団野 薫
 団野 薫
  
                                 平成30年6月1日
                                     <10首>
            アガパンサス 浅緑の蕾茎(らいけい) 碧空突き
 
             アガパンサス 花芽(かが)苞の中 時待つらむ
 
              百日紅(さるすべり) 梢延び延び 花芽未だ
 
             百日紅 花芽未だなれど 夏は来ぬ。
 
            落ち躑躅* 杯伏せた如 宴(うたげ)や終わり?
                        - *落ち椿を捩って;
                            この躑躅は、皐月躑躅
 
             虎杖(いたどり)の嫩葉 茫茫(ぼうぼう) 傍若無人
 
             虎杖や 枝枝(ええ)伸ばし 空(そら/くう)望み
 
               虎杖の夏季の天下 この空き地
 
                 
                             平成30年6月2日
                                  <10首>
         涼風 木の葉転(まろ)びつ 胡蝶の舞
 
           アマリリス パァ~と咲きぬ 夏呼びぬ
 
              すいすい*も 木下蔭に 淡桃花色
                          - *紫酢漿草の別称
 
          野薔薇 野菊 嫩葉 青青 木下蔭
 
             金雀枝(えにしだ)や 枝枝撓(たわわ) 莢(さや)枝垂れ 
 
            玉椿 此処にも咲きおり 卯の花腐し
 
           バトンパス 卯の花から 玉椿へ
 
          蝶や 蛾や 翅畳みぬ 青葉上
 
 
            百合の花芽 七つも 集いぬ 色は何(な)ぞ
 
              吹き抜けるる木蔭に入らば、風涼し
     
 
               
                             平成30年6月3日
                                  <16首>
          萱草(かんぞう) 黄花 其処だけ春の匂い
 
             甘やかな 黄花の萱草 春追憶
 
            紫露草 今咲くばかり 夏の朝
 
              枯れもせず 姫檜扇水仙 未だ咲きぬ
 
           ひっそりと 夏の日蔭に 君が代蘭
 
               もう出会えぬと 嘆きおりしが 君が代蘭
 
 
           庭の初夏 可憐な白花 薮蝨(やぶじらみ)
 
                  藪蝨 白花頭 揺れ 初夏の暮れ
 
              ふと見れば 夏菊 微笑 初夏の夕
 
            暗紅色 蛍袋(ほたるぶくろ)や 花盛り
 
             蛍袋 我も此処に と 白花が
 
              胡瓜草 枯れつも空色 残りたり
 
    
            燕飛ぶ 燕尾鮮やか 夕空を
 
            すいすい* もう 花弁(はなびら)捲きぬ 昼下がり
                               - *紫酢漿草の別称
 
             小判草 枯れ実穂 金色 小判色
 
               忍冬(にんどう/すいかずら) 青葉繁しや
                     忍夏備(もよ)い?
 
             桔梗草(ききょうそう) 段々に咲きぬ 最後の一花
 
 
 
 
                           平成30年6月4日
                                 <8首>
              春野芥子(はるのげし) 小黄花 二・三 夏の庭
 
             見つけたり 紅娘*(てんとうむし) もう一匹
                     -*紅娘は、天道虫(てんとうむし)の漢名
 
             何時見ても 風姿愛らし 紅娘
 
              風涼し 鈴の音聞いたり 鈴萱(すずがや)*の
                         -* 鈴萱は、姫小判草の別称
               
              我(あ)が小庭 鈴萱の野となりにけり
 
               白蝶草 紫陽花の隣 舞い 舞い 舞い
 
                              枝垂れ 枝垂れ 白蝶草垂れぬ 夏の空
 
               黒揚羽(蝶) 白蝶草に そっと キス
 
 
                            
                          平成30年6月5日
                               <15首>
 
          真ん丸い綿毛 真ん丸 蒲公英(たんぽぽ)の
 
          橙赤色 緑を暈しぬ 凌霄花(のうぜんかずら)
 
             花枯れて 苗代苺  実三つ二つ
 
           下野(しもつけ)の花 彼方此方腐(くた)り 哀れあり
 
                へばりつき たんぽぽ小さきが 路の肩
 
           百合の花芽(かが) 色付き初みぬ 緑橙色に
 
          蒲公英(たんぽぽ)と見紛いぬ黄花 大地縛り(おおじしばり)
 
               細身の茎 戦ぐや 黄花の大地縛り
 
                 茅(ちがや) 銀白の茅花(つばな) 仔猫のtouch
 
                      凋みおり 大待宵草の 昼下がり
 
             待宵草 萎るる風姿や 哀愁
 
              蟻一匹 滑るるが如 行く 何方へ
 
                密に生う 葉蘭 枯れ枯れ 梅雨恋うや
 
             唯独り 咲き残りたる シャスタデイジー
       
               花苗の箱 抱え君 足取り軽く
 
 
 
                              平成30年6月6日
                                   <11首>
          紅色のポンポン花頭に 千日紅(せんにちこう)
 
           紅 紅 紅(あか あか あか) 
                      花茎 伸 伸(しん しん) 千日紅
                                   
            千日紅 花の生命(いのち)の 永からむ〔ことを〕
 
           
          しとしと梅雨(つゆ) 黴雨(ばいう)となりぬ 今朝からは
 
           南瓜や 黴(かび)黴塗(まみ)れ 初見 怖(こわ)!
 
            桜似の木 桜ん坊似の 実を結び
 
             赤き実の 地に落ちおりぬ 小桜模様   
 
           赤き実を 知らず小鳥 甘やかな
 
            地に落ちて 土に帰りなむ 桜ん坊似 
            
              大地縛り(おおじしばり)黄花 喜 喜 喜 夏の野辺
 
                  春の野辺 蒲公英(たんぽぽ)や もう昔〔の物〕語り
 
 
 
                               平成30年6月7日
                                   <10首>
               花皐月(躑躅) 腐(くた)しぬ黴雨(ばいう)  ほ〔ん〕に憎し
             
             唐辛子 俯きて咲きぬ 時待つらむや
 
              椿の実 白露置きぬ 梅雨(つゆ)の朝
 
               青葱の 愈(いよよ)青青 梅雨の朝
 
             飛び交いぬ 燕尾鮮やか 梅雨の朝
 
 
              夏草の葉先に 黙然 幼虫(おさなむし)
 
               細長の虫 ひょっとして 紅娘*の子
                             - 紅娘は天道虫の漢名
 
              入梅に もう晴れ間あり 胡蝶舞う
 
               燕飛ぶ 谷間の緑 溢るるよ
             
                  梅雨入れば 緑溢るる 谷間なり
 
                           -- 玄冬を想い起こして
                  厳冬や 悉皆(しっかい)枯れて 谷間 荒涼
 
 
            
                             平成30年6月8日
                                   <11首>
 
          燕 二羽 胡蝶 二匹 梅雨の空
 
             梅雨入らば 小庭の千草 愈 延びぬ
 
          入梅 もう 晴れ間のありて 紫陽花 光
 
          溝底に生う 白百合 未だ蕾
 
                去年(こぞ)の夏 大輪の白きが 匂い立ち
 
            谷間(たにあい)の 白百合 此処では 溝の底
 
        
           胡蝶三匹 舞い合い 楽し気 梅雨晴れ間
 
            睦合い 舞い去りぬ 胡蝶二匹 あり
 
              二匹去り、胡蝶 独り舞いの姫女苑(ひめじょおん)
 
           花から花 舞い回りぬ 胡蝶 姫女苑の
 
 
 
                           平成30年6月9日
                                 <14首>
          今は梅雨 見違えるほどの 青空哉
 
            束の間の晴れ間に憩う 夏草よ
 
              風に戦ぐ 夏草 白珠 朝露光る
 
          源平小菊 太陽の子となりぬ 梅雨の晴れ間
 
           南天の 犬鬼灯(いぬほおずき)の 花白き
 
         七変化(しちへんげ)* 白緑 空〔色〕 薄紅 薄紫** に
     
                          染む朝(あした)
                   -* 紫陽花の別称; ** 漢字一語扱い
 
           花紫陽花 絢爛に揃いて 花屏風
 
                      花紫陽花 絢爛豪華 屏風絵の如
 
              今季の梅雨 ほんに豪華 花紫陽花
 
           卯月には 刈り取られし野辺の 草草繁し
 
           ミント繁 ジャングルかも 蟻ん子には
 
         一・二・三(ひい・ふう・み)アガパンサスの 花芽(かが)数多
 
            縮みおり 犬鬼灯の葉 葉 どうしたの/此は如何に
 
              梅の樹苔 這う桜の古樹 梅雨の夕
 
 
 
                                平成30年6月10日
                                      <10首>
                ペンシルのよ〔う〕な細き巻き葉や 葉蘭の嫩葉
 
               梅雨と嵐 好きにはなれぬ コンビ哉
 
               青く固き 実三つ五つ 海桐花(とべら)垣
 
              藤の花 梅雨空に 一房 藤色の
 
               狂い咲き? 忘れ咲き? 藤の花房 梅雨の空
 
             
               雷鳴? 否 飛行機音 安堵せり
 
                雷雲も 雷鳴もなき梅雨空 有り難き
 
                 
               舞い出(いず)る 花蔭より 胡蝶一匹
 
             南天の花 此処彼処(ここかしこ)に 匂い立ちぬ
 
              栗の花穂 樹覆いたり 雪冠の如
 
                      -- 昔日、裏山での草いきれを想い出し
               草いきれ 懐かしき哉 夏の匂い
 
       
                          平成30年6月11日
                                 <10首>
 
             突き出る 葉蘭の捲き葉 次々と
 
                 待ち侘し 葉蘭の嫩葉 ようように
 
               青臭き 風吹き渡りたり 梅雨の匂い
 
             
           雀八羽 皆帰り来たりぬ 我(あ)が庭に
 
             一か月半振りの 帰庭 如何に在りたか
 
             揺れ動く葉蔭の奥や 雀の子
 
              鈴萱の 落穂拾いの 子雀哉
 
 
            涼風に 不気味に騒めく 梢の葉葉
 
             嵐とや 物皆静か 不気味な程
 
               栗の花穂 白く細く 優雅な風姿
 
                毬栗が 後の風姿とは 想い難(がた)
 
 
    
                             平成30年6月12日
                                   <7首>
              台風の逸れたる朝(あした)の 静かさよ
 
               静かさに 花やぐ 花 花 額紫陽花の
 
                七段化(しちだんか)* 紫陽花咲揃いぬ 前栽に
                              - * 紫陽花の原種の近縁
 
               七段化 素朴にひっそり 山奥に
 
                 今はもう 何処にでも咲きぬ 市街地にも
 
                 山里は 今 藪蝨の小園となりぬ
 
                   藪蝨 白小花 咲き乱れ 可憐
 
 
    
                                平成30年6月13日
                                      <12首>
           窄みおり 小さき 小さき 待宵草
    
            苗代苺(なわしろいちご) 萼 少し開きて 少し紅(実)
 
             凌霄花(のうぜんかずら) 揺れる葉蔭に 橙紅花
 
          手毬花(てまりばな) 紫陽花と見紛いたり 梅雨の空
 
           手毬花* 紫陽花と混じりて 梅雨の花
                         -* 手毬花の季語は、夏
 
             柏葉紫陽花 花房垂るる その重きに
 
             白花の 山紫陽花 七段化* 美しき
                          ー *漢字一語扱い
 
           青き 碧き 入道雲なき 夏の空
 
                はためきぬ 広告の幟(のぼり) 無声 無言
 
           衝羽根空木(つくばねうつぎ)一輪 密か 此処に咲き
 
             夕日影 写す大樹の 光葉かな
 
              涼やかな 何処(いずこ)も 夏の夕暮れ哉 
 
 
 
                            平成30年6月14日
                                  <10首>
            山紫陽花 淡紅八重の 七段化も
 
             七段化 此処にも咲きおり 植木鉢
 
              アマリリス 萎れ サルヴィア花 赤 赤と
 
               赤 赤と 燃え立つサルヴィア 梅雨の空
 
                機影無く 唯 轟音の 梅雨の空
 
 
             花菖蒲 一輪もまた 麗しの景
 
              薮萱草 皆萎るるも 一輪咲きぬ」
 
            姫女苑 紋白蝶や 浴衣姿
 
             草毟り 暫し待つらむ 鈴萱(すずがや)の
 
                鈴萱の 枯れ実啄む 子雀の為
 
 
                    
                                平成30年6月15日
                                       <10首>
             黄仮面の大きな蜂や ガラス窓
 
             ひょっとして 黄色雀蜂 彼(か)の大蜂
 
              毒針 恐怖 驚かさぬよう そっと そっと
 
               花鉢の許 彼(蜂)静か 身じろぎせぬ
 
             よく見れば 永遠(とわ)の眠りに 冥福を
 
              彼(蜂) 何故に 我(あ)が庵(いお) 彼(か)の墓所に
 
 
               車窓外 アガパンサスの花 君知らずや
 
             淡青紫 彼(あ)は アガパンサス 梅雨の色
 
 
 
                               平成30年6月16日
                                      <8首>
              梅雨晴れ間 野芥子の黄花 晴れやかな
 
                野芥子 綿毛腐るも 黄花 黄 黄(/喜 喜)
 
 
              嵐逸れ 辺り一面 梅雨の憂色
 
             咲き残りぬ 皐月(躑躅)の深桃 夕日影
 
               夕暮れれば 山里辺り 夏の涼
 
                萎れ行く野辺 紫陽花独り 咲誇り
 
                  桔梗草 淡紫(たんし)の小花 未だ野辺に
 
               竹笊(たけざる)に 梅の実拡げぬ 梅雨の晴れ間
 
                 青梅の追熟待ちぬ 梅雨の晴れ間
 
 
 
 
                              平成30年6月17日
                                     <17首>
                 そこはか〔となく〕 追熟の梅 匂い立つ
 
                梅が香に 誘われ入れば 梅追熟
 
 
                薄紫の 花芽(かが)開きぬ 擬宝珠(ぎぼうし)が
 
               斑入りの葉 薄紫の花芽 擬宝珠お洒落
 
                我(あ)が庭の 擬法珠消えり 久しけり
 
                   擬法珠消え 愈(いよよ) 恋しさ勝りけり
 
       
                白壁に蔓桔梗(つるききょう)垂れぬ 壺垂れの如
 
             蕺(とくだみ)の真白き 花 花 路傍の闇に
 
              薔薇真紅 一輪 妖艶 夏夕暮
 
 
              花紫陽花 垂(しだ)るるほどの盛り哉
 
               凌霄花(のうぜんかずら 橙紅に笑みぬ 梅雨の空
 
             最初から 何時見ても 濃青紫の花紫陽花
 
              紫立ちたる 苞 今解くや アガパンサス
 
                白と紫 梅雨の花色 散歩路
 
                 西空の 月影の細き 梅雨の宵
 
                  ほっそりと 御坐(おわ)す月哉 梅雨の小夜
 
               冴え渡る 月影細き 梅雨の小夜
 
 
                       
                              平成30年6月18日        
                                    <11首>
                覗き見れば 蕾のありぬ 庭の南瓜
 
                 この間まで 双葉なりが もう蕾
 
                  開花の後 如何せむとて 検索し
 
              聞きおりし 受粉の手伝い 朧げなれば          
 
 
                             - 此処、神戸に震度5弱の地震が
 
                揺れ突如 まさか地震 やはり地震
 
               揺れ二回で 収まるるも まだ怪し
 
                澱みおりぬ あの日の記憶 揺り起こされぬ
 
                  物皆静か 控えおりぬ 地震の後
 
              地震の後 何事もなき如 姫女苑(ひめじょえん)
 
 
           藪蘭や 葉ばかり 淡紫(たんし)の花穂や まだ まだや
 
               藪蘭の 葉ばかり憚(はばか) 夏の庭
 
 
 
                             平成30年6月19日
                                   <12首>
            紅き粒 苗代苺(なわしろいちご) 苞解きぬ
 
             透明に 輝く粒 粒 苗代苺
            
               真黄色(まっきいろ) 梅雨空に 開きぬ 庭の南瓜
 
                 真黄の花 雌雄分からぬ 南瓜の
 
            五つ 六つ(いつつ むつ) まだ蕾あり その内に*
                            - 〔雌雄の判別可にならむ〕
 
             咲けば 地震 南瓜の運〔命〕 強や凶や
 
               物音あり すわ 地震と身構えり
 
 
            気怠さに 耐えつ眺むる 梅雨空 厭(いと)
 
             何処までも どんより霞みぬ 愈(いよよ)梅雨
 
            垂れ籠める 暗雲 梅雨空 ポツリ ポツリ
 
                仄(ほの)明(あか)る 明るく 明ける 梅雨の空
 
              仄やかに 光忍び入る 梅雨の窓
  
            この小虫 紅娘*の娘(こ)非ずんば 何(な)ぞ
                          -* 紅娘は天道虫の漢名
 
 
 
                            平成30年6月20日
                                    <11首>
           迫り来る 雨音 梅雨のフォルテシモ
 
            しめやかに 雨音聞こゆ 梅雨の朝
 
            
              南瓜の黄花咲いたか 朝毎観
  
                           -- 南瓜は虫媒花と知り
                虫媒花ならば 待つらむ 虫飛来
 
            額紫陽花 艶に際立つ 庭の朝
 
             梅雨空を 飛び交う雀ら 餌(え)探すや
 
               庭に降り 餌撒く 我(あ)の背に 梅雨雫
 
             篠の葉揺れ また揺れぬ 梅雨雫
        
         
              何事も 為す気にならぬ 梅雨一日(ひとひ)
 
               横臥せり 唯 時の過ぐるる 無為のまま
 
                枕打つ 動悸ばかりや 高まりぬ
 
     
 
                              平成30年6月21日
                                   <16首>
              霞籠む 梅雨の日中や 額紫陽花
 
                  朧なり 梅雨の遠見や 奪わるる
 
                瞬く間 乳白色の 梅雨景色
 
              梅雨籠る 花紫陽花や 朧影
 
 
             虫食いの 花弁見つけり 南瓜の
 
              虫は何処 雌雄花の媒(なこうど)如何なりや
 
            人工より 自然が良しと 思いぬる
 
               我(あ)が手より 自然のままに 自然任せに
 
               その成果 盛夏の候まで 待つらむや 
 
                 今はまだ 皆雄花ばかり 我(あ)が庭は
 
             
            煙(けぶり)立つ 梅雨の朝(あした)や 花紫陽花
 
              紫陽花の 花色浮かぶる 朧雲
 
                煙立つ 悉皆 朧 梅雨景色
 
           すらり立つ 葉蘭の幼な葉 梅雨晴れ間
 
             朧月 春の夜ならぬ 夏至の小夜
 
                      -- 六月十八日 大阪で震度6強が
              一年の一番長き日や 何事もなく
 
 
 
                            平成30年6月22日
                                   <10首>
        もう盛夏! 否 未だ水無月 この暑さ
 
            雨なくば 実(げ)に 盛夏の水無月哉
 
          オレンジ色 輝く薔薇 一輪の梅雨
 
              凛として 薔薇一輪 梅雨の夕
 
               撓(たわわ)なる 花紫陽花の梅雨 豪華
 
             枇杷の実二つ 寄り添いたまま 啄ばまれ
 
   
                    白花の 咲き満る樹の 夏涼し
 
            黒き羽根 一本静か 切り株の側(そば)
 
            楓の實生え 切り株の側 すいすい*も
                          - * 紫酢漿草(かたばみ)の別称
              枯れ葉散りぬ 夏日影 秋遠し
 
 
 
                             平成30年6月23日
                                    <10首>
          薔薇 花弁(はなびら)散りぬるも 一輪 残
                              
             花弁の 紅やかな薔薇 散り塗る後も
 
 
              絶え間なき 雨脚何処へ 流るるや  
 
            雨音の 打ち続く 今 梅雨なり
 
              薄 白露 滴り落ちぬ 梅雨の朝
 
               昨日 今日 明日と続くか この黴雨(ばいう)
 
       
            梅雨の午睡 誰(た)の訪れか 朦朧
             
            葉牡丹の 甘藍*立ちたる 薹立ちて
                             -* キャベツの別称
 
            穴開きぬ 薹の葉牡丹 食(は)むは誰
 
              梅雨の空 舞う紋白蝶 葉牡丹の子?
 
 
 
                                平成30年6月24日
                                     <17首>
            春未だ 幼(おさな)が今 鬼 鬼野芥子
 
             延び延びて 鬼野芥子 何処まで延ぶ
 
              鬼野芥子 延延の強面 鬼の如
 
           今や盛時 梅雨なんのその 鬼野芥子  
 
            
              梅雨の晴れ間 草木も我(あれ)もほっとせり
 
               碧空と太陽の夏日 梅雨の晴れ間
 
              蜜柑の実 浅緑の葉蔭(はかげ)に 観(み/かん)
 
            まだ小さくも 迫り出づるあり 蜜柑の実
 
             花山椒 花ばかりなの〔/実は未だか〕 と若木に問い
 
            唐辛子の花花(かか) 俯(うつむ)き また 空を向き
 
             若葱 青青 ぶきぶき 梅雨時に
 
              梅雨や慈雨 若葱 生き生き 甦りぬ 
 
                              ー- 打ち続く梅雨に
             凌霄花(のうぜんかずら) 花芽(かが) 花 落ちぬるも  
 
             苗代苺(なわしろいちご) 熟したるを見ぬや 悲し
 
             匂い立つ 梔子(くちなし)の花 涼風
 
               轟音消え 束の間の閑(しずか) 夏の夕
 
               蘖(ひこばえ) 二枝(ふたえ) 残りおりぬ 夏の夕
 
 
 
                             平成30年6月25日
                                    <11首>
              南瓜の 黄花は一時(いっとき) もう 終息
 
            虫も来ぬ 蝶も来ぬ間に 〔南瓜の〕花 落ちぬ
 
              南瓜の あの甘やかな黄花 もう一度〔見たし〕
 
 
               夏静か 夕逍遙 沈沈哉
 
             夏の凪 草戦ぐを見たは 空目(そらめ)らし
 
             濃紫(こむらさき) 桔梗咲きおり 夏花壇
 
              萎れおり 夏咲き桔梗 時違(たが)い
 
               鳳仙花(ほうせんか) 咲て驚くや 今ぞ夏
 
              鳳仙花 咲くや春とぞ 憶えおり
 
          
               茜色 暈(ぼか)し込む雲 梅雨の夕
 
      
             
                                平成30年6月26日
                                      <10首>
            梅雨晴れや 夏を開きぬ 今朝の庭             
 
              夏草を 吹き抜くる風の 涼しかり
 
              ひんやりと過ぐるる風や 夏の憩
 
            空ばかり 春めきぬ景色 梅雨の晴れ間
            
           風鈴の鳴らぬも 涼呼ぶ 微風
 
              ブ~ン 蚊一匹  蚊遣り線香焚く時か
 
                立ち登るる 煙の行方や 蚊遣り線香
 
             ゆらゆらと 蚊遣り線香 夏盛り
 
                  花茣蓙に 浴衣姿の佳人哉
 
               何処から見ても 涼し気な 花茣蓙意匠
 
             花茣蓙に寝そべり 微睡(まどろ)む 暑気払い 
 
 
 
                            平成30年6月27日
                                  <8首>
            さわさわと 吹き渡るる 風 夏涼し
 
              不気味なり 夏雲光る 何(な)の予兆
 
               地震や 嵐や 燕飛び交う 怪しの景
 
             時折の 風音 弥(いや)増しぬ 嫌なこと
 
             垂れ籠める 暗雲の行方や 梅雨の空
 
   
                姫女苑 見ても見飽きぬ 優しさよ
 
              涼やかな 姫女苑の 白小花
 
                  向こう側 匂い遣せよ 梔子(くちなし)よ
 
 
 
 
                          平成30年6月28日
                                <13首>
            晴れ間 一転 辺り薄墨 梅雨の鬱
 
              山葡萄 花見ぬ間に 実結びぬ
 
               霞籠む 山並み 燕 五羽 三羽
 
            藪蝨(やぶじらみ) 白小花の宴 姫女苑も
 
 
             金茶色 葉に見え隠れぬ 実小判草
 
              小判草 縺れ合い枯れ 金茶色
 
               卯の花の実房 地味に 華やぎおり
 
             土ばかりの盛り土 はや 芽生えあり
 
                垂れるる 真紅のミニ薔薇 八重なれば
 
 
              春や来ぬ 如 紫木蘭の 忘れ花
 
                 此処は春? 紫木蘭 咲き立ちぬ
 
                  春空へ 羽搏くばかりの 花木蘭
 
 
 
                              平成30年6月29日
                                     <17首>
            登り来て 潜り込みぬ蟻 蛍袋
 
             梅雨空に 笑顔振りまく撒く 紅ダリア 
 
              嵐らし 緊急避難や 蟻一匹 〔我(あ)が居室へ〕
 
               うろうろと 蟻一匹走(そう) 本の上
 
            
             葉ばかりと なりにけるかも 庭の南瓜
 
              葉ばかりを 大きく開く 南瓜 寂し
 
 
            遠くより 雷鳴 近づく 出梅(つゆあけ)か
 
             まとまった雨に 大慌て 窓閉めぬ
 
               あら 尾花 見紛いたり やはり 尾花
 
             もう尾花 秋の気配は 未だ遠し
 
               もう 尾花 驚き頷く 茜空
 
                 ほっそりの 尾花の揺るる 梅雨の夕
 
               
              真っ直ぐ立つ 花穂の青きや 狗尾草(えのころぐさ)
 
               気の早き 狗尾草よ 秋は未だ
 
                此処にも 萌え 狗尾草の小さきが
 
               はや生いぬ/立ちぬ 秋に魁(さきがけ) 狗尾草 
 
           
              紫木蘭 大輪 彼方此方 坐(おわ)します
 
              鳥の飛び立つ如 花〔紫〕木蘭 揺れ
 
          
 
                                   平成30年6月30日
                                      <11首>
              用水路の底の 実生えや 何(な)の樹かや
 
               何の樹と 訝しおりし 梅雨の朝
 
              目見張るる 藤色に彩る 花房や
 
                枝垂れ咲く 藤色花房 花房空木(はなふさうつぎ)
 
                  夏から秋 お馴染みの樹 花房空木
 
                    花房の 藤色艶なり 花房空木
 
             倒るとも 猶 立ち上がりぬ 鬼野芥子 賛
 
               雨に打たれ 臥したる野芥子 皐月〔躑躅〕上
 
               六尺超え 何処まで伸びるや 鬼野芥子
 
 
            梅雨明けや あっと言う間に 暑夏の日に
 
             昨日まで じめじめ湿気 梅雨日なり
 
 
 
                              平成30年7月1日
                                   <17首>
              夏草や 青青 生生 我(あ)や萎れ
 
                黄花とや 見しが 蓬の枯れ姿
 
                  紫陽花や もう凋落 梅雨仕舞
 
                   紫陽花は 退色変色 もう真夏日
 
             
              淡渋桃色 槿(むくげ)の咲く頃となりにけり
 
               遠雷に 出梅(つゆあけ)知るや 花槿
 
                夕陽映え 赤橙色の 凌霄花(のうぜんかずら
 
             アガパンサスの花 涼し気 暑夏の謎
 
               青紫の色に 目呉れず 蜂 蜜集め
 
                潜りて 亦 潜るる蜂 アガパンサス花に
 
                  蜂潜るも 泰然笑顔の アガパンサス
 
               柏葉紫陽花 白から 渋茶 二変化(ふたへんげ)
 
                  暗茶色 柏葉紫陽花 又の景
 
 
              藪枯らし(やぶからし) 藪な枯らしそ 花咲かせ
 
               萌葱 桃 黄 橙 藪枯らしの花托(かたく) いと愛らし
 
               一粒 手に お菓子と見し あの頃 懐
  
 
                夏空に 白緑散らす 花樹何(な)ぞ
 
                 
 
                              平成30年7月2日
                                   <13首>
            南瓜の 黄花萎みて 何も無く
 
              黄花落ち 実の実らぬ 南瓜 寂
 
               虫来ぬば 自然のままには 実結ばぬ
 
            虫来ぬば 虫媒願うは 無理なこと
                      -- 今年の南瓜 雄花ばかりとは 噫
 
 
           当て処(ど)なく 蔓伸ばしたる 南瓜の夏
 
               南瓜の蔓 蓬弄(まさぐ)り 哀れあり
 
                  今はもや 次世代の南瓜 嫩葉萌え
 
              蕾とや 花ならぬ 幼葉の蕾 南瓜の
 
 
            熱帯夜 是式(これしき)のこととは 思われぬ
 
             風凪ぎて 暑気弥(いよ)増せり 宵の月
 
              暑気籠む窓 開けぬれど 暑気入りぬ
 
          
            朝晴れやか 夕には萎みぬ 花 木槿(むくげ)
 
             儚くも 見事に咲きぬ 花 槿
 
 
 
                            平成30年7月3日
                                  <18首>
           一枝(ひとえだ)に 寄り添う 槿(むくげ) 二輪哉
  
            哀れ 萎みぬ 槿や 一日花
 
             藪蝨(やぶじらみ) 名こそ腐(くた)れ 花や愛らし
 
               皐月(躑躅) 葉蔭に 一輪残り咲き
 
             犬鬼灯(いぬほおずき) 花は探せば もう実 緑の
 
          
            バサッと落ち 大急ぎで逃げたり 守宮(やもり)の子
 
             窓開ければ ブ~ン 飛び来ぬ 夏の虫
 
 
            藪に絡む 早乙女花(さおとめかずら) 汝(な)も 藪枯らし
 
             苗代苺(なわしろいちご)  萼ばかりになりにけり
 
               苗代苺 もう 青葉の繁るる ばかりなり
 
              粒粒の 赤き実 何処(いずこ) 苗代苺
 
                     そういえば 実の実るを見ぬ 苗代苺
 
 
              アガパンサス花 淡紫の梅雨花壇
 
              アガパンサス 一・二・三・四(ひい・ふう・みい・よう)百輪よ
 
             二十輪 否 三十余輪 アガパンサス 幻惑
 
              アガパンサス 花 花 共振 夏空に
 
               
                窓の外 風の涼しき 夏の夜半(よわ)
           
                       室内 熱帯夜 室外涼風
 
 
 
 
                              平成30年7月4日
                                    <8首>
                 
           熱気萎みぬ 戻り梅雨の 有り難き哉
 
             戻り梅雨と 思えば 嵐めく この不穏
 
              時折の 風 未(いま)だ 不穏な響きあり
 
          嵐去り 戻り梅雨の 湿気拾い
 
                鎮まりぬ 戻り梅雨の昼下がり
 
             鬱 うつ 鬱 鬱も戻りぬ 戻り梅雨
 
 
            藪蝨(やぶしらみ) 実も愛らし 何故 蝨
 
             白小花 密に集める 藪蝨
 
 
 
 
                              平成30年7月5日
                                  <19首>
            大雨の朝(あした)も 咲きたる 花槿(むくげ)
 
             溝底の流水 瀧の如 大雨集め
 
              潺(せせらぎ)を爆音にせり 大雨や
 
 
               仄(ほの)やかに 花 紫立ちたる 紫式部
                           
            我(あ)が庭の 実生えの実紫* 雅(みやび)なく
                             - 紫式部の別称
              名に負わぬ 紫式部 鄙の花
 
             花でなく 実を言うのよと 君は言い
 
 
              蟻十匹 雨宿りや 我(あ)が居室
 
                   新聞紙の上 塊りて 緊急避難             
             
              大雨や 烈しくなるる 如何にせむ
 
                大雨は 哀しきものなり 犬鬼灯(いぬほおずき) 無残
 
              窓の雨粒 見る観る 大きく 累々と
 
               時時刻々 雨音烈し 戻り梅雨
 
               夜半音量 弥 増しぬ 我(あ)無聊(ぶりょう)
 
                 二夜続き 未だまだ続くや この大雨
 
                 背や高き 故か 鬼野芥子 薙ぎ倒され
 
              鬼野芥子 一茎 辛くも 踏ん張りぬ
 
               か細き草 やり過ごしたり 大雨を
 
                 太き茎 倒れ か細きがそのまま 自然の采配?
 
 
 
                              平成30年7月6日
                                   <11首>
                此(こ)は如何に 大雨 嵐 出梅に
 
                 縦貫せり 大雨 日本列島を
 
                   まだ まだ 続き 一年分の降雨量
 
                非難警告 TV次々 目を凝らしぬ
 
                 雨音の次第に 薄れぬ 夜半 安堵
 
                  雨音や とうとう止みぬ 明日晴るるや
 
             今日こそは晴れ 梅雨明けをと 空拝みぬ
 
              咲けば槿(むくげ) 大雨最中 何(な)ぞ思ゆ
 
                七輪も 大雨に木槿 何(な)ぞ 思ゆ
 
               大雨に 唯 咲き継ぐ 槿 清々し
             
                 清々し 朝の出会いを 花木槿
     
 
 
                            平成30年7月7日
                                 <7首>
             大雨去りぬ 唯 潺(せせらぎ)の音 声高かに
 
                静まりぬ 潺(せせらぎ)の音 アデュー
 
               大雨去り 曇り渡りぬ 戻り雨
  
             昼下がり 風からり 草草 戦ぎぬ
 
                 糠喜び 雨脚 繁く なるばかり
 
                  糠喜び 小雨またもや 大雨に
 
                      -- 大雨に緊急避難した後のこと
             蟻百匹 群がりぬ コップのオリゴ糖 
 
                蟻百匹 カップ取られて 思案顔
 
                
 
                          平成30年7月8日
                                 <10首>
                        -- 昨夜 読める
           寝覚めれば 雨音優し ララバイの如
 
             待ち遠し 晴れの朝(あした)が 夜半の床 
 
              願わくば 青空の朝であらむことを
 
               薄っすらと 雲間に覗く 青空哉
 
            青空に 誘われ出でば 暑気 むしむし
 
             青空と 夏の太陽 久し振り
 
              水溜まり 紫陽花の葉に 残り水
 
            槿(むくげ) 今朝もや咲きぬ いつものように
 
              太陽の 弥 恋しき哉 戻り梅雨
 
                ギラギラの太陽 恋しき 梅雨空哉
 
 
 
                            平成30年7月9日
                                 <11首>
 
               夏空を 見上げる夏草 我(あれ)も
                 夏空や 空色の朝(あした) 漸(ようよ)うに
 
               夏空を 燕 旋回 ’我が世の夏’や
 
                立ち上がりぬ 鬼野芥子 花芽(かが)抱きつ
 
              衝く羽根空木(つくばねうつぎ) 花跳ね 羽根突きたるが如
 
               夏空に 衝く羽根空木 浮かれ調子
 
                 戻り来ぬ 涼風 頬に 夕べ哉   
 
              凌霄花(のうぜんかずら) 電柱捲きて 夏のアート
 
               重ね重ね 白雲浮かぶ間に 高き青
 
                 向日葵も 盛夏あらずば 面優し
 
                グラディオラス 萎れつも 猶 咲きぬ 哀れあり
 
 
 
                                  平成30年7月10日
                                         <12首>
             石段を 飛び去る鳥影 シルエット
 
                鳥影 飛び行く路上絵 夏のアート
 
                 暑夏の庭 雀や細き 針金細工
 
            大雨にも 熱暑にも 雀 啄み来
 
             夏草や 並べてげんなり 声も無く
 
               暑夏の庭 萩と薄の 青青と
           
                   邂逅せり 庭の奥処で 姫百合と
            
                姫百合の一輪挿しの 懐かしく
 
                 鮮橙色 素朴な風姿 姫百合の妙
 
                アンバランスのバランス 姫百合 玄妙
 
                大忙し 滑り歩きぬ 蟻の朱夏
 
                  
                出会い頭(がしら) 頭(かしら)付け合い 蟻 律儀
 
              この暑気を 知らずや 蟻の勤勉さ
 
               餌探し 歩き回りて 草臥(くたび)れぬや
 
 
 
                                  平成30年7月11日
                                        <12首>
                 白雲の 益荒男振り(ますらおぶり)の 朱夏の空
 
                  眩しきは 大雨去りたる 青空なり
 
             白壁に 蔓桔梗 垂れぬ 夏の壁画
 
              ぶら下がりぬ 木通(あけび)の青き実 朱夏の空
 
                虫一匹 もう一つの 木通の実に
 
                 木通の実 縦割れ 熟すは 何時の事
 
 
                木瓜(ぼけ)の実も 薄ら紅(くれない) 葉蔭奥
 
                 膨らみ初む 南天の実の 幼きが
 
                  南天や 花果て残るる 小さき点 点
 
             
              畳の上 蟻の行列 我(あ)が庵(いお)の
 
               何処からか 蟻ら 大挙し 現わるる
 
                蟻 今は 群がる当て無き 戸外かも
 
                 大雨去り 青空眩き 庭あるに
 
 
 
               
                             平成30年7月12日
           篠簇から 蔓伸び 虚(こ)掴むや 早乙女花(さおとめかずら) 
   
              巻き付きぬ 手当たり次第 早乙女花
              
                届くならば 何でも可かな 早乙女花
 
                 相手厭わぬ 早乙女花 逞しき
 
                  蔓振り翳す 早乙女花の 花車(きゃしゃ)な風姿
                 
              蔓捲きぬ 皐月(つつじ)から篠まで 早乙女花
 
               早乙女花 枯れ姫酸葉(ひめすいば)にも 絡み着き
     
                 枯れ酸葉 辛うじて立ちおり 〔早乙女花に〕支えられ
 
                    早乙女花 姫酸葉 生の共生 夏の妙
 
              夕凪に 悉皆(しっかい)静か 唯 猛暑
 
             叢雲(むらくも)に 空色垣間見ぬ 朱夏の宵
 
               叢雲浮かび 暮れなずむ 朱夏の宵
 
                叢雲や 月や 何処や 朱夏の宵
 
 
 
 
                               平成30年7月13日
                                      <20首>
             淡青紫 そこだけ 涼し気 アガパンサス花
 
              小虫もや 避暑に訪うや アガパンサス
 
             まあ 大き 枇杷の実の大きに目見張るる
 
               もう二つ 実小さきが 枇杷の葉蔭に
 
                  枯れ紫陽花 七変化は 渋 と 暗
 
               それなりの華やぎやあり 枯れ紫陽花
 
                俯きぬ 紫陽花の花 紅さしつ
 
 
             槿(むくげ)の花 薄紅(うすくれない)の 夕べ哉
 
              一日花の 筈なのに 夕まで咲きぬ 朱夏の妙
 
               黄昏に 槿(むくげ)の花の まだ咲きぬ
 
 
                 夕化粧(ゆうげしょう)* 風鈴の音 夕涼み
                            - 別称は白粉花
                 白に紅 絞りの涼し 夕化粧
 
                  団扇持つ 君の姿や 夕化粧
 
               野草 千種 棘棘(おどろおどろ)の 朱夏の庭
 
               薄紅紫 烟る合歓木(ねむのき) 朱夏の空 
 
                薄紅紫 沸き立つ合歓木 華やかな
 
                 白雲に 千切れ雲あり 朱夏の空
 
              見渡せば 朱夏の夕暮れ 茜雲
 
                茜色 朱夏の夕暮れ 涼のあり
 
                 茜さす朱夏の夕暮れ 向日葵 暗(く)れ
 
                夕空を逍遙や 燕(つばくらめ)飛びぬ 悠揚と
 
               燕(つばめ)飛ぶ 群れなし飛びぬ 朱夏の夕
 
                三十余羽 壮観かな 燕のパレード
 
 
                
                                  平成30年7月14日
                                      <10首>
             日々花 彼方此方(あちこち)に 花花 朱夏の彩
 
              千日紅(せんにちこう) 独り 伸び伸び プランター
 
               水引きの 花径すらりの 庭の隅
 
                水引きの茎 小花点点 白ばかり
 
                 紅は何処 毎夏 仲よく咲おりしが
 
               紅なくば 名にし負わぬや 水引きの
           
                  水引きは 花色の紅白 名の由来
 
 
            猛暑なり もうしょうがない 猛暑かな
 
             猛暑には 息も絶え絶え 花壇哀れ
 
               弱り果てぬ 花壇や 哀れ この猛暑
 
                   贈りたし 猛暑の花壇へ 夏休み
 
 
 
                             平成30年7月15日
                                  <12首>
           蔓 揺揺 熱風には 涼や来(こ)ぬ  
   
                蜆蝶 炎暑の空に 春の舞
 
                 姫女苑 枯れぬと見れば 花芽(かが)盛り
 
              朱夏の空へ 小さき綿毛や 姫女苑
 
            雀来(こ)ぬ 朱夏の小庭や 寂寂(じゃくじゃく)
 
              見上げれば 燕一羽 遊覧飛行
 
            雀来ぬ 一羽も 避暑地へ 行ったのか
 
 
             ドスン バサッ 彼(あ)は何(な)の音 朱夏の宵
 
              明くる朝 窓辺に一匹 蝉や見ゆ
 
                油蝉 お久し振りね ご機嫌如何
 
             蝉時雨 絶えて久しくなりにけり
 
              炎暑の今 蝉時雨や 懐かしき
 
                蒸し暑き 日日 増し増しぬ 蝉時雨
 
              蝉時雨 絶えども 絶えぬ 我(あ)が耳鳴り
 
 
 
                                平成30年7月16日
                                      <11首>
                 大輪の 黄花 妖艶 朱夏の棚
 
               何の蔓 黄花の大輪 魅せる棚
 
                南瓜らし 見事な花冠 魅せらるる
 
              夏草 棘(おどろ) 洞穴あり 誰(た)が為に
 
                   夏草 棘(おどろ) 穿(うが)つ洞 何(な)の為に
 
                夏草の洞 東屋や 金蚉(かなぶん)の
 
                飛び入りぬ 夏虫に問わむ 洞穴如何
 
                   蟻ん子には 洞窟冒険 グッド・ラック
 
             
              細面(ほそおも)佳人の面影 朱夏の月
 
               もう見えぬ 月影佳人は 幻影や
 
                  唯独り 一番星の 残りおり
 
 
         
                             平成30年7月17日
                                   <12首>
            藪蝨(やぶしらみ) くっつくにくっつけず 当て無くば
 
            藪蝨(やぶしらみ) 実の運び人無くば 如何に
 
             
            日影避け 日蔭を選びぬ 朱夏の路
 
             葭簀(よしず)の奥 唐辛子の実 艶やかな
 
                まあ此処に 見つけたり 紅水引き
 
             返り咲き 紅シクラメン 篝火(かがりび)*の朱夏
                           - *シクラメンの和名は 篝火花
 
            シクラメン 紅色焚くや 朱夏の夜に
 
             蔓草 棘(おどろ) 何処まで絡むや 公孫樹の樹
 
 
              蜻蛉(とんぼ)釣り 麦藁帽子の 夏休み
 
               蜻蛉飛び 蝉鳴く 朱夏の 遠くなり
 
              アッ バシャン 足滑らしぬ 川遊び
 
                ひゅっ ひゅぅ 平石跳ね行く 川面哉
 
 
 
 
                             平成30年7月18日
                                    <14首>
                 朝蜘蛛の糸に 阻まれるる ポスト哉
 
                朝蜘蛛は 吉兆とや 如何にあらむ
 
           
             この炎暑 白木槿(むくげ)も 涼呼ばぬ
 
                双葉萌え 濃緑となりぬ 朱夏の庭
 
                 何処にでも 絡む葛(かずら)や 庭枯らし
 
           庭枯らしとなりぬ 早乙女花(さおとめかずら)の棘(おどろ)姿
 
            藪枯らし(やぶがらし)に優るや 早乙女花の棘(おどろ)
 
           一瞬を横切る 蝶影 朱夏の庭
 
            黄の葉舞い 否 蝶の影 夏の幻
 
 
             珍しき 水色の弦月 茜雲
            
                 初見なり 淡藍の月 朱夏の宵
 
            見渡せば まだ茜色 朱夏の宵
 
              茜雲 空見え隠るる 朱夏の宵
 
               朱夏の宵 未だ帳(とばり)下りぬ 午後7時半
 
 
 
                               平成30年7月19日
                                     <12首>
            熱 熱 熱(あつ あつ あつ) 日本列島 燃え滾(たぎ)る
 
     
             西瓜割り 真っ赤な太陽 飛び出しぬ
 
              かぶりつき 舌で弄る 西瓜の種子
 
              立ち枯れぬ 夏草の白化 彼方此方に
 
               白枯色 夏草の風姿 哀覚えぬ
 
                涼しくは見えぬ 夏草の 枯れ姿
 
             夕映えや 萎みぬ木槿(むくげ)の白花かな
 
              仄明かり 朝の訪れ 早き朱夏
 
               朝ぼらけ 朝告ぐ 小鳥の声も無く
 
              何時ものよ〔う〕に 暑き朱夏の訪れ 噫
 
               もう 昇りぬ もう半月 日や速し
 
 
 
                            平成30年7月20日
                                  <8首>
              濃緑 葉蘭五葉 映えぬ 朱夏の夕
 
                           -- ふと、昔日の浜辺を想い出して
               桜貝 探すも なかなか 春の海
 
              やっと見つけり 桜貝の花色 美
 
                桜貝のような爪 と 媼(おうな)呟き     
 
                         -- 朱夏の昔物語の続き
                井戸に吊るしぬ 西瓜の肌の 雫かな
 
                 井戸に吊るしぬ 西瓜の冷えの 快き
 
                
              枝に絡む蔓 何の其のか 白花槿(むくげ)
 
               炎暑も 蔓も 厭わぬ 槿 感嘆 
 
 
 
                               平成30年7月21日
                                     <15首>
 
                             -- また、昔日の花火物語り
 
             火の珠の弾ける 小路 線香花火
 
               線香花火 火薬の匂い 煙(けぶり)立ち
 
                閃光 飛散 線香花火の 宵
 
                  線香花火 持つ幼指 恐々(こわごわ)と
 
              線香花火 映える童の 笑顔あり
 
              線香花火 集う童や 燥(はしゃ)ぐ声
 
                もう終わり 線香花火や 閃光垂れ
 
               線香花火 藁に黒火薬 昔は素朴
 
             
             浴衣 団扇 線香花火 夕涼み
 
 
            しゅるっ しゅっ 鼠花火に 逃げ惑い
              
              跳ね回る 鼠花火よ 気ぃ付けて
 
               誰を狙うや 鼠花火の くるくる舞い
 
            鼠花火 童女好みや 跳ね追いぬ
 
             跳ね回る 鼠花火や 夏の恐怖
 
                  鼠花火 跳ね回る 恐怖や 夏の思い出
 
 
 
                             平成30年7月22日
                                   <11首>
 
                         -- 夏の浜辺を想い出しつ
            潮騒の浜 夏色の 響きあり
 
              朝逍遙 石蓴(あおさ)* 点点 朱夏の渚
                              -* 緑藻類の海藻
 
               波紋残す 波打ち際や 朱夏のアート
 
             鋏立て 目剥き 仁王立ち 磯蟹は
 
                磯歩く 我(あ)に 磯蟹 横歩き
 
                  磯歩く 足許 磯蟹 横歩き
 
              鏤(ちりば)るる 五色の貝殻 朱夏の浜
 
                砂浜に 続く足跡 君は誰(た)ぞ
 
                  喧噪はまだき 朝の浜 静寂かな
 
               逃げては戻る 我(あれ)や 渚のダンス
 
                また 逃げり 渚の歓声 朱夏の空
 
 
    
                                平成30年7月23日
                                      <8首>
            我(あ)が庵(いお)は 緑棘(おどろ)の 野草園
 
             薄紫 薄茶に枯色 実紫(みむらさき)
 
               立ち枯れの夏草 幽霊草となりぬ
 
               昨日まで、 今日(けふ)は萎るる 夏草 哀
 
                 ぐったりと萎るる 夏草 午後三時
 
 
               空耳か 雨音遠くに 炎暑の小夜
 
               明くる朝 夏草甦りぬ 驚嘆
 
                一夜明け 夏草蘇生 肖(あやか)りたし
 
 
 
 
                             平成30年7月24日
                                  <14首>
               朝昼晩 何時見ても 窄みたる 鬼野芥子
 
                楽しみも 窄みたりけり 鬼野芥子
 
                 鬼野芥子 六尺豊かも 花は無き
 
              如何(いか)な花 如何な色 問う 朱夏の庭
 
               ふと見れば 白黄小花の 鬼野芥子
 
                 姫のような 野芥子 夏野芥子 鬼ならぬ
 
              〔白花の〕 姫女苑と友にならむや 夏〔の鬼〕野芥子
 
              夏鬼野芥子 葉は名にし負う 形相なり
 
                息を呑む ジョーズの歯似の葉 夏鬼野芥子
 
               花は姫 葉茎は鬼なり 夏鬼野芥子
 
             
            揚羽蝶 暑さ知らずや 花から花へ
 
             波揚羽 飛ぶを見たるは 朱夏の幻
 
 
             日影にも 日蔭にも 咲く 槿(むくげ)哉
 
                 お湿りの有りや 無きや 昨夜(きぞ)の庭
 
 
 
 
                               平成30年7月25日
                                     <11首>
          朝風の 僅かの涼し気 有り難き
 
            まだ続く 炎暑 涼風 早朝のみ           
 
           額紫陽花 枯色なるとも 薄紅さしぬ
 
                枯れ花 皆 薄紅さしぬ 額紫陽花
 
           疎らなり 南天の実房 炎暑の所為?
 
            実南天  二つ 三つ 朱夏 哀れ
  
             実結ばぬ 葉南天 青青 朱夏の青み 
 
 
          さるとりいばら 葉艶あり 木蔭下
 
           唐胡麻や 辺り構わず 葉葉開きぬ
         
            南瓜実生え 炎暑にめげず 怯まず 生う
 
              薄 戦ぐれど 庭や 唯 熱風
 
 
 
                                 平成30年7月26日
                                      <15首>
           小さきの枯れ 庭 土見せぬ 夏草よ
 
             夏木立 蝶蝶も 君も 一休み
 
              夏暖簾 潜りて涼し 欠き氷
 
                蚊も飛ばぬ 猛暑とぞ 聞こえおり
 
                 暑苦しき 蚊音の絶えるる 夏怪(おか)し
 
              蔓 葛 繁るる 空家や 憂 愁 あり
 
 
               彼(あ)の音は 雨音なりや 一月(ひとつき)振り
 
              大粒の雨 草木打ちぬ 朱夏の庭
 
               俄か雨 暫しの潤い 朱夏の庭
 
                俄か雨 葉から滴る 涼の情
 
                俄雨 慈雨 甘雨なり 炎暑の庭
 
                 待ち望む お湿り夏草 緩やかに
 
                俄か雨 天からの恵み 朱夏の庭
 
 
              此方 雨 彼方夕映え 燕飛ぶ
 
               夏霞 仄か茜の 黄昏時
 
                雷鳴の轟く 夜空 星影なく
 
                 雷神の怒(いか)りや 雷(いかずち) 夜の空
 
 
 
                              平成30年7月27日
                                    <20首>
              久し振り 夏枯れ 哀れ 夕散歩
 
               葭簀(よしず)から 頭(とう)だし 唐辛子 空仰ぎ
 
                ミニ・ミニ トマト 実のミニ・ミニが 三つ
 
               蜜柑の実 三つ程見つけり まだ青き
 
               朝顔や 皆 窄みおり 夕散歩
 
                枯れ夏草 抜けば 痛痒 痛し 痒し
 
                  夏草は 枯れ草も 虫の楽園
 
               心無く 乱したる我(あ)に 虫や反撃
 
 
                 涼風に 思わず吹き方 返り見ぬ
 
                  何処からや 吹きたるか この炎暑
 
               夕涼み 床几(しょうぎ)も 団扇も遠くなり
 
                桔梗(ききょう) 白 花やぎおり 夕散歩
 
 
           春先は 嫩葉いと小さき 切葉野葡萄(きれはのぶどう)*
                               -* 漢字一語扱い
 
                 石垣に這う 切れ葉野葡萄 青 水無月(みなづき)
 
               この酷暑 如何に と想う我(あ) 切葉野葡萄
 
             こんなにも 実の花盛りに出会うとは
 
                  切れ葉野葡萄 花咲きぬ如 実花やか
 
                花は見ず 咲けば腐(くた)るの 運命か
 
             路上まで 這い出ず 野葡萄 そ〔っ〕と引っ込め
 
             未だ青き 実の切葉野葡萄 熟すは秋
 
               楽しみは 秋の何時頃 切葉野葡萄  
 
 
 
 
                                 平成30年7月28日
                                     <7首>
           乱れ髪 梳かしつ 坂路 嵐前
 
             茜色 夕空映えり 感嘆し
 
                青空に 夕焼け雲 風 不気味
 
                   明日 嵐と予報あり 不安あり
    
            藤の花 上向き疎ら 朱夏の日
     
              打ち続く 炎暑に咲く 藤の花 怪
 
               狂い咲き 然(さ)こそありなむ 藤の花
 
                幾房も 空見上げる哉 藤の花
 
 
                          
                           平成30年7月29日
                                  <13首>
           一夜(ひとよ)中 音猛猛し 嵐の音
 
            昨夜(きぞ)一夜 大雨風や 吹き捲り
 
             明くる朝 打って変わりぬ 静かさ哉
 
              過ぎぬれど 猶 不気味な気配 空薄墨
 
                薙ぎ倒されぬ 夏草の 背高きが
 
             嵐去り 辺り ゆったり 朱夏の夕
 
              炎暑緩み 涼風吹き来ぬ 何処から
 
                猛暑 緩 一握の涼 朱夏の夕
 
                   猛暑にも 一握の涼あり 朱夏の夕
 
              枯れぬる と見し 夏草 甦りぬ  
 
              青空の 眩しき午後に 嵐過ぎ
 
                槿(むくげ)花 涼し気な朱夏 戻り来ぬ
   
               南天に 雨の涙〔/雫〕 三つ 二つ
 
               仄かにぞ 聞こゆるる 用水路の潺(せせらぎ)哉
 
      
 
 
                              平成30年7月30日
                                   <13首>
               野草 繁るる花壇や 夏休み
           
           果敢無(はかな)気な 虫の音(ね) 彼(か)は ミンミン蝉
 
               木立から 降り落ち来る 蝉のか細き音
 
                 彼方から 此方から 蝉の音呼応
 
 
            昨年(こぞ)咲きぬ 白百合 今年も 此処に咲き
 
             山里は 逸出の白百合 其処此処に
 
             溝底も 白百合咲けば 其処や花園
 
                皆未だ 花芽(かが) 丈の高きも 低きも
 
                 見上げれば 白百合の花盛り 崖の上
 
                 夏疲れ 白百合 ぐったり この熱暑
 
                    疲れおり 炎暑に咲けば 白百合も 
 
                 夏疲れ 白百合も 向日葵さえも
 
 
 
         
                                    t 平成30年7月31日
                                   <14首>
                 朝涼し 秋の気配や 見えねども
 
                  陽光の濃さ 薄まれり 文月末
 
                    後れ咲き 花冠二段の 額紫陽花
 
 
               見つけたり ガレージの庇(ひさし) 燕の巣
 
                灰色の不思議な造形 燕の巣
 
                  枯れ草 泥 唾液で造りたりか 燕の巣
                  
              巣入り口 飛び込む燕 親の業
 
               電線に 燕二 羽 巣見守るる 親や
 
                もう 空き巣! 否 燕の幼な声
 
 
                山牛蒡(やまごぼう)幼きは 雛 浅緑
 
               長ずれば あられもなき風姿 山牛蒡
 
                傍若無人 葉茎延ばしぬ 山牛蒡 
 
               実 黒紫 山の神も恐るるや 山牛蒡
 
 
               鬼野芥子 綿毛や散りぬ 花見ぬ間
 
                夏草に押れつ 姫女苑 可憐な白花
 
 
 
                              平成30年8月1日
                                    <10首>
            金蚉(かなぶん)や 夏草巡り 遊覧飛行
 
            瑠璃色の翅映え 羽搏く 金蚉哉
 
             蜆蝶(しじみちょう)も 草から草へ 炎昼中に
 
             チキチキチキ 涼風運ぶ 蜩(ひぐらし)らし
 
               狗尾草(えのころぐさ) 花穂撫るる風の 未だ暑き
 
             炎昼も 過ぐれば 涼し夕べ来ぬ
 
             御所水引(ごしょみずひき)と見しや 白花の枯れ水引き
                       -* 御所水引き 紅白の花 一つの茎
    
               夏の夕 銀水引きの 佇まい
 
              一弁(ひとひら)の 涼あれば 蜩鳴くや
 
 
 
                                平成30年8月2日
                                    <10首>
             夏に咲く 白花桔梗 細面
 
              桔梗花 白に混じりて 浅紫
 
            夏に咲く 桔梗は 秋の七種か
 
 
             向こう向き 朝顔一輪 如何にあらむ
 
              蕾もまた 一輪ほっそり 向こう向き
 
                柵に捲く 蔓も素朴な 朝顔かな 
 
             暑中見舞い 絵葉書に咲く 朝顔哉
 
 
          茫茫の 夏草 吹き抜く 風の夕
 
               吹き渡る 夏風少し 涼し夕
 
                此の朝顔 葉ばかりばかり 君嘆き
 
 
 
                               平成30年8月3日
                                    <8首>
          百日紅(さるすべり) 紅紅と燃ゆ 松明の如
 
            百日紅 燃え立ちぬ 紅花 朱夏の空 
          
            青白き面(おも)のトマトや 朱夏の許 
 
          この炎暑 まだ続くの と トマトに問い
 
 
          唐胡麻(とうごま)の花穂 藤細工(とうさいく)の如
 
          ようように 蝉時雨 降り鳴く 朝の路
 
            暑苦しき 蝉の鳴き声 朱夏なれば
 
              夾竹桃(きょうちくとう) 紅 白 淡紅* 好み夫々
                           -* 漢字一語扱い
 
 
 
                               平成30年8月4日
                                     <13首>
           夾竹桃 白花翳(かざ)し 庭飾り
 
            葭簀(よしず)上げれば トマト未だ 青白き面
 
             凌霄花(のうぜんかずら) 落花も 上や鈴生りなり
 
           凌霄花 独り 花盛り 朱夏の空
 
           
              抜けど 猶 生えぬ 野草の 朱夏の庭
 
              今はもう 諦めの境地 生(は)えなば生え
 
           
           穴ぽ〔っ〕かり もう巣立ちや燕の子
 
               早 巣立ち 一週間も経たぬのに
 
                顔一杯 口明け 餌待つを 想いしが
 
             夕空を 燕の群舞 茜色
 
            幼きも混ざり 飛び交う 燕の群舞
 
            一斉に 弧描く 夕空 燕の舞
 
               数十羽 電線に止まりおりぬ 燕(つばくらめ)
 
               電線に 燕の音符 メロディーは?
 
 
 
 
                             平成30年8月5日
                                   <9首>
              見渡せば 何処(いずこ)も 同じ朱夏 の灼熱
 
               日蔭やは 仄か匂いぬ 秋の訪れ
 
              明け方も 秋かとぞ思う 涼風あり
 
               熱暑なり 団扇の風情も 浮かび来ぬ
          
                唯 低く 除湿の機音 炎暑には
 
                  西日 濃厚 熱射や草木 声も無く
 
                葉南瓜 熱暑に ’青菜に塩’ 以上
 
               フラ フラ 小虫 空中遊泳 炎昼に
 
                  黄昏(たそがれ)ど 炎暑去りやらぬ 何とせむ
 
 
 
                               平成30年8月6日
                                   <10首>
            南瓜の葉 朝開き 炎昼萎み 宵開き
 
                朝ぼらけ 蝉時雨あり 時雨なし
 
  
              蝉時雨 聞こゆるは 我(あ)が 耳の奥
 
               我(あ)が耳鳴り 蝉時雨の如 鳴り居りぬ
 
                夏夜更け 我(あ)が耳時雨* 騒騒し
                            -* 蝉時雨を捩って
      
            雨宿り したくも 雨や一滴も
 
             炎暑には 梅雨も恋しくなりにけり
 
            雨乞いや 何方(いずち)へすれば 良いのやら
 
              台風の予報のあるも 日照り続き
 
               夕涼み 夜半まで待つらむ 炎暑中 
 
                   ほっとせり 扇子煽ぎぬ 君何処
 
 
 
 
                             平成30年8月7日
                                  <15首>
            バッサリ 落つ 蝉の音にも 夏疲れ
 
             夏疲れ 何事も気怠き 鬱の午後
 
            夏草 棘(おどろ) 大犬蓼(おおいぬたで) そ〔っ〕と 佇み
 
               大犬蓼 花穂優しき 姫の如
 
               夏の宵 月少し出で 涼しき哉
 
                  夜風吹く小径 暫しの避暑地哉
 
 
              芽生えあり 甘藷や切りて ガラス瓶
 
            窓辺やは キッチン・ガーデン〔/kitchen garden〕 甘藷の
 
             甘藷 蔓 すらり伸び行く 窓辺の菜園           
 
               柳腰の 美人の如 甘藷(の蔓) すらり
  
             垂直に 蔓伸ばしぬ 甘藷の不思議
 
             這うものと見しや 直立の蔓甘藷
 
              ふと見れば 白き根も張りおり 水栽培
 
             葉濃緑 細身の心蔵形 甘藷哉
 
              なんのその 窓辺の甘藷 炎昼を
 
 
 
                           平成30年8月8日
                               <15首>
             微風に 心浮き立つ 夏疲れ
 
              南瓜の葉 宿るる小虫 雨や無く
 
               くしゃみ 一つ 立秋の 一行事
 
               朝涼し 秋立ちぬ と見たり朝 
 
            熱暑かな 草木も午睡 未(ひつじ)三つ
 
               炎昼 草木も昼寝 昼下がり 
 
       
             金水引き 今日も健気 小黄花よ
 
              金水引き 咲て知りぬる 秋の訪
 
            彼方此方(かなたこなた) 金水引き花 秋の色
 
             立ち枯れぬ 葉蘭にも 一興あり
 
             夏の夜の お湿り 葉蘭や 萌え出でぬ
 
              枯れ葉から 幼葉三つ 突き出でり
 
              
             蝉の声 はや懐かしき哉 涼風吹けば
 
              星影の涼しき庭へ 出でぬらむ
 
               白雲の叢(むら)立つ 夏空 星一つ
 
 
 
                             平成30年 8月9日
                                <14首>
            砂防壁 今夏 野草の園となり
 
             茫茫の夏草に 混じりむ 白きは何(な)ぞ
        
             白百合 百輪 棘(おどろ)の夏草 砂防壁
 
              此処に 一輪 彼処にも 高砂百合
 
             
              珍しき 夏の来客 塩(辛)蜻蛉〔しお(から)とんぼ〕
 
                ほんにまあ お久し振りね 塩蜻蛉
 
                   蜻蛉見ぬ 寂しき夏の 久しき哉
 
                        --猛暑続きから少し涼しくなった朝
              槿 ぱ~と咲いたり 三・五輪
 
    
               葉蔭から 青銅色の翅 金蚉(かなぶん)が
 
              燕の巣 新しきから 幼なき声
 
                今度(こたび)こそ 見まほしき哉 大きな口
 
                           --散歩中、別の場処で
                  燕 百羽 巣は一つ許り なれど
 
               幼きが 覚束無(おぼつかな)に飛ぶ 夕空を
 
     
               未だ蕾 咲くまで待つらむ 高砂百合
 
 
 
                                平成8月10日
                                   <13首>
           秋茜(あきあかね) はて(な)近づけば 飛び去りぬ
 
             凌霄花(のうぜんかずら) 鈴生りなるも 無音の夕
 
              更地は一面 狗尾草の野 となりぬ
 
            巣見えねど 燕の幼声 黄昏時
 
             山牛蒡(やまごぼう) 雛のまま 実結びおりぬ
 
              萎れおり 白百合の他 夏の夕
 
                皆萎れぬ 向日葵(ひまわり)も また 山里は
 
 
               南瓜の葉許り 広がる 朱夏の庭
 
                南瓜の広葉  直径三寸余
 
                 蓬の簇越え 南瓜の蔓 何方まで
 
    
              側溝に 犬蓼(いぬたで)/紅飯(あかまま) 
                 ひっそり 素朴な風姿
 
             路傍の白百合 閑か 潺(せせらぎ)の音
 
              夕陽沈み 灯や 一つ二(ひとつふた)
           
                灯の 一つ二つや 朱夏の夕
 
            大犬蓼(おおいぬたで) 早乙女花(さおとめはな)に巻き付かれ
 
 
 
                                 平成30年8月11日
                                   <15首>
          朝まだき 来れば 炎暑に戻る朝
 
           朝涼風  漸う炎暑 乗り切るや
 
             炎暑の凪 物皆鎮まり 宵を待つ
 
             宵までも 咲く 槿(むくげ) 暑さ狂い?
 
            朝夕の涼しきに 槿や 嬉し咲き?   
 
               一日花の定め知らずや 花木槿
 
 
            蝉飛び回る 碧空の下 草〔叢〕の上
 
             蝉は樹の幹 枝 見つけるが習い
 
 
            すっと伸ぶ 南瓜の腋芽 葉蔭より
 
             腋芽三つ 葉蔭から出ず 南瓜の
 
              南瓜の尖がり帽子の芽 をかし
 
            芙蓉花芽(かが) 青きが五つ 石垣下
 
             淡紅花 石垣の上の 芙蓉哉
 
               昨日の蜻蛉 もう秋茜と 驚きぬ
 
             夏茜と知れば 頷く 未だ盆の前
 
 
 
                           平成30年8月12日
                                <18首>
          百合に似て 百合に非ず 何(な)の花ぞ
 
              辺りでは 見ぬ花珍し 何処(いずこ)から     
 
            小鳥 風 誰(た)が運び来ぬ 彼(か)の花の種
 
              他の夏草に 混じりて生いぬ 一株独り
 
              何処となく エギゾティックな佇まい
 
            天使のトランペット* お洒落な名前 ど〔ん〕な音色
                        -*angel's trumpet
         
                         南瓜の 片見え黄花 葉蔭下
 
              もう一輪 今にも咲きそ〔う〕な 備えあり
 
             犬蓼(いぬたで)花 ままごと(飯事)遊びや想い出ず
 
              昔 童 赤飯(あかまま)と呼び 飯事遊び
      
    
            白き根や 弥よ増す 蔓も 薩摩芋
 
             薩摩芋 窓辺の菜園 お気に入り
 
           
              朱夏の午後 枯れ葉の舞い見ゆ 幻覚か
 
            またも見ゆ 枯れ葉のような ミニUFO
 
                        黄揚羽蝶 と知れば 似たりの枯れ黄色
 
                優雅に揺らす 黄揚羽 姫昔蓬*花に
                               ー* 漢字一語扱い
 
            漆黒の揚羽 我(あ) 心奪われしが
 
             今度(このたび) 黄揚羽の舞い 目を奪われるる
 
 
 
                             平成30年8月13日
                                   <8首>
           西日映え 鶏頭(けいとう)の花頭 紅濃ゆく
 
             鶏頭花 逆立つ勢い コケコッコウ
 
              無花果(いちじく)の実の独りおりぬが 熟し落ち
 
              無花果の実見ぬ晩夏や 寂しけれ
 
                珊瑚樹(さんごじゅ)の実房 仄紅(ほのべに) 秋戦ぐ
 
 
             可愛らし ミニトマトの実の 赤き哉
 
               食(は)まるると 知らずやトマト 赤くなり
 
                 未だ青き実も 残りおりぬ ミニトマト
 
                  
 
 
                                平成30年8月14日
                                     <14首>
          生温き 夜風に晩夏 明日や雨
 
           月を見ぬ 濃藍の景 物の怪の気
 
            山吹の 萎れつも咲きぬ 夏の果て
 
              山吹の晩花 晩夏の 熱気の夕
 
                山吹の 花は春 八重も一重も
 
           間違えたの 季節は今は 夏の末
 
             山吹の花 木一面に 夏の末
 
     
              南瓜 一日花独り 虫媒無理
                       - 南瓜は雌雄異花の虫媒花
 
            南瓜の葉 宿るる 小虫 雨なくに
 
              雨宿りする 小虫に 雫なく
     
             胡瓜 苦瓜 黄花彼方此方 フェンス越え
 
 
 
                             平成30年8月15日
                                   <7首>
            朝露の 残れる草木 秋隣り
 
             朝露に 槿の花花 楽し気に
 
           夏蜜柑 実の青きや 秋や待つ
 
            そよそよと 涼風立ちぬ 秋きざす
 
              芙蓉 白花 茜映え 晩夏の夕
            
                向こう向き 芙蓉や咲きぬ 淡紅色の
 
             回りて見たり 向こう向きの 花芙蓉
 
 
 
                          平成30年8月16日
                               <20首>
            苦瓜の葉繁しに 黄小花 三つ〔/見つ〕
 
             実まだなり と目移せば 大きがぶらり
 
              ぶらり ぶらり 苦瓜の実 実 夏の末
 
             苦瓜は 花可愛らし 実 強面
 
              苦瓜や 登り登りて ヴェランダまで
    
          花も実も 橙赤色の 姫柘榴(ざくろ)
 
           花は春 実は秋の季語 姫柘榴
 
            今(いま) 晩夏 花咲き実成る 姫柘榴
 
 
              また此処にも 路傍に 溝に 白百合が
 
           高砂百合 我(あ)が山里の風物詩
 
            ひっそりと 佇む白百合 夏霞
 
 
             白百合 百輪 過る不安や 打ち消したし
                 -百輪の白百合のあくる年 大震災
 
               涼風に秋来ぬとぞ 思わるる
 
                 涼風や 秋の香ぞ遣したり
 
                 風音に もう 秋とぞ 物寂しき
 
                         -- 台風接近の予報ありたる朝
              お湿りに 夏草生き生き 我(あ)は怯え
                   
               もう巣立ち と想えば燕の 幼な声
 
                 電線に燕(つばくらめ)一羽も 一抹の寂
 
               出ては亦 雲隠れせり 弓張り月
               
                  十六夜に もう弦月とは 如何なり
 
                弦月も叢雲も見ぬ 闇晩夏の
 
        
               巨大胡瓜 見つけり フェンスの葉隠れに
 
               黄小花に 胡瓜? 苦瓜と訝しおりぬ
 
 
                             平成30年8月17日
                                   <7首>
           空爽やか 桔梗 我が世を 謳歌哉
 
            紫に白 淡紫混ざりて 桔梗華やぎぬ
 
              睦み合う 桔梗の風姿 紫白淡紫* 
                         -* 漢字一語扱い
 
           芳香に包まれ 見れば 崖に白百合
 
            芳香の漂い来たりぬ 崖の白百合
 
              白百合の 繚乱の崖 壁画の如
 
  
            百日紅(さるすべり) 花炎〔/火炎〕 燃え燃え 青き空
 
 
 
                            平成30年8月18日 
                                  <17首>
             一輪で華 南瓜畑や 如何にあらむ
 
            涼しさに 衣替えせむ 秋色に
 
             秋来ぬと 言えど 昼下がりの暑きよ
 
               夏戻り 扇子煽ぎぬ 君想う
  
 
                 涼風に誘われ 初秋の小逍遙
 
             実結びおり 天使の喇叭〔angel's trampet〕 オクラ風
 
            実の形 トランペット似に非ず オクラ似なり
 
             狗尾草(えのころぐさ)野 花穂の長きや すらりの美人
 
              狗尾草 吹き渡る風(かぜ) 初秋風(ふう) 
 
 
             百日紅(さるすべり)薄紅(うすべに)の花房垂れぬ 
                             薄(すすき)野に
 
              百日紅 花房枝垂れ 初秋の見え〔/ 見栄〕
 
               幼きの戦ぐ 薄野 秋の香り
 
                      -- 整地され、殆ど伐採されたにも関わらず
               生き残りぬ 木芙蓉咲きぬ 特(とく) 嬉し
 
                 花芙蓉 近くの実生え 見守りおり
 
              フェンスより 這い出ず露草 空の色
 
               松毬(まつかさ)の 鎮座まします 路上哉
 
 
 
                              平成30年8月19日
                                    <12首>
              南瓜に虫飛び来るも 黄花一輪 揚羽蝶
 
               黒揚羽 金水引きに 秋日差し
 
                当て処(ど)なく 延ぶ野薔薇 蓬に着きぬ
 
                 見分け難 姫昔蓬と大荒地野菊 我(あ)が庭は
 
            毬栗(いがぐり)や 此処其処彼処 成りおりぬ
 
             栗の毬 丸丸太るも 未だ青き
 
              栗の毬 パクリ開くは 未だ先ネ
 
             
            椿の実 艶やか光りぬ 紅色に
 
             椿の実 先日よりも 紅付きぬ
 
           電線に 八羽 三羽と 燕(つばくらめ)
 
            飛び去りて 且つ 飛び戻りぬ 燕一羽
 
             燕飛ぶ 空茜雲 夕陽映え
 
 
                       平成30年8月20日
                               <12首>
             南瓜の蕾七つも 花一輪 噫
 
              木通(あけび) の実 未だ青き 未だ初秋
 
             百日紅(さるすべり)珍しき哉 紅紫色
 
               ピュ~ン ピュ 低空飛行の 油蝉
 
                 油蝉 飛ぶを見るは 今季の椿事
 
             百日紅 紅 淡紅 紅紫 白見ぬ不思議
 
              白壁に壺垂れの如 蔓桔梗の蔓
 
                木の葉舞う と見しが 枯れ葉擬態の蛾
 
                   白秋の花 紫 黄の多き哉
 
               谷覆う蔓 伸び上がりて 欄干まで
 
                 
                       平成30年8月21日
                                   <12首>
              あっ 彼(か)は何(な)ぞ 谷間過る 茶褐色
 
               鳶(とんび)らし 谷間の伸ぶ 葛の間に
 
              辺りまだ 暑気の残りぬ 初秋の今朝
 
                 未だ初秋 枯れ尾花や 風に揺れ
 
                  枯れ尾花 赤蜻蛉 目真ん丸く
 
                 茜色 移ろいぬ 空色 晩夏の空
 
             日光も風光も 白澄みたり 晩夏の今朝
 
              早乙女花(さおとめばな) 尾花に絡み 屏風絵の如
 
               数百年前の 同じ意匠の秋草 見ぬ
 
             赤蜻蛉 飛び去る 初秋 残暑あり
 
               飛び込みぬ 胡蝶 避暑にや 初秋に
 
                 去るは何時 我(あ)が身に酷な この初秋
 
                   初秋にも 秋愁あり 如何にせむ
 
 
 
                             平成30年8月22日
                                    <8首>
           其処此処に 早乙女花の小さき春
 
             白から薄紅 源平小菊の グラデェ―ション
 
             夕烏 何処か寂しき晩夏の夕
 
              初秋の声 心(こころ)悲しき 闇夜哉
 
             満開も 一輪も 興(きょう) 木芙蓉
 
               淡紅が 石垣の上に 花芙蓉
 
               初秋の雲 淡く 切れ切れ 胡蝶飛ぶ
 
               夏草や 枯れずそのまま 秋草に
 
            
                            平成30年8月23日
                                  <11首> 
                        ピーマンや 赤 赤 熟れて 小さきランタン
 
              風一陣 驚きぬるる 今朝の晩夏
 
                            -- 大型台風の予報あり
             それにしては なんと爽やか もう初秋
 
              空高く 白雲飛びぬ 切れ切れに
 
               朝凪に 小苑 沈み 愁思あり
 
                 急ぎ足 秋日傘 揺れる 今朝の坂
 
              薄紫 向こうの側に 薄紅が
 
               槿(むくげ) と木芙蓉(もくふよう)咲き揃いぬ もう初秋
 
             葉隠れの 木通(あけび)の実の 未だ青く
 
              ハイビスカス また一輪 残り咲き
 
               朝顔の 笑顔 笑顔や 朝逍遙
 
             晴れ渡るる 空 これぞ 嵐の前の静けさか
 
               大嵐の 襲来の夜 我の独り
 
               独り寝(い)ぬ 大嵐の轟き 弥 増せり
 
                 暴風雨 止みて戻りぬ 静穏夜
 
 
 
                             平成30年8月24日
                                  <10首>
             台風一過 とは言え何処かで 荒ぶらし
 
                 今も猶 吹き荒ぶらし 暴風雨 
 
                無事祈念 大嵐の行方 分かぬれど
 
              薙ぎ倒さる 草草 早 頭(こうべ)擡げ
 
                暴風雨 それほどでも〔なかった〕と 君の言い
 
                 そうね でも 降雨量 百ミリ超えかも
 
               どんよりと 曇りたる空 秋燕
 
 
 
                              平成30年8月25日
                                    <13首>
                クルクルクル 蜘蛛 独り舞の 初秋哉
 
                    独り舞う 朝の蜘蛛 吉兆とか
 
                   淡く淡く 棚引く白雲 秋茜
 
                淡青の 眩しきばかりの 秋の空
 
                 夕化粧 目一杯咲きぬ 里の初秋
 
                鶏頭(けいとう)や 真紅に佇む初秋の夕
 
                 朝顔の 窄みぬ夕暮 一つの景
 
                   毬栗の 丸々 落ちそうな 梢哉
 
                秋の坂 喘(あえ)ぎぬ我(あ)に 杉垣の香
  
                  リフレッシュ 森林浴気分 杉香り
 
                     梔子(くちなし)の 未だ二・三輪 秋の夕
 
                枯れぬれば アガパンサスの実の しどけなく
 
               彼処此処(あちこち)に 白百合 爽やか 秋の夕
 
                山鳩の 鳴く声ぞ 寂しき 秋の山里
 
               
 
                            平成30年8月26日
                                 <10首>
             燕三十余羽 電線に 集いぬ 秋の夕
 
               昨年(こぞ)の秋 燕(つばくらめ) 百余羽 見
 
                燕少な 電線虚ろ 秋の夕
 
              燕(つばくらめ) 皆 西南向き 帰燕待ち?
 
              
           秋の虫 まだか細き 鳴きぬ 山里は
 
             逆光に 狗尾草(えのころぐさ)野 浮かび立つ
 
              白薔薇の 小さく咲き残りぬ 秋
 
               葉隠れに 少し色付きたるが 一つ
 
            無花果(いちじく)の 実の青きが 三つ 奥に四つ
 
             帰燕まだ 先であれかしとぞ 思う
             
              烏一声 燕一斉 飛び立ちぬ
 
                何事も 鬱陶しき哉 秋翳り
 
                絞り花 見ぬ 夕化粧 心(うら)寂し
 
              白花嫁菜 にっこりせり 路の縁(へり)
 
 
      
                           平成30年8月27日
                                <13首>
            一直線 秋茜 飛びぬ 空青き
 
               白蝶花 数輪 戦ぐ 秋夕べ
 
              秋立つを 知らずや 韮の花行列
 
               花笠を 翳して 優し 韮の秋
 
                 夕暮れに 仄かに浮かぶ 夕化粧
 
                   まだ残暑 夕涼みがてらの 戻り路
 
 
               生垣を覆う 藪枯らし(やぶがらし) 宜(むべ)繁し
 
             花頭の小花 いと愛らし 藪枯らし
 
               桃色から 黄 橙に変化(へんげ) 藪枯らし花
 
                
             紅に白縁 可憐な小花 早乙女花(さおとめばな)
 
               此処にも 可憐 早乙女花や 初秋の華
 
                早乙女花 薄に絡みぬ なよらかな
 
              なよらかに 見えしも 〔やがて〕逞しき 早乙女花
 
             何処にも 絡みつく蔓 早乙女花
 
 
      
                               平成30年8月28日
                                  <8首>
              次々と 飛び出ず 碧空 秋茜
 
              山牛蒡(やまごぼう)幼なや 鄙びの風趣あり
 
             夏蔦の 棚引く白壁 夕陽映え
 
              一茎に 七輪蕾も 白百合の華
 
               唐胡麻(とうごま)の 花筒の小さきも 実結び
 
                鶏頭(けいとう)花 オレンジ色や 我(あ)初見
 
            秋燕 空の彼方へ 巣残りぬ
 
              電線に 燕等集いぬ 帰燕の時期や
 
               幼気(いたいけ)な 子燕もまた 電線に
 
                 親鳥の 寄り添いぬ姿 無事祈りぬ
 
               真紅の薔薇 物寂し気な 忘れ咲き
 
                山牛蒡 此処彼処に 幼なが 秋の情
 
 
 
                            平成30年8月29日
                                   <18首>
 
           綿毛飛び 次世代の 尾花 風に揺れ
 
             すっと伸ぶ 初花薄 風吹き抜け
       
               初尾花 一輪伸びやか 秋気濃し
 
            残暑 厳し 涼思わるる 初尾花
 
            草叢から 飛び出ず物影 彼(あ)は飛蝗(ばった)
 
             青草へ 飛び込みぬ飛蝗 枯れ葉色
 
              虫の音は 未だ聞かねど もう秋夜
 
                何時までも 残暑 酷暑に 秋涼請う
 
              虫の音の か細き哉 秋の宵
 
                もしかして 彼(あ)は蟋蟀(こおろぎ) 秋
 
           この夜蜘蛛 朝蜘蛛と同じ 吉や凶や
 
 
 
                          平成30年8月30日
                                 <20首>
              青から黄 赤に熟しぬ ミニトマト
 
               八つ手の葉 何故(なにゆえ)に かくも逞しき
 
 
                 燕見ぬ 電線 心(うら)寂しき 秋
 
              燕尾 翻し去る 二羽 見送りぬ
 
 
              草木繁し 坂路 我(あ)や独り行く
 
              ぶらり ぶらり 南瓜 フェンスに垂れ下りぬ
 
                 フェンスに這う 南瓜 実生え なりや
 
               窄みぬも 難民の黄花 実結びぬ
 
            南瓜は 人の言う 虫媒花と
 
             南瓜に こと問わむ 誰(た)が媒介
 
              南瓜の緑の濃淡 お洒落な模様
 
           何時か見た 瓜坊に似たる南瓜哉
 
 
            瓢箪(ひょうたん) ぶらり ぶらり 棚の下
 
            丸く 丸~るく 瓢(ひさご)括れて 妖し
 
               瓢箪の 腰括るるが 二つ三つ
 
              白緑の 瓢箪 揺れて 夕陽映え
 
             放ったらかし 棚の瓢箪 のんびりと
 
 
           花びらの 十字 十字の 仙人草
 
               仙人草 枇杷の樹影に 華やぎぬ
 
 
 
 
                               平成30年8月31日
                                    <19首>
                  白花と見しや 白化の切葉野葡萄  
 
             白化の葉 枯れるも枯れず 蔓に絡み
 
               白化葉(よう) 緑葉と共 蔓の賑わい
 
                白化葉 実の瑠璃色や 見るらむや
 
              切れ葉野葡萄 実のまだ緑 秋浅し
 
               切れ葉野葡萄 蟻上り下り 足繁く
 
 
             秋の野辺 歩めば舞い出ず 迷い調             
 
              今は未だ 出会わぬ野菊 野路菊も
 
             
             黒き羽根 路上に 一つ 〔落とし〕主は誰(た) 烏(う)?
 
            見渡せど 落とし主の 姿見ぬ
 
             鳴き声 頻り 姿の見えぬ 秋の空
 
              そよそよと そよそよ戦ぐ 秋の風
 
          
             空き地覆う 葛(くず)葉葉重ね 猛々し
 
               秋日傘打つ 大粒の雨 俄か雨
 
           彼(あ)は誰)た)ぞ 燕(えん/ばめ)と烏(う/らす)の間
 
                ’束(つか)の間’鳥?
 
 
          帰燕の空 赤蜻蛉飛びぬ 浮き浮きと
     
 
           到頭 根こそぎ抜かれぬ 桜切り株
 
            蘖(ひこばえ)の また芽生うを見つけたり 嬉
 
            元気でね 思わす撫でり 桜蘖
 
    
          黄色大輪 輝きぬるも 独り南瓜
     
 
   
 
                         平成30年9月1日
                              <5首>
          夕化粧 まだ窄みおり 昼下がり
 
           咲きぬれば 白 淡紅 黄 紅絞り* 夕化粧
                           -* 漢字一語扱い
         
        名の分かぬ 淡紫角状花 粛々と
 
          雷(いかづち)の声 轟きぬ 初秋の朝
 
            秋陰り また追いやれる 鬱の世に
 
 
        
 
                           平成30年9月3日
                            <12首>
            真っ青な天空仰げば 淡き月/白き月
 
           秋日和 いざ 行楽に 何方(いずかた)へ 〔スーパーへ〕
 
            亦 迷い込む 子雀蜂 何(な)望む 〔蜜無きに〕
 
          秋風に 秋草 戦ぐ 秋日和
 
           暫くの間 歩まぬ小径 秋景色
 
              盗人萩(ぬすびとはぎ)野 そよ吹く秋風 いと涼し
 
                路上に 蝉の亡き骸(抜け殻) そっと脇に
 
           樹木は未だ 濃緑なり 白秋に
 
            毬栗(いがぐり)の小さきの落ちて 枯れ葉色     
 
               松毬(まつかさ)も 毬栗も 点点 秋の野辺
 
           大嵐 毬落としぬ いと悪(わろ)し
 
 
            放物線 描きぬ 一茎 虎杖(いたどり)の
 
 
          
 
                           平成30年9月4日
                               <9首>
                      -- 台風21号が四国、近畿直撃、神戸も
            大嵐 大雨 伴い 大暴れ
 
            大慌て 雨戸閉め 濡れぬ 大嵐
 
             用水路 午睡を破る 漠水流/大音量
 
              用水路 に生う 草木 如何にあらむ
 
               大嵐 昨日の秋晴れ 今 何処
 
           大嵐過ぎぬる迄の 長き時
 
             平穏の 有り難き哉 大嵐
 
              過ぎ去れば 静かな秋の夜長哉
 
          茜色 儚く消えぬ 今朝の秋
 
 
 
 
                           平成30年9月5日
                                <16首)
              楽し気な 槿(むくげ)の花 花 朝日映え
 
                 大嵐耐え 咲かずばなるまい 花槿
     
           流されず よく頑張ったわね 用水路の草木
 
            今朝の蜘蛛 何時ものように 何時もの巣を
 
               彼(あ)の嵐 よくも耐えたり 蜘蛛 強靭
  
    
             キッチンのタイルへ 飛び付く 秋の虫
 
            彼(か)は誰ぞ 後ろ肢立て 秋飛ぶ虫
 
             松虫と見しが 小さきに 訝しく
 
               跳び出でよ 子秋虫 親探しなむ
 
              昨日の嵐 耐えて 今日 もう冒険? 
 
            三分ほどの 身の秋虫の 冒険魂
 
       
               蟻 蜜に群がり運びぬ 何方へ
 
              よく見ても 見えぬ 微量の蜜運び
 
 
               微量でも 足繁く運べば 大量とならむ
 
            微風(そよかぜ)に 尾花頷きぬ 絶え間なく
 
             サルヴィア や 焔の如 咲きぬ秋
  
                 仙人草 華やか 三か処 一時(いちどき)に
 
 
 
 
                         平成30年9月6日
                               <12首>
                      --大嵐の翌日
              秋茜 黒揚羽 飛び交う 嵐の明日
 
               韮の小花 頭寄せ合い 生き残りたり
 
             草木皆 耐えたり 怒涛の奔流に
 
 
           ハイビスカス 赤き血潮や 受けた如
 
             秋日和 辺り ぐるりと 朝歩き
 
              木芙蓉 実や満開となりにけり
 
           日日花 日日変わらず 咲き続き
 
           白色藪蘭(しろばなやぶらん) 嵐の後の 花盛り
 
             百日紅(さるすべり) 千日紅(せんいちこう) 長寿はどちら
 
                   -- 枝豆を、ふと思い出して読める
               枝豆や 青青 丸々 月や 何処
 
            茹でられて 枝豆 供さる 十三夜
 
              枝豆を 供える縁側 後の月見
 
        
        
                      平成30年9月7日
                          <23首>
             二裂尾見せ 止まる鳥影 燕かも
                      
             超近視 燕 雀か 分からぬまま
 
          肩寄せ合い 何を語るや 秋燕/秋雀 
      
                     -- ずっと残暑が厳しかった日々の後
             明治草 またお辞儀せり 秋風に
    
               そよそよと 唯 吹き抜ける 秋の風
 
           朝曇り 槿(むくげ) 一斉 華盛り
 
            そよそよと 風に靡きぬ 尾花かな
 
             さやさやと 仄か聞こゆる 秋の声
 
 
            秋黴雨(あきついり) 何時まで続くや 鬱モード
 
          しとしとと 降る長雨〔/眺め〕る 尾花かな
 
           しとしと降る 秋の長雨の 我(あ)が身かな
 
             鬱の入り 終日(ひねもす) 横臥 秋黴雨(あきついり)
 
              底知れぬ 鬱に沈みぬ 秋霖哉
 
 
           さやさやと触れ合う 篠の葉 秋の音
      
             さやさやと 衣擦れ(きぬずれ)のような 秋の音
 
             ひたひたと 忍び来る 秋冷 紅葉まだ
 
               ひたひたと 漣(さざなみ)打ちぬ 薄野かな
 
            秋雨の 流る水音 肌寒き
 
               見上げれば 雨滴光るる 秋雨の
 
             尾花垂(た)れ 葉葉 垂れ垂(しだ)るる 長雨〔ながめ/眺め〕哉  
 
           
             紅水引き 少し離れて 白水引き
 
            紅水引き 白にも 滴る 秋の長雨
 
             水引きや 紅白扱き交ぜ 一趣 あり
 
              紅白に 金水引きも 秋の宴
 
                       --突然 秋雀が窓から飛び込むを見て
          素っ頓狂な 雀飛び込む 我(あ)が庵
 
 
 
 
                       平成30年9月10日
                             <14首>
             ぽとり ぽとり 葉伝い滴る真珠の 秋
 
              秋草に光る真珠や 白露や
 
               紋黄蝶 舞い止まり来 黄小花に
 
             紋黄蝶 金水引きの 秋の野辺
 
              仄明かり 草木無声の 秋の野辺
 
 
           秋の長雨 止みて 日和の兆しかな
 
            からり晴れ ほんに 移ろい易き 秋の空
 
             天高く 青く輝く 眩しくも
 
 
          我(あ)に吹きぬ 野分の勢の 肌寒く
 
           野分立つ 草薙ぎ立てる勢や 寒!
 
            薄野や 吹き渡るる風 銀漣(さざなみ)
  
  
          肌寒むの 秋の夜長や 愁思あり
 
            こくり こくり 秋の夜長に 船漕ぎぬ
 
 
 
                      平成30年9月11日
                            <12首>
           秋草を 盛り花するや 夢枕
 
            藪蘭の 薄紫の 花穂立ちぬ
 
         彼方此方(あちこち)に 垂 垂立ちぬ 花藪蘭
 
          白花藪蘭 君知るや 薄紫(はくし)の彼(か) 
 
           
            青色の 朝顔愈々 秋の情
 
             珠簾(たますだれ) 此処にも一輪 秋色が
 
           見渡せば 物侘しき哉 秋の夕
 
 
         我(あ)が庵(いお)の 秋の七種 数えれば
 
                 紅白の水引き
                 大犬蓼(おおいぬたで)
                 アメリカ栴檀草(せんだんぐさ)
                 実紫
                 虎杖(いたどり)
                 背高泡立ち草
                 金水引き
 
         夕日差す 窓辺に秋色 深まれり
 
          雲流る 雀帰りぬ 秋の夕辺
 
           行雲や 雀飛び行き 尾花揺れ
 
         我(あ)が庵 背高き秋草 茫茫の
 
 
         秋野原 踏み分けいれば くっつき虫
 
 
 
 
                         平成30年9月12日
                                <14首>
            白花嫁菜 薄と二人 路の縁
 
              姫木槿(むくげ) 蕾見つけり 明日の楽しみ
   
             万寿菊(まんじゅぎく)* 菊に魁 秋飾る
                          -*マリゴールドの和名
 
                       --何に驚いたのか 野原で啄ばみおりぬ
                            雀の群が急に 飛び立つを見て
             一斉に飛び立つ 雀 秋の野辺
 
              八重の薔薇 一輪残りぬ 秋涼に
 
            遠見には 雪積もりたるが如 花虎杖(いたどり)
 
               唐柿(とうがき)*の実 二つばかり 残りおり 
                          -*無花果(いちじく)別称     
 
             先日は 唐柿実の 盛りなりしが
 
              若芽萌え 実落ちぬ後の 唐柿の樹
 
 
          枯れ紫陽花 秋風に爽やか 庭の一隅
 
              〔風〕吹き渡る 狗尾草(えのころぐさ)野 寒からずや
 
            まあ 此処に 仙人草が 秋楽し
 
           仙人草 此処に邂逅 秋日影
 
          崖に群れる 仙人草や 秋の屏風絵
 
            花薄 仙人草や 興を添え
 
 
 
                       平成30年9月13日
                             <10首>
           くっちき虫 主は誰(た)ぞ なんと 金水引き
 
           金水引きの実 連なりぬ 黄花下
 
            くっつき虫 ミニ小円錐の お洒落な風姿
 
             くっつき虫 尖がり帽子 誰(た)に似合う
 
            くっつき虫 負飛蝗(おんぶばった)の雄雌に
 
             くっつき虫 庭に返しぬ また来秋
 
              珠簾(たますだれ) 清冷な花冠 秋の情
 
             晩夏に見ぬ 珠簾 咲きぬ 時は秋
 
             大嵐 過ぎて 穏やかな 秋日和
 
              物侘し 秋の独り居 また 楽し
 
 
           
                           平成30年9月14日
                                <5日>
           験の証拠(げんのしょうこ) 小花彼方此方 時忘れ?
 
             花の時期 確か 初夏から 験の証拠
 
           時知らず 源平小菊 猶 花盛り
 
           秋涼し 白槿(むくげ) 独り 花頭垂れ
 
              忍び寄る 秋気令涼 胡蝶舞う
 
    
 
                        平成30年9月15日
                              <6首>
          背高泡立草* 八岐大蛇(やまたのおろち)の如 花芽擡げ
                        -*漢字一語扱い
    
                         --昨秋(こぞ)の秋 下茎の枯れ葉
                              取り除きしを想い出して
            お端折り(はしょり)され 背高泡立ち草 すっきりと
 
           痒っ! 夏からの小虫の反撃 安からず
  
            枯れ草刈れば 秋庭青青 猛々し
 
 
             仲秋の名月 見えぬも またの小夜
 
               濃藍の空 月待ち顔の 尾花かな
     
 
 
                            平成30年9月16年               
                                  <13首>
             紫苑(しおん) 咲き始む 庭 風渡る
 
             珠簾(すだれ)の行列 楽し 秋の苑(その)
 
               頭でっかちな 鶏頭(けいとう)花 重たそう
 
 
           隣合わせ 百日草 千日草の 秋の苑
 
           ぱぁっ~と咲きいたり 黄花コスモス ぱぁ ぱぁ と
 
            オレンジ色 映えぬ秋空 橙花コスモス
 
             一輪が すっくと伸びおり 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)
 
   
         刈られても 刈られても 猶 生う 秋草
 
           仙人草 数年振り なり 水路際
 
             夕化粧の傍 藪蘭独り ひっそりと
            
          
          団栗の殻斗 点点 水玉模様
 
          団栗を 手に転がせば 秋の音
 
           団栗を 拾いて戯(そぼ)る 夕べ哉
 
 
 
 
                        平成30年9月17日
                              <20首>
         
         すってんころり 浮かれ戯れ 秋日和
 
           秋麗ら 胡蝶や舞いぬ 春麗ら と
  
         風に戦ぐ 尾花の群れの 静けさよ
 
          高く 低く 枝垂れて 美し 白萩の枝
 
           風に戦ぐ 尾花の群の 静けさよ
 
            若木の タグ アーモンドとあり 来年如何
 
           菫草 秋葉ばかりが 賑やかに
 
           近づけば 可憐な小花 早乙女花(さおとめばな)*
                   ー*またの名は 屁糞葛(へくそかずら) 匂い臭し 
                  
             いつの間に 白萩の咲く 苑となりぬ
 
             撓(たわわ)なる 柿の実 仄か色付きぬ
 
              ぽっかりと 開きて 毬栗 実を見せぬ
 
                栗坊主 丸々 艶々 美味しそう
 
             漸うに 〔中秋の〕名月拝みぬ 十六夜
 
              名月を 半月と見たり 白萩は如何
 
               御所水引き 白に薄紅 艶やかな
 
           虎杖(いたどり)は 彼方(あちら)は雌花 此方雄花
 
            
           秋路歩く 烏二羽 また邂逅
 
               昨年(こぞ)の秋 烏二羽見ぬ 同じ路
 
             生垣覆う 藪枯らし はや消えぬ
 
              藪枯らし 藪枯らす勢い 今何処
 
            夕化粧 未だ窄みたまま 時や未だ
 
             二・三輪 溝底から 珠簾(たますだれ)
 
           波揚羽 花から花へ 名残りの舞
 
             実椿も 色付きおりぬ 秋の業
 
           白蝶花(はくちょうか) 枝垂れ 揺れ揺れ 秋の風
 
 
 
                             平成30年9月19日
                                 <14首>
            秋牡丹* 一輪戦ぎぬ 秋風に
                     -* 別名 秋明菊
     
              秋天は 広く 広く  澄み渡りぬ
 
               秋の空 かくばかりにか 広き哉
              
            曼珠沙華(まんじゅしゃげ) 思わぬ処に 二・三輪
 
            ベゴニア や 紅の濃淡 花未だ 疎
 
               犬蓼(いぬたで)も 淡紅の花穂 打ち揃え
 
             お端折りの 葉牡丹の 不思議なオブジェ
 
              サルヴィアや ますます赤く 焔となりぬ
 
               石畳み 其処此処に野草 秋思あり
 
               柳の如 垂(しだ)れ揺れるる 蓬の薹穂(とうほ) 
  
 
                夕月や くっきり浮かびぬ 淡藍の空
 
                      --夕方前に白い月を見
             歩るけども 月〔背〕負いぬ 夕散歩
 
              曼珠沙華 ぽっかり浮かびぬ 花壇最中(もなか)
 
             一群の 白花ネリネ 花やかな
 
              
 
                         平成30年9月20日
                               <10首>
 
               柿の実や 仄か熟せり 秋色に
 
              柿色の鶏頭(けいとう) 美し 秋の空
 
                慌し 鳥影飛び去る また嵐?
 
           物の怪(け)あり 辺り沈まる 秋怪し
 
            昨日 青 今日 小雨 秋の空
 
             薄墨の 実(げ)に鬱陶しき 秋の雨
 
            秋の超 今日は 何処裸で 雨宿り
 
                 昨日まで ひらひら舞いおり 秋蝶ら
 
              白萩や 濡れ枝垂れぬ 長雨かな
 
 
 
                          平成30年9月21日
                                <8首>
              鬱の日に 思わぬ天与〔サプライズ〕 吉日哉
 
              ひょっとして 南瓜雌花 待ちに待つ
 
                誰(た)が媒介 南瓜雌花雄花
 
              もう一輪 まだ 蕾なれど 雄花かも
 
             尾花摺り 茫茫の野 分け入れば 
 
              尾花摺(す)り 衣(きぬ)擦り合うも 他生の縁?
 
              尾花摺り 露に濡れけり 我(わ)が衣(ころも)
 
               秋の長雨 雀(じゃく)潜みぬ 寂寂(じゃくじゃく)なり
 
 
                  
                            平成30年9月22日
                                 <13首>
            天高し 野分の音ども 強まるる
 
           絶え間なく 草木揺らする 野分かな
 
              涼冷気 運びぬ嵐こそ 野分
 
 
            我(あ)が行楽 行き慣れし 散歩路
 
             立ち籠める 秋の匂いや 何処(いずこ)から
 
               甘酸っぱき 清涼 秋思わる
 
           石垣や 秋の蒲公英(たんぽぽ) 時知らず
 
            綿毛やは 今飛び立つぬ 風情あり
 
            カラ コロロ 落葉転びぬ 秋景色
 
             露草の 色鮮やかな 野辺を行き
 
           青空の 零るる雫 露草や
 
            嫁菜の花 白く 小さく 草蔭に
 
 
 
 
                             平成30年9月23日
                                  <16首> 
            嫁菜の花 白く小さく 草蔭に
 
              秋草の園 舞い飛び交いぬ 蜆蝶
 
           群れをなし 飛び行く雀 秋の何方へ
 
            朝青空 昼曇天 夕驟雨
 
              クルクルと 移ろい易き 秋の空
 
 
             飛び出したる影 飛蝗(ばった) 螽斯(きりぎりす)か
 
              止まりし方 見遣れば 青緑の翅
 
            彼(か)は 螽斯 と見しは 理(ことわり)なり
 
             後ろ肢 掴めば バッタン バッタン お辞儀をし*
                            -* 幼き日の遊び
               
             機織り虫(はたおりむし)* ぎぃちょん ぎっちょん 機織りぬ
                             -*螽斯の別称
 
              木芙蓉 散りても 猶 麗しの風情かな
 
                青紫蘇(あおしそ)の花穂 白小花や連なりて
 
            薄紫 何処か憂色の 紫(しおn)の花
 
             蘖(ひこばえ)見ゆ 切れ葉野葡萄の 切り株に
 
              ミニトマト 実結ばぬ間に 枯れる秋
 
            ハラハラリ 音も無く散りぬ 花白萩
 
 
         
                           平成30年9月24日
                                 <10首>
            ばっくりと 開くは何時なり 木通(あけび)の実
      
             くっつき虫 何処に 運ばれて行くのやら
 
             
            夕空も 高く拡がるる 秋なれば
 
             八尺超え 伸びに伸びたり 瀬高泡立ち草 
 
              背高泡立ち草 何れも ほんに 背高の秋
 
            ポツリ ポツ 秋の長雨 未だ続く
 
             同色〔保護色〕の 亀虫 見つけり 緑葉上
 
              見つけたり 緑葉と同色の 亀虫を
  
           口開きぬ 毬栗(いがぐり) 独り 梢にあり
 
                   後は皆 熟し落ちたり 猪(しし)知るや
 
 
         
                           平成30年9月25日
                                <14首>
              何時も咲く 曼珠沙華見ぬ秋 侘し
 
              歪(いびつ)なる 浅緑の実 何の樹ぞ    
 
               きっと 花梨(かりん) 見覚えのあり あの風姿
 
                芳香を 放つ 実花梨 秋の香
 
                遠見より 眺むばかり 匂い知らずの我(あ)
 
 
            仲秋の名月 麗し 二十五日
                    ー* 九月十五日は 闇夜 月影なき
 
            名月 耿耿 尾花 お芋 団子 供えねど
 
              仲秋の名月 やはり 名月なり
 
      
              あっ 彼(あれ)は 窓外に見ゆ 夾竹桃(きょうちくとう)
 
           目を奪う 夾竹桃の 紅残り花
 
             咲残りおり 夾竹桃の紅花 鮮やかな
 
 
           験の証拠(げんのkしょうこ) また 出会いたり 庭の一遇
 
              験の証拠 我(あ)此処にあり と 小さき花
 
                  験の証拠 私 此処よと 笑む 小花
 
              爽やかに 拡がるる淡藍 秋の空
 
 
 
 
                           平成30年9月26日
                                <10首>
 
           今見れば 仄か黄ばみぬ 〔背高泡立ち草の〕 蕾穂かな
 
            一日一輪 南瓜黄花 咲き継ぎおり
 
             大犬蓼(おおいぬたで) 淡紅の花穂 揺れ揺れぬ
 
               大犬蓼 花穂〔一段と〕 大きくなりぬ 長雨に
 
 
          彼(か)の野分 よくぞ耐えたり 庭の千草
 
           紅白の水引き 夫々に咲きぬ
 
            紅水引き 延ばせど届かぬ 白〔銀〕水引き
 
          実紫(みむらさき) 実 紫となりぬ 漸うに
 
            紫の艶やかな珠飾り 実紫
 
             艶やかに 庭飾りぬ 実紫 
 
 
 
                          平成30年9月27日
                                <7首>
             おぉ 寒! 大急ぎ 衣替えの今朝
 
                今朝 冷気が寒気となりぬ まだ秋真中
 
                今朝もまた 黄花の大輪 南瓜の
  
                 魅せらるる 南瓜の黄花の 大輪に
 
         
             漸うに 明りぬ秋の 昼下がり
 
               今晴れぬ と見しや曇りぬ 秋の空
 
            つまらなき哉 秋 晴れの日 少なくば
 
 
 
                          平成30年9月28日
                                <16首>
               天高し 今日(けふ)一日(ひとひ)の 碧色かな
 
                        -- 明日 台風との予報 
                秋高し 一日だけの 秋日和
           
               
              元気かな 愈 小さくなりぬ 秋の蝶
 
               秋茜 水平飛行 秋空を
  
                 今秋の 名残の蜻蛉や 名残惜し
 
              秋日傘 日蔭に入らば 杖となり
 
             角虎の尾(かくとらのお) 見る度 淡紫 増し
 
      
              紫苑(しおん) 一茎 此処にも ひっそり咲きおり
 
             秋明菊(しゅうめいぎく) 今を盛りと咲きおりぬ
 
 
               春紫苑(はるしおん) 路肩に咲きぬ 秋の今
     
             時 処 選ばぬようね 春紫苑
 
               野に生う 虎杖(いたどり) 雌花(しか)ばかり
 
 
             ミントの花 花壇や 淡紫の 縁飾り
 
              虎杖の茎 木(ぼく)となりて 花木立ち
 
                御所水引 淡紅映え 秋麗し
 
               花酢漿草(はなかたばみ) 濃桃〔色〕の花茎 葉突き抜け
 
            あらまほし 角虎の尾の 白色の花穂
 
 
 
 
                             平成30年9月29日
                                   <10首>
             鬱モード そぼ降る小雨 尾花濡れ
 
              霞籠む 秋の山々 朝烏
   
              秋嵐 我(あ)身構えぬ 落ち着かぬ
 
                騒めきぬ 庭の千草や 嵐前
 
             背高泡立ち草 戦ぎぬ 明日や嵐
 
           
             撫子(なでしこ)や 咲き初む 花鉢 夕日影
 
              ピンクとは 撫子の英名 色に非ず
 
              撫子は 洋種も 和種も 秋の華
 
              色 色々 撫子の花色 百色あり
 
             
            花梨(かりん)の実 独りぶらり 秋の夕
 
 
 
                       平成30年9月29日
                             <30首>
                         -- 9月29日の夜
            月や何処 響くは 犬の遠吠えばかり
 
             風音 繁し 嵐や来ぬとぞ 恐れるる
 
           物騒な  流る水音 嵐前
 
                     --9月30日の朝
             大嵐 告げるや 呼ぶや 明け烏
 
            もう小雨 にも 水流 迸(ほとばし)る
 
              大嵐 来るか 来ぬかで 一日(ひとひ)過ぎ
 
             幸運かな 我(あ)が山里や 〔台風の〕進路外れ
        
 
 
                        平成30年10月1日
                               <10首>
         用水路 無為に流る 潺(せせらぎ)の音
     
           静かに 静かに 秋水流れ行きぬ
 
            秋水や 大嵐の名残り 清涼
 
          夕烏 声 風に乗り 秋静か
 
 
          此方にも 仙人草 復活 喝采  
 
            花酢漿草(はなかたばみ)窄みぬ 亦 明日(あした)
 
           パンパス〔/銀葦(しろがねよし)* 二茎 植木鉢
                        ー* 映像で見るは 南米大陸の
                            広大な草原、パンパスの
 
          高砂百合 もう莢となりぬ 太く 細く
 
           何(な)の花ぞ 近づきみれば 韮(にら)の青実
 
             韮の花 何時の間にやら 青き実に
 
          木通(あけび)の実 一つ向こうに もう一つ
 
           木通の実 淡紅紫と浅緑
 
               未だ割れぬ 木通の実や 未だ未熟もの
 
           
         白萩と尾花 向かい合う 朝日影
 
          蜆蝶 花芙蓉に 舞い 舞いぬ
 
           明けぬれば 白き半月 朧 朧(おぼろ おぼろ)
 
            夏蔦や 秋色に染(そ)み 初(そ)みぬ 白壁を
 
          薔薇に絡む 花梨(かりん)の実の 魔訶不思議
 
 
 
                           平成30年10月2日
                                <14首>
            日日花 未だ我(あ)等 此処にと ひっそり咲き
 
          秋天や ほんに 広々 果てしなき
 
               尾花や何処 芙蓉も何処 整地され
 
                今は唯 新築の槌音 秋の空 
 
           金木犀(きんもくせい) 仄か匂いぬ 散歩路
 
          山葡萄 紅葉初ぬ 実まだ青く
 
           さらさらと 流る用水路 莢の百合
 
            ゴーヤーの花 黄 黄 黄のまま 実まだらし
 
             辛子菜(からしな)や 菜の花のご親類?と 通り過ぎ
 
 
 
                                  平成30年10月3日
                                   <17首>
           猛スピード 黒揚羽蝶 大空へ
 
            紫狗尾草(えのころぐさ) 花穂紫に 映える野辺
 
            無花果(いちじく)の実の 実(にの)り見ぬ 秋寂し
 
             柿の実や 青からオレンジ 枝枝に
 
          クローバー 三つ葉 三つ葉の 秋野かな
 
             生垣に混ざりぬ 何(な)の実 椿の実
 
               薔薇ピンク 一輪 戦ぎぬ 秋風に
 
             薔薇花弁 散るる 躑躅(つつじ)や 忘れ花
 
              盗人萩(ぬすびとはぎ) 花 花 悄然 嵐の所為?
 
             銀しろがね)に 揺れるる 穂波の 尾花かな
 
               木通(あけび) 日蔭に生る実 未だ青し
 
             大虎杖(おおいたどり) 弓形の花形 おどろしき
 
                 大虎杖 花 虎杖と同じ 秋
 
               白蝶草 しなやかに揺れ 枝垂れの舞い
 
              白蝶草 弓形花茎等(ら) 揺ら 揺ら 揺ら 日陰 疎(まばら)
 
                  翅ひらひら 黒揚羽蝶の 蜜吸う風姿
 
             
               
 
                                平成30年10月4日
                                  <11首)
            南瓜や 黄花一輪 名残り花
 
             南瓜 今際となりぬ 実結ばぬ内に
 
                有難う 南瓜黄花を 朝毎に
 
            
            真っ直ぐ立つ 尾花の勢い 何処から
 
              実慣れたる 尾花頭(こうべ)垂れ 戦ぎおり
 
              
            秋寒し 昼下がりの散歩 諦めぬ
 
             秋寒(あきさむ)や 小菊もそのまま 蕾のまま
 
              秋寒や 枯れ紫陽花も 縮みおり
 
 
            秋水に触れ 驚かれぬる 冷たさよ
 
             小雨降る 秋の長雨(/ながめ/眺め)や 疎ましき
 
 
           白萩 零れ 尾花勢う 我(あ)が小苑
 
 
 
  し
                             平成30年10月5日
                                   <26首>
            夜半の嵐 掠(かす)りて過ぎぬ朝 秋の空
 
              紫苦菜(むらさきにがな) 果てたの 今秋 姿見ぬ
 
            紫苦菜 待ち侘びおりしが 生うは 大犬蓼*(おおいぬたで)
                                -*漢字一語扱い
 
              大犬蓼 生う風姿や 紫苦菜似
 
           秋の麒麟草(きりんそう) 出会えぬ庭こそ 寂しけれ
 
            秋高し 尾花揺れ揺れ げに 秋の景
 
              金水引き くっつき虫の 実茎となりぬ
 
 
            甘酸っぱき 匂い遣(おこ)しぬ 金木犀〔きんもくせい)
 
             ベゴニア花 初夏から初秋は 疎らなり
 
               今咲きぬ 百日紅(さるすべり)の 蘖(ひこばえ)が
 
 
             ポロッ ポロォー 微か聞こゆる 山鳩何方(いずち) 
 
            悠然と 秋空飛ぶ鳥影 彼(あ)や 山鳩?
 
  
             露草の花 もう終わりて 実抱きぬ
 
              路傍の芽生え 春には何が 咲くかしら
 
               枯れ葉舞う と見しや 胡蝶の独り舞
 
             羽畳み 暫し憩いぬ 蝶  我もまた
 
              
             甘酸っぱき 匂い遣しぬ 金木犀
 
             ベゴニア花 初夏から初秋 疎ら哉
 
            今咲きぬ 百日紅(ひゃくじつこう)や 蘖(ひこばえ)の
 
             
           ポロッ ポロオ~ 仄か聞ゆ 山鳩 何方(いずち)
 
            悠然と旋回せり 鳥影 彼(か)や 山鳩や
 
 
             秋晴れと微風(そよかぜ)に 誘われ少逍遙
 
            秋日和 源平小菊 咲きぬ 坂
 
              秋日傘 微風と共 逍遙 
 
               今年は不作? 山葡萄の実や 冴えぬ           
 
             マリーゴールド 暫しの賑わい 菊見まで
 
            
               茎頂に 莢一つ哉 百合独り                    
 
              秋に生う 姫女苑 時忘れの賑
 
              ミニ薔薇や 独り残りぬ 秋日影
 
             虎杖(いたどり)も 〔衝く羽根〕空木も 生いおり         
                             いつもの野辺
 
               あっと言う間 砂防壁や 秋草盛り
 
  
                                                  
             
                            平成30年10月6日
                                     8首
    
            我(あ)が庵(いほ)まで 匂い 遣しぬ 金木犀
 
             ご近所の 金木犀や 弥(いよ) 黄金色           
  
               一雨毎 一寒(ひとさむ)哉 秋深み
 
 
               尾花 揺れ 南天揺れぬ 障子の影絵
 
                テーブルに転がる 団栗 日脚伸ぶ
 
              朝凪や 戦がぬ尾花 露光る
 
                  銀(しろがね)に 黄金(こがね)に映えぬ 尾花哉
 
 
              右へ 且つ 左へ戦ぐ 尾花あり
 
        
                
                             
                              平成元年10月7日
                                    <24首>                                                                                                
             
             梅の樹や 梅の樹苔ばかり 生き生きと
 
              海桐(とべら)の実 未だ青く 肩寄せ合い
 
                辛夷(こぶし)の実 乾涸びるるも 猶 朱残し  
 
                   辛夷の実 おどろおどろし 悍ましき             
                       ―ー実が熟し、朱色の種子がぬるぬるの白糸に
                          垂れ下がり、揺れる風姿は、まこと悍まし 
       
             漸うに 口開きたる/笑いかけたる 木通(あけび)の実
 
                青き実も淡紫に 熟れぬ 木通哉             
 
 
              秋高し 鳥影飛び去る 彼(あ)は誰ぞ       
 
            吠えもせず 伏して動かぬ 犬や陶器
          
    
             辿りつきぬ 我(あ)が秘密の花園  コスモス咲きぬ。                 
 
          憂えおり 黄コスモスばかり 今の秋
               
             白と淡紅 コスモス 優しお風情あり
 
            秋桜見ぬば 秋来ぬと 思わざり
                                      
              コスモスに出会いて 漸う 秋身近か
 
            
            桜木や 薄ら色付きぬ 愈(いよ)よ 秋
  
             
            石段を ゆるゆる下りのぬ 秋眺めつ
 
               身体(からだ)中 じんじん鳴りぬ 散歩疲れ
 
                微風(そよかぜ)に 安らぎおりぬ 秋散歩
 
 
            団栗に松毬 コロコロ 秋 拾いぬ
 
              入日映え 黄金色の 秋の雲