうず)や 小さき小さき 苧環(おだまき)の如
       姫烏頭強し 路傍に 野辺に 庭にも 咲きぬ
        姫烏頭 強し 嵐にも 雨にも耐えぬ
      何事も無く 長閑かに映りぬ 姫烏頭の景
       酸葉(すいば)のロセット豊か 青青と
         酸葉の花茎 ぐいっと 伸びたり 春時雨
      姫烏頭 咲けば 其処は懐かし 鄙の景
       
        珠簾(たますだれ)の葉 柿の木下で 細長く
       柿の苧環〔=枯れ木〕 今や芽吹きぬ
         柿芽吹く 枯れ木覚醒 春の情
       青木の花 この春満開 去年(こそ)見ぬに
      青木の花 紅色四片(よひら) 十字形
        青木の花 三々 五五に 微笑みぬ
     
        種漬け花 プランターに侵入 満足気
         種漬け花 薺(なずな)に似たり 遠縁なのね
               種漬け花 何処か懐かし 鄙の形
  
       木の葉光り さんざめきぬ 春風に
        春草千草戦ぎぬ 細波の如 
                   平成29年4月12日
                        <21首>
      桜枝(え)や 透かす 行雲(こううん)絹刷くが如
        雲流る 白絹 棚引く 淡碧の空
         見上げれば 空一面や 桜花
          見上げれば 桜満面 吸い込まれそう
       春風や 花びら翻弄 右 左
         花の雲 淡紅雲の 春の空
          またひらり ひらりまた散り 春長閑
      
       振り向けば 花花花や 桜並木
         桜並木 飛花一片(ひかひとひら)足許に
          ひらり ゆっくり 飛花一片 春長閑か
二色(ふたいろ)の八重桜笑む 一樹(ひとき)や 不思議
 
          淡桃色 濃桃色の桜花 一つ樹に
           ひらり ひらり 花の散る野辺 春の情
        ひらりひら 桜並木の路 花びらラグ(rug)
         めくるめく 桜花の絵巻物や バスの窓
        
          家々の間に間に 桜木 姿みせぬ
           桜散り 落ち椿あり 行くや春
           花茎伸び 葉葉段々の 葉牡丹かな
            葉牡丹や 段々に葉葉 列(つら)ねおり
             葉牡丹は 春移ろうに 姿替え
           花茎伸び 黄小花笑みぬ 葉牡丹や
                      平成29年4月13日
                          <22首>
            千切れ雲 流るる形 千々変化(へんげ)
           朝昼晩 千々に移ろう 春の候
        チューリップ 葉に抱かれ咲初む 淡紅が
           谷間の 山桜笑む 遅き春
          藪虱(やぶじらみ) 名にし負わぬ 清楚な風姿
           藪虱 山辺に咲きぬ 秘やかに
            赤芽樫(あかめがし) 新芽 紅色花の如
          著莪(しゃが) 笑みぬ 伐採 倒木の間に
           繁縷(はこべ)愛らし 鶏も二の足踏むらむ
         あさしらげ(=繁縷)薹(とう)立ちぬれど 花可憐
         長実雛罌粟(ながみひなげし) 蕾俯(うつむ)く 含羞かな
   
        種漬け花 薺(なずな)とや見ぬ 白小花
         種漬け花 今盛りなり 菜の花終わり
        雀野豌豆 烏も絡み 花盛り
         野豌豆や 蟻一匹の 忙し気
           蟻一匹 滑るが如きの急ぎ足
        己が頭(ず)より 大きな餌運ぶ 蟻一匹
      胡瓜草 モータープールの縁 轢かれぬように
         
         花屑や 淡紅色の雪の如
        桜 飛花 一片(ひとひら)ひらひら 散り惑い
         当て所(あてど)なくさ迷いぬ飛花 一片(ひとひら)二(ふた)
        三つ葉躑躅(つつじ) 枯れ木立ちの向こう 見え隠れ
                     平成29年4月14日 
                           <34首>
           花見がてら いつもの路を 遠回り
          近づけば 桜 木蓮 春の宴/艶
         飛花 ひらり 蝶々 ひらひら 舞い遊ぶ
          蝶々舞い 花見顔の蒲公英(たんぽぽ)かな
            初蝶 桜花の中へ 消え去りぬ
              種漬け花 実細き棒なり 菜の花似の
            薺(なずな)の実 小さき小さき 軍配団扇
           卯の花 消えぬ 何故(なにゆえ)の伐採や
             卯の花伐採 ほんに 酷きこと
               二十八年間 卯の花との出会いや 初夏の訪れ
             二十九年目 哀し 出会う卯の花 無かりせば
卯の花の匂う山辺や もう昔
        勿忘草 邂逅(かいこう)春の 贈り物
         忘れませぬ 路傍に笑みぬ 勿忘草
        長実雛罌粟(ながみひなげし) 蕾俯く 花咲くまで
         渋朱花 雛罌粟 あら もう 罌粟坊主
           日向丘 たんぽぽ たんぽぽ 長閑きかな
            日向丘 たんぽぽ一面 黄 黄 黄色
         辺り一面 たんぽぽ 野辺の花飾り
           日当たりの良きや たんぽぽ 黄金色
             風光る たんぽぽの丘 漫ろ歩き
          白花たんぽぽ 花茎やすらり 春日中
           路傍沿い たんぽぽ咲きぬ 点点と
             たんぽぽ 1輪 2輪 … 合計 22輪
          遠目には 白鳥(しらとり)舞いぬ 辛夷(こぶし)かな
           春風や ひらひら踊る 辛夷かな
             酔ったよう 花色変化(へんげ)八重桜
              白から紅 酔(すい)桜とや 名付けなむ
           山桜 ぱっと開きぬ あどけなき
            山桜 花散り 葉萌えぬ 赤褐色の
  
             花人(はなびと)や 我(あ)一人なり 桜並木
            花人ら 桜下 お喋りに夢中
                      平成29年4月15日
                           <27首>
       著莪(しゃが)盛ん 水仙果てぬ 崖上下(うえした)
            著莪 我が世の春 来たるらし 崖の上
           著莪花冠 薄色 儚くとも強し
             紅色の笑み満面 花椿
         花椿 紅紅 圧倒 春闌
            椿落つ 満開愛でる間や なくに
         
             八重椿 花莚(はなむしろ)延べ 春の宴や
           フリージア黄花 開きぬ 椿下
            チューリップ 朱 黄 ピンクや 艶やかな
   
             篠叢枯れぬ 枯れ葉分け 新芽探しぬ 
  
           
          桜並木 花びら 敷かれ踏み 淀みぬ
             花びらや 淡紅長く 路傍沿い
            遠目には 花色同じ 桜 桃
     
           桃とや見む 桜とも見ゆる 春の花樹
          花散り 嫩葉萌え 彼(あ)は やはり桜
           連翹(れんぎょう)や 黄花 鮮やか 散歩路
            連翹 見ぬ 其処彼処見ぬ 我(あ)が庵(庭)も
          連翹 消え 春の楽しみ 一つ消え
           芝桜 花壇の縁や 埋め尽くし
            芝桜や 花色 白 桃 藤 紫
       芝桜 盛(も)り上がるなり 花盛り
        芝桜 昨日まで 二 三輪許り
 
         一斉笑い 今花やぎぬ 芝桜
    
         花韮の叢(むら) ムスカリの三角帽子 紫の園
        花韮 まだ咲き誇りぬ 我が世の春や
          木瓜(ぼけ)光る 暗赤色の花 光る
                   平成29年4月15日
                        <31首>
         八重桜 また 二 三輪 紅に移ろいぬ
 彼(か)の桜 盛り過ぐれば 淡紅に
   薺(なずな)群れ立ち花咲きぬ 春の野辺
     クリスマスローズ 春にも花咲き 名ぞ 似合わぬ
     荊茨(さるとりいばら) 淡黄緑の小花 毬に集いぬ
      荊茨 フェンスに絡みぬ 雌花(しか)や雄花(ゆうか)や
     石垣上 蛍袋(ほたるぶくろ)に出会いぬ 久し振り
  
     柿の枯木 未だ芽生えぬ 冬の景
        アディアンタム 枯れ果てぬるや 惜別の情
  
          せせらぎ聞こゆ アディアンタム 嫩葉萌え
           枯れぬれば 嫩葉萌え出づ アディアンタム
         アディアンタム 果てしと思うも 嫩葉出づ
         藪椿 嫩葉に残花 一輪あり
          連翹(れんぎょう)浅緑の谷間 黄一点
          連翹の 黄花燃え立つ 庭のあり
        
                   -桜吹雪の候を想い起こしつ
         桜吹雪 路上に 波紋 風立つ毎
          花波紋 風吹くたびに 変化(へんげ)千々
           変化する 花波紋 飽きず眺めおり
         花吹雪 人影佇まい 花袋
          花吹雪 我(あ)衣手に 雪の降る如
             花冷え 晴れ 花曇り 春目まぐるし
更地あり 春草の園となるらむや
      
        早々と 仏の座 姫踊り子草や 咲きぬなり
       雪柳 宴〔=花盛り〕の後の静けさよ
        胡蝶 一匹 萌黄の谷間 縫い飛びぬ
                -彼方の木蓮の花びらと此方のが落下
                   石垣下で混ざり合いぬを見て
          石垣下 彼方此方の木蓮 落ち合いぬ
  
         
        路の端 軍配上げたり 薺(なずな)の実
        茎真っ直ぐ 薺 実結びぬ 段々に
         草木瓜(くさぼけ)や 朱赤の八重や 竹の垣
         木瓜の八重 突き出づる枝 萌黄の葉
        
        チューリップ 五色(いついろ)色々 赤白黄橙桃
            
                    平成29年4月17日
                        <23首>
          桜花びら* 覆い尽くしぬ  池の面
                 (* おうかとはなびらの重ね読み)
           池一面 花びら浮かびぬ 花の末
            池の面 桜吹雪の 後の景
           谷間(たにあい)や せせらぎの音 花筏
       荊茨(さるとりいばら)我(あ)が庭 花見ず 二十八年
        荊茨や 山帰来(さんきらい)と 君は呼び
         過ぎし日は 山帰来の葉で 柏餅を
          黄  黄 黄 たんぽぽ咲きぬ 野辺一面
            路傍でも たんぽぽ 喜 喜と 黄を咲かせ
          路傍のたんぽぽ 咲く 春のラッシュアワー
           春嵐 たんぽぽ 如何 涼しい顔
            白花たんぽぽ 凋み 唯 凋みおり(綿毛見ぬ)
         菫 蒲公英 ... 路傍や 春爛漫なり
     
         棕櫚(しゅろ)木立 邂逅 二十数余本 生い
          棕櫚木立向こう レンガ造りの屋敷在り
            棕櫚の花 白黄の房や ぽってりと
          棕櫚の花 咲く我が庭や 遠き昔
           棕櫚の實生(みばえ)共に引越しぬ 新しき住処
         引越し先の庭に生う 棕櫚十八年
          また引越し 棕櫚 庭と合わぬや消えぬ 哀悼
       思いがけず 棕櫚再会 近郷で
                   平成29年4月18日 
                       <21首>
         枇杷黄葉 拾いぬ 春の嵐の後
             芝桜 打ち拉(ひし)がるる 春の嵐に
          躑躅(つつじ)白 紅に混じり(ほころ)びぬ
                     -公園春草を眺めていると小虫が
                       警戒音を立てて目の前で
                         威嚇行動を
        小虫 スクランブル 春草 愛でているだけなのに
       小虫 スクランブル 我(あ)敵機であらなくに
        春女苑 嫩葉群れ生いぬ 雨後の景
      犬鬼灯(いぬほおずき)此処ら辺りや 去年(こぞ)生いぬ
      かすま草 柄先や 二輪 二人静か
         胡瓜草 空色小花挿頭(かざ)しぬ 薹(とう)立とうとも
       何処までも 打ち続くや 雀の槍
     長実雛罌粟(ながみひなげし)咲いたり散ったり 窄んだり
       主(あるじ)見ぬ庭 チューリップの留守居哉
 
        ラッパ水仙 それぞれや 咲き誇りぬ
      路上に波紋 花びら 嵐過ぎ
       ベンチにも 桜花びら 舞い降りぬ
        桜散りぬ 赤褐色の 嫩葉萌え
      嫩葉青 山万緑 空碧く
          谷間や 萌黄 萌葱に 浅緑(あさみどり)
       花椿 緋色に輝きぬ 緑なか
        花椿 地上火色に 燃え果てぬ
       花椿 散りて一片(ひとひら)スピーディ
                  平成29年4月19日
                       <21首>
        春風や はためく幟(のぼり) 春祭り
        花散りぬ もう樹々にも 路にも花びら無く
      
         桜散りぬ 花びら何処へ 行ったやら
       山は未だ 桜の錦 里散りぬれど
        八重椿 はっと息呑む 緋色哉
         花椿 灌木に刺さり 二度咲きぬ
       山桜 花の波紋や 夕陽映え
        帰路見つけり 延胡索(えんごさく)* 珍しき山野草
                  (*紫紅色の長い距(きょ)形の花を咲く)
         延胡索 アスファルト路の裂け目や よくぞ生えり
          知らぬ間に 窄みて散りぬ 名知らぬ草
        ヒマラヤ杉 垂れ枝(しだれえ)見れば 懐かしき
         春風や ヒマラヤ杉枝枝(ええ) 揺れ揺れぬ
       実桜(みざくら)実集まり垂れぬも 未だ青き
       実桜や まだ青きまま 春闌(たけなわ)
    
         風光る 水光る 春 光るとき
                 - 車の往来烈し路に街路樹として
                     植えられしを見つつ
       轟音に 息絶え絶えや 花水木
            春のカフェ 佳人一人 時静か
         美味なりや 芋虫や食む 実桜の葉
       八重の木瓜(ぼけ)暗橙色 大輪なり
         暗橙の大輪 木瓜の花とは 思ほえで
           いつも出会う 木瓜や一重の 鄙の花
                    平成29年4月20日
                        
       ライラック 花房垂れぬ 垣根越し
          リラの花 一つ一つの 可愛さよ
          リラの白 茜に染り 夕陽映え
        リラの花 咲く頃 春の別れかも
         リラの花 咲く頃またの 出会いあり
    
        馬酔木(あせび)の実 摘み取りにけり 来春備い
          馬酔木(ばすいぼく)嫩葉ぐんぐん 帯紅色の
       
         緑葉 重ね 酸葉(すいば)野辺のアクセサリー
          花茎伸ぶ 萌葱の蕾 付く酸葉
         春嵐 蓬の嫩葉 薙ぎ倒されぬ
          立ち上がれり 蓬の嫩葉 安堵(ほっと)せり
           土筆 見ぬ間に 杉菜 生いおりぬ
            土筆生う 用水路の縁 昔 土手(どて)
 
             土手歩き 土筆積んだは 遠き昔
           土筆摘み たんぽぽ見つけぬ 土手懐かし
       
        延胡索(えんごさく)探すも 花や 此処一処(ひとところ) 
         延胡索 花 不思議な風姿 鯱(しゃちほこ)似
          延胡索 花 尻尾上げ 春愛でる
        
        今一度 蘇りなむ 芝桜
         クローバー 繁し 着々と叢(むら)広げおり
           四つ葉ありや クローバーの叢中 捜したり
        三つ葉でも 愛(かな)しかるべき クローバー
     
         軍配薺(なずな) 何時もの処 いつもの春
          植え込み中 藤色の躑躅(つつじ)初見なり
            花の色 三つ葉躑躅(みつばつつじ)や 桜似かな
             遠目には 桜花かとぞ 三つ葉躑躅
         行く春を 惜しむや 三つ葉躑躅の桜色
      延胡索 花(はな)早(はや)莢(さや) となりにけり
      延胡索 多年草なれば 来年また
 
                   
       嫩葉 今 皆 幼なき風姿 あどけなき
        樹木 彼方此方 嫩葉萌え出づ 初夏の気配
       草木 萌え わが身ひとつぞ 老いぬるは
       
         梅や 早や 実結びおりぬ 未だ小さき
           馬酔木(あせび)嫩葉 花開く如く 帯紅色の
            酸葉(すいば) 蕾 紅帯び 茎 伸び伸び
        酸葉 淡紅色の花穂 伸びやかに
      
          越し来たり 見慣れぬ蔓木 我(あ)が庵に
        葉裏見れば 蔓茱萸らしき ようこそお越し
                     平成29年4月22日
                          <22首>
        樫 馬酔木 槿 公孫樹 萌え 萌えぬ
         酢漿草(かたばみ)や 地這い重ぬる 葉葉 萌葱
         酢漿草や 立ち姿 いつもの春の風姿哉
          立ち上がり 酢漿草 何を 眺るらむ
         石垣下 赤褐色の酢漿草 生いぬ
      紫酢漿草 碧紫色の花 擡げぬ 次々と
       紫酢漿草 花一輪 蕾の塊(かい)より
        紫酢漿草 紫陽花の側 春行くや
       
      春の末 菫も生いぬ 葉も花も
       姫菫ならぬ菫や 路傍の紫花(しか)
        何時のこと たんぽぽの綿毛 飛んだのは
                   -長い間、春に歩道沿いの蒲公英の行列と
                      出会う楽しみを今春 奪われて
          蒲公英の行列消えたり 春悲哀
         この春や 春野芥子 路傍に代わりおり
        大根の白き四片(よひら)や 塊り咲き
          大根や 白き薬玉 葱坊主の側
            何時までも 葉葱や 葱坊主には 何時のこと
             薺 (なずな) 実結べば 〔ぺんぺん〕 三味線の音
         葱坊主 畑に凛々しき 姿や見ぬ
          畑には 萵苣(ちしゃ)独り 萌葱と褐紅
        烏野豌豆 巻き髭 絡ませ 花咲かせ
       
                   平成29年4月23日
                        <26首> 
        蒲公英の 綿毛 何処(いずこ)へ パラシュート
          たんぽぽの丸い綿毛や 白きポンポン
        菫の群 蒲公英に隣りて 春仲良し
            白花蒲公英 茎横倒れ 春の末
       
        茱萸(ぐみ)の実や 心弾にぬ 初夏の出会い
  蔓揺れぬ 見れば 茱萸の葉 青き実も
      花壇から 飛び出したりや 子持ち撫子
       万年草も 驚くや菫 去年(こぞ)の倍 
        田平子や 溝底に華奢に咲きぬ
      金雀枝(えにしだ)黄金の胡蝶舞うが如
       胡瓜草 薹(とう)立ち 八方乱れ咲き
        野豌豆 烏も雀も 莢(しゃ)付けぬ
         野苺 見つけたり 初夏の草叢
          野苺や 菱形の葉葉 開きおり
       烏野豌豆 伸びたり塀の上近く
 野豌豆 巻き髭絡ませ 伸びない野草
          〔絡む〕相手なくば 探し高く伸びぬなり
       芋酢漿草(いもかたばみ)衰頽(すいたい)数輪 残しつつ
       蝶二匹 舞いや楽し気 菜の花なくに
        蝶蝶 デュエット 春の調べ
     虎杖(いたどり)群れ生い二百余 唯 驚きぬ
      荊茨(さるとりいばら)未だ花見ぬ 嘆きあり
       淡萌黄の塊り咲きぬ 二十九年目の初夏
     長実雛罌粟(ながみひなげし)酢漿草(かたばみ)立ちて見上げおり
      夕なれば 酢漿草 窄(すぼ)みぬ 寂し初夏
       山眠り醒め 萌え萌えぬ 取り取りに
        山笑う 嫩葉織りなす 萌黄の錦
          谷間の嫩葉 萌え萌え 燃えるが如
       哀れ 伐られ 卯の花 蘖(ひこばえ)もなく
        純白の愛(うるわ)しき哉 リラの花房
         花水木 嫩葉ばかりの 葉の見*哉 
                    (* 花見を捩(もじ)って)
          花水木 紅に光りぬ 入日なか
            
       夕闇に浮かぶ 躑躅(つつじ)の 桜色
         野茨や 嫩葉折り畳みぬ 折り紙の如
      
                       平成29年4月24日 
                            <首>
万緑や 夏茱萸(なつぐみ)の白花 浮かびおり
          池の面 花びら沈みて 逆さ〔八重〕桜
         木通(あけび)フェンスに絡み 夏備(もよ)い
            柿古木 漸う 芽吹きて 柿の風姿
        菖蒲(しょうぶ)の蕾 苞に包まれ 睡りおり
  
           造成地措かれ 初夏の野となりぬ
        
         塀に這う 夏蔦横へや 棚引きぬ
          古木に這う 夏蔦縦へや 登り行きぬ
                   ―別の場処で、隣の古木より
                     わざわざ電柱に這うを見て
       夏蔦や 電柱に這えおり 古木の隣
         変化(へんげ)自在に這う 夏蔦 自然の妙
       紫の花花花 花大根
        フェンス際 咲き乱れるや 花大根〔/諸葛菜〕
     
       今はもや 花散りて 葉桜の候となりにけり
       梢の葉の 柔らかき哉 葉桜の
        遅れ咲き 八重桜 今 盛りなり
 
         八重桜 彼方淡紅 此方 白
 
          八重桜 濃淡 濃艶な風姿かな
              八重桜 牡丹桜の名 宜(むべ)なる哉
        枝撓らせ 八重桜 路覆いぬ
         上望めば 八重桜と 碧き空
         蛍袋(ほたるぶくろ) 花待つ間や 初夏の楽しみ
          紫露草 一日花 の儚さよ
                      平成29年4月25日
<28首>
路傍の木通(あけび)存(ながら)えむや 君もあ)も我(あ)
       岩蔭に 雪の下(ゆきのした)邂逅 あの日より
 邂逅 唯 歓喜のみ 雪の下
           邂逅は 夢のまた夢と 思いしが
         路傍にや 初夏の千種 蒲公英(たんぽぽ)も
       橋の縁(へり)夏蔦 繁し 縁飾り(ふちかざり)
          藪虱(やびじらみ)実放射状に 散らしおり
        この野路(のみち) 何処まで続くや ロマンティック
      この蘖(ひこばえ)何(な)の木の切り株 から生うや
       石楠花(しゃくなげ)や ちょっと覗かせぬ 遠き垣根
       蕾あり 菖蒲(あやめ)杜若(かきつばた)何れにあらむ
        山椒(さんしょう)実生え 忽然と消えぬ* あの春愁え
                       (*突然死 枯死)
 
         山椒の実生えあり 我(あ)が庵に
          緑風 涼風 樹々吹き抜けぬ
            躑躅(つつじ)華やぎ 賑わい ときめきぬ
       平戸(ひらど)皐月(さつき)芍薬も
         八重桜 暗紅の紅葉 春に情 添え
        紫陽花 斑入り葉 緑白の鮮やかな
          帰り路 遠回りしたり 初夏探訪
           芍薬(しゃくやく)紅の大輪 散歩路
         擬宝珠(ぎほうし) 斑入りの嫩葉 七重八重
          散歩路 石段ゆっくり 老いの初夏
         ピンクと白 初夏の小花や タペストリー
         初夏の庭 雑木仕立てや 風趣あり
           人住まぬ 壁に夏蔦 荒寥(こうりょう)
            豌豆蔓 天まで届くや 蝶形花
                     -あまりにも良く育ちし ほうれん草
                        に出合いて昔日を思い出しつ
         ほうれん草 ほうれん棒よ と叫びし君
         
           散歩後に 苺四粒 我(あ)が幸せ*
                  ( しあわせ=四合わせと見て)
   平成29年4月26日
                         <22首>
          葱坊主 愛らしき 小さき 手毬の如
             
           葱坊主 林立生いぬ プランターに
            葱坊主 皆背比べ 初夏の風
           葱坊主 玉萵苣(たまちしゃ)と隣合い
            玉萵苣や 瑞々しき哉 フリルの葉
           玉萵苣や 葉暗紅色 収穫時
          ミントの葉 日増しに 大きく多くなりぬ
         
       我(あ)が庭の擬宝珠(ぎぼうし)の葉 不思議な色合い
          緑 白 濃茶 の三色(さんしき) 織り成す妙
              何故(なにゆえ)に 擬宝珠三色 土壌のせい?
          三色の擬宝珠 今年まだ見ぬ いと寂し
         
       酸葉(すいば) 花茎 伸びぬ 伸び伸びと
          願わくば 嵐こぬこと 酸葉そのままに
 
       葉牡丹や 五段階 の変化(へんげ)あり
         葉牡丹や 葉牡丹の如 開きぬ風姿
        葉牡丹や 幼葉 窄みて 塊りぬ
           枯れ葉 掻(か)かれ 茸の如き 立ち姿
          薹(とう)立ちぬ 菜の花似の 黄色四片(よひら)
         葉牡丹や 黄小花 花火の如 四散せり
      ライラック もう萎るるや 玉響(たまゆら)の命
        崖に生う 藤 藤棚無く 有りの儘
         藤嫩葉 ぐんぐん 蕾の房も 垂れ
   
                      平成29年4月27日
                            <首>
       シャスタデイジー シャスタ山麓に 自生のロマン
                  -シャスタデイジーは〕アメリカ人に
                   よるフランス菊と浜菊の交配種
                     シャスタは米国西部の山
  
      シャスタデイジー マーガレット似の 可愛い花
       シャスタデイジー 神戸でも 古きお馴染み
        シャスタデイジー 我(あ)が庭にも お目見得し
       初年 一輪 数年後 庭一面や 咲き乱れぬ
        それからや 忽然と消えたり シャスタデイジー
            今年 蘇生 幾輪咲くや ときめきぬ
      長実雛罌粟(ながみひなげし)独りも 群生も 自由気儘
        長実雛罌粟 小さきも大きも 風姿千々
           にゅうにゅう 生う虎杖(いたどり) 一寸 困り者
        すかんぽ*は 食べられるんよ と 幼き君
                 (*すかんぽは虎杖の別称)
            苦そうと 後込(しりご)んだ 苦き想い出
         ふわふわ軽い たんぽぽの綿毛 風 暫し待て
          風よ 暫く たんぽぽの綿毛 愛しければ
           たんぽぽの綿毛 愛らし 玉響(たまゆら)なれど
         
          蕾開きぬ ジャーマン・アイリス 白き大輪
        ジャーマン・アイリス 鄙の里にはそぐわぬ 豪華
         池に生う黄菖蒲 まだ蕾なり
          
           鈴蘭鉢 そっと置かれぬ 門扉脇
          苺 何処(いずこ)探すや 我(あ)が狭き庭
            苺 まだ生うを見ぬ 寂しき初夏
          花水木 花盛りなり 淡紅 白
       
                    平成29年4月28日 
                        <24首>
         満目 萌黄 山麓も 谷間も
          朝の窓 開け放たれば 初夏の風 
桃の花 散りぬれば 柔らかな嫩葉
          石垣覆う 藤咲き初みぬ 淡紫の
           疎らに咲く 藤の花房 山辺の素朴さ
         
         野茨や 嫩葉嫩葉の蔓散らしぬ
          此処いらよ と探すも 蛍袋の姿見ぬ
           葉影から 鮮紅の花や 撫子(なでしこ)の
         未だ咲くや 撫子すこし 春の末
            八重桜 麗し 花と葉 扱き混ぜて
          匂い立ちぬ 薬玉のような花塊 八重桜
           花淡紅 葉紅褐色や 八重桜
           山葡萄 古きに新蔓出づ 嫩葉もや
              古き蔓や 枯れたかと 案じおれば
            山吹や 黄金色も 実のなくば
             山吹の 実の全き無きや 何故(なにゆえ)や
            山吹や 花より 髄(ずい)なり 白色の
                    -小さき頃 山吹きの茎を切り
                       髄を出したる遊びを想い出し
山吹の 髄出しぬ すぽんとや
 山吹や 八重は絢爛 一重や素朴
             山吹一重 山辺に佇む 侘びの情
          
            紋白蝶 ひらひら ふらふら 落葉に止り
             紋白蝶 玉響(たまゆら)の憩いや 落葉上
            紋白蝶 また ひらひらら 何処(いずこ)へや
                    平成29年4月29日
                          <28首>
      豌豆伸びぬ 蝶形花 舞いぬ 初夏の空
        莢やまだ 絹莢ほどなり これからなり
                      ー 別の場処で
        豌豆や 蔓延び 花咲き 下もう莢
         豌豆の花 鮮やか 紅と藤
           姫酸葉(ひめすいば) すらりと伸びたり 四十余茎
          蟻には 高木林や 姫酸葉の叢
        酢漿草(かたばみ)も立ち上がりぬ 茎 葉 花
        草叢も 背高くなりぬ 初夏温暖
 草叢や 伸びたり 初夏の 気動聞き
          初夏の千種 皆立ち上がりぬ 伸び伸びと
         酸葉 淺緑の 花穂 淺紅に
       
        胡瓜草 実段々に 花頭残しつ
                   - 木の名分かぬ切り株に生う
                      蘖を眺めつ 
          蘖(ひこばえ)まだ幼くも 花密生
           蘖に花 素晴らしき哉 自然
         セコイヤや 細き細き葉萌えぬ 枝枝に
          嫩葉摘む 蓬の匂い 初夏の匂い
           青嵐 山辺歩めば 匂い遣(よこ)しぬ
            青嵐 我(あ)が庵にも 吹き込みぬ
           蓬餅 食(は)めば 行く春 惜しまるる
      
        紋白蝶 ひらひら舞いぬ 虻(あぶ)特急
       
          莢 弾き 今飛び出しそな 豌豆豆
           莢剥けば 丸丸丸や 豌豆豆
         曇り鬱 且 曇り鬱 初夏の乱(れ)
         何と呼ぶや 金魚草似の 白き花房
          万両の朱い実 一つ残りぬ 残り実*や
                      (*残り花を捩(もじ)って)
      躑躅(つつじ)咲く 紅 白 淡紅 一斉に
       藤の蔓 右巻き 左にも見えり 怪なこと
        萌黄の紅葉(もみじ)暗紅の紅葉(もみじ)萌え
 
                       平成29年4月30日
                           <23首>
青紅葉(あおもみじ) 緑子(みどりご)の手のような葉葉
         青葉に渋紅 竹とんぼの如 紅葉(もみじ)の実
           紅葉(もみじ)の実 翼二つつけ 竹とんぼ
       夕日影 アネモネ 壁に 影落としぬ
        藤房や 飛び回る小虫 蜂に非ず
         藤の房 虻 来たるらし 花蜜探し
        辺り一面 野茨ばかり 山辺の景
          卯の花の蘖(ひこばえ)見つけり 頑張ってね
        銀緑の 枇杷の嫩葉や 実の青く
          姫紫苑 白花輝く初夏の空
          
           フェンス際 小菊の嫩葉 菊葉葛も
         紋黄蝶 ひらひら舞いぬ プランター
           チューリップ果てぬと知りて 哀の舞いや
        岩苦菜(いわにがな) 厭地したのか 新天地に
          岩苦菜 居場所替えたり 石垣下
         薫風や 一人でお茶を 昼下がり
       苔むす桜木 齢永きや 我よりも
         濃緑と渋紅の嫩葉や 蕺草(どくだみ)の
          金雀枝(えにしだ)や 黄色(/喜色)満面 蝶形花
         雛罌粟(ひなげし)や 暗柿の彩り 著莪(しゃが)に添え
          著莪 繚乱 いつまで続くや 命長し
            著莪 花消え 剣状葉 唯 残りおり
           日傘差し 一人佇む 老女あり
 
                     
                       平成29年 5月1日
                            <33首>
         岩苦菜 一重の黄花 蒲公英似
        
           岩苦菜 葉重ね合いぬ 石垣下
        源平小菊 何処で出会うも 花微笑 
         谷間の 萌黄葉の間に 紋白蝶
  
          紅色躑躅(つつじ)紋白蝶の お目当てや
        雑木林 青葉透かせば 白き雲
          小公園 静か 唯萌黄や 夕陽映え
           日傘揺れ 日影落としぬ 散歩路 
         ハート形の葉葉並びたり 匂い菫
        撫子(なでしこ)や 紅 淡紅の 乱れ咲き
         姫踊り子草 薄紅色の 愛らしき
          濃紫花 いずれ菖蒲か杜若(かきつばた)
        
        春紫苑 花芽寄り合い 首傾げぬ
          春紫苑 花頭 擡(もた)げぬ 初夏の風
        アマリリス 太き嫩葉に 花想う
         名を知らぬ 逆さ藤の花房 石垣に
          初見なり 逆さ藤の花穂 何処(いずこ)から
          白き花穂 彼方此方に見ぬ 逆さ藤に
         芝桜 淡紅の絨毯 誰(た)が為に
          紋白蝶 花から花へ 都忘れの
                   ー我が庭に毎年咲きぬ擬宝珠の
                       姿見ぬこそ寂しけれと思いし折
         擬宝珠(ぎぼうし)邂逅 フェンスの向こう側
         雑木林 萌黄の梢 戦ぐ 初夏
          玉響(玉響)の間に 草花や 初夏模様
         
          苧環(おだまき)や 路傍へ 鉢や窮屈なの
           苧環やあのユニークな花姿
           万年青(おもと)苧環に入(はい)られ窮屈そう
        浜菊鉢 溢れむ許りの 白花哉
         小さき蜂 纏(まと)わりつきぬ 浜菊に
            浜菊に 小さき蜂や 離着陸
             連休や 籠りし間に 終わるが常
          連休や 此の度 幾度か 小逍遙 
         柿の葉や 瑞々しいき哉 萌黄色
           たんぽぽや 綿毛飛ばして すっきりし
             勿忘草 実なるも 花頭蕾持ち
                      平成29年5月2日
                <27首>
      田平子(はびらこ) 鬼田平子 蒲公英(たんぽぽ)皆 綿毛
         樹木鬱蒼 昼猶暗き 山路かな
        久し振り 谷間の路 下りおり
         谷向こう 藤際立ちぬ 萌黄中(なか)
           針槐(はりえんじゅ)藤似の白き花房 まだ
             夏蔦や 繁し勢い 枯れ木(ぼく)に
           知らぬ 街に迷い込みぬ 感のあり
            十数年 経ちぬ月日や 実感せぬ
        な愁えそ 我存えりと 針槐
          錆びたアーチ 錆びたベンチ 寂しき庭
  
          懸崖の躑躅(つつじ) 且 躑躅 華やかな
         あ(彼)は野薔薇 躑躅と見紛いぬ 懸崖上
            山藤や 見事な許りの 花房哉
          次々と 藤房垂れ行きぬ 屏風絵の如
         藤屏風 美麗な風姿 歩を緩め
        
      宵待ち草 日中(ひなか)より咲きぬ 誰(た)を待つらむ
        藪虱(やぶしらみ) 藪超え 木(ぼく)となりにけり
        藪虱 実虱超え 何似となるや
     
       フェンス覆う 黄色の美花 名はジャスミン
        茉莉花(まつりか)の乾花浮かびぬ ジャスミンティ
        ジャスミンティ 芳香嗜(たしな)む 初夏の夕
          長実雛罌粟(ながみひなげし)実 罌粟坊主とは異なれり
       躑躅(つつじ)咲きぬ 公園のベンチ 長閑やかな
         山吹 簇生(そうせい)突き抜く 烏野豌豆
   
        酢漿草(かたばみ)地這いおりぬ 黄黄〔/喜喜〕として
        芋酢漿草 植え込みの彼方此方 彩りぬ
         淡藍の空 刷く絹雲 白き月
             
                     平成29年5月3日
 <38首>
                  -春闌わ 桜満開の候を想い出しつつ
        風吹きぬ 花屑 麗し桜色
         花影下 歩む人影 春の夕
          花散れど 萼(がく)笑いて美し 桜や妙 
         葉桜や ひらり花びら 蝶とや見ぬ
           小鳥飛び 蝶々舞いぬ 春 落葉も
         花水木 白花 残花 残照
          花水木 白きを 白き躑躅(つつじ)に譲りぬ
         残照に 映えぬ 皐月躑躅(さつきつつじ〕の紅桃色
        菜の花似の 大根の花 菜の花隣り
         大根の白花 薫風に揺れ こんにちは
          白き花 白き蝶々 白き雲
      
         紋白蝶 虞美人草(ぐびじんそう)の上を舞い
  
             -木通 葛藤(つづらふじ)切れ葉野葡萄 忍冬
               (すいかずら)野茨を眺めつ
        蔓 葛 皆まだ 嫩葉 花や見ぬ
         蘖(ひこばえ)も 初夏が我が世や 嫩葉萌え
          栗の花穂 落とされ果ては 枯色となりぬ
            青嵐 花穂悉く 散らしたるらし
         木苺の萌黄葉出(いづ)る 生垣哉
           木苺の棘に 恐々(こわごわ)遠き昔
         
         遠くより 不気味な音や 地鳴り 雷
          唸る音 身竦ませぬ 空薄墨
  
         遠退きぬ 安堵したりぬ 何(な)の音ぞ
 
         卯の花 邂逅 今年は会えぬと 諦めおりし
          卯の花 伐られ 蘖(ひこばえ)出れど花無理と
            卯の花の枝枝(ええ)白き花花 咲き誇りぬ
          ライラック 濃淡紫紅 蕾と花
              梢毎 花房開きぬ リラ美麗
         小韮(こにら) 溝底に並びぬ 蕾未だ
          万年草 黄花 ぼつぼつ 咲き初めぬ
                   -早春に花終わりまた萌え二回
                             此の度は三回目
     春野芥子 三代目なり 春先から
               酸葉(すいば)花茎も 花穂も 伸び伸びぬ
        我(あ)が庭や 今年も 酸葉 雌花(しか)雄花(ゆうか)*
                      (* 酸葉は雌雄異株 我が庭は
                        仲良く両方とも)
          
        虎杖(いたどり)の微斑の茎や 太長く
          風なくば 気怠るき 初夏の昼下がり
           鬱陶しい 薄曇り 辺り憂色に包まれり
        薄曇り 初夏にも 春の愁えあり
       夕烏 野太い一声 何の予兆
          夕烏 その声 唯 家路急ぐや
         谷間の 青葉入日差し 影深し
                  
                   平成29年5月4日
                        <23首>
         今最早 猫の髭ならぬ 龍の髭
      
        白の縁や シャスタデイジー 源平小菊隣り合うは
 
         
         気怠きや 気候のせいか 我が身かや
          気怠さを 身起こして見れば 青き空
         柿の木や 新芽なよらか 艶もあり
          濃桃色の群生や 子持ち撫子
      
         谷間の樹木 ヴォリューム増しぬ 萌黄 浅緑
          杉の大樹 深緑なり 浅緑の中
           眺めれば 谷間 万緑の綾錦
            眺望 万緑の彼方 海朧(おぼろ)
           青蔦や 古樹に絡みぬ 青青と
          迫り来る 緑の小径や 足躊躇いぬ
        散歩路 初夏の七種 数えれば
           著莪 源平小菊 酸葉 長実雛罌粟 
                 田平子 蔦葉海蘭 兎菊
       此方朱赤 彼方真紅や 虞美人草(ぐびじんそう)
        蕺草(どくだみ)や 葉増えにけり 葉桜下
         大根の花 のぼのび開きぬ 時リラックス
      
        路傍の野薔薇 幼葉 畳み 開を待つ
         路傍なれば 抜かれもするや 野薔薇哀し
        空(くう)泳ぎ 山葡萄の蔓 さ迷いぬ
        茉莉花茶(/ジャスミンティ)芳香立てば蝶舞い来 
苗代苺(なわしろいちご) 萌黄の葉 繁し 花は未だ
        長閑けき哉 春の日もあり 初夏の候
         初夏長閑か 手芸嗜(たしな)む 暇(いとま)あり
                        平成29年5月5日
                           <32首>
       韮の茎 次々と伸びぬ 蕾つけ
         雀二羽 啄む当て(=餌)無きや 飛び去りぬ
       昼日影 酢漿草(かたばみ)の黄花 皆開きぬ
       庭の酢漿草 黄の花盛り 薫る風
      
         心残るも 青芒 刈り取りぬ
          青芒 生いに生いたり 3メートル余
           青芒 葉葉 鋭き剣 突き立てた如
       韮(にら)一輪 花頭擡(もた)げぬ 早咲きや
         韮の花茎 すらり伸びぬ 溝底より
       若葉 青葉 陽降り注ぎぬ 我が庭の
        あっ 揚羽蝶(あげは)* と見れば 雀の黒き影
                    (*烏揚羽蝶と見紛いて)
        紫陽花の 蕾 嫩葉に 抱かれおり
         青い空 白い綿雲 飛行船
            飛行音 響くや彼方へ 消え行きぬ 
        緑風 庭の若葉や 吹き抜けぬ
         岩苦菜 一重 たんぽぽ似 可愛らし
          静心(しずこころ)なく 風吹き抜ける 初夏の路
        姫女苑(ひめじょおん) 課す野豌豆 棲み分けおり
         酢漿草(かたばみ)や 早 窄(つぼ)みぬ まだ午後過ぎ
          酢漿草は 夕方日影で 窄む花よ
  
         黄花尽くし 蒲公英 酢漿草 岩苦菜 春野芥子 兎菊
       
         初夏の陽差しや強(こわ)し 夏日哉
          陽差し強しも 風 初夏の涼
           栗の樹に 花穂見ぬれど 秋如何
    
          盗人萩(ぬすびとはぎ)嫩葉戦ぎぬ 小さき薫風
 
           緑陰に 玉響(たまゆら)の憩い 庭石菖(にわぜきしょう)
         初夏の野辺 野薊(のあざみ)との 望みつつ 
           野薊の姿や 見ぬ野辺 悲嘆 落胆
            去年(こぞ)の夏 野薊 無残手折られおり
          もう一度 野薊探し 見つけたり
           野薊や 嫩葉 蕾(らい)抱くも 猛猛し
            野薊の葉 鋸鮫(のこぎりさめ)の葉の如し
     
                     平成29年5月6日
                         <30首>
           一日中 ベッドの中 梅雨前に
             一日中鬱 鬱陶しき哉 葉紫陽花
        藤の房 地まで垂れたり 蔓三尺
         天水と日光だけなり 藤三尺
          若葉 渋紅 浅緑 初夏の順〔序〕
  
        青葉の樹 枇杷 葉桜 銀杏 栗 茱萸 数々あり
       樹木の若葉 萌黄 淺緑 他にもあり
           七 五 三 w葉萌ゆ 無花果(いちじく)かな
         自然熟(な)り 無花果の美味 忘れ難く
       蔦葉海蘭 立ち姿に出会えり 松葉海蘭や
            リナリア(海蘭) の 花冠の花色 リラの色
         芋酢漿草(いもかたばみ)消えたのかと重いきや 植え込み下
        芋酢漿草 花酢漿草の 妹(いも)に非ずや
         芋酢漿草 桃色濃淡 妖艶かな
       桔梗草(きょうそう)花 桔梗似なり 理(ことわり)なり
        桔梗草 果実 花茎に 段々に付け
         桔梗草の実 ヴィーナスの姿見とや
        名にし負わば 映るヴィーナス 如何な像
        箆大葉子(へらおおばこ) 花茎直立 すいすいと
          箆大葉子 不思議な風姿 初夏の野辺
         宇宙人の 忘れ帽子や 箆大葉子の花穂
          尖(とん)がり出づ 箆大葉子の葯 紫褐色
        箆大葉子 散り行くも散らぬ 花びらの輪
     
       クローバー 小花の白毬 五月雨(さみだれ)
        クローバー 小さき三つ葉の小叢(むら)あり
           葉ばかり大き 花見えぬ 叢もあり
         ほんのりと 淡紅に染まりぬ レッド クローバー
       想い出しぬ クローバー咲き乱れぬ 野辺
        クローバーの花輪(/リース)編みぬ 遠き想い出
         何時の日か 花輪編むらむ 彼(か)の野辺で
      
                   平成29年5月7日
                        <29首>
蔦葉海蘭 淡紫のグラウンド・カヴァー
       
        朝曇り 後(のち)晴れの初夏 風爽やか
          遅れ馳せ 南天の嫩葉 萌え出づる
        大地縛り(おおじしばり)鮮黄の花冠 魅惑的
         大地縛り 花 蒲公英とや 見紛いぬ
         大地縛り 背高くすらりの 蒲公英かな
        大地縛り 花茎も枝も 瀟洒な風姿
         地を這うも 突如立ち上がりぬ 大地縛り
    
        小粒詰め草(こつぶつめぐさ) 黄花 確かに小さき哉
      小粒詰め草 黄花の小さき初夏の簪(かんざし)
          小花詰め草 過ぎし日想う 芝生の庭
       谷間から吹く 緑風の下 雪の下(ゆきのした)
        この木 何(な)の木 虎杖(いたどり)の木(ぼく)
         春野芥子 茎小さきに咲く いと哀れ
        針槐(はりえんじゅ)満目満開 隣り枯木
         夏蔦に絡まれ 枯死や 針槐
          針槐 白き花房 青空満面
      
       鬼野芥子 叢(むら)生すなり 蔓桔梗も
   
         椿残花 独り?と探せば もう一輪
     
          石垣や 源平小菊の 花錦(はなにしき)
      入日差す 帰路 ふらふら 初夏散歩
     
         苗代苺 とや 触れれば 痛っ 棘草(いらくさ)や*
                  (*結局棘草ではなく苗代苺)                                               
        鉄柵沿い 何処まで続くや 苗代苺
          鉄柵終わり 苗代苺 蕾あり
       鬼野芥子(おにのげし) 集いて茂し 初夏の暑気
       シングルも ダブルにも生いぬ 鬼野芥子
        鬼野芥子 緑葉 ぶきぶき 縁(へり)とげとげ
      
        刺草(いらくさ)も 鬼野芥子も 有刺草
          刺草の 嫩葉食(は)む人 恐ろしき
      
          
                    平成29年5月8日
                         <41首>
         懸崖の 山藤 垂れぬ 藤 藤 藤
          懸崖の山藤 棚引きぬ 紫雲の如
            誰や知る 妖艶な風姿 山藤の
         山藤散りぬ 下草へ 花の如
          細長の葉 見覚えあり 兎菊
           或る年に 忽然と消えぬ 兎菊
           兎菊 見つけぬ 昔と同じ野辺
          ひょっこりと 再会したり兎菊
    
             兎菊 との邂逅や 懐かしき
            
          菊よりも コスモス似なり 兎菊
          兎菊 未だ蕾のまま 咲く日楽しみ
          彼方此方の 庭に路傍に 兎菊
           
            輝きおり 庭の千種や 皐月晴れ
             青空に誘われ 庭の草花 愛でり
          二巡目は 同じ草花 狭き庭
         谷川や 青草茂し せせらぎの音
          絶え間なく聞こゆ せせらぎ 初夏の声
         
         三つ 二つ 梅の実落ちぬ 青きまま
          韮(にら)溝底に 白き花頭の オンパレード
        姫紫苑(ひめじおん)春に遅れて 姿見せ
         姫女苑(ひめじょおん) 優しく清楚な 立ち姿
          春紫苑の隣り スラリと群れ生い
        姫女苑群生 圧巻 初夏の空
   
         姫女苑 戦ぐ姿や 艶めかし
          春紫苑 蕾寄せ垂れぬ 庭の春
         群れよりも 独り咲きなり 春紫苑
        春紫苑 シングル・ライフや 好むらむ
          春紫苑 咲けば 甘きや 蟻登り来ぬ
         春紫苑 くちゃくちゃの蕾 くっつけ合い
        
          姫も 春も 名も花形も 紛らわし
  
         細長の夏葉の 菫 菫色
          チューリップ 残花 白く気高く
          青蔦 青青 用水路壁
         酸葉(すいば) 千手観音の如 花穂放ち
  
          酸葉 すらりと華奢 手弱女(たおやめ)風
         酸葉 雄 一寸ずんぐり 益荒男(ますらお)振り
          酸葉 雌花穂 小さきポンポン 紅(あか)くつけ
           淺緑の花びら 戦ぎぬ 雄酸葉
            酸葉皆 南風(みなかぜ)に靡(なび)く 初夏の庭 
              酸葉 陽差し 背に受け 反-向日葵(ひまわり)
        著莪(しゃが)咲き残るや 紫陽花 咲くまで
                      平成29年5月9日
                         <20首>
           
          蜆蝶 花から花へ翅影(しえい)落とし
         夏草 青 白きは シャスタデイジー花 初夏の野辺
         浜菊 花鉢 シャスタデイジー 野の花に
                 - 石垣に蔦葉海蘭 田平子 源平小菊の
                     生うを眺めつ
           石垣や 三種(みぐさ)の草花 絵巻物
            田平子や 早春から初夏 命長し
                  源平小菊 シャスタデイジー 拠り合う庭の初夏
         夏蔦や 緑滴(したた)る 光輝かな
  
          谷間は 緑滴る初夏の香
            木蓮の緑滴る初夏の景
         樹木 深緑り 山辺 鬱蒼の森となりぬ
         濃紫色 大輪の花冠 花菖蒲(はなしょうぶ)
          淡紫 濃き網目の 花菖蒲
           花菖蒲 妖艶なオーラ 香りあり
      菖蒲(あやめ)ならぬ 杜若(かきつばた)なり 光琳屏風
          はい どうぞ 菖蒲を君が 今は想い出
 
            彼(か)の花や 杜若とぞ 今知りぬ
        庭石菖(にわぜきしょう) 星の雫の 花になりぬや
        淡青紫の 星形の花冠 庭石菖
         庭石菖 可憐な風姿も 凛々しくあり
          庭石菖 何処にでも 咲きぬ 庭と言わず
                       平成29年5月10日
                            <25首>
藪蘭(やぶらん)花 慎ましき哉 ユリ科なれど
尚 慎ましき花や 龍の髭よ
  藪蘭の嫩葉 茂りぬ 樫の下
         混生なり 藪蘭 薄紫酢草(すいすい)も
         灰紫の翅 青空へ舞い飛ぶ 蜆蝶(しじみちょう)
          蜆蝶 飛ぶや 辺りは 地味色に
           いつ見ても 灰紫色 蜆蝶
            見てみたき ピンクの翅の 蜆蝶
          蜆蝶 庭草の上 一休み
 初夏の小夜 静か 雨も嵐もなく
   鉄線(てっせん)〔=クレマティス〕の白花清清し フェンス際
       小判草(こばんそう) 小判形の小穂 垂れぬ
        絹糸のような柄(へい)なり 花穂つけぬ
          浅緑の花穂 浅褐色となり 小判形に
            花穂伸び 伸びぬれば 最早 小判と云い難く
     悍(おぞま)しき 花穂 芋虫の如なりぬ
        我庭一面 小判草生いぬ 初夏のあり
         始め楽し 後 悍ましき 小判草
          姫小判草 数え切れぬ 小穂散らしぬ
         風吹けば 鈴の音(ね)聞こゆ 姫小判草
           鈴萱*とは 名にし負いぬや 小判草  
                               (*鈴萱は 小判草の別称)
        涼(すず)やかな 風吹くや 鈴萱(すずがや)の小穂
         條揚羽蝶(すじあげは) 空色の翅 初夏の空
        紫酢漿草(かたばみ)黄酢漿草に代わるや 葉瑞々し
         要黐 葉蔭に 白き花束かな
                   平成29年5月11日
                         <35首>
         剪定の薔薇 萌え出づる 望みのままに
            通りすがり 紫蘭咲く頃になりにけり
          紫蘭花 淡紅紫色 食傷気味
           山肌に 紫蘭の自生 打ち続きぬ
          白花の紫蘭や清楚 初夏のオーラ
     
           近づきて 離れ 且 近づきぬ 胡蝶 二匹
            近離 離近 胡蝶二匹 舞う 初夏の空
           胡蝶二匹 求愛のダンスや 初夏の庭
          咲き揃いぬ 苧環(おだまき)の花 鉢植えの
           苧環の 淡碧の花冠 玄妙なり
           此処にもや 苧環咲きぬ 散歩路
            苧環は 和風の庭に 在らまほし
           鄙に生う 苧環も また 初夏の景
               
         見渡せば 何処も爽やか 初夏の風
          花酢漿草(かたばみ)枯れ 初夏知らずや 哀れ
         処変え 蛍袋(ほたるぶくろ)自生 逞しき
         路傍に生いぬ 蛍袋 彼(か)に非ずや と
          路の縁 蛍袋の花芽の 行列
           この間 蕾も見ぬと 侘びおりぬ
         蛍袋 且 蛍袋  且出会えり
                   - 過ぎし日 家屋が取り壊され
                  寂びれたお庭に咲く蛍袋の叢を想い出しつ
         人住まぬ 庭 蛍袋や 咲き乱れ
          蛍袋 蕾の固きの 咲くは何時
     
         暗紅紫色 白き花冠のジャーマンアイリス
   
          ドイツ菖蒲(あやめ) 豪華 他の草花から抜きん出で
          〔ドイツ〕菖蒲園 想いて圧倒されおりぬ 嗚呼
         ドイツ菖蒲 屏風絵すれば 豪華絢爛
          
          目に鮮やか 黄菖蒲 咲きぬ 池の辺(ほとり)
           池の鯉 君知るや 黄菖蒲 咲くを
            池の面 黄菖蒲映さぬ 鯉 寂しむや
         姫檜扇水仙* 可憐な風姿 初夏の空
   (*漢字一語扱い)
         姫檜扇水仙(ひめひおうぎすいせん) 雛形なれば 姫のつく
          我(あ)が庵 姫檜扇水仙咲きぬ 想い出す
           鮮やかなり 白壁を背に 咲く風姿
            姫檜扇水仙 花の色や 
              長実雛罌粟(ながみひなげし)と同じ色
  暗橙色 隣りに長実雛罌粟 咲きおりぬ
                       平成29年5月12日
           <25首>
 藤の花 散りぬれば 猶 小さき莢
 藤若蔓 四方へ延びぬ 我(あ)を掴むや
          莢似たり 莢豌豆 野豌豆
 野豌豆 花 莢となりぬ 初夏なれば
 川青葉 針槐(はりえんじゅ)の 白き花房
針槐 また針槐の 車窓かな
 白き花房 針槐の大樹 覆いけり
大空から 花房垂るるが如く 針槐
        蜆蝶(しじみちょう)花から花へ 都忘れ(みやこわすれ)の
         蜆蝶 他に目もくれずに 都忘れに
          都忘れ一途の 蜆蝶 蜜恋うるや
都忘れ 都忘るる 蜜なりや
       蕺草(どくだみ)臭(しゅう)厭(いと)われしとぞ 嫌われしとぞ
        あの臭気 なくば 蕺草の花冠 可憐 清楚
         蕺草の花 好きよと 君よ呟き
        蕺草 ひっそり咲きぬ 木下闇(こしたやみ)
       万年草 雌雄 大小 色々の姿
        花つづき* 黄小花 散らしぬ 花火の如
             (*花つづきは 雌万年草(めのまんねんぐさ)の別称)
 雄万年草(おのまんねんぐさ)輪生の葉広げて 日向ぼっこ
 
         雄万年草 針状葉や 太り気味
          雌万年草(めのまんねんぐさ)日影 日蔭厭わぬ 逞し
         逆さ藤の花房 セージと知りぬ
          セージはもや 早萎れぬる 花冠あり
       杜若(かきつばた)白花や 独り佳き 群れ咲きも
   
        チッチッチ 見遣るも 鳥影見ぬ 青葉の谷
                 平成29年5月13日
                      <42首>
      平戸躑躅(ひらどつつじ)今 花盛り 紅 白 淡紅
       平戸躑躅 満面 笑顔の花盛り
        平戸躑躅 濃紅の花花 破顔一笑
            平戸躑躅 我が世の春を 愛でる哉
       皐月躑躅(さつきつつじ)他処や花 我庭未だ花芽(かが)
         皐月躑躅 花芽 色付きぬ 五つ三つ
          昨夜(きぞ)の雨 躑躅 花そのまま 落ち躑躅
      
         突き上げぬ 酢漿草(かたばみ)尖がり帽子の実
       長実雛罌粟(ながみひなげし枯れぬれば 薄茶実雛罌粟
           野薔薇と蔓茱萸(つるぐみ)ともども 若蔓延ばしおり
       烏一声 見上げれば 小鳥の群 八羽
        小鳥の尾 燕尾服ならば 燕らむ
    
         燕(つばくらめ) 少数の空路だったの 〔大編隊でなく〕
        燕 お帰りなさい お疲れね
           燕 長旅無事終え 安堵のムード
         天敵と云うに 烏や 飛び去りぬ
         彼(か)の一声 お帰り無事での 挨拶や
           夕空を 悠々旋回 燕隊
         
        雪の下 奇想天外な 花風姿
        紫露草 碧紫 白も咲ぬ
         野路菊は 果敢無(はかな)に見えど 小菊の原(もと/原種)
         帰りなむ 花壇の小菊 原種の許(もと)へ
        山辺に生う 小菊 野路菊と隣合い
   
        岩苦菜(いわにがな)黄花 彩りぬ 石垣下
         石垣に 卯の花 開く 未だ幼き(/幼木)に
          銀の花とや 茱萸(ぐみ)の葉の裏返り
        
       梅雨めきぬ 辺りに 皐月の鮮紅花
        初夏の冷雨 草木(くさき)生き生き 霊雨となり
        白露置く 南天の青葉 そぼ濡れぬ
         初夏移ろい易き 夏日に冷雨かな
       
          いつもの処 何時もの菫 閉鎖花なれど
         路の縁 菫一輪 愛しき
       
       君が代蘭 花茎 すくっと 高く伸び
              -花びらの丸みおびぬ洋蘭がマリリン・モンロー
                    と名づけられしを想い出しつ
       君が代蘭 花の風姿 や マリリン・モンロー
          君が代蘭 生うは 木下蔭暗き
         君が代蘭 別称は ユッケ 〔メキシコ語〕熱帯産
        環境を厭わぬ 姿や 賞賛に価い
       源平小菊 花変化(はなへんげ) 白から 淡紅 暗紅へ
      
           海蘭や 蔦葉〔海蘭〕も松葉〔海蘭〕も 陸育ち
         なのに 何故(なにゆえ) 名に 海や嵌(は)めらるる
        場処代えり 山椒の若木 芽吹きおり
                    平成29年5月14日
                          <40首>
          土筆(つくし)や早春 杉菜や初夏告ぐ 小さき景色
         土筆何処(いずこ)見ぬ間に 杉菜生いにけり
           杉菜 日毎 節(ふし)毎に 葉輪に生いぬ
          山辺の野薔薇 蔓ばかり 刺ばかり
           何の花 八重咲き野薔薇 不思議顔
            八重咲野薔薇 木香薔薇(もっこうばら)とや知りぬ
          木香薔薇 木仕立て(もくしたて)の淡黄花
         アーチに絡む 八重の白薔薇 可憐で豪華
                 塀見越す 白色木香薔薇 八重に咲きぬ
         木香薔薇の 芳香聞かぬ 老いおれば
          
          松に烏 松に鸛鶴(こうづる) どちらが良しや
           松に烏 嘴(くちばし)に花穂 これも興
  烏 飛び去りぬ 松 如何思うや
         
          あぁ 悲し 桜木伐られぬ 虫食いや
        
           鬼野芥子 蜂似の小さきの 飛び回り
  
            蒲公英似の花に 飛び回りぬ 小さき蜂
           な下見るそ 葉 鋸鮫(のこぎりざめ)の歯の如し故
          花のバトンパス 酸葉(すいば)から金水引き
           紫蘭咲きぬ いつか来た路 懐かしき
           芝桜 束の間の華やぎ 蜆蝶
            木漏れ日に 下草光る 初夏の風
             青芒(あおすすき) 枯れ葉と共に 生いおりぬ
          小判草 生いぬ 青芒の下 何気なく
         
           躑躅(つつじ) 散りぬ 青葉の公園 森閑と
            梅 青葉茂るるも 実見えぬとは
 
             一樹あり 梅の実成りぬ 三つ(みっつ) 二(ふた)
           木下蔭 梅の実 無数 青きまま
         
           松落葉 松毬(まつかさ)塞ぎぬ 散歩路
        木立向こう 夕陽に輝く 青葉かな
        一八(いちはつ)枯れおり 人に知られで 草叢中
        白野薔薇 日向の草叢の 彼方此方
         小判草 歩くに続きぬ 数十メートル
          白詰め草 鈴萱 ‥ 草叢今や花盛り
       庭石菖 いつもの花とや 違う風姿
        虫舞い 舞い 私 お花じゃないの 老女なの
         虫舞い 舞い 我(あ)に華なく 老女なり
       シャスタデイジー 二輪 向こう群れ咲き 夕陽映え
       箆大葉子(へらおおばこ)長々しき花穂 悍(おぞ)ましき
            
          東屋や 書読む佳人 初夏の夕
           茎 見氏となりぬ 虎杖(いたどり)二メートル超え
 
        蘭の鉢 霞草(かすみそう) 妙な 寄せ植え哉
                   平成29年5月15日
                         <首>
          漫ろ歩き 蝶々舞い来ぬ 前(まえ)後(うしろ)
           胡蝶 赤褐色の 珍しき
         韮(にら)の茎 揺れるともなく 揺れおりぬ
          ふと見れば 向うに佇む 韮の花
           このロッゼト(根生葉)何(な)ぞ思えば 兎菊
          驚きぬ こんな身近や 兎菊
         すらりの葉重ね 花茎立てぬ 兎菊
         
      此は 何(な)の花 触れれば にゃぁ あっ虫取り撫子 
     野薊(のあざみ)や 他の野草らに 抜きん出ぬ
       先日は 野薊 草叢に埋もれおりぬ
          野薊や 葉茎 図太き 深緑
             鋸葉に棘 粘き茎 野薊や 重装備
           野薊の過剰防衛 何(な)が為に
 
              野薊草花 肉食獣に 食まれぬ筈
          盗人萩 楕円の葉 可愛らし 野薊側
            盗むなら 野薊の棘を 盗人萩
              野薊 故郷は〔何処〕砂漠の隣や サボテン生う
           野薊 花茎の頂き 花芽つけぬ
            次の折 鮮紅の花に 見(ま)みえるらむ
          忍冬(すいかずら)冬忍び 二十九年 石垣下
           忍冬 咲き初めぬ 可笑しな風姿
            忍冬 今年 葉浅緑 花芽(かが)撓(たわわ)
          
          忍冬 花芽 花芽 花芽の 花やかさ
             
         また出会えぬ 淡紅色の詰め草 レッドクローバー
          他処は何処も 白色の小毬の クローバー
             クローバー 白き ポンポン 花莚(はなむしろ)
          春紫苑 シャスタデイジーと隣り合いぬ 他生の縁や
     
                     
                     平成29年5月16日
                          <35首>
         公園ぐるり 上青葉 下落葉
           公園のブランコ ぽつんと 人影なく
             ブランコを漕げば 気分は 宇宙遊泳
         宵待ち草 小さきが 野辺に咲き萎み
          兎菊 蕾揺れるや 崖の上
           名の分かぬ 紫小薬玉 植え込みの縁
           小判草 酢漿草 子持ち撫子 咲くや 其処此処
         
         チッチッ チ 樹木 遥か 電柱の彼方
    
         山牛蒡(やまごぼう) 長楕円の葉ばかり 重ねおり
          薔薇の萼裂け 紅の唇(びる)ちらり開き
           野茨や 蕾の塊 咲くは暫く
          小手毬(こでまり) 邂逅 雪柳想い 春追想
          黄菖蒲(きしょうぶ)花盛りなり 池の辺り
        薙ぎ倒されぬ 黄菖蒲の簇(むら)あり 昨夜(きぞ)の嵐
         芍薬(しゃくやく)や 塀越しに顔見世 散歩路
          深紅の 重弁 芍薬や 姿佳き
          
          葉五裂(いつれつ)更に 三裂 何(な)の花ぞ
           花咲きぬ 風露草(ふうろそう)とや 思い至りぬ 
         風露草 小さき 淡紅紫 愛らしき
         杜若(かきつばた)七つの蕾 花二輪
          杉菜 背高く高く 木賊(とくさ)と成るや
        花酢漿(はなかたばみ)萎れぬ中から 月見草
         苧環(おだまき)の花びら全開 しどけなき
         此の野薔薇 他より大き 花冠あり
           八つ手嫩葉 瑞々しきや 溝の中
      定家葛(ていかずら) 風車風の 白き五弁
        定家葛 嫩葉に白斑 涼し気な
       小さき畑 小さき野原となりぬなり
     小さき野に生いぬ 長実雛罌粟(ながみひなげし)春女苑(はるじょおん)
     谷間の 緑に白萌黄  花や嫩葉や
           哀れ 見分け難し哉 初夏の万緑
            視力弱き わが身こそ 哀しけれ
       新緑中 萌黄葉 独り おっとりと
        針槐(はりえんじゅ) 花びら零るる路 花莚(かえん)
        陽一条や 眩しき哉 曇り空
                    平成29年5月17日
                         <首>
          あっ この葉 白緑 鋸歯(/葉) 見覚えあり
        蕾垂れ 佇む姿 謎めきぬ
         もしかして 罌粟(けし)雛ならむの 再訪や
          それとも 雛罌粟の来訪 何時ものような
   
        そういえば ポピーは何処 見かけぬ今年
         皺(しぼ)ある花びら 四ひら開きぬ ポピー
          朱 赤 黄 オレンジ ポピーの花楽し
       源平小菊 花三変化(へんげ) 白淡紅暗紅*
                  (*漢字一語扱い)
        源平小菊 可憐な風姿 何処(いずこ)で出会うも
         源平小菊 紅に移ろう 妖しの景
         微風(そよかぜ)に 戦ぐ源平小菊 いと愛し
           日増しに増しぬ 紅色花冠 源平小菊
         鬼野芥子 たんぽぽ似の黄花 春恋うるや
     
        初夏の空 朱紅に燃えぬ 何の樹ぞ
         辺りから 際立つ 朱紅 風騒ぎ
  
               名を問わば ブラシの木 の答えあり
         
        春野芥子 葉小鋭化 鬼〔野芥子〕となるや
         鬼野芥子 野薊 葉葉恐ろしの 双璧なり
          野芥子 春も鬼も 黄花や 可憐
    
                   平成29年5月18日
                        <首>
       忍冬(すいかずら) 蔓 延び延びぬ 石垣へ
                 ー懸崖(菊)のように咲きぬ 仙人草
                     見るが叶わず 哀しみおり
        葉を見れば 仙人草らし 嬉し初夏
         雑木林 下草繁し せせらぎの音
          水仙の簇 枯れに枯れ行く 自然のままに
           水仙の簇 人手入らずば 枯れるがまま
        藪虱(やぶしらみ)虱形の実 戦ぐ夕暮れ
       蔓色々 千々に生いるる 五月雨に
         鬼野芥子 葉 スリム鋭く 夏デザイン
        小判草 花穂青きまま なら 小さき小判
       春紫苑 姫女苑 どちらと問えば 小鳥の声
        雪の下 花冠 ほんに 不思議な風姿
    
         雪の下 花茎 ふらふら 伸び上がり
          雪の下 蕾下垂(したたれ) 覚束な気
       雪の下 日影 日蔭 どちらや好み
        雪の下 精気失せおり 岩の下
       珠簾(たますだれ)いつもの場処 に見ぬは 哀し
  
      用水路 初夏の野草園 千種生う
        数えれば 卯の花 虎杖 源平小菊 忍冬 夏蔦 蔦葉海蘭 ‥
       卯の花 蕾 花咲くまでや 待ちましょう
         驚きぬ 忍冬や蕾 数々 用水路
用水路 瑞々しきに 枯れ尾花
   瑞々しき 用水路の壁 夏蔦や
    
         用水路 覗けば 卯の花 枝枝(ええ)四方
         蔓の先 花と見紛う 双葉 揺れ
          源平小菊 何処でも笑顔 用水路でも
           蔦葉海蘭も 用水路の一隅(ひとすみ) 一人占め
        
        月見草 二輪優し気 ネリネ 悲惨
  
         花酢漿(はなかたばみ) 枯れ行く許り 五月雨に
          韮の花 咲き咲きて 日向ぼっこ
        窓外や 薔薇園 薔薇 ばら ばら 薔薇 
       
          源平小菊 可憐豪華な 花絵巻
            
                    平成29年5月19日
                           <34首>
        一日の長くなりにけり初夏の風
           初夏の庭 憂愁あり 我(あ)の想い
         細波(さざなみ)立ちぬ 葉葉 吹き抜けぬ 五月雨
         そよ風や 涼風にならぬ この暑さ
          気怠さよ 初夏 暑夏 となりならむ
    
         蜆蝶 舞い舞い舞いぬ 影も舞い
         五月晴れ 蜆蝶や翅 揺れ揺れ
          蜆蝶 いま一匹 翅 震わせ
           蜆蝶 2匹 舞いぬ 近離 離近
                     〔近づき離れ 離れ近づく〕
          灰青と茶 蜆蝶や 色問わぬ
     
           忙し気 蜆蝶 飛びぬ 花無き庭を
         酸葉(すいば)も 姫〔酸葉〕も 実の熟す頃となりにけり
       坂路や 小判草咲きぬ プロムナード
       小判草 続きぬ路や リッチな気分
   
        紋白蝶 飛び来 去りぬ蜆蝶
         桔梗草 枯れ草 枯れ枝 何の其の
       姫烏頭(ひめうず)や  ひ〔っ〕そり まだ咲きおり 庭の奥
       雪の下 花一斉 こちら向き
         それにしても 不思議な花冠 雪の下
       
       西日強し 慌てて日傘 木蔭まで
         矢車草 白き花冠 夕日映え
          月見草 咲きぬや五輪 黄昏前
        水仙黄昏ぬ 黄葉倒れり 哀れなり
         花揺れぬ 長実雛罌粟(ながみひなげし) 爽やかな
      
       見上げれば 卯の花 匂う 山辺の夕辺
        見上げれば 卯の花微笑(ほほえ)む 我(あ)も微笑
    
       野茨や 蕾開きぬ 白一輪
        白四ひら 葯真黄 魅惑的かな 蕺草(どくだみ)
         蕺草の花咲き初む 一輪 二(ふた)
       青紅葉 新枝(にいえ)伸び伸び 青き空
        山藤や 今 嫩葉 若蔓 花芽隠れ
          散歩路 山藤 被さり 片アーチ
       ふらふらと 帰り来む 我(あ)に 小鳥の声
        もう少し 梢の雀の 励ましかな
                 
                    平成29年5月20日 
             <34首>
      長実雛罌粟(ながみひなげし)皆 長き実となりぬ
         長実雛罌粟 サイズ色々 大中小
        長実雛罌粟 大や 虞美人草に劣らぬ 草丈
中や 花びら2センチ ほどよき茎
 小さな蜂 雛罌粟目指して 一直線
       小や 愛らし 花びら五ミリあるかどうか
花びら散り 実結びたり 長くはなけれど
       春野芥子 三代目 花茎 十三
  黄花冠 たんぽぽ似 二十 春野芥子
         まだ五月 というに夏日や 続きぬ
            野芥子 春も鬼も 暑気知らずや
 鬼も春も 野芥子 黄花を次々と
   いつ見ても 黄花愛らし 春鬼野芥子
  源平菊 皆南向き 向日性?
夏日続けば 夏虫出ずや あぁ 嫌ぁね 
       日中(ひなか)夏日 夜中 皐月の最中(もなか)なり
    
         朝夙(あさまだき) 悉皆(しっかい)静穏 且 清涼
       
       春紫苑  花冠むさむさ むさくるし
        花咲く頃 すらりの美形 春紫苑
     
        雀飛び去り 燕飛び来ぬ 初夏の空
         皐月(さつき)花 日影 朱紅 日蔭 桃紅
- 五月半ば 一周間前 姿を見せたままなので
        燕 一度来訪 それから沙汰無し
           初飛来 以来 見ぬ燕 案じおりぬ
        案ずれば 二列の尾羽(おばね) 今朝 旋回
         電線にも 止まり羽広げ 元気そう
          元気でなにより 良き巣造りに 励んでね
      我(あ)が庭の 皐月(さつき)漸(ようよ)う 花芽見せり
       不思議なり 花芽見ぬばかり なりおりしが
        青き蕾を見ぬ 皐月 花咲くとは 思ほえで
         次々に 桃紅花芽出ず 皐月
      誘われしか 皐月の暑気に 皐月
       姫小判草 一株来たり 我(あ)が庭に
        今年 小穂 百穂 時得たりや 土得たりや
       忍冬(すいかずら)まだ三分咲き 石垣下
    
                  平成29年5月21日
                       <26首>
      嫩葉に青葉 燕(つばくらめ)の 皐月哉
       今日は また心地好き 皐月の気
        
        暑くもなく 寒くもなく ほどほどな
         紫陽花の 浅緑の花芽 皐月の空
   
       やはり 蛍袋 蕾の風姿 その証
        蛍袋 急成長 夏日続きに
       
        韮(にら)白小花 早や 青き実となり
         葱坊主 丸々 雛罌粟花 赤 朱 赤
          蕺(どくだみ) 咲く 低く且高く 石垣に
        空木(うつぎ)咲きぬ 白から暗紅変化(へんげ)楽し
         打ち出れば 辺り 清々(すがすが)し 皐月の気
            五月晴れ 庭も草木も清々し
         ぐるっ ぐるる 山鳩の声 皐月の空
        蕾垂れ 謎めきぬ風姿 か(彼)何(な)の罌粟(けし)
                       灰緑の葉 花色は 何の色ぞ
                -罌粟の花色が白系統は 果実が麻薬の原料に
                  となるので栽培禁止になっているを知って
        願わくば 花色 白の他で あらむことを
       罌粟咲きぬ 花色 赤紫の 淡きなり
           過日咲きし 一輪と 同系統
            二年後に 姿を消しぬ 定め通り*
                    (*罌粟は二年草)
         罌粟の種(たね)眠りにつきしか 地下の闇
           罌粟 再会 夢に見しも 夢の如し
           嬉しさの余り 写生と写真を
          黒き紋 茶色の翅の 蝶飛び来ぬ
           黒き眸(ぼう)や 蝶 写生の我(あ)眺めおり
         罌粟の花 石垣の源平小菊 笑顔寄せぬ
 
           出会えたり 紅葉(もみじ)の実生え 罌粟の側
                   
                       平成29年5月22日
                            < 首>
       莢のなか 豌豆豆 八つおり
         豌豆豆 君の家庭菜園から〔の贈り物〕
          五月晴れ 蝶々舞いぬ 豆御飯
          豆御飯 明日もう一度の 幸せかな
           そのままも 美味佳肴(びみかこう)なり 莢豌豆
         簇作り 咲く忍冬(すいかずら) 芳香 猶
   
        燕 翻りぬ 青空の彼方
           燕返しに飛びぬ 餌(え)探しや
         野薔薇の懸崖 忍冬の懸崖 懸崖に
         兎菊 そよ風の戦ぐ 一輪あり
          帰路にもう 一輪出会いぬ 兎菊
          咲き誇る 海宇(かいう)の真白き 眩しき哉
            和蘭海宇 門扉に仄見(ほのみ)え 懐かしき
           
         不図見れば 諸葛菜(しょかつさい)の 実や 柵越しに
            忍冬に 蜂の大小 飛び寄り来
           昼顔の葉に似たる蔓草 溝の縁
        すいすい*密か 小さき石積みの
                (*紫酢漿草(むらさきかたばみ)の別称)
         小菊の鉢 ビオラの姿 初夏の乱や
         三色菫 今 花色七種 白 黄 淡黄 淡碧紫 橙 
                       白紫 紫と黄
          ドイツ菖蒲 杜若(かきつばた)顔合わせぬ〔国際交流?〕
         切れ葉野葡萄 幼きが蔓 延ばしおり
         紫蘭(しらん)の白き 遠見したり 久し振り
          垣間見たり 紫蘭の白きを 散歩路
           背高く 誇り高き ジャーマンアイリス
         杜若 紫 一際 華麗哉
        香しき 忍冬(すいかずら)の花 微笑みぬ
           何処からか 忍冬(にんどう)の花の芳香
       忍冬繚乱 集(すだ)く風姿も ユニークな
        忍冬(すいかずら) 唇形の花冠 唇 唇 唇
               忍冬 唇開きぬ あかんべえ
         忍冬 花色変化(へんげ) 白から黄
         忍冬 花変化(へんげ)実(げ)に 金銀花*
                 (*金銀花は 忍冬の別称 花冠が
                    白から黄へ移ろう故?)
        雪の下 お洒落な花冠 宇宙的
         髪洗い 夕涼みせむとや まだ五月
       庭手入れ 何時までの楽しみ 老いの身は
        蛍袋 やはり そうなり 蕾の形
          未だ 蕾 まだ 開かずも もう樽袋
          蛍袋 待ちに待ちたり 鐘状花
         罌粟(けし)散りぬ 一日花や 一期一会
                  平成29年5月23日
                        <首>
          紫露草一輪* 姫檜扇水仙*の簇 から出ぬ 
                   (*漢字一語扱い)
           
         姫小判草 涼やかな風姿 五月晴れ
         鈴萱(すずがや)*の鈴の音 聞くや 春女苑
                   (*姫小判草別称) 
          小判草 枯れぬれば 小判〔色〕になるもがな
           兎菊 一輪 濃黄(のうおう)夕陽映え
  
          垂れ光る 柿の嫩葉や 夕陽なか
    
            柿嫩葉 大大しきは 夏日の所為?
       西洋〕撫子(なでしこ)朱赤 白 濃紅 青紅 桃紅 鉢の宴
        手折られしも まだ花つけぬ 鬼野芥子〔健気かな〕
         虎杖(いたどり)の簇 茂りに茂りぬ 鬱蒼と
         無花果(いちじく)実一つだに あるも 寂しき
          梔子(くちなし)の匂う 垣根や 今何処(いずこ)
         紅茸(べにたけ)の 生いし処や 石蕗 一輪
          枇杷の実 丸々大きくも 未だ青き
           一休み ベンチ見つけり 有り難き
          捩花(ねじばな)や 久し振りの出会い 庭石蔭
           庭石の 陽当たり良きに 捩花 三輪
            捩花 花小さく螺旋に咲く 不思議かな
          我が庭にも 二年許りの 訪いあり
              ときめきぬ 身近な邂逅 捩花と
            これ 捩花よ 告げくれし君 今は亡く
          捩花の古名 忍捩摺り(しのぶもじずり)の捩摺りとは
       
         生垣に絡む 苗代苺 通りすがり
野茨(のいばら)も また蔓延ばしおり 生垣上
           此方(こちら)苺 彼方(あちら)野茨 
  生垣 賑〔そう/にぎやか〕
          風戦ぎ 小判草の小穂 沸き立ちぬ
涼風(すずかぜ)に 鈴の音響くや 鈴萱(すずがや*)の 
  (*鈴萱は 小判草の別称)
                     -昔の我が庭に生いぬ木苺を想い出しつ
  木苺の 白き花びら 梅花に似たり
   木苺の花冠楽し気  パッと咲き
  姫小判草 此処 其処 彼処(ここ そこ あすこ)小穂垂れぬ
       姫小判草 小さき小さき 穂 優し気な
                    平成29年5月24日
                         <34首>
       
        シャスタデイジー 花の真白き 緑野に
         シャスタデイジー  白きの点描 緑のカンバス
           シャスタデイジー の簇 此方にも 彼方にも
        シャスタデイジー の丘 駆け上りぬ 夢想なり
           シャスタデイジーの丘 喘ぎつ上りぬ 初夏の風
  
          シャスタデイジー 笑う 真白きが 笑いぬ 丘の上
 
        鬱 再来 寝覚めるも ベッドに 終日(ひもすがら)
         ひりひりと 焼けるが如く 鬱苦し
       刈られても 刈られても 猶 生う 盗人萩(ぬすびとはぎ)よ
       盗人萩 嫩葉 青青 青盗んだや
      
        皐月躑躅(さつきつつじ)桃紅の花芽 次々と
         マジックの如 皐月〔躑躅〕の花芽 次々と
           何処(いずこ)にや 隠れおりたり 皐月の花芽
         苗代苺 白き五ひらの 愛らしき
       苗代苺 花びら枯れ 桃色の小さきや 果実(み)の兆し
      清々しき 五月の空や 忍冬(すいかずら)
           野辺に咲く 卯の花 ほんに 鄙の華
        燕の群 一羽 紛れぬ 小鳥見ゆ
          糠雨(ぬかあめ)の 集く葉先や 雫 ぽとり
        ふわふわの 白きポンポン 野芥子の綿毛
         紫苦菜 若葉 ぐんぐん 夏日中
        空木(うつぎ)白から暗紅 花変化(へんげ)
         空木枯れぬ 哀悼の情 皐月の庭
        
         額紫陽花 蕾 膨らみぬ 見る度に
          額紫陽花 花芽 並びぬ 雛壇の如
            窓ガラス 飛び着く虫の小さき哉
             こんなにも 小さき昆虫 初見なり
        浅緑 半透明の姿 何の虫?
         よく見れば 飛蝗(ばった)か 蝗(いなご/稲子)の幼な姿
負飛蝗(おんぶばった)の極小の体躯 1cm弱
それとも 稲子 辺りに田 あらねども
            葉蘭 新芽出でぬ 打ち拉(ひし)がれつも
          枯れ篠や す〔っ〕かり若葉に 衣替え
           生垣や 蔓草 千種 蔓延ばしぬ
                     平成29年5月25日
                            <首>
            露光る 青薄光る 五月雨よ
  
             南天の 白き花芽の 白き露
              五月雨 南天の葉葉 雫垂れ
            五月雨 庭の千草や 生き生き慈雨
         桜花(さくらばな)散れども 花候 皐月躑躅(さつきつつじ)
 
        晴れ間あり 紫陽花の花芽 忍冬(すいかずら)
  
         故もなく 動悸の高まり 気候のせい*なり
                  (*低気圧続く初夏の気候不順)
         桔梗草 茎斜傾 花濃紫
          細身の茎 傾(かたぶ)きぬ 右左(さう)桔梗草
         
         あっ 烏揚羽 羽搏き 横切りぬ黒き影
          フェンスに這う 名の知らぬ 蔓草 今夏もまた
   
           マーガレット似の白花 垂れぬ 懸崖〔菊〕の如
        木蔦(きづた)垂れぬ 壺垂れ(つぼたれ)の如 青緑の
           白系の 蛍袋や 溝の上
          路の縁 蛍袋や 紅系の斑
           〔紅白の〕蛍袋 咲き乱れしは もう思い出
             花の候 乱れ乱るるは 我(あ)が動悸
         要黐(かなめもち)紅嫩葉に青葉 皐月雨(さつきあめ)
          野茨や 新芽盛りも 花は未だ
         夏日一転 しとしと庭に 迎え梅雨
           晴れやか 嗚呼 晴れやかな 五月晴れ
  
         暮れ泥(なず)む 初夏の空や 涼やかな
                       平成29年5月26日
                         <31首>
          雪の下 満開 静か華やかな
           雪の下ユニークな花冠 咲き揃いぬ
      
            雪の下 花冠二弁(ふたひら)突き出しぬ
   
          この二弁 漢名 虎耳草の 由来らし
              虎 如何 繊細 愛し 花姿
          雪の下 葉 毛深く厚く 冬〔雪〕忍ぶや
           雪の下 忍びて 咲くは 皐月の候
          生垣に生う 苗代苺 青き空
           生垣覆う 苗代苺 蔓にゅうにゅう 
          淡朱の果実 覗きぬ 愛らしき
             今咲かむと思うや もう実結びぬ 苗代苺
  
         五つ三つ 花冠寄り合う 樫の長穂
           樫の樹の花穂〔雌花〕秋には どんな団栗に
            樫の雄花 揺れぬ 清々し 風姿哉
          向こう側 新緑繁し 小鳥の声 
           この木 何の木 問えば 虎杖(いたどり)とや
          忍冬(すいかずら)屏風の如 フェンス沿い
           アガパンサス 剣状嫩葉 生い繁りぬ
  
アイスランド・ホピー 白に紅 朱紅 淡赤紫 
撫子 五色(いついろ) 艶やかな花姿(はなすがた)
 辺り 深緑(ふかみどり) 浅緑(あさみどり)独り映え
玉椿 花穂白きの揺れぬ 青き空
杉の花穂 一か処かと思えば もう一か処
 花も実も 韮(にら)溝底から出ず 逞しき
 生垣から飛び出で 小虫 舞い舞い舞い
 何処までも 絡み来ぬ 小虫 ストーカーね
枇杷の実や 撓(たわわ)となりぬ 何時の間にか
          枇杷の実 撓なり 未だ青きなれど
           枇杷の花見た日 実やまだ遠き日 と
       生垣に 菊葉野老(きくばどころ)忍冬(すいかずら)他
        生垣下 蓬の嫩葉 伸びやかな
 
          生垣下 処処 に 紅葉(もみじ)の 実生(みおい)
           生垣の 苗代苺 簇作るほどに
                   平成29年5月27日
                         <25首>
         酢漿草(かたばみ)の葉 すいすい(紫酢漿草)のなか
        すいすいは 葉や瑞々しき 色淡し
          桔梗草 濃紫(こいむらさき)二輪 もう一輪
            あぁ 哀し 桔梗草抜きぬ うっかりし
           花芽 明日 綻(ほころ)ぶらむ 南天の
             蕾 皆 浅緑哉 紫陽花(しようばな)
       紫陽花(あじさい)の 蕾綻(ほころ)び 萼一片(ひとひら)
        見上げれば 楢(なら)浅緑 空碧く
         長実雛罌粟(ながみひなげし)小さき小さき残花あり
       痛っ! 苗代苺の棘 誰(た)への防御?
        皐月の風 小判草縫い 春紫苑過ぎ
          この香り 覚えやありぬ 平戸躑躅(ひらどつつじ)
         
           甘酸っぱき 平戸〔躑躅〕の花蜜 懐かしき
         まあ 咲いたり 蛍袋や 咲きにけり
          一斉に 咲く蛍袋 白 晴れやか
          釣鐘形 ふ〔っ〕くら艶めかし 蛍袋
            渋紅(しぶくれない)蛍袋も咲きぬ 路の縁
          路の縁 か細きも 咲きぬ 蛍袋
     
          蕺(どくだみ)の 花白く艶 遠目にも
           蕺の 花びら まったり 乳白色
         雪の下 植え込みの下 ひ〔っ〕そりと 
         忍冬(すいかずら)も 腐(くた)す哉 五月の雨
         
          木柵前 蛍袋や まだ小さき
            満開 且 蕾有 蛍袋
         ブラシの樹 遠くも近くも 鮮紅色
             
                     平成29年5月28日
                           <32首>
           鉢植えの 苺 震災後の 贈り物
            やがて ランナー出しぬ とび出しぬ
        
           早春より 苺 毎年 姿見せり
            花白き 笑うや苺 青き空
    
             葉陰にや 小さき苺 熟しおり
               小さき小さき 赤き赤き苺
          今年怪し 苺や見ぬ 哀し哉
       
           今見つけたり 諦めおりぬ 苺だに〔だったのに〕
            皐月末 漸う 苺 見つけたり
             苺 見つけたり 待つ日の長きこと
              感喜 歓喜 小さき嫩葉 彼方此方に
             ハート形の 複葉の 小さき苺 
               悲嘆 悲哀 苺に非ず 金水引(きんみずひき)
           葉の如く 金雀枝(えにしだ)の青き莢 垂れおりぬ
          帰り路 香しき匂い 忍冬(すいかずら)
           芳香に 暫し 佇む 散歩路
            野薔薇も また 芳香放つ 散歩路 
          岩下野(いわしもつけ)花冠ふわふわ 小綿菓子
          楽し 犬鬼灯(いぬほおずき)再会 我(あ)が庭の
           昨年(こぞ)の冬 永久(とわ)の別れと思いしが
           草草の 蔭に咲きおり 犬鬼灯
           新しき 犬鬼灯出でぬ 古茎より
            驚きぬ 犬鬼灯は 一年草
 
             犬鬼灯 出会いぬや もう 白小花
            犬鬼灯 花白き 小さき 愛らしき
         
         矢車菊 細身の風姿 風に揺れ
           矢車菊 ほっそり姿の 立ち美人
             矢車菊 ほっそり美人の 佇まい
          矢車菊 風や吹き抜け 花茎揺れ
         新しき蕾と見しが 著莪(しゃが)の実かな
       虞美人草 咲き乱るる野 想う空
          花冠揺れぬ 朱赤 紅赤 虞美人草
                    
                        平成29年5月29日
                             <首>
         草花に 邂逅 感動の一時(ひととき)小さな幸
        あな 珍し 紋黄蝶舞いぬ 姫女苑
         卯の花の 小さき〔/木〕に 出会いぬ思い掛けず
         幼木(おさなき)も 花 精一杯 卯の花 可憐
        姫烏頭(ひめうず)を 此処にも見つけり 初夏の庭
        クレマティス 花散りぬ茎 蕾あり
         アマリリス 咲けば 辺りや 華やぎぬ
          アマリリス 緋色の大輪 青き初夏
           緋色 チラリ 戻り来見れば アマリリス
         
       矢車菊 風吹きぬけぬ 爽やかに
          矢車菊 爽やかな風 皐月晴れ
         春紫苑 姫女苑や 見紛いぬ
          春紫苑 紫ほんのり 蝶 知るらむ
        花の無き 木立に舞う蝶 何故(なにゆえ)に
         オルリア 白き花頭を 一杯に
          琵琶の実や 色づきぬも また黄色
           琵琶の実や 黄色の隣り まだ 青き
          木通(あけび)まだ嫩葉 三つ葉も 四つ葉も
   
          蔓の運命(さだめ)絡みつきぬは 相手次第
           絡み付き またつる延ばしぬ 勢いあり
          草影に すいすい 〔=紫酢漿草(むらさきかたばみ)〕
                      梅雨迎え
          紋白蝶 晴るる日 楽しや 舞い舞いぬ
           日陰退き 日影増しぬ 初夏の庭
            葉広げぬ 金水引や 水遣れば
         金水引 良く育ってねと 研ぎ汁かけぬ
           此処にも すいすい 雛罌粟(ひなげし)の奥
 
         紋白蝶 青葉木立を 一人舞台に
          紋白蝶 今ぞ我が世 と 彼方此方に
     
          草も木も 花白き哉 初夏の景
           山葡萄 蔓垂れ惑いぬ 鉄柵上
         菫 莢 枯れ弾けぬ 三裂星形
          菫夏葉 唯 勢いぬ 花無くに 
            
                    平成29年5月30日
                          <27首>
         大きな蜂 一匹 飛び来ぬ 我(あ)が居間に
          或る日の初夏 大蜂の来訪 年中行事
           大きな蜂 女王蜂や 伴無けれど
         或る日 檸檬(レモン)色の巣見ぬ 琵琶の枝(え)に
         
         高砂百合 未だ姿見ぬ まだ早き
          高砂百合 処構わず咲く 気儘
          紋白蝶 無心に舞いぬ 青葉木立
           紋白蝶 花から花 童謡の通り
         お久し振り 定家葛(ていかかずら)や 谷間に
           欄干に 定家葛や 群れ絡みむ
  
            定家葛 風車(かざぐるま)風の 花五片(いつひら)
          栗の樹に 花投網の如 定家葛
           栗の樹や 花花(かか)風車(かざぐるま)定家葛
         青葉に白花 定家葛の風車
    
           梅雨入り前 もう熱帯夜 如何せむ
       ゼラニュウム 淡紅色の 石段上
      すいすい〔=紫酢漿草(むらさきかたばみ)〕我が庭にも 淡桃紫色が
          山椒 実生え とんでもない! 溝底に
         韮(にら) 消えぬ後の路傍 無情なり
       桔梗草 淡紫の花 斜め生い
        蔓草や 喜雨や 暑気や 千々の勢い
 
         蔓延ばしぬ 蔦葉海蘭(つたばうんらん)小花載せ
        荒れる前庭 姫女苑 嫋(たお)やかに
       すいすいの 窄(すぼ)みぬ 夕べの散歩路
        薔薇緋色 夕日も恥じらう 妖艶さ
         夕日なか お喋り弾むや 兎菊
        
暗橙の姫檜扇水仙(ひめひおうぎ)衰え 紫露草盛んなり
     平成29年5月31日
                            <30首>  
       夕風に戦ぐ藤蔓 卯の花や
 
         橙色 加わるる アイスランド・ポピー 緋 淡紅 白に
      夏日の夕 悉皆静か 涼やかな
        紅一葉 降りおり来 ふと 秋想う
          転(まろ)び行く 紅の落葉 秋遠き
       すいすい* 乱れ窄(すぼ)みぬ 夕花壇 
              〔*すいすいは紫酢漿草(むらさきかたばみ)の別称〕
       日中ならば すいすい 一花繚乱
        紋白蝶 青葉縫いぬは 無用の用や
 
         紋白蝶 烏揚羽蝶や 飛び交う青き空 
       暑気納まり 涼風吹きぬ 夏日の夕
        風涼し 甦りたり 草木 我(あ)も
        風 清(さや)か 暑気払われ 清々(すがすが)し
  
        熱帯夜 窓辺で納涼 真夜中に
         寝苦しき 夕涼みせむ 丑三つ時(うしみつどき)
       この芳香 何処からや と足を止めぬ
         何時の間にか 包まれたり 芳香に
           芳香や 放つは誰ぞ 卯の花 躑躅(つつじ)
       涼風(すずかぜ)の 甘酸っぱき香 初夏の景
        白き花 密やか 艶やか 山法師〔/山帽子〕
         山法師 白き四弁(よひら)や 青葉の樹
     
         赤松の残るる雑木林や シャスタデイジー
        見慣れぬ風姿 あっ あれは 紅詰め草〔/レッドクローバー〕
        紅白詰め草や 類は 友を呼ぶ
         白詰め草 紅詰め草 生いぬ 不即不離の間に
       
        見るからに 棘棘し 野薊の棘               棘棘しき哉 野薊のこの風姿
         聳え立つ 野薊 猛々し 蕾まで
          捩花(ねじばな)早や 実となりぬ 庭石隅
           捩花の実 花から想えぬ 武骨かな
捩花の花 蘭系 華奢で可愛い
                     平成29年6月1日
                          <32首>
        漸うに 紫立ちたる 紫陽花かな
         白狩り*は せずとも出会いぬ 初夏の路
                   〔*紫狩りを捩って〕
          紫狩り白狩り 黄狩りも ありなむや
                    -日中に 月見草の大勢惑を見て
            月見草 朝から待つや 月の出を
       
                  -建て替え計画のあるを聞くお庭の前で
           桔梗草 有終の美や 庭の隅
            兎菊 群れ 野辺に咲く如く
             深山に迷い込みたる如 山辺の路
         皐月過ぎぬ 腐(くた)しにけり 皐月躑躅(さつきつつじ)
          黄菖蒲や 僅か川辺の草叢中
           更地す〔っ〕きり 野草園になるらむ 何時
         針槐(はりえんじゅ)散りぬ 卯の花咲きおりぬ
         
         鹿子草(かのこそう)邂逅 楽し散歩路
          見上げるる鹿子草 花頭 愛らし
    
            鹿子草や 花頭小花の 半手毬
           鹿子草 五弁(いつひら)紅白の暈(ぼか)し染め   
             -ご近所から過日鹿子草を頂いたこと
                            を想い出して
          褒めれれば どうぞと 一株鹿子草
  
           日影の良きに植えたるも 直ぐ消えぬ 哀
         桜並木 青葉 青葉の 続く路
          羽搏(はばた)くも 飛び去らぬ 蝶 どうしたの?
  
           蝶そのまま 水滴るる 石垣下
        蜜ならぬ 水吸う蝶々 初見なり
         喉渇くや 蝶々の水呑み 夏日の夕
        青紅葉(あおもみじ)束の間の ロマンの街路
         青紅葉 アーチ過ぎれば 夏日影
           曇り空 どんより 辺りも 初夏の夕
         探しおれば 蛍袋? と君問いぬ
          蛍袋 小振りなれども いつもの石垣に
           出会えれば それで幸あり 蛍袋
            蛍袋 安堵の様子 我(あ)も安堵
          定家葛 また出会いぬ 散歩路
         逞しき 定家葛生いぬ 何処(いずこ)にも
  
                   平成29年6月2日
                        <23首>
         黄昏(たそが)るる前にと急ぎぬ 夏の夕
          黄昏や 何処かロマンティックな響きあり
                兎菊 通り掛かれば こんばんは
          ゼラニュウム 窓辺に咲きぬ 愛らしき
       ゼラニュウム 桃紅色の ラヴ・ミー・テンダー*〔love me tender〕
                    (*この品種に付けられた名前)
        夏木立 どんより沈みぬ 暗緑の景
         赤松の木立も どんより 淀(よど)めきぬ
        花壇のみ 華やか 朱 黄 緋 初夏の色
          花の名は ベゴニア ペテュニア マリーゴールド
         
        立葵(たちあおい)夕風に揺れぬ 月白の空
         日は西に 月白きは 初夏の天上
          立葵 緋色 笑いぬ 一輪 二
       淡紫の霞 美し 散歩路
        遠目には 淡紫の霞 か 栴檀(せんだん)の花
              休みつつ 初夏の坂路 老いの坂
        桃紅の 皐月*(さつき)笑顔で お帰りなさい
                  (*皐月躑躅(つつじ)の略称)
夕凪や 万象 静か 静まりぬ
        アガパンサス 剣状葉の茂るる ばかりなり
         欄干に 葛(くず)巻き付きぬ 谷間より
            葛 大きな葉広げ 蔓草の女王
         撓(たわわ)なる枇杷の実の色 青から黄
          篠簇に 蓬簇がりて 押し合い圧し合い
         秋明菊 嫩葉揃えぬ 初夏の庭
             
                      平成29年6月3日
                           <28首>
        掌状の葉 験の証拠(げんのしょうこ)と君指しぬ 
   
         これが 験の証拠  熟熟(つくづく)眺めぬ
           見渡せば 我(あ)が庭にも 験の証拠
         花小さき 小さきちいさき 験の証拠
          淡紅もあり 験の証拠の 花愛し
         瀟洒な 葉姿 佳き哉 漫ろ歩き
          名は風露草(ふうろそう) 花が由来や 小さく儚き
             紅褐色の葉 独り 緑のなか
 
           夕暮れに見れば 静か 萎みおり
          朝来むと 見れば 風露草 頷きおりぬ
        紫陽花(あじさい)や 見れば 気持は梅雨備(もよ)い
          紫陽花(しようばな)萼開けど 色浅緑(あさみどり) 
  
             紫の匂う 紫陽花 紫陽花らし
         額紫陽花 水色 桃色 華やかな
           通りすがり 額紫陽花や 紫陽花も
          山紫陽花 白と端紅(つまぐれ) 鄙の色
    
           角曲がれば 青紫色の 紫陽花かな
            出会い頭 (であいがしら)紫陽花の色 桃紅色
          七変化*(しちへんげ) 次の出会いや 何の色
                     (* 七変化は紫陽花の別称)
           桃紅色 変化(へんげ)するや 否 そのまま
            七変化 一色もあり そのままの
          すいすい生いぬ 道路の端に すいすいと
           すいすい咲き乱れおり 淡桃紫色に
          金魚草 八重や木柵に 寄り添いぬ
          ブラシの樹 緋色の火炎 消沈す
     
 漫ろ歩き 迷い込みぬ 土小路
        土小路 すいすい 蕺草(どくだみ) 懐かしき
         
         無花果(いちじく)葉葉繁しも 実や何処
             
                      平成29年6月4日
                           <32首>
 君が代蘭 辺りと違(たが)いぬ 異国風〔トロピカル〕
君が代蘭 花 丸身 妖艶 可愛気
君が代蘭 花冠 下垂 恥じらい気
        君が代蘭 咲きぬ 逆さチューリップの花の茎
君が代蘭 花茎に 白き釣鐘形
          白き花茎 長き 高きや 君が代蘭
         君が代蘭 蘭に似たるも 蘭に非ず
       藪人参(やぶにんじん藪虱(やぶしらみ)と同じ芹(せり)科
         〔葉は似たり〕違いは 実なり 虱似と細スティック
        藪人参 白き花頭や 幾つあり
      
       一 二 三(ひいふうみい)嗚呼 数えるは くたびれ儲け
        野薊(のあざみ)や 生うを案じ 且 ときめきぬ
         野薊や 鎧兜(よろいかぶと)の武者の如 
      
          野辺の武者 手折りし君や 何者ぞ
         この度は 見たし 野薊の 全(また)き姿〔全身像〕
    
         乙女桔梗(おとめききょう) 眺むるるや 昔乙女
          ベル・フラワー 誰(た)が為に 鐘ならすらむ
           ベル・フラワー 告げるや庭の 終焉
        窓際や 永遠(とわ)の眠りに 大きな蜂
      
         卯の花 生け花的アート 用水路
        東(ひんがし)や 紫立ちたる 紫陽花かな
           我(あ)が庭の 紫陽花の花頭や 白緑のまま
     
        鋸葉 いずれも個性的 鬼野芥子 
        鬼野芥子 花盛りならぬ 葉葉盛り
         日影から日蔭へ 且 日影へ 初夏日中
   
       白蝶草 風に揺られおり ペテュニアも
         風露草 花や出会いぬ 小さき小さき
          朝散歩 花探したり 風露草の
         花二輪 他は実なり 風露草
            風露草 実の尖がり帽子や 簇となりぬ
        実突き上げ 何を主張や 風露草
         
         藪人参(やぶにんじん)満開も蝶 近づかぬ 何故?
 
                     平成29年6月5日
                         <31首>
         蒲公英(たんぽぽ)の  綿毛残りぬ  春の残滓(ざんし)
          蛍袋 小さきが塊り 咲くも愛(あい/あいらし)
        蕺(どくだみ)生いぬ 石垣の上下(うえした)に
      蕺や 花穂黄ならずば 艶もなし
          蕺花穂 浅緑のまま枯るるや 哀(あい/かなし)
          見上げれば 白き月影 深緑の上
      柏葉紫陽花(かしわばあじさい) 本紫陽花に魁(さきがけ)花盛り
      柏葉紫陽花 花四方に垂れぬ 木柵越し
         柏葉紫陽花 大きな花房 枝垂れ尾の如
          谷覆う 白き花樹や 華麗かな
 
         何の樹か 名の分かぬるも 一興なり
          紫陽花 変化(へんげ)淺緑 紅紫 深藍 皆淡き
       
        羊蹄(ぎしぎし)や 屹立の姿 勇士見ゆ
         空き地の隅 道路の端 羊蹄生いぬ
          羊蹄や 真直ぐ 戦ぐとも 尚 真直ぐ
     
        鈴萱(すずがや)や 美しき名哉 その音色は
          鈴萱や 鈴の聞こゆ 風無くも
        我(あ)が庭の 験の証拠や 葉ばかりなり
                  〔 憚(はばか)り乍ら 〕
        天候不順 減の証拠も 勘狂わせぬや
         愛らしき 白き花 見ぬは何故なの 験の証拠
         見上げれば ふ〔ん〕わり 綿菓子 青き空
瞬く間 綿菓子消えぬ 誰が食べたの?
 
        少し離れ 綿菓子浮びぬ 自由自在
         知らぬ間に 綿菓子 元の天空に
          綿菓子や 一つが二つ 雲のマジック
       また二つ 合計七つ マジック続きぬ
        見る間にも 重なり一つの 綿雲に
         また分かれ やがて消滅 天空のショウ〔show〕
       水無月の晴れ間や 青空 白き雲
 
         初夏残花 紫酢漿 桔梗草 長実雛罌粟*
                 (*漢字一語扱い) 
          我(あ)が庭や 枯れ草 青草 山中の如
 
                     平成29年6月6日
                           <26首>
       紋白蝶 黒紋鮮やか 花から花へ
        黒とオレンジ 揚羽蝶 窓へ止まり来ぬ
         蝶二匹 求愛のダンス 春のダンス
         
        ビュ~ン 小虫 我(あ)を掠(かす)め 飛び去りぬ
         生垣の葉刈り 飛び出し 小虫や スクランブル
     
        ゼラニュウム 客人待つらむ 門扉側
          淡桃のゼラニュウム 優し気 涼し気
      
        定家葛(ていかかずら)未だ咲き続けぬ 愛しき
         真紅の薔薇 夕空に映えぬ 弥(いや)が上
                   -昨秋 拾い集めしを 床飾りに
                      していた樹の実を
       銀杏 団栗 いざ返さなむ 山裾へ
         銀杏 団栗 撒きぬ 明日雨らし
             萱草(カンゾ)の黄橙色 甘美 癒し系
       萱草 一日花 会うなら 日中(ひなか)
        萱草見れば 藪萱草(やぶかんぞ)想い出しぬ
       藪萱草 草藪に見つけし日や 遠く
          八重の赤橙色 藪萱草* 賑々(にぎにぎ)し
                   (*萱草は一重 藪萱草は八重で
                       派手な色形)
       忘れ草* 憂さ忘れぬ 妖艶さ
              (*忘れ草は 藪萱草の別称)
 
         夕空を 燕忙し 餌探しや
          二裂の燕尾 翻しつ 夕空を
        大空飛ぶ 燕 勇壮 且 優雅
         燕飛ぶ 空の乱舞の美麗さよ
          葉蔭に 独り 雀 チョンチョン 枝移り
         
         高砂百合 細葉広げぬ 道の縁
          もう一輪 高砂百合 見つけたり
           白蝶草 上下に揺れぬ 梅雨模様
          弓形(ゆみなり)に 枝垂れおりぬや 拍蝶草
    
 白蝶の飛び立つを見れば 白き花
                   
                    平成29年6月7日
                         <25首>
                  -暫く日照り状態が続いていたので
そぼ降る小雨 庭の草木や 華やぎぬ
 草木 皆 瑞々しき哉 梅雨の入り
 梅雨に濡れ 椿や 愈(いよよ) 艶やかに
紫陽花や 装飾花 光りぬ 梅雨小雨
  南天の花房 今や 綻(ほころ)びぬ
            
         皐月*(さつき)盛り終わりぬ 水無月なれば
                  (*皐月躑躅(さつきつつじ)の略称)
          皐月終わりぬ 花の命の短き哉
          花の命 短きもあり 長きもあり
           花千種 時には長き 命あり
  
        入梅や 蝶も飛ばぬ庭 寂しけれ
         梅雨の入り 鬱に入りぬや 動き鈍
          樹怠(ナマケモノ)の如 動きや鈍き 梅雨入らば
   
        白一色 今や色づきぬ 源平小菊
          紫陽花の 葉や雫垂れぬ 梅雨の入り
           朝靄 突き 燕 朝から餌探し
        晴天 一転 曇天 梅雨の入り
         南天の白露 ポトリ 下草上
          小判草 実りの秋か 黄金色
           野茨の蔓 花三輪 梅雨の庭
紫陽花の花 露置きぬ 梅雨の景
         梅雨の入り 蝶 何処(いずこ)に 〔雨〕宿りな
          窓枠の下 黒蝶 飛び去りぬ
           指膨らむる 見れば噛み後 虫の候
    
        静かなる せせらぎの音 溝流るる
         時雨心地 日傘 雨天兼用に
                     平成29年6月8日
                          <28首>        
     春野芥子(はるのげし)綿毛や鬼〔野芥子〕の蕾と隣り合う
         玉椿 花散りにけり 路上や花
          紫陽花変化(へんげ)淡紅から淡紫へ
            此の方や 淡青色 一色なり
         アガパンサス 蕾形(らいけい)筆形 すらり すらり
       白蝶草 茜に染みぬ 紅蝶草
    
        黄橙色 百合や 艶やか 立ち止まりぬ
         百合や やはり 白百合 数々あれど
     
       野薊(のあざみ)残り 他すっかり 刈り取られぬ
       野薊残りぬ 独り 屹立せり
         野草逞し もう芽生えぬ 盗人萩
        野薊屹立 思わず安堵せり
          されど花や一輪 嘆きの我(あ)
         良く見れば 今咲くばかりの 蕾ばかり
        鉢植えの 八重の爪紅(つまぐれ)紫陽花なり
         我(あ)庭の額紫陽花 紫陽花色に近づきぬ
         七段花*(しちだんか)六甲山系固有の種
                  (*紫陽花の原種に近い一種)
          七段花 八重咲き素朴 一色なり
           七段花 何処か 昔の懐かしき
        日影あり 見上げれば雲あり 空変化(へんげ)
     
        我(あ)が庭の 野茨の白き 何時 咲くの
         溝底に 見覚えある野草 見つけたり
          その野草 名前 露草 梅雨の入り
          梅雨空に 露草の青き花びら
         露草の 花冠や ミッキーマウスに似たる哉
       
        紫露草 碧紫の 花姿 華
         碧紫色の 三片(みひら)次々 紫露草
                 紫露草 やがて 萌葱の実を 垂らすらむ
                       平成29年6月9日
                            <24首>
           溝底や 夏草の園となりにけり
          夏草園 高砂百合見ゆ 末の 
           白木蓮 青き実 落ちぬ 梅雨の入り
            見上げれば 雫一滴 頬の上
         絹雲刷きぬ 天空の碧 梅雨の入り
アガパンサス 苞や 蕾(らい)透かす 咲くは何時
          金雀枝(えにしだ)や 青き実 黒ずみぬ 梅雨の空
          高き壁 棚引く夏蔦 青き哉
ゼラニュウム 淡桃花 濃桃花 色夫々
            葉蔭に花 団栗の花や 主は誰ぞ
        凌霄花(のうぜんかつら)花芽や フェンスの上
 雑木林 鬱蒼 透かせど見えぬ 空
夏草の 繁るる小路 花のなく
東屋や 暮色迫るる 独り静か
-小公園の花皆散たる後
平戸躑躅(ひらどつつじ)青に戻りぬ 小梅林も
      小公園 梅花の賑わい 今何処(いずこ)
       辺り暮色 淡碧の空 まだ仄か明(あか)
        葉はらはら 無風無音や 梅雨日の夕
       草叢繁し 背伸びも届かぬ 丈高し
          遠望や 茅渟の海 春の海の如
         鼬萩(いたちはぎ)下垂の実房 渋茶色
          紋白蝶 番(つがい)て飛びぬ 梅雨の夕
          栗の花 房の長きや 縦横に
        アーチの横 白薔薇の鉢 野薔薇や何処
                  平成29年6月10日
                         <24首>
          
        思い立ち 朝散歩せむ 朝日影
         と思いきや 夕べと変わらぬ 梅雨景色
        黄菖蒲 一輪残り咲きたり 蕺草(どくだみ)上
        虫まいまい 鬱陶しきも 夕べと同じ
         唯 日差しや強まりぬ 歩く度
           山葡萄 蔓延ぶ葉影 蕾つけ
         蝶や舞う 蒲公英(たんぽぽ)一輪残りおり
        鹿子草(かのこそう)鉢にちんまり 鎮座せり
          小鳥一声 彼(あれ)鶯 もしかしたら
            幼な声 彼(あ)は鶯 見えねども
             鶯か また聞こえぬ 幼な声
          ケキョ ケキョ と聞こえし声や 懐かしき
           もう一度と 耳澄ませれば ホーの声
         やっぱりそう スキップしそう 驚かさぬよう
          ホー ホキェ キョ まだ擦れ声 もう少し
  
            幼な声 稽古不足よ どうしたの
   
             鶯は 鳴き上手倣ね 鳴くといふ
          鳴き声の先輩〔ヴォイス・トレイナー〕見つからずや
          頑張ってね もう少しの精進 谷渡り
                  -早春から鶯の声楽しめり日々を
                        思い出しつ
           如月や 鶯の初音 聞けば ケキョ ケッ
                 日を追いて 鶯 美声に 弥生の山辺
         皐月には 谷渡り聞くが 毎年の慣い
  
           或る年に 鶯の声聞かぬ それからも
                -選挙カーのけたたましき絶叫
                   驚き怯え 山奥へ逃げ去りぬ
       谷渡り 聞かぬ 鶯 恋しかり
          鶯と 邂逅歓喜 久しかり
                   平成 29年6月11日
  <32首>
 溝底の 卯の花腐(くた)しの 水無月かな
用水路 様々な木々 生い茂りぬ
 対岸に 紫虎の尾の花芽や 見ゆ
 虎杖(いたどり)も精一杯に葉広げぬ
忍冬(にんどう)も 葛折重ね 夏備(もよ)い
芙蓉の幼木 実生えれば 溝底
         若木なれど 玉椿や 早や 花盛り
        夏蔦や 這い上がれば 轟音の路
                   -梅雨めきぬ日々曇り空に
          兎菊 乗り出し葉延ぶ 陽恋ふるや
        カラー〔海芋〕白色まったり 懐かしき
         大鉢の葉蘭 枯れ果ており 梅雨日蔭
        葛(くず)の蔓(つる)石垣登りぬ 珍事かも
          揚羽蝶 青葉縫い舞う 花なくに
             若竹伸ぶ 破竹の勢い 古竹越え
        日差し強し 小さき苺 お水遣り
         苺実生え 数増しおりぬ 見る度に
  
           ほ〔ん〕に悲し 金水引きの 実生えとは
   
       葉の上や 揚羽蝶動かぬ 舞い疲れ?
   
         近づくも 動かぬ蝶蝶 如何にあらむ
        春野芥子 まだ咲き続く 可憐さよ
         青き空 紋白蝶 と 真珠雲
         春紫苑(はるじおん)隣り 源平小菊 白小花の好みかな
       雨よりも 嵐づきぬ 水無月 玉椿
        
        擬宝珠(ぎぼうし)見つけり 我(あ)が庭に生う
         我(あ)が庭に生し 擬宝珠 三十路近し
          がっかりせり よく見れば 水引の若き
       
        シャスタデイジー 枯れぬ 来年の再会を
         すいすいや 思わぬ出会い 水無月に
        鬼野芥子 葉茎 ぐんぐん 花はまだ
             葉一葉 水無月の池 鯉泳ぎ来
       窓際に 牛蒡(ごぼう)の端切れ キッチン・ガーデン
        牛蒡の新芽 伸びぬ 一夜に一寸
                   平成29年6月12日
                        <24首>
        紫陽花 花淡碧紫色 一斉に
         紋白蝶 舞う 凌霄葛(のうぜんかずら)咲く知るや
          凌霄葛 花芽 密につけおりぬ
             立ち止まり 指折り数えば 風吹きつけぬ
          熟さぬまま 枇杷落下せり 昨夜(きぞ)の嵐
        苗代苺 花びら萎みぬ 愈(いよよ)苺〔の果実〕
         石蕗(つわぶき)や 葉艶やかに 彼方此方に
        野薊(のあざみ)一輪 佇む 夕の野辺
          棘棘し 野薊の花 色優し
          草草刈られ 無言や水無月 虚しかり
           水無月虚し 草叢刈り取られぬ
        栗の花 毬(いが)や想えぬ 繊細さ
       
         栗の樹や 大揺れ 小揺れ 嵐の兆し
       七段花*(しちだんか)初見のときめき 懐かしき
                 (*七段花は紫陽花の原種に近い種
                         六甲山系奥に生う)
        今はもう 普通に見る花 七段花 
       門扉越し カラー(海芋)笑顔や 散歩路
        芝生の庭 咲き乱るるカラー 遠き昔
歩む先 紋白蝶舞いぬ 道案内
           慣れた路 道案内も また 一興
       
         宵待ち草 窄みぬは昨夜(きぞ) 今宵は未だ
          蛍袋も 彩り添えぬ 姫女苑(ひめじょおん)の野
           蛍袋 花紅白の間 淡紅白見つけたり
        溝底や 山椒(さんしょう)に落ち葉 寄り添いぬ
         雨流れば 共に踏ん張るの? 頑張ってね
                   平成29年6月13日
                          <19首>
         山藤や 長き莢独り 下がりおり
          セコイヤの影 我の影 夕日影
           青葉の狭間 夕日光りぬ 山辺路
          水無月や 夕陽眩しき 梢かな
        姫女苑(ひめじょおん) すらりすら生う 小公園
         姫女苑 独り 一人や 佇みぬ
          窓外の姫女苑や 群生 圧倒的
           一輪 華奢 大勢 豪華 姫女苑
         
        盗人萩(ぬすぶと)刈られず残りぬ 青青青
         盗人萩 生いぬ野辺にや 姫女苑も
          紫狗尾草(えのころぐさ)前(さき)の邂逅や 秋隣り
       アガパンサス 苞や 侏儒*(しゅじゅ)の帽子の如
                      (*小人の意)
      アガパンサス 筆形(ひっけい)の 蕾茎(らいけい)まだ伸びぬ
       棘棘あり 棘草(いらくさ)と見紛いたり 苗代苺
 
        凌霄花(のうぜんかつら)此方や蕾 彼方 花
      凌霄花 花冠彼方此方 八方美人や
        紫陽花 今 淡緑 淡青 淡紫 三変化(へんげ)
         紫陽花 花 門扉の向こう 鮮濫色
       枇杷 色づきぬ 谷間の万緑の中
 
                  平成29年6月14日
                       <29首>
       山牛蒡(やまごぼう)の花穂 可憐 藪の前
        ふと 見れば 山牛蒡の小さきや 路の縁
         山牛蒡 小さき花穂 鄙の景
           山牛蒡 小さきが素朴 風趣あり
        山牛蒡 お茶花になりぬ 宜(むべ)なる哉
      
        虎杖(いたどり)や 青葉のジャングルとなりにけり
         蔓太き 葛(くず)這うや 虎杖の上
          生命力強し 葛 虎杖
        枯れ果てぬ クローバーの実摘み ポケットに
         我(あ)が庵(いお)や お引越し願いぬ クローバー
        ふと見れば クローバー レッドクローバー 隣り合い
         クローバーより 高き花茎 レッドクローバー
           レッドクローバーも 実摘み取り 我が庵に
 白萱(ちがや)の綿毛 飛ぶや飛ばぬや 夕風に
       白萱 の真白き綿毛 あやなす 妖しの景
        遅かりし 鹿子草(かのこそう)枯れぬ 悉く
        
       何処も彼処も 盗人萩(ぬすびとはぎ)の青葉の景
        盗人萩 かくも静かか 初夏の夕暮れ
     
         若松や 真直ぐ伸びたり 天を突く
          樹々 鬱蒼 ムードは奥山 山そのまま
  
       入日差し 背を背ければ ゼラニュウム
         桔梗や 一輪咲きぬ 時知らずや
          うらびれぬ 庭に 桔梗一輪 紫の
        枇杷いずれも 実撓(たわわ)熟したり
       入日差す 初夏 影法師 長く 長く
       百合 夕陽に映えぬ オレンジ 鮮(せん/あざやか)
        風吹き荒ぶ 雨ならず 水無月 怪し
         絹雲に 一条の光 水無月の空
       水無月 今 唯唯 暑き 雨のなき
  
                      平成29年6月15日 
                          <23首>
       涼霄花(のうぜんかつら)花 二種あり 大と小
  
         今 咲くは 花冠小さきの 涼霄花
       樹齢(じゅれい) 約五百年 ほんに 寿齢(じゅれい)
          如何ありや 古樹の歳月 問いかけぬ
           寿齢の樹 取り巻きぬ 水無月の小菊 
       
舞うや舞う 紋白蝶 青葉蔭
         夕化粧 二 三輪 咲きぬ もう夕暮れや
       たじろぎぬ 花一斉 笑顔 山法師
        更地 青青 狗尾草(えのころぐさ)の野となりぬ
        犬鬼火(いぬほおずき) 狗尾草野に "我 此処にあり"
           夾竹桃(きょうちくとう)紅桃色 見飽きたは 昔のこと
         和が庭に 植えたりしは 白色花
          夾竹桃 忌嫌いし 花色 今愛し
      待てども待てど 葉蘭萌え出でぬ 哀し今年
       待つ間に 春過ぎぬるも 新芽まだ
        我が古庭 生いたる 葉蘭や 幾星霜
      引越し三度(みたび)葉蘭や常に 共にありぬ
        (ヒマラヤ)杉と別れ 棕櫚(しゅろ)とも別れ 葉蘭のみ
      その葉蘭 にも別れの時か 悲哀あり
         漸うに 若葉 見つけり 葉蘭なり
         葉蘭 嫩葉の巻き葉 直立不動
          此処彼処 細き巻き葉や 突き出でぬ 
        草草皆 夏疲れの様 まだ水無月
    
                       平成29年6月16日
                             <36首>
        花続き*(はなつづき)枯れぬ 過日の華やぎ 今何処
                    (*花続きは 雌の万年草の別称)
         花続き 枯れ草の下 若芽萌え
       虞美人草 二輪 花やぎ 風に戦ぎ  
        韮(にら)の花茎 それぞれに 残り花
        草草の間に 見ぬ紫大根 薹(とう)立ちぬ
          種子(たね)ころころ 団扇形の莢の中
               アディアンタム のべつ青青 今見当たらぬ
           探すれば 溝底にひっそり アディアンタム
            花続き*(はなつづき)枯れぬ 過日の華やぎ 今は無く
                 (*花続きは 雌の万年草の別称)
       花続き 枯れ草の下 若芽萌え
        虞美人草 二輪花やぎ 風に戦ぐ
         韮(にら)の花茎 それぞれに 残り花
   
         草の間に見たり 紫大根  薹(とう)立ちぬ
           種子(たね)コロコロ 団扇形の莢の中
        月見草 鉢ごと払われ 侘びぬれぬ
   
         誰をかを 月見の友とせむ 月見草なくば
        蓬幼き ぐんぐん生いぬ 空青き
                 -蓬嫩葉の頃の昔の会話を思い出しつ
         蓬餅 匂わぬと 君 嘆きたり
          それ 豚草よ と物知りの 君は云い
            蓬と豚草 幼きは似たり 見紛いぬ
       我(あ)が山里 昔 薄野と聞こえおり
         見渡せば 薄生麗 我が庭のみ
       
       鬼野芥子 枯れ草の中 独り緑
        鬼野芥子 独り泰然 夏日(なつび)中
 
         鬼野芥子 葉 鋸歯 スリムも 丈伸ばしぬ
        小さき花冠 濃桃四弁(よひら)お久し振り
         此の草花 虫取り撫子(むしとりなでしこ) と聞いており
         細身なれど 人目を惹きぬ 華やぎあり
           虫よりも 人目を惹きぬ 虫取り撫子
       久しけり 河原撫子(かわらなでしこ)見ぬ 我(あ)が庭
        我が庭の 河原撫子 愛でし昔や 懐かしき
         ピンクこそ 河原撫子の 花色なり
        鬼野芥子 蓬 青芒 盛ん御三家 夏日(なつび)中 
      
       梅の実や 追熟待ちぬ 梅干しに
        梅の実や 笊に広げば 梅が香 仄か
         速きもの 窓辺の牛蒡 新芽三寸
     
 平成29年6月17日
                         <20首>
 ミニ薔薇 真紅 枯れつつも 色や鮮やか
        咲き乱れぬ 真紅のミニ薔薇 梅雨の空
 枯れ色も また一興 真紅のミニ薔薇
 
        
       ガレージ前 蛍袋残りぬ 轢かれよう
        七段花(しちだんか)白色ばかりと思いしが
          お色直し 白から淡紅 七段花
           花やかなり 七段花の 淡紅色
         遠見にも 大輪のアマリリス 白橙色
         アマリリス咲けば 辺りは 南国ムード
          
      萱草は 一日花なり 光(こう)と哀(あい)
       萱草甘美 黄橙色の五弁(いつひら)咲き
        萱草の 萎れたるるも 風趣あり
         枇杷の実 哀れ溝底に 嵐の後
        アディアンタム 溝底沿いに 嫩葉萌え 
蛍袋 消え 唯 せせらぎの音 静か
  通り過ぎ 君が代蘭 何処(いずこ)遠近(おちこち)す
君が代蘭 無残 花過ぎれば 枯茎ばかり
        刈り取られぬ 路傍の藪人参(やぶにんじん)大きから
         藪人参 小さきや 辛くも生き残りぬ
          藪人参 健気や 小花 頂きに           
                     平成29年6月18日
                           <27首>
          薄色も 美しき哉 額紫陽花
            額紫陽花 何を想うや 空梅雨に
            石垣上 紫陽花続きぬ 青紫 紫 紅紫 ...
        咲くやもう はらはらと 南天の花
花六弁(むひら) 留まらず散りぬ 南天の
        玉椿 独り咲きおり もう他散りぬるに
         玉椿 花散る里となりにけり
       大輪の 向日葵(ひまわり)咲きぬ 梅雨の空
        山際の 残照映え 姫向日葵
         
       切れ葉野葡萄 蔓延ばしつ 半アーチ
        金葎(かなむぐら)茂れる程なく 生いおりぬ
         山葡萄 蔓ゆらゆら 生垣から
       小菊嫩葉 青青 フェンス沿い
        菊葉野老(きくばどころ)小菊にそっと蔓を寄せ
         菊葉野老 小菊に似たる葉の風姿
  小菊 下 上 菊葉野老 緑葉の屏風
 向日葵に 背向けられて 夕日向き
兎菊 枯れ実となりぬ  夏は来ぬ 
山牛蒡 葉 棘(おどろ)なるも 花穂可憐
 高砂百合 此処にも見つけり 溝底に
 溝底に生う 八つ手や 嫩葉 艶と瑞
次次に 姫女苑(ひめじょおん)群れ咲きぬ いと優し
華奢 繊細な 姫女苑の風姿哉
立葵 (たちあおい) 花萎み 実拾いなむ
        もう会えぬ と諦めし 淡紅の花
残照 万象 朧な 茅渟の海
菫夏葉 路傍の割れ目に 踏まれぬよう
                  平成29年6月19日
                         <30首>
        夏日強し 紫陽花萎れぬ 哀れ
   
         額紫陽花 装飾花蘇りぬ 夜露にや
        夏日強し 皐月躑躅(さつきつつじ)絶え絶えなり
          殻摘みぬ 皐月躑躅の 花終わり
         篠の葉 密生 蟻も登れぬ程に
    蒲公英*(たんぽぽ)春女苑*(はるじょおん) 絶え絶えにも 綿毛つけぬ
                      (*漢字一語扱い)
      石垣背に生う 姫向日葵 日蔭なり
  
       姫向日葵 鬼野芥子 藪虱 皆 瑞々し
     姫向日葵 蝶舞い来ぬ 菜の花は?
           葉蘭 巻き葉開きぬ 待ち侘びし
       葉蘭開きぬ 初々しき哉 梅雨の空
          草花も 人も最初や 初々し
    小花集め 円錐形の 花穂 アスティルベ〔/曙升麻(あけぼのしょうま)〕
     ふんわりふわ 夢心地の花穂 アスティルベ〔astilbe〕
      泡立ちぬ 花穂揺れ乱れ 夢模様
       
       苗代苺 実の熟れたるを 見つけたり
        蝶も蟻も 蜂も見ずや 熟し実を
       花やぎなき 苗代苺 独り 完熟
         暗朱色 となりぬ 熟しぬ 苗代苺
       誰も来ぬ 苗代苺 甘酸っぱき
       静かなり 夏の夕暮れ せせらぎの音
        帰り着く 遠出に 蝶の お出迎え
     
       ジャスミンの漏斗状黄花 可憐なり
       ジャスミンの 黄花(こうか)佳香(かこう)疾(と)く消えぬ
        近づけば 漸う 匂いぬ ジャスミン花
          フェンスに咲きぬ ジャスミン 今何処(いずこ)
        
      黒鳥かと見しや 燕の日陰なり
        今朝 燕 飛び交いぬ 大空 彼方此方
         今の鳥 飛び行く風姿 烏に非ず
        もしかして 鳶(とんび)なりや 珍しき
                    平成29年6月20日
                          <40首>
       犬鬼灯(いぬほおずき)去年(こぞ)の枯れ柄や 白小花
        犬鬼灯 一年草なり 胸震えぬ
         今一度 会いたし願いに 応えしか
    
           今 咲くは 暇乞いの挨拶かや
        次の折 犬鬼灯探すも 姿見ぬ
         永遠の別れに咲きぬ 犬鬼灯 優し
          哀しくも 永遠(とわ)の別れや 頷(うなず)けり
           空梅雨や 雨恋ふるるや 草木も我(あ)も
         緑 白 茶 三色の擬宝珠(ぎぼうし)生ぬ 我庭は
三色(さんしき)葉の擬宝珠(ぎぼうし)すくすく 空梅雨に
          遠目には 白鮮やかなり 三色擬宝珠
  
        庭の槿(むくげ) 蕾つけおり 何時の間に
       甘酸っぱき 香り漂いぬ 梅の実干せば
梅の香や 脳擽(くすぐ)りぬ セラトニン*
                   (* 脳内の幸福物質)
         我庭の 梅の実落ちぬ 小さきまま
          
          葉ばかりが 青青茂りぬ 実のなきに
        唯一つの実すら 熟(な)らぬ 梅 哀れ
      
      蔓茱萸(つるぐみ)実生(みば)え 梅の樹下 蔓延ばしぬ
       芙蓉(ふよう)実生(みしょう) 日影選びぬ 蔓満足気
       生垣や 刈り込まれぬ 苗代苺も
       生垣に苗代苺 残りぬ 僅かなれど
      
      花穂 花穂や 栗の樹覆いぬ 壮観なり
       栗の花穂 千々に散りぬる 散歩路
    
      野薊 哀傷 姿消しぬ
        群れおりぬ 野薊 何処(いずこ)何時の間
      
         野薊の なき辺り 蛍袋 佇みぬ
       唯一輪なれど 野薊 無事を見ぬ
        野薊のロゼット〔/根生葉〕もう萌えぬ 心強(こころづよ)
      野薊の花や 来年再会を
      再会まで 待つ時間の長し 野薊と
         刈られぬる 野草の小園 消えぬる 哀
風荒み 暗雲垂れ込む 今宵如何
     
         今宵 静か 雨も嵐も 遠退きぬ
       
       梅の樹苔 桜樹全身覆いぬ 枯れ行くの
        ショベルカー 唸り響き 更地となりぬ
          家も庭も ショベルカーの 車輪の下
            柿の木も 伐採されぬ 哀傷 
親しみぬ 柿の木 喪失 足どり 重
        何処からか 聞こえ来ぬ 葬送曲
          柿の木の蘖(ひこばえ)待ち詫ぶ 老女あり
                      平成29年6月21日
  <首>
      五月雨(さみだれ)流るる せせらぎの音 フォルテシモ
      五月雨や 湿湿 降りぬ また湿湿
       五月雨や 坂の側溝 飛泉(ひせん)の如
        五月雨激し 溝底の幼山椒 如何にあらむ
           溝底に生いぬ 山椒の実生え 見つけおり
        山椒の幼木 耐えに耐えたり 奔流に
               葉まだ三枚の まだ幼き山椒
      頑張ってね エール送りぬ 幼き山椒
       あぁ やっぱり 流されたのね 哀傷
        気を取り直し 溝底覗けば 幼山椒
          大雨止みぬ 奔流鎮まり 山椒無事なり
       幼な木強き 奔流(ほんりゅう)に翻弄(ほんろう)されで
        踏ん張りぬ 蔦葉海蘭(つたばうんらん)も 流されで
       あのか細き 蔓もそのまま 信じ難きこと
        枯れ葉もや 踏ん張り続けり 自然力
         弱きもの 素晴らしき哉 生命力
           土砂降り 一過 草草 それぞれ 蘇生せり
          土砂降りや 暑気払いなり 涼気誘いぬ
           晴れ間あり また暑気戻りぬ あぁ 暑い
          打ち拉がれし 葉蘭 直立 昨夜(きぞ)の雨
            南天の白花 白露滴りぬ
             アマリリス 朱紅 艶やか 通り雨
           今宵 平穏 静けさの有り難き哉
            今宵静か 聞こゆるは 我(あ)が動悸
             晴れやかな 空を想いて 腹式呼吸
                     平成29年6月22日
                          <20首>
         昨夜 雨  今朝 晴れ 梅雨目まぐるし
         昨日土砂降り 今日 花 花 の梅雨
          土砂降り 一過 青草青葉 青青
           あの土砂降り 草木忘れ顔の 梅雨
           庭に出て 草や抜けば 土柔らか
           土柔らか 草毟り(くさむしり)せむとて 勇み立ちぬ
     
            梅雨の晴れ間 草毟りや また楽し
          草毟り つと飛び出しぬ 飛蝗(ばった)の子
           穂長き 野草 根張りおり 梃子摺りぬ
             長穂の野草 素朴 鄙の風趣あり
            長穂の野草 今拔かむ 花粉飛ぶ前
          草毟り 花粉対策なの 御免なさい〔長穂の野草さん〕
        嫩葉 青葉 萌え(/燃え)立ちぬ 土砂降り後
       紫酢漿草(むらさきかたばみ)密(みそか)に咲きぬ 草蔭に
          紫酢漿草 もう終わりぬか まだ咲きぬか
           酢漿草も 小さき黄花 草蔭に
         酢漿草一輪 寂しと見れば もう一輪
            姫女苑 すらりすらりと 梅雨晴れや
          藪虱(やぶしらみ) 花頭の白きや 可憐なり
         藪虱 もう出会えぬ哉 散歩路
           我が庭や 今花盛り 藪虱
    
                 平成29年6月23日
                      <29首>
        額紫陽花 愈(いよよ)濃色 青紫色
  
         さるとりいばら 紫陽花に絡みぬ 猿捕らぬ
       蔦葉海蘭(つたばうんらん)嫩葉増しぬ 爛爛(らんらん)と
       庭石菖(にわぜきしょう)花や見ぬ間に 実となりぬ 
        梅雨空を込めて 紫陽花 暮色なり
            薄 繁し ミント 下草となりにけり
        土砂降り後 幼な山椒 六葉に
         土砂降りや 春野芥子腐(くた)しぬ あぁ 終わりぬ
          と思いきや 翌朝 黄花冠 二つ 三つ
         春野芥子 命長し もう直ぐ夏    
 日中真夏日 夕方 涼し さあ散歩
          曇り来る 梅雨空や 雨来るや
        谷間覆う 紫陽花似の花頭 花樹や何ぞ
         高砂百合 姿見せおりぬ 彼方此方に
      
          高砂百合 葉 百葉なれど 蕾まだ
             蕺(どくだみ)黄小花見ぬ間に 白苞枯れぬ
        アガパンサス 何処に 薄に 隠れおり
         芙蓉嫩葉 こ〔ん〕もり 繁りぬ 小森(こもり)の如
         アガパンサス 苞開きぬ 花芽零れぬ
          凌霄花(のうぜんかつら)濃色 橙朱 夏の
        梔子(くちなし)や 蕾 突き出しぬ 白萌黄
         芳香匂う 振り向けば 梔子の白花
          アナベル という 紫陽花の大輪 白き
            遠目にも 大輪 驚嘆 アナベル紫陽花
        栗の花穂 落ちぬ今 玉椿や盛なり
         水引きは 葉ばかり生いぬ 梅雨なれば
        空梅雨(からつゆ)は 大雨 小雨 から〔っ〕と降りぬ
         空梅雨や 句心 詩心 空(から)空(から)や
      
         更地 完了 悉皆無なり 寂寥(せきりょう)
   
          あぁ 悲嘆 悲歎 柿根こそぎ 伐られぬ
   
       もう会えぬと想えば 柿の木 哀惜 哀悼
         思いがけぬ 永遠の別れ 悲歎に暮れ
           空梅雨にも 柿の葉立派と 喜びおり
           昨年(こぞ)の秋 実り楽しめりぬ 柿や亡き
         土の中 埋もれし 柿の実 在らずむや
             柿の実や 何時か芽生えむ 我(あ)は待たむ
        
        凌霄花(のうぜんかつら) 蔓 石垣 上り下りぬ
         真紅の薔薇 路へ迫り出し ご挨拶
          篠屏風 向こう谷間 せせらぎの音
         花菖蒲 白と紅紫の 花冠見事
         金魚草 小さきが可憐 鉢一杯
          金魚草 花色も 可愛い 桃黄色
         淡桃色 閉ざされし門や ゼラニュウム
          高砂百合 生うは 龍舌蘭(りゅうぜつらん)の葉の狭間
           高砂百合 咲けば驚くらん 龍舌蘭に
       
         電線や 此方 雀 彼方 燕
          
         アマリリス 花色 色々  朱赤 紅 白橙
          山葡萄 鬱蒼となりぬ 蔓も葉も
         梅雨曇天 傘取りに帰りぬ 散歩哉
          雨なくば 傘 杖にせむ 老いの身は
        
         夕風に 夕涼みせり 真夏日の夕
          
       
                     平成29年6月25日 
                          <23首>
薄墨を 刷いたが如し 梅雨の空
          鬼野芥子 丈ばかり 裾 枯れ上り
           我(あ)の背丈 超ゆるる鬼野芥子 ありのまま?
         紫陽花や 濃碧 ゼラニュウム 濃紅の 梅雨
   
          山 霞み 海 晴れやか 空梅雨の空
              
        大地縛り(おおじしばり) 独り 濃やか ひっそりと
          菫 蒴果 枯れるるも 夏葉 繁るる
          梔子(くちなし)の匂い立つ芳香 の甘き哉
  
紫陽花や 今咲き初むる 遅咲き 佳
         一粒 二つ 雨滴 慌て 傘さしぬ
          傘させば 日差し込みぬ 梅雨の空
      
         高砂百合 ぼうっと浮かびぬ 梅雨の暮れ
         
          重機音 遠くに響きぬ 梅雨の空
 
           そういえば 表札見ぬこと 久しけり
             半壊の家屋に 出会いぬ 散歩路
            もう一件 取り壊し中の 家のあり
 
             物侘しら ショベルカーの音 鎮魂歌
          寂れてし 主なき庭 姫女苑(ひめじょおん)
           更地 悉皆なくば 広々と
        更地には 新築建つや そのままや
         願わくば 暫し 更地や そのままに
          更地 そのまま置けば 野草園ならむ
            家払われ 残るる庭に 蛍袋
          更地にや 長実雛罌粟(ながみひなげし)疎ら生い
     
                   平成29年6月26日
                         <23首>
        水流るる 静か せせらぎの音も
          アガパンサス 花芽 散しぬ 上向きに
           姫女苑 夕空映えぬ 夢世界
            姫女苑 草叢に秀で 佇みぬ
           苗代苺 花も実も無きに 葉這い出ず
         姫向日葵 愈(いよよ)増したり 花の影
         紫陽花 繚乱 そっと咲く 青紫色も
 
          夏蔦や もう這い上がりぬ 新壁に
          夏草 青  夏草 枯れぬ  日影と日蔭
         凌霄花(のうぜんかつら)根株に蘖(ひこばえ)僅かなれど
      溝底の 野草園 七種* 扱き混ぜ
(*菫 春野芥子 薄 蓬 虎杖 源平小菊 高砂百合)
 
       花や伴(とも) 探すや 青垣 紋白蝶
        青垣に 紋白蝶や 独り舞い
         まあ こんな処に 犬鬼灯(いぬほうずき)咲きぬ
       犬鬼灯 再会果たせり 我が庭なり
        瑠璃虎の尾 昨日 一輪 今日多輪
         梅雨空に 瑠璃虎の尾 咲き誇りぬ
       向日葵 独り 梅雨空に 所在なさ気
 
           淡桃の可憐な 紫陽花 梅雨曇り
             芳香に 戻り来たれど 誰(た)ぞ 分かぬ
       ぽつり 雨滴 傘 持たねば 疾く(とく)帰りなむ
        花水木 葉葉 色づきぬ 花と見し
         木蓮 (もくれん)二輪 帰り咲きぬ 梅雨の空
        胡瓜黄花 浅緑の葉の蔭に
         胡瓜似の 黄花の蔓草 胡瓜前
         
        梅雨湿り 種子撒きせむとて 庭に立ち
       庭先の 何処に撒かむと 想い惑い
          木下蔭 或いは日影 どちら良しや
         レッドクローバー クローバーと扱き混ぜ 撒きぬ
       
      忘れ草 着けば 憂さや忘るるや
       忘れ草何をや忘れむ 千々あれば
       忘れ草 藪萱草(やぶかんぞ)も 萱草も
        藪萱草 けばけばしきに 憂き忘るるや
       萱草の 花に魅せられ 物忘るるや
    
     梅雨空や 何処も同じ どんより憂き
       何となく 梅雨空 どんより 何処彼処
        切れ葉野葡萄 小さき蕾の 集散あり
      溝底に生う 野葡萄 抜き取り 逃れたり
                   平成29年6月28日
                          <21首>
       久し振り 青空 絹雲 春の景
        花菖蒲 五輪 まだ 蕾もあり
        吹き上げる 微風(そよかぜ)青葉の匂い乗せ
         風清々し 暫しの 森林浴
          微風(そよかぜ)や フェトンチット遣しぬ 清々し
           清々し 森林の匂いや 清涼感
               小さき萩 人知れず咲きぬ いと愛し
            隈篠(くまささ)や 嫩葉 青葉や 隈は無く
       露草の 葉 茎伸びぬ 梅雨の空
               角つけぬ 果実 檜(ひのき)金平糖の如
           花茎 丈高く 何処まで伸ぶや 藪萱草(やぶかんぞ)
      
         雨傘干しおり 梅雨の晴れ間 風物詩
          梅雨時に向日葵 百輪 急ぎ過ぎ
            見越しの檜扇水仙(ひおうぎすいせん)橙赤色
           春野芥子 白き ぽんぽん愛らし気
        
              鯉の群 亀悠然と 姿見せ
               水澄まし すいすい 水面 横切りぬ
           黄菖蒲 の 果実垂れぬ 池の畔(ほとり)
      花咲きぬ 太藺草(ふとい)ジャイアント蚊帳吊り草(かやつりぐさ)
        苗代苺 花 疾(と)くに終えれど 実見当たらぬ
        苗代苺 勇敢かな 路へ這い出ず
   
                  平成29年6月29日
                        <23首>
         朝曇り 絹雲棚引く 切れ切れに
 
          紫陽花見事 紫陽花色の 花盛り
           アガパンサス 淡碧紫の花頭 見せ初みぬ
         凌霄花(のうぜんかつら)濃橙色に 熟れおりぬ
          紫陽花や 我が世の春 と 梅雨空に
           梔子(くちなし)の白花匂いぬ 延々と
         夾竹桃(きょうちくとう)紅白 咲き揃いぬ 散歩路
         凌霄花 白柿色の大輪 顔覗かせぬ
           高砂百合咲きぬ 庭の一隅に
           やはり 懐かしき哉 ヒマラヤ杉よ
     
         冒険心 遠回りせむと 梅雨空に
           迷い込んだり 此処は何処 見知らぬ小路
           遠回り 冒険に胸弾みたり 若き日や
            遠回り 今不安覚え 脈を取り    
 遠回りし過ぎ 喘ぎぬ 散歩路
           石段 百段 登りて 胸痛襲われぬ
            冒険心 最早や 不要 老女には
グラディオラス 朱夏の訪れ 想わるる
木立庭 ログハウス風の邸 風趣あり
       帰り着き ミニトマト食(は)む ミニ幸せ 
金色の実垂れ 柄揺れ小判草
南天散り 実結びぬ 小さきを
             
                     平成29年6月30日
 <26首>
       しとしとが 湿湿(しつしつ)と聞こゆ 梅雨の朝
        しとしとと 降りぬ小雨 疎まし梅雨
       そぼ降る雨 紫陽花 生き生き 我(あ)凋(しぼ)みぬ
        梅雨長雨 湿気及びぬ 何処まで
         葉蘭 青青 梅雨や喜雨なり 憂きに非ず
          姫女苑(ひめじょおん) 唯佇みぬ 梅雨の庭
           鬱とうし 靄(もや)立ち籠むる 梅雨の朝
   
   
        霧立ちぬ 辺り朦朧(もうろう) 梅雨日中
         濃霧なり 一寸先は まだ見えるれど
           大樹のみ ぼうっ~と浮かびぬ 霧の中
        日影あり 梅雨の晴れ間や 蝶の影 
               日差しあり 青空 雲間に 彼方此方に
  
         青空に誘われ 戸外へ 湿気払い
          湿気込む 身の天日干し また楽し
           
         アガパンサス 一輪 頭(とう)上げ 梅雨の雨
        枇杷の実 萎みぬ 啄まれぬまま
         白花蒲公英(たんぽぽ)白きポンポン 梅雨空に
          遠くから 匂いぬ 梔子(くちなし)薔薇の匂い
           鹿子草(かのこそう)ピンクふわふわ 花盛り
                  この路や 昔山中 今宅地
         アガパンサス 濃紫の花頭 手折れ 哀れ
          茸見ゆ 紅茸(べにたけ)や 傘 まだ ベージュ〔白茶〕
          せせらぎや 瀑布の音なり 豪雨梅雨
             大丈夫? 溝底に しっかり 小山椒(ちいさんしょう)
         今日は まあなんと穏やか 梅雨の晴れ間
 
           溝底でも 小山椒 穏やかに
                     平成29年7月1日
                           <17首>
          庭の草木 一息吐けり 梅雨の晴れ間
           降れば 晴れ 晴れれば降りぬ 梅雨の情
         額紫陽花 虻(あぶ)蜜舐めり 今 晴れ間
         額紫陽花 蝶と見しは 装飾花
          草草縫い 晴れやかに飛ぶ 蜆蝶(しじみちょう)
         梔子(くちなし)よ 匂い遣(よこ)せよ 我が庵へ
      窓際の菜園 牛蒡二葉 梅雨の朝
          牛蒡の切り株 一葉のままと想いおり
           牛蒡 新仲間 得たり 葱 小松菜
 日差し 暑し 梅雨晴れや 朱夏の気配
    
        蝶は舞い 我(あ)や 草むしり 梅雨の晴れ間
         源平小菊 勢い失いぬ 梅雨疲れ?
          花茎ならぬ 実茎 増しぬ 兎菊
        鬼野芥子(おいのげし)丈ばかりなり 花芽なり
         梔子(くちなし)*の生垣過ぎれば 一重の鉢
 (*この種は 八重)
紫陽花 笑みぬ 梔子も 梅雨晴れに
          兎菊 咲続けおりぬ 梅雨の路傍
       
                     平成29年7月2日
                          <27首>
                -梅雨のそぼ降る小雨の続いた後
          三日目の朝 青空の 晴れやかなこと
         
           餌咥え 烏飛び行く 東方へ
          日中 真夏日 夕べや求めむ 涼風
            夕凪 べた凪 涼風何処
           微風(そよかぜ)なく 涼風何処(いずこ) 嘆きぬ我(あ)
蒸し暑き ままの夕べや 朱夏来ぬや
この暑さ これからの 朱夏や 想わるる あぁ
 梅雨晴れや もう真夏日の 暑さ哉
    
        紫苑 萩 篠の嫩葉や 萌えたちぬ
         万年草 蒲公英(たんぽぽ)の夏葉と 仲の良く
         シャスタデイジー 愈(いよよ)咲きおり 返り咲き
           返り咲く シャスタデイジー 胸躍りぬ
         際立ちぬ 狗尾草(えのころぐさ)や 小菊中(なか)
         藪萱草(やぶかんぞ)庭向こう奥 一日花
          夕空を 背に アガパンサス 咲きぬ 淡紫に
         
           千草刈られ すっきりするも 心(うら)哀し
        刈られても 刈られても 生いぬ 草草かな
         屁糞葛(へくそかずら) 生いぬ あの臭気放ちつつ
          屁糞葛 酷い名づけや でもその通り
            別の名は 早乙女花 花冠見れば 実(げ)に
         花 可憐 彼(か)の臭気や 何処から
          裏山の 草いきれや あの臭気
 
         アディアンタム 影潜めり 溝底に
             万年草 黄花 返り咲き 溝の縁
           あらっ 何処へ 兎菊 姿見ぬ
            あぁ 悲哀 予期せぬ別れ 兎菊
   
             
                  平成29年7月3日
                      <23首>
           梅雨寒(つゆざむ)に くしゃみ 
              セーター探したり
            朝 梅雨寒 昼 真夏日 夕そのまま
               この暑さ 台風の予兆らし 
        ハイビスカス 花萎れおりぬ 夕べの路
         独り残りぬ 梅の木守りや 黄熟しつつ
         韮の茎 返り咲きおり 頂きに
          花白き か細き 清き 韮強き
           源平小菊 勢 失いぬ 梅雨疲れ?
          屋根瓦 青葉も光りぬ 梅雨日差し
              揚羽蝶 黒地に白紋二つ 舞い
           揚羽蝶 久しく遭わぬ 烏揚羽も
             漸うに 涼風吹きぬ  暑き夕べ
            花咲きぬ それぞれの ハーブ 僅かなれど
             ハーブの小園 セージの他の名知れず
          色 百種 植えられており 夏花壇
           夏花壇 色艶やかなれど 精気なく
            夏花壇 無理遣り咲きぬ  哀れあり
             夏花壇にも 夏休みは 如何かしらん
         引き抜かれ 噫 不憫なり  鬼野芥子*(おにのげし)
                       (*漢字一語扱い) 
          2m(メートル) 近く 丈ある 鬼野芥子あり
            他の芥子も悉く 姿消しぬ 哀悼
           行き帰り 挨拶 交わしぬ 鬼野芥子
            鬼野芥子 いつもの挨拶 姿見ぬ  〔哀し〕
             花は何時 と尋ねる楽しみ 今はなく
               花を見ぬ間に 永遠(とわ)の別れの 来たるとは
                              平成29年7月4日
                                   <22首>
              追熟を狙って 置きぬ 南瓜四つ一
            メキシコ産 南瓜 如何や 神戸の追熟
         窓辺の菜園  小松菜* 法蓮草(ほうれんそう) 青梗菜(ちんげんさい) 
                        (*漢字一語扱い)
           窓辺の菜園 もう育ちぬ 一食あり
          スペアミント 白黄の蕾 咲き泥む
            淡紫の小花 まき散らすなむ スペアミント
          鬼野芥子 抜き去らるるは 汝の運命(さだめ)か
           鬼野芥子 消えぬ 朝散歩の 悲哀
                    ー 台風接近中の鬱陶しい午後に微睡みて
              秋空や 秋桜 揺れぬ 夢畑
             南天に触れ 白露 我(あ)袖に
             時々刻々 台風 接近 不安増
              台風予報 目欹(そばだ)てる 一日也
                台風の 進路何方(いずかた) 目離せぬ
                 我(あ)が神戸 台風逸れぬ 安堵せり
                  逸れぬれど 台風 我(あ)が身 直撃す
              急性の自律神経失調症 苦悶 苦闘
               苦しみつ 唯 うつらうつら 横臥のまま
                寝覚めれば 台風一過 気分晴れ
                 落ち着きぬ 白湯一杯の楽のあり
              台風一過 草木 穏やか 息つく風情
                  台風一過 草木も ほっと 心倣(こころなし)か 
                大風も 大雨も止み 一日(ひとひ)  無事
                              -夜半になりて
             台風再襲? せせらぎの音 愈(いよ)よ 増しぬ
                              平成29年7月5日
                                  <21首>
                         台風逸れぬ 万象穏やか 我(あ)が庭も
                台風逸れぬ また梅雨や戻りぬ 噫
                  そぼ降る梅雨 松葉の白露 ぽとり ぽと
                   松葉の露 光りぬ 白珠の如
                 平穏なり 草木眠れぬ 午睡の時
                  鬼野芥子 二輪 なんと 我(あ)が庭
                 枯れ俵麦* 愈よ 茶金に輝きぬ
                            (*小判草の別称)
                  鬼野芥子 抜かれし跡に  蔦葉海蘭
                   蔦葉海蘭 もう 葉も花も 溝縁に
          凌せん葛(のうぜんかずら) はや此処にも 大と小*
                         (*この葛は2種類あり花にも大小が)
                際立ちぬ 深緑の谷間 夏水仙 
                 アガパンサス 紫に咲きぬ 淡濃なく
                  紫陽花 まだ盛り 否(いえ) 今ぞ時めき
               蕺草(どくだみ)や 二輪小さく 肩を寄せ
                微風(そよかぜ) の 揺り籠  鬼野芥子のあどけなき
                窓辺の若菜 初摘みせむと 今朝
                   容器水耕の 野菜や 味 如何
             更地にも 若葉萌えおり お湿りに
              更地 早(はや) 野草の薗となりにけり
               荒地野菊(あれちのぎく) 姫昔蓬(ひめむかしよもぎ)
                   米栴檀草(あめりかせんだんくさ) 
                  皆 丈高し
              尾の長き小鳥 汝(な)の名は 何(な)ぞ*
                         (*尾の長さが胴体と同じ位の
                              小鳥 2羽 番(つがい)?親子?)
                                   平成29年7月6日
                                         <22首>
                皐月(さつき)* 二輪 もう一輪 返り咲き
                         (* 皐月躑躅(さつきつつじ)の略称)
              韮の茎 独り路傍に 忘れ花
              菫の夏葉 来春を 楽しみに
                 向日葵(ひまわり)かと見しや ダリア紅紫色
                  石垣の隙間のカラー 葉枯れ 哀れ
               藪萱草(やぶかんぞう) 茎聳え立つ 花芽(かが)頂き
           藪萱草 笹薮となりぬ 花壇中
            花壇に飽き 厭きか 逸出の 錦鶏菊(きんけいぎく)
             サルビア 朱 赤  咲き揃いぬ 夏花壇
            夕空を 燕尾飛び交う 巣は何処
             軒の下 探せど見えぬ 燕の巣  
               餌咥え 胸張り 見渡す 燕や雄
            庭毎に 紫陽花 花色 取り取りに       
              瑞々しき 苔黒ずみぬ 梅雨時に 〔何故に〕
             更地早や 緑の浮き島 彼方此方に   
          桔梗咲く まだ秋とは 思ほえぬに
              桔梗 爽やかな風姿 やはり秋草
          フェンス際 蔓 葉辿れば 朝顔なり
            この頃は 朝顔との邂逅 余りなく
             近頃は 朝顔珍しく なりにけり
              朝顔と風鈴 夏の風物詩
                                平成29年7月7日
                                       <23首>
            アガパンサス 百輪繚乱 待ちおりぬ
             ハイビスカス 初咲き一輪 ままの風情
              谷間から 這い上りぬ 葛葉の大き哉
           涼を呼ぶ 微風(そよかぜ) 吹くや 夏の夕
                   夕焼けに 未だならぬ雲 空淡藍
              夕空を写し アガパンサスの淡紫 浮かびぬ
              梔子(くちなし)や 白く匂うも 枯れるもあり
               盗人萩(ぬすびとはぎ) 悉く 刈られし 春
                今やもう 嫩葉一面 盗人萩の
             何処も彼(か)も この萩の園に 戻りたり
               雨上がり 夏草繁茂 蝶の舞い
                雀二羽 戯れ合い 飛び込む 生垣に
                 傘重ぬる 茸に出会う 或る日のこと
                  巨大化せり 茸の傘や 倍増しおり
                 数年前 小さきが百本 木下蔭
                それにしても このジャイアント風 何故(なにゆえ)に
                  肉厚の傘 ぼっかと二つ割れ 凄っ!
                   茸の傘 反り返りて 平盃の如
                  此処にも また 合わせて十五 茸の小簇
                   傘の色 皆 白茶 松茸 に非ず
                     松茸 とも 紅茸とも非ず 何(な)の 茸
                    嘗て此処 赤松林らし 名残り〔の松〕 あり
                   松茸 に似ぬ茸生ぬ 松茸 何処(いずこ)
                   紅茸も見ぬ あの御伽の国の風姿
                                 平成29年7月8日
                                       <22首>
          背高泡立草*(せいたかああわだちそう) に追われ 紫苦菜 溝底に
                              (* 漢字一語扱い)
               背高泡立草 林立せる程の 勢いあり
                 背高泡立草 抜かれ 哀れ 孤塁守れず 
                         - 更地の方向から
            唸り声 早や 新築の 備いあり
             朝顔の苗植え見れば 暑気涼し
                 藤一輪 返り咲きぬ 暑からずや
                   空遠く 小鳥のさえずり 姿見ぬ
             夕化粧(ゆうげしょう)咲きぬ いつもの鮮紅色に
              鶏頭(けいとう)も 真紅の花茎 伸ばしおり
            アガパンサス 知らずや 凌霄花(のうせんかずら)向う側の
             谷間の 青葉茂れり 鬱蒼なり
              此処にもや 盗人萩の 嫩葉萌え
                            -玩具のシャトルコックの置き忘れを見て
               岩蔭に シャトルコック 憩うや 一つ
                仄暗き 雑木林や 夏の夕
                         夕凪や 暑さ淀みぬ 微風(そよかぜ) 無く
              夏蔦や 外壁 攀(よ)じ登りて 庭覗いぬ
             追われたか 藪萱草(やぶかんぞう) 新天地に
              藪萱草咲き シャスタデイジーに色を添え
                                     〔白と黄柿色に〕
                          ーTV映像で向日葵(ひまわり)の畑を
                                               見つつ
              丈高く 独り見渡す 向日葵あり
               向日葵や  同じ向きにも 横向きも
                横向きは 旋毛(つむじ)曲がりや おっとりや 
              向日葵畑 日蔭見つけて 蝶憩いぬ
                                平成29年7月9日
                                     <20首>
              鬱陶し 噫(あぁ) 気怠し 梅雨かな 噫
                 空調合わず 団扇取り出す 夏日中(ひなか)
                  朝顔の絵団扇煽ぐ 昼下がり
               浴衣に団扇 遠き昔の物語
                束髪(そくはつ)の 浴衣佳人の 白き項(うなじ)
             夕涼み 漫ろ歩きや 蝉の声
               狗尾草(えのころぐさ) 幼きは 花茎 すらり伸び
                大きくなれば 花穂 垂(しだ)るる 狗尾草
              朱紅 燃え 匂いぬ ガーベラ 凛然と
                 梅雨晴れや 涼風 吹きて 湿気 散
               碧き空 白き雲 燕飛び交う
                涼風の せせらぎの音 小鳥の声
               アガパンサス 咲きぬ 淡紫の花火の如
                次々と 咲くアガパンサス 華やぎぬ
                 凌霄花(のうぜんかずら) 花大型化 しどけなき
                咲き継ぐも 大方は散りぬる 薮虱(やぶしらみ)
               窓開ければ 涼風(すずかぜ)吹き入る 夜半の月
                涼風や 草木も眠る 丑三つ時
                             平成29年7月10日
                                    <20首>
              万年草 枯れ草色も 萌黄色も
               鳳仙花(ほうせんか) 久しき出会い 且 楽し
                鳳仙花 何時 何処会いぬや 遠き昔
              花咲けば 思い出鮮やか 鳳仙花
              露草や 彼方此方生うも 花はまだ
              都忘れ 都忘れたか 深山に生い
               深山嫁菜(みやまよめな) 嫩葉生いぬ 木下蔭
             白縁の 紫陽花艶やか 有終の美や
              花びらの 裏返りおり 額紫陽花 〔別の風趣あり〕
             何時見ても 白小花 可憐 藪虱(やぶじらみ)
              鉄柵の向う 草叢 草いきれ
              蛍袋 残り花 あり 小さき花芽(かが)も
                石垣の 蔦葉海蘭(つたばうんらん) 花一休み?
                                         〔花を見ぬ〕
               夏日沈みぬ  せせらぎの音 風の音
                夕日落つ 木蔭 愈(いよ)よ 黒影に
                   夏空に 絹雲乱舞  縦横に
             暗雲の迫りて 急ぎ帰り来 夕涼み
              萩の簇の 傍の宵待ち草 萎れおり
               宵待ち草 萎れり 今宵*の残り香(花)や
                                 (*この’今宵’は昨夜のこと)
                宵待ち草 暮れ泥(なず)む今宵* 待ちぬるや
                                  (* 今宵は、今夜のこと)
                 句も浮かばぬ 熱帯夜の 疎ましき
                              平成29年7月11日
                                   <20首>
             高砂百合 十五輪ほど 溝底に
              山牛蒡(やまごぼう) 花穂 小さきも 大きも 鄙の景
               鬼田平子 咲きぬ 小さく 朱夏なれば
                幼山椒 消えぬ 幾夜の流水(るすい) 根取られ
              幼山椒 十葉までも 育ちぬに
               もう一度 覗けど 溝底 幼山椒亡く 哀悼
             錦鶏菊(きんけいぎく) 早や 双葉萌えぬ のびやかに
              錦鶏菊 独り離れて 生垣下
               小公園 向日葵佇む 夕日影
              向日葵 彼方此方向きおり 日沈めば
              燕尾飛び 鳶(とんび) 翼大きく 飛び
              木槿(むくげ)咲く 渋桃色 底紅の
               木槿 昨日 一輪ひっそり 咲きおりぬ
                 花びら 開きぬ 木槿 二 三輪 向こう側 
              こちらまあ 陰鬱な梅雨に 多く ぱあ~と 〔花木槿〕
              姫向日葵 暑苦しき程 咲き乱れ織
               微風(そよかぜ)の 吹き込む窓辺 涼のあり
                                平成29年7月12日
                                      <20首>
               切れ葉野葡萄 蕾膨らみぬ 梅雨は慈雨
               切れ葉野葡萄 葉や楽し ユニークな曲線
               瑠璃色の果実を見たし 秋の佳き日に
                切れ葉野葡萄 運命(さだめ)や如何 煩(わずら)いぬ
                生う場処は 石垣の下 更地の下
                 新築工事  抜き取らるるかと 煩いぬ
              ふと見れば 南天葉蔭に 天牛(かみきりむし)
               好みは 南天? 蜜柑 栗と言うに
          黒地に白紋 小斑天牛(こまだらかみきりむし)なり 一寸 太目
                  昨今は 虫までもが メタボ気味か
            我(あ)が庭に 白花見つけり 犬鬼灯(いぬほずき)
             思わず微笑 犬鬼灯との再会に
               初夏の日に 永遠(とわ)の別れをしたばかり               
                         今宵見れば もう垂れおり 青き実を
             戻り梅雨 鬱陶しきも 戻り来ぬ
               梅雨明くれば 朱夏の暑気 噫 暑い!
                蒸し暑し 室内湿度 超90%
                 梅雨明けぬ 流る水の 熱きかな
           風鈴も鳴らぬ 夕凪 蒸す暑さ
           蒸し暑し 目覚め 窓開けぬ あの窓も
            蒸し暑し 夜半の物音 猪(しし)の音
              我(あ)が庵 神戸の山麓 猪の棲む
                              平成29年7月13日
                                    <22首>
             凌霄花(のうぜんかずら) 蕾 段々 垂れおりぬ
            枯木の柿 葉繁り 葉影 黒々と
             紫陽花や 大輪となりぬ 有終の美
               紫陽花や 最期に 一花(ひとはな) 咲かす哉
                  緑深き 谷間の彼方 海 輝きぬ
                 鬱蒼の谷間や 潺(せせらぎ) 草いきれ
               葉も実も茎も 渋茶に枯れぬ 羊蹄(ぎしぎし)
                枯れ風姿 羊蹄 愁いの 風趣あり
                  独りなり 下るる坂路 夏水仙
                   夕散歩 暑気澱みぬ 涼風無く
                    溝底涸るる 草草渇(か)るる 暑気
                この暑さ 夕涼みもままならぬ 夕散歩
                   ベコニア鉢 門扉の両側 門衛や
                紫陽花の 大輪迫り来 生垣の坂
                 紫陽花の 大輪 薄色の薬玉の如
                  紫陽花の 大輪 大手毬となるらむ 
                            -ふと 昔 浜辺を散歩したことなど
                                      思い出し
               月夜の浜 打ち寄せられたは 沖つ夏の藻
                 ぐにゃぐにゃす 足元に藻 浜の宵 
               宵の浜 藻 雲の如 打ち上げられ
                    月夜の浜 星の雫の 光る海面(みおも)
                   鬼野芥子 丈愈々 高く 天まで延ぶや
                 これはもう 御伽の世界  ジャックと豆の木
                                  平成29年7月14日
                                          <22首>
                切れ葉野葡萄 無事 よくぞ耐えたり 〔整地の〕地響きに
                    朝日に鮮やか ハイビスカス 朱赤 
                  通りすがり ハイビスカス一輪 こちら側
                 あら もう一輪 ハイビスカス 向こう側
                         今季は 唯 一輪と 想いおり
                 風涼やか 夏は朝(あした)と 悟なり
                  この間 双葉の朝顔 もう 繁し
                  朝顔の 蔓ゆらゆら 何処へ伸ぶ
                   蔓延ばし 朝顔 鉄柵に巻き付きぬ
                  蔓の先 蕾 三つほど 見つけたり
                     朝顔は 夏物語 散歩路
                      木槿(むくげ) 朝 乱れ咲きぬ 艶やかに
                  木槿 夕 百花 凋みぬ 儚き哉
                   朝日へ向き 木槿 花 花 花盛り
                     一輪だけ こちらを向きぬ 愛想良く
                 石垣の 草草(そうそう) 一掃(いっそう) 
                                          無機質な夏
                    草草無くば 無情 無哀想 夏の夕
             柏葉紫陽花(かしわばあじさい) 三段変化(へんげ) 緑 白 渋茶
                何処も彼処も 盗人萩(ぬすびとはぎ)の花の苑
               皐月(さつき) 梅雨を耐えたり 残り花
                   溝底の 韮 返り咲き 次々と
              梅雨明けり 身の鬱 鬱が 軽くなり
                                平成29年7月15日
                                        <22首>
              この暑さ 春野芥子 頭(ず)垂れ 立ち枯れぬ
               蓬 茫茫の蔭 山牛蒡(やまごぼう)の白き花穂
                 早乙女苺 葉茂り 這い出ぬ 路傍まで
                    早乙女苺強し 実結ばずも
               蔓草や 暑さ知らずや 延び のびのび
             柳葉姫女苑(やなぎばひめじょおん) か細になるも 枯れず咲き
              アガパンサス 薄に乗っ取らるる側から 花頭見せ
               梔子(くちなし)の 匂い来たれり 二 三輪
                 梔子の 花 枯るるも まだ匂いあり
               葛生う葉蔭 早乙女花の 花 可憐
                夏蔦 葛  葉茂し 激し 夏の狂奏曲
                   彼方此方の 窓辺の灯 夏の宵
               茸 消えぬ もう果てたのと 悲しみぬ
                直ぐ近く 猪(しし)の土掘り跡 らしきが
                 彼(か) の茸 猪(しし)の大好物かしら
               きっと 御馳走ね 猪の嬉しそうな顔
                 茸 一傘も見ぬは 一寸侘びし 
             残るるは 綿帽子被るる 他処の茸
               彼(あ)の茸 唐笠茸(からかさたけ)や天狗茸や
             天狗茸(てんぐたけ) 瀟洒な風姿 お伽の世界
              妖し気な ムードも秘める 天狗茸
                松茸 と見まがいぬ茸 独り 木の下蔭
              梅雨と猛暑 珍しき茸の 生命(いのち)生みぬ
                                平成29年7月16日
                                      <23首>
            燕飛び来 嘴(くちばし) 且つ寄せ合い 且つ去りぬ
              雀 路上 燕 〔電〕線上 それぞれ集い
            この暑気に 葉三つ 萌え出ず 何(な)の若木
             無花果(いちじく) 一つ 水涸るる 溝底に
              梅の樹や 葉 皆縮みぬ 暑気中(しょきあたり)?
              夕散歩 暑さに追われつ 帰りたり
           木槿 (むくげ) 花皆 向こう向き 一輪 こちら
                こちら向き 一輪 自然の情けや
                  今朝の庭 木槿 悉く こちら向き
             朝毎に 向き変えぬ 木槿 自然の妙
              木槿 数えれば 百花 梅雨明けぬ
                淡紅(うすべに)の 渋く 明るく 咲く木槿         
                 木槿 窄むもあれば 蕾もあり
                  槿の樹 花満ち溢るる 夏の朝
            辺り淡墨 空淡藍  梅雨の末
            月影も 星影もなき 唯暑き 夏の闇
              夏の夜や 一切 濃藍 無為の世界
                クゥ~ クゥ 仔犬の寝言  夏の夜半
               夜空 突く 犬の遠吠え 何事ぞ
                            ― 幼き日の夏の宵の遊びを想い出しつ   
              花火散る 線香花火 宵の内
                花のような 閃光 散りぬ 線香花火
                 弾き飛ぶ 鼠花火や 逃げまどい
               昔のは 造りも形も 素朴なり
                   今の花火 線香も鼠も 賑々し
                               平成29年7月 17日
                                       <20首>
              凌霄花(のうぜんかずら) 花大きくなり だらしなし
              凌霄花 花小さきが 愛らしき
                   朱夏の葛 おどろおどろし 大きさ 大き
                  源平小菊 熱暑に耐えて 慈雨待ちおり  
              茫茫のミント 戦(そよ)ぎぬ 微風(そよかぜ)に
                ミント茫茫 姫女苑(ひめじょおん) か細く揺れ
                    夏の窓 涼風(すずかぜ) 誘いぬ 風鈴なくも
                    朱夏の午後 シエスタ*の 気怠き 静か
                             (* シエスタは 南欧 スペインなどの
                                    昼食後の昼寝の習慣)
                            ― 子供時代夏にはお昼寝の習慣が
                                  あったことを想い出して
                大人横臥 童 寝付けぬ シエスタの夏
                この国にも シエスタありぬ 時 駘蕩〔ゆっくり〕
                  昼下がり 燕飛び去りぬ シエスタは?
              微風(そよかぜ)に 一息つけば 遠雷あり
               遠雷響き 烏の鳴き声 黄昏時
                額紫陽花 花 裏返り またの景
                濃藍の今宵 紫陽花 青白く
                 額紫陽花 闇夜の雫 花の雫
               茎伸びぬ 花穂 疎らに 白小花 
                 白小花 銀水引(ぎんみずひき)の名にし負う
                 紅は未だ 咲くはずなれど 水引の
              間違いぬ 苺と見し嫩葉 金水引*
                          (*金水引は 紅白の水引とは全く 別種)
                                  平成29年7月18日
                                         <20首>
              あっ! 蜻蛉(とんぼ) 目の前飛んだり 青き空
              蜻蛉釣り 目で追うばかりの 我(あ)が身哉
               蜻蛉飛び 蝶蝶舞う 朱夏の庭
                蜻蛉飛びぬ 懐かしき哉 久しぶり
            塀の上 向日葵 覗く 朝の路
             朝顔咲きぬ 三輪 朝 涼し
               刈り取られし 路傍 早や 蔓草萌え
             この蔓草 仙人草であれかし と
            苺 何処  待てども待てど 見ぬ哀し
                 春先から初夏まで 待つも 苺見ぬ
              四半世紀 我(あ)が庭に 生いおりし 〔〕
            昨年は蓬の隣 赤き実が
                初夏には 彼方此方 見つけり 苺の嫩葉
                 待つほどに 金水引と分かるなり
                    彼(か)の喜びは 糠喜び となりにけり
             来春は またの出会いの あらむことを
             朝顔の蔓 2本縁結び アーチ造り
                 このアーチ 誰(た)が為のもの 蜻蛉や蝶や
               グラジオラス 咲きぬ 朱紅 と 白紫
               グラジオラス 花 段々と 登り咲き
                               平成29年7月19日
                                     <20首>
                影法師 ゆらゆら伸びぬ 夏の夕
                栗 青き毬(いが)丸丸 秋は未だよ
                 朝顔 苗植えられ 棚仕立てられ
               百日紅(さるすべり) 淡桃色 咲きぬ 一塊りに
                梅の古樹 立ち枯れせり 今夏 哀れ
               杉木立 昔スリム 今 メタボ気味
            梔子(くちなし)の 生垣の 残花 一(ひぃ)二(ふぅ) 三(みぃ)
                甘酸っぱき匂いや 梔子の残り花
                葛野原 海原の如く 迫り来ぬ
               淡紅色の木槿(むくげ) 繚乱 夕近くも
             庭の奥 紫陽花 薄色に咲きおりぬ
             グラジオラス 白く光りぬ 夕陽影
              坂に生う 夏草 青青 瀟洒なり     
                        薔薇と早乙女苺 生垣を突き抜け 伸び出でぬ
               落葉あり 赤松 裸身 晒しぬ 哀
                白雲立ちぬ 入道雲にあらねども
                  白雲や 欠氷(かきごおり)の如 青き空
                 白き雲 茜色に映えぬ 雷鳴なく
                               -数年前の雷鳴を思い出しつつ
                我(あ)が庭を割らむばかり の落雷音
                 公孫樹(いちょう)無事 電気メーター壊れたり
                夕空を 帰路急ぐや 燕 燕返しに
                               平成29年7月20日
                                      <20首>
               グラジオラス 淡桃 白 紅 花(色)替り*
                                    (*’日替り’ を捩って)
                山葡萄 葉葉 七重八重 繁茂哉
                 山葡萄 実結びおり 知らぬ間に
                  山葡萄 青き実見つけり 此処や其処
                青き実の 紫勝ちたり 犬鬼灯(いぬほうずき)
                  山葡萄 金蚉(かなぶん) 一匹 夕涼み?
                金蚉の 青瑠璃色の羽 見惚れるなり
                 腕 痛痒(つうよう) 黒き粉虫の 襲撃なり
                   他の虫も 威嚇〔スクランブル〕せり 通りがけなのに
                 奥まった 溝の壁にや アディアンタム 
                   ミニ薔薇の 真紅の花花 枝垂れおり
                    野萱草(のかんぞう) 黄橙の花茎 草叢より
                野萱草 花終わりて 草叢繁し
              夏蔦 覆いぬ 白壁 青青と
                サルヴィア 朱赤の色や 朱夏の色
                 朱夏 朱焔 燃えたる如 サルヴィアの花穂
               茫茫のミント 実結びぬ 花過ぎて
                 ミント 黄葉枯葉 実 実りおり
                  石畳み ミントの小さき 枯れもせず
               庭の木槿(むくげ) 蕾ばかり 花やなく
                木槿 今朝 花咲き出しぬ 横向きに
                                   平成29年7月21日
                                           <29首>
               朝顔に釣られて漫ろ 朝散歩
                風吹くも 日差し 強し 日傘差し
                 夏の朝 朝日傘の 朝散歩
                   朝顔や 二輪涼やか 朝散歩
                 朝顔は やはり 朝〔の〕顔 夕窄みぬ
                梅雨明けぬ 初雷も無き 朱夏の空
                  万象 青碧 夏輝きぬ
                   夕立ちか 見上げる夕空 青く晴れ
                 夕立ちも 雷鳴もなし 暑気ばかり
                         雷鳴かと身構えれば 飛行機〔の爆〕音
                   夕立ちも 見舞ってくれぬ 猛暑日や
                   熱暑なり 夕涼みにならぬ 夕散歩
                梅雨明けぬ 熱暑 用水路 淀みおり
                流水なく 用水路 此処彼処 水溜まり
                 苔と藻や 用水路の 水溜まり
                  溝底に 藪蘭 咲きぬ 淡紫の
                   葉枯るるも 藪蘭咲くは 子孫為や
                塀の上 ミニトマト 青き実  覗かせぬ
                 ピーマンの青き実 葉蔭にさりげなく
                 実ピーマン 青葉に同化 保護色
                鬼野老(おにところ) 花穂 長長く垂れ 雌花なり
                 背比べ 鬼野芥子(おにのげし)と 窓越しに
                  茎三尺 葉ばかりなれど 鬼野芥子 
                 鬼野芥子 大風な来そ 丈高き故
                    犬鬼灯 葉 青青 雨なくに
                     犬鬼灯 何時覗きても 白花 微笑
                  熱帯夜 鬱続く夜の 寝苦しき
                   寝苦しきに 窓辺に立ちぬ 丑三つ時(うしみつどき)
                              平成29年7月22日
                                       <19首> 
                今朝はもや 散歩も叶わぬ 猛暑なり
                  朝凪に 散歩諦め 空調(送風)に
                   朝凪や 一葉だに揺れぬ 朱夏の庭
               木槿(むくげ) 今朝 全方向に 淡桃花
                電線に 燕十五羽 夕涼み?
                 飛び去りて 且つ 来ぬ 忙し燕おり
                花も葉も 萎るるなり 夏の暑気
              カサブランカ* 真白き 大輪 塊に咲きぬ
                                (白百合の新種の栽培種)
                カサブランカ 白雪の華やぎ 朱夏の庭
                       石垣の草草 騒騒 涼風に
            朝顔の萎みぬ 夕べ 心寂し
               朝顔の花芽(かが) 二つ 三つ 明日向きおり
            皐月 未だ咲き残りぬ 暑中哉
            ロゼット プリムラ 葉 向日葵 花を見ぬ
             小路角 不意に出会いぬ 蔓草黄花
              名の分かぬ  蔓草黄花 萎みぬ 夕
               蔓草や 黄花散らして 夏屏風
              縁紅(ふちべに)の 葉七重八重 夏の空
                               平成29年7月23日
                                      (20首)
              庭へ出れば ミ~ンミ~ン 蝉の声
               蝉の声 初鳴き 初聞き 今季の夏
               梅雨明けの 宣言なりや 蝉の声
                蝉の声 心許な気 鳴きおりぬ
                 熱暑に驚き 声呑んだか 蝉の声
               か細きかな 小石にも しみぬ 蝉の声
               か細き声 蝉時雨や まだ遠き
                     蝉時雨 と 聞きしは 我(あ)が耳鳴りか
               蜻蛉(とんぼ)飛び 蝉時雨の夏 懐かしき
               葉蘭 捲き葉 開きぬ 生生 青青
               猪(しし) 優し 葉蘭 根こそぎ掘り返さず
               額紫陽花 一輪 凛然 他 枯るるも
                 額紫陽花 薄色も 枯れ色も 夫々(ふふ)風趣
               曇天に 木槿(むくげ)の桃紅 の華やぎ
                気付かれず 佇む白き 花木槿
               微風(そよかぜ)も そよとも 吹かぬ 熱帯夜
                熱帯夜 草木も眠れぬ 丑三つ時
                       朝空や 小鳥も飛ばぬ 猛暑なり
               猛暑の朝 早起きや無理かや 小鳥さえも
               背高 御三家 姫昔蓬 鬼野芥子 背高泡立ち草
                    お多福南天 葉 渋紅から白朱へ 真夏色
                姫柘榴(ひめざくろ) 濃柿色 鮮やか 緑中
                                    平成29年7月24日
                                         <23首>
                 電線に 燕四十羽 何(な)のミーテイング/集会
                      一年(ひととせ)は 燕 百余羽 空旋回
                凌霄花(のうぜんかずら) ポールへ登り 花樹となりぬ
                  凌霄花(のうぜんかずら) 花落つ  落椿の如
                   花茎 垂るる 凌霄花 淡桃色の
                      薄桃色は 始めての邂逅 実(げ)に 優し気(げ)な
                何時もの電線 いつもの燕 六羽 
                 二羽 路上すれすれ 燕返し
                      路上歩き 啄む燕や 珍しき
                  急接近 燕尾翻しつ 去り 且つ来
                  燕一羽 飛びきたりぬ 我(あ)が近くまで
                急降下 燕 また 路上 啄みぬ
                 燕の巣 といえば 軒下 風物詩
               見当たらぬ 雀の巣 何処 樹々の蔭?
                ポッ ポロ ポ~ 山鳩の声 朱夏の朝
                 山鳩や 何を告げるや 空怪しげ
                  暗雲に 微風不気味 大風の兆し
               曇天に 慈雨待ちぬ 草木も我(あ)も 
                待ちおれど 天は応えず 雫もなく 
               チロリアンランプ 茎 半アーチ 白壁に
               木槿(むくげ) 今朝も 咲きおり 猛暑中
                朝に同じ 風姿 方向 木槿の昼
                 昼 木槿の淡紅 狂おし気(げ)
                  朝曇り 木槿の残花 夕に映えぬ
                             平成29年7月25日
                                    <23首>
             透かし百合 鉄柵横から 顔を見せ
             透かし百合 花びら 散らしつ 咲きぬ
              朝烏 (鳴き)声 響き渡りぬ 朱夏の空
               朝烏 (鳴いたは) 昨夜の慈雨への寿ぎか
            朝顔 彼方此方向いて 十五輪
             夏桔梗 萎(しな)び 萎(しお)れぬ 惨めな姿
              夏桔梗 果てぬや 哀れ 猛暑なれば
              一降りの 夜雨に草木 甦り
                             夜半の雨 夏桔梗 蘇生 真白き風姿
                夏桔梗 花盛りぬ 枯れ花 腐(くた)り
             ぽとり 木槿(むくげ)の窄み花 落ちぬ 音もなく
               見たり 木槿の花落つ その時を
                木槿 今朝 また 咲きぬ 二十余輪
             晴れやかな 木槿の 花 花 雨上がり
             朝顔の萎みて 心寂し 夕べ哉
                 念の為 雨傘差しぬ 夕立ちなくに
                    散歩路 そぼ降る雨傘 朱夏の夕
                朱夏の夕 雨傘と散歩 初体験
           宵待ち草 一面咲きぬ 雛形が
            宵待ち草 花開かぬ筈 宵は未だ
               ぽつぽつと 街灯 明かりぬ 夏の夕闇
             チッ チッチ 鳴くは どっち 〔燕や雀や〕 夕闇に
             烏 燕 家路 急ぎぬ 我もまた
                          平成29年7月26日
                                <23首>
            山芋(やまのいも)花穂 恋ふるる我(あ) 虫や如何
                 山芋 今 唯会えぬ 何方(いずかた)へ
             珊瑚樹(さんごじゅ)や 虫に食まれ 花哀れ
               黄花コスモス 橙色咲きぬ 秋や まだ まだ
             み~ん み~ん 暑苦しき哉 みんみん蝉
              みんみんに  じいじい混ざりぬ 盛夏なり
              朝顔の ご機嫌顔や 朝日影     
                花鉢 九種類 咲き揃いぬ 盛夏
             何処にでも 生う 狗尾草(えのころぐさ)や逞しき
              虫取り撫子(むしとりなでしこ) 花鉢の蔭 鮮桃色
             忍冬(すいかずら) 返り咲きや 狂い咲きや
               ペテュニアに 蜂飛び来 我(あ)に ブーイング 
              万年草 苔 生生 欄干下
               ハイビスカス 夕には萎るる 一日花(ひとひばな)
             カサブランカ 白きロングラン 約一か月
             白きは燃え 赤き(ハイビスカス)は落ちぬ 夏の定め
              長命(カサブランカ) 短命(ハイビスカス) 夫々 盛夏の日々
              アガパンサス 花びら萎れ 青実 膨らむ
               蔓草や アガパンサスに 絡みぬ盛夏
            百日紅(さるすべり) 杉木立出で ご挨拶
             枇杷 実落ちて 新芽萌えぬ 盛夏の空
               池に映す 浴衣姿や 夕化粧(ゆうげしょう)
                                 平成29年7月27日
                                     <20首>
             よく見れば 御所水引き 花穂 紅白の
              見上げれば 百日紅(さるすべり)花穂 青き空
               蝉時雨 歩むに連れて 声高に
                 遠近(おちこち)から 大合唱 蝉の朝
             木槿(むくげ)の白き 涼しき哉 朱夏の朝
              窓 涼風(すずかぜ)呼びぬ 熱帯夜の朝
                 虫取り網 童見上げる 高き幹
            蝉飛び去り 後は童の がっかり顔
             手を屈め そっ押さえてり 幹の蝉
               取り損ね 飛び去りにけり 油蝉
             じぃ じぃ じ~ 油蝉 採り損ねたる
           あっ 蝉の 抜け殻 見つけたり 久々に
            通りすがり 生垣に 抜け殻 一つ
             他処にも 肩寄せ合う 抜け殻 二つ
               未だ此処にも 蝉の抜け殻 合わせて 七つ
            朝露に輝く 抜け殻 新しき
             降り頻る 蝉時雨の主の 抜け殻らし
        百日紅(さるすべり) 此処にも 花塊 桃花色の
         朝顔や 柵仕立てられ 後は咲くのみ
                                  平成29年7月28日
                                         <22首>
         窓辺 の ”菜園” もう一種増えたり 青梗菜(ちんげんさい)
          窓辺の葱 にゅうにゅう伸びぬ この猛暑中
        スペアミント 花過ぎ 実熟(な)り 蓬うなり
           ミント刈れず 黒粉虫の 痛痒恐れ 
         小公園 ブランコ ぽつねん 夏の夕暮    
          小公園 花火の音なし 静寂(しじま)あり
          夕映えの向日葵 何処か懐かしく
           グラディオラス 白き花茎 や 君の想い出
          夕化粧(ゆうげしょう) これからお出掛け? 朱夏の夕
             雷鳴に 飛蝗(ばった) 飛び出し 且つ 草叢へ
           生温き 微風も無き 雷(らい)遠退きぬ
            生温き 朱夏の夕暮れ 薄墨の空
               遠雷(えんらい)や 辺り 不意に暗くなり
                 遠雷や 帰り急ぎぬ 夕散歩
             土砂降りと構えば 時雨 雷遠退きぬ
          蜩(ひぐらし)の声 未だか細き 幼な声
            カナ カナ カッ 蜩の声 間歇(かんけつ)に
               歩めば 騒ぎ 止まれば 閑か 蜩の声
            ペティニュヤの 白きの笑みぬ  朱夏の鉢
             まぁ! 絢爛 百日紅(さるすべり) 燃え立ちぬ 朱夏の夕
                     絢爛な百日紅の 桃紅映えぬ 夏の夜空
               打ち上げの 花火見ぬ空 空(むな)しき哉
                 音ばかり 花火見ぬ空 空しき哉
                          平成29年7月29日
                                   <17首>
           晩夏の朝 漸うに 刈るらむ スペアミント
              草茫々(です)ね と言われ 奮い立ちぬ
               虫除けに万全の構え さあ 草刈らむ
           草刈れば 蜆蝶(しじみちょう) 飛び出で 誰何(すいか)せり
                      あの痛痒 草刈り途中で ギブアップ
           飛蝗も (ばった) ミントの簇から 飛び出しぬ
            藪蚊 しつこし 払ても刺さるる 憎し
              草刈りは 緊急事態ネ 虫等には
            盛夏の庭 なんといっても 虫の園
                草刈り人や侵害者 総攻撃 〔浴びぬ〕
           午後静か 蝉も 飛蝗も 午睡らし
             そよそよと 薄の揺れぬ 晩夏かな
                 暮れ泥(なず)む 庭 木槿(むくげ)や 花閉じぬ
          暮れ泥む 空 飛び去る 雀 八羽
           もう一羽 後追いおりぬ 朱夏の夕
              じりじりじり 残暑 滲み入る 熱帯夜
               濃藍の 空 月も見ぬ 熱帯夜
                            平成29年7月30日
                                   <20首>
          燕(つらくらめ) 悠々 旋回 夕の空(土砂降り 何方(いずかた)へ
              雷鳴 轟(とどろ) 土砂降りに 熱帯夜消えぬ
               明けやらぬ 空 雷鳴 遠く 残りぬ
                雷鳴去り 鬱入いりぬ うつ うつ 噫
                   鬱に沈む身の辛さぞ 朱夏や知る
           朝 雷雨 木槿(むくげ) 花咲くは 正午過ぎ
            午後 碧空 海辺の賑わい 以下ばかり
              散歩する 犬も人も見ぬ 朱夏の夕闇
               溝底の百合 夫々 蕾あり
               高砂百合 高きは蕾 二つあり
                枯れ葉 一葉 ひらひら散りぬ 朱夏の情
              百日紅(さるすべり) 猿は見えねど 花塊 五つ
              針槐(はりえんじゅ) 揺 揺 揺れる 夕風に
             向日葵(ひまわり)や 郷愁そそる 小公園の
             蝉の声  喧(かまびす)し哉 盛夏なり
             一年(ひととせ)は 紅 今は白 庭の水引
              マーガレット 黄花の可愛 木下蔭
               マーガレット 清楚な風姿 白き花冠
                 命長し ダリアの紅桃花 咲き継ぎぬ
              朱夏のベンチ 濡れ羽 一本 夕烏
               熱暑には ベンチも 樹木も 黙念と
                                 平成29年8月1日
                                       <20>
                 此処にもまた 朝顔咲きぬ 朝散歩
                   朝顔は 盛夏の華と心得り
                     朝顔の 咲きぬと見しは 西洋朝顔*
                               (* ヘテュニアの和名)
                鶏頭(けいとう)の 花頭 燃え立つ 紅(くれない)に
                    鶏頭栄え  向日葵枯れぬ 夏の情
                  ジニア 咲きぬ 大輪 一輪 初咲き らし
                夕闇に 夕化粧(ゆうげしょう) 浮かびぬ 一輪 二・三・・・
                   夕化粧 濃紅ばかり 白 黄 絞りは
                     溝底の 草草の中 白百合 蕾みぬ
                               - 初夏に樹々 伐採され
                                   残りたる下草が
                 下草青青 蔓も 葛(かずら)も 野茨(のいばら)も
               木の葉の舞い 雀と見紛いぬ 朱夏の夕
                     紫陽花渋花 渋好みの薬玉  
                    白黄 萌黄 白茶 三色枯れ葉 何方から
                   大きな枯葉 団扇にせむと 夕涼み 
                 空一面 箒形の雲 突然に
                  夕空に 長き尾引く雲 吉や凶や
              項垂れつも 鬼野芥子 咲きぬ 今 猛暑
               鬼野芥子 花小さく 白黄の一重 可憐な哉
                鬼野芥子 鬼は葉姿 花可憐 
                  鬼野芥子 名は 葉おどろおどろしきに
                                平成29年8月2日
                                     <23首>
                 韮 生いぬ 細身の風姿 朱夏仕立て
                   彼(あれ) 雨雲? な降りそ これから散歩
                 暗雲 広がりぬ 山際西方
                   遠目には 花樹の如き 凌霄花(のうぜんかずら)
                 凌霄花 花咲き乱れ 大樹に
                   今はもや 花冠 少なに凌霄花
                   フェンスに 絡みつ 野老(ところ)枯れぬ 哀れ
                 鬼野老 葉葉青青 と 繁りしが
                 見つけたり 紫酢漿草(むらさきかたばみ)返り咲き
                   若草萌えぬ 抜き取られし その跡に
                     草草 逞し 早や 若草千草 生いぬ
                   山牛蒡(やまごぼう) 青き実 浅紅から黒紫
             仰ぎ見れば 石垣の白百合 高嶺の花
                   甘酸ぱき香 涼風運びぬ 朱夏の夕
                  雨ぽつり 一滴 夕立ち来ぬ間に 帰りなむ
               燕(つばくらめ) 姿を見せぬ 薄墨の空
                雷鳴を恐るるや  蝉 鳴り潜め
                 蝉時雨 聞こえぬ夕暮れ 心(うら)寂し
                   結局は 雷も 夕立ちも無き 散歩かな
                夕涼みに出で 散歩の 蒸し暑さ
                 熱暑続き 草草 干し草 打ち拉がれ
               夕凪や 悉皆 無動 ただ 熱暑
                   熱暑にぐったり 草木も 花も 我〔あ〕も
                夏桔梗 紫一点 白き中
                  アガパンサス 実青く膨らみぬ 夏の景
                                  平成29年8月3日
                                        <22首>
                 木槿(むくげ) 花花 大きく笑みぬ 今朝涼し
                   草刈りや 額にしみいる 蝉の声
                     額の汗 拭いつ 草刈り 一休み
                     谷川の潺(せせらぎ)の音 蝉時雨
                     谷川や 潺の音 緑深き
                    灼熱の太陽 ぎんぎら 木下蔭に
                     喉渇きぬ コップ一杯 甘露かな
                      木槿(むくげ)窄みぬ 夕昏 寂し 朱夏の庭
                   銀水引 一人舞台や 紅はまだ
                     屋根近く 姫昔蓬(ひめむかしよもぎ)丈 六尺越え
                   背伸びして 蕾見つけぬ 姫昔蓬
                   傾きし 姫昔蓬 樫の木 支え起こしたり
                    鬼野芥子 花芽 花開く 猛暑中
                           丈高き 互いに 知るや 姫と鬼
                      庭挟み 彼方(あちら)と 此方(こちら) 姫と鬼
                    丈高き 絆のありや 姫と鬼
                   山牛蒡(やまごぼう) 紅に染まぬ 茎も実も
                    渋茶色 フェンスの野老(ところ) 枯れ果てり
                濃藍の夏空の星 宵の明星
                朱夏の宵 星影一つ 閑かなり
                             平成29年8月4日
                                 <20首>
                辺り一面 薄墨色 夏空 暗雲
               雨降りぬかと思えど 降らぬ 暗雲や
                雨模様 蝉鳴かぬは 雨宿りや
                台風の予報あり 心騒ぎぬ
              槌の音* 続きぬ 未だ小雨なり
                           (*新築工事中の)
                小雨も また 大雨となれば 台風に
              突然に 爆音轟きぬ 用水路
                雨激し 石段の側溝 奔流が
                 稲光 雷鳴轟(とどろ) 大雨なり
              過ぎ去れば 台風ならぬ 唯の夕立ち
             止みぬ 雷も大雨も 唐突に
               暴れ夕立ち 何事も無き如 鎮まるる
                  夕立ち一過 碧空覗きぬ 雲の切れ目に
                夕立ち後(のち) いつもの 朱夏の夕暮れ哉
                   夕烏 羽根震わせ 身繕い
            打ち続く 熱帯夜に我(あ)が身 ぐったり
                  寝苦しき 夜 窓辺に開ければ 風涼し
                月眺め 暫しの納涼 熱帯夜    
                星影なく 唯 月耿耿 熱帯夜
                 月耿耿 熱帯夜の夜半  静寂(しじま)あり
                                 平成29年8月5日
                                      <20首>
            栗の毬(いが) 丸丸 たわわ 秋待つらむ                                                                
             風仙花(ふうせんか) 邂逅 久しき 懐かしき
               何時 何処の出会いも 忘却の彼方
               凌霄花(のうぜんかつら) 蟻 花に纏わり 忙し気
            夕凪に嵌りて ただ 蒸し暑き哉
              夕凪 来 署気淀みて 足どり重
                漸うに 風吹き 且つ 止む 夕散歩
          外壁に 垂るる 蔓草 早乙女花
            夏空や 繊細 可憐な 花 鬼野芥子
             窓の灯 朱夏の黄昏 などか懐かし
            銀水引き 生き生きな花穂 十一輪
             銀水引き 花穂斑 まだ新しきが
           さるとりいばら 蔓延ばしおり 枯紫陽花に
           紫式部 白緑の花芽 びっしりと
             紫苑(しおん) 咲くお花畑や 夢の内
                        平成29年8月6日
                                <20首>
             熱帯夜 寝苦しき哉 不整脈
              猛暑日 熱帯夜 続きぬ暑気中(あたり)
               手付けられぬ 夏草 茫茫 我(あ)が庭よ
              大犬蓼(おおいぬたで) 小さく芽生えぬ 花芽の穂
                 障子に写 春野芥子(はるのげし) 夏影絵
               木槿(むくげ) 淡紅紫の花 熱暑の今朝
                熱暑なり 草木も 虫も 鎮まれり
                  起きつ 寝つ 悪感劇し 炎昼や
                 枕に耳 当てれば 聞こゆ 我(あ)が動悸
              ぽつねんと 淡桃色の薔薇 夢花壇
               木槿(むくげ) 花半開きのまま 夕べに
                 サルヴィアの 白花や何処 此処は 朱赤
             朝顔の咲くは 暁 暁前
                 朝夙(あさまだき) 朝顔の花 未だ 夢見時
                  朝顔や 朝露に濡れ  目醒めるや
                   朝顔の 蔓先の花芽 今朝咲くや
                 朝顔の花の彩り 色々に
                  朝顔の咲き初む風姿 未だ見ず
                   盆踊りの賑わい 知らずや 朝顔の花
                  朝顔は  早起き 早寝 健康一家/一花
                               平成29年8月7日
                                     <23首>
                   台風の接近 辛艱(しんかん)  唯 辛抱
                    台風接近 我(あ)襲いぬ 湿と鬱
                 犬鬼灯(いぬほおずき) 草草と共に 集団 備え
                雨嵐 犬鬼灯 知らぬ気 叢(くさむら)裡
                草草の 丈低く生いぬ 逞しき
                 風 死せり 夕凪や 尚 蒸し暑し
                  台風逸れぬ 風雨 刻々 遠退きぬ
                    台風逸れぬ 辺り 不気味に静かなり
                  急に もや 風雨烈し 余波の戻りか 
                  時折の台風の余波 騒めく窓
                炎天下 トマトや熟れおり 真っ赤か
                  日向臭い トマトの匂い 鄙の匂い
                   朱夏の太陽 一杯 トマトの赤
                 胡瓜の花 黄色の下に 青き実が
                     木槿(むくげ) 淡紅一輪 吹かれつ咲
                   咲し日に 咲く花木槿 一日花
                    咲きし日や 風雨強くも 猶 咲きぬ
                     青薄(あおすすき) 勢い増したり 風雨の後
                   青薄 フェンスより 出でぬ 困り者
                              -素麺流しのTV映像を見つ
             椀と箸 素麺流し  朱夏涼し
               青竹に 素麺流し 燥(はしゃ)ぐ声
                                 平成29年8月8日
                                      <24首>
              朝涼し 草草戦ぐ 風安(やす)し
               百日紅(さるすべり) 花散りぬる路や 朝曇り
               朝曇り 遠近(おちこち)から沸きぬ 蝉時雨
                   耳遠き 蝉時雨や  ソフトな響き
               黄の大輪 フェンスに満開 南瓜なり
               藪蘭 花 薄づきぬ 木槿(むくげ)下
                瑠璃青の 翅輝やかせ 金蚉(かなぶん)飛
                 青葉蔭 金蚉飛び出ず ブーン ブン
              木槿(むくげ)の花窄みたるも 白仄か
               夕闇に のっとり 浮かびぬ 白き影
                夕闇に 姫女苑の白小花* スターダスト/星屑の如
                                 (*漢字一語扱い)
            犬鬼灯 実たわわなり 秋 未だ遠きに
             昼炎(ちゅうえん) 満天青碧 千切れ雲
              瑠璃糸蜻蛉(るりいととんぼ) 其処だけ涼し 狗尾草(えのころぐさ)
             翅黒蜻蛉(はぐろとんぼ) 垂直に立つ翅 艶やかな
              翅黒蜻蛉 翅垂直に立て 何想う
                翅黒蜻蛉 絵団扇から出づや 夕涼み
               夜半の嵐 河原撫子 如何にあらむ
               嵐にも 微笑む 撫子 優し/強し
               蚊蜻蛉(かとんぼ) 飛び来 止まり来 犬大蓼
                気を付けて 蚊蜻蛉 足折れ易すそう
                開け放しぬ 窓 金蚉(かなぶん)や 飛び入る音
                                   平成29年 8月9日
                                           <26首>
                 朝涼(あさすず)や 安心するな 昼炎天
                  朝涼し 次第に暑気増しぬ 酷
                  台風去り 且つ 戻り来ぬ 猛暑中
                          燃え滾る灼熱の太陽 窓向こう
                猛暑にも 庭の草草 青青生い
                 大犬蓼(おおいぬたで) 太陽沈め 深緑
                  姫か大か* 決め難き哉 花芽小さきに
                          (* 姫は 姫昔蓬 大は 大荒地野菊の略)
                鬼野芥子 茎と葉脈や 白骨化
                おどろおどろし 鬼野芥子や お化け屋敷
                  背高泡立ち草 倒され起れば オブジェな風姿
                猛暑中 南天の実 紅(くれない)に
                青薄 はや 尾花となりぬ 秋 夙(まだき)
                更地 放置  約一か月 草草萌え
                生命(いのち) 速し あっという間に 八重葎(やえむぐら)
                 更地そのまま 虫集(すだ)く草叢に
              通り過ぎ 溝底の 白百合見ぬ 悲歎
               白百合 何処 諦め切れず 戻り来ぬ
                溝底の白百合 見たり 花芽 十五
                 二・三輪 直ぐにも咲そう 溝の白百合
             蜩(ひぐらし)や カナカナと鳴くや 日暮れ時
              夕風に乗り カナカナと 蜩かな
                まだ声の か細きかな 蜩の
                 蜂 窓開けるや 瞬時  飛び込みぬ
                珍し気に 蜂 飛び回りぬ 居間 恐怖
                   次の朝 蜂 見つけたり お泊りしたの?
                 話掛けるも そのまま まだ御睡(おねむ)?
                      暫くし 探せど 蜂見ぬ さようなら
                          平成29年8月10日
                                 <23日>
                 木槿(むくげ) 猶 花やぎぬ 朝曇り
                  朝曇り 覚束なき身 暑気中り
                 す〔っ〕きり伸びぬ 背高泡立ち草や 青青と
                  他の簇は 倒れるる風姿 しどけなく
                   それでも 猶 頭擡げ生いぬ 健気 
                     水引きの紅 漸うに咲きぬ 我(あ)が庭に
              紅と白 水引きの 色 咲き合いぬ
              銀(=白)水引き か細き花茎 絡む葛
                 か細くも 花芽つけおりぬ 何(な)の葛や
               験の証拠(げんのしょうこ) 地這い 掌状葉 重ね
           花冠 真白 内紅(うちべに)の可憐な小花や 屁糞葛(へくそかずら)*
                              (*亦の名は 早乙女花 この方が
                                    相応しき)
             屁糞葛 匂いが源 名の由来
              あの匂い 懐かし気哉 草いきれ
                屁糞葛 壮絶なり 生命力
                 何処にでも 絡みて生いぬ 襖絵(ふすまえ)にも
             要黐(かなめもち) 屁糞葛に絡まれ 枯れ果てぬ 
              他の草木 いずれ絡まれるるらむ 屁糞葛
               止むを得ず 抜き取らるるや 屁糞葛
            額紫陽花 〔装飾〕花 裏返りぬれば お礼肥
               渋白緑の 装飾花 染みぬ 薄紅に
             渋緑から渋紅へ 紫陽花 変化(へんげ) またの景
              洗い髪 浴衣美人や 今何処
               風鈴も 団扇もなきに 盛夏 厳し
                                 平成29年8月11日
                                        <20首>
                             ー 庭の狗尾草(えのころぐさ)を眺めつ
               この間 若草なりしが 花穂揺らせぬ
               狗尾草 もう 其処此処に 更地の野に
                新築の槌音 噪音ならずや  狗尾草
                 油蝉 も早 果てぬか 路上に横臥 
              夕化粧(ゆうげしょう) 燃ゆる紅(くれない) 厚化粧
              黄花コスモス 独り聳えぬ 朱夏の空
              パプリカの実 葉蔭に 赤く熟れおりぬ
             ミニトマト 実やまだ茎に 青白く
             あっ 鴨(かも)!と見しや水盤 陶器製
                 苺の嫩葉 青青 春遠けれど
               蝶形花 豆科の花らし 何の豆
 *
                 黄花コスモス 独り 聳えぬ 朱夏の空
                 夕凪夕闇 漸く 微風(そよかぜ)我(あ)が身過ぎ
                蝉時雨 我(あ)が耳鳴りより 小さき哉
                  暑き日ほど 我(あ)が蝉時雨 音量増しぬ
             茜雲 桜樹のシルエット 立ち開(はだか)りぬ
              蟻 枯れ葉越え 且つ潜(もぐ)りぬ  何方(いずかた)へ
               山吹の黄金色や 返り咲き
               朱夏の夕 蒸し暑し 帰路の足 重し
                芙蓉(ふよう) 白きが窄みぬ 夕なれば
                              平成29年8月12日
                                    <18首>
                秋立ちぬ 盛夏の朝の皮膚感覚
                 青葱の 細長きを縫う 夏虫かな
                 暑き日に 尾花の多きに 驚きぬ
                暑き日に 尾花見 秋思う 我(あ)独り
                物事の順序狂いぬ この猛暑
                  窓際の 菜園開園 葱残し
                まだ 盛夏 実感すなり 昼炎に
                木槿(むくげ)下 藪蘭の花茎 七(なな)数え
                梅新芽 一枝や聳え 屋根を越え
              露草の青花 出会えぬ もう 晩夏
               花咲くを 知らぬ間に小さきポンポン(/綿毛) 鬼野芥子
              窓開けば 涼風吹き入り 驚きぬ
             何時の間にか 大きく生いぬ 芙蓉の実生え(みばえ)
              芙蓉の木 愈々 立派 花は未だ
                初咲きの 芙蓉一輪 秋立ちぬ
            窓開けば 夜風 清けし 満喫せり
            草木皆 夜風に吹かれ 涼し気な
              吹き込みぬ 夜風に 我(あ)が身も 涼しき哉
                            平成29年8月13日
                                   <27首>
               石段に生う 白百合咲きぬ か細げな
                向こうにも か細く咲きぬ 白百合あり
                    年毎に か細くなりぬ 山辺の白百合
               溝底の 白百合の花芽 また か細げ
                青葉闇 白百合の叢 玄妙な
                 白百合 五輪 数え続けば 一・二・三・・・
                石垣に ペテュニア一株 遠出気分?
                 桃色の芙蓉出会いぬ 我(あ)が庭 まだに
             青葉下 マーガレットの黄橙 燃え立ちぬ
               早咲きの桔梗は 白花 紫は秋や
                この路(みち)の奥や 山路 青葉闇
                蜂 飛び出しぬ 思わず手を振り 引っ込める
              散歩だけなのに 夏虫 歓迎?排斥?
              路傍の韮(にら)  白き花冠の慎ましき
               小さき百合 独りぽつねん 石段下
                更地早や  草叢となりそうな 気色あり
               漸うに 出会えたり 紫苦菜(むらさきにがな) 溝の底
              〔紫苦菜〕 我(あ)が庭に 毎年咲くに 今年見ぬ
             夏蔦や 色づき初みぬ 速し秋
            草草*の おどろおどろしき 丈の高さよ
                           〔* 鬼野芥子 大荒地野菊 など〕
             草丈 二倍超なり 晩夏の怪
            百日紅(さるすべり) 早や 窄み散りぬ 十日紅よ
            ここ数日 見ぬ雀や お盆の藪入り?
              燕飛びぬ 藪入り 知るや 楽し気に
               御所水引き よく見れば 銀水引きの枯れ姿
             枯れ花びら 紅の花穂とや 見紛いぬ
                 我(あ)が庭の芙蓉 まだ咲かぬ 淡桃色の
                             平成29年8月14日
                                     <27首>
                涼し気に 玉簾(たますだれ)咲きぬ もう 晩夏
              秋立ちぬ 玉簾の白花 咲けば
               玉簾 庭の一隅 何時もの生い
              整地され 悉く消えたり 玉簾
                玉簾 他処で出会いぬ あな嬉し
                  もう出合いはなき と 落胆しおり時
            頬を撫で 髪戦ぐ 涼風 秋立ちぬ
                  凌霄花(のうぜんかずら) 微笑 白柿色に
                     凌霄花 彼方此方で笑顔 秋立ちて
                凌霄花 茎垂るる末に 花群れぬ
             グルッ グルグ~  山鳩の声 晩夏の夕
                烏より 聞き易き哉 山鳩の声
                  夕烏 鳴けば 不幸ありやと 心(うら)悲し
             苗代苺 路縁に沿いて 蔓を出し
                遠見には 雨後の筍の 群像の如
                 近づけば 羊蹄(ぎしぎし)の哀れ 枯れ姿
             蜩(ひぐらし)の声 遠く 聞こゆ 日暮れかな
              思わぬ時 思わぬ所 藪蘭(やぶらん)と
               藪蘭の 薄紫や 今盛り
             擬宝珠(ぎぼうし)の花 白きが咲きぬ 段々に
              我(あ)が庭の 擬宝珠消え 寂しがりしが
                擬宝珠との邂逅 天の計らいか
               更地もや 草草茂るる 夏野となり
               夏野は今 大荒地野菊(おおあれちのぎく)の楽園
                            姫女苑(ひめじょおん)と
              蕺(どくだみ)の緑葉 繁し 黒紫色に
                              平成29年8月15日
                                    <9首>
                             -不整脈きつく 句作の意欲失せー
              公孫樹(いちょう)の葉 小雨滴り 燕飛ぶ
              しとしとと そぼ降る時雨 今 晩夏
                梅雨再来? 晩夏や 鬱陶しき
             空に映えぬ夕 晩夏の残照なり
                  夏の日の 夕日の名残りの 茜雲
              夕凪夕暮 一面一切 薄墨色
                                   -TVの画像見つつ
                山の住処(すみか) 猿脅しの花火 夏の末
                              - 我(あ)が庭にて   
                    猪(しし)来たり あの鳴き声や 餌探す声
                  好物の 団子虫ありや 晩夏の夜半 
                                 平成29年8月16日
                                       <29首>
                 さるとりいばら 花散り 実落ち 青葉 艶艶
                 芙蓉 花 艶やかに窄みぬ 晩夏の夕
                  用水路 仙人草 見ぬと 詫びおりぬ
                          ー 用水路壁 垂れ咲く 華やか仙人草の景を
                              追想つ
                  懸崖造りの如 咲きぬ 仙人草
                     仙人草 這うや酢橘(すだち)の 青葉の上
                       大きな葉 唐胡麻(とうごま)に似たり 何者ぞ
                     葉蔭 覗けば まあ!オクラの実 其処にあり
                  オクラの実 成るを見るのは 初見 天を向く
                    花は見ず 黄色の大輪 一日花とや
                  ピーマン熟し 零れ落ちぬ  路の上            
                   収穫されず 路上に零るる ピーマン 哀
                 黄の小花 苦瓜(にがうり)の花とは 知る由もなく
                苦瓜の可憐な黄花 武骨な実
                 オレンジ色  葉葉の間(はざま)に  熟し実
                チロリアン・ランプ まだ点さぬ 晩夏の夕暮
                 木香薔薇(もっこうばら)の実 熟せば何の色? 
                                    〔黄 橙それとも 赤〕
                白百合 一輪見ゆ 植え込みの奥
                 数多く 咲く白百合や 不吉な予兆
                   白百合の大群 出現 大震災前
                不吉な予兆 当たらぬようにと 祈るばかり
                               平成29年8月17日
                                     <30首>
                  薔薇の青き実 一つ 淡紅の花のや
               落下せり 凌霄花(のうぜんかずら) 路に 花莚(はなむしろ)
                晩夏の夕べ 窓際の灯 仄明る
                 白縁に 底紅の花冠 早乙女花
              ミニトマト 放たれ育ちぬ ありのまま
                世話されぬ ミニトマト思うがまま 熟したり
                 ピーマン 熟れるる隣り まだ白き花
             四方八方 飛ぶ豆の蔓 白蝶花乗せ
                豆花 (とうか)舞う 白胡蝶の如 蔓と共
                   白き蝶花 何の豆なの 莢まで 待たむ
            プランターの 野菜畑や オクラ ピーマン 豆 苺
                      ー どんどん大きく育ち 狭小な庭を幅広く
                                占拠するようになった実生えの木が
             我(あ)が庭に懲りずに生う木や 唐胡麻(とうごま)らし
               吃驚せり 我(あ)が庭の邪魔者〔扱い〕 唐胡麻とは
               有刺の実 想い出したり蓖麻子油(ひましゆ)の      
           苦瓜の 葉持ち上げ 実覗き込み
             実裂開 紅色の種子 覗きおり
                蟻や這う 黄橙の実に 苦瓜の
                     苦瓜に 蟻登り来ぬ 我(あ)が目前
            夏日沈みぬ 残照 仄か 茜色
          燕飛ぶ 家路 急ぎぬ 茜雲
               瑞々し プランターに生うオクラの莢
               もう一つ 大きなオクラの莢 種子透かし
             山牛蒡(やまごぼう) 熟果 落ちて 新しき〔小花穂〕が 
           あぁ 無常 溝底の白百合 切り取られり
             白百合の 小さきばかりが 切られおり
               待ちおりし 花開くを見ず 白百合哀し
           切り取られりし 小百合等 今何処
             願わくば 床の飾る 華ならむ
                   大きなる 白百合残れり 有り難き
                              平成29年8月18日
                                      <21首>
            朝散歩 木槿(むくげ) 芙蓉の お花見に
                           -整地 新築予定の家屋の前庭の酢橘の樹に
                                這い繁るる葛等を眺めつ
            仙人草 早乙女花 切れ葉野葡萄 花盛り
            花盛り 有終の美を 飾るる あれこれの葛
                 整地予定 知らで咲きおりぬ 葛ら 哀れ
              突然の来訪 揚羽蝶(あげはちょう) また楽し  
           飛び去って 且つ 飛び去りぬ 揚羽の舞い
           当て所(ど)なしや さ迷う 揚羽 茜雲
             蜆蝶(しじみちょう)見慣れし目には 揚羽大形
                   芙蓉の花 殆ど窄みぬ 夏の夕
            明日の朝 来むと誓う我(あ)に 芙蓉笑み
             木槿(むくげ)盛り過ぎ 芙蓉盛りなり バトンパス
         蔓草垂れぬ 壺垂れの如 白壁に
            信濃撫子(しなのなでしこ) 枯れ紫陽花の中 鮮桃色
             藪蘭や 日影の石垣  乾涸びつ
                藪蘭の 生いぬを見ゆ  半日影
             何処か似たり 空木(うつぎ) と早乙女花の花姿
           久し振り 藪枯らし(やぶからし)の小花 懐かしき
            愛らしき 小花のトレイ〔平皿〕 藪枯らし
              猛々し 藪枯らし な枯らしそ 空木〔の生垣〕
             花続きぬ 生垣の続きぬ 衝羽根空木(つくばねうつぎ)
              白から淡紅 緩やかな変化(へんげ) 衝羽根空木
                  伸び放題 衝羽根空木の新芽 四方八方
              機械音 衝羽根空木や トリミング
              勢いよく 早乙女花 巻き付きぬ 〔衝羽根空木に〕
                   山吹 残花 生垣の向こうに 見え隠れ
                              平成29年8月19日
                                      <21首>
              山鳩の声 騒がしき 何(な)かあらむ
               朝烏の 声なく 山鳩の声
                 晩夏の庭 酢漿草(かたばみ)の黄花 驚きぬ
                   酢漿草は 初夏に咲きぬ と定めおり
                 酢漿草の 小さき花 実 愛らしき
                  オクラの実の ミニミニサイズ 酢漿草の実
               ガサッ! 飛び出す 負飛蝗(おんぶばった) 笹簇から
                 負飛蝗 雌 若緑色 容姿美形 
                     秋の末 恐ろしく太り 枯れ色に
                      飛び跳ねる 雄負飛蝗  姿凛々し
                 疲れれば 雌の背中で 一休み
                     雄飛蝗 呆れるばかりの 都合の良さ
           葉を拡げぬ 我(あ)が庭の彼処此処 験の証拠(げんのしょうこ)
             験の証拠 掌状葉 場所取りの感あり
             夏空や  山へ 海へ 我(あ)は 何処へも
             悉く 抜き取られし跡 もう 草集く
               まさか 彼(あ)は 雀蜂 黄色の兜
                 我(あ)にスクランブル ”雀蜂 お前もか”
                  雀蜂 我(あ)は 敵ではあらなくに
             雀蜂 全国各地  我(あ)が庭にも 
          ふと見れば 山牛蒡(やまごぼう)の 若き小さきが
           山牛蒡 小さくも 白き花穂を付け
                 若山牛蒡 お茶花にと 切られぬように
           山葡萄の実 酒造りするは 誰(た)ぞ 
            山葡萄の酒造り 実(み)や 幾つ集めれば
            青葉闇 蠢く気配 何者ぞ
                          平成29年8月20日
                                <20首>
            五月晴れ 苺見ぬ 我(あ)が庭 哀れ
            水無月 に 漸う見つけり 苺萌え
            庭に出で 苺萌え見ゆ 至福の時
             盛夏 知りぬ 苺の嫩葉 金水引きと   
              幸福は 永らえぬものなり 哀れ
             晩夏 苺見つけり 皐月(さつき)側
               花も見ぬ 実も見ぬれど 彼(あ)は 苺
                ご近所のプランターに生う 苺に似たる
              秋来れば 苺や 如何 期待と不安
           草草の間に 見つけり 四弁(よひら)の黄花
            雌待宵草(めまつよいぐさ) 久し振りの邂逅 我(あ)が庭で
            夕涼み 雌待宵草の 花探訪
             黄の四弁 何処にも咲かぬ 見ぬがっかり(/落胆)
               次の日も と 夕べに探すも 花見ぬ 哀
               〔雌待宵草は〕 一日花 一日だけの花見かな
          眺むれば 何処か 寂しき晩夏の夕
             我(あ)が庭の 梅の立ち枝の はなはだし
            梅の一枝 何処まで伸ぶらむ 晩夏の日
           朝に夕に 涼運ぶ風 秋近し
            夏戻りぬも 蝉時雨の賑わいはなく
               南天に絡む早乙女花 解くや我
                   早乙女花 地に這えば 長き哉
               要黐(かなめもち)に這う早乙女花 小花可愛い
             水引きに絡みぬ葛 枯れ果てり
               お隣の薄にも 絡みぬ 早乙女花
                 薄に早乙女花 伝統的な 秋草意匠
             花数増しぬ 水引き 猛暑に耐え
              朝爽やか にも 苺の安否ぞ 気遣るる
            朝凪も 涼しき気配 晩夏の朝
              朝晩も ちょっと涼しくなりました
                 蜂 蝉 金蚉(かなぶん) 訪れ 山家の賑わい
                蜆蝶(しじみちょう)と見しや ずんぐり 金蚉なり
             青空戻り 金蚉飛びぬ  夏草上
              瑠璃色の 翅翻し 金蚉映え
                華奢な風姿 蜆蝶(しじみちょう) そ〔っ〕と舞いきたり  
               夕凪に澱む 草木や 夏疲れや
             微風(そよかぜ)の 運ぶ草いきれ 夏も末
              今宵静か 秋虫の音や まだ聞かず
                濃濫の空 煌煌 下界の照明
                    真夜中は すっかり涼し 夏も末                         
                  雌待宵草 黄花開きぬ 宵はまだ
                                 平成29年8月22日
                                       <22首>
             玉簾(たますだれ)路傍に 白花 独り咲き
                   篠百合も すっくと立ちて 独り咲き
              白橙色の薔薇 返り咲きて 独り咲き
                 フェンスの奥 白花の藪蘭 独り咲き
             ハイビスカス 花芽九つ 尚(また)楽しみ
              ハイビスカス もう直ぐ 咲く花芽(かが) これからのも
               ハイビスカス 朱赤の大輪 咲くを待つ
            明け烏 煩(うるさ)く飛び去る 何(な)の予兆
               燕もや 山際へ去りぬ 朝の内
             小さき花* 大きな蟻 蜜ありや
                           (*験の証拠の白小花のこと)
            撫子(なでしこ)や 独り静かに 残り花
             けたたましきな 我(あ)が耳の 蝉時雨
           青から赤 ピーマンの実の 熟し具合 
           豆の花 大概 淡紫か淡紫紅
             と 訝しく見ぬ 白色の 蝶形花
             大豆でも 小豆でもなく 何(な)のお豆
          若き莢 思い至りぬ 三度豆
                くるん くる ぶら下りおり 小さき莢
          植木鉢 一つ転がる 晩夏の庭
            銃砲一声 誰(た)を追い払うのか
                 もしかして 花火の音や 晩夏の空
         凄まじき 早乙女花 〔衝羽根空木の〕生垣* 覆い尽くしぬ
                           (*中七語 漢字一語扱い)
             早乙女花 空木枯らしに ならぬよう
             小さき日の 懐かしき花 藪枯らし
           藪枯らし 桃(とう) 橙(とう)花頭 昔のまま
           苦瓜の実 青きと黄橙 や 下がりおり
                            平成29年8月23日
                                   <21首>
            まっ 大輪 見れば 木槿(むくげ)の双子咲き
            烏揚羽 と見しや 晩夏の 影模様
              青葉闇 チッ チチ 虫の音(ね) 秋の声 
           秋茜 二羽 睦びつ飛び去りぬ
             白緑の大きな果実 花梨(かりん)らし
             ふと見れば 灰茶色の実 玉椿
           木香薔薇(もっこうばら) 青き実結びぬ 艶やかに
           庭毎に 実の成る季節となりにけり
           蒸し暑き 草木(くさき)気怠き 沈黙気
            切られずば 溝 暫しの 白百合の園    
            崖に生う 白百合 百輪 手届かずば
              長寿なり 白百合 切り取られねば
             夕闇に 白き花冠 夕化粧(ゆうげしょう)
              清楚なり 夕化粧の 白き花姿
              紅(くれない)に 匂いぬ 花花 夕化粧
            庭の木漏れ日 夕餉(ゆうげ)の灯哉
                   庭の葉葉 漏れる灯 夕餉の仕度
              夕闇に 垣間見るるや 薔薇瀟洒
             新築の前庭 早や生いぬ 夏草 逞し
             白百合の他 枯れ草となりぬ 溝の底
               早乙女花 繁るる垣根や 如何にせむ
                 疎らに咲く 早乙女花や いと愛らし〔けれど〕
             密に咲く 早乙女花や 凄まじき
              句作りや 名句は何時も 夢の中
                               平成29年8月24日
                                      <29首>
               南天の影 長く長く 障子絵に
                 南天の影絵 長々 障子に写
                         紋白蝶 夕日に光るる 薄の間(ま)に間に
            ひっそりと 白百合咲きぬ 主亡き庭
            ハイビスカス 三輪 嫣然 通り過がり
             ハイビスカス 深紅に笑いぬ 残暑かな
                今咲かむ 待てどなかなかの 花芽あり
               ハイビスカス 萎みぬ花冠や 風趣あり 
                  朝顔や咲き揃いぬ 紅 青 白
             鶏頭(けいとう) の花頭 コケコッコウーの空耳あり
                 白芙蓉の側 紅鶏頭 聳え立ちぬ
                   鶏頭花 鶏冠 振り立て 勇ましき
             夕化粧 萎みて 朝(あした)の眠りに付きぬ
          小さき蜆〔蝶(しじみちょう)〕 小さく 飛びぬ 残暑の庭
         底紅の 木槿(むくげ) 咲きたり 懐かしき
          底紅を愛でし 君 逝きて 久しけり
           底紅を 刈り誤り 枯れり 哀し
             草叢揺れ 飛び出しぬ あっ 負飛蝗
            まだ幼な? 驚きて直ぐ 草叢へ
          彼(あ)は 鳶(とんび)? 〔それとも〕山鳩 烏? 空の賑わい
          つとの飛来 また楽し 晩夏の空
           五 六羽の 群で飛び来ぬ 何方より
           群れ離れ 一羽 屋根上 リーダーなりや
            何処から 飛び来 何処へ飛び去るらむ
              平屋根に 飛びおり トコトコ 鳩科? 何科?
           屋根の端 止まりて辺り 見渡しぬ
            見渡しつ 且つ羽繕いの 余裕かな
             他の仲間 電線の上 見下ろしつ
          小公園 つと騒めきぬ ラジオ体操
           熱暑と涼風 行き交いぬ 秋の気色
            照りつける酷暑の庭にも 微風(そよかぜ)あり
            新聞取り 熱暑掻き分け ポストまで
              残暑 酷暑 残酷物語 秋 何方
       山里の 唐胡麻(とうごま) 細身 処違えば
        唐胡麻や 猛々しきて 異国(アフリカ)風とか 
       一瞬 飛びぬ 幻影 否 蜂の影
        蜂飛び入りぬ 老女 独り 蜜無くに
         涼求め 蜂飛び込みぬ 空調房
             除湿でも 外より冷ややか 蜂や知る
           振りさけみれば 三日月煌々 初秋の景
             三日月に 叢雲棚引く 秋来ぬや
           大犬蓼(おおいぬたで) よくぞ繁れり 我(あ)が庭に
              大犬蓼 我(あ)が庭に 蔓延(はびこ)り 林立せり
            飛蝗(ばった)には ジャングルの如きか 大犬蓼
              飛蝗飛ばぬ 恐れをなしたの 大犬蓼
                            今頃は 飛蝗 飛び跳ねしが 我(あ)が庭は
             渋紅の花穂に 小粒の花芽 大犬蓼
             白きが咲く 大犬蓼の花穂 可憐
              黒き穴 披針形の葉に 虫食いの跡 
                虫食いの 主はや誰ぞ 姿見ぬ
           紫式部 花はや 小さき 青き実に
                           平成29年 8月 26日
                                   <22首>
           もう直ぐの 伐採知らずや 木槿(むくげ)の花芽(かが)
           有終の花芽や 木槿 哀しかれ
            さっと吹く 風にも 秋の待たらるる
             時折に吹き来たる風音 秋の音
                 風涼し 草木す〔っ〕かり 秋模様
               大犬蓼 薙ぎ倒されぬ 夜来の嵐
                 大犬蓼 心配せずとも 起き上がりたり
                 予報雨 朝青空 我(あ) 鬱に沈
               三度豆 か細き茎 莢薙ぎ倒されぬ
                若き莢 まだこれからの時なのに
     験の証拠(げんのしょうこ) 雨にも風にも 白き花
                 白きの咲きぬ 可憐な風姿 験の証拠
               溝に生う 紫苦菜 な流れそ 祈りおり
                雨なくに 猶 無事祈らるる 紫苦菜
              朝顔の何処か 侘し気 秋来れば
                 剪定され 薔薇 さっぱり 涼し気な
              草花や 皆健な気 色褪せるとも
                 晩夏には 花の色も薄れけり
                  万年草 色抜けにけり 晩夏には
              万年草 瑞々し青 何時戻らむ
           苦瓜の繁し葉蔭や青き実結びぬ 
            万両も 青き実結びぬ 俯きつ
             秋茜 飛びぬ 秋空 茜色
                 茜雲 三日月 仄か 初秋かな
                         平成29年8月27日
                                 <20首>
         苦瓜や 黄花 百輪 実ま二つ
           苦瓜の 赤橙の実 破裂 五裂
         苦瓜の実 熟れ裂け 枯れおりぬ
        はっくしょん 今朝冷ややか 秋来ぬや
             蜆蝶(しじみちょう) 小さきが小さく舞う 木槿(むくげ)下
         障子越し 日差し強きに 堪え兼ねるる
         熱暑さえ なければ 平穏 初秋の日
            熱暑の黙(しじま) 破る〔バイクの〕爆音 気怠るき哉   
               絶不調 動悸ばかりや 高まりぬ  
          障子の影絵 飛び交うは 燕 雀 
            この度は 胡蝶か 飛びぬ 障子影絵
           靴の音 炎天下を 急ぐ人
            藪蘭の 淡紫の花穂 夕日映え
              藪蘭や 花穂次々と 長寿なり
           初秋に もう綿毛飛ばしぬ 尾花あり
           我(あ)が庭や 未だに 青薄のまま
            蜆蝶 舞い 舞い 舞いぬ 夕日影
              蜆蝶 今宵のお宿 探しているの?
                 蜆蝶 今宵の宿りや ミントの葉蔭
           止まり来ぬ 木槿(むくげ)の立ち枝(え) 銀蜻ま(ぎんやんま)
           立ち枝 戦ぎ 銀やんまの翅 キラ キララ
                                平成29年8月28日
                                        <22首>
        今朝冷ややか 木槿(むくげ)大輪 ぱぁ~と笑みぬ
           十五輪  木槿 あちこち 笑顔かな
             木槿花 大きく多く 今朝涼し
           七輪あり 藪蘭の花茎 小さくも
              夏草抜き 夏仕舞いの 始まりなり
           細かき複葉 羽状の葉葉 連なる風姿 何の草
           頭頂に ひょっこり 黄花の小さき が
            米栴檀草(アメリカせんだんぐさ)ねと 一人頷く 晩夏の庭
            〔米栴檀草〕 昨年(こぞ)の秋 独り占めせり 我(あ)が庭を
              在来の栴檀草見ぬ 久しけり/幾星霜
              くっつき虫 と呼びし実を 想い出しぬ
               懐かしき実を 心待ちせど 形違い*
                         (* 和栴檀草の実は卵形に逆鉤付き)
               願わくば くっつき虫との 邂逅を
          揚羽蝶 見れば 想い出す 烏揚羽
           烏揚羽 大形 優美な 風姿なり     
            烏揚羽 融融 優優 青き空
                物静か なして聞かぬか 虫の声
            初秋の小夜の 独り居 また楽し
           アディアンタム 孔雀の如 葉広げおり
             殆ど消えり アディアンタム 如何にあらむ
              夏過ぎて アディアンタム 勢いづきぬ
                アディアンタム 夏には弱く 冬強く
                            平成29年8月29日
                                   <29首>
             まだ無事なり 仙人草に 最後のお別れ
             仙人草 何処かに実生え あらむことを
               向日葵(ひまわり)のいと可愛気が後れ咲き
                  向日葵 独り咲き 晩夏や寂し
                            向日葵 独り ほんのり 黄昏時
            石垣の アルコープ 忍冬 芙蓉も生う
              朝顔や 花芽も花も もう終わり?
               百日紅(さるすべり) 盛り見ぬ間に 青き実が
             茜雲 白き半月 初秋の景
             刈り取られたり クローバー レッド〔クローバー〕も 晩夏寂し
            合歓木(ねむのき)の 折角の実生え 抜かれ哀し  
           自然や強し 盗人萩(ぬすびとはぎ) もう繁りおり
            日陰延ぶ 思う間に 闇迫り来ぬ
            辺り もう 黄昏過ぎて 午後七時
             夕闇 迫り 万象沈みぬ 唯 潺(せせらぎ)の音
           刻一刻 夕闇に落ちぬ 樹木の影
                 夕日落ち 闇に包まるる樹木 我(あ)も
             人影 ばったり 響くは 我(あ)の足音ばかり
           窓 窓の 灯静か 秋や来ぬ
            夜路に足音 女人の影に ほっとせり 
                街灯煌々 急ぐらむ 帰り路
                          平成29年8月30日
                                  <20首>
            木槿(むくげ) 涼には 多輪 暑には 二輪
               涼しさのバロメーターなり 木槿の花
              御睡(おねむ)なの? 永遠の眠り 夏小虫
              葛(くず)の蔓(つる)ゆらゆら 揺れぬ 秋の空
                  秋風吹く 吹かれ我(あ)髪 乱れ髪
                    風吹く 日影や暑き 秋日傘
                風に戦ぎ 葉葉 光りぬ 初秋かな
               さわさわと 薄野渡る 風や爽(さわ)やか
                南天の実 色づき初みぬ 秋日和
             淡藍の空 月白に 燕飛び交いぬ
            虎杖(いたどり)の 咲き乱るる 秋野かな
             風強し 飛ばされぬよう 秋日傘
               虎杖 何処  一面 葛や繁茂せり 
              花花花 衝羽根空木(つくばねうつぎ)の 垣根かな
               通り過ぎぬ 空木の垣根 秋風と我(あ)
                   久し振り 往復歩きぬ 秋吹けば
              凌霄花(のうぜんかずら) 絶え絶えが蘇生 赤橙花
               色づき行く 葉葉 照葉(てりは)の備い哉
               栗の毬(いが)) 百果や落下 夜半の風
                夜半の風 嵐の程とは 思わねど
                 実抱かぬまま 茶色となりぬ 落ち毬栗
               見上げれば 葉蔭に 青き毬栗が
                                 平成29年8月31日
                                      <19首>
           爽やかな 朝の空気や 秋の香
             仄(ほの)暗き 竹林の小径 秋の宵
              藪蘭の白花 群れるる 初秋かな
                山際の 入日に映えぬ 夕化粧(ゆうげしょう)
                  夕日差す 淡藍の空 風厳し
            枝 枝(え え) 大揺れ 大きな風音  不気味なり
             枝 枝 大揺れ 嵐の前の騒めきや 〔静けさでなく〕
              大風に 吹かれ踏ん張る 我(あ)が老骨
            枝 枝揺らし 木の葉翻弄 秋の情
            烏鳴く 声鋭し 忠告や
              しつこきほど 烏鳴くなり 秋の空
                 この散歩 とても無理よと 聞こえたり
                諦めたり 踵を返す 帰り路
               帰路につけば 烏 一声すらもなく
                          - 帰路についたので 安心してくれたよう
                 烏さん どうも有難う ご安心を
                  山方へ飛び去る 烏 見送りぬ
              吹き荒ぶ 強風 胸痛覚う 帰り道
                     髪 衣 吹き遊(すさ)ぶるる 秋の大風
                 帰りなば  鎮か 秋風や気紛れ
              四周 濃藍 唯 半月 煌煌と
                              平成29年9月1日
                                       <24首>
           夏終わりぬ 彼方に窄みぬ 入道雲
            鱗雲(うろこぐも)大漁の兆し 鰯(いわし)〔雲〕 鯖(さば)〔雲〕
              見上げれば ぐるり 何方も 高積雲〔うろこぐも〕
             満天を満たす 秋雲 壮観なり 
                   秋の空 海よりも広し 山より高し
                           - 雲が 色々な形の変化するを見上げつ
           壮大な雲のページェント もう秋闌(あきたけなわ)
           昨日夏 今日秋 移り気な空
             この移り気 不意の 秋の訪れなり
          整地完了 庭の草木や  何方(いずかた)へ
          仙人草は? 酢橘(すだち) 木槿(むくげ)も 蔓茱萸(つるぐみ)も
           思い出しぬ 水仙 牡丹 燕子花(かきつばた)  庭の華
                    噫 皆皆 あの麻袋に 秋哀し
             何処からか〔聞こゆ〕 庭の草木への 鎮魂歌
          思いがけず 出会いぬ 仙人草 癒されぬ
            見上げれば 仙人草の白き十字花
         木漏れ日と シルエットの 路上絵あり
             木漏れ日の影絵に 仙人草もあり
                  木漏れ日に光る下草 秋の山辺
          谷川に映える夕日や 秋鏡
            谷川に 鏡面のあり 秋日影
         大犬蓼(おおいぬたで) 虫食い〔葉〕 誰 〔の仕業〕 か まだ分かぬ
          虫食いなぞ なんのその 花穂次々と 大犬蓼 
          ガサッ  跳躍の羽音 負飛蝗(おんぶばった)
           負飛蝗 負わずに 独り 娘飛蝗や
                    その内に 雄背に負うらし 阿保らしき
                虎杖(たどり)や 咲き継ぎおりぬ 我が世の秋や
             露草見つけり 葉ばかり 花は見ず
              門の脇 ゼラニュウム独り 主なき家屋
            朝顔萎み ペティュニア〔西洋朝顔〕 咲き零るる朝
            チロリアン・ランプ 勢い増しぬ 秋冷えに
             秋風に チロリアン・ランプ 明(あか) 明(あか) と
            南瓜 黄葉 黄花萎みぬ 秋
             南瓜の実 何処 黄葉蔭には見ぬ
             哀れ南瓜 実結はず 枯れ行くまま
             谷間に姫向日葵 咲き遊(すさ)ぶ
              薔薇の実や 独り ぽつり 枝の先
                  薔薇の実や 丸々 凛々しく 愛らしく
                薔薇は花 見惚れ 実の末知らぬまま
             薔薇は 花冠 咲乱れるる風姿 華麗なり
            崖に生う 白百合消えぬ 秋や来ぬ
            叢雲流れ 秋月見え 且つ 隠れ
             ふと覚えぬ 物寂し気や 秋の暮れ
               燕 一羽 別れの舞や 秋の夕空
               夏蔦や 白壁に 秋のアート
                夕空に 秋の侘しさ 優(まさ)りけり
                                平成29年9月3日
                                       <27首>
              明日(あした)には 咲き揃うらむ 白(花)芙蓉
               明日(あす)の朝 会わむとぞ思う 白芙蓉
            待ちぬれど 咲かぬ  凌霄花(のうぜんかずら) 日陰故?     
              日陰と日影   凌霄花に定めありや
              日影では 咲き継ぎおりぬ 凌霄花
             凌霄花 蔓と葉ばかり 花如何
              欄干の 凌霄花も 咲き続きぬ
                     百日紅(さるすべり) 枝枝(ええ) 咲き撓む 木下闇
             百日紅 二輪 咲き残りて 他は実となりぬ
              壁白く 輝き映えぬ 秋日影
            坂下りぬ 光る鏡面 秋の海
              爽やかに 夕風吹きぬ 秋の声
             咲き調ふる 木槿(むくげ) 淡紅色の
            柚子(ゆず) 色付きぬ 白黄に 弥よ秋
               葛(くず)の蓋原 突き抜け 虎杖(いたどり)咲き誇り
                 薄も亦 尾花になりて 咲き優り
            秋の風姿 物物しきと物静か
                     葛 虎杖(いたどり) 尾花 皆 益荒男(ますらお)振り
           咲き遊(すさ)ぶ 衝羽根空木(つくばねうつぎ) 秋 寿ぐや
             花散りぬ 萼(がく) 衝羽根空木の 名にし負う
              渋茶紅の萼 舞いぬ 衝羽根空木
                  朝顔や 花萎れ 枯れ いと哀れ
             夕空に 烏揚羽や 秋の影
                        翅震わせ 木槿(むくげ)の蜜 吸うは 誰(た)ぞ
                宵闇に 咲き調(ととの))ほる 夕化粧
                紅絞り 夕化粧の 小粋な風姿
                              平成29年9月4日
                                   <25首>
             朝顔や 夏に後れて 紅一輪
               爽やかな 日傘や要らぬ 秋日和
             白花藪蘭 叢(むら)離れ 独り咲くらむ
                   玉椿 青き実撓(たわ)みぬ 秋の山辺
                 梔子(くちなし)の垣 後れ花 匂い咲き
               盗人萩(ぬすびとはぎ) 咲き出づる秋 其処此処に
                あっと云う間 盗人萩の野となりぬ
                    秋草の内  最も逞しき 盗人萩
               刈られても その日の内 早 芽生え備え
                刈られりと嘆きし 含羞草(おじぎそう) 尚 生いぬ
               嘆く間もなく 草草 皆 蘇りぬ
                 よく見れば 狗尾草 虎杖 大地縛* 萌え揃いぬ
                                 (*中七語の漢字一語扱い)
                    蓬 小菊 源平小菊も  萌え揃いたり
               淡黄色の 凌霄花(のうぜんかずら) 蔓 真直ぐ伸び
                 韮 絶え絶えが 猶 咲き出づるる 秋〔来れば〕     
                   韮 逞し 溝に 路傍に すらりすら
                韮 花茎 すらりすらりり 秋風に
                韮の白き 小さきぽんぽん 咲き継がれ
                裏白(うらじろ)の若葉萌え 赤松枯れ
                  夕日映え 夕化粧や 咲き匂う
                宵闇に ぬっと燃え立つ 百日紅(さるすべり)
                       秋木立 黒く沈みぬ 日沈めば
                春咲き出ず  狗尾草(えのころぐさ)や 秋枯れ穂
                 韮 花頭 大きく白き  秋景色
                                平成29年9月5日
                                    <21首>
               朝日受け 木槿(むくげ)の花や 花やぎぬ
                水引や 紅白咲きぬ 秋 めでたき
            枯れ紫陽花 日毎に 秋色 深まれり
             秋雨の 冷たきにこそ 驚きぬ
                  秋雨や 驚かれぬる 冷たきに
              昨日まで 暑き 熱きで 過ごししが
             そぼ降る小雨 秋の風情や 弥よ 増し
               秋雨(しゅうう)あり 大犬蓼(おおいぬたで) また 青青と
             大犬蓼 花穂 咲き続きぬ 秋の興
                秋の蝶 大犬蓼の 花穂から花穂へ
              我(あ)が小庭 覆う 大犬蓼 大きな秋
             吹き荒ぶ 風音なくば 秋の夜静か
                秋の夜 物思わぬば 長々し
               〔物〕 思わぬに 動悸高まるる 秋夜長
                虫の声 聞かぬ夜長や 秋寂し
                   秋夜長 賑々しきは 我(あ)が耳鳴り
              知らぬ間に 金水引 咲き遊(すさ)ぶ
                     金水引 花茎 延ばしぬ 四方八方
                  野放図な 金水引や 秋荒らし
               秋の情は 姫金水引 の 秘めやかさ
                ひ〔っ〕そり佇む 姫金水引や  木下蔭
                              平成29年9月6日
                                       <19首>
             秋風に 未(いま)だ 残りぬ暑さ哉
                鳶尾(いちはつ)や 剣状葉萌え出づ 来夏の備え?4
                  野茨の 萌え出づる 石垣の秋
                 百日草 色咲き分けぬ 朱 赤 白 黄 橙
                 晩夏から 何時まで咲き継ぐや  百日草
              白花藪蘭 鉄柵越しに 咲き燥(はしゃ)ぎ
                 擬宝珠(ぎぼうし)の 淡紫や秘か 枯れおりぬ
                  芙蓉笑む 暮れ泥(なず)頃 秋の山辺      
                蜜柑の実 一番成りや 大きな実
           我(あ)が庭に 年年(としどし)咲きぬ 紫苦菜見ぬ
            溝に生いし 紫苦菜(むらさきにがな) 秋や如何
          紫苦菜 柄に蕾 秋は来ぬ
             懐かしき 和〔在来種〕の栴檀草(せんだんぐさ) 見つけたり
                花を見ぬ 実もまだ見ぬば 分かぬれど
               和の栴檀草 葉姿 鄙びるが 懐かしき
              栴檀草 槍束ねた如 実鋭し
             汝はや 米栴檀草*(アメリカせんだんぐさ)ならむ 秋の彩
                             (*漢字一語扱い)
              米栴檀草 葉繊細 秋を誘(いざな)う 風姿あり
             枯れ紫陽花 渋紅色に 色のあり
              紫陽花 枯れ 薬玉* 膨らみぬ 秋の怪
                       (* 紫陽花の花塊は薬玉のようなので)
                              平成29年9月7日
                                   <19首>
          白菊の小菊に 秋の長雨(ながめ)〔/眺め〕哉
             そぼ降る小雨 次第に フォルテ 大雨に
           嵐やと 思う間もなく 雷鳴轟き
             カン ラ カラ  響く 雷神の笑い声
            耳劈(つんざ)く 雷(いかずち) 電(いなずま) 夏終わりぬ
                雷鳴や 轟きて告ぐ 夏の終わり
           雲間晴れ 青きの覗きて 秋の情
             雷鳴の遠退くやいなや 雀飛び出しぬ 
          外へ出れば 何事もなし  静かな秋
           苦瓜の 橙色の実の 輝き映え
            四裂 五裂 熟し割るる 苦瓜かな
          葉を透かし 見たり 苦瓜の実 二つ 三つ
            実 三つ目 疣いぼ尽くし 食べ頃かな
       電線に止まり来る 燕 三十余羽
         初夏渡り来りしは 五 六羽なりし
           電線を 飛び去り 飛び来かな
            姿形 大小 親子燕かな
         巣も雛も 姿見ぬ間に 巣立ちらし
          燕(つばくらめ) 濃紺の背に 秋の夕焼け  
                          平成29年9月28日
              樹一面 覆う野葡萄 実や秋色
             白 青紫 瑠璃色  野葡萄の秋色なり
              茶色の実 一つ 姫椿の梢
            仙人草 白花輝きぬ 秋の山辺
         先紅の 白き小花の 愛らしきを
           継子の尻拭い(ままこのしりぬぐい)誰(た)が名づけしぞ 酷き哉
           金平糖花 もし我(あ)が名付け親なれば
            金平糖花 返り咲きや 狂い咲きや 今 菊月(/長月)
        凌霄花(のうぜんかずら) 漸う咲きぬ 後れ花
          凌霄花 独り残りて 秋侘し
          薄揺れ 穂波 銀波 秋野原
             芙蓉花芽(かが) 揃いぬ  いざ咲かむ 今
        ポッ ポル ポ~ 山鳩 カァーカァ 夕烏 
            この秋 初見 逆さ藤形の 葛(くず)の花
             秋来ぬと 知らるるや 葛の花咲く見れば
           甘酸っぱき 山辺に匂いぬ 花見ねど
            櫨(はぜ) 紅葉 秋の錦の始め哉
               櫨 一葉 色付きて 秋の始まり
          山路抜ければ 海輝きぬ 秋夕焼け
           雷鳴の明くる明日の 爽やかさ
             天高き 秋の空とぞ なりにけり
           朝顔や 梢高きに紅 一輪
            向日葵(ひまわり))や 一輪枯れて 且つ 咲きぬ
          向日葵や 朝日に背向けぬ まだ眠きや
          緑飛びぬ 飛蝗(ばった)の姿 そこに在り
             娘飛蝗 美しき容姿と なりにけり
                 雄〔背〕負わぬ* まだ独りなのね 今が花よ
                           (* 負飛蝗(おんぶばった)の名は 
                               雌が雄を負うが故)
                                平成29年9月9日
                                     <21首>
           薔薇 実 花 蕾 揃いぬ 初秋の景
             路傍の夏草 悉く 果てぬ 寂しき秋
            露草ばかり 生い継ぎぬなり 帽子*のまま
                          (* 露草の別称色々の中 帽子花 のあり)
              何時になれば 青色咲くや 待ち遠し
           薄の穂 穂 さんざめきぬ 秋光に
            溝に生う 尾花 また楽しからずや
              夕暮れの 尾花の影の 長き哉
           淡雪の如 虎杖(いたどり)の花 咲き揃いぬ
            虎杖も 石垣の上下 咲き遊(すさ)ぶ
                場所選ばぬ 芙蓉の実生えも 溝底に
              淡紅の芙蓉 三輪夕日影
              瑠璃虎の尾 咲き揃いたり 秋時雨
                  瑠璃色の 花茎揃いぬ 瑠璃虎の尾
                 瑠璃虎の尾 大揺れ 小揺れ 秋風吹く
            卯の花の 花 真白くも 実 灰緑
                         春咲きぬ 卯の花 実撓(とおお) 秋の今
               遠くより 稽古の囃子 秋祭り
               けたたまし 蜩(ひぐらし)の声 秋夕影
             雀に似 非ぬ小鳥二羽 我(あ)が庭へ
              一羽 空高く 他羽 大犬蓼(おおいぬたで)に
                 大犬蓼 揺らす小鳥や 汝(な)ぞ 鶫(つぐみ)
                   大犬蓼 鶫の雲梯 となりぬ
                                平成29年9月10日
                                        <27首>
              苦瓜熟れば 辺り 南国ムード
                苗代苺 小さき葉 葉 開きぬ 路の傍 
                   姫昔蓬(ひめむかしよもぎ) 更地に林立 2M超
              林の如 生いぬ 姫昔蓬 これも秋
              小花散らし 綿毛飛ばしぬ 姫昔蓬
              足許に桃紅の花茎 百日紅(さるすべり)の幼木
           見渡せば 何処(いずこ)も 同じ秋の静けさ
              珠簾(たますだれ) 晩夏に早咲き 一・二輪
               珠簾 すらりすらりと 花芽(かが)もあり 
           大きな 大きな 葉蔭に 無花果(いちじく)の果実
             一つ青く 一つ熟れ 無花果の果    
              熟れ落ちぬ残果 に蟻や群がりぬ 
             凌霄花(のうぜんかずら) 朱橙色 ぼぉ〔~〕と浮かびぬ 夕闇哉
            紫苑(しおん) 咲けば 秋色や 匂い立ちぬ
              薄紫の 紫苑の花色 秋の色
                  夕化粧 今を盛りと 匂い咲きぬ
                    紫に霞籠む 花花 何の樹なの
           姫柘榴(ひめざくろ) 花 朱橙色 早 萎れぬ
                      オレンジ色の 花もう萎れり 姫柘榴
                萎るる側(そば) 実の青き 凛々しきが
             秋の風 夏惜しむ 情けあり
                綿雲の上 誰(た)が 午睡するらむ
             草上 飛びぬ 蝶と見しや 飛蝗(ばった)なり
                     草木何れも  まだ実や青き 秋口なれば
              秋茜 群れ飛ぶを見たは 何時の日か
             今独り 大空飛びぬ 秋茜
              秋茜 混じりぬ 燕飛び交う空
           〔電線上〕 顔合わせ 且つ 飛び去りぬ 燕二羽
                  月白の空 淡藍に飛ぶ 燕(つばくろめ)
                      涼風の 冷たき朝や 秋の朝
               静まり返りぬ 無動 無音の秋
                花穂 微動だにせぬ 秋の夕凪
          蜆蝶(しじみちょう) ひらひら無心に 秋の夕
            小さき 小さき 蛾の 猶 愛しき
              烏揚羽 珠簾(たますだれ) 掠め 秋空へ
                    珠簾 三輪いつもの 路の端(は)に
                 夕烏 声張り上げぬ 何事か
              桔梗 花果てぬ 秋や来ぬというに 
           萩咲きぬ 谷川の崖に 薄紅に
               〔電線上〕 燕十一羽 何の模様眺め
            弥よ 曇りぬ秋空 唯の夕暮れや         
          白百合皆 長実(ながみ)となりぬ 秋眺(なが)み
            白百合の莢 直立 雄々しき風姿
          秋木立 黒く沈みぬ 夕闇に
             夕闇に 沈む秋木立 黒き影
                まだ青き 柿の実一つ 路の上
              見渡せど 柿 一樹 見当たらぬ
                   誰(た)が 運び落としたのか 鳥も見ぬ
           夏草の 枯れ果てぬ路傍 秋草萌え
            ハート形の葉 葉 何(な)の草 菫草*や
          韮(にら)の花頭 真白きを 精一杯
            額紫陽花 紅深まりぬ 秋に連れ
               白露の 滴り落ちぬ 紅花びら
          グォー ゴー  爆音響きぬ 秋雨 激し
               雨脚の太きに 土石流/氾濫 思わるる
               一時間 一時間の雨の長き哉
            何時止むや 待つ時間の長き哉
                               平成29年9月12日
                                    <19首>
            朝顔や 蔓登り上がるも 花は未だ
             何の花と見しや 枯れ葉の 茶紅色
             底紅の木槿(むくげ) 一輪 残り咲く
          早(はや) 莢に 花終わりけり 盗人萩(ぬすびとはぎ)
           淡紫に 咲き乱るる野 盗人萩
            団栗踏みぬ もう さばかりの秋や
                団栗に躓きぬ さばかりの秋
             腐り切り株 生いぬ茸も 腐りおり
         淡紫の花穂 草叢の 其処此処に
          青き毬栗(いがぐり) 落ちぬ 嵐憎らし
                  ひたひたと 足音迫り来 ハイヒール
         姫金水引き 可憐な風姿 小さき秋
          小さき黄花 金水引の花穂に ひっそりと
              窓辺に這う 蛞蝓(なめくじら) 一体 何処(いずこ)から
            大犬蓼(おおいぬたで) 花穂 頭(こうべ)垂れ 咲き遊(すさ)ぶ
          鉢植えの珠簾(たますだれ) 今 花盛り
           月明かり 尾花佇みぬ 物思うや
           唯 無為に 過ぎ行きぬなり 秋の夜長
            静まりぬ 声一切 無 秋夜長
              夢に見ぬ 仙人草の 白き十字〔花〕 
                            平成29年9月13日
                                   <29首>
           紫酢漿草(むらさきかたばみ)* 返り咲きおり 秋は如何
                           (この草花は 初夏から夏咲く花)
             溝底に生う 七株 何の草
                アディアンタムも 苔も無事なり 夜半の大雨
                 アディアンタム 何とか残れり 溝の壁
          黄小花の 小鬼田平子(こおにたびらこ)も 残りたり
                         小さきが故 無事なりや 小鬼田平子
                黄なる花茎 すらりすら 生う 秋の路傍
             春に咲く 小鬼田平子や 今は秋
               白芙蓉に驚きたるや 小鬼田平子
            珠簾(たますだれ) 花冠咲き揃て 柵の外
              虎杖(いたどり)の 灌木の如 咲き零れぬ
               アスティルべ 花房白く大きく盛り
                深緑に 白き花房 アスティルべ
               ベゴニアや 咲き調ほるる(ととのおる) 淡紅色
            けたたまし 秋烏  数羽 しわがれ声
              けたたまし 声 威嚇の響きあり
               秋空に 鳴き叫ぶ 烏 悍(おぞ)ましき
            怒声に終われ 踵かえしぬ 秋散歩
                我(あ) 侵略者に非ず 唯の散歩者
             一羽 二羽 電線に  燕 三十余羽
              燕尾開き 蒼天旋回 爽快哉
              蒼天 に 弧描く 燕や 美形なり
               ぽつねんと 源平小菊や 愛らしき
                せせらぎの響き渡りぬ 秋の谷川
          蔦一葉 小刻みに 震えぬ 風なくに
             蔦一葉 はらりと落ちぬ 震えもせずに
                珠簾(たますだれ) 今花ざかり 彼方此方に
              石垣下 フェンスの縁 花壇にも
             兎の尾(うさぎのお) 或は高く 或は 低く
              目の前 さっと飛び去る 波揚羽(なみあげは)
                                     平成29年9月14日
                                         <20首>
            黄花コスモス 花茎 八方 秋景色
             黄花コスモス じゃれつき舞いぬ 蜆蝶(しじみちょう)
              雌の万年草* 小粒の嫩葉 萌えぬ秋
                          (* 漢字一語扱い)
            烏揚羽 ひらひらひらら 秋の影
             木瓜(ぼけ)の実 青く大きく 青林檎〔の如〕
           夾竹桃(きょうちくとう) 咲きぬ公園 人影なく
             声高なお喋り 辺り 静謐なり
              咲き継ぎぬ 早乙女花や もう実結び
             杉刈られ 毛槍の如 秋の空
               松毬(まつかさ)や 転がるる路傍 露草も
                  草草透かし 露草の鮮青色
                    草叢に 春野芥子(はるのげし) 返り咲き
             紋白蝶 舞う草叢 春景 哉
           見つけたり 草の間に間に 露草を
               待ちに待ちし 青花咲き出づ 露草の
                  盗人萩(ぬすっとはぎ) すっと 青花 眺めおり
               露草に 狗尾草(えのころぐさ)や 枯れ穂寄せ
                 露草の 青きがあちこち 今日という秋
             露草の青きの 鮮やか 秋の一隅
                雪の如 吹き寄せらるる 空木*の落花 
                              (*衝く羽根空木(つくばねうつぎ)の略称)
                           平成29年9月15日
                                     <25首>
               露草や 落ち葉の吹き寄せ場となりぬ
                 上 青葉 下 枯れ葉 これも 秋景
           枯れ葉舞う 否 一人遊びの 子雀かな
              落ち葉にも 色いろいろ 紅 朱 黄 橙     
               紫酢漿草(むらさきかたばみ) 花一輪 一葉なく
             酢漿草や 花 葉 小さき小さき 桜木下
               苔生(む)す楼 蘖(ひこばえ)生いぬ 五枝(いつえだ)も
                   老木の根元 大きな茸 鎮座せり
              日日花(にちにちか) 門の脇にや 日日ガード〔/守衛〕?
               日日花 色いろいろ 初秋の花〔華〕
                秋にも 猶 咲き零るる 日日花
             朝顔や 大輪何事ぞ と思い
             雛形の木槿(むくげ) 雄々しく 咲き揃いぬ
                秋風に 戦ぐ 花穂 花穂 大犬蓼(おおいぬたで)
                  金蚉(かなぶん)の瑠璃色の背 秋光る
               秋日和 我(あ)が行楽や 半径 三百米(メートル)
                足弾む 童の如く 秋高し
                  秋風の冷たくなりぬ 帰り路
           美色なり 紫式部の 紫色
               紫式部の実 密に 艶やかに
             紫の実 美麗 実(げ)に実紫*
                            (*紫式部の別称)
                実紫 これぞ紫式部の 風姿なり
           息呑みぬ  美麗  実紫 撓(とおお)     
           十五夜の 月探す我(われ) 尾花揺れ
                             平成29年9月16日
                                  <21首>
           残り咲く 向日葵(ひまわり)や 秋の風吹く
            秋雨に 鳴かず飛ばずの 秋の虫
               秋雨に 虫等(ら) 何(いず)らに 雨宿り
         大犬蓼(おおいぬたで) 彼方(あちら)と見れば 此方(こちら)も揺れ
             秋風よ な吹き遊(すさ)びそ 徒(いたずら)に
              秋風に 弄(もてあそ)ばるる 大犬蓼 
           藪蘭の花穂 未だに 淡紫な
             我(あ)が庭は 蓬生(よもぎう)となりぬ 人手得ず
                白萩の 咲き零るる 秋日和
            白萩の花弁(はなびら) 散りぬ 秋日傘
           白萩の 垂(しだ)るる小路 秋日傘
               白萩の 枝枝(ええ)揺れ揺れぬ  秋の戯れ
              垂(しだ)れ来ぬ 白萩の坂 風吹き抜けぬ
          淡紅の 萩の細やか 秋の雫
             淡紅の芙蓉に 白萩 舞い降りぬ
               花やぎぬ 白萩の小路 芙蓉の坂
          大風止みて 白萩静か 十五夜闇
          波高し 白萩揺れぬ 白波の如し
              薄緑 オクラの実 熟し初ぬ
              オクラの花 窄むを見ぬ* 咲くも見ぬ**   
                          (*見たり)   (** 見ず)
           雨傘の柄 握りしめるる 秋の風雨
                          平成29年9月17日
                                 <23首>
           何の花ぞ 珠簾(たますだれ)とは 花違い
             ピーマンや 熟し過ぎたり 垂れ下がり
           花茎に包葉 何の花ぞと 待ちおりし
            咲きぬれば 彼岸花なり 白黄色の*
                             (* 新種らし)
            黄葉 一葉 二葉 流るる 溝底
             虎杖(いたどり)の 雌花や紅に 染(そ)み初(そ)みぬ
          日差しと風 もう結構よ  秋逍遙
              尾花咲き揃て 微風(そよかぜ) 待つらむ
                秋風に波立ち 戦ぐ 尾花かな
            尾花に風 大波 小波 銀の波
             秋雨より 秋風増しぬ 萩大揺れ
            紫虎の尾 ゆらゆら 定めなく 
             渋紅の花芽 白花開きぬ 何の木ぞ
           淡紅の萩 何(な)の萩かと 虎杖(いたどり)に問いぬ
                存じませぬ 隣の虎杖 花穂を振り
             春咲きの 枯れ穂 代わりて 秋の狗尾草(えのころぐさ)
           蓼(たで)優し フェンスの脇に 友なくに
           烏の声 ガーガァ 煩(うるさ)き 疎ましき
              もしかして 雛守る親鳥の声
           白き花 茸や 否 落木槿(おちむくげ)
           無花果(いちじく)の実 熟せば 誰(た)がが啄む
                台風の襲来予報 もう飽きぬ
                   爆音の響きぬ闇夜 独り聞き
               鎮まれば 何時もと同じ 秋の夜長
                               平成29年9月18日
                                     <21首>
               秋の空 高くばかりか 広くあり
         秋明菊(しゅうめいぎく) 花芽 膨らみぬ 今日(けふ)にも咲くらむ
              大風に倒されず 草草 何処も 生生
                 台風一過 彼方此方に 秋日傘揺れ
           秋風や 涼しきにこそ 救わるる
                   秋の空 白雲描く 壮大なアート
            盗人萩(ぬすびとはぎ) 咲き零れ 且つ咲き初みぬ
           咲き乱るる 盗人萩に 胡蝶の舞
            淡紅の 点描かな 〔盗人〕萩の景
                盗人萩(ぬすびとはぎ)野行きぬ 秋風匂いぬ
               萩野原 横切れば背に 秋光
                盗人萩 咲き乱れて 秋静か〔涼香(しずか)〕
            咲き乱るる 萩野に舞い来ぬ 紋黄蝶
              盗人萩の野に 狗尾草(えのころぐさ)の簇(むら)
            盗人萩野 抜ければ痛痒 手に腕に
              酢漿草(かたばみ)の黄小花 消えそうで消えず
               姫女苑(ひめじょおん)も健気に咲きぬ 秋の空
                  珠簾(たますだれ) 咲き残りぬ 独り 木立蔭
             女郎花(おみなえし) 心(うら)寂しき 鉢植えは
              秋の野に咲く女郎花 見まほしき
                                  平成29年9月19日
                                         <20首>
            葉枯れて 色濃くなりぬ 紅の水引き
            葉枯れず 花穂増したり 銀水引き*
                             (*花は白色)
             早朝(そうちょう) 胡蝶 一人舞い 秋の空
              朝日背に 秋の影法師 登るる坂
               曼珠沙華(まんじゅしゃげ) 何処にも同じ 白黄花
             排ガスにも 珠簾(たますだれ)や 清清し
             沈み行く 秋の夕日や 静やかに
              秋の夕 日輪の後光 山際に
            電線に 燕 六十余羽 倍となりぬ
             淡桃の衝羽根空木(つくばねうつぎ)の垣根 過ぎ
              鄙びたる木製のベンチ 茸座し
               柿色の 茸珍し 何(な)の茸
                残暑でも 夏は終わりぬ 夏草枯れ〔れば〕
              胡蝶舞うに連れ 影も舞う 秋の小径
            窓の下 露草青色 群れ咲きぬ
             日日花 白色の大きや 窓飾り
               曼珠沙華(まんじゅしゃげ) 植え込み飾る 白黄花
           置き忘れ られたよ〔う〕な鉢 白き薔薇
           わせ(早熟)の柿 まだそのまま テーブルの上
               ピーマンも 柿色こそが 秋らしき
                           平成29年9月20日
                                   <20首>
             初夏に咲き 朱夏晩夏 姫女苑(ひめじょおん)
                音も無く 風も無く 尾花揺れ
             静かなる秋 細きなる 尾花揺れ
            秋の空 春想うらむ 紋白蝶
                   何時までも 蜆蝶(しじみちょう)や 秋の庭
                秋空下 向日葵(ひまわり)咲きぬ 物侘びし
           小さき影 飛んだ 負飛蝗(おんぶばった)の雄
            白萩の 花撓(とおお) 垂(しだ)れ 揺れ
           ゼラニュウム 葉ばかりも また秋の風情
            姫女苑(ひめじょおん) 綿毛飛ばして 天寿全う
          芙蓉 実生り揃いぬ またの景
               お喋りの まだまだ続きぬ 秋の夕暮れ
            霞籠む 秋の夕暮れ もの寂し
              石垣の隅 ほ〔っ〕そり ひ〔っ〕そり 萱草(かんぞう)咲く
               百日紅(さるすべり) 薄紅 咲き継ぎ 百日超え
               ガーベラ八重 花茎 短き 三頭身
           ガーベラ一重 幻影揺れぬ 秋愁い
            ガーベラ一重 朱紅や 麗しき
            清楚 妖艶 ガーベラ一重 その風姿
                            平成29年9月21日
                                     <21首>   
              白萩の零るる 坂路行く 朝(あした)
          白萩や 零れぬ 尾花揺れ 零れ
                    芙蓉花 蕾(つぼみ)より 窄(つぼ)みの多くなり
             桃色の芙蓉花 白萩零るる
                秋朝顔 花盛りならぬ  葉盛り
             撫子(なでしこ)や 色とりどりの 秋 咲きぬ
            オクラ花 黄白 五弁(いつひら) 朝の興
              あっ 忘れり 秋日影 に日傘無く
               忘れたり 秋日差しに 差す傘無く
             あのスピード 胡蝶に非ず 何(な)の虫ぞ
                あっと言う間 彼方へ飛びさりぬ 秋空の
           木の葉揺れぬ 日影と日蔭の さんざめき
           木蔭のベンチ 先客あり 秋日和
            蒲公英(たんぽぽ) 笑む 無邪気に秋の 路(みち)の端(は)に 
                疲れ果てぬ 秋川辺りの遠回り   
              久し振り 辺りの秋景 変わりおり
                      久し振り 秋川見れば 白鷺(しらさぎ)が
                向こう岸へ 白鷺飛び行く 秋川の
               爽やかなり 白鷺飛び行く 秋の空
                白鷺の 飛びぬを見れば 疲れ飛びぬ
           街路樹に 聳え立つあり ヒマラヤ杉
             懐かしき ヒマラヤ杉や 遠き想い出
               ヒマラヤ杉 見上げれば 実見下しおり
          驚きぬ ヒマラヤ杉の 松毬似*
                       (* ヒマラヤ杉や マツ(松)科と知りて 合点行き)
                              平成29年9月22日
                                    <22首>
             向日葵(ひまわり)咲く 時節知らずや 今は秋
           秋陰に 向日葵向きを 惑うらし
            紫苑(しおん)咲く秋 秋となりにけり
           薄色の 紫苑の風姿 秋思あり
               薄色の 紫苑や戦ぎぬ 秋郊に
                 薄色の 紫苑咲き 幽玄の風
             咲き揃いぬ 紫苑 豪華 嫋やか 紫苑の景
            紫苑 深山嫁菜(みやまよめな)と 飾る山辺
             曼珠沙華(まんじゅしゃげ) ここもかしこも 白黄花
              曼珠沙華 花白黄(はくき) 奇異の情
                この秋や 曼珠沙華 花白黄の多き
              曼珠沙華 朱赤 ひっそり 庭の隅
               曼珠沙華 朱赤 燃え出づ 木立闇
               曼珠沙華 燃え出づ 朱赤 怯えた日
                曼珠沙華 遠く眺めた 遠き昔
            秋小雨 衝く羽根空木(つくばねうつぎ) 薄紅冴え
             秋閑か 静かに暮れるる 萩の庭
                     - 白萩の咲乱れ揺れぬる後に
            花盛りも 一休み哉 萩静か
                     白萩や 咲き乱れ揺れ 揺れおりぬ
               小刻みに 震えるる白萩 愁思あり
             忘れ草* 忘るることの 有るも 無くも
                             (*萱草(かんぞ)の別称)
               忘れ草 もう物思うことも なかりせば
           忘れ草 な愛でそ 物〔思い〕や忘するる
          薄墨の秋空 四周 虚無(こむ)に沈み
           秋陰や 鬱憂いの身の辛き   
            薄墨の秋雲(しゅういん) 仄か明るみぬ
          微風(そよかぜ)や 薄の花穂の揺れ 微妙
            蟋蟀(こおろぎ)の声聞いたは 何時の事
                               平成29年9月23日
                                    <25首>
         山牛蒡(やまごぼう) 小さきながらも 実結びぬ
          鉄柵より 弥よ 迫り出づ 白花藪蘭
           夕化粧 白に紅絞りや 清々しき
           夕化粧 黄色もありぬ 秋の興
              黄花コスモス 勢い増しぬ 秋気(しゅうき)あり
             毬栗や  割れて 大空仰ぎおり
           毬栗や ぽかっと 空っぽ 実や何処
           曼珠沙華(まんじゅしゃげ) 白黄色 咲誇り
           曼珠沙華 朱赤花 ひっそり 裸木の下
           秋陰に 慌て戻りぬ 傘の要
               傘要らず 唯 秋陰や 広がりぬ
          紋白蝶 紫苑に 無心に 花移り
          紋白蝶 紫苑に無心 〔彼(か)を眺るる〕我(あ)に無関心
             花移り 愛でる我(あ)を知らで 紋白蝶
                                                  平成29年9月24日
                                    <24首>
            薄墨の叢雲に 燕(つばくらめ)や  一羽 二羽
           葛(くず) 谷間の樹々 悉覆いぬ もう壮観
            葛繁し 谷間 恰も 青海原
              秋涼に思わず 身奮いせぬ 朝(あした))
                涼風に 漸う 暑気や 解き放たれ
             生垣を 突き抜け犬蓼(いぬたで) 見渡しぬ
              小さき胡蝶 犬蓼の花穂に 一匹 もう一匹
                  犬蓼の咲き続くを行く 生垣沿い
            お屋敷消え マンション立ちぬ 秋 もの侘し
                盗人萩(ぬすびとはぎ) 莢結び伸びやか 天高し               
               曼珠沙華 処構わず咲くや 朱赤
            柿黄色の ミニ薔薇咲きぬ 秋の気色
                溝を急(はや)み 流るる 秋水 空碧く
                     この流水 源流 六甲山系の湧水らし
               手に掬い 飲みたき程の 清冷さ
                我(あ) 山里 嘗(かつ)て 溝の流水 本流なりき
              震災*後 流水堰(せ)かれ 溝涸れぬる
                             (*阪神淡路大震災の事)
                  姫実紫 細く繊細  実も小さき
                 凌霄花(のうぜんかずら) 大型も雛も 咲く庭のあり
                 蒲公英(たんぽぽ)や黄花と綿毛の秋の庭
                万両の 青き実垂れむ 初春 待つらむ
               柿の撓(たわわ)上 熟すも 下まだ青き
                  犬蓼(いぬたで)の花穂 山里や まだ咲くを見ぬ
              溝急(はや)み 早水(はやみすず) 留処(どめど)なく 流れ
                燕の一群 一斉飛び行く 秋空を
                       朝凪や 真直ぐに立ちぬ 尾花 皆
                 紫苑 咲き揃いたり 秋郊に
               胡蝶 紫苑に舞い来ぬ 今 蜜時(みつとき)
                曼珠沙華(まんじゅしゃげ) 朱赤花 笑みぬ 青き空
                路真中 枯れ葉 一葉 秋静か 
                                                               平成29年9月25日
                                           <20首>   
              枯れ葉 独り くるくる舞いぬ 独楽の如
                  曼珠沙華 終焉迎えり 哀悼
                   白蝶花(はくちょうか) 秋風に揺れぬ 細枝も花も
               秋明菊(しゅうめいぎく) 秋風に揺れぬ 細枝(ほそえ)・花も
               秋空や 弥よ 高く 広くなりぬ
                     秋の空 山より高し 海より広し
            曼珠沙華 遠目にも 際立ちぬ 彼(あ)の朱赤花
              振り向けば 白花芙蓉 静かの秋
                曼珠沙華 池面に逆さや 朱赤花
              曼珠沙華 葉黄菖蒲(きしょうぶ)の奥 垣間見え
               ホロホロと 転(まろ)びぬ枯れ葉や 紅葉色
                 山中へ 二十米(メートル)入れば 秋山の気色(けしき)
                 毬(いが)蹴り 枯れ葉踏めば 山の感触
            団栗 コロコロ 追っかけ拾いぬ 思い出に
              紋白蝶 舞う 秋野も 春野も 同じかしら
            山葡萄 紅葉 まだ実や 青きに
               黒影飛ぶ 見渡せば 秋蝶飛ぶ
                     網膜剥離に非ず 安堵の秋日和
             向日葵(ひまわり) 枯れぬ 惨めさ 晒しぬ 哀れ
          蜥蜴(とかげ)這い出づ 黒光りの背 瑠璃の尾
            蜥蜴出づ と見るや隠れり 草叢へ
            蜥蜴 尻尾あり 優雅にくねらせ 蛇行かな
                              平成29年9月26日
                                       <25首>
           天空や 四方四周 鱗雲(うろこぐも)
                 ぐるり 見渡せば 悉皆(しっかい) 鱗雲
             朝焼けや 鱗雲一面 秋望む
            刻一刻 残暑増しぬ 秋昼かな
                  秋空に 吸い込まれけり 烏揚羽
                真ん丸の 石榴 (ざくろ) 何時熟れ 割れるらむ
              森の中? 否 市街地の隅 緑生う
                日影 暑気 小路(しょうじ)や 秋風吹きぬけり
              烏揚羽 また舞うを見ゆ 秋の空
            門鎖され 人気(ひとけ)無き寺 秋愁
              彼岸花 紅白咲きおり 彼岸過ぎ
               曼珠沙華 朱赤に混じり 白や咲く
             路地植えの トマトのひび割れ 懐かしき
                   太陽を 留め込みトマト 皮の裂け
               一片(ひとひら)の白雲もなき 秋涼し
               天空 青空 これぞ 秋空なり
              お飯事(ままごと) 犬蓼(いぬたで)の花芽  お赤飯(せきはん)
               赤飯(あかまんま)* 素朴な遊び 昔懐かし
                                 (*犬蓼の別称)
                赤飯(あかまんま)の飯事〔/お赤飯〕 昔物語
             赤飯(あかまんま) 老母の追憶 甘く遠く
                水引きの花穂 紅白共 今盛りなり
                  金水引き 姫や静かに 秋を咲き
               零れても こぼれても 咲く白萩 秋の彩
                    白萩や 咲き匂いぬる 零る間も
             漸うに 三日月望む 長月(ながづき)末
              くっきりと 三日月出づる 秋今宵
                   秋声を 遠く聞こゆるは 耳の遠き
                                  平成29年9月27日
                                        <20首>
           路地植えの オクラの莢や大丈夫(だいじょうふ)
                   オクラ 青きとんがり帽子 突き上げぬ
                   予報 雨80% ほんの御湿り パラパラの
                 傘持たず 出で 秋雨に出会いぬ
                 ポツリポツ 生垣に 我(あ)に 降る 秋雨哉
                   秋雨や 濡れて行こうと 粋がれず
                    秋雨 時雨にあれば 傘なくも 
                  秋晴れに つと 秋陰 ハックション!
                   小雨 寒! 急に冷え込む 秋日和
                    秋陰去り 爽やかななどか 寂しき 夕
                  たっぷりと 過ぐす独居の 秋の夜長
                   来し方を 顧みる哉 秋夜長
              憂き事の ばかり思い出づ 秋夜長
              さてもはや 憂きことや忘れむとぞ 〔と思う〕 秋長与
               秋夜長 駘蕩(たいとう)の有り難き哉
               無事という 幸せ思いぬ 秋夜長
                               平成29年9月28日
                                     <28首>
              今朝は 早(はや) 冷気忍ぶるる 秋なりき
               厚着せり 此間(こないだ)迄は 薄着なりしが
                紫苑(しおん) 束ねられ 大風遣り過ごし
                  大風に な薙ぎ倒されそ 背高泡立ち草*(せいたかあわだちそう)
                                 (*漢字一語扱い)
            背高泡立ち草 七茎 それぞれ耐えたり 大風に
              秋風や 次第に収まり 日差しあり
               秋陰 山際明かりぬ 秋昼
                白雲薄く 青空光る 秋の海
               新築の 槌音響く 秋の空
                   犬蓼(いぬたで)の叢となりぬ 秋の野辺
            紫苑(しおん)に 黄花マーガレット 秋のソート
               食い荒らされぬ 柿の実 ころり 道端に
                 柿の実 渋や 誰(た)が投げたや 猿や烏や
              鬱蒼の木立 伐採 秋哀し
                  切り株のみ 点々と残りぬ 砂防壁
                溝底に 金木犀(きんもくせい)の花びら 何処(いずこ)から
             金木犀 匂い遣(よこ)せど 匂わぬ 悲し
             風音や 遠く近く 聞こゆ 秋の情
                ガシャ ガシャ 間歇音の 秋の風
                   秋風に 波立つ草叢 虫や何方(いずち)
             転寝(うたたね)や 暫く 秋の夢見かな
             梅の枝(え)に 桔梗を差したる 誰の所作
                                平成29年8月29日
                                       <30首>
          枯茶の毬(いが) 割れ 栗坊主 顔覗かせ
            午後四時過ぎ 日脚短く 秋夕暮れ
               姫酸草(ひめすいば)根生葉 青緑 枯花茎 渋茶
            白き月 もう昇りて 夕烏
                   けたたましく 鳴きつ 夕烏 秋山へ
           蚊帳吊り草(かやつりぐさ) 見ゆ 朱夏も蚊も 終わるに
             蚊帳吊り草 蚊帳を作るや 秋の日に
              蚊帳吊り草 蚊帳を作って 遊んだ日
         白萩散りぬ 宴の後の虚しさよ
            狗尾草(えのころぐさ) 枯れ花穂や光る 秋日差し
             曼珠沙華(まんじゅしゃげ) に 後れて咲くは ネリネなり
           柿撓(たわわ) 青から熟(うれ)色 グラデーション
          白 青碧 瑠璃 切れ葉野葡萄 実りの秋
           一羽去り 一羽残りて 独り舞い
             振られしか 独り舞う胡蝶 心寂し気
             独り舞い シングル・ライフの 享受かも
          秋朝凪 汽笛響きぬ いざ船出
                 胡蝶の翅 身に纏いたき 意匠かな
             アスパラガス 茎葉茫々も 朱実愛し 
            秋空に 弧描き垂れぬキーウィー の枯姿 
               主(あるじ)亡き 庭茫々の  秋侘し
                売り物件の立て札 埋もれぬ 野草茫々
             影法師 ゆらゆら歩む 我と共
             生垣の 渋紅紫の実房 花の如
              クローバー 姿を見せり 返り咲きも
                   姫女苑(ひめじょおん) 優しき風姿 春や想う
           盗人萩(ぬすびとはぎ) 莢の野となりぬ 花終わり
            狗尾草(えのころぐさ) 金 紫 隣りて 同床同夢?
                                  (*同床異夢に非ず)
               含羞草(おじぎそう) 触れど 打てども お辞儀せぬ
                 含羞草 茎垂れ 葉閉じるが 性(さが)の筈
                                 平成29年9月30日
                                       <20首>
            外出の我(あ)に 胡蝶飛び来 行ってらっしゃい
            姫榊(ひさかき)の 白緑の実連なる 小鳥知らずや
            姫榊 実 熟すを小鳥 待つらむ
             紫瑠璃 空色混じえぬ 山葡萄実
              蔓茱萸(つるぐみ)や もう小白花 釣鐘形の
                 初冬に 咲くと言わるる 蔓茱萸が
                  来春には 朱赤の実 と 楽しみに
            緋に燃ゆる サルビィアこそ 花壇の祭
            セージも また 紫唇形花を 突き出しおり
              飯事(ままごと)にも 飯(いい)〔/餌〕にもされぬ 大犬蓼
            雨風に耐え そのまま 果つるや  大犬蓼 
              紫狗尾草(えのころぐさ) 繁茂 小さき野辺の演出
                  瓢箪(ひょうたん)の実 ぶら下がりおり 一つ三つ
                瓢箪の くびれるる風姿 風趣あり
                   青紅葉 紅葉そ(初/染)むは 桜葉なり
              茫々たる 大空 秋の青さ哉
             西日強し 小手翳(かざ)し望む 秋の庭
                入日に映えるる 秋庭や 美くし
           我(あ)に舞い来ぬ 胡蝶に挨拶 ただいまと
             日入りて 窓辺の灯 秋思あり
                  窓際の灯(ともしび) 寂(さび)し 秋の夕
             ごあいさつ
                以上をもちまして 
               平成28年10月~29年9月の間に詠みました 
                   拙句集の掲載を終了させて頂きます。
                  ご通読有難うございました。
                          深謝致します。
               猶 今後も引き続き
                   平成29年10月以降の拙句集を
                     掲載させて頂きます。
                 ご一読賜れば 幸甚に存じます。
                                       団野薫女
                                         平成29年10月1日
                                   <8首>
                秋冷 もう一枚 セーター 探し
                 花穂垂(しだ)れ 枯れぬそのまま 大犬蓼(おおいぬたで) 
                   大犬蓼 垂れ枯れ行く風姿 またの風情
                南天に 尾花戦(そよ)ぎぬ 何や問う
                  南天の実 ぼつぼつ 紅に色付き初む
                    足早に 迫り来る 物寂し 秋の夕
             キリ キリ キり 聞こゆる虫の音 汝(な)は誰(た)れぞ
                                  平成29年10月2日
                                       <15首>
             秋空 一転 曇天 雨天 動転す
               曇天に 行楽日和 探すなり
                   曇天や 行楽日和 何処へやら
                 鬱陶しい 秋には 梅雨もあるらしき
              閉じ籠められ 秋雨聞く間に 一日(ひとひ)過ぎ 
            絶え間なく 波紋描きぬ 秋雨かな
                雨上がり 虫の音 涼やか 鈴の音や
            虫の音の 重なりて聞こゆ 濃藍の小夜
             小夜更けて 弥よ増したり 虫の声
              二重奏 否 三重奏の 虫時雨
              久し振り お屋敷街や また変貌
                見渡しぬ お屋敷の面影 求め
                   老松と突っ支い棒の 並木だけ
                 お屋敷街  マンションの群れ 悲嘆にくれ
              マンション 護岸 モノレール モノトーンの景
                   佇めば 懐かしき 風情 仄か見ゆ
                             平成29年10月3日
                                     <11首>
            尾花 戦ぐ いと優し気 朝の情
                木槿(むくげ) 垂れるるほどに 花淡紅の
                 秋明菊 (しゅうめいぎく) 小さきの揺れぬ 秋
            影とも(伴/友)に 舞う胡蝶や 秋日影
             絹雲や ふんわり のんびり 秋の空
               崖〔/砂防壁〕 の樹木 一切 伐採されぬ  
               枇杷二本 残され侘し 秋の情
                  寄り添いぬ 枇杷二本 何思うらむ
                 秋の夕 夕陽眩しき 散歩路
               風に戦ぐ 尾花や光る 山里よ
             雲一つ無き 秋空 山まだ 深緑
               日蔭過ぎ つと 強き日差し 眩しき
                              平成29年10月4日
                                    <12首>
             尾花の綿毛 白銀に光りぬ 風沈み
             尾花 はや 綿毛となりぬ 秋 速(はや)し
               突風に 突き飛ばさぬ 秋日傘
             黄橙コスモス 花茎広げぬ 花やぎぬ
                いと小さき 酢漿草(かたばみ)の咲く 秋の路傍
               ヒラリ散る 枯れ葉や 秋の柿の色
                木の葉散りぬ 静心なく 秋の空
               柿の木や 甘柿 渋柿 雛の情
                秋桜 揺れぬ山里 物寂し
                コスモスの小園 眺めば 胡蝶舞い
                 月影なく 虫の音もなく 寂しき夜半
                  昨夜には ソロで鳴きたる虫の音が
                             平成29年10月5日
                                       <10首>
                 桜の園* 青葉のままな 秋桜
                            (*神戸東部の桜守公園)
               故郷(ふるさと)は 新しき街となりにけり  
               ’昔はね・・・’ 瞠目の 新しき人
                  見知らぬ街 昔の面影 何方(いずかた)に    
               初見(はつみ)なり 淡紫の凌霄花(のうぜんかずら)
                 息呑みぬ 望外の出会い 淡紫 凌霄花
              やはり柿 秋 秋色に染むるるは
                 色鮮やか 柿に実たわわ 遠目にも
               衣被(きぬかつぎ) 皮剥ぎおるも 名月なく
             月見団子 供える月や 雲隠り
                           平成29年10月6日             
                                      <10首>
             黒紫の実房垂れおりぬ 何(な)の葛
                  ミニミニ葡萄の如 垂るる葛の実
                 水引きも 黄葉すなり 秋らしき
                  待て暫し 抜くを水引き 黄葉愛でむ 
              背高泡立草*(せいたかあわだちそう) 花茎の曲線 秋のアート
                                   (*漢字一語扱い) 
              黄金に萌ゆる 花穂 花穂 背高泡立草
                背伸びにも 未だ見えぬ 背高泡立草の花頭
              栗ころころ 如何に楽しむ 秋の味覚
              茹で栗を スプーンで掬いぬ 秋の味覚
                               平成29年10月7日 
                                      <10首>
             吹き寄せられ 雪溜まりとなりぬ 落花空木*(つくば)
                                     (*衝羽根空木)
               水溜り ポツリ ポツリと波紋かな                 
               露払い 薄野過ぎぬ 雨上がり
                山枯らし(やまからし) 繁茂 甚だ むべなるかな
            まだ咲きぬ 秋の朝顔の 青き色
             山際に霧立ち上る 秋昼
               虫の音の か細きシンフォニー 聞こゆ闇夜
                 秋の虫 月影よりも 闇夜好き?    
                物思う 夜に月無く 弥(いよ)寂し
               月待つ小夜 待てど闇夜も またおかし
                    待ちに待つ 月出づる方 枯れ尾花
                晴るる間に 庭の草木や 刈るる秋
                 小雨降る しとしと秋の 涙雨
                  小雨止み 白露光る秋 冷気 
               しどけなき 蓬の穂垂れぬ 秋雨に
                 白雲の 流るる秋空 草毟り
                  白露の 消えるを待つらむ 草むしり
                         天晴れり 地湿りたるまま 秋の庭
               地湿り いざ草むしり 秋ながめ(眺め/長雨)
                               平成29年10月9日
                                   <17首>
               人懐っこき 胡蝶や 僅か 三日の邂逅
                明月を 写す盥(たらい)の 月掬い
                 暮色深し アフリカ酢漿草(かたばみ) 花色深し
                   花びら捲き 一日終わりぬ アフリカ酢漿草
                チロリアン・ランプ また咲きおりぬ また楽し
                そこはかとなく 匂いぬ方に 金木犀(きんもくせい)
               金木犀 枝枝(ええ)に 纏わりつきぬ 橙黄花
                畑(はた)する人亡きや 畑 草茫々
                 畑消えぬ 狗尾草(えのころぐさ)野と なり果てぬ
              空色残し 茜色に 秋暮れるる
               向日葵(ひまわり)や ぱぁ~と開きぬ 戻り夏
              豌豆や 葉葉 青青 蔓 伸伸
              こんもりの樹 葉隠れに咲く 金木犀
             月や何方(いずち) 探し驚き もう満月
            満月の 耿耿たるや 秋の庭
              満月に虫の音 聞かぬ 丑三つ時
                   丑三つ時 草木眠れど 我(あ)眠れぬ
           少しづつ 裂け行く柘榴(ざくろ) 秋思う
             忘れられし キッチンの隅 隠元豆
                莢隠元 腐らず紅色 さすが秋
            柿の実や 郷愁誘う 熟し色
             汗ばみぬ 風涼しき哉 秋の暮れ
             紋白蝶舞う 菜の花畑なくとも 舞いぬ
               物侘し コスモス見ぬ秋 物侘し
                詫び濡れて 帰り来りぬ コスモス見ぬ
              日傘差し 日差し避けおり 秋夕日
               残暑あり 夏衣(なつころも)着ぬ 秋最中(もなか)
                  秋残暑 慌て取り出す 夏衣
                滑り台 秋風滑るる 木の葉共
                 滑り台 光る秋日に 残暑あり
            燕 また帰りぬ オー・ルヴォアール (/au revoir) 
                             平成29年10月11日
                                     <8首>
              ブ~ン もう止めて!小さき秋虫 草毟り(くさむしり)
                ご免ねと 謝りつつも 草毟り
                  翌日に 疲れどぉ~と 草毟り
             草毟り やはり 大仕事 弱身には
              賑やかに 行楽の声 何処までも
                行楽も 虚しき響き 老いおれば
                 茜色  秋の夕日の 物寂しき
              蹴躓(けつまず)き 転ぶや 老いの秋日和
                               平成29年10月12日
                                        <10首>
                つとに また 朱夏の暑気来 且つ去りぬ
             残暑去り 草木も 我(あ)も ほっとせり
           残暑去り 向日葵(ひまわり) 何処か寂し気な
            秋空や 晴れれば曇りぬ お天気屋
             残暑あり 秋陰 垂れ 尾花垂れ
               秋曇り 小刻みに揺れぬ 尾花かな
           秋曇り 身も心も 塞ぎぬ 噫
                 かくばかり 鬱陶しいき哉 秋曇り
              秋陰 無色 無臭 無味の情
                 秋陰の少しづつ 明かりぬ 秋昼
             柿の葉 葉 柿色付きぬ 青葉中
                            平成26年10月13日
                                    <9首>
               満天 薄墨 朝烏 一声 秋朝
            ポツリ ポト 秋の雫や 葉葉震え
                            - 一週間ほど前の出来事を思い出しつ
            電線に燕 百羽 旅立ちの会合や
              告別の挨拶や 燕の騒めき
                子燕も混ざりて 旅立ち 南帰行
            子燕ちゃん 頑張ってネ と 空仰ぎ
             子燕の 無事を祈りぬ 老婆心
              子燕ら 今頃何処いら 飛んで〔い〕るやら
            電線は 空っぽ 今は 雀一羽
                                平成29年10月14日
                                        <11首>
                   ー 底紅の花木槿(むくげ)を眺めつつ
                          底紅を 愛でおりし君 今は遠く
             儚な気な 嫁菜の一番咲き 木下蔭
                野路菊の 蕾抱きぬ 山路行き
                  草叢のあちこち 青色 露草の
               蒴果(さっか)枯れ 菫の青葉 八重に生い
             零余子(むかご)生う 山芋の蔓見ぬ 物侘し
                    天高く 子雀一羽 大冒険や
                 ポツリ ポト 路濡れやがて 大粒に
               通り雨 ざぁーと走りぬ 我(あ)も走り
                通り雨 急ぎ帰れば  もう晴れ間
                 傘畳み 猶 開いたり 玄関裡
                                平成29年10月15日
                                       <9首>
             早乙女花(さおとめかずら) 実や黄褐色 秋最中
               薄に絡みぬ 早乙女花 の実揺れぬ
                 薄と葛 襖絵も かくの如く
               束ね花穂 薄や揺れぬ 静心なく
                草叢の 虫の音 聞こゆ 宴かな
              夜頃の雨 今日(けふ)の戯れ 枯れ草抜き
                 大犬蓼(おおいぬたで) 色移ろいぬを 抜き集め
                  枯れ草集め 見上げれば 秋空 寂寂
             南天の青き実  銀露宿りおり                
                              平成29年10月16日
                                   <11首>
             水引きの葉葉 移ろいぬ 黄 橙 朱
              夏蔦 も 移ろいにけり 五色蔦
                 粉糠雨(こぬかあめ) 集め滴るる 紅葉(もみじ)かな
          秋陰 秋雨 黄花(おうか) 背高泡立草(せいたかあわだちそう)
                    何処からか 団栗コロコロ廊下に 転げ出で
                 廊下に団栗 昨年(こぞ)の 名残りなり
                     虫の音の 聞こゆる方や 濃藍の闇
                         冷気襲いぬ 晩秋や 否  まだ 神無月
               雀飛ぶ 且つ 飛び行く秋空 茜
                  薄墨に 山際霞み 烏鳴く
           グォー ゴオ 不気味な響き 嵐の兆しか
                       熟し柿 静かに暮るる 山辺の里
                           平成29年10月17日
                                    <15首>
                  秋霖(しゅうりん) 秋冷 何時まで続くや  鬱
               今日も また 粉糠雨(こぬかあめ) 秋晴れ 何方(いずち)
          夕化粧(ゆうげしょう) 白色に絞り 色々な
                          白壁 秋雨染み込み 壁画かな
                秋陰に 浮かぶ雑木立 墨絵の景
             海霞み 山霞み籠む 秋入梅(あきついり)
                             霞籠む 山から 里まで 薄墨色
               晴れ間あり 暫し逍遙 秋入梅
                    ぐるっ ぽっ ぽお~ 山鳩の声 
                    実紫(みむらさき) 枝垂れの風姿 妖艶な
                  実(げ)に 紫式部*と 人の名づけり
                             (*実紫は 紫式部の別称)
              今様の 秋の七種 数えば
                 秋桜 紫苑 背高泡立ち草 夕化粧 実紫 ・・・
                    - 春に 出会いぬ コスモスを想い出しつ
                         春麗ら 小さき小さき 秋桜
                           庭先に咲く コスモスの 風姿優し                         
                                平成29年10月18日
                                       <22首>
                それぞれに 秋日傘揺れぬ 秋日差し
             昨日と今日や 秋入梅(あきついり)と秋日和
                   秋晴れに 足も心も 弾むなり
                雲高し なんと天空の 広き哉
                       漸うに 天高く馬肥える秋に
               秋晴れに 立ち上がり聳えぬ 背高泡立ち草
                背高泡立ち草 打たれ薙(な)がれぬ 秋入(あきついり)
            朽ち切り株 貝殻形の茸 生いぬ
                名は朽木茸(くちきたけ)  秋侘しの風姿
             この根生葉 何(な)の花かとぞ 問う 秋の暮れ
             春までも 待つらむとぞ 思う長し
                      少女 現る 胡蝶の翅と 同じドレスの
             たった三日 姿消しぬる 彼(あ)の胡蝶
               彼(か)の胡蝶 の化身なりや と 時めきぬ
            蒲公英(たんぽぽ)の黄花ひっそり 秋の野に
              小鬼田平子(こおにたびらこ) 黄小花も 興を添え
             いまはもや 金狗尾草(きんえのころぐさ)の野となりぬ
            水仙の幼き 生いぬ すくすくと 
                黄花コスモス 咲き乱れるる花壇 過ぎ
              花壇隅 黄に咲き匂うや 万寿菊〔/マリーゴールド〕
            盗人萩(ぬすびとはぎ)野 過ぎれば 莢くっ付きぬ
             コート バッグ 莢取り外す 秋夜長
               莢 庭の何処に撒くかむ 明日の朝
                           平成29年10月19日
                                  <8首>
            尾花垂る そぼ降る小雨 冷たきに
             仄(ほの)聞ゆ 水路の潺(せせらぎ) 秋の音
                      我(あ)庭に 茸佇みおりぬ 秋入梅
              この茸 何処か松茸に 似たる哉
                     想い出しぬ 茸多きや生い揃いぬを
            衝羽根空木* (つくばねうつぎ) 散りて花弁(はなびら) 生垣下
                       (*漢字一語扱い)
               衝羽根空木 花弁溜まり 雪溜まりの如
                 衝羽根空木 雪溜まり続きぬ 延々と
                                平成29年10月20日
                                        <15首>
         大犬蓼(おおいぬたで) 弥(いよ)よ 枯れぬる 黄褐色
          大犬蓼 白き花影 黒紫の実
                 雨上がり 弾み明るき 人の声
             明るきに 窓外見れば  過(よ)ぎ飛ぶ 雀
         黄花マーガレット 晴れやか 暫しの晴れ間
          山葡萄 紅葉 山里の彩なり
            お帰りなさいと 迎える影あり 紋黄蝶
            柿の木や はばかりながら 葉ばかりなり
             〔柿の〕 実を見ずば 秋の風情や 遠退きぬ
              よく見れば 柿の実 三つ 寄りて熟(な)りおり
              泥濘(ぬかる)る庭 シトシト ジトジト 雨上がり
                         - 昔日 雨上がりの雨蛙の
                              キョトンとした顔を思い出し
                雨上がり 雨蛙の顔 まだ 濡れおり
             無風 無音 嵐の前の静けさ か
              不気味なほど 静かな秋の夜 更け行きぬ
                 虫の音も か細く 聞ゆ 台風前夜 
                             平成29年10月21日
                                   <7首>
           粉糠雨(こぬかあめ) 何時までも降る 何時までも
               我(あ)が庭の 茸 傘反り返りつつ 独り 生う
          花水木 紅葉枯るるも 蕾見え
              我(あ)が庭の 花水木 葉枯れ行くのみ 蕾見ぬ  
             花水木 花見るには 如何せむ
             柿の実 何処(いずら) 葉や柿色に 実の如く
              石段際 酢漿草(かたばみ) ひっそり 独り
                                    平成29年10月22日
                                            <14首>  
            高く 低く 唸る風音 不穏なり
               唸る声 雀 急ぎぬ 風強し
                葉の露も 飛び散りぬるや 風烈し                                   
             窓叩く 雨滴 みるみる 大粒に
                   TVの字幕に出おり 台風警報
                雨風に 尾花大揺れ 頭垂れ
                 また 大揺れ  茎傾(かたぶ)きぬ 風強き
             庭の鉢 転び割れるる 風烈し
          風烈し 身を何処に寄せるや 秋の虫
            〔秋虫や〕 安全な 宿り見つけたか 身を案じ 
               突然に 虫の声 大丈夫の声
                 虫の音や 仄か聞ゆ ご安心を
             打ち臥しぬ 嵐や過ぎぬ その時まで
               嵐鬱 無為に過ごしぬ 一日(ひとひ)哉
                  大風 終日(ひねもす) 鬱に耐えるなり
                                平成29年10月23日
                                      <17首>
             夜来の嵐 過ぎて 今朝 平穏なり
              大嵐一過 空高く 広く 晴れ渡り
                 台風一過 辺りの風景 移ろいぬ
                  台風一過 打ち臥しおりぬ 背高泡立ち草        
             大嵐 背高き草草 薙(な)がれ 哀れ
          一夜にて 黄金の花 朽ちて渋茶色
                  夕化粧(ゆうげしょう) 根から折れおり 花移ろいぬ
          秋風や 落葉 コロコロ 転び来ぬ
             衝羽根空木*(つくばねうつぎ)落花 萼五弁 衝く羽根に
                                    (*漢字一語)
            衝く羽根空木 萼 小薬玉の花盛り〔の如く〕
           青きまま 落葉のなりぬ プラタナス 
             切れ切れになりて 落葉や 路の端(は)に            
           地に這う蔦 無事なり 生生 青青
            苔もまた 緑増したり 大雨後
          秋冷 石蕗(つわぶき) 独り艶やかに 
           茎伸ばし 石蕗 蕾 散らしおり
             石蕗や 黄花一輪 嵐の後
                             平成29年10月24日
                                      <12首>
                          - 大嵐の次の日
            団栗や 青きも 幼きも 路上かな
                千々に切れ まだ青き柏葉 落葉
           団栗 百個 散乱 嵐の後
           今秋や コスモス 何方(いずち) 咲きぬやら
             コスモス狩り 勇んで出て 帰りや 悄然
              秋桜 出会えぬは何故 と 君に問う
                  漸うに 出会いぬコスモス 園芸店
               店先のコスモス 草臥れ あい(哀/愛) 誘う
             秋桜 やはり 野に置け 秋空に
             通る度 千日紅(せんにちこう)や 色鮮やか
             千日紅 紅毬 弾みぬ ポンポンと
                         - 木製のベンチの茸 段々に生うを見て
                  鮮橙色の茸 ベンチの縁飾り
               マーガレット 茎だけ残り 木(ぼく)となりぬ
             ご近所に コスモス見つけり 嬉し楽し
                 柚子(ゆず)の実 熟れて 黄色 喜色 満面なり
              ピラカンサ 朱実撓(たわわ) 小鳥知るや
              花りんの実 大きが 三つ もう一つ
               豌豆豆 腐(くた)しぬ 大嵐 憎し
                  散歩路 柿の葉拾い 秋拾う
                いつもの景 何時までもと 秋の夕
                     久し振り 三日月 くっきり 秋更けぬ
                  この板切れ 誰(た)の落とし物 大嵐
                蜜柑 もう蜜柑色 何時の間に
                 彼方の庭 蜜柑まだ 青葉蔭
                           平成29年10月26日
                                 <14首>
            夕陽映え 枯れ枝(え)の柿の実 映え 二つ
               青紅葉 飛び来ぬ 嵐の 贈り物?
                小鳥 人 知らぬ気は 渋柿や
             秋拾いぬ 柿色の落ち葉 団栗も
              くる~んくるり カールの尾花 夕日映え
               夕日眩し 影法師の 秋長し 
           小手翳し 夕日裂けつつ 散歩哉
             溝壁のアディアンタムや 勢増しぬ
               深山嫁菜(みやまよめな) 都忘れの山辺かな
             梅も桃も 落葉したり 秋侘し
                潺(せせらぎ)の音 千々に聞こゆ 秋のメロディー
            薙ぎ倒され 秋野や 荒れ野 となりたり
               枯れ枝に 薔薇一輪 残り咲きぬ
               虫の音の無き小夜 心寂し
                              平成29年10月27日
                                        <13首>
            銀色の 尾花の波の 清(さや)けき朝
             銀色に 揺れる尾花や 青海波
               真っ青な 雲一つ無き 真っ青な
            秋の庭も 寂しくなりけり 虫の音無くば
             団栗 独り ぽっつり 路の上
              萎れ腐(くた) 朽ち果てぬ 黄花コスモス
            束の間の 秋の日和 また 嵐らし
                      柿の実 何処 残骸見つけり 根元近く
                 一体誰(た)ぞ 食い荒らしたは 柿の実を
              烏 猿? 何方(どちら)が知ったり 甘か渋か
                蜂一匹 柿の実の 残骸に
                  青きまま 散りぬる柿の葉 夕日寂し
                                平成29年10月28日
                                      <8首>
             秋の庭  香焚く 匂い 何処(いずこ)から
                 何処となく お香含むや 秋の庭
              色付きぬ 柿の照葉や 綾錦
             草木翻弄 好き勝手な 秋の風
              桜紅葉下 団栗 ころり ぽつりおり
               大嵐 来るや 来ぬやの 一日や
            大嵐構え 尾花や 独り 一人静か
              心許なき 大嵐来る 前夜かな
                          平成29年10月 29日
                                  <10首>
              向日葵(ひまわり) 凋落 秋闌(たけなわ)なれば
               花見ぬ間 カンナや 弾丸〔実〕となりぬ
                                - カンナの思い出を
               迷い来ぬ カンナの咲く庭 朱夏の庭
                迷い込みぬ 花壇のカンナ 緋色に燃え
              緋に燃ゆる カンナ 朱夏の申し子かな
               緋に揺るる カンナの庭 思い出の庭
            大嵐 一過 白雲光り 青空臨む
              大嵐過ぎ 打って変わった 穏やかさ
                大嵐 去り泥む夜半の 長かりき
                       大嵐 行き去らぬ 夜半 更け行きぬ
                    夜半 再び 大嵐 轟きぬ 恐怖
                             平成29年10月30日
                                     <10首>
             大嵐 紫狗尾草*(むらさきえのころぐさ)倒れ 哀れあり
                        (*漢字一語扱い)
              紫狗尾草 花穂 幾つか立ち 紫立ちぬ
           風に追われ 転がり行く枯れ葉 我(あ)踏ん張りぬ
              団栗の殻斗拾いぬ 大嵐後
               虫の音 もう聞けぬ今宵 星影仄か
                 嵐余波 風の強きに 驚かれぬる
               嫁菜よめな)横 茸ぽつんと 白灰茶色
                   白灰茶色の 茸やひとり ぽっつりと
               鈴懸(すずかけ)の鈴〔実〕 拾いぬ 鈴懸の路
              鈴や何処 見上げれば 高き 鈴懸の樹
                                  平成29年10月31日
                                          <7首>
              のそのそと 虫横切りぬ 秋令かな
                  移ろいぬ 柿色の落ち葉 枯れ葉色
                   散り散りに 散りぬる枯れ葉 秋冷かな
                             平成29年11月1日
                                      <16首>
               セコイヤ杉 実 鈴懸の鈴〔実〕 の如 照葉蔭
              セコイヤ杉 紅葉 黄葉 橙葉 千々(ちぢ)
                  崖に生う 蔓の葉 さわさわ 小春日和       
               コスモス狩り 出会うは 尾花ばかりなり
                塀の外 柚子(ゆず)らしき実 撓わ垂れ
                   柚子らしき 実撓(たわわ)生(な)り 塀の外へ
            姫椿 淡紅 一輪 冬近し
             桜紅葉(さくらもみじ) 紅葉(もみじ)に紛いぬ 艶やかさ
               何処からか 歌声聞ゆ 秋行楽
               木下蔭 野路菊 漸う 姿見せ
             物侘しき 東屋のあり 晩秋かな
              実ぱっくり 種零れそ〔う〕な 姫柘榴(ひめざくろ)
               不図(ふと)見れば 黄緋色の柘榴 まるまる垂れ   
             照葉散り 実生(な)りおりたり 柿の樹や
               柿の実や 樹一杯 空一杯
                柿の実や 実 実 実生り 晩秋の空
                                    平成29年11月2日
                                          <9首>
            藪蘭の実落ち 枯れ茎 庭侘し
              草毟(くさむし)り もうちょっと と 小春日和
                  疲れ果て ベッドへ倒るる 秋昼かな
               目覚めれば 日傾きて 茜雲
              夕茜 山際 悉皆 シルエット/黒影絵
               夕闇に 南天の実房 仄(ほの)赤く
               街灯の 点点と 点(とも)るる 秋の暮れ
                早乙女花 実 熟し色に 秋深し
               葛 二種 実 黄茶と黒紫 混ざり合い
                                 平成29年11月3日
                                       <12首>
               犬鬼灯(いぬほおずき) 寄りて白小花の 晩秋
                青蜜柑 青葉隠れに そっとお目見え
                 ネリネ 苞開き 蕾出ず 朝日影
                   豌豆の咲きぬ 三つなり 秋日影
                空豆や ぽったりな丸葉 重ね重ね
                振り向けば 秋日に 揺ら揺ら 影法師
                  葉枯るるとも まだ 朝顔咲きぬ 此処向こう
               姫椿 少し見ぬ間に  花芽(かが) 一斉
                      色々な 小菊の花色 黄 紅 白 暗紅
                 時知らずや 皐月(さつき)咲きおり 淡紅色の
               秋夜長 グラス傾けぬ ノン・アルコール
                 我(あ)が行楽 いつもの路の 往き来かな
                                 平成29年11月4日
                                        <11首>
                  春芽生え ようよう咲きぬ 秋草哉
                      ど〔ん〕な花と 待ちおりしが 地味 がっかり
                枯れつつも 猶咲きぬ 〔黄花〕コスモス 愛し
               不思議かな 葛(くず)の花見ぬ間に 秋の暮れ     
                    フェンス下 大地縛り(おおじしばり) 黄花見せり
                  次々と 転(まろ)び舞い継ぐ 枯葉の群舞
               風吹きて 柿の葉散りぬ また一葉
                  枯木に柿 独り残りぬ 寂しからずや 
                 尾花 分け 秋桜 分け 野分吹く
               桜紅葉 散り 枝枝幹の 黒影絵
                   東 青空 西 暗雲  如何や
                仰天吃驚 天空 一転 一面 晴天
                                    平成29年11月5日
                                          <14首>
              掃き寄せぬ 落ち葉にも また 錦あり
               実南天 弥よ 赤く 夕茜
                 静かなり 秋静かに暮れ 尾花揺れ
               夕日差す 小手翳すも まだ差しぬ 
              山際の夕日 照り映えぬ 秋の際
               オクラの実 残りて クルリ弧を描き
                  蜜柑の実 もう黄色付きたり 山里は
              怪し哉 コスモスの咲き乱るを 見ぬ
               豌豆の 蔓絡めつつ 白蝶形花
                   酢橘(すだち)の実 まだ青く 固きまま
                             ー 遠き日 焼き松茸には酢橘が
                                   良きを想い出しつ
                松茸無く 酢橘がこそや 寂しけれ
                 松茸無く 酢橘が天下 心寂し
            月影の 降り注ぐ庭や 白き哉
                    月光 白光 庭 雪化粧の如
                西空の月影 真上 真夜中零時
                             平成29年11月6日
                                    <8首>
            石蕗(つわぶき)の花 今や盛りと 咲き誇り 
             薄靄や 山の紅葉 仄明かり
              反り返り 花と見紛いぬ 枯れ葉哉
             鮮やかな 紅葉 黄葉 時めきぬ
               金柑の実 撓(たわわ)なれど 未だ青き 
             柿熟し果てぬ 隣や 青金柑
             濃桃の花酢漿草(はなかたばみ)や 晩秋の庭
              こ〔ん〕な処 花酢漿草や 咲きおりぬ
                               平成29年11月7日
                                     <11首>
            水涸るる 溝底に 苔 薄ら
               今日(けふ)も 猶 晴天になるらし 茜雲
                白き月 沈まぬ朝(あした) 茜雲
             秋桜 数本ばかり 物侘し
              秋晴れの逍遙 君と語りつつ
           現わるる 土の小径(こみち)や 秋逍遙
              もう今や 舗装路ばかり 嘆きおりしが
               この小径 いつか来た径 君や云い
            土小径 落葉踏み分け 秋哀し
              秋晴れや 曇り来たりぬ 明日や雨
                          平成29年11月8日
                                 <7首>
             枯れ紫陽花 花びらの雫 初冬写し
              白露や 南天の紅〔実〕 光る朝
                黄葉せり 木槿(むくげ) 実紫(みむらさき)  もう立冬
              花水木 紅葉見ぬ間に 枯木となりぬ
                  暮れ泥むや 釣瓶落としの 初冬に
              紅葉 暗紅色なり 秋沈みぬ
              冬立ちぬ 今朝の冷感 頷きぬ
                                 平成29年11月9日
                                       <20首>
             雨降らず 風吹かず 晩秋 嘉節
                  寒暖差 なくば 紅葉 くすみ色 
                くすみ色 物思いもや くすみ色
                 団栗コロコロ ころころ 何処まで
                紅葉 黄葉 一陽来復
                 紅葉黄葉 散りて 座りぬ ベンチあり
              割れ毬(いが)や 枯れ枝に独り 掴まりおり
                 葛(くず)落葉(らくよう) 蔓絡み縺れ 鳥籠なり
               日傘 ぽつん 置き忘れられぬ 晩秋のベンチ
               姫椿 花びら散りて 花莚(はなむしろ)
                   まだ晩秋 もう落花や 姫椿
                枯葉拾いぬ 桜樹の春とは またの景色
                  秋短し 枯草茫々 冬近し
               高き梢 柿残るまま 熟柿となりぬ
               切り株の新しきに 出会うは 哀
                 虫食いに 樹木伐採の 昨今 非
               カラフルな 落葉並べの 昔童
                                平成29年11月9日
                                       <20首>
                姫椿 薄紅の花芽(かが) 今や咲くらむ
                   ギザギザのロゼット 野薊(のあざみ) 落葉被り
                 鳩 トコトコ 首ふりふり 山辺拾う〔歩く〕
                歩き疲れ 見つけぬベンチ 優し気遣い 
                 茜雲 晩秋の山里 未だ 眠りぬ
               白き月 閃々(せんせん) きらきら 初冬の朝
               白き月 残りぬ朝(あした) 肌寒き
                紅葉闌(たけなわ) 姫椿開きぬ もう初冬
                 降り注ぐ 朝日燦燦(さんさん) 樫の葉葉
            ネリネ咲きぬ 鮮桃色に 朝日映え
               紅葉一葉 日降る石垣に お昼寝ね
                             平成29年11月11日
                                    <14首>
               挟まれて 本の栞(しおり)や 桜紅葉
               野路菊の笑顔愛らし 冬近し
               柘榴(ざくろ)の実 緋色に映える 晩秋の夕焼け
                石榴の実 三裂 四裂 ぽかり開き
             一 二 ・・・ 六羽 電線の鳥 汝(な)の名は何(な)
                〔電線の〕下通れど 悠々不動 飛び立たぬ
              雨音も 冷たく聞こゆ 初冬かな
                夜半の雨 潺(せせらぎ)の音増しぬ 用水路  
                    物寂し 雀も飛ばぬ 秋の暮れ
                 鬱強襲 終日無為の 秋の末
                冬立ぬ  一声響く 暁烏(あけがらす)
                        晩夏の朝 馬酔木(ばすいぼく)の蕾 見つけしは
             今か今か 待ち侘びおりぬ 馬酔木(あせび)咲くを
                 大きくぱあ~と 桃花色 に ネリネ咲く
                   ネリネ花茎 五(いつ) 小さきは葉蔭に
                              平成29年11月12日
                                      <13首>
            美女桜 撫子(なでしこ) 萎れて 初冬無情
             ベゴニア 独り 薄紅に燃ゆ 晩秋の夕
            渋紅紫 紫陽花の葉葉 霜焼けぬ
             紅酢漿草(べにかたばみ)肩寄せ咲きぬ 花壇縁    
              花酢漿草(はなかたばみ) 花びら捲きぬ 初冬かな
               夏蔦も 悉く落葉 冬枯蔦
                 夏蔦果て 枯れ蔓残りて 残滓のアート
                 伐採を免れし 桜木 何時までや
                   桜木に 倒木の恐れありと 説明版
                  倒木は いずれ 老木 虫食いや
                     出会う度 これが最後ね と呟きぬ
                     別離の時 弥よ 迫れり 桜木や
                   桜木に 木枯らし奏でり 別離の曲
                                平成29年11月13日
                                        <10首>
              姫柘榴 (ひめざくろ)〔の実〕 あちこち 枯木の賑い
             柿色の柿似の ミニ実 撓生り    
              鈴生りの 緋色の実 ほ〔ん〕に 見事
           影落とし 樹木 公園に シルエット
           機械音 近づけば 更地の序曲
               告別の暇(いとま)もなく 草木や消えぬ
             山葡萄 フェンス縫う枯蔓 小龍の如
             寒々と 樹木沈みぬ 初冬の公園
              空一面 鱗雲流る 秋や最後
                              平成29年11月14日
                                      <8首>
             夜半の雨 シトシト降り続く 初冬の日
              紅葉 黄葉 萩 銀杏(いちょう) まだ青葉
               錦秋とは 程遠き哉 紅葉枯れ
              海へ突く 山嘴(さんし)の峰や 初冬の景
                うらぶれし 山容の晩秋 心(うら)寂し
               薄墨色 天下四周 初冬の朝  
            漸うに 薄ら日差しぬ 初冬昼
                   霧立ちぬ 初冬の景 薄墨色
                              平成29年11月15日
                                       <11首>
            霞籠む 極細の葉葉 何の樹や
             万両の実 赤赤垂れて 初冬飾り
              残照 夏蔦 五色〔蔦〕となりて 壁伝(つた)う
                薄紫に咲くや 小菊の初冬の容
                       冬陽や 薄紫に 咲く小菊
               冬草や 路傍に生うロゼット 蒲公英(たんぽぽ)也
             万年草 年中生いぬ 実(げ)万年草
             寒風に ティロリアン・ランプ 赤き灯
               白菊の 清らかな風姿 愁思あり
             花梨(かりん) 葉葉 散り 実残り 初冬令あり
                           平成29年11月16日
                                    <10首>
              日溜まりで 啄む 雀ら 初冬の庭
            寒風や 綿毛飛ばしぬ 尾花かな
              木枯らしに 足止められぬ 遣る瀬なし
                 足留めや 木枯らしの空 恨めしき
              ドア開ければ 寒風吹き込み 慌て閉め
                   木枯らしの去(い)ぬ間に 散歩せむ
                 昼下がり もう 日暮れ始(そ)む 冬日 短
                夕日映え 紅色小菊や 初冬の隅
                   日だまりに 冬咲き蒲公英(たんぽぽ) 春気分
                笹百合 凛然と屹立 枯茎 枯莢
                   木枯らしに 小春日和や想う 昼下がり
                     小春日和ならば 外に出で 姫椿狩り
                              平成29年11月17日
                                      <13首>
                  寒風に 豌豆の白蝶形 咲き
               双葉萌え 小さき小さきが 密に萌え
                もしかして ミントの芽生え 我(あ)が蒔きし
             一夜寒 紅葉(もみじ) 鮮やか紅葉(こうよう)せり
                      ここかしこ 紅葉燃え立つ 朝(あした)哉
               塀に垂る 蔓結び合いぬ 木枯らしに
                ネリネ 濃桃花色の 薬玉に
              野晒しとなりぬ 更地や 水仙芽生え
                  小蜂飛び舞い下るる 小菊色々
                    高く 遥か 飛ぶ鳥影 何(な)の鳥ぞ
               黄花酢漿草(きばなかたばみ)小さく小さく 石垣下
              葉散りて 野薔薇実と棘 枯茎のオブジェ
           七重八重 酢漿草繁し 越冬備(もよ)い
                              平成29年11月18日
                                     <6首>
              蟹仙人掌(かにさぼてん) ぽつり蕾つけぬを見ゆ
                     小鳥も来ぬ 寒雨の庭こそ 寂しけれ
                    寒緩み 小春日和の来 待ち遠しき
                雨傘の足取り重き 初冬の坂
              ひたひたと 寒来ぬ今宵 暖取りぬ
               枯葉散りぬ むさ苦し木槿(むくげ) すっきりと
                               平成29年11月19日
                                     <18首>
            何事にも 停滞感ありこの寒さ
               急襲の寒さの棘の 鋭き哉
                  急激な寒さに 添えぬ 我(あ)が身あり
            底冷えの冬来るらし 夏恋し
              南天の実 紅濃くなりぬ 寒空に
               昼下がり 冬日(ふゆひ)注ぎぬ 暖戻りぬ
             風光る 椿の緑 戦ぐや 冬日
                   そよそよと 枯れ尾花 胡蝶や舞い
           バサッ!羽音  見れば 螽斯(キリギリス) 我(あ)が室に
            今 霜月 薄萌葱色 飛び込みたり
             寒空に 暖取りに来るや 螽斯
               それともや 大冒険なの? 未だ幼きの
            人懐こき 手の甲に 飛び乗りたり 螽斯
              細き肢 肢(し し) 冷たきにこそ  驚きぬ
                 我(あ)が頭上 飛び移りたる 螽斯 
                辺り荒寥 句詠めぬと 嘆きおり  
             螽斯 無聊(ぶりょう)託(かこ)つ 我(あ)に 慰めを?
                 花鳥風月 詠めぬと 我や託ち顔
                                 平成29年11月20日
                                       <10首>
            萩 銀杏(いちょう) 黄葉燃えぬ 鈍色の空
              南天の実 小鳥知らずや 赤 赤 赤
                  南天の実 白露 滴りぬ 初冬哉かな
            猪(しし)に 根こそぎ掘られ 葉蘭 哀れ
              猪好む 団子虫棲むは 葉蘭の根っこ
               あれからは 猪冬眠? 出没なく
                葉蘭の場所変え 今 猪来ぬ間に
                  陽の当たる場所に* 葉蘭植え替えたり
                                  (*団子虫は暗所湿気好み)
               此処こそが 葉蘭の安住の地に ならむ〔ことを〕 
             葉蘭 生き生き 精気取り戻しけり
                                  平成29年11月21日
                                         <10首>
              溝底の 水流るるや 寒寒と
               枇杷(びわ)もう花芽(かが) 花待つらむ 来春まで
                早乙女花(さおとめかずら)* 時知らずや 花芽 一杯
                                  (*この葛の花期は晩夏初秋)
              匂わねど 銀木犀(ぎんもくせい)や 花盛り
            プラタナス 葉散り 実落ちて 幹斑(まだら)
             〔プラタナスの〕 幹 古きは白茶 新しきは白緑 〔の斑なり〕
              紅葉 甘美に匂いぬ 常緑影
              見つけたり水仙の花芽(かが) 剣葉蔭
                      鴨脚樹(いちょう) 青葉のまま散る山辺 哀
                銀杏(ぎんなん)の 転がらぬ 路こそ 侘し
                 山藤の莢 垂れおりぬ 枯れ葉色
                               平成29年11月22日
                                       <9首>
           冬雨上がり 雲隠りの日 ハレーション
            額紫陽花 夜霜降りおり 暗紅葉
             冬空の 鈍色こそや 鬱の色
                枯れ尾花 頭(こうべ)地に垂れ 秋の今際(いまわ)
             冬日差しぬ 縁側誰(た)も居ぬ 猫も居ぬ
           物の怪(ものけ)も 息潜めるや 冬の鬱 
            昼下がり  もう明りの付きぬ 冬疎まし
             大犬蓼(おおいぬたで) 白小花 次々 冬の庭
            白小花 黒紫の実 大犬蓼
                                平成29年11月23日
                                        <18首>
               菫 菫色に咲きぬ 冬一輪
                 蒲公英(たんぽぽ)や ロゼット〔/根生葉〕 広げぬ 冬日
               蒲公英二輪 寄り添いぬ 冬の路傍
            尾花枯れ 溝底に 嫩葉(わかば) 酢漿草(はなかたばみ)の
            黄花マーガレット 寒風に揺れぬ 明ら 明ら
               八つ手 芙蓉 酢漿草(かたばみ) 青々 半日影
                落ち葉寄せ 焚火の煙(えん)見ぬ 久しけり
               整地され 消えり野菜畑 草叢も
               アディアンタム 勢い増せり 冬の空
             額紫陽花 枯れ木となるも 芽生えあり
              姫椿 紅 艶やか 夕明かり
                   紅(くれない)の姫様 咲き継 姫椿
              姫椿 紅 白 扱き混ぜ 庭の綾
           柿枯れ木 散るとも散らぬ 一葉あり
            シクラメン 篝火花(かがりびはな)の 名づけ 実(げ)に
             八つ手 白小花散し 打ち上げ花火
              日傾く 小春日和の 散歩路 
                                 平成29年11月24日    
                                        <15首>
             柚子(ゆず) 黄金色に映えぬ 初冬の朝
               笑顔なり お多福南天 朝日影
                寒気ばかり 紅葉黄葉 無残な姿
             天空晴れ 冷気立ち籠む 地歩みぬ
             音も無く 落葉 鴨脚樹(いちょう)の鴨脚状葉
             鴨脚樹 葉の大きや 何の兆
              今 霜月 この寒冷さや 睦月なり
             初冬にや 早(はや) シクラメンの花* 煌々と
                               (*シクラメン咲くは 春)
              彼方此方に 篝火(かがりび)焚きぬ シクラメン
             豚の饅頭* なんて無粋な名づけ〔だこと〕  
                              (* シクラメンの別称)
              シクラメン 地下茎丸々 大きな塊茎
                     頷けど やはり無粋な 名付け哉 
                 花よりも 豚には団子(/饅頭)や シクラメンの
                              平成29年11月25日
                                    <10首>
                  更地 荒れ野となりて 寒風駆け 
               ゼラニュウム 門扉飾りぬ 冬の燃え
               通り抜け 紅葉のトンネル 約 3尺(1メートル)
                萌黄葉と紅葉の綾 紅葉織
                      躑躅 (つつじ) 植え込みの奥 忘れ咲き
               待ちおりし 小春日和も 微風 冷たく
                辿り着きぬ ベンチに寛ぐ 小春日和
                  松毬(まつかさ)や 団栗より多き この初冬 
                楽しみも刈り取られけり 刈萱(かるかや)野   
                  白銀の綿毛の波消えぬ 刈萱の
                                     平成29年11月26日
                                             <13首>
              草木伐られ 我(あ)が庭 すっきり 片側まだ
                   蔦払わるる 黒黒熟しぬ 実も
                    草草掃われ 赤き実ひょ〔っ〕こり 万両の
                     見渡せば 小庭も 広く 草木刈り
                 辺り一帯 初冬の黄昏 静寂あり
                       茱萸(ぐみ)見つけり 梅の樹下 草掃い
            刈り取られぬ 実生えの 茱萸ぞ 哀れなり
               整地され 茱萸他の草木も 姿亡く
                     葉ばかりの実見ぬや 茱萸であらぬとも
                 今年こそ と想いつ会えぬ 茱萸の実かな
                  フェンス側 実青きまま 刈り取られるる
                  何もかも 人為の定めと 諦観せり
                あっと云う間 濃藍の宵 唯 三日月
                               平成29年11月 27日
                                      <11首>
              縁紅の 白花 姫椿 いと愛らし
               銀杏(ぎんなん)も 銀杏(いちょう)も見ぬ 山辺寂し
              お多福南天 真っ赤に葉 染め 何(な)恥じらう
                 日向いの お多福南天 紅葉燃え
            裏山や 黄葉 橙葉 紅葉なくも
              葉落ちぬ 枯木に黒茶実 鈴生り
               虎杖(いたどり)の 枯れ姿や 崖の賑わい
                       風に吹かれ 枯れ葉転びぬ 我(あ)踏ん張りぬ
                枯れ木から 飛び立ちぬ 烏 柿咥え
                  後(あと)3っつ 柿の実 枯れ木に残りおり
                                  平成29年11月28日
                                          <15首>
            紅娘(てんとうむし)落葉掃き寄せ 不図見つけり
             落ち紅葉 紅娘のベッド哉
              何時見ても 姿愛らし 紅娘
            ぴょ~んと 跳ね飛び去る影や 飛蝗(ばった)かや
              負飛蝗(おんぶばった)の 雄らし姿 雌や何処
                 負飛蝗 雄独り 雌に見(まみ)えずや
            雄 雌に見(まみ)えぬ間に 枯れ葉色
             居間へ飛び込み 飛び回りぬ 雀二羽
                        - 去年の春 毎日のように居間へ飛び込み
                           飛び回った 子雀を思い出しつ
              居間へ飛び入り 彼方此方 ぶっつかる 子雀あり
                 飛び回りぶっつかるも 子雀 外へ出ぬ
              外へ出ず 一夜お泊りの 子雀よ
               我(あ)が庵や 雀のお宿 ならなくに
                次の朝 大きな羽音 次の間に
                親雀 お迎えに来ぬ 帰らぬ子(雀)を
                 窓外へ 小さき(小雀)が飛び出で 後 大き(親雀)が
            やんちゃな子(雀) 冒険好きなの? 親泣かせ
                               平成29年11月29日
                                      <10首>
             落ち葉寄せ 枯れ葉拾いぬ 初冬の庭
                  引っこ抜けば 枯草の実 くっつきぬ
                  くっつき虫 毟(むし)り取るのも 庭仕事
                     我もまた* 秋草の実のキャリヤー(運び屋)に
                                 (*普通、猪など山に棲む動物)
               拾い集めし カラフルな落葉 もう 枯れ色に
                思い出づ 秋や 遠くになりにけり
           此方黄葉 彼方紅葉 鴨脚樹(いちょう)と楓
                 鴨脚樹 黄葉 落葉 花莚(はなむしろ)
                小庵 昨夜(きぞ)の訪れ 椿象(かめむし)らし
             今宵見ぬ 椿象 何処へ行ったやら
                                   平成29年11月30日
                                         <30首>
             ほっこりせり 小春日和の 今日この頃
                   薄日差す 初冬静か 暮れ行きぬ
             草毟り 2・3日後の 疲れ哉
             日溜まりの 葉蘭はんなり 水遣りに
              花鉢も枯れ果て 寂寂 冬景色
               枇杷の花 もう 盛りなり 冬気色(けしき)
                 冬草や 青青繁れり 小春日和
                                - 新築工事中を詠んで
                  槌音や 高く響くや 小春日和
                姫椿 落ちて花びら 重ねの美
                 君が代蘭 剣状葉 鋭く 手広げぬ   
                路の上 枯れ葉踏み締め 初冬を行く
                     葉牡丹の鉢に出会えり 初春近し
                     遠望や 悉皆(しっかい)冬霞 霞籠む
              紅葉(もみじ)蔭 落葉敷き詰め 紅毛氈*
                                (*緋毛氈を捩(もじ)って)
                鯉泳ぐ 水面(みなも)に紅葉(もみじ)葉 一つ 二
                      雪柳 葉 黄橙色 初冬の花
             蟹仙人掌(かにさぼてん) 紅(くれない)に燃ゆ 冬空に
                               平成29年12月1日
                                      <10首>
            小春日和 過ぎて 寒空戻りけり
               切れ葉野葡萄 一生終えぬ 自然のまま
                 此処までも 鈴懸(すずかけ)の枯葉 大遠征
              整地後 水仙生えぬ 旧地の形見?
            アガパンサス 枯れ 水仙の簇 現るる
            美女桜(びじょざくら) 石垣に独り ”勿忘草(わすれなぐさ)”
              美女桜 忘れないで と忘れ花*
                         (*忘れ花は 返り咲きの花)
           紅紫葉の紫陽花 時めくほどの 艶
            紫陽花下 紫露草 葉葉 青青
            数えれば 水仙の花芽(かが) 此処彼処
                           平成29年12月2日
                                 <7首>
              寒椿 キラキラキララ 庭の隅
          小菊 枝垂れぬ 野放図な 野趣かな
             一重 八重 姫椿や 冬の共演(/嬌艶)
             小春日和 過ぎて 冬季やまっしぐら
              谷川の潺(せせらぎ)縫いぬ 常緑樹
               秋野芥子(あきのげし) 此処にも独り 忘れ花
             黄葉の雫か 黄花 蒲公英(たんぽぽ)似の
                               平成29年12月3日
                                       <13首>
              輝きぬ 冬の陽光 冬の庭
               我(あ)が庭も 紅葉したり お多福南天
             黄葉は 萩 鴨脚樹(いちょう)に 雪柳
              実赤く 光りぬ 南天 万両も
              蒲公英(たんぽぽ)の 丸ぁるい綿毛の儚さよ
           冬菫 閉鎖花枯れり 路傍や寂し
               水光る 流るる溝や 冬光る
                   また戻りぬ 小春日和の 暖かさ
            伐られぬよう 姫椿や 溝に生う
                    姫椿 紅落ち 枯れ葉や彩放つ
               整地され 今は懐かし 乱れ野*かな
                                (*野菜畑と不用品ごちゃまぜの地)
               裏山は 紅葉なれど 冬ざるる
                  日向の 姫椿の紅  さんざめきぬ
                           平成29年12月4日
                                  <13首>
                明明(あかあかと 燃え続く 紅葉 何の樹か
                   眠りから醒めたや 草木 冬暁
                 枯れ芒 薙(な)ぎらるる下に 青草萌え
                   枯れ園に 早 芽生えあり 冬麗ら
                     枯れ葎 荒涼なるは 冬の情
                       青木の実 まだ青きも もう赤きも
                      青きの実 花見た折は 何時の頃
                    彩雲 柵引く 朝(あした) 冬来たる
                    冬萌えは 蓬や菊や はたまた何(な)ぞ
                   野路菊と見しや 小菊の里帰り*  
                           (*野路菊は小菊の原種 小菊は園芸品種
                              山辺へ逸出したものの 花壇が恋しく
                                       なったのか)
            漸うに 明るぬる 山里 茜雲
             枯れ菊の鉢並びおり 塀の外
                                  平成29年12月5日
                                          <17首>
              枯れ草 青草の混生 道すがら
                 源平小菊 花葉 悉皆 霜枯れぬ
                        霜枯れに 源平小菊や 暗紅色
                  寒風に戦ぐ 枯れ草 狗尾草(えのころぐさ)
               残菊や 鉄柵より顔出し こんにちは
                        寒風背に 身縮かむ 散歩道
                 もう実の一つだに 無き 柿の枯木
                   実 三つ 残りて いずれや 木守柿(こもりがき)
               枯れ葉散る 静心なく 枯れ葉散る
             ネリネ 桃花色 其処だけ 春模様
                      苔の上 紅葉(もみじ)の黄葉 降り注ぎぬ
                     朝焼けの光る坂路 冬の路
                 シクラメン 紅色 縮かむ 師走かな
               柚子(ゆず)の実の 黄金に光るる 朝の庭
                 柚子 蜜柑 花より実の 美(うま)し哉
                  師走哉 冷気 ひたひた 迫り来ぬ
                  一時間 ずらして起床 冬時間
                 ぐずぐずと ベッドに過ごす 暖かさ
                           平成29年12月6日
                                    <12首>
             紫陽花の 冬芽 膨らみ来 極月(げつごく)かな
              紫陽花の嫩芽(どんが)) 開きぬ 花の如
                  姫椿 白花落ち 紅 咲き継ぐ
           この枯れ葉 何処から 飛び来るやら
                10メートルも 影法師伸び伸ぶ  冬日影
              吹き寄せられ 枯れ葉に紅葉の混ざり織り
           桜木の 枝枝(ええ)一杯の 冬芽かな
               雪柳の紅葉 今ぞ見時なり
             彩雲や 茜から陽色 冬の朝  
              陽光に 春かとぞ思う 窓の外
                   光る枯木 冬の花なり 朝日差し
                穏やかや 無風無音の 冬朝
                               平成29年12月7日
                                        <7首>
           野茨(のいばら) の茎一点 実の紅き
            野茨に 絡む 枯れ蔓 実房垂れ
               枯れ枝に 鈴珠の実 鈴懸の樹
          黄花マーガレット こんもり咲きおり 冬花壇
         葉牡丹の 大小並びぬ 師走かな
             枯れ菫 葉株 点点 黄枯れ色
           莢割れぬ 葉まだ青き 冬菫
                            平成29年12月8日
                                      <11首>
           降らなくも 日中 雨備(もよ)いの冬日
             漸うに 晴るるども 冬季冷気 厳し
              冬晴れや いざ出掛けなむ 何方(いずかた)へ
                          冬晴れや さあ出掛けましょ でも何処へ
           栗より 甘き南瓜 野菜超え
            白金の銀杏(いちょう) 一葉 風に舞う
                                -落葉を見つつ 昔日を想い出しつ
                  手擦りつ 焔(ほのお)見詰める 落葉焚き
                  逃げる子を 追いかける煙 落ち葉焚き
                  煙払い ぬっと顔出ず 落ち葉焚き
                      焼き芋の匂い香ばし 落ち葉焚き
                あっ 熱っぅ! 焼き芋転がし 子等笑顔
               取り出しぬ 焚火の焼き芋 真っ黒焦げ
                                 平成29年12月9日
                                     <13日>
             溝流る 紅葉の小舟 何方(いずかた)へ
            枯れ葎 背高泡立ち草の 小さく咲き
             秋明菊 (しゅうめいぎく) 忘れ花あり  冬の園
               蒲公英(たんぽぽ)の ロゼット(根生葉) 一株 猶 一つ
          冬麗ら 遠回りの 小逍遥
                       熟し柚子 そのまま自然へ還るらし
              猫日和 黒と茶斑 出会いたり
                   樫落葉 敷き詰め山辺 冬穏やか
                       枯れ並木 秋には  何の並木かや
                   もう一匹 長毛の猫が 足許に
             飛行船のよ〔う〕な 雲ぽ〔っ〕かり 冬の空
               雲光る 常緑樹光る 冬寒し
                           平成29年12月10日
                                  <10首>
             寒空に 白月残れり 明(あけ)烏         
              寒空や  パンジー震え 我(あ)も震え
                枯れ葎 黄色の小さきの 忘れ花
                            枯れ葎 黄花ひょっこり 時忘れ
           北風の吹き荒(すさ)ぶ 路 姫椿
                    夜半の氷雨 苔には 慈雨や 青青かな
                         苔点点 ふわり こんもり 路の縁(へり)
          枯れ薄 紫がちたる 花穂揺れ
              枯れ薄 まだ花穂 垂るる 極月に
                     蔓桔梗 小さく しっかり 葉葉重ね
              石段に 紅葉落葉 三つ 二つ 
                 薔薇枯れ枝(え) 真紅二輪 寒天に 
               水仙の蕾の膨らみ もう直ぐね
                  水涸るる 溝の紅葉 舞い上がり
         額紫陽花 紅葉 紫葉 霜変化(へんげ)
               枯れ薄 霜焼けの花穂 忘れ花
             常緑に 姫椿の大輪 はんなりと
                路の縁 犇(ひし)めく 冬芽 蛍袋(ほたるぶくろ)
         真紅のダリア 一輪佇む 冬花壇
            柿四つ 枯れ木に残りぬ 冬茜
                      あっ 小鳥! ならぬ 落葉の舞い姿
           万年青(おもと)の実 黄緋に結びぬ 時わかず
                               平成29年12月12日
                                      <10首>
           パンジーや パアッと 開きぬ 冬花壇
             越冬を出来るや パンジー 寒空に
                       溝底より 生いたり 笹百合独りなり 
               蔦葉海蘭(つたばうんらん) アントシアン濃く 緑も濃
            指の先 冷たき 赤き 手袋無き
                  冷え冷えと 冴えるる日蔭 日差しあり
                 掌状葉 傾げ 験の証拠(げんのしょうこ)や南向き
             冬日差し  延々と延ぶ  花瓶まで
           日差し 濃し 寒波襲来 その中で
                        何故に 寒波襲う日 日差し濃き
                              平成29年12月13日
                                     <10首>
            蔦葉海蘭(つたばうんらん) 枯れぬ間もなく 冬芽萌え
            大黄花酢漿草(おおきばなかたばみ) 花びら捲きて 冬忍ぶ
                冬日差し カレンダーの仔猫 眩し気に
                    布花に 差す冬日の 艶なること
           寒気の朝 ロゼット見つけり 見覚えある
            このロゼット 酸葉(すいば)のね と庭に問い
                   酸葉(すいば) 姫酸葉 どちらも 春の情
                夕暮れに 濃く沈沈 冬の樹木
          絶えば聞こえ 聞こえば絶ゆる  北風よ
              雨戸打つ 北風の音の 冷たさよ
                              平成29年12月14日
                                    <8日>
            枝払われ 下草 紅葉 秋の名残り
              何とせむ 手の冷たきを  寒椿 
           庭へ出で 日向 ほっこり日向ぼっこ
                       黒猫の 丸くのんびり 日向ぼこ
                日向ぼこ 老女と老猫 それぞれに
            南天の赤き実 誘うや 小鳥の影
                     鈍色の雲 黄金の夕陽 冬寒し
                                  平成29年12月15日
                                       <12首>
               忘れ花 揺れぬ 尾花に秋野芥子
              荒寥たる谷間 潺(せせらぎ)の木霊(こだま)
            枯れ葉敷く 山辺に小菊の賑わいあり
                 昨年(こぞ)の冬 この溝 草草 賑わいぬ
              衝羽根空木(つくばねうつぎ) 残り花彼方此方 夕日映え
           稜線 シルエット 冬日 残照
              石蕗(つわぶき) 黄花爛漫 葉葉艶なり
           樫の葉葉 黄橙に燃えぬ 秋終焉
                    今冬は 団栗不作 見ぬ寂し
                   枯れ落ち葉 転(まろ)びつ 影法師と鬼ごっこ
                  冬薔薇(ふゆそうび) 枯れ姿の幽霊咲き
                  寒風を 駆け抜ける童 真っ赤な頬っぺ
                            平成29年12月16日
                                  <14首>
              しんしんと 冷え込む 冬野 氷雨備(もよ)い
                  幾年もかくも 咲き継ぐ 小菊かな
                            打ち続く 寒気 咲き継ぐ 小菊かな
                    耐え忍ぶ 功も覚えず 咲く 小菊
                  ひたすらに 華やぐ小菊  いと哀れ
                                - TVの映像を見つつ
            野天風呂 野猿(やえん) 黙然(もくねん) 雪薄ら
                     南瓜 食(は)む 冬至の前も 冬至後も
               濃藍の 空冴え冴えと 濃藍なり
            月や何方(いずち) 濃藍の空 奥深く
                 昨年(こぞ)よりも 水仙の簇(むら)  弥(いよ)よ 増し
                        今はもや 水仙咲くを 待つばかり
                  軒の下 渋柿吊るす 秋 昔
                   渋柿の 皮剥ぐ指先 一寸痺れ
                      南天や 小鳥は来ずや 実 赤赤
                             平成29年12月17日
                                    <8首>
          啄ばまれぬ 南天の実や 渋なりや
             陽(ひ)翳(かげ)れば 枯園の 草草 侘しけれ
                    鈍色の叢雲(むらくも) 陽出で 且 翳りぬ
          陽翳れば 赤き実侘し 侘南天*(わびなんてん)
                                   (* 侘桜(わびさくら)を捩って)
           冬芽吹く 梅の梢や  夕日影
              葛(かずら)の実 枯茶色になるも 梅の枝(え)に
                       縮かみぬ  寒波や続き 身も心も   
           引き籠りぬ 今冬の寒気に 耐えかねて
                 冬晴れにも 身の鬱陶しきを 嘆き節
                              平成29年12月18日
                                    <12首>
                千切れ雲 淡藍の空 冬麗ら
                     冷気光る 窓外の冬園 寒椿
                      寒椿と見しや 照葉の姫椿
                 枯れ果てぬ 街路樹の冬ぞ 侘しけれ
               枯園や続く 山里の 侘しさよ
             薄曇り 福良雀や 梅の枝
                     枝移り 枯れ枝(え)の間(はざま)を 福良雀
                 枝枝(ええ)払われ ほんに寂しげ 樫の樹かな
            裏返り 縮かむぬ 蓬(よもぎ)の枯れ風姿
                柚子の果実 姫椿の花 冬日映え
                   冬の暮れ ランプ 灯ぶ チロリアン・ランプ
                 〔冷気〕遮られ 汗かく〔ビニール〕ハウス 何(な)の野菜
                                   平成29年12月19日
                                            <11首>
           伐採されり 枇杷の樹 独り 残りおり
            樹も草も 消えたる 山辺 寂寥
               葉葉 萎れ 蕾 花見ぬ 枇杷 哀れ
                  冬いつも 枇杷の花葉や 艶なりし
             皆伐られ 枇杷の樹  誰(た)をか 友にせむ
             枇杷の樹や 侘歌(わびうた) 詠まむ 友亡くば
                  独りぼ〔っ〕ち 枇杷も人も  思い同じや
                       何事も ポジティヴ思考で 枇杷も人も
            独り残り ゆったりのんびり 枇杷の風情
                    伐採され 涼寂なるも 悠々なり
                とは云うものの 勢い猛(いきおいもう)は 何時に
                              平成29年12月20日
                                       <11首>
             ふと見れば 蝉(せみ)の抜け殻 姫椿
               引っ掛かリぬ 蝉の抜け殻 今日〔けふ〕までも
                  一つかと思えば も〔う〕一つ〔抜け殻〕 要黐(かなめもち)に
                   夫々に 樹選びて  脱皮したるや
                脱皮の朝 蝉の見た夏 どんな世や
          冬までも 残るる抜け殻 主知るや
           窓の外 日差し強くも 風寒く
               枯れ葉下 蔦葉海蘭(つたばうんらん) 薄紫の
                    熟れ頃の 南天の実 小鳥の来ぬ 何故
           山眠る 山里の 唯 静寂
                山眠る 明烏の声 声高く 
                                  平成29年12月21日
                                         <9首>
                冬薔薇(ふゆそうび) 枯れても薔薇や 薔薇らしき
             密に生う 双葉愛らし 何の花
               人影無き 小公園や 冬の虚無
                       窓越しの 日差しほっこり 冬麗ら
              霞籠む 冬山一帯 朦朧画
                 ハート形の葉 辺り辺りに 山の辺の
                    もしかして 匂い菫*と 時めきぬ
                    豌豆の蔓 白き蝶花 舞い舞いぬ        
                路へ這う 夏蔦 今や 枯れ蔦に
                            平成29年12月22日
                                 <12首>
               路の縁 枯れ狗尾草(えのころぐさ) 実(げ)に 冬気色
           我(あ)が庭も うらぶれ行きぬ 冬厳し
               レジ袋 膨らみおりぬ 年の暮れ
                  慌し気 レジ袋手に 年の暮れ
               烏飛ぶ も 慌し気な年の暮れ
           我独り ゆっくりゆくり と 年の暮れ
             冬至の日 光穏やか 最短の日
                  無風無音 光穏やか 冬至哉
                   南瓜や 柚子や 何処に 冬至の日
          猫のんびり 転寝(うたたね)しおり 冬至の縁〔側〕
               何事もなかく 茜に沈みぬ 冬至の夕
                                 平成29年12月23日
                                      <14首>
             散歩日和 稀には有りなり 冬麗ら
               姫椿 咲き匂う 路 折り返し
                    玄関の〔Xmas〕リース 葉牡丹見上げおり
                  ジングル・ベル 聞こえぬ 街角 心寂し
               緑生う庭 コンクリートに化しぬ 噫
                         枯れ上がりぬ 蓬の茎や 青葉まま
           水流る 光流るる 谷の冬
                  猛々し葛(くず)なき後や 枯れ木谷
                   路傍の枯れ草 ドライ・フラワー 冬のアート
             前栽の 植込みほっこり 日向ぼっこり
           柚子(ゆず)落ちぬとも 輝きぬ 柚子色に
                      枯れ葉に追い風 我(あ)に向かい風 寒(さぶ)っ
                     ぽ[っ]かり く[っ]キリ 極月の衝き 久し振り
            〔年の瀬の〕 大掃除も 小掃除となりぬ 老女には
              まぁ 立派 大絵皿のよ〔う〕な 葉牡丹哉
                  辺り辺り 葉牡丹笑う 年の瀬かな
                   北風の吹き敷きぬ 花弁(はなびら) 姫椿
             足音も せかせかしき 年の瀬かな
               星や在らむ 唯 三日月の極月かな
                                 平成29年12月25日
                                     <17首>
                           - 昨日のTVプログラム(秘境めぐり)を
                                     思い出しつ
                木漏れ日を 縫って登りぬ 山路哉
            山路に 散り敷く紅葉葉 照り映えぬ
                   谷川の 白く光りぬ 碧き水 
                      薄曇り 枯れ木の山路 残紅葉*
                                   (*残菊を捩って)
                岩に割れ 泡立つ白波 谷川の
                         硫黄岩 塩岩 早水 渓谷 幽谷
           秋野芥子 綿毛ポンポン 冬日影
              鈍色の 雲居の間より 夕日映え      
                散歩道 北風荒(すさ)ぶ あぁ 寒(さむ)!
                 冬麗ら 遠回りせむ いつものコース
                    冬散歩 いつものベンチ 落ち葉敷
            遠回り 辿るる野辺や 今枯れ野              
               この野辺や 四季の移ろい 写しおり
                  水仙の 咲き初む風姿や 寒の空
                 水仙や 咲き初みて 花やぎぬ今
                   水仙の花 華やぎぬ 冬の華
            灯の窓辺 冬空 人の影
              濃藍に 月影冴え冴え 極月かな
                              平成29年12月26日
                                      <9首>
        万両の実 見つけり 枇杷の樹下
          万両実 成るは 我(あ)が庭ばかりなり
                我(あ)が財布 空っぽ 一両だになきに
          枯れ鴨脚樹(いちょう)葉 掻き集め 枯れ樹見上げぬ
             枯れ草掻き 新年の芽生え 目出度き哉
                  庭掃除 冬茜や 差し込みぬ
                     枯れ葛 扱き抜きて 腰痛 年の暮れ 
               浸り入る 穏やかに過ぐるる 年の瀬に
                夕闇の迫り来庭に 北風 侘        
                  夕闇や 窓窓に灯 年の暮れ
                               平成29年12月27日
                                    <10首>
              春よ来い 待つや 繁縷(はこべら) 可憐な風姿
           あな 珍し 繁縷 可憐な 忘れ花
              繁縷の咲きぬるる 今 極月なり
               繁縷知るや 初春 後(あと)五日
                   橋の端 繁縷の花 花やぎぬ
                  鶏(にわとり)を  知らで繁縷 白き花
              今はもや 鶏も知らずや 繁縷を
                            平成29年12月28日
                                  <8首>
         冬麗ら 浮かれて萌えたや 万年草
            万年草 若草色燃ゆ 其処や春
               万年草 冬芽の小さき 萌えに萌え
                   風花の舞いそ〔う〕な朝の 冷たさよ
        一斉に飛び立ちぬ 福良雀(ふくらすずめ) 屋根の上
            戻り来て 啄みぬ せっせと 福良雀
             枯れ庭に 餌(え)ありや と問い掛けぬ
               餌(え)狙う 電線の雀 武蔵(むさし)の鵙(もず)図*
                                 (*枯木鳴鵙図 宮本武蔵)
          水仙咲く 此処彼処 崖 花壇
                鉢 花壇 プリムラ凍えつう 春待つらむ
              建材の蔭 咲き出ず 水仙香しき
                      光る冬海 浮かぶ船影 一つ三つ
              長き尾の 小鳥 枯れ木に 冬閑散 
                 刈り込まれ 杉の木立や 初春催(もよ)い
                  慌ただしきも 鎮みたり 大年前(おおとしまえ)
              チッ 驚き飛び出す 雀 冬木立
               絶え間なく 戦ぐ 枯草 冬景色
                    霜枯れ時 パンジーの咲く 痛々し
                                     平成29年12月30日
                                      <13首>
                  冬菜もや 縮みおりぬ 被い(ビニール)無くば
              囲われて 冬菜 のびのび 春気分
                          冬草の枯れぬ(ず) 枯れぬ(た)や 路の縁
                 何処も彼処(どこもかも)も 冬 木となりぬ 侘しき季
                  どの犬にせむ 戌年の賀状絵に
            冬枯れに 庭の草木も 無言なり
                        虫も 小鳥も 何方へ 無音なり
                   冬木の実 独り 残れり 腐(くた)り色
                谷間は 潺(せせらぎ) 高し 冬木立
                   遠く近く 響く足音 慌し
                              平成29年12月31日
                                     <13首>
           シクラメン 出窓のむこうで 日向ぼこ
            山寂寂 紅葉消え果て 枯れ木立
                 枯れ木立 枯れ木も 山の賑わいや
                  蟹仙人掌(かにさぼてん) 淡紅白の花芽 ふっくらと
                    我(あ)が 仙人掌 蕾の固き 花遠き
          椿 つんつん蕾 花 暫し〔待つらむ〕 
            枯れ薄 側(そば)に 嫩葉の蔓桔梗
                  桜木の 目にも鮮やか 冬芽萌え
                     近づけば 冬芽盛んな 枯れ木立
             何の樹の実 黒く熟れおり 啄み時よ
           逆光から出 福良雀(ふくらすずめ)等 鬼ごっこ
                 何方(いずかた) 独り居の枇杷や 消え去りぬ
                        友も亡く 己もなく 枇杷 哀悼 
                              平成30年1月1日
                                   <25首>
                        ー 大晦日を想い出しつ
             反響(こだま)す 足音も無く 大晦日 
              陽光に 大晦日の 朝 晴れやかに
                   慌しさも消えぬ 夜空や 除夜の鐘
                        百八つ 聞かぬ大晦日 
           林檎の対 紅白に見立て 初春飾り
             門松も 七五三(しめ)飾りも無く リースだけ
           初春を いつものメニューで 祝い膳
             新年の元旦 変わらぬ哉 大晦日と
               去年今年(こぞことし) 移ろいぬるも 移ろわぬ
                    去年今年 南天の赤実 そのまま
                 小公園 上りて 初日〔の出〕 拝まむと
                      もう上がりし 初春の日の出 遅かりし
           初春の 目出度さや ほどほどが好し
                初春や 平穏無事こそ 目出たけれ
                         穏やかな 初春やこそ 有り難き
                ほどほどの 初春楽し 老いぬれば
           元旦の朝 碧空の 輝きぬ
              初御空(はつみそら) どこまでも 青く神神し
                  元朝(がんちょう)の山里 静か 清清(すがすが)し
           祝い膳 なく 雑煮箸 ぽつねんと
               せめてもと 雑煮箸遣いぬ いつもの食事
                         - 今年からお年賀状は一月元旦にと
                 宛名書きつ 如何にありや と 君想う
                  お年賀状 年に一度の 近況報告
                     賀状で知る 君が身の上 老いの波
                             平成30年1月2日
                                   <8首>
           初夢や 富士や 鷹や さばかりは
                 初夢も さばかりのものと 嘆息し
                     初夢や それほどにも 見ぬが好し
             朝日拝みぬ 正月二日の初詣
               ゆっくりと過ぐるや 正月三が日
                  お正月 スローテンポに過ぐ 不思議
                 初春の気分 慌てず ゆ〔っ〕たり哉
             寒椿 日和のありぬ 明けの春
                 初春や 瑞光(ずいこう)匂う 寒椿
                                           平成20年1月3日
                                       <10首>
                 初春を祝うが如 初雪降りぬ
             御降り*(おさがり)を被りつ ポストへ年賀状
                          (*御降りは正月三日間に降る雪や雨)
             水仙に御降り宿りぬ 束の間に
                御降りに 正月三日や薄化粧
                 晴れやか 青空輝く 御降り 過ぎ
               何程か 行き先の良き 御降り哉
                  行き先の 宜しき兆しの 御降り哉 
                正月の 静寂さにも さんざめき
               初烏 来(き)鳴き 初春の寿か
             瑞光(ずいこう)に 佇みぬ 水仙の在り
                            平成30年1月4日
                                  <12首>
                       - 富士山のTV映像を見て 
                             母の思い出を想い出しつ
          六角杖 納戸で見つけり 母に問いぬ
             富士登山 女学校の時のよ と母笑いぬ
              六根清浄(ろっこんしょうじょう) 唱え登りたり 母笑顔
               お鏡餅のよ〔う〕な白雲 烏過ぎ
                            ー 昔日のお正月を想い出しつ
            お餅焼き 香し懐かし お正月  
                 火鉢に網 炭火赤赤 お餅焼き
                  手を翳しつ お餅焼けるを見詰めたり
           ぷう~と膨らむ お餅や 福笑い
             熱っちっち 焼けたお餅を お手玉し
                   お箸使いぬ 砂糖醤油に お餅を浸け
               頬ばれば 焼き餅 熱き 外は雪
                                平成30年1月5日
                                       <7首>
             小雨降る その分〔ぶ〕の小さき 暖かさ
                     小雨降る その度(たび)ごとの暖かさ
                 白露の凍るる 梅の枝 冬芽あり
                   外出を想えど 寒増す 寒の入り
             寒の入り  寒雀 飛び去りぬ 寒天へ 
               寒の入り 老女と老猫 炬燵守(こたつも)り
                小雪降る 小菊の花弁に 淡紅の
                            平成30年1月6日
                                 <9日>
              小雨とや 霙(みぞれ)小雪の 寒の入り
                  朝曇り 心配すな と古人(いにしえびと)
                   晴れるれど 風の冷たき 寒の入り
                    枯れ葉絶え なくなりる哉 寒の谷間
              枯れ蔓を 透かし見ゆるは 常緑  
                石垣の上の水仙 真白の微笑
                  黒々と 濃緑の木立 冬日背に
                      寒の入り 黒藍の宵 まだ六時
                 唯 街灯 煌々たる 寒の入り
                                平成30年1月7日
                                     <13首>
           容赦なく 迫り来たりぬ 寒の入り
            暖房の合わぬ 我(あ)が身や 寒の入り
              寒の入り 凍るるは 我(あ)が房(へや) 我が身かな
                寒の入り 〔電子〕辞書も 凍るるや 文字の出ぬ
              寒の入り 辞書炬燵入り 温もりを
                         暖房は 寒気呼び込み くしゃみばかり 
               石垣のカラー(海芋)の芽生え 寒中
                  さ迷えるジグザグの 枯れ野薔薇 寒の入り
                    残りおり 名知らぬ小花 寒の入り
                     潰れおり 蜜柑路上に 誰の所作
               姫椿 紅白に揃いぬ 山の辺や
               木蓮の 芽生えの枝 寒雀
                 万年青(おもと)の実 尚 橙朱色 寒中に
                               平成30年1月8日
                                  <16首>
                   寒中 闇夜や 無音の世〔よ/夜〕となりぬ  
               闇夜深み 犬の遠吠え 寒中
                                 -寒椿を見 侘助を想い出しつ       
            素朴 凛々し これが侘助(わびすけ)) 名にし負う
                 お茶花に 侘助も美(よ)しと 聞きおりし
                     侘助の咲ける前栽 今 何処
                       更地 新築 あの侘助や 姿なく
              身の動き 鈍色になりけり 寒中
                  樹懶(なまけもの)の動きに似たり 寒中の我(あ)
                      鈍き日の 短きことよ 寒中
                 はや昼下がり 思う間もなく 宵の冬
                      彩雲や 光色々 寒茜
                          雨音の絶えるることなき 冬の夜半(よは)
                天気予報 一日後れの 冬雨哉
                 雨音の 低く低き小夜  寒中
                    何時までや 続く 雨音 冬の小夜
                                  平成30年1月19日
                                        <12首>
              薄曇り 山から  風花舞い降りぬ             
                 寒空に 羽撃(はばた)き 且つ 来 鳩の群れ
                   数えれば 鳩 十一羽 冬の路
                              一 二  一 二 首振り 冬路 鳩の徒歩
                 枯れ木に残り葉 独り 鳩とぞ 見ゆ
                   鳩の群寒空へ 羽撃き去りぬ 編隊飛行
                     日向いの水仙 笑いぬ 寒中
              ロゼットや 淡紅色に染まりぬ 霜枯れに
                   寒風に煽られ 枯れ葉の旋毛風(つむじかぜ)
                       鈴懸の実 独り ころり 冬路上
               刈られても 姫椿や 紅 紅 紅
                             松葉敷 寒雀啄む 餌(え)やあるや
                             平成30年1月10日
                                  <11首>
           冬籠り  鈍き事哉 何事も
                 冬籠り 何かせむとて 何もせむ
               唯 無為に 過ごしおりけり 冬籠り
              寒風なくば 光り のどけき 春模様
                      そぼ降りぬ 小雨の少し 暖かさ
                   冬の雨 雨粒ほどの暖かさ
              冬日和 一日だけの リラックス(/緩み哉)
               山眠る 山里も眠る 梅蕾ぬ
                 梅の枝 僅か綻ぶ 蕾かな
               カァー カァ 山辺を指しぬ 冬茜
                       チュン チュッ 一斉冬空へ 一羽残りぬ
                              平成30年1月11日
                                    <9首>
               溝流る 氷るるが如 寒朝
                  何もかも 凍るるが如 寒の庭
                    指先の凍るる 朝(あした)塵(ごみ)袋 
                                ― 上がり正月を想い出しつ
               破顔一笑  御下がりの 干し柿手に
                 笑顔かな 干し柿 食みぬ 童かな
                     干し柿の食み型 眺む 正月送り 
               鏡餅 欠餅(かきもち)となりぬ 松納め
                      欠き餅の 歪な形 またおかし
                                    平成30年1月12日
                                          <9首>
             願わくば 寒風 春風に 梅見待つ身
                冬日和 実南天光る 赤 赤と
                   寒風に蓑虫 震るる 枯れ葉見ゆ
              青空を 見ぬや 水仙 横向き咲き
                       簇(むら)離れ 水仙独り 如何かや
                   水仙に 丸きや 細き 花弁あり
               雲光る 冬園光る 日や落ちる
                 雨水ありや 路じょりじょりの 感触
                   山眠る 春の息吹や まだ遠き
                                 平成30年1月13日
                                       <11首>
           手翳(かざ)し 枯れ木立 踏み入る 冬日影
              冬木立 夕日差し込む 散歩路
                枯れ木立 銀に光るる 日向こう側
           プラタナス 未だ 鈴掛ける 寒中
                         覗きおり 生垣より 万両の朱実
              霜枯れや パンジー 姫椿 哀れあり
                山眠る 微睡む 戦ぐ風
                  頭垂れつ まだ鳥待つや 実南天
                                  - TVの雪景色を見つ
                垂氷(たるひ)*垂る 太きも細きも 軒のした 
                            (* 氷/氷柱(つらら)のこと)
               こんもりと積もるる雪見 蜜柑剥き
                掌(たなごころ) 眺めぬ 今年の運勢は と
                                 平成30年1月14日
                                        <11首> 
                      - ステッカー(告知板) 倒木の恐れあり
                            伐採に御理解をと読める
         苔生しぬ 桜樹の幹に ステッカー
           ステッカー下げられ 桜古樹 哀れ
               ステッカー 除かれ 命拾いの桜古樹
                 出会う度 まだの無事に 安堵せり
           よかったわ 古樹に 涙の我のあり
             ほんとうに よかったわ と古樹(こき)祝い*
                            (* 古稀(こき)祝いと重ねて)
          やはり もう直ぐ 別離の時や 悲哀あり
               見上げれば 梢 それぞれ 萌えに萌え
                 梅の樹苔 桜の古樹の 守り神?
                   桜の古樹 萌え 春待つは 慶事なり
               卯月花見 見事にあらむ 願わくば
                                   平成30年1月15日 
                                         <10首>
            代替わり どんどや措(い)て リース*置く〔/残す〕
                                   (* お正月飾り用のリース)
              新年や これからが始まり どんど焼き
                 どんど焼き 立ち上る 煙 吉兆か
           松納(まつおさめ) 葉牡丹 独り 福笑い
               枯れ花壇 唯 葉牡丹の一人天下
                 立ち上がる 葉茎の太き 葉牡丹かな
                   立ち姿の 葉牡丹おかし 春近し
                   何方(いずかた)の鉢の葉牡丹や 葉を広げぬ
             冴え渡る 犬の遠吠え 凍て夜空
               くお~ん るぅ悲し気な声 何かあらむ
                                  平成30年1月16日    
                                       <19首>
           冬温し 仄か明るき 日差しあり 
                  枯れ草に 若草生い出ず 冬温し
              肢延ばし 背延ばすぬ 猫 冬温し
                  日差し 伸ぶ 炬燵の上の 蜜柑まで
                   冬温し 蜜柑の皮や ぽつねんと
               猫丸丸 ぽかぽか縁側 転寝(うたたね)かな
                 冬温し 雀も 枯れ枝(え)で こっくりこ?
                  整地され 大根畑や 懐かしき
              お大根 突き出ぬ 白き根 青き葉葉
                       軒忍 なんて素朴な乾菜(ほしな)哉
                  絶え間なく 流るる溝底 冬の雨
                      水涸るる 喉渇るる如 溝の底
                石蕗(つわぶき)の 幾重に生いぬ 冬深し
                 冬木立ち 踏み入る人も 影もなく
                       静寂に過ぐるる冬日 薄日差しぬ
             チッ チッチ 冬空過(よ)ぎる小鳥 誰(た)ぞ
              長々と 伸ぶ 影法師 後追う我(あ)
                   山里や 草木眠り 転(うた)た 寥寥(りょうりょう)
                                               平成30年1月17日
                                      <12首>
            目まぐるし 寒 1℃ 一転 暖11℃
                  しとしとと 降る冬雨の 生温し
                     冬雨 生温き 春 夙(まだき)
               霞籠む 山里 夙 春めきぬ
                我(あ)が庭の 樫の樹 生き抜き 幾星霜
                     淡緑の 苔斑に 古樹の幹
               今朝見れば 梅の樹苔の 景見せぬ
                 打ち響く 電動鋸 樹木伐採
                 腐りおり 伐り倒されし 幹 哀れ
                     昨秋の 撓(たわわ)の実房 有終の美(/実)か
                 昨秋は 実三つの 柿の木残りおり
               悲しけり 水仙の独り 残りけり
                                  平成30年1月18日
                                       <14首>
                 絡み織 藤の枯れ蔓 絡み絡み
                      春めきぬ 庭の草木も 我(あ)も亦
                  ガラス窓 温室の如 春めきぬ
               谷間冬木立 続きぬ 奄奄と
             冬空を 織りなす木立 枯れ模様
                笹も枯れ 羊歯(しだ)も枯れるる 白萱も亦
                     草草の 枯れるも 渇れぬ 春探心
             羊歯(しだ)繁し 冬の山辺の半日影
               繁縷(はこべ)に出会いぬ 懐かし 冬の野辺
                 繁縷 懐かし 鶏にあらねども
             飛沫(しぶき) あげ 滔々(とうとう)流るる 冬の川
              もったいな 清流 唯 流れ行きぬ
                     清流の流るる行方 誰(た)に問わむ
               源流へ辿ることなく 春夏秋冬
            石垣や 千草生う哉 草屏風
                                  平成30年1月19日
                                        <8首>
               一周り 八十歩 冬の小公園
                 ベンチの上 枯れ葉 一葉 人影なく
                      岩の上 白萱(ちがや)揺れるる 冬のアート
             眩しき哉 冬日の反射 ガラス窓
                  万両の 猶 垂るる実や 睦月哉
                            万両の 実のまだまだ 赤き真冬
               梅の枝(え)の蕾告ぐるや 春遠からじ       
                  膨らみぬ 梅の小枝に 夕日影
                細波の 流るる溝や きらきらと
                  また伐採 腐り至りし 梅の樹 哀し
                       春を見ぬ 梅の蕾三つ 哀れ
                  黄花酢漿草(かたばみ) 咲き且つ縮かむ 冬厳し
             冬霞 仄か光りぬ 遠見の海
                      寒空に 咲く水仙の 清らかさ 
                葉ばかりの 水仙なれど 夢のあり〔花咲く夢〕
                蕾すら見ぬ 水仙 春待たむ
                     戻り来きたり 水仙の咲く 坂路へ
                   弥よ 増しぬ 水仙の簇 今爛漫
              野辺に咲く 水仙数千 空遠く
                    水仙の咲く 今朝の園 尚寒し
               水仙の水遣り 今朝は 霜を踏み
                        水仙に想いを込めて 水遣りを
                                  平成30年1月21日
                                          <7首>
             雪柳 芽ぐむや 嫩芽 新芽かな
                雪柳 萌黄 萌ぎぬ 春近し
                 窓開ければ 早春(はる)の陽光(ひかり)や 匂い立ちぬ
                       冬日向 猫ら集いて ミーティング
               遠見にも 梅の梢や 膨らかに
            青白き 三日月 睦月 夜半の月
                濃藍の冬空 三日月 朧影
                               平成30年1月22日
                                   <10首>
           今や暖 次週 大寒 如何にせむ
               春やあらむ 庭 枯草の ままなれば
           梅一輪 梢に 日影 春近し
                   あちこちに ミント萌え萌え まだ大寒
            カッ カッ キィ 羽撃(はばた)く 羽音 尉鶲(じょうびたき)?
            庭狭し 枯葉や焚くも 憚(はばか)るる
               よく見れば 青葉残れり 水遣りせむ
                 枯草蔭 覗く赤き実 何の実か
                    犬鬼灯(いぬほおずき) 霜枯れ黒ずむ葉葉 哀れ
           降りつつも はや解け行きぬ 牡丹雪
               しんしんと 雪降り続きぬ しんしんと
                             平成30年1月23日
                                   <9首>
            南天の 葉も赤き実も 雪冠り
             パサッ パサ 響くや 彼方此方(あちこち) 雪垂れ(ゆきしだれ)
               雪垂れ 間歇音や 夜半の庭  
            雪垂れ 物寂しげな 雪の声
                  見あげれば 雲行き怪し 大雪予報
                   小米雪 霙(みぞれ)となりぬ ほっとせり
             三日月の 少し膨らみぬ 睦月末(まつ)
                      幻月の三日月 温き 睦月末
                                 平成30年1月24日
                                       <11首>
                日影すら 冷え冷え 冴えぬ 睦月末(すえ)
              冴え渡る 冷気に包まる 睦月末(まつ)
                   大寒や 終日(終日)ベッドで 緩緩(ゆるゆる)と
            薄氷 煌めく今朝や  大寒なり
                 悴(かじか)みぬ 指  熱き湯に浸す 今朝
                      悴む手 熱きケトル 懐きおり
                  入道雲  今 大寒 仰天せり
                    冬の雷 驚く雀 我も亦
              尉鶲(じょうびたき) 親愛の情や 胸開く
                      胸 赤褐色 鮮やか 尉鶲(じょうびたき)  
                 雀らに 混じり啄む  尉鶲
                   鳥 人を恐れぬ 尉鶲 天真な
                             平成30年1月25日
                                   <12日>
             何方(いずかた)より 渡り来たるや 尉鶲
                 独り旅 渡り来 帰るや 尉鶲
                  尉鶲 シングル・ライフの渡り鳥      
                        (*尉鶲は 冬日本で独りで過ごす渡り鳥)
             尉鶲 群れより 独り過ぐが好き
               独り居こそ 生きる極意や 尉鶲
                 いざ 問わむ 気楽や 寂や 独り居は
           鶯に非ず 梅に尉鶲     
              凍るる日影 唯 南天の 赤実映え
                佇みぬ 猫 冬日向 目を細め
            凍りつきぬ 蛇口 氷(つらら)垂るる今朝
                  凍てつきぬ 蛇口の水や 糸の如
                                平成30年1月26日
                                      <9首>
           午睡の間 雪静けきに 積りたり
                庭の葉葉 皆 雪冠り 3cmも*
                      (*此処神戸東部 山際でも 積雪3cmは 大雪)
           一面雪 水仙 佇みぬ 凛然と
              雪明り 朧に浮かぶ 妖しの景
                 我(あ)が庭や 枯れ草隠し 雪化粧
           薄曇り 彼(あれ)は 雪曇りの空
              風花舞いぬ 雀らも 飛び舞いぬ
                風花舞う 空色の空 春の空
                   薄曇り ゆったり 翔(かけ)り 冬の鳥
                               平成30年1月27日
                                    <37首>
           朝ぼらけ 絶え間なく 降るる 六花(むつのはな)
               今朝の庭 昨夜(きぞ)に続き 雪化粧
                  家家の 真白き屋根屋根 望む今朝
            キシュ キシ 踏めば 鳴るなり 雪の路
                飛び交いぬ 小鳥ら何方へ 雪空を
                       雪の庭 梅鉢(うめばち)の〔足〕跡 点点と
                雪の朝 足跡一人 誰(た)が行きぬ
                    石段も 路も 積雪 〔歩は〕 恐る恐る
              明かり差し 振り向き見れば 雪激し
                降りつつも 雪冠り解(と)きぬ 風吹きぬ
            〔雀らは〕 いつもより啄み盛ん 厳冬備えや
                  雪の路 犬らも 厚き上着哉
               雪の路 外出〔散歩〕せむとて 出でぬれど 〔とても無理〕
                     雪晴れ と雖(いえど)も 外出の 足止(とど)む
               また降りぬ 細(さざ)めの雪花 今朝の舞い
               仄(ほの)日影 雪花の舞いや 打ち続きぬ
                   またまた降りぬ 今度(こたび)の雪花 牡丹雪
          弥(いよ) 降りぬ 綿雪 粉雪 扱き混ぜて
              ”雪国”は もう充分よ と悲鳴上げぬ
                            -雪で遊んだ昔を思い出し
                 雪達磨 作りし彼(か)の日 遠き昔
           雪転(まろ)ばし 雪毬二つや 雪達磨
            雪兎 目 南天の赤実で 出来上がり          
                  雪兎 ぴょん ぴょん跳ねず お盆の上
               雪合戦 逃げては逃げて 笑い声
                    雪掻きや 子等の歓声 打ち響き
             雪解けて 我(あ)が庭またも 枯れ庭に
          雪解けて 聊か 春の匂い立つ 
            玄日を 過る雀に 風花が
              雪解けぬ と見れば 雪花 頻り舞い
             南天の 赤実も葉にも 雪雫
                 庭の隅 小さき雪留(だま)り 解け泥む  
             雪留り 触れれば 粗目(ざらめ) 春恋し
            雪雲去りぬ 夕日沈みぬ 沈沈と      
                雪雲去りぬ 夕日に映えぬ 梅の蕾
                 皐月躑躅 綿帽子被り 姉様モード
              墨絵の如 梅の幹枝 雪冠り
                鵯(ひよどり)も 驚きぬるや 大寒気
                              平成30年1月28日
                                      <10首>
                薄曇り また雪なのと 空仰ぎぬ
                       朝曇り 心配するな の 教えあり
                        - 昨日の”大雪”を思い出して
              雪の庭 梅鉢の跡 雪訪(ゆきどい)や
            彼方此方に まだ雪留り 小さけれど
                  静かなり ”大雪” の後の 静かさや
              昼下がり また粉雪 舞い降りぬ
            啄みぬ 庭の鳥影 鵙(もず)らしき
               啄まれぬ 実南天 雪垂れ  
                自然のまま 終えぬ実南天 それも幸
                                  平成30年1月29日
                                        <8首>
            緩(ゆ)る緩(ゆ)ると 過ぐる終日 雪解ば
             雪解けば 庭 早春や 匂い立つ
                 空仰ぐれば 早春の輝き 小鳥飛ぶ
                      空はもや 春の訪れ 野辺も萌え
             樹から木へ 飛び移りぬ 鳥影あり
                  南天に鵙(もず) も 一つの早春の景
                         知らぬ間に 南天の実消えぬ 鵙の影
             実南天 熟すを待ちしか 鵙(もず)賢(かしこ)
                                 平成30年1月30日
                                        <13首>
               一転し 四周 雪景色や 春の野辺
                    あな嬉し 三寒四温の暖かさ
                      暖けし 三寒四温ぞ 理(ことわり)なり
             月影の凍るる夜半や 犬の遠吠え
                       寝覚めては 眠れぬ夜半の 底冷え哉
                   底冷えの夜半や 春遠ざかりぬ 噫
              じんじんと 底冷えの明朝(あした)や 如何にあらむ
                               -雪の降りたる夜を想い出しつ
                しんしんと 静かな 静かな 雪の声
                  じんじんと 迫り来る冷気や  厳冬夜
            遠くより 響く咆哮 冬雷や
                  彼(あ)は何(な)の音 耳欹(そばだ)てぬ 冬の夜半
                      薄墨に沈む冬山 夕烏
               暮れ行きぬ 茜空 翔(かけ)る 冬烏
                              平成30年1月31日
                                      <7首>
            冠雪 水仙腐(くた)しぬ 噫 無情
                     もう一か月 赤目柏 萌え出ずは
               苔萌黄に萌えぬ 早春の野辺
                姫椿 紅 皆腐(くた)り 一輪 凛と
            冬帽子 植え込みにちょこんと 冬日和
                    冬籠り 抜け出し出でば 冬温し
                     雪柳 小さき小さき芽 段々に
                                   平成30年2月1日
                                        <10首>
           冬籠り  長し鬱陶しし 一日かな
             冬籠り 抜け出し見れば 春隣り
                冬籠り 小米雪 降り頻りおり
           冬籠り 我(あ)が身 弥弥 弱りけり
                   今朝は また 霙 雑じりの雪模様
                飽きもせず 降る細雪 見る我も
               細雪 唯 一向 (ひたすら)に 沈沈と
             終日(ひもすがら) 降る 細雪 重ね重ね
                見過ごしぬ 赤銅色の月 凍るる庭
                        観ず想う 皆既日食 一興なり
                             平成30年2月2日
                                  <16日>    
                枯れ庭に 枯れ柘榴(ざくろ)の実 春近し
                  枯れ柘榴 実一つ 垂るる 春遠し
                     蔓桔梗 蔓延ばしつつ 春待つや
                   枯れ庭に 春待ち顔の 冬薔薇(ふゆそうび)
               柿の古樹 伐られ無残な 整地の為
                柿の古樹 無惨な姿 噫 哀し 
                  噫  悲歎 梅も桜も 姿亡く
                根元に生う 水仙許り 無事に生い 
                  あれ程の君が代蘭も 姿亡く
                   冬野今 掘り返されて 瓦礫の山
             此処は 未だ 枯れ野のまま ほっとせり
                探梅は まだ遠き哉 山里は
                      冬霞 枯れ木立のシルエット
                 屋根屋根の 間(ま)に隠れ行く 冬日哉
                   夕日影 鳥影 翔(かけ)る 冬の嶺
                               平成30年2月3日
                                     <12首>
                             - 新聞の写真を見て
                  皆既日食 御酒召されたか 赤ら顔
             兎見ぬ 皆既日食 兎何処
              鵙(もず)一羽 雀来ぬ間に 我(あ)が庭に
                      鵙啄むを 眺む雀の鋭き目
                    鵙の動き 雀偵察 梅の枝
                 驚きて 鵙飛び立ち 飛び込みぬ 馬酔木(ばすいぼく)
                 鵙去りて 仲間と啄む 雀 優し
                   一斉に 電線へ飛びぬ 雀十一羽
                ご理解を 桜の幹に 告知板
                     幹腐り 倒木の恐れあり 伐採に 〔と読める〕
                  雪冠にも耐え 芽ぐむ桜樹を 〔伐採に〕
                枝枝に 蕾膨らみ おりぬのに
                  春を見ず 伐られ果てぬる 桜樹 哀れ
                                   平成30年2月4日
                                       <16日>
            ベンチに独り 憩う背に 夕日影
             冬日向 水仙 艶なり 咲き続き
               冬日向 猫のっそりと 起き上がり
                 冬木立ち 冬芽 見えぬば 春遠し
            影法師 寒椿と我(あ)の 長々と
             古樹梢 小さき春の訪れ 見ゆ
                 深閑と沈みぬ山辺 芽吹く枝枝(ええ)
               からからと 枯れ葉 鳴る鳴り 散歩路
            水仙摘む 老女の手許や 春優し
              鬼は外 福は内 聞かぬ 小夜〔寂し〕
                 節分の声 聞かぬ間に 小夜更けぬ
               節分も 遠き想い出と なりにけり
                 年の数 炒り豆食みて 厄払い
                   鬼打ちて 炒り豆の 歯に固く
                       鬼払い 福は何処と そっと探し
                小正月 追儺(ついな)の儀式や 如何にあらむ
                                       平成30年2月5日
                                          <7首>
            枯れ草 戦ぎ 光る我(あ)が庭 春未だ
             馬酔木(ばすいぼく)花芽 伸びやか 弓形(ゆみなり)に
                   南天の実 悉く 見ぬ 鵙(もず)も見ぬ
                     梅梢 蕾膨らみぬ 此処彼処
                            南天と青空 映えり ガラス窓
                   もくもくもく 白雲 立ちぬ 冬烏
                    白雲や 夕烏翔る 春やもや
             濃藍に 月細り行く 小夜寒し
                              平成30年2月6日
                                  <15首>
             あっ 彼(あ)れは 鶯かしら 梅の枝
                     梅の樹に 止まり来ぬ汝(な)や 鶯や
                淡藍の空 白雲ぽ〔っ〕かり 春立ちぬ
            飛行船のような 白雲 ゆらりゆら
             寒椿 紅く 濃く 燃えぬ 寒庭に
                 水仙の 独り咲きおり 生垣下
             溝底に  掃かるるも 生いぬ 若芽あり
                    パンジーも ヴィオラも 震える 冬将軍
               お多福南天 霜枯れ紅色 寒庭に
                 枯れ鉢の 並びぬ路縁 春遠し
             正月飾り 未だそのまま 小正月
                    万年青(おもと)の列 赤き実一つ 頑張りおり
                此処から奥 獣道あり 猪(しし)の道
             冬薔薇(ふゆそうび) 棘や鋭き 冬装備(ふゆそうび)
                金柑の実  仔犬の甲高き声 
                  草木も 寝覚めぬや 冬の音
            軒先の 雨垂れの音 春の音
               鵯(ひよどり) 鵙(もず)や 小鳥 滑走 不格好
            寒気団の狭間に 小さき春や出づ
             鶯(うぐいす)と見しや 梅の枝(え)に 枯れ葉かな
              鶯か目白か 梅に 止まり来ぬ
                春立ちぬ 五葉の松 日向ぼこ
            春立ちぬ と言ふに今宵や 寒三月 
              春立ちぬ 言ふばかりなり 寒三月
                     寒三月 枯れ芒や 仄か揺れ
                              平成30年2月8日
                                    <9首>
          炬燵守 毛糸編む手の 忙しく
            如月(きさらぎ)は 草木芽吹きぬ ’生更ぎ(きさらぎ)’とか      
             梢過ぎ 葉揺らす風や 早春賦
               次々と明りぬ 山里 早春(はる)の燭(しょく)
                 茜色 未だ残りおりぬ 朝冬庭
          朝凪の 静寂(しじま)聞こゆ音(ね) 鶯や
             昼凪や のたり うねりぬ 早春海(そうしゅんみ)
                  冬凪に ふんわり匂いぬ 梅が香よ
           桜 リラ 椿 芽吹きぬ 如月哉
                               平成30年2月9日
                                   <10首>
          夕烏 背に急ぎ返りぬ 浅春かな
               夕日映え 刈萱(かるかや)の枯れ姿
                 夕日映え 銀色に光るる 四周かな
                  西 夕陽 東 淡青 早春(はる)の景
             枯れ実落ち 蔓 芽吹きぬ 藤の早春
                 移ろいぬ 水仙から梅の 芽吹き哉
             東の野 菜の花畑 春霞
                 一昔(ひとむかし) 菜の花咲おり 辺り辺り
                    フェンス際も 菜の花見ぬや 寂しけり 
              紋白蝶 菜の花探すや 我(あ)と同じく
                                      平成30年2月10日
                                          <10首>
                  鶯の声 聴かずとも 春は来ぬ
                  蝋梅(ろうばい)の下の逍遙 春間近か
                      如月(きさらぎ)に 福良雀や 細くなり
               小雨降る 梅の梢に 春の雫
                        春雨や 一雨(ひとあめ)毎の 暖かさ
               春来ぬと  誰も告げぬに 春は来ぬ
                小糠雨(こぬかあめ) 煙(けぶ)るる辺りや 春催い
             山朦朧 烏飛び出ず 何方(いずかた)へ
              早春の流水(るすい) 微温(ぬる)くて 苔累累(るいるい)
                               平成30年2月11日
                                     <9首>
                    陽溜まりあり 佇めば 早春(はる)の匂い  
              青空突く 白木蓮 弥(いよ) 膨らみぬ
                整地され 消えぬ自然や 寂しけれ
                  また一つ 小さき自然の消えるる 早春
                   庭に出で 水仙に水遣り 早春光り
                        野に出でて 菜の花摘む手 春光る
               障子に 浮かぶ影絵や 春の情
                    寒風にも 微温(ぬる)きのありぬ 如月よ
                  春の陽気 と思うや否や 寒の戻り
              目まぐるし 冬や春や 春や冬や
                                    平成30年2月12日
                                           <9首>
                 風花舞う と眺めし間もなく 吹雪き哉
             見る間に もう 庭の草木や 雪被り
                 雪に春陽 如月の戯れ
                     雪降るは たった五分 早春の気紛れ
               春陽 昨日まで 今日(けふ)は冬寒
                降りしきる 雪に陽光 降り注ぎ
                  陽射し戻り 春の趣き 戻り来ぬ
                             -カレンダーの仔猫の写真を見つつ
               早春の気紛れ 知らずや 仔猫や寝顔
                辺り辺り 春陽に包まれ 微笑みぬ
                               平成30年2月13日
                                    <16首>
            鵯(ひよどり)の 次々飛び来ぬ 我(あ)が庭へ
                冠り羽 逆立て飛び来 鵯 如何 
                     数えれば 20余羽なり 大群なり
             東から西へ 鵯 我(あ)が飛び過ぎたり
                鵯(ひよ)大群 霜晴れの空へ 飛び去りぬ
                  早春の朝 鵯の大群 何(な)の予兆
                    願わくば 吉ならむことを 鵯大群
                       -嘗ての我が家のヴェランダに
                                  飛来した鵯を思い出しつ
             啄みては 見張る 鵯の番(つがい)あり              
               思い出しぬ 鵯いつも 番鳥
                    早春のヴェランダに鵯 番寄り
                この度は 大群の飛来 何事ぞ
                  うっすらと 霜畳の朝 如月の
                    霜置きぬ  路 もう斑らに 消えおりぬ
                指先の 冷たきよりも 痛き今朝
            風花の また舞い下りぬ 梅の枝
           まだまた 舞いぬ風花 飽きないのね
                                 平成30年2月14日
                                     <10首>
                青空を 翔る春鳥 山微笑
                     枯れ木立 近づき寄れば 春の息吹
           ゆっくりと 傾(かたぶ)く春日(はるひ)の 散歩路
              影落とす 生垣向こう 小さき春
                    萎れぬる 紅姫椿 オー・ルヴォワール
                                    (au revoir)
                    冬スカーフの 掛かる生垣 春の気色
                    暖かし 誰(た)が忘れしか 冬スカーフ
                 寒気去り 光り長閑き 春や来ぬ
               切られたり 馴染みの 桜樹 我(あ)哀悼
                         蘖(ひこばえ)の生き出づ待たむ 何時までも
                                    平成30年2月15日
                                         <12首>
           一日の 過ぐる速さや 老いの日日
              日々 光陰速し もう 如月半ば
                斑入りの小笹 我(あ)が庵(いお)の馴染み 幾星霜
             連れ合いぬ 幾星霜 小篠と我(あ)
                馴染みなる 小篠眺むる 老いの朝
                 小篠 今 繁りて蘇生 早春哉
                  消えそうに なりぬも永らえぬ 小篠
              末永く 馴染みとならならむ 斑入り小篠
                       我(あ)が旧き 友となるらむ 斑入り小篠
                              平成30年2月16日
                                   <9首>
             水涸るる 早春の溝 枯るる草
                 枯れ葉 落ち葉 集めて溝や 枯るる景
                  枯れ草や 枯れ葉堰止め 溝涸るる
                春空や 夕烏飛び 一声 カァー
               薄墨の春空一面 べた色なり
                         暮色の山里の景 穏やかな
                   暮れ泥(なず)む 早春の空 猫一匹
                  山際の前裁 いまだ 枯れ芒
              春やあらむ 春恋ふるる情や  弥(いよ)増しぬ
                                  平成30年2月17日 
                                        <12首>
           微風(そよかぜ)に 春さんざめく 山辺哉
             彩雲も 長閑やか 春の野辺
                  薔薇嫩葉 棘茎 暗紅に 延ぶ彼方此方
              群れ小篠 細葉サラサラ 春の風
               長閑やかな 白雲浮かぶ 鳥翔(かけ)る
                   小篠の葉葉 枯るる間(はざま)に 嫩葉見ゆ
            春陽光 穏やかなれど 風 余寒
               スカーフを 忘れ余寒の 頭寒あり
               今 漸う 花芽膨らみぬ 水仙あり
                陽光に 映える嫩葉や 麗しき
                  鵙(もず) 独り 枝移りしおり 早春
           ふっくらと 木蘭の白き 花芽かな
                白木蘭 花芽萌立ちぬ 空青き
                           平成30年2月18日
                                   <11首>
           浅春や 枯れ草に 霜残りおり
             余寒あり 陽光の庭に 佇めば
             待ち遠し 梅の花見は 何時のこと
                    待ち遠し 花見は何時か 梅林
            寝覚めれば 辺りすっかり 春景色
                    我(あ)が庭の水仙 未だ葉葱のまま
             番(つがい)来たり 鵯(ひよどり)独り 楽や寂や
                             鵯 独りや また 楽しからずや
          寒気にも 雪にも耐えぬ 幼葉(ようよう)〔/漸う(ようよう)〕に春
                 漸うに 蔦葉海蘭(つたばうんらん)春装い
                               平成30年2月19日      
                                       <10首>
                    細き月 朧に映えぬ 余寒の夜
             梅の蕾 慌て縮かむ 余寒あり
                また戻り 来たりぬ 今朝の空
                       昼凪や 春の優しさ 恋い想う
              啄み後 嘴(くちばし) 磨ぐは 鵯(ひよどり)の歯磨き?
                  向かい合い 何語るらむ 鵯と雀
               鵯去りぬ 雀去り来ぬ 仲間連れ
                     餌(え)残されり 鵯去りたる バード・テーブル
                        鵯や 雀らと啄む 春楽し
               雪消えぬ 枯れ草の上 雪のあり
                雪と見しや 霜柱の花 とやおかし 
                               平成30年2月20日
                                    <10首>
              見越しの蝋梅(ろうばい) 放つ春の香や
                    梅一輪 春来るらし 山里にも
                 陽葉の さんざめく朝 春の調べ
                   水仙咲きぬ 伐られし梅の 樹の元に
                       万年草 萌黄に萌えぬ〔/燃えぬ〕 路の縁
              椿花芽 ほんのり紅差す 夕日影
                         実となりぬ 花八つ手にも 夕日影
               枯れ木立 まだ 芽吹かぬ 春いまだ
           此処にも また 春呼ぶ椿の花芽あり
                  枯草蔭 春草千草 萌え出づる
                              平成30年2月21日
                                   <21首>
             春霞 春寒 雀も 姿見ぬ
                  春愁や 暁烏の声 空遠く
                     鬱陶し 春の朝(あした)の 気怠さよ
             曇り空 春愁の色 陽春 何方(いずち)
             一日を無為に過ごせり 春霞
                  鬱うつと 春愁に沈む 我哀れ
            春ざれぬ 梅綻びぬ 漸うに
               鬱陶しき 春の息吹も 一休み?
               山被る 春の衣〔霞〕や 匂い立つ
                                  平成30年2月22日
                                        <10首>
            何事も 春の夜の夢 今日(けふ)一日(ひとひ)
               弄(まさぐ)りぬ 毛布 春寒の 朝ぼらけ
                         春ざるる朝 鶯の声 空耳か
             鵯(ひよどり)の啄みぬ背に 春日影
                驚きて 飛び去る鵯 春の空
           長閑(のどけ)きは 光りばかりの 春寒かな
                    おお寒(さむ)!襟元重ぬる 春寒(しゅんかん)
                春寒の ありつもす〔っ〕かり 春の情
                     一日の過ぐるを耐えぬ 春気怠る
                                  平成30年2月23日
                                         <9首>
            赤き実を 落とし 春呼ぶ 常磐樹かな
                   早かりし 梅膨らむも まだ 蕾
                       ふっくらと 膨らむ蕾 愛らしき
                観梅は 今 暫く哉 春日影
                    梅林へ 出掛け 落胆(がっかり) 帰りたり
           そよそよと 戦ぐ篠の葉 春の風
               春草を まだ見ぬ 山辺や 寂寂かな
                        春草の 萌えるる路傍 枯れ尾花
          紅梅の 咲き誇るる庭 通り過ぎ
               紅梅の 萌え出づ庭こそ 艶のあり
                                  平成30年2月24日
                                         <9首>
           枯れ枝や 影落としおり 春日影
          七重八重 クローバーの若葉 春の笑み
                松ぼっくり 春草の蔭より ひょっこりと
                          春の庭 いずれ 椿か 姫椿
            サッ サッ サ 若き足音 春の音
                   老いの足 春や長閑やか スローテンポ       
           姫椿 萎れつも 猶 咲き続き
             遅咲きの 水仙 愛し 春の庭
                     春風に 散りて 紙屑 花と舞う
                                    平成30年2月25日
             夏蔦の 未だ芽吹かぬ壁 冬意匠
         訪れど 梅まだ咲かぬ 花見鳥*
                           (*鶯の別称)
                春告げ鳥* 声聞かぬば 寂し梅も我(あ)も
                                 (*鶯の別称)
                    双葉生う 密に生いおり 何(な)の草花
              匂い立つ 紅梅の庭 小鳥の影
            白梅は 未だ(まだ) 待つも 亦(また) 春の情
               万年青(おもと)陽葉 白く光りて 花の如
                       枯れ柘榴(ざくろ) まだぽつねんと 独り垂る
           窓際の紅シクラメン ほっこり 春陽(はるひ)なか
              篝火花(かがりびはな)* 篝火焚くや 窓際で
                           (*シクラメンの別称)
                  古樹 伐採 痛ましき哉 整地跡
             古樹残り 無事喜びぬは 泡沫(うたかた)なり
                        花枇杷の 芳香聞かぬ 老いの身 哀
                 枇杷の花 実に似たるを知りぬ 山辺かな
                                 平成30年2月26日
                                      <11首>
            茱萸(ぐみ)の葉葉 乾涸び萎れぬ 春何方(いずち)
               姫椿 垣根隠れに 紅を差し
                   木瓜(ぼけ)の枯実 蕾と賑わう 春の庭
            野薔薇芽吹き 枯れ尾花戦ぐ 野辺
             嫩葉萌え 夏蔦 春の友となり
               桜木 の蕾や固し 春やまだ
                  桜花 咲きそうで 咲かぬ 春泥む
              草花の 小園枯れ枯れ 春遠き
                        探梅も 探桃も叶わぬ 春逍遙
               紅葉まだ 梢に固き 冬芽のまま
                  白き月 白き雲間や 春の夕暮れ
                                 平成30年2月27日
                                      <10首>
                梅一輪 もう一輪や まだ蕾
                 なんとまあ 麗らけし哉 今日(けふ)一日(ひとひ)
              白梅の開きて ほんのり 匂い立ちぬ
                      白梅の ほんのり咲きぬ 春ざるる
              此処彼処 椿の蕾 春隣り
           飛び去りぬ 鳥影 鵯(ひよ)や 春の庭
               黒影二羽 鵯の番(つがい)か 南天蔭
                    春の海 寄せては返す 人の世も
               風光る 陽葉 騒めく 春の庭
                吹くからは 梅が香 遣せよ春の風
                              平成30年2月28日
                                    <13首>
           春よ来い チューリップの 幼な声
                チューリップ 咲かぬ花壇や 後(のち)の歓び
                  路地の奥 プリムラの淡紅 ちらり見え
                    伐られし株七つ 春や 如何にあらむ
           そよ吹きぬ 春風の未だ 寒き哉
              匂い立つ 春の光輝(こうき)に 冷気あり
                          春風冷た 寒風と言わねども
                 のびのびと 背伸びす仔猫 春日溜り
               チューリップ 幼葉ちんと 揃い萌え   
                 蘖(ひこばえ)の 賑わう山辺で あらまほし
             夕霞 花馬酔木(あせび)の ふんわりと
                               平成30年3月1日
                                    <7首>
           桜まだ 春の行方や 如何にあらむ
              春眠や もう一度夢路へ 朝ぼらけ    
                一頻(ひとしき)り 降りたる春の 温かさ
              春の雫 降り注ぎたる 朝(あした)哉
           空一面 淡藍を刷く 春の朝
                    春嵐 一過 空や 春麗ら
                風荒(すさ)ぶ 樹木や 驚く 春嵐
                    終日(ひもすがら) ひたすら風音 春嵐
                              平成30年3月2日
                                    <9首>
            春風も 亦 寒風となりぬ 弥生なれど
                   水仙の それぞれ向きて 咲くや野辺
                芳香の 漂う方や 水仙の里
                  雲一つ なき淡藍の空 春霞
                       春陽に 椿の陽葉 揺る春昼
                   〔公園の〕 グラウンド 小さき足跡 入り乱れ
             プラタナス〔鈴掛けの樹〕 枯れ鈴〔実〕 独り 春日影
              梅の樹苔 生う岩に蔦 春の景
                       古株にぽっかり洞穴 枯れ葉棲む
                                  平成30年3月3日
                                        <11首>
          取り出され 雛人形の 眩し気な
             雛飾り 女雛は どちらと 聞く童
                   男雛 右 女雛 左と 憶えあり
          背伸びしつ 桧扇女雛に飾りし日
            緋毛氈 お内裏様 の 座(まし)まする
                   仄明かり ぼんぼり浮かぶ 内裏雛
          雛霰 薄桃ばかり 抓む 幼指
             菱餅や 皹(ひび)入り 乾涸び 雛納め
                    雛飾り 白酒もなき 弥生今宵
               雛祭り 雛飾りなき座敷 春の朝
                 唯 桃花 飾りたる床〔の間〕 雛の節句
                            平成30年3月4日
                                  <15首>
          紅梅色 日傘差しつつ 探梅を
               紅絞り 白椿咲く 弥生空
                        芳香に誘われ登れば 紅梅闌(たけなわ)
              梅が香に 惹かれ 鶯来ぬか未だ
                    梅一輪咲けば 次々 春麗ら
                淡紅梅 匂い遣しぬ 春風よ
                          盆栽の紅梅も 今花盛り
             菫草 まだ冬眠や 春葉も見ぬ
                   見つけたり 黄水仙 草葉影
                          数えれば 五輪 朝見ても 夕見ても
                陽を透し モコモコ綿毛 枯れ尾花 
               鵯(ひよどり)に 餌場(えば)譲ったらし 雀達
                餌場譲り 雀ら 何処へ行ったやら
                             平成30年3月5日
                                  <10首>
                 梅如何 小雨や降るる 空なれば
                      小雨降りぬ 梅花霞ぬ 我(あ)が梅見
                  紅梅も 白梅も 包む 霞哉
             立ち籠める 霞や深し 庭の梅
            今咲きぬ 梅花襲うや 春嵐
                願わくば 梅花 避け吹け 春嵐
                    明日は晴れの 予報狂いぬ 怨めしき
           雨模様 今日(けふ)観梅を と予定しが
         弥生闇 梅香 仄か聞こえ来ぬ
                                平成30年3月6日
                                    <12首>
             三分咲き 七分 五分咲き 梅公園
                    一分がやっと まだ蕾のまま 梅林
                 梅の樹苔 また一つ 梅見の景
                          誰のアート 梅林の梅の樹苔
                       梅花より 梅の樹苔や 際立ちぬ
                老梅や 倒れつつも 花咲かせぬ
                 老梅の 曲がり折れたる またの風情
             春麗ら 吹く風のみの 冷たさよ
                     春炬燵 仕舞うに仕舞えぬ この寒さ
             生垣 に 椿一輪 春麗ら   
                   耐えたらし 梅の花(か)も蕾(らい)も 春嵐に
                 紅白の梅林の向こう 山烟(けぶ)る
                             平成30年3月7日
                                   <10首>
          春麗ら 鵯(ひよどり)来ぬ庭 寂し少し
            鵯や 里から山へ 戻りたか
                  雀達 姿を見せぬは 元気な証拠?
          春の空 淡藍の色 目にしみる
                水仙に 水遣るる如雨露(じょうろ) 風光る
              辺りまだ 春草よりも 枯れ草野
               羊歯(しだ)萌ゆる 石垣にや 春の装い
                    薄曇り 白銀の太陽 過(よぎ)る鳥
              五弁(いつひら)を 目一杯開きぬ 白梅
                  白梅に まだ蕾あり 夕日影
                                   平成30年3月8日
                                       <12首>
             思い思い 花房 揺れぬ 馬酔木(ばすいぼく)
                  淡紅より濃く咲きぬる 花馬酔木(あせび)
                   或るは高く 馬酔木(あせび)の花房 乱れ咲き
              妖しき哉 咲き乱るるが 花馬酔木(あせび)
                鬱陶しき 春一日の 始まれり
                  春の乱 昨日晴天 今日雨天
                        昨日とは がらり一転 物憂き春
              空どんより 我(あ)もどんより 春一日
            無用の用 となるや気怠き  春の用
                為すことも 為せず終わるか 春一日
                  動悸打つ春の乱調 我(あ)が心臓(こころ)
               バサッ バサ 暫し驚く 春風や
                                平成30年3月9日
                                     <9首>
        猶 ベッド また戻り来ぬ 鬱の春
                疎ましき 鬱陶しき 春 疾(と)く去らむ
            目閉じれば 小鳥の囀(さえず)り 聞こうるや
             何(な)も聞かぬ 唯 鬱鬱の 春の鬱
          微睡(まどろみ)の 夢駆け巡る春野や 馨(かぐ)わしき
            虹かかる 春野に佇む 我(あ) 夢の中
                 山烟(けむ)り 小雨降る野や  春 憂愁
            浮浮(うきうき)の筈の春風 鬱気運ぶ
             春愁 拠り立ちぬ世や 疎ましき
                             平成30年3月10日
                                   <15首>
               チューリップ 嫩葉出揃う 春日影
                        待ち遠し 白木蘭や 咲くは何時
               未だ萌えぬ 菫 蒲公英(たんぽぽ) 如何なりや
                     古株に 生うは茸や 苔なりや
                   伐採され 桜並木は 追憶の中
            万天の 空 空色にぞ 広がりぬ
              マフラーを まだ手放せぬ 春寒
                水仙の 咲く坂路や 風や寒
                   水仙や まだ咲かぬかや 我(あ)が庭や
        外郎豆(ういろうまめ) 黄蝶花 此処に 咲きおりし
             黒紫の実 暗紅の枯れ莢の懐に
                     零れぬよう 黒紫の実を 手の掌(ひら)に
              ポッケトに忍ばせ 外郎豆の運び人
               持ち帰り 庭に撒きたり 実外郎〔豆〕
           次の夏 花開くらむは 歓喜なり
                                    平成30年3月11日
                                          <10首>
          気怠さの 今朝も続きぬ 春憂い
            今朝も亦 春の気紛れ 憂き身かな
                穏やかな春日となるや 今日こそは
              春風に揺蕩(たゆた)う心 当て所なく
          包まれぬ 春の気配に 門を出で
               セーターを脱ぎて 春野辺 見渡しぬ
                    若草や おちこち萌え出づ 春暖か
               のどけきに 光る草木 春匂い
            草千種 萌え石垣の 陽だまりに
             千草萌え 山辺や 萌黄となりにけり
              小弛(ゆる)みし 春宵一刻(しゅんしょういっこく) 冬仕舞い
                                 平成30年3月12日
                                     <13首>
          隣り合い 三輪 四輪 梅梢
                    梅二輪 隣合いて 何想う
                 梅一輪 連れ合うは まだ 蕾
            梅一輪 梢に咲きぬ また一興
                   春麗ら にも 梅や 物憂き哉
                 梅林 華やぎ見えぬ 唯 春光
                  梅の花 小さし 侘し この春は
           紅梅の 蕾見 またの花見を
             ふと見れば 椿の蕾や 賑々し
              白梅に 映えるる淡紅 姫椿
           藪椿 花萎れつも 花椿
                    一重咲き 素朴な風姿 藪椿
                                 平成30年3月13日
                                       <13首>
           紅紫の蔓 春を探すや 蔦葉海蘭(つたばうんらん)
           あらっ もう 黄花笑顔や 春野芥子
              薺(なずな)花冠 春のブローチ 誰(た)が為の
                青色の 四弁(よひら)愛らし キャッツ・アイ
            大地縛り すらり ほっそり 独り 咲き
               仏の座 唇形の花芽(かが) 石垣下
                              ぎゅうぎゅう 繁縷(はこべ)の幼葉 目白押し
             草千草 菫草見ぬは 摩訶不思議
              海蘭(うんらん)の 淡紫花愛でし 君追憶に 
               長実雛罌粟(ながみひなげし) ロゼット凛々し 見つけたり
                      春野芥子 たんぽぽ見ぬを 慰め顔
            幼葉 揺揺 烏野豌豆 駘蕩
              烏野豌豆 幼葉二列 たどたどし
                                  平成30年3月14日
                                        <13首>
           久し振り 虫に出会えり 啓蟄過ぎ
              椿象(かめむし)が飛び込む そうね 啓蟄ね
                啓蟄や 椿象飛び来ぬ  机の上
           紅色の 花芽(かが)に白梅 春 長閑   
             椿の花芽 少し紅差し 可愛いらし
               キャッツアイ 幼葉 寄り合い 緑なす 
                 横這いにも 少うし背伸びの キャッツアイ
           豌豆や 花も実も得ず 枯れぬるや
             空豆や 青々 花芽(かが) 花 まだこれから
              春暖や 天空一面 春の色
                  姫踊り子草 踊りだしそ〔う〕な 陽気かな
                                平成30年3月15日
                                       <15首>
            春暖や 紋白蝶の 舞うを見ゆ
               春暖や 皐月〔五月〕を運ぶ 陽気かな
             白梅に 鵯(ひよどり)帰り来 春嬉し
                  一段と大きくなりたる 鵯かな
            蔦葉海蘭(つたばうんらん)紅紫の蔓 にゅうにゅう
             藪椿 漸う 咲きぬ 紅 紅 紅
                唇の如き 花冠や 藪椿
                      唇を 開くが如き 花椿
              一弁(ひとひら)の 白雲もなき 春の空
            プリムラの花鉢 カラフル 春の賑わい
              整地され 馴染みの樹木 姿消え
                   今の春は 別離の時かな 馴染みとの
           ひっそりと咲きぬ 水仙 一隅に
               遠見の崖 揺るる白花 彼(あ)は水仙
                爪切り草 白小花一杯 苔の側
                     天真な 小さき小さき 白花群れ
                                平成30年3月16日
                                      <16首>
         梅樹下 通れば梅香の 余情かな
             白梅や 今ぞ 盛りと 匂い立ちぬ
               紫陽花や 芽生えるる 春の暖かき
                 淺緑 芽生えぬ 紫陽花 庭の景 
                 想い出しぬ 君 在りし日 紫陽花(しようばな)
              木瓜(ぼけ) この頃 梅に混ざりて 二・三輪
                 下萌えに 春の来たるを 知る我(あ)かな
           枯れ草より 萌黄育む 頃となり
             リラ 芽生え 葉ばかりなりけり 花芽(かが)は何時
            春陽気 一転 寒気 ぶるっ ぶるっ
              デージー の無垢の笑顔や 春昼
                            平成30年3月17日
                                  <8首>
             桜の蕾 今弾けるか 今暫く 〔待つらむ〕
                   桜の蕾 もうぱんぱん 開花何時
          シクラメン 人待ち顔や 我も亦
                  カフェ・テラス お行儀良く並びぬ 春野菜
          沈丁花(じんちょうげ) 真白き 花毬 春の芳香
              薄紅の沈丁花の路 懐かしき
               夕日映え 山の枯れ木や 桜色
             山に桜と見しや 枯れ木の桜色
                           平成30年3月18日
                                     <20首>
          水仙や まだ まだ 盛り 山里は
                燃え立ちぬ 紫陽花の嫩葉 山里に
               色鮮やか 花壇の千種 弥生空
           白菫 山辺の隅に 姿在り
                ハート形の葉 幾重 白菫
                  此処彼処(ここかしこ) 白菫や いつの間にか
           蔓に棘 野薔薇の嫩葉 此処其処に
                        - 樹木が次々伐採されて行くに出会い
            赤芽柏 存(ながら)えてね と 婆の願い
             口笛を吹くが如くの 花冠 仏の座
                どの種〔類〕も 嫩葉は同じ 紫陽花(しようばな) 
               烏野豌豆 蔓立て葉立て 花咲かせ 
                 烏野豌豆 紅紫蝶形花 春や来ぬ
               姫踊子草 打ち続くラインダンス 石垣下
           見つけたり 蒲公英の(たんぽぽ)ロゼット 漸う 春らし
               蒲公英の ロゼット 今の春 初見なり
                            白花蒲公英 花茎伸ばしぬ 何時もの路傍
                 山鳩や 不意に飛び立つ 山里や
                                平成30年3月19日
                                      <5首>
                   枯れ草と若草の綾なす 庭の春
             モノトーン な 曇り空にも 春光あり
                      長閑やかに 過ぎ行く一刻 春の刻
                 梅零るる 生温かき 春雨
                    朝 春眠 昼 春眠 寝覚めぬ夜 
                                   平成30年3月20日
                                        <9首>
               白木蘭(はくもくれん) 日毎に 膨らむ 蕾かな
                     白き火焔の如 萌え立ちぬ 白木蘭
           すらりの花茎 可憐な花冠 小鬼田平子(こおのたびらこ)
             暗紅の嫩葉 燃え立つ要黐(かなめもち)
                  生垣の要黐 嫩葉 次々と
            濡れるれば やはり冷たき 春雨哉
              春雨に 傘 傘 傘 揺れ揺れぬ
                青草や 弥(いよ)増す緑 春雨に
                 黄味色の 花冠色々 春の色
                               平成30年3月21日
                                      <7首>
                   春眠 春光 仄か忍び込む
                春眠  雀も鵯(ひよどり)も 飛び来ぬ今朝 
                    気怠き春 今日(けふ)一日(ひとひ)で あらむ事を
            晴れの間見ぬ 春昼や 春朧
                   梅零れるる 春嵐の残響
                     朝雷 昼には開花の 桜哉
             花冷えや 花一・二輪 とぞ言うに
                花色や 仄かに光る 朧月
                                 平成30年3月22日
                                       <19首>
                  有明の 仄かに残る 月や春
           春光 煌めく 雫 ラメの如
              落椿 命短し 庭の隅
                       花椿 落ちて路上に 花莚  
            梅落下 小さき花弁(はなびら) 点点と
             紅 絞り 路上の共演 落椿
                  俯せに 落つるる 椿や また愛し
                     黄水仙 こんな処に 横顔を
            クリスマス・ローズ 春風に揺るる 此処彼処
               クリスマス・ローズ 花色繚乱 春の園
                  スプリング・ローズ とや 春咲くならば
             散歩路 椿色々 紅 白 絞り
               訪れる人なき 荒れ庭 棕櫚(しゅろ)哀れ
                     春の空 驟雨(しゅうう) 犬の遠吠え 頻り
             路の縁 菫 蒲公英(たんぽぽ) 蓮華(れんげ)見ぬ
              何処にでも 出会えし 蓮華草 今何処に
                 烏の親子 啄む路上 春 仲よく
              姫踊り子草 総出でダンス 春の野辺
                              平成30年3月23日
                                     <12首>
          射干(しゃが) 枯れ行く 葉姿 惜陰の情
             入れ替わり 嫩葉もう花芽 抱きぬ射干
                 折れ花茎 下草萌えぬ 韮の春
                    蒲公英(たんぽぽ)独り咲きおり 石垣下
              今はもや 亡き桜並木を 通り過ぎ
                花韮の 春に目覚めるる 笑顔 笑顔
          水仙や 存え いまだ 咲き継ぎぬ
            春の空 赤松の 芸術的な 佇い
             湾曲の幹 妙に艶なる 赤松哉
                 盛り 見ぬ間に落ち椿 あっと言う間
               白木蘭 めらめらと白き 火焔の如
           連翹(れんぎょう) 遠き想い出となりぬ 我(あ)が庭は
                                 平成30年3月24日
                                      <11首>
           見飽きてし 蓮華草 今ぞ懐かしき
                 弓形(ゆみなり)を 刈られ雪柳*こそ 寂しけれ
                                    (*漢字一語扱い)
              黄花冠垂れ 咲くや連翹(れんぎょう) 花盛り
              俯きぬ 鮮黄の四弁(四平) 連翹花
          雀らと いつも一緒や 鵯(ひよ)の雌
               雄よりも 雀ら選ぶか 鵯の雌
                 シングルの雄鵯(ひよどり)や 寂し? 気楽かも
         〔オランダ〕耳菜草(みみなくさ) 異郷の春は 如何あらむ
           蔓桔梗(つるききょう) 色鮮やかな花 青紫
              擬宝珠(ぎぼうし)の 嫩葉 萌黄に 萌えぬ今朝
                               平成30年3月25日
                                      <25首>
           眩しき哉 白木蘭の 花の群
                 白鳥(しらとり)の群れ立つが如 白木蘭
             この気怠さ 春なればこそ 落ち椿
                  淡紫の花海蘭(うんらん) 笑み 笑みぬ
                薔薇の鉢 嫩葉も茎も 柔らか色
                 剣状葉 ひそやかに花芽(かが) チューリップ
             ヒヤシンス 山辺に咲けば 野趣のあり
                     水栽培の風姿の脆弱さ
               仏の座 仏や何処に 御座(まし)まする
             橙色の実 三つ四つ路上 金柑の
                 薺(なずな)の行列 溝底の春 
              葉押し退け 花芽色付く チューリップ
                  チューリップ まだ同じ色 葉も花芽も
        蔓桔梗(つるききょう) 菫(すみれ)かとぞ見ゆ 遠見には
                向こう向き ラッパ水仙に 背かれり
           ラッパ水仙 咲き乱るる花壇 春の色
               白も黄も 咲き乱れ織 ラッパ水仙
                                フェンス抜け ラッパ水仙 何望む
          蒲公英咲き 菫未だなり 溝の縁
            黄小花等 花火の如き 鬼田平子(おにたびらこ)
                青き空 白木蘭燃え 白鳥飛ぶ
             白木蘭 一弁(ひとひら)路上 もう挽歌や 
                 白木蘭 花弁路上に 花茣蓙(はなござ)を
                                  平成30年3月26日
                                       <9首>
            桜桃(さくらんぼう) 初夏を得たり 今春の
                野豌豆 烏や 雀や 蝶形花
                  キャッツ・アイ 夕日影に映えぬ 青四弁(よひら)
           珍しき 白花菫 また出会えり
              慎ましく 路傍に爪草 白小花
                  白小花 肩寄せ合いぬ 爪草や
            花芽(かが) 花芽 花芽 一斉に空衝く チューリップ
                   夕日影 西に 東に 白き月
               雀の槍 槍 槍 槍の 春の野辺
                              平成30年3月27日
                                    <13首>
               ふと見れば 春の雪見の 雪柳
                 噴雪花 実(げ)に 言い得たり 雪柳  
                  噴雪花 実(げ)に 言い得たり 雪柳
          其処だけが 雪冠せり 雪柳
            弓形(ゆみなり)の枝枝(ええ) 四方八方 雪柳
                     雪白の 小花盛りの 雪柳
           花冠垂れ 眠るる花*や 海棠(かいどう)花
                          (*海棠は ’眠れる花’と呼ばれる花)
               濃桃の海棠 桜似の 花房垂れ 
            そう見れば 葉や 鼠の耳似 耳菜草
             そう見れば 鼠も可愛い 耳菜草
                   耳菜草 繁縷(はこべ)に似たる 小米花
         春風や  まだ冷たくも 辺り 暖
                      辺りもう 暖かなれと 春風 冷
             名の分かぬ 小ぶりの桜花 素朴な風情
                                 平成30年3月28日
                                        <13首>
             何時の事 水仙咲くは 我(あ)が庭の
               まだ咲かぬ 水仙 弥生〔三月〕末なのに
           毬のような 椿の蕾 淡紅の
                      渋紅の萼残るる梅や またの興
                春光 馬酔木(あせび)の花や 春眠や
            雪柳 撓(たわ)む 春風の戯(たわむ)れ
             ライラック 花芽(かが) 一つだに 無きぞ悲しき
          此処其処 に 嫩葉 萌え出づ スペアミント
             炎の如 燃え落ち行きぬ 白木蘭 
                姫苧環(ひめおだまき) 繊細可憐な その風姿
           春愁い 姫苧環の 儚さよ
                 姫苧環 か細く揺るる 春の庭
                      うつらうつ うつらうつらの 春一日
                                 平成30年3月29日
                                         <11首>
               ポトリ落つ 〔白木蘭〕 花弁 一つ 惜別の詩
            花盛り ”三日天下”の 白木蘭
              空豆の葉隠れに 紅紫の蝶形花
                    空豆や 三日見ぬ間に 花盛り
          空豆の花 挙(こぞ)りて咲きて 鉢や賑わう
             チューリップ 黄色の整列 春らしき
                  くっつき合い 木瓜(ぼけ)の花咲く 垣根内
              木瓜の花 赤 赤 赤と 塀の上
                   紫褐色 四弁(よひら) きりりの 花青木
                 繁縷(はこべら)にゅうにゅう 鶏在らずば
             ゆっくり ほっこり 行き過ぎるる 春一日(はるひとひ)
                             平成30年3月30日
                                   <20首>
          夜半の風 吹き散らしけり 白木蘭
              繰り出しぬ お花見日和 我(あれ)独り
                急かされて お花見に出掛けむ この日和
                       七分咲き 八分も見ぬ間に 満開に    
           蒲公英(たんぽぽ)の黄花(おうか) 微笑む 桜花(おうか))下
             姫苧環 花の日蔭に ひっそりと
               桜満開 三日前まで 蕾なり
                 一気に開花 桜並木や 花霞
              古樹の幹 桜花 開きぬ 二・三輪
                   スノーフレーク 草草と共に 春の野辺
                 スノーフレーク* すっかり野草の 友垣に
                           (*この花は 花壇に咲く園芸種)
            野茨も 若葉ぐんぐん 皐月〔五月〕備え?
                鬼田平子(おにたびらこ)すらり影落つ 夕日影
           今年はまた 美麗 綺麗な 桜並木
                   満開の花見 十年に一度の見事哉     
                 手毬のような 花房 四方の枝枝に
            幼な木や 継ぎおりぬ 桜古樹
              幼木も花咲かせおり  頑張ってね
             元気でねと 〔幹〕撫でれば 枝(え)揺れぬ 桜幼木   
                   花色の雲立ち籠るや 桜並木
                     睦み合い 生いぬ 繁縷(はこべ)とかすま*哉
                             (*かすまは烏と雀の野豌豆の中間種)
                                  平成30年3月31日
                                       <10首>
             気怠さに沈みつ 夢想 花の雲
           青空に 花下臥(したぶ)し またの夢
              見上げれば 月 春惜しむ 我(あれ)も亦
               春惜しむ月 過ぎ行きて 花満開
                    麗らかな 春日に春風 桜花
                  お花見まで 暫し待たれよ 春風よ
             春風や 桜花 な散らせそ 暫し待て
                        鬱うつら 花見の夢見 儚きこと
                  いざ行かむ 花色バッグも 花見待たむ
               めらめらと 紅蓮(ぐれん)の焔 要黐(かなめもち)
                                平成30年4月1日
                                    <23首>
          辛夷(こぶし)の花弁(はなびら)散りぬ 綺麗なまま
                ついさっき 散りぬるばかりの 花辛夷
                     辛夷 散りぬ 花弁の瑞々しさ
            星の如 煌めき咲きぬ 花韮よ
                躊躇いぬ 桜の花弁 敷く道路
            生垣の緑に 桜花 艶めかし
             舞い散りぬ 桜の花びら 生垣に
              酔椿(すいつばき)* 白から紅へ色移り
                   (* 芙蓉には酔芙蓉の名あり 色移りする)
                 七分咲き椿 谷間に 泰然と
              小鳥誰(た)ぞ 鳴き声ばかり 春の空
                    菫見ぬ 春こそ 物の寂しけれ
                 彼方此方 射干(しゃが)咲きぬ 木下蔭
              や〔っ〕と菫 十二輪も 微風(そよかぜ)に
                      桜花の絨毯(じゅうたん) 織るる 春の風
                 春山を 桜木綾なし 春錦
            赤松も 観桜するらむ 今日(けふ)の山
                     烏 飛び来 トコトコ歩き お花見かな
                    生垣に 桜舞い止まり 花となり
             鏤(ちりば)めぬ 辛夷(こぶし)花びら 桜木下
              咲き初むと 思えば散り初む 桜花
                  花の色 こんなに 綺麗だったのね
              花の色にぞ  驚きぬ その綺麗さ
                             平成30年4月2日
                                   <13首>
                      漸うに 白き花房 ライラック
                 ライラック 小さき小さき 白き花
                       ー桜花に押され 影薄き存在なれど
             ライラック また一つの 春の景                
                   花菫 懐かしき友に 出会うよう
                 葉牡丹や 円錐形の 背比べ
              芝桜 彼方の桜花 と 春の宴
            巻き付きおり 雀野豌豆 雀の槍に
                   空色の小さき宝石 花胡瓜草
               胡瓜草 空色小花の 長尾かな
                  当てもなく 伸ばすや髭蔓 烏野豌豆 
              雀の槍 槍尽くしの 春の野辺
                  八重椿 緋色の花冠 落ち椿 
                    落ち椿 何処か寂しき 春の夕暮れ
                                  平成30年4月3日
                                       <19首>
                  花吹雪 春の吹雪の物語
            花吹雪 春の嵐に 猛吹雪
                     花吹雪 観たことの無き 壮観さ
              酢漿草(かたばみ)や 小さく 黄色く 咲きおりぬ
                  吹き寄せられ 且 散り広がりぬ 桜花
             春風に 花びらの円舞 彼方此方に
              視界失 桜吹雪の 大乱舞
                風吹く毎 花弁(はなびら)の波紋 花弁変化(へんげ)
                  弧を描く 花吹雪や 道路上
             桜並木 路上も お花見 花弁(はなびら)見
               風のまま 吹くまま 散りぬ 桜花
                  或るは 静 或るは 荒の 桜吹雪
             花吹雪の中 我(あ)一人歩む贅(ぜい)
              春風にも 梅の樹元や 静かなり
              吹く毎に 桜花びら 荒れ荒ぶ
                            噴煙の如く吹くるる 花吹雪
                  花吹雪 積り行く路傍 延々と 
              クリスマスローズ 居心地如何 青木下
                    塀見越し ライラックの花房 紫紅色の
                                平成30年4月4日
                                      <8首>
                    兎菊 ロゼット 青青 花待つらむ
                羽搏きぬ 紫紅の木蘭 夕空に
                    樹賑わす 緋色の花花 八重椿
            チューリップ 二輪仲よく 花鉢に
               プランター 春の 花 花 乱れ咲き
                 雪柳 石垣の隅から 枝垂れ咲き
           ぽつりぽつ 花との別れの 雨の始め
                   連翹(れんぎょう) 此処我(あ)が庭に 果つるとも
                                 平成30年4月5日
                                     <20首>
            ひっそりと いつもの処 菫草
                菫草 繁縷(はこべ)と混じりて 春愁や
                  混生葉 瑞々しき哉 西洋蒲公英(たんぽぽ)
              食すなら お浸しにも サラダにも
                花水木 花芽(かが)綻びぬ  春麗ら 
           池の面 花筏(はないかだ) 流るる 春風も
               ぱくりぱくり 桜の花びら 池の鯉
                      鯉 花びら食(は)みおり 驚きぬ
                桜花の味 如何かと 鯉に問い
                   ひらひらと 一弁(ひとひら)散りぬ 残り花
              スノー・フレーク 緑の中に 白水玉
          小花 溢(こぼ)し 半狂乱の如 雪柳
               枝(え)振り乱し 自由気儘な 雪柳
                  四方八方 枝振り翳(かざ)し 雪柳
                       桜木は 渋紅の萼残りて 夕日影
                  花びら 数多(あまた)路傍に 春偲ぶや
              辛夷(こぶし)に水仙 白花尽くしの 清艶さ
                      夏蔦や 三日見ぬ間 萌黄色
                春爛漫 花椿 色色繚乱
               椿の字面 木に春は 宜(むべ)なる哉
                                平成30年4月6日
                                    <10首>
                            ー 園芸用の鋏に置き忘れ
                 木鋏よ 其処に在れかし 見つけるまで
           花冷えや 嫩葉生き生き 萌え立ちぬ
              濃桃色 八重桜や 濃艶な
                ほんわりと 咲きぬ淡紅 八重桜
             花と葉と ともども 愛しき 八重桜
            春愁 否否(いえいえ) 楽し 独り居日和
           花冷えに 花曇りあり 花雨も
                 花見こそ 至上の楽しみ 独り居の
                   日長が降る 春雨 花雨 別れの雨
                                 平成30年4月7日
                                      <11首>
             春の嵐 花も 陽気も 吹き飛ばしぬ
              花冷えに 桜も陽気も 何処へやら
                 逆戻り 花冷えや 花散りぬれど
            ぽかぽか陽気 蒲公英(たんぽぽ)も 浮かれ顔
              坂路の蒲公英 次々 今 闌(たけなわ)
                            蒲公英の英名 ダンデライオン〔獅子の牙〕 何故に
                      葉の羽裂 宜(むべ)なる哉と 頷きぬ    
               関西蒲公英* 華奢 繊細な 根生葉  
                     (*蒲公英には3種類あり:関西;関東;西洋と)
                関西蒲公英 ロゼット お洒落なレースの透かし〔模様〕
                  花の雨 若草青青 山里は
                     樹木 芽生えぬ 新芽の候や すぐ隣り
                                 平成30年4月8日
                                      <31首>
          淡紅と白 平戸躑躅の花芽(かが)の色
              枯蔓に嫩芽 凌霄花(のうぜんかずら) 春の情
        白花蒲公英(たんぽぽ) 葉葉広げおり 日向いに
                我此処に 白花蒲公英の アピール 
           木通(あけび)の 萼 花とばかりに 見紛いぬ
             木通の花〔萼〕 ぶら下がり揺れおり 春風に
              木通の萼 萼 萼 房と なり垂れおり
                             木通 五葉の掌様に開きぬ 春雨に
           土筆見ぬ 杉菜(すぎな)ばかりの 春日かな
            赤芽柏 赤味の若芽 際立ちぬ
              しんなりせり 寒の戻りに 蒲公英ら 
          春風に 急かれ せからし 散歩路 
                    虎杖(いたどり) 伸伸 雨後の筍の如
                プランター 何処も彼処も 百花繚乱
             緋色チューリップ 青紫のムスカリ 春のマッチング
               三つ葉躑躅(つつじ)はや 咲き揃いぬ 淡紅紫に
                 樹木透かし 三つ葉躑躅の 遠見哉
            躑躅 もう咲き落ちて 木下のラグ(/絨毯)
              雪柳 小米花散りて 実膨らみぬ
                    白花馬酔木(あせび) 素朴な風姿 鄙想う
             鴨脚樹(いちょう)の嫩葉 まだ雛〔鳥〕の脚 愛らしき
                  烏野豌豆 莢先に枯花残し くるん
            忽然と  菜の花畑 葉牡丹花
                   寒の戻り 憶えず襟立てぬ 春昼
              芋酢漿草(かたばみ)  咲きて震えて 寒の入り
                 一気咲き 一・二・三 ・・・ 菫草
                    数えれば 百輪 絢爛(けんらん)菫草
              それでも 猶 菫は菫 そ〔っ〕と咲きぬ
            遠見には 赤芽柏(あわめかしわ)の嫩葉 花の如
                 ぱっ~と 花やか射干(しゃが)の花花 木下蔭
                                               平成30年4月9日
                                       <13日>
              かすま野豌豆 何処へ行ったの 姿見ぬ
                  見つけたりかすま野豌豆 生垣下
              かすまの名 烏(からす)と雀(すずめ)の間(ま)に由来
                 なんと言う 不風流な 名づけなこと
                野豌豆 烏(う)雀(じゃく)かすまも 野辺に〔勢〕揃い
                 か細き 花柄(かへい) 蝶形花二輪 かすま野豌豆 
                    花柄先 二輪ブランコ かすま野豌豆
           芝桜 花壇の縁飾り カラフルな
                薄紫 紅 渋桃 白 朱赤* みな 芝桜の花色
                             (*漢字一語扱い)
                   匂い菫 消えそうに小さき 白も紫も
                      それでも猶 咲き続きぬ 可憐さよ
            長実雛罌粟(ながみひなげし) もう実となりぬ 春速し
                 暗橙の 花びら優し 長実雛罌粟
                                      平成30年4月10日
                                            <21首>
               山山は 浅緑 万緑 春の錦
                  蔓桔梗(つるききょう) 風車似の花 ふるふるる
              辛夷*(こぶし) 八重桜* 芝生の庭の 春盛り
                                  (*漢字一語扱い)
                落ち椿 溝底に独り 春惜しむや
           胡瓜草 雀野豌豆 姫踊り子草 野辺飾り       
                   春の野辺 皆皆 楽し気 春麗ら
                      春草に 近づくや 小虫のスクランブル
                  春草を 眺むも 小虫 ブ~ン ブ~ン
             蒲公英(たんぽぽ)の綿毛 飛ぶ飛ぶ 野辺の径
               半月形 蒲公英の綿毛 残りおり
                  苗代苺 花まだ咲かぬ 春の野辺
                    薺(なずな) 白花小十字の 花冠集
            柔らかな若葉の薺(なずな) 食すは 哀
               川辺りに 草叢 繁し 花大根
                   川辺りに 紫の帯 延々 花大根
                白花蒲公英(たんぽぽ) 独り 離れて 柵の下
            枇杷の 青き小さき 果実 三つ 二つ
                   八重桜 淡紅も白も 愛(は)し風姿
                      藪椿 上向き 横向き 俯き
                    頭(こうべ)上げ 今咲くばかりの 長実雛罌粟(ながみひなげし)
            朱めきぬも まだ項垂(うなだ)るる 長実雛罌粟
                               平成30年4月11日
                                      <21首>
               まあっ 一杯 夏茱萸(なつぐみ)の白花 通りすがり
           もう 咲きぬ 夏茱萸 今 未だ 夏ならぬ
                   夏茱萸や 白四弁(よひら) 筒形に垂れ
                光る 光る 夏茱萸の 白き筒形花
                      春風に 銀灰の葉裏 揺れぬ 夏茱萸の
            平穏な 春の一夜(ひとよ)や  一幸あり
                春の夜半 悉皆(しっかい)ゆったり 春の夢
                    花韮の 花色 色々 紫 白 薄紫*
                                     (*漢字一語扱い)
                 そこはかと 匂い立ちぬ 春の小夜
                       幽玄な 春の夜の物語 如何
               嫋やかに 更け行く春宵(しゅんしょう)  また楽し
                              平成30年4月12日
                                      <6首>
                   鬱入りぬ 世や麗らかな 春と言うに
               うつうつと一日(ひとひ)過ごしぬ 春や彼方
             庭へ出で 春草抜けば  若草の香
                  燃え盛る 焔の如 新緑萌え
                     日影と日蔭 花韮の花色 紫と白
             開花 盛花  飛花 落花  桜花の一生/一春
                                  平成30年4月13日
                                       <9首>
            日溜まりの 蒲公英(たんぽぽ)写す 胡蝶の影
                       一気に来ぬ 春 爛漫の一季 哉
                思いっきり 翅広げ舞う 紋白蝶
                  晴れやかに 飛び翅休めぬ 紋白蝶
           時ぞ 今 ”我が世の春” と胡蝶 舞い
               音もなく 流るる 漣(さざなみ) きらきらきら
                      咲き誇る 射干(しゃが)や 今年の春の妍*
                               (*美しいこと/艶めかしいこと)
                   蒲公英(たんぽぽ)より 色濃く艶な 大地縛り(おおじしばり)
                    水仙から射干(しゃが)へ 移ろう 山辺哉
                 遅咲きの水仙に 春草集い来ぬ
                               平成30年4月14日
                                       <28首>
             芋酢漿草(かたばみ) 桜の切り株 縁飾り
                        切り株に酢漿草 自然の情や知る
                  芋酢漿草 久し振りなり 見慣れし風姿
              一輪だけ 大きく咲きぬ 芋酢漿草
            もしかして 彼(か)の花〔=芋酢漿草〕 花酢漿草や
                            - 昔日の庭を思い出しつ
          花酢漿草 幾年の春 咲き乱れおりぬ
                 或る春に 忽然と消えぬ 花酢漿草
                    今の春に 忽然と 甦りけるや 花酢漿草
               芋酢漿草 花酢漿草となりて 咲き出(いづ)るや
           宵待ち草 一輪萎みて 一輪咲き
               宵待草 一輪 鮮黄 春日中
                         宵待ち草 宵まで待てぬや 誰を待つ
                  一夜明け 渋橙に萎れ* 待ち草臥れ?
                       (*宵待ち草は 黄から渋橙へ移ろう一夜花) 
             蔦葉海蘭(つたばうんらん) 淡紫に 石垣を
                石垣の蔦葉海蘭 春の錦
                    蔦葉海蘭 一花 一花や 花車な小花
                 蔦葉海蘭 花数寄れば 春の華
            春野芥子 (はるのげし) 春を満喫 のびのびと
              春野芥子 春のサラダに 蒲公英(たんぽぽ)と
                    試したこと 無かれど嫩葉 食用なり
                葉ばかりは 虞美人草(ぐびしんそう)似の 春野芥子
           吃驚せり 春野芥子に 鋸鮫(のこぎりざめ)葉
               彼(か)の春草 鬼野芥子と知りて 安堵せり
                鬼野芥子鋸歯(きょし)剥く若葉 ジョーズの如
           春風に 小さく鈴振る 鈴萱(すずかや)は
                広がりぬ 曇天 明日や 春嵐や
                    窓ガラス 雨滴ぽつぽつ 如何あらむ
                               平成30年4月15日
                                    <10首>
             春雨や 奔流となりぬ 用水路
                   雨止みぬ 元の静けさ 春の宵
               また降りぬ 小春の小夜の小雨かな
                露を置く 青草 青々 春の野辺
                雨上がり 姫椿の嫩葉 雫(しずく)
             見覚えの葉形 ロゼット 何(な)の花や
               数日後 思い出したり  酸葉(すいば)なり
                   忘るるを 思い出するは 春の慶事
           潜り抜けるる 藤蔓の 垂るる下
               まだ疎(まばら)なれど 藤の花咲き初む
                      彼方此方に 蒲公英(たんぽぽ)の黄花 春日影
            倒れつも 猶咲きぬ 蒲公英 彼(か)の性(さが)や
                   黄から緋色 チューリップ 咲き継ぎぬ
               藤満開 花房 夫々 疎らなれど
                淡紫 花房 遠見にも 近見にも
                  山藤 繚乱 嫩葉も 花房も
               萼落ちぬ 花の末知る 塀の上
                    金雀枝(えにしだ)の黄蝶形花 葉影に舞い
              立ち上がりぬ 酢漿草(かたばみ)黄頭花と共に
                 黄梅(おうばい)や 金雀枝と隣り 今年も亦
                  金雀枝と似たり の黄花 群雀(むれすずめ)
                窄みたる 待宵草の哀れなる
                         宵は 未だ 一輪咲きおり 待宵草
                  酢漿草(かたばみ)の黄花挙りて 日向かいぬ
           落ち椿 長実雛罌粟(ながみひなげし)の直ぐ側に
               落ち椿 水流る溝に 春日影
              落ち椿 紅に白絞り そのままに
                  渋橙の花弁(はなびら)一弁(ひとひら) 草の上
                   長実雛罌粟 咲く野辺 春や闌哉
                        花 蕾 実 風姿色々 長実雛罌粟
                                   平成30年4月17日
                                         <8首>
          計らずも 小園となりぬ 長実雛罌粟
                長実雛罌粟 大小取り取りの 花冠かな
            すらりの茎 四弁(よひら)の花冠 鄙(ひな)の風情  
            鄙の風(ふう) なれど エギゾティックな 長実雛罌粟
                    七輪の花冠 長実雛罌粟 春麗ら
                  もう七輪 咲くは今やと 首擡(もた)げ
              春愁(しゅんしゅう) 灯火 灯(とぼ)しぬ  春宵(しゅんしょう)
                花弁(はなびら) 一弁(ひとひら) 舞い落ちぬ 唇に 
                                  平成30年4月18日                           
                                       <12首>
             朝咲きて 昼下がり 散りぬ 鬼田平子(おにたびらこ)  
                 一日花 もう凋みたり  黄小花 哀
                   夕日影  もう 凋みおり 鬼田平子
             花逍遙 小鳥の声や 何処か長閑(のど)やか          
             緋 白 黄 紫 橙* チューリップの花色 繚乱
                            (*漢字一語扱い)
                そ〔っ〕と咲きぬ 踊り子草や 花壇隅
                  紋白蝶 彼方此方へ 花逍遙
                     紋白蝶 菜の花ならぬ 蒲公英(たんぽぽ)へ
             石垣に 咲き継ぬ 源平小菊や 障壁画
              白から紅 源平小菊や 暈(ぼか)し染め
                   白から紅の 源平小菊の 暈しや 愛(は)し
                              平成30年4月19日
                                     <9首>
             またまた 七輪 咲き継ぎぬ 長実雛罌粟(ながみひなげし)
                   花椿 うらぶれぬ風姿 春よ アデュー 
           青き花芽 花色は如何 チューリップ
              青草に 熱気降り注ぐや  四月夏日
                    陽炎(かげろう)の 立ち上るる芝生 懐かし
          蔦葉海蘭(つたばうんらん) 薄紫に笑む 春日影
                彼方此方(あちこち)に 小花園開きぬ 蔦葉海蘭
                     スペアミント 萌葱の若葉 七重八重
             今が頃 スペアミントの 若葉や見頃
                               平成30年4月20日           
                                      <20首>
                絡み合う 蔓 自然の藤棚 自然の妙
                  見え隠れ 葉隠れに 藤の花
            ついこの間 蕾の房に 花疎ら
                      一気咲き 藤の花房 藤 藤 藤
                 素朴 豪華 山藤の花房 今見頃 
                    目を見張る 藤の花房 藤錦
                      数えれば 百数十輪 藤花の房
                藤色も 華やか艶やか 藤の花
                   藤 美麗 一房 一尺足らずなれど
                緑児(みどりご)の邪気無き笑顔 藤の花
              緑児の瞳に映えぬ 藤の花
                緑児の 指差す 彼方 藤の花
                    幼な指 そっと摘まみぬ 藤の花
             平戸躑躅 花や 紅白 初夏の笑顔
                錦哉 新緑 万緑 綾なす谷間
              菊? 蓬? やはり小菊の 嫩葉なり
          雪冠の如  白花の花水木
            野路菊 小菊 嫩葉の盛り 嫁菜も亦
                 蔓もまた 様々が腕延ばしおり 初夏模様
              赤芽柏(あかめがしわ) 赤色薄れ 薄色若葉
           蒲公英(たんぽぽ)の 真ん丸綿毛 飛ぶを待ち
             青蔦に青紅葉 気分は 初夏
                   電柱に纏わりつきぬ 樹と紛うや
                             平成30年4月21日
                                  <8首>            
         長実雛罌粟*(ながみひなげし) 花弁(はなびら)と見しや 暗橙の蝶
                              (*漢字一語扱い)
           〔暗橙の蝶〕 長実雛罌粟の化身(けしん)の如 舞い 青空へ
         春野芥子(はるのげし)咲き 長実雛罌粟の 宴(うたげ)入り
               庭真中 独り佇む 長実雛罌粟
        蒲公英(たんぽぽ)のような 黄小花や 鬼田平子(おにたびらこ)
            毛虫嫌い されど 幼き(の這う)は いと愛らし
               幼虫を そっと返しぬ 皐月躑躅(さつきつつじ)
                   もう夏日 となりにけるかも 初夏の初め
                              平成30年4月22日
                                     <10首>
           庭に出で 草抜きに興ずるが 我(あ)が行楽
                  枝払われ 庭樹 すっきり 初夏の風
             枝払われ 夏日差し 四方八方から
           長閑やか と言えど この熱気 初夏に非ず
              甘酸っぱき 苺 さっぱり 初夏の香
             苺食(は)めば 初夏の香りや 沁み渡る
                 ひらひらら 蜆蝶(しじみちょう)楽し ひらひらら
            枝払わる庭 蜆蝶 早速 浮かれ舞い
              枝払われ 我(あ)が庭 ちょっと 広くなり
                   草毟り 香気ふうわり スペアミント
                                平成30年4月23日
                                    <19首>  
         自然のまま 咲き誇りぬ 山藤花
            素朴な風姿 人手の入らぬ 山藤花
                        藤色に垂れるる花房 石垣下
             石垣下 見上げれば 藤の花房 次次と
               見上げれば 藤の花房 百数十
                 見上げつつ 藤花房 の下歩みぬ
             片アーチ 造りぬ 藤房 見事なり     
                     潜り抜け 藤花房の片アーチ
                        紫雲 垂れ籠めるが如 藤花房
             万緑の谷間 濃き藤色 鮮やかに
                 彼(あ)は何(な)の樹 藤花に似たる花姿
                    桐とぞ見ゆ 藤より濃き 藤色に
            其は 桐の花 昇り藤の如く 咲く 風姿
                蘖(ひこばえ)生う 伐られし桜樹の根の株に
                   桜樹の 生命力に 心震え
               愈(いよ)増しぬ 濃桃の芋酢漿草(かたばみ)
           桜根株 寄り添いて咲く 芋酢漿草 優し
             長実雛罌粟(ながみひなげし) 繁縷(はこべ)も同じ寄り添いぬ
                桜並木 す〔っ〕かり 青葉並木となりぬ
                               平成30年4月24日
                                     <26首>
         行く春や 鬱残しつつ 去り行きぬ
             遣る瀬なく 動悸高ぶる 春の鬱
                  春嵐 と身構えしが 小雨 鳥渡(ちょっと)
                      鬱や鬱 耐え難き哉 春の鬱
               咽び鳴くような 春風  嵐催(もよ)い
                 雨雫 梅の梢に 光りおり
             花水木 葉葉より 雫 三つ 二つ
                  見つけたり 杉菜 我(あ)が庭の片隅
              早春も 今も見ぬ 風姿 杉菜の子〔土筆(つくし)〕
                土筆見ぬ 春こそ蕭条(しょうじょう) 物足りぬ
             長実雛罌粟(ながみひなげし) 一輪 他は未だ花芽
              虎杖(いたどり)林立 ここ数年の 春の慣(なら)い
          鬼田平子(おにたびらこ) 薺(なずな) 長実雛罌粟(ながみひなげし)
                 蔦葉海蘭(つたばうんらん)* 春のオンパレード
                               (*漢字一語扱い)
         旧葉凋落 新葉清清 初夏の篠簇
             薄墨を 刷けるが如 叢雲立ちぬ
                  雲彼方 薄墨 濃淡 鳥の影
            白花 見たり 苗代苺の簇の蔭
               一夜雨 草草 蘇生 春の生
               白花蒲公英(たんぽぽ) 花見ぬ間の綿毛かな
           暗紅紫の酢漿草(かたばみ) ひっそり 路の端(は)に
             この小簇 姫酸葉(すいば)やも 路の縁
                   姫酸葉 野原に咲くが如 のんびりと
           蒲公英(たんぽぽ)綿毛 大きも 小さきも 風に吹かれ
                野豌豆 莢 皆空向きぬ 烏も雀も
                雨雲去り 満天青空 春日差し
                     秋の空 ならぬ春空 移ろい易(やす)
           紫露草(むらさきつゆくさ) 独り外れて 石垣下
                               平成30年4月25日
                                      <10首>
                幻視あり 麗らかな野辺 土筆(つくし)出ず
                 〔土筆〕青きも 薹立つも 幻視もや楽し
             立ち酢漿草(かたばみ) 花冠 擡げつ 立ち上がりぬ
            苗代苺 白花と見しが 新芽の巻き裏
                   姫女苑 すらり すらりと 野辺に立つ
               酸葉(すいば) 姫も集まり 野辺や新装
             生垣から 蔓木通(あけび)伸張 新調せり
                         蜜柑 鈴生りの花芽 花やもう直ぐ
               思い掛けぬ処で 邂逅 紫花菜(はなな)
                  何処に生うや  此んな処に 紫花菜
                                 平成30年4月26日
                                     <10首>
           花大根 会えぬは 寂し 何処ぞ にぞ
                  花大根 出会えぬ寂しさ 愈(いよ)よ 増し
              何時も見ぬ 垣根の近く 見ぬ花大根
                花大根 紫花菜 似たりと見えど 違いぬ二人(ふたり)
                     花大根 大根に似たるや 花も葉も
                      花色は 紫なれど 菜の花似の 花大根
                 空豆や 葉ばかり育ち 実やは見ぬ
              諦めず 葉蔭除けば 空向きの莢
                     小振りなれど 空豆の莢 元気一杯
                         隣り合う 豌豆の莢 弾けんばかり
                ぱんぱんに 育ちおりに 莢豌豆
                                  平成30年4月27日
                                        <6首>
                 咲き零れそうな 金雀枝(えにしだ)黄蝶花
                           花盛りの 金雀枝 もう溢れ落ち
                      姫踊り子草 葉色 衰えるとも 白緑
                         白緑の姫踊り子草 迫力あり
               見越しの卯の花 見ずや 向かいの花水木
                   青葉燃え 初夏の谷間 潺(せせらぎ)の声
                               平成30年4月28日
                                   <17首>
             紋白蝶(もんしろちょう)まだまだ 我が世の 独り舞
               木下蔭 射干(しゃが)の淡紫花 まだ盛り
                    水仙枯れ 無残な姿 哀れ哉
             遅かりし 金雀枝(えにしだ)の輝き 失せおりぬ
                金雀枝(えにしだ)〔の花〕見 勇みて逍遥 噫 落胆
                 撓るる枝 花黄梅 晴れやか ブランコを
                     青紅葉 打ち続く木立 初夏の香
               シャスタデイジー 花芽の白きや 目立つ初夏
                 万年草 黄花群れ咲きぬ 初夏迎え
                    蒲公英(たんぽぽ)の綿毛 飛び立ちぬ 祝旅立ち     
             青葉垂るる路 首傾げつつ 通り抜け
                 谷間も 新緑 万緑 燃え立ちぬ
                   子持ち撫子 花壇に浮かぶ 島(簇)造り
               黄梅 金雀枝* 黄色尽くしの 散歩路
                                (*漢字一語扱い) 
                 出会えたり 嬉し クローバー 四つ葉でなくも
                 地に落ち 腐(くた))となりぬ 金柑 哀れ
             野豌豆 莢 黒褐色 烏〔野豌豆〕も雀〔野豌豆〕も
                                 平成30年4月29日
                                       <14日>
              道路 飛ぶ鳥影 晴れやか 初夏や来ぬ
                     赤芽柏 薄緑に沈みぬ 木下蔭
               黄梅(おうばい)や 花 撓り枝に 疎に散らし 
                      黄梅や 花密に咲くに 今年は 疎
                  行楽は 我(あ)が庵(いおり)辺り 一巡り
                木香薔薇(もっこうばら) 匂い遣せよ 白花ならば
                    黄より白 芳香放つ 木香薔薇
                     花の所為(せい)? 春匂わぬは 鼻の所為?
                木香薔薇 まだ花芽残りおり 初夏の空
                   また来むと 木香薔薇の 五分咲きに
                      甘やかな 黄花詰め草 まだ春ムード
                 黄花と白花 詰め草二種(ふたり) 隣り合い
                   詰め草二種 類は友呼ぶ 理(ことわり)あり
              姫踊子草 野薔薇 仏の座 風露草 蒲公英 繁縷
                   お馴染みの処に揃いぬ 春の末
                    高みから 知らんや覗き 胡蝶舞う
               まだ咲きぬ 一輪 長実雛罌粟(ながみひなげし) 愛しの風姿
                      春野芥子 真ん丸綿毛 春の末
                          そ〔っ〕と触れば 綿毛零るる 春野芥子
                ジャスミンの 黄花のフェンス 今何処
                   想いの外 ジャスミンと邂逅 感嬉あり
                 茉莉花茶(まつりかちゃ)* 香しき哉 初夏の食卓
                                 (*ジャスミンティの別称)
              俯きぬ 野豌豆の黒莢 春や惜しむ
                 ショベルカー 唸り声上げぬ 初夏の空
                棕櫚(しゅろ)の樹 ひたすら耐えおり 直ぐ側で 
              淡黄の束 幾重にも垂る 棕櫚の花
                    暑気続き 棕櫚の花や 勘違い?
                ショベルカー  ジョーズの如き ショベル剥き
             一八〔/鳶尾(いちはつ)〕 だけ 整地のジョーズに呑込まれず
             よく耐えたわ 思わず撫でり 花一八
                一八の 大輪の白花 軽やかに
                   整地の側溝 アディアンタムも 根こそぎ無く 
                友失うも アディアンタム一株 生き延びぬ
                      友得ること 衷心より 祈るばかり
                     杉菜 見つけり 太藺草(ふとい)の隣り 驚きぬ
               大小の差あれど 太藺草と杉菜 似姿なり[/相似形〕
                                平成30年5月1日
                                    <19首>
            揚羽蝶 舞う 影も舞いぬ 初夏の路
              夕方夏日 もう夕涼み やっと皐月
                飛び来たり 源平小菊へ 胡蝶 小虫 
            紫蘭(しらん)なり この花 誰ぞと 待ちおりぬ
                 シャスタデイジー 咲き乱るる野辺 元松林
               白き花冠 花茎 戦ぎぬ 初夏の野辺
           淡紅紫の花冠 春紫苑(はるしおん) 其処此処に
                春紫苑 花冠くっつけ 何(な)の相談
                 春女苑(はるじょおん)も ひ〔っ〕そり可愛い 顔を見せ
          木下蔭 クローバー ゆったり 群れ咲きぬ
                  クローバー 八の字斑入り葉  重ね生い
                    クローバー 日影にも咲きぬ 白き風姿
            黄花詰め草 当て所定めず 花盛り
                黄花詰め草  此処にも咲きぬ 気紛れなの?
                      盛り過ぎ 落ち躑躅(つつじ)* 其処此処に
                          (*落ち椿を捩って)
                      鬱蒼の木蔭 初夏の 木漏れ日や
                   一休み 遠回りの散歩 疲れ果て
              夕烏 悠然と飛び去りぬ 夕焼け空
                 辺り静寂 聞こゆるは 我(あ)が 耳鳴り
                             平成30年5月2日
                                  <22首>
            桜草 春に遅れて 今ぞ咲きぬ
               今来(いまき)鳴く 鵯(ひよどり)番(つがい) 春の睦  
                皐月躑躅(さつきつつじ) 咲き初む 皐月来たるらし
            彼方此方 箆大葉子(へらおおばこ)の花穂 揺れ揺れぬ
                  箆大葉子 花穂に白き環 ひらひらひら
               何(な)の花ぞ 何時咲くらむ と待ち侘びぬ
                 紫蘭(しらん)なり 紅紫色 咲き初めば
                     幾年(いくとせ)も 花無き花水木 葉ばかり 
           花水木 花無き春や 疎まれる 
               心あらば 来春は咲け 花水木
                    今更に 空な曇りそ  初夏の夕
                 庭掃除 茱萸(ぐみ)見つけたり 今日(けふ)の幸
           二種類*の茱萸 見つけたり 梅の樹下
                       (*蔓茱萸と夏茱萸)
                青嵐 不気味に轟く 夜半恐ろし
                 流木の打ち寄せらるる 初夏の浜
           生まれしより 共に 生いたり 庭の葉蘭
             誰よりも 長年の友垣 〔葉蘭〕愛し
           葉蘭 猪(しし)の好物 団子虫の棲む
              猪(いのしし)に 掘り返されり 葉蘭 哀れ
                   植え移し 葉蘭枯れたり 春始め
            哀れ 葉蘭 水上げるるも 枯れ行きぬ
              目前を過(よぎ)る 虫影 天牛(てんぎゅう)*か
                              (*髪切り虫の漢名)
                               平成30年5月3日
                                  <18首>
                  菫草 もう夏葉にや 衣替え
                        菫草 夏葉となりぬ 一足早
               小判草 小穂の幼き いと凛々し
             半円形の 小手毬の 小花 愛らしき
                 源平小菊 白より渋紅 夏日差し
               胡瓜草(きゅうりぐさ) 薹(とう)立ちぬ風姿 涼し気な
                    胡瓜草 花盛り見ぬ 悔やまれぬ
                  黄梅(おうばい)や 零れ落ちぬ 源平小菊の上
            シラー 草叢の奥に ちらり見え
               ヴィオラ 独り 何処から飛び出し 来たのかな
                木の間飛ぶ 彼(か)は 烏揚羽か 彼(か)の影か
         鳶尾(いちはつ)や 大輪豪華 初夏の空
              若葉 青葉 花躑躅(つつじ) 紅一点
               都忘れ 洗練 優雅 鄙忘れ
            都忘れ 山辺に置けば 深山嫁菜(みやまよめな)
                 初夏よりも 秋偲ばるる 都忘れ
                       海原へいざ漕ぎ出でぬ 都忘れ
                君子蘭 橙と黄 染め分けおり
                  ご機嫌は如何 君子蘭の君や
                                 平成30年5月4日
                                      <10首>
             皐月躑躅(さつきつつじ)咲きぬ まだ数えるほどなれど
               皐月咲きぬ 一輪 二輪 まだ数えるほど
                 皐月躑躅 漸う 咲きぬ 一・二輪
               見渡せば 紅(くれない)に燃える 花皐月〔躑躅〕
              今年の春 小さき花姿 を 犬鬼灯
               犬鬼灯 早 小花散らしぬ 緑葉に
             要黐(かなめもち) 赤芽輝く 弥生の庭
               要餅 白小花の半月 卯月初〔旬〕
                皐月初 要餅 枯れ行きぬ 哀
                                 平成30年5月5日
                                        <21首>
            花びらを 置き忘れたような 蛾 蔦葉上
              飛び出しぬ 薄羽蜻蛉(うすばかげろう) 葉蔭から
          酸葉(すいば)生う 其処は 土筆の生うる場処
              卯の花咲きぬ 卯の花腐(くた)し 始まるや
            ひらひらひら 蝶の影 追う 夕日影
         風露草 長実雛罌粟(ながみひなげし) 胡瓜草・・・野草の園〔/宴〕
               胡瓜草 空色の花ジュエリー 咲き乱れ
            石垣這う 凌霄花(のうぜんかずら) 若葉青々
              黄水仙 静かに咲きぬ 五月晴れ
              藪虱 実結びぬ 名の由来の*
                        (*藪虱の命名は実の形が虱似だから 不粋)
           藪虱 花白色で 清楚 可憐
             飛び去りぬ 鳥影 もう 燕飛来 
                  アディアンタム 友 愈(いよ)よ 増えり 五月晴れ
           薔薇咲きぬ 黄 橙 紅のグラデーション
            春に遅れ 葱坊主 背比べ 五月晴れ
                葱の擬宝(ぎほう)* 小白花集め 白緑珠も
                        (* 葱坊主 の別称)
           留処(とめど)なく 戦ぐ青草 青葉哉
              ウエーブ〔波〕の如 戦ぎ渡りぬ 青葉哉
                     鬱罹り ベッドで過ごしぬ 五月節(せち)
             端午の節句 池の鯉 泳ぎおり 菖蒲下
               池に鯉 鯉幟(こいのぼり)泳がぬ空 虚しさ  
                   垂れ下がりおり 鯉幟 夕凪に
                                     平成30年5月6日
                                        <9首>
                    行楽日和 我(あれ)の一日 鬱日和
                      草臥れぬ ベッドの上の 鬱催い
                  鬱散じの 打つ手の無きや 如何がせむ
                ここ暫く 鬱払いぬ 何事ぞ
               垂れ籠めぬ 薄墨の雲 卯の花曇り
                この沈鬱 嵐の前の不気味さ哉
                      空一面 どんより曇りぬ 風愈(いよ)よ
                    青嵐 流水轟き 小夜更けぬ
                      噫 悲惨 卯の花腐し 花散らし
                                     平成30年5月7日
                                           <10首>
           電線に 独り止まりぬ 雀あり
             五月連休 ホーム・アローンの 雀あり
                   五月晴れ 雀ら 何処らへ 行ったやら
             今一羽 帰り来たりぬ 雀あり
             霞隠(かすみかく)れ 初夏の情景 無為無音
                  ポトリ ポト 青葉の雫 土穿(うが)ち
                今日(けふ)一日(ひとひ) 卯の花腐(くた)しに 明けるるや
            五月雨(さみだれ)や ささめくが如 庭の青葉
                   絶え間なく 聞こゆる雨音 卯の花腐し
             まあっ 綺麗 源平小菊や ミニミニ パノラマ
              双葉 二株 大葉広げぬ 南瓜らし
                                       平成30年5月8日
                                            <15首>
                    連休明け と言うに雀ら まだ帰らぬ
               連休呆け 帰路惑いぬや 雀らよ
           鬱に臥せば 憂きとぞ見ゆる 佳き世もや
               縷々(るる)として続く 初夏山 獣道
                 藤の葉の 間に間に 斑 卯の花見ゆ
                   五月空 梢遥かに 燕(つばくろめ)
               卯の花尽くし とは言え 未まだ 花芽ちらほら
                  野薔薇 葉繁しも 梢花芽未だなり
                 露草 萌えぬ もう梅雨愁うべきや
             金雀枝(えにしだ) 黄金花散らし 莢抱きぬ
             小菊青青 昨冬 寂々〔/弱弱〕なりしが
               大地縛り(おおじしばり) 花茎のカーヴ 幾何崩し
                 庭石菖(にわぜきしょう) 薄紫の花 菫の跡
             スター・ダスト 散らばすが如 花庭石菖
                小夜更けて 物思いおれば 仄明かり
                                     -平成30年5月9日
                                           <9首>
                   色鮮やか 撫子咲きぬ 淡紅 桃紅 朱紅・・・
              大きな莢 朝の驚き 空豆の
                    花青紫 紫露草(むらさきつゆくさ) 青き空
                次々と 青紫の花冠 紫露草
                   歩む毎 紫露草 姿見せ
               鳴り止まむ 夜半の物音 初夏の風
                      皐月雨 雫の冷たき なんてこと
                 鳥渡(ちょっと)見せぬ 真白き花芽 蕺草(どくだみ)や
             暑きに明け 暮るるも まだ冷皐月
                打ち続く 夏日の暑きや  耐え難き
                              平成30年5月10日
                                      <7首>
                     連れ合いて 皐月の空を 燕(つばくらめ)
               燕 尾翻し去る 皐月空
                               - 皐月の風に乗って
                  一弁(ひとひら)散り 二弁 散りぬ 
                         長実雛罌粟(ながみひなげし) 
              綿毛飛ぶ 姫女苑(ひめじょおん)の 綿毛飛ぶ
                驟雨(しゅうう)あり 青葉の影蔭に 雨宿り
                 酸葉(さんば)揺れ 五月の微風(そよかぜ) 酸葉揺れ
            青梅 落ちぬ 青嵐の夜 明けぬれば
                    うとうとと 初夏の一日(ひとひ)や うつうつと
                              平成30年5月11日
                                        <22首>
               風車(かざぐるま)のような 花定家葛(ていかかずら)
             青嵐 定家葛の花 戦ぎ
                 雀ら まだ〔帰らぬ〕 不気味な声や 鵺(ぬえ)やかも
                香(こう)聞かぬ間に 通り過ぎたり 定家葛
               燕 あっ また 燕 青空高く
                        青空 斜め一面 過りぬ 燕(つばくらめ)
               何処からか 烏の一声 初夏の朝
                   青山や 青空映えぬ 燕飛ぶ
              萌葱 浅緑 青* 扱き交ぜ 山山 錦なり
                             (*漢字一語扱い)
            忍冬(すいかずら) 花 白から黄茶  花芽暗紅
                忍冬 春に遅れて や〔っ〕と咲きぬ
              苧環(おだまき)や 青紫の花 満船飾
                薔薇 真紅 二輪 開花 蕾数多 
                        薔薇の蕾 真紅覗きぬ 皐月空
               此んな処に カンパニュラや フェンスの外
              此処にも 薔薇二輪 真紅に咲き
                 雪の下(ゆきのした) 邂逅 思わぬ処に
                   初夏に咲く 雪の下 此は如何に(こわいかに)
            槙(まき)透かし 遠見の海や 茅渟(ちぬ)の海
                  ギリギリギャ~ 啼き去る小鳥 初夏の夕
              新緑 満満 絶えぬ潺(せせらぎ)
                姫檜扇水仙(ひめひおうぎすいせん) 咲き揃いたり 
             輝きぬ 野茨(のいばら)の白き 夕日影
                                 平成30年5月12日                                                     
                                          <17日> 
          水仙枯れぬ 来年の春に 再見(ツアイ・チエン) 
            早 蛍袋(ほたるぶくろ)の候となりぬ
               葉桜を 通り抜けたり 風と我(あれ)
                    風薫る 卯の花の垣根 薫る風
                ヴィオラ 三色小花 百輪 咲きぬ
                   ヴィオラ 咲く 独り離れて 溝の底
                  三色菫(さんしきすみれ) 一色もあり 橙 紫 黄色
              胡蝶菫(こちょうすみれ)*ならば 色問わずもや 三色菫
                                 (*三色菫の別称) 
                   石垣下 群れ生いぬ 小判草 賑 
             絹のよ〔う〕な 花柄(かへい) 垂れり 小判草
              卯の花の 真白き花(か) 花(か) 花(か) 枝垂れ咲き
           卯の花に 群がる小虫 蟻似の蜂似
             卯の花に 顔寄せ夢中の小虫哉
                   卯の花の蜜集め 専らの小虫哉
          紫露草 凋(しぼ)む寂し 初夏の夕
             枯れ行きぬ 猶 一輪咲きぬ 長実雛罌粟(ながみひなげし)
                                 平成30年5月13日
                                       <6首>
          水引の葉 三色(さんしき) 白 渋茶 萌葱
             三色絞りの葉水引 我(あ)が庭の 怪
              雨垂れに 笹の葉揺れる ドレミファソ
                     皐月雨 草木 生々 青々
           一雨毎 庭の草木 繁(しげ)し 茂(しげ)し      
               五月雨(さみだれ)や 潺(せせらぎ)の音 愈(いよ)増しぬ
                              平成30年5月14日
                                    <16首>
                       苔生しぬ 一日の五月雨 生々〔青青〕し
           彼方此方向きぬ 皐月(さつき)〔躑躅(つつじ)〕の花 花 花
               風清やか 吹き渡るるや 皐月躑躅
                 胡蝶の如 綿毛舞い去りぬ  鬼野芥子(おののげし)
               胡蝶と見しや 綿毛の飛び行きぬ
           ハラリ ハラリ 蜜柑の花びら 音も無く
                韮の白き花 黒き果実となりぬ 早
                 漸うに 兎菊 一輪 花芽従え
          鈴萱(すずがや)や 待てど 今年や 未だ会えぬ 
                 待ち人の 来たらぬことぞ 世の常か 
                韮 白花 花頭次々 溝底から
            源平小菊に 代わり 桃色小花* 我が世の春
                         (*彼方此方で見かけるも 名分からぬ)
             荒地の華 長実雛罌粟(ながみひなげし) 彼方此方に
               啼き声あり 電柱の高みに 鳥の影
                 尉鶲(じょうびたき)か 胸の赤褐色 見覚えが
            匂い立つ 卯の花 百弁(ひゃくひら) 夕日影
                                平成30年5月15日
                                      <11首>
            青葉光る 白壁映える 朝散歩
        日向に咲く 金鶏菊(きんけいぎく) 向日葵(ひまわり)の如
        ぽつぽつぽつ 皐月躑躅(さつきつつじ)や 未だ一分咲
           蜆蝶(しじみちょう) 酢漿草(かたばみ)の黄花 此処にもよ
             虻(あぶ)もまた 花から花へ 皐月躑躅
           太陽の 照りつくる庭 今日(けふ)夏日
                夏日の気怠さ 倦みたり 昼下がり
             庭にぽっかり 験の証拠(げんのしょうこ)の簇 浮かびぬ
           すらり すらり 姫女苑(ひねじょおん)も 姫酸葉(ひめすいば)
         青紅葉 一葉 路上に べったりと
            夕凪に 草木沈みぬ 夕日影
                                  平成30年5月16日
                                       <9首>
             蒲公英(たんぽぽ) 夏葉 透かし模様が 幾重にも
             藪蝨(やぶしらみ) もう虱形の 実ばかり
                 藪蝨 白小花冠 可憐なりしが
            海桐(とべら)花 咲く 梔子(くちなし)に 先駆けて
           鈴萱(すずがや) 戦ぐ 盗人萩(ぬすびとはぎ)の中
            箆大葉子(へらおおばこ) 花穂 伸び伸びぬ もう間抜け
            蟻独り 石段下りぬ 夕べ哉
             小桜や 小梅のよ〔う〕な実 密につけ
                通り雨 傘差す間もなく 通り過ぎ
                              平成30年5月17日
                                     <13首>
            草草や それぞれの影 卯の花月夜
              草草や 影影落としぬ 卯の花月夜
               白き月光 冴え 卯の花の小夜 深けにけり
             玉響(たまゆら)の雨 卯の花の 夕曇り
              海桐花(とべら))花花 小蜂出でたり 入ったり
                 海桐花の花 匂わぬ夕べ 老い哀し
                  海桐花の香 小蜂魅せるや 我(あ)匂わねど
             海桐花の花 香しきは 小蜂だけ?
              花続き* 黄小花や続きぬ 初夏の庭
                            (*雌の万年草の別称)
             あらっ 鈴音 見れば 鈴萱(すずがや)のさんざめき
               鈴萱の 鈴音 聞きしは 空耳か
            小鈴揺らし さんざめきぬ 鈴萱哉
                  絹糸のよ〔う〕な茎に 小鈴の鈴萱
                                    平成30年5月18日
                                         <9首>
            よく見れば 鈴萱(すずがや)彼方此方 我(あ)が庭の
              一 二 三(ひい ふう みい) 数えるほど増え行く 鈴萱
            今咲くばかりの 鈴萱もあり 楽し
                 白雨過ぎ 日差し眩しき 午後の庭 
           ヴィーナスの鏡 何処(いずこ)に 桔梗草
             庭石菖(にわせきしょう) 独りぽつねん 庭の隅
               独りと見しや もう一輪 庭石菖
           白き花冠 シャスタデイジー野 通り過ぎ
            ポッケトに忍ばせり クローバーの枯実 
               クローバーの枯実 そ〔っ〕と撒きぬ 我(あ)が庭に
                               平成30年5月19日
                                    <14首>
          フェンス越し 石蕗(つわぶき)ぶきぶき 緑葉見せ
           石蕗の緑葉 幾重 花待つらむ
             すいすい*二輪 ひっそり 野辺の 片隅に
                                   (* 紫酢漿草の別称)
                 卯の花 枝垂れ 白き花芽 未だ 固く
             刈られても 猶 生き継ぎぬ 野草かな
             苗代苺 花芽も 花も 淡紅紫の
                     花びら枯れぬ これからが 赤き 苺の実
           初夏に落ち葉 見上げれば 常緑樹
              桔梗草 皆 枯れ花となりにけり
               薺(なずな) 闌(た)け ペンペン草に なりにけり
                   玉椿 梢の先先 花芽の小房
                    皐月晴れ 小鳥の鳴き声 何処(いずこ)から
             夏茱萸(ぐみ)や 実一つ 垂れぬ 葉蔭奥
                 あれだけの乱舞の花茱萸 何方(いずかた)へ
                                  平成30年5月20日
                                       <15首>
           風薫る  野辺 清々し 春女苑(はるじょおん)
               薫る風 光る日影や 兎菊
                 黄花尽くし 有終を飾るや 兎菊
            黄橙色の 花冠 揺れ揺れ 兎菊
             千切れ雲 何処へ流れる 皐月晴れ
                         天仰ぎ 兎菊 噫(あぁ) 五月晴れ
                双葉から四つ葉へ生いぬ 庭の南瓜
         胡蝶舞う 源平小菊の上 皐月(さつき)〔躑躅(つつじ)〕の上
              黄花散り 綿毛賑わう 野芥子哉
              紫陽花(あじさい)の 蕾や 今未だ 浅緑
           茅渟(ちぬ)の海 我(あ)が想う君 在りやなしや         
                岩に這う 夏蔦繁し 夕静か
                               -TVの映像を見て
               三つ編みに 花後の葉水仙 束ねられ
                     試すらむ 我(あ)が庭の 葉水仙
                叢雲に 卯の花月夜 香しき
                                平成30年5月21日
                                       <9首>
             未だ皐月 下旬と言うに 夏日続き
                    葉影下 胡蝶舞い込む 涼求め 
              子雀や 今朝も独りで 啄み来
                  もう 一羽 飛び来き啄む 子雀と
                 雀らや 五月当初から 姿見せぬ
                      親雀 未だ姿見せぬ 五月末
             何事の起こりたるや 推り難く
                安堵ぬ出来ぬ 千々に乱るる 我(あ)が心
                   唯 無事を祈るばかりの 五月空
                         星影一つ 卯の花月夜 沈沈と
                                  平成30年5月22日
                                       <13首>
              ひんやりと 清清しきかな 皐月の朝
                燕 二羽  青き 猶 青き空 飛ぶ
                  弧を描き 飛び行く鳶(とび)や 皐月波
            黄 黄 黄色 兎菊 今花盛り
              花盛りに 仲間入り 此の兎菊  
                何故に 色褪せたるや 紫酢漿草(むらさきかたばみ)
             皐月〔躑躅(つつじ)〕枯る 花枯るる様(さま) 寂しかる
                 忍冬(すいかずら) 黄ばみつも 匂い遣しぬ
           ブラシの木 雄しべ数多(あまた) 鮮赤色に長く
              甘やかな 鮮やかな花穂 ブラシの木
        彼方此方に 紫酢漿草(むらさきかたばみ)の群(むれ)皐月晴れ
           八つ手の葉 天狗の羽団扇(はうちわ)似 宜(むべ)なるかな
                               平成30年5月23日
                                    <13首>        
             隈笹(くまざさ)の 新葉 青青 隈は未だ
          シトシトシト 日永小雨や 梅雨近し
                     南天の白き花芽 白珠雫
             閉じ籠められ 我(あ)独り哉 託(こか)ち顔
                  日一日 梅雨の先触れか 小雨かな
               小雨に小篠 霊雨とばかりに 生き生きと
                    草草も 愈(いよ)よ 青きの優りけり
          金鶏菊(きんけいぎく)と見しや やっぱり 兎菊
             疎ましと忌し 金鶏菊や 今 懐かし
               暗紅紫の提灯 下げぬ 蛍袋(ほたるぶくろ)
                次々と 飾りぬ 蛍袋 溝の縁
             昨年(こぞ)の初夏と 同じ処に 蛍袋
                   蛍入らぬ 袋や垂らす 蛍袋
                      ひっそりと 山裾に咲きぬ 蛍袋
                 蛍袋 咲き乱れぬ野(ぬ) もう一度
                                平成30年5月24日
                                       <9首>
          日毎 伸ぶ もう猛々し 庭の草草
            山肌に 飛び舞う影や 蝶や 鳥や
                今晴れと見しや 驟雨(しゅうう) 浮気な皐月
          日傘差せば 雨傘となりぬ 片時雨(かたしぐれ)
             日一日 卯の花腐(くた)し 花果てぬ
                    日差し熱し 庭へ舞い来ぬ 胡蝶二羽
              すらりすらり 野辺に大葉子(おおばこ) 皐月空
                星一つ 山際黒き シルエット
                      星影 北 月影 南 皐月の小夜
                               平成30年5月25日
                                      <7首>
              真夏色 艶に輝く 兎菊
                  暑き哉 夏至未だ彼方(かなた) 皐月空
                    この暑さ 皐月と言うに 愈よ 暑き
            夏日厳し 草草生生 我(あれ)げんなり
                   浅緑 のまま茂るる スペアミント
                ハーブ茶を どう作ればと ミントに問い          
             ミントの香 暑気払いに 皐月の午後
                             
                          平成30年 5月26日
                                  <6首>
              菫 蒴果(さっか) 並びおりぬ 花見ぬ間
                大柄の莢 残り 葉空豆(そらまめ) 腐(くた)り
                   玉椿 白小花房 撓(たわわ) 垂れ
                               上に 下に 黄花冠揺れぬ 兎菊
                  日落ちて ひたひた 迫るる 気涼し
               暮れ泥む 皐月の夕べ 白き月
                                平成30年5月27日
                                      <12首>
                 三種類 胡蝶舞い来 白 黒 斑(まだら)
                  春野芥子 綿毛ばかりの 花盛り
                    春野芥子 綿毛真ん丸 ふんわりな
         皆枯れど 可憐な余花(よか)あり 長実雛罌粟(ながみひなげし)
               高く遠く 飛び去る夕空 燕(つばくらめ)
            真白く咲く 涸るる溝底より出づ 韮
              白銀に光る葉茱萸(はぐみ) 白花の如
                   葉影奥 茱萸の実 朱赤に熟しけり
             実茱萸何処に 猶 探しぬ 実一個なれば 
              刷いた如 白雲棚引く 皐月空
                 蕺草(どくだみ) 真白き苞*や 可憐清楚
                               (*花びらに見える四弁を指す)
            姫女苑(ひめじょおん) 白花涼し 黄昏時
               想い出す 咲き乱れるる 姫女苑
                            平成30年5月28日
                                   <6首>
            涼やかな 風に乱るる 姫女苑(ひめじょおん)
                  一人静かに咲く 姫女苑 をかしかり
                    綿毛飛ぶ 野芥子に アデュー 姫女苑
                虻(あぶ)や蜂や 花躑躅(つつじ) 飛び回るは
             虫 やがて 飛び去りぬ 蜜や舐めたか 
                                    平成30年5月29日
                                         <8首>
                  さわさわと 吹き渡る風 小篠涼し
                  花紫陽花 まだ浅緑 まだ入梅
                   蕺草(どくだみ)や 揃いて咲きぬ 白き花苞
            薹(とう)立ちぬ 薺(なずな)や元気 実柄散らし
               黄昏に仄かに 浮かぶや 蕺草の花苞
                黄昏に 白き点点 蕺草花苞
           黄菖蒲 緑の莢 余花 一・二輪
               土ばかりの 整地 雀ら  何啄む
                        白から紅 暈(ぼか)し染まり 何の花
                 兎菊 もう枯れ初めぬ 輝き一瞬
                                平成30年5月30日
                                     <11首>
             紅娘* ちょこなんと 蓬葉に
                             (*紅娘は 天道虫の漢名)
              独りなの お仲間はと 天道虫探し
                   久し振り いえ もっと久し 天道虫
                            -昔日の我(あ)が庭を思い出しつ
               油虫 喰(は)むは誰ぞと 訝しみ
                    それからは 点々と見たり 天道虫
                卯の花腐(くた)し 夏日 真夏日 忘れたり
              卯の花腐し 草草 生き生き 今の内
               彼(か)の花は? 朱赤の大輪 フェンス奥
                   卯の花腐し ぱっと大輪 マリリス
                     アマリリス 咲けば 卯の花腐しに 夏の光
                     アマリリス 朱赤に光輝 夏近し
 
                       
                                   平成30年5月31日
                                      <16首>
                            (* 落ち椿を 捩って)
        花 ポトリ 雌蕊(めしべ) 揺れぬ 躑躅(つつじ)の庭
 
                 躑躅の実 摘む指 雨粒 一つ 三つ
 
               霞籠む 皐月躑躅(さつきつつじ)の 濃桃色
 
                  躑躅腐(くた)し* 見上げる頬に 雨滴ぽつり
 
                              (*卯の花腐しを 捩って)
 
                 花紫陽花 色付き始じむ 入梅前
 
                七段化(しちだんげ)始まりぬるや 花紫陽花
 
                 見る度に 姫女苑 花冠や増(ふ)えぬ 白色増(ま)し
 
                         小糠雨 濡れる姫女苑 知らぬ顔
 
                          -五月初めから子雀独り我(あ)が庭に   
                 ホームアローン 独り啄む 子雀 如何
 
              お留守番 頑張ったわね 子雀ちゃん
 
                もしかして 子残し 親ら餌探しに?
 
                子雀や 嬉しかるらむ 親戻り来
 
             四羽 五羽目も 返り来 我(あ)が庭 賑やかに
 
                 昔の賑わい 戻るらむ  後(あt) 二羽で
 
                雀皆 挙(こぞ)れば 我(あ)が庭 また楽し
 
          大遠征? 雀ら 何処(いずこ)へ 何故(なにゆえ)に
 
 
                            
                                
           
 
              
 
             
 
          
 
       
 
      
 
              
 
             
 
      
 
 
 
 
 
 
 
  
 
                 
 
          
          
       
            
   
     
           
         
          
         
           
     
    
 
   
          
 
 
         
          
 
          
        
 
        
  
         
           
  
         
         
   
            
   
         
 
     
 
        
  
 
 
                          
     
       
   
       
 
       
 
 
       
          
       
          
            
     
   
       
       
      
      
  
    
          
        
 
       
 
      
     
  
 
        
 
       
         
          
 
   
 
 
    
       
 
          
   
       
            
     
        
  
          
 
      
       
        
            
          
 
         
        
    
       
       
 
           
    
 
 
     
  
 
 
 
 
         
     
      
  
 
 
 
              
   
 
           
          
     
  
     
        
 
 
         
 
  
          
        
         
    
    
        
          
        
         
         
           
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        つk
 
 
 
        
 
    
        
  
        
        
         
                
          
         
 
 
 
         
         
         
 
 
 
           
        
          
         
      
     
       
        
    
                  
 
 
 
 
        
    
        
 
   
        
  
      
      
 
     
            
      
 
 
    
            
     
       
       
      
   
 
    
        
 
 
  
        
        
     
 
 
         
         
 
       
     
         
        
         
         
 
       
 
 
           
                
                                
       
       
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