団野 薫
 団野 薫
  
 
 
 
                                 平成30年 10月8日
                                         <4首>
           もくもくと 噴煙出づるが如 鱗雲
 
              天空 一帯 鱗雲 無限哉
 
                     夕凪や 一切静止 尾花さえ
 
             柿食(は)めば 渋柿渋し 夕日差し  
 
 
           
 
                                平成30年10月9日
                                      <10首>
 
             色取り取り 撫子揃いぬ 秋花壇
                         --この種の撫子は、’西洋撫子’
 
             日向かいぬ 花酢漿草(はなかたばみ)や
                      笑み 笑み 笑み
 
              秋の実 見ぬ 山里こそや 侘しけれ
 
               万緑の谷間 朱夏の 勢い果てぬ
 
 
                フェンスに這う 早乙女花や 秋好み?
                         ―-早乙女花は、普通、朱夏から晩夏に咲く花、
                             季語は、夏。
 
              早乙女花 今 花盛り 今 秋最中
 
   
           蜻蛉(とんぼ) 飛び来 我(あ)が庵(いほ)へ 帰りつきぬ我(あ)へ
 
 
            大丈夫? 疲れ果てぬ我(あ)に 気遣う如
 
             蜻蛉 優し 夏よりは 小振りなれど
 
             
 
                         平成30年 10月10日
                               <5首>
 
              肌寒き 白萩や 黄葉 初みぬ
 
                明くるる朝 尾花 光るる 淡き月
 
                  黄花とや 見紛いぬ 黄葉 秋の夕
 
              犬鬼灯 小白花咲きぬ 秋のお目見得
 
               夕暮るる 秋の山里 侘しけれ
 
 
 
                              平成30年10月11日
                                   <8首>
                大嵐 亦亦 日本列島 縦断せり
                          ーー 今年初秋の台風より25号まで
                                    次々上陸
    
               大嵐 名残の小雨 日中(ひなか)振りぬ
 
               鬱陶し 秋晴れの空や 恋しき哉
 
                薄墨の空 槿(むくげ)も 萎れるる 侘しさよ
 
 
              薄墨の空 円錐の花穂 突きぬ 
 
              背高泡立草(せいたかあわだちそう) 黄花 光立つ
                                    
               白萩散り 黄金匂う 背高泡立草*
                               *漢字一語扱い
 
                 背高泡立草 花穂 花穂 黄黄の火炎の如
 
 
 
                            平成30年10月 12日
                                  <23首>
             木枯らしや 野分や 今朝の冷たきは
 
             尾花 尾花 時や盛りの 尾花哉
 
              見渡せば 此方(こちら)も尾花 彼方(あちら)も尾花
 
 
              また1つ 木通(あけび)の実や 笑いり
 
                都合 三つ それぞれ笑いぬ 木通の実
 
          
            青きの実 朱色一つ 此処にも秋
 
 
             蓖麻子(ひまし) 三つ 唐胡麻の実 棘棘の
 
              唐胡麻や蒴果 弾けぬ 秋の山辺
 
 
            枝に撓(たわ)わなるも 未だ蜜柑 実の青き
 
             一つ 二つ ・・・ 柿の実八つ 山のさと
 
              柿熟せば 鄙の郷愁 誘いぬ
 
               雛の風情 一本ばかりの 柿の樹で
      
              彼方に見よる 柿の実こそ 鄙の景
 
 
             葛(くず)の葉葉 薄緑色に 夕日影
 
                葛の花 未だ咲かぬとは 今秋の怪
 
             
               鬼田平子(おにたびらこ) 蒲公英(たんぽぽ)に代わりて
                                    秋見るや
                            ーーこの辺り 春は蒲公英の咲く処
 
              次々と鬼田平子 石垣沿い
 
               小菊未だ 蕾のまま 時や待つらむ
 
 
                 岩苦菜 こんな処に お久し振り
 
                  いつの間にか 我(あ)が庵(いほ)より消えおりし
 
              岩苦菜 スプーン形の若葉 びっしりと
 
             岩苦菜 黄花待つらむ 来春まで
                          ーー 花は、春から初夏 秋には咲かぬが
                                     自然の習いらし
 
              そっと咲きぬ白花嫁菜よめな 山の辺に
 
 
 
                                平成30年10月 13日
                                       <5首>
 
            鬱陶しい 無為に過ごせり 秋の鬱
 
                         ーー 背高泡立ち草の黄花穂を眺めつつ
                 高曇り 黄花も萎れ 鬱陶し気
 
           玻璃の外 灯懐かし 夜長哉
 
            鬱陶しき 夜長に優りぬ 鬱陶しさ
 
              尾花揺れ 三日月 煌々 庭静寂
 
 
 
                               平成30年 10月 14日
                                       <25首>
             桜ん坊似の実 艶やか 秋日和
 
               蜜柑 色付ぬ 三日前 青きが
 
               アディアンタム 溝壁に生生(せいせい) 秋の精(せい)
 
              塀越しや 濃紫のセージ 姿見せ
 
 
           花酢漿草(はなかたばみ) 今こそ我が世 彼方此方で
 
             オクラ 立派 見たことの無き 見事な実
 
               秋に浮かれ オクラの実 育ち過ぎ?
 
             瑠璃虎の尾 此処にも咲きぬ 新天地?
 
 
           紋黄蝶 何処や舞い去る 秋の空
 
               白花芙蓉 真d咲き継ぎぬ 散歩路
 
           飛び立ちぬ 落ち実拾い*の 雀哉
                         * ’落穂拾い’を捩って
 
              驚いたか? 雀飛び立つ 秋の野辺
         
 
 
        豹紋蝶(ひょうもんちょう) 何方(いずち)から 舞い来ぬ 
                                    ジニア(百日草)の上
                                             
           羽 黄橙色 黒紋散らしぬ 豹紋蝶
 
               花 鮮橙 羽 黄橙 似た者同志 惹かれ合う?
 
                   豹紋蝶 暫し見惚れて 疲れ取れ*
                                    * 散歩疲れ
              豹紋蝶 暫しの憩い 眺む我(あ)に
 
                  ジニアから 優雅に羽搏きぬ 豹紋蝶
 
 
          赤飯(あかまんま) 群れ 乱れ咲きぬ 野趣の情
 
            こんなにも咲きぬ 赤飯 初邂逅
 
             この多さ 赤飯(あかまま)の飯事(ままごと) 幾度
 
 
           紫に揺るる 尾花や 風寒し。
 
                一重のジニア(百日草)も また愛らし気 小さき秋
 
 
 
                               平成30年 100月15日
                                       <5首>
        
                            ーー 背高泡立ち草の黄花穂 咲くを
                                      眺めつつ
              華麗な風姿 すっかり 秋の風物詩
 
             尾花と背高泡立ち草 秋 今や闌(たけなわ)
 
 
                熟し柿 一つ残りぬ 梢哉
 
                 吊るし柿 吊され 熟しぬ時 待つらむ
 
               花水木 彼(あ)や 紅葉や 枯れ葉かや
 
    
 
                           平成30年10月 16日
                                    <20首>
              石蕗(つわぶき)や 冬待てぬか 黄花 咲きぬ 
 
                何どかしょんぼり 秋咲きぬ 石蕗は
 
              はらはらと 桜紅葉やはらはらと
 
 
               やっと花芽 遅咲きの 山椒哉
 
                 花山椒 枯れ枝に 一つ 芽吹きあり
 
     
             花虎の尾 花二つ三つ 実穂の先
 
           白花たんぽぽ ロゼット〔根生葉〕美味しそ 秋のサラダ
 
               まあ 愛らし 小菊咲き初む 一・二輪
 
               蒲公英(たんぽぽ)似 大地縛り*の黄花 辺り辺り
                                 *漢字一語扱い
 
            大地縛り 咲くや坂路 日傘 杖
 
             春匂う 大地縛りの咲く 秋日和
   
            
            躑躅(つつじ)絞り 向こうにそっと咲きぬ 忘れ花
 
                   大待宵草 独り窄みおり 日向の丘
 
             目め奪いぬ 朱赤の葉 浅緑中
 
             また 伐り株の新しきは 人の所為(せい)
                               -- 或いは 自然の定め
              
                虫食いや 次々と伐らるる 樹々 哀れ
 
 
             吾木香(われもこう) 見たは 何時何処 思い出せぬ
 
              露草や 心成しか 心許な心し気
                 
                  もう しょぼくれ 秋草露草如何
 
         
             紅 白 薄紅 ベゴニアの 花 花 咲き揃いぬ
 
              
 
                           平成30年 10月17日
                                    <11首>
               今日は 今日は 花酢漿草(はなかたばみ)と
 
                 露光る 夏蔦 終(つい)の涙かや
 
                   蕾散見 寒椿の蕾らし
 
   
              秋の山辺 白百合二輪 二人静(ふたりしずか)
 
               轟音の無くば 此処谷間(たにま) 小鳥鳴く
 
                   仙人草 亦出会いぬ 今秋楽し
               
                山際に咲きぬ 嫁菜や 淡紫(うすむらさき)
 
 
                 蔓茱萸の 幼なが懸命 蔓延ばし
 
                   蔓茱萸や 次 会う日には 立派にあらむ
                      
 
                淡紅色 近づけば まあっ 萩の花
 
 
              谷間は 何処も同じ 枇杷花盛り
 
              潺や 高く且低く 秋の調べ
 
               木芙蓉(もくふよう) 挙りて枯実の 賑わい哉
 
 
 
                                    平成30年10月 18日
                                            <10首)  
 
                花穂垂(しだ)れ 菊花の如 背高泡立ち草*
                                     *漢字一語扱い
 
                 源平小菊 白から紅へ 秋の情
 
                  花 葉 茎 皆 枯れ褐色 紅水引き
  
                        朝日影映えぬ 水引き 枯れ姿
 
                 尾花なき 野辺や 侘しの 野分吹き
 
                   見るべきもの 無き 秋野や 弥(いよ)侘し
 
              芒(すすき)刈る 我(あ)が衣手に 夕日影
 
                西日差す 床〔の間〕に一輪 吾木香(われもこう)
 
                 虫集く 秋野歩めば 痛(つう)と痒(よう)
 
             秋空に 吸い込まれ行く 紋白蝶
 
              
 
                               平成30年10月 19日
                                      <10首>
 
 
            花酢漿草(はなかたばみ) 盛は名昼 実(げ)に アフリカ産
 
              辺り辺り 紅葉初みぬ 山辺哉
 
               蒲公英(たんぽぽ)へ上がり来ぬ 蟻 秋の野辺
 
            胡蝶知るや 花たんぽぽを 秋の野辺
   
              海桐の木(とびらのき) 浅緑の実 丸く艶
 
            
            この根生葉 シャスタ―デイジイ 春待つらむ
 
            姫椿 花芽揃いぬ 時や未だ           
 
              見つけたり 野薊ロゼット 三つ 五つ
 
               パープル・サージ べゴニアと共 秋花壇
 
                風無きに 枝揺れ 見れば 雀一羽
 
 
 
                               平成30年10月20日 
                                     <12首>
 
           黄花の揺れぬ 簇あり 秋の崖*
                              *砂防壁
 
           向日葵揺れ 唯 暗褐色の 痩果の玉盃
 
            枯れ木に柿の実 唯 垂(た)れ下がりぬ  
 
             黄葉 二つ 実と見紛いぬ 風姿あり
 
           紫虎の尾 遅れてぽつねん 溝の縁
 
            刈萱(かるかや)や 花穂出しおりぬ 薄野に
 
           姫女苑 未だ咲き続きぬ 命長し
 
             夕日陰 影伝いの 秋逍遙
 
               赤飯(あかまんま) 誰(た)の赤飯(せきはん)に 夕日影
 
 
            クローバー見ぬ 秋野や ほんに 物寂し
 
             クローバー見ぬ 此処は 葉 葉 葉 七重八重      
 
              天高し 行楽気分や 庵(いお)におり
 
 
 
 
                              平成30年10月 12日
                                      <11首>
              ハート形 枯れ薄囲みぬ 源平小菊
 
               姫向日葵 おどろおどろし 枯れ姿
 
                赤松下 寄り合いぬ 嫁菜の花
 
                   仙人草 亦出会いぬ 今秋最期
 
 
              柿伐り株 蘖(ひこばえ)生いおり 我(あ) の背丈
   
                 感嘆せり 生命力の逞しさ
 
                  去年(こぞ)の秋 柿伐採され 落胆 噫
 
 
              早 出でぬ 白き月影 夕べ秋
 
                夕化粧 花開き初む 夕月夜
 
                 夕月夜 漫ろ歩きや 小寒哉
              
                    無花果(いちじく)の 黄葉見たり 夕月夜    
              
 
 
                                平成30年10月 22日
                                      <9首>
 
                 海桐(とべら)の実 黒紫立ちぬ 路の秋
 
 
                   姫女苑 群れ 外れ 独り居り
 
                 春紫苑 俯き加減に 秋眺み
 
                  姫女苑 春紫苑* 近くも離れ 絶妙に
                             *漢字一語扱い
                 
  
                 石蕗(つわぶき)や 独りひょっこり 花茎 魅せ  
               
                   石蕗は 花茎真っ直ぐ 蕾(らい)散らし
 
                 蒲公英(たんぽぽ) 独り 綿毛のまま 草叢中
 
                 滑り台 枯れ葉滑りぬ 秋日和
 
                   秋蝶 心許なき/ふらふらふらと 独り舞い
 
 
 
                             平成30年10月 23日
                                     <8首>       
                   朝日迎え 独り残りぬ 夕化粧
 
                    夕化粧 朝(あした)に残れば 朝化粧?
 
                紅 淡紅 コスモス咲ぬ 朝(あさ)楽し
 
                 白に紅絞りも コスモスの朝
 
           
                高曇り 小鳥飛ぶ影 秋の山里
 
                 気怠るきに 見上げれば 秋の高曇り
 
                  高曇り 我が物顔の 明け烏
 
                   風に乗り 金水引きの実 蜘蛛の巣に
 
                    輝きぬ 女郎蜘蛛の巣 朝日影
 
 
 
                             平成30年10月 24日
                                   <9首>
           
            或る日の朝 小鳥飛び来ぬ 我(あ)庵
 
             小鳥来ぬ 梅の樹 独り 寛ぎおり
 
            身繕い 枝移り 気ままな 小鳥
   
              背鶯色 サイズも同じ 君や誰(た)ぞ
 
               ひょっとして 鶯かも  今は秋
 
            鶯は 梅見月こそと 知りおりし
 
 
 
            入日差す 窓辺」に独り 秋の蝶
 
             入日差す 尾花 金色(こんじき)に映え 揺れぬ
 
              陽落ちれば 草木暗転 秋深し
 
 
 
                              平成30年10月25日
                                    <9首>
 
              始むるや 紅葉 黄葉 山里に
 
                尾花戦ぐ 小さき秋のメロディー
 
              独り舞い 楽しむ胡蝶 秋の午下(ごか)
 
               少しばかり 萩 黄葉 愁意あり
 
 
               秋の小夜 唯長々し 憂(う)いなる哉
 
                芒もまた 長々しく揺るる 夜長哉
 
                駘蕩(たいとう) 揺蕩う 秋の夜長
 
                           ーー予報では、24日夜に名月がと、
                                見たのは今夜25日
               一夜遅れ 名月見たり 秋の夜 惜し
           
               濃藍の空 星影すら 一つと鳴く
 
 
 
  
                            平成30年10月 26日
                                    <11首>
 
               胡蝶の様に 枯れ葉舞い落つ 路の午下(ごか)
 
                   ひらひらり 枯れ葉落葉 微風(そよかせ)に
 
              もの寂し 紅葉(こうよう)みぬ間に 落葉とは
 
              しょぼき哉 今秋の 桜紅葉は
 
 
               叢に生う 剣状葉 水仙の
  
                 時は 秋 水仙の嫩葉 冬備えは
 
                 通る毎 水仙嫩葉 繁り行き
 
 
             夕化粧 眠りの時や 昼最中
 
              玉椿 実や鈴生りに 小鳥 何処(いずこ)
 
               小鳥見ぬ 実房 未だ 青ければ
 
       
             一天 碧空 柿の実 三つ 二つ
 
 
   
                           平成30年10月 27日
                                 <16日>
            花垣や 小蜂 せっせと 通い来ぬ
 
               名を知らぬ 小さな秋草 小蜂知るや
 
           絶え絶えに 吹き渡る風 秋郊に
 
             碧空や 尾花光りぬ 微風(そよかぜ)に
 
             揺れ動く 障子の影絵や 生き物の如
 
 
            草草枯れ 弥(いよ)よ 秋郊 哀れあり
 
             枯れ草や 光るる風姿 愁思あり
 
                 陽射し強し 秋郊や 尾花金色(こんじき)に
 
              秋郊や 佇めば 吹く風 哀調あり
 
 
            夕日影 石段登りぬ 秋の夕
 
             さやさやと 篠の葉奏でる 秋のメロディー
 
  
             爽爽(さやさや)と 野辺吹き渡るる 秋の風
 
              爽爽(さわさわ)や 騒騒(ざわざわ)となりぬ 秋郊哉
 
             蜜柑 撓(たわ)わ 枝撓みぬ 暮れの秋
 
 
               秋日傘 草の実 一つ くっつき虫
 
               小寒む気な 花酢漿草(はなかたばみ)や 秋風に
 
 
 
 
                              平成30年 10月28日
                                      <8首>
              大きな枯れ葉 何処から飛んで 来たのかしら
 
               桜樹の 影絵や揺るる 秋の坂
 
               嫁菜 蔦 掻い潜り 淡紫を
 
                隙間沿い 蔦葉海蘭(つたばうんらん) 石垣の
 
               秋木立 拾うや 木漏れ日の中
 
              連れ合いぬ 団栗二つ 樫の梢
 
                嫁菜生いぬ 小さく健気に 車道際
 
                  秋高し また少逍遙飛び に出 疲れ果て
 
 
 
 
                             平成30年10月 29日
                                  <11首>
            この処 鶯 飛び来(こ)ぬ 如何に在らむ
 
                   鶯の来ぬ庭 寂し 暮れの秋
 
             目の前を 滑空する小鳥 誰(た)ぞ
 
               雀の 鶯にも非ず 何(あ(な)の小鳥
 
              彼(あ)の茶褐色 尉鶲(じょうびたき) 久し振り
 
 
              千種枯れ 哀れ 秋野や 侘びぬぬる
 
                するすると 蟻 這い上がるる 百合枯莢
 
                       
                       -- 我(あ)が庭へ鶯の突然の再飛来あり
             山里へ 鶯独り 大冒険!
 
               やんちゃなこの感あり 彼(か)の鶯
 
    
               夕日映え 美麗なりけり 晩秋の庭
 
                  夕日影 金銀に揺れる 尾花哉
 
 
 
                            平成30年10月 30日
                                  <15首>
 
             木通(あけび)の実 萎れ 萎れぬ 晩秋
 
              忘れ花 躑躅(つつじ)や二輪 秋の暮れ
 
                薄野や 大波小波 金銀の
 
                  陽射し強し 秋郊 尾花や金銀に
 
 
                             ーー 久し振り、”下界”迄遠出して
             柿咥え 烏飛び来ぬ 松の梢
 
               柿食みぬ 烏 得意気 美味しそう
 
                カァ~ カァ 見守る 烏や もう一羽
 
          番(つがい)? それとも 相棒/バディ? 烏の 二羽連(つれ)は
 
         柿木 何処に ほら 彼方に と君 指しぬ
 
 
            邂逅せり 切れ葉野葡萄 こんな処で
 
            思いがけぬ 出会いや 切れ葉野葡萄 秋の悦
 
            白 青 瑠璃 切れ葉野葡萄の 実りの色
 
              我(あ)が山里 哀れ 切れ葉野葡萄 伐られおり
        
        
            月や見ぬ 晩秋の夜や 未だ長し
 
 
 
                            平成30年10月 31日
                                   <8首>
 
             少しずつ 白萩 黄葉 もう晩秋
 
                玉響(たまゆら)の静止も 尾花 少し揺れ
 
                 静止画のような 尾花や 凪の夕
 
               青き実も 黒紫も見つけり ひさかきの秋
                              
                       春には 白萌黄の小花 首傾げ
 
                  いつの間にか ひさかき生いおり 我(あ)が庭に
 
          
               ひさかきを山桃とぞ 見 落胆せり
 
                出会いなく 山桃 久しく幻の樹
 
 
 
                       平成30年10月11月 1日
                                  <11首>
              寒っ 今朝やもう 初冬 11℃
 
               萩 まだ青葉 此処や未だ 秋半ば
 
                薔薇の実 一つ 晩秋の空
 
            唯閑か 風音さえも 秋深し
 
              臭木(くさぎ)の実 星形五裂の萼 秋の興
 
            臭木 悪臭放つらし 名の通り
 
             近づけど 匂わぬ 臭木 老いの幸せ
 
        
              青から紅 椿の実や グラデーション
 
            星影の 望めぬ晩秋 閑と静
 
              暗夜 闇夜 晩秋の庭 寂寂と
 
               閑か哉 尾花光るる 星月夜
 
 
 
                                平成30年11月 2日
                                      <15首>
               葛(くず) 黄葉 花見ぬ間に 今秋に怪
 
              木蔭下 嫁菜 健気に 淡紫を
 
                ハート形(なり)の 葉 匂い菫であらまほし
 
                蕾見ゆ 小菊野路菊 分からぬまま
 
                 蕾 蕾 咲かむばかりの 小菊かな
 
                   辺り辺り 叢 咲きおりぬ 白花嫁菜
 
                 紫狗尾草 独り生き生き 他や枯れ草
 
              風強し 落葉の吹き寄せ 石垣下
 
                蒲公英(たんぽぽ)黄花 春や見つけり 今 晩秋
         
                   紫陽花 淡色 紅葉や 枯れ葉や
 
              晩秋 鈴懸の幹 弥(いよ)斑
 
               ガシャッ 躓きぬ プラタナスの 大きな枯れ葉
 
              花酢漿草(はなかたばみ) 挙りて楽し気 花垣下
 
            亦 蒲公英 茎横倒るるも 黄花鮮やか
 
                花鉢の小菊咲きおり 五種五色
 
                 ペテュニアは 秋の花壇に そっと咲き
 
 
                 吹くからに 弥よ冷たき 宜(むべ) 木枯らし
 
                我(あれ)が庭 野草天国 我(あ)が丈越え
 
                 枯れつつも 猶 猛々し 野草哉
 
 
                  勇んだり 草抜き 草刈り 我(あ)が庭の
 
                   ギブアップ 草抜き 草取り 一平方メートル
 
                   草抜き 草刈り 胸痛 腰痛 
 
                     済ませたし 我(あ)が庭掃除 初冬までに
 
 
 
                              平成30年11月 4日                            
                                     <9首>
                 眺むれど 眺むれど 秋雲見ぬ
 
                  鱗雲 鰯雲 羊雲* や見ぬ 秋の怪しかり
                              *漢字一語扱い
       
                   眩しき哉 入日差しぬ 晩秋の庭
 
                 枯色 白化  弥よ 侘しき 秋の暮れ
 
 
                   ここ暫く 月影見ぬ 萩の庭
 
                  叢雲も 月も見るぬ 秋こそ 侘しけれ
 
                   日中(ひなか) 晴天 夜中濃藍の闇
 
               月影なく 佇む 尾花や 哀れあり
 
                夢幻かな 尾花佇む 明月の夜
 
 
 
                              平成30年11月 5日
                                   <11首>
               萩 黄葉 黄花 咲き乱るるが如
 
                咲き継ぎぬ コスモス一輪 また 一輪
                   
             小さきも 咲きぬ ひっそり 秋桜
 
                      ーー 桜の落葉を踏み分け進めば、   
               桜落葉 踏めば桜の香ぞ 覚えり                  
 
              カシャ カシャ カシャ 落葉のメロディー 秋の調べ 
 
 
              吹き寄せられ 枯れ葉の行方 何方(いずかた)へ
 
               蒲公英(たんぽぽ)や 綿毛ふんわり 秋の野辺
 
                大地縛り 黄花と綿毛 蒲公英と
 
               狗尾草 小柄の叢生い 何故小柄
 
                 秋始め 刈り取られし叢の 次世代や
 
 
 
                         平成30年11月 6日
                                 <9首>
             哀れ茱萸(ぐみ) 枝枝(ええ)払われ 木(ぼく)となりぬ
 
 
               ふと見れば 銀木犀(ぎんもくせい) 何処か 侘し気
 
                 金木犀 終わりぬ後(のち)に 咲きぬ故?
 
                             ーーさりながら                     
                 見たことなき 金銀木犀 揃い咲き    
    
               姫椿 花芽 淡紅 から 白絞り
 
 
                  背高泡立ち草 枯れ幽霊立ち 夕闇深し      
       
                夕闇朧ろ 枯れ尾花や 戦ぎ合い
   
                 今宵も亦 月や出でぬ 秋の末
 
                    一月(ひとつき)も 月見ぬ月日 となるのかや
 
 
 
                             平成30年 11月7日
                                    <11首>
           見つけたり ベコニアの花盛り 時 晩秋
 
            淡紅の 花 花 花鉢 ベゴニアの
  
              ベゴニアの 花鉢彼方此方(あちこち) 秋の末
 
 
            緑色  霞立つ如 アスパラガス  
       
                 極細の 松葉形(まつばなり)葉葉 アスパラガス
 
               翡翠色 実光る アスパラ〔ガス〕 葉霞に
 
            自然のまま アスパラガスや 傍若無人
 
 
              石蕗(つわぶき)や 秋咲く不思議 如何にあらむ
 
             石蕗は 冬に咲く花 季語は冬
 
               石蕗や 日影に 頭花 鮮黄花
 
                 行く秋を 惜しむか黄花 石蕗の
 
 
 
                             平成30年 11月8日
                                     <13首>  
              萩黄葉 目に鮮やかな 黄の錦(にしき)
 
                邂逅せり 八重の躑躅(つつじ) 晩秋
 
                 行く秋を 独り花やか 花酢漿草
 
               さんざめく 鉢の小菊等 未雲
 
               一・二輪 チロリアン・ランプ 灯を
 
                 チロリアン・ランプ 見目麗しき 灯哉  
 
             
              繁縷(はこべら)は 腰折れつつも 立ち上がり
 
                侘し気な繁縷の晩秋 末 如何
 
               鳳仙花(ほうせんか) 八重咲き 花やか 晩秋
 
              吃驚(びっくり)せり 触れぬに弾けり 鳳仙花の実
 
   
                萩黄葉 紅葉ほどに 色付きぬ
 
                 桜紅葉(さくらもみじ)そよ風に ひらり 一葉
 
                  晩秋 何処(いずこ)も同じ 枯色の世
 
                まあ 四つ葉 辺り辺り 紫クローバー
 
               一見で四つ葉 目に飛び込みぬ 驚
 
                 拾い足り 路上の銀杏の 一葉
 
 
 
                               平成30年11月9日
                                    <10首>
 
            枯れ草や 来週 また 会いましょう
 
             枯れ草に 別れの挨拶 au revoir 〔オー ルボワールるぼわーる
 
               黄昏(たそが)るる 三輪 弥よ 晩秋の情
 
 
           黄落(こうらく)しおり 小紫 庭へ出でば
 
            眺むれば 我(あ)が庭 弥よ 枯れ野かな
 
 
             黄茶色 サルトリイバラの葉 哀れ枯れ
 
              サルトリイバラ 黄茶色 弥よ 落葉
 
                晩夏まで あんなに繁りしが 哀れ
 
             枯れ茎や 痩せ蔓延ばしぬ 遣る瀬なく
           
 
                お湿りあり 庭の枯草も 生き生きと
 
 
                 
                             平成30年 11月10日                                      
                                   <15首>
              寒ぶっ コスモスも 震るる 小寒哉
 
                撫子は 咲くか咲かぬか 思案顔
 
 
                秋日傘 遮るや 有り難し 木枯らしを
 
                 山藤も 黄葉すれば 別の景
 
                   木枯らしや 枯れ葉 戯(じゃ)れつつ 転(まろ)びつつ
                      
               佇みぬ 枯れ木 ぽつねん 芝生庭
 
                紅葉や 渋色(しぶいろ) 侘色(わびいろ) 冴えぬ色
 
 
              フェンス下 野菊とみしは 蓬若葉
 
               ベンチあり 暫し憩いぬ 晩秋(あき)逍遙   
 
                 桜紅葉 浅緑 黄橙 暗朱 茶*グラデーション
                          *漢字一語扱い         
 
               落ち葉掃き 落ち葉焚きも 昔の慣い
 
                 拾いたり 色美しき 桜紅葉葉
 
                  姫椿 白と絞りの満樹飾*
                             ⋆満艦飾を捩って
 
               まあ 大きな 初生りの蜜柑 夕日映え
 
                  初生りは 一番大きいのよと 君は言い
 
 
 
                               平成30年11月11日
                                    <14首>
                数えれば 十日と三日の 闇夜也
 
                 もう一度と 見上げれば 三日月 煌々
 
                   今一度 仰げば 唯 濃藍の闇
 
                     月やあらむ 三日月 何方(いずこ) また闇夜とは
 
 
               我(あ)が庭や 枯れ草 茫々 虫も見ぬ
 
                佇みぬ 我(あ)が身 老いの身 枯れ庭に
 
                 秋草絶え 我(あ)身独りぞ 残りおり 
                           ーー如何せむ
 
               さりならば 枯れ草抜きを のろのろと
 
                 草抜けば 庭 一寸 開けたり
 
                   庭掃い さっぱりせりとは 未だ云い難
 
                 色付くも 暗赤色 実南天 
 
                      南天の 実疎ら付き 如何なりや       
 
         
 
                                平成30年11月12日
                                     <6首>
                    深緑の葉葉に 白小花 犬鬼灯
 
           犬鬼灯 我(あ)が庭の何処かに 何時も生い
 
              今年は此処ね 出会う楽しさ 弥よ 増しぬ
    
                  晩夏から 小さき笑顔 犬鬼灯
 
            堪えることぞ無き 白小花 今初冬
       
                 五つ 三つ 淺色の実も 濃緑に
 
 
 
                         平成30年 11月13日
                                <14首>
 
           くるくるくる 落ちるに落ちぬ 梢の枯れ葉
 
             光射す 薄墨の雲 初冬哉
 
               黄葉も 寂(じゃく)に沈みぬ 初冬の夕
 
 
             春夏秋冬 問わず 繁るや強し 御多福南天*
                                   *漢字一語扱い
              御多福南天 花一輪見ぬ 不思議
 
               育種され 花も実も持たぬ 御多福南天                                
                          ーー 江戸時代に育種された低木
 
                   花咲かぬ 御多福南天 山吹越え    
 
            御多福南天 実の一つだに なきぞ悲しき
 
 
              すうっと立ちぬ 新枝 リラの樹 今初冬
  
                ライラック 芽吹く枝あり 今初冬
          
 
                 冬めきぬ 風邪の音もぞ 寒々し
         
              小紫 実や残るるも 葉黄落
 
                 黄葉や 我(あ)が庵(いおり)の華となりぬ
 
                風寒し 庭の枯れ草 愈(いよ)よ 枯れ
 
 
 
                           平成30年11月14日                      
                               <13首>
 
           大犬蓼 枯れ枯れるるも 〔花穂〕紅仄か
 
            背高泡立草* 枯れ行きぬも 残り咲きぬ
                      *漢字一語扱い
              昼下がり 日脚短し 冬めきぬ
 
 
               輝きも 鈍色哉 冬となりり
 
             葉蘭や何処 見れば 御多福南天* 隣り
                                *漢字一語扱い
  
                      ーー葉蘭 陽当たりの良き場所選びて
             失敗に終わりぬ 葉蘭の移し植え
                            
                今知りぬ 葉蘭の好み 半日蔭
 
 
              叢雲に 隠れつ出でぬ 冬月 美〔び/うまし〕
 
              三日後に 三日月出ぬ 朧なれど
 
               三日ぶり 出づ月 またも 雲隠れ
 
              月隠れぬ 雲隠れ? 雲見ぬに
 
               儚し 哀し 三日月 亦 隠るるとは
 
                 亦消えぬ 冬月隠し 誰(た)の所為
 
 
               
                           平成30年11月15日
                                 <10首>
            小寒にも 庭の枯れ草 頑固哉
 
              抜こうにも抜けぬ 枯れ草 老い見には
 
                 あぁしんど〔い〕 我(あ)が庭掃除 鳥渡でも
 
               うわっ 凄い くっつき虫や 百くっつきぬ 
 
                 取れども 未だ残りおりぬ 衣手に
 
                  くっつき虫 今度(このたび) 細長の枯莢*
                                      ⋆栴檀草の
              
             月やあらむ 仰ぎ探しぬ 夜寒哉
 
              今宵出(いで)り 月薄っすらと 雲居の間
 
               薄絹の ヴェール被りぬ 月佳人
 
 
 
                              平成30年11月16日
                                   <11首>
                 冷えこみぬ 紅葉如何 想い遣りぬ
 
              紅葉 寒暖の差の明日 美しと
 
                艶艶 朱朱 大きな柿 一つ 
 
                  もう一つ 枝の柿の実 朝日映え
 
              朝日映え 歪(いびつ)な風姿 花梨(かりん)の実
 
               見え隠れ 柚子の実 彼処此処(あちこち) 葉隠れに
 
 
              ぷかりぷかり 柚子 湯舟や 行ったり来たり 
 
               あちら こちら 柚子湯舟に 揺られ揺れ
 
 
               木瓜(ぼけ)の枯木 残花一輪 乾果 二つ
 
                笑顔あり 姫椿や 緑中
 
 
 
                          平成30年 11月17日
                                <19首>
 
           初冬空 蜜柑光りぬ ぽつねんと
 
            小春日和 冬日去りぬ 光穏やか
 
              木(こ)洩れるる 光穏やか 初冬の日
 
           南天の実 独り 赤赤 木下蔭
 
            踏まれ踏まれぬ 枯れ葉や 心(うら)哀し
 
            石英片 初冬日の石垣 スターダスト
 
               寒風や戦ぐ 彼(か)や何(な)ぞ 黄小菊の群れ
 
             遠見の紅葉 仄(ほ)の暗き色 寂びし気な
 
          花散りぬ 萼と実 今 衝く羽根に
                     ーー衝く羽根空木(つくばねうつぎ)の名にし負う
 
          衝く羽根空木 衝く羽根〔萼と実〕)集い 小手毬の如く
 
 
 
                                                    平成30年11月18日
                                  <9首>
                     紅葉 次 次 続きぬ 萩 銀杏(いちょう)
 
            夏蔦や 紅葉(もみじ)に色付く 五色蔦 
                     
 
              釣瓶落とし 寒さも 愈よ 山里は
 
              釣瓶落とし さ〔っ〕きまで 姫椿 紅く
 
           見渡せば 初冬の寒さ 深まれり
 
           佇みぬ 枯れ尾花や 哀れ 初冬(ふゆ)の暮れ
 
          枯れ尾花 幽霊の如 暮れ〔/暗れ〕闇
 
 
           桃花色 ネリネや咲きぬ 冬日影
 
             ネリネ花茎 すらり ほ〔っ〕そりの 秋姿
 
 
 
                           平成30年11月19日
                                <10首>
            薄曇り 光りや仄か 黄葉光り
 
             薄荷 葉落ち 枯茎 枯実の 棒となりぬ
 
 
             スペアミント 浅緑の縮み葉 密に生い
 
                 緑薄荷 スペアミントの和名 実(げ)に
 
             雲薄く 尾花 はためく 風寒く
 
               薄き雲 淡碧の空 陽や仄か
 
 
              朱夏過ぎて 淡紅紫小花* スペアミント
                             *漢字一語扱い
 
             唇形(しんけい)小花 なにをや歌う 車かの三輪
 
              秋風や ミント枯れるる 尾花揺るる
 
    
 
                           平成30年11月20日
                                  <10首>
              おぉ 寒(さむ)っ これで 初冬の寒さとは!
 
               寒っ 今未だ初冬 末や思わるる
 
   
               外へ出でば 四方(よも)蓬生(よもぎう) 我(あ)が庭は
 
                  強よがりぬ 茫茫の庭にも 風趣ありと
 
               蓬枯れ 虎杖(いたどり)枯れ 紫陽花枯れ
 
 
                 そこはかとなく 漂い来ぬ 薄荷の香(か)
 
                   何処からか 匂い来(く) 香(かおり) 緑薄荷
 
                 緑薄荷 緑溢るる 石垣下
 
                星影 月影 ミントや緑影
 
                 緑薄荷 置きぬ白露 星の雫
 
 
 
 
                         平成30年11月21日
                                <15首>
           紅葉狩り 桜紅葉に 草紅葉
 
           蔦紅葉 紅葉前に枯蔦 哀れ
 
             冬咲きや シクラメンの花 小さきが
 
             反り返りぬ 花びら真紅 篝火(かがりび)の如
                           ーーシクラメンの和称は篝火草
 
 
            花水木 朱珠映える庭 初冬
 
              ひょっこり 南天の朱実 塀越しに
 
                柿の朱実 今やもう 秋の想い出
 
            紅葉狩り やっと 出会いぬ 唯 一樹
 
 
              小春日和 姫椿 紅(紅)に 映え
 
               実や撓む 崖に佒 柿の枯れ枝
 
                渋柿らし 啄まれずに 残りおり
 
 
               姫椿 咲く間も散りぬ ひらり一弁(ひとほら) 
 
                姫椿 一弁 池の面(も) 鯉 泳ぎ来
 
 
               フェンスに這う 山葡萄や 枯れ残り
 
                くねくねくね 大蛇の如 山葡萄
 
 
 
 
                         平成30年11月22日
                                <6首>
                 鬱陶し ベッドに横臥 一日中
 
                     動くにも動けぬ 鬱や 如何にせむ
 
                   鬱陶し 気も身も 萎えぬ 初冬哉
 
                 鬱 一日ひとひ(ひとひ) 長くも短くも哉
 
                   昼下がり 暫しの晴れ間 鬱晴らし
 
                     鬱晴らす 暫しの晴れ間 枯れ庭にも
 
 
 
                             平成30年11月23日
                                   <13日>
           紅葉 黄葉 燃え出づれば 今朝寒し
 
            一夜寒(ひとよさむ) 紅葉黄葉や あらまほし
             紅葉 段々 緑 黄 紅の綾錦
 
               
                バスストップ ベンチに 紅葉一葉 座りおり
 
               ベンチの紅葉 独り のんびり 日向ぼっこり
 
               
              あらっ ユニーク ドア・ストップに 大きな菊芋
 
               柿 柿 柿 様々な種類 色形
 
               窓外に見たり柿の撓わ なる
 
         
               風も無く ほんに優しき 冬日和より
 
               ゆう~るりと 冬日差す坂 老いの身は
 
                 夏蔦の紅葉棚びく 白き壁
 
 
                 早 夕闇 釣瓶落としぬ間もなくほど
            
 
         
 
                       平成30年11月23日
                               <23首>
              蔦紅葉 地の上にも這いぬ 映えぬ 
 
                源平小菊 花枯れるるも 未だ咲くも  
 
             裏山も 色付きにけり 漸うに
 
              処処(ところどころ)紅葉映えぬ 向こう山
 
               山牛蒡 黒紫の実房 だらり下げ
 
                山牛蒡 狗尾草も枯れ 哀れ寂し
 
 
                緑の梢 少し透かせば 紅葉映え
 
                 紅葉の彩り 赤 朱 橙の段々織り
 
 
                  驚きぬ 桜紅葉や アローマの香
 
                 桜紅葉 葉拾い匂えば 香(か)仄かに
 
                  落葉路 歩めば アロマ/芳香 匂い立ち 
 
                 此は何ぞ 我(あ)が幻覚と訝しく
 
                    覚えぬなり 桜落葉に 芳香ありとは
 
                       アロマは 薬草ばかり 落葉にもとは
  
                  甘酸っぱき 香漂う 桜落葉
 
                 香(こう)もう聞けぬ と諦めおりし 我(あれ) 
 
 
            紅葉映え 烏の鳴き声 冬愈よ
 
            べゴニアの 花の風姿 何に喩えむ
 
             花やかに 花やぐベゴニア 花盛り
 
 
          裏山の 紅葉 黄葉 夕日映え
 
             渋柿や 実残るるまま 冬迎え〔るらし〕
 
            春夏秋越え 葉牡丹 冬のオブジェ 
 
              水淀み 溝の落ち紅葉 夕日映え
 
 
                   
                            平成30年11月25日
                                   <12首>
            ゆ〔っ〕くり歩みぬ 盛りや織りなす 紅葉木立ち
 
              紅葉木立ち 色付きて 今ぞ 盛なり
 
               一周間 いえ 二・三日 此の曄(かがやき)
 
              紅葉木立ち 紅葉色にや 暈し染め
 
                橙 淡朱 緋 赤 扱き混ぜ紅葉 綾錦
 
                 朧影 遠見の紅葉 も おかしけれ
 
              今や盛り 路上の紅葉(もみじ)葉 まだ僅か
 
               紅葉一葉 路上に 鮮やかに
 
                桜枯木 紅葉残らず 散りにけり
 
             桜紅葉 拾い集める 一葉 七葉
 
              匂うれど 匂わぬ桜の 落ち紅葉
   
                あの日 あの路 あ〔ん〕なに匂いしは 何故
                             ーー11月23日の散歩時にこと
 
 
 
                             平成30年11月26日
                                     <5首>        
              我(あ)が庭の寂(さび)るる景色 はや 冬日ムード
 
                 行く秋を 見送りぬるる 白萩黄葉
 
               寒き哉 庭の千草や 枯れに枯れ
 
                枯れ尾花 も見えぬ濃藍の闇 唯 寒し
 
                  鬱のまま 暮れぬる 初冬 唯 虚し
 
 
 
                              平成30年11月27日
                                      <19首>
                落葉光る 野菊や光る 冬日和
 
                 落葉踏み 踏み 踏み締め 登る坂
 
              花酢漿草(はなかたばみ) 姫椿下蔭 そ〔っ〕と笑顔
 
              はらはらら 微風(そよかぜ)優し 桜紅葉
 
               寒風おだやか 戦ぎぬ 野芥子の小黄花かな
 
 
             伐り取られぬ ピラカンサ見ぬ冬 いと侘し
 
              赤 黄 橙 ピラカンサの実 冬の華やぎ
 
               殺風景 ピラカンサ消えれば 悉く
 
       
             柿の実撓わ 熟れるるや 誰(た)待つらむ
 
              鳥も人も 来ぬらし 唯 冬や来ぬ
 
             黄金色 鴨脚樹(いちょう)の大樹 燃え立ちぬ
 
             玉椿 実房 丸々 艶やかに
 
              実房 小鳥知らずや 知らせむ如何に
 
 
            匂い仄か 野菊や 咲き乱るる 坂
 
             吹き寄せらるる 枯れ葉千種の 路肩哉
 
               枯れつつも 冬芽備(もよ)いや 韮強し
 
                黄花穂 背高泡立草* 独り咲き残りおり
                           *漢字一語扱い
 
            芋酢漿草 春夏と違(たが)わぬ笑顔かな
 
              萩黄葉 枯れ色愈よ 冬めきぬ
 
 
          
                              平成30年11月28日         
                                     <6首>
              穏やかな 長閑やかな 空 小春日和
 
               風柔らか 寒さ遠退く 小春びより
 
                転寝す 枯れ尾花や 小春日和
 
 
                 暖風も 寒風も 雀忙し〔餌探し〕
 
              枝移り 雀の影あり 葉の向こう
 
                 しっとりと濡れて 初冬の風情あり
 
                  冬芽生いぬ 蓬 薄 兎菊
 
             木瓜(ぼけ)の実下がり おりぬ 残り花隣り
 
               木守り柿(きもりかき)なき 枯れ木や 寂しき哉
    
             乾涸びぬ 木通(あけび)の実 自然のままに
 
 
 
                            平成30年11月29日
                                    <10首>
                紅葉散りぬ 転(まろ)びつ 転びつ 散り去りぬ
 
               棚引きぬ 条雲 二条(ふたすじ) 冬麗ら
 
                絹雲や ふんわり ふわり 冬麗ら
 
 
               夜露置き 冬草それぞれ 青青と
 
                青葱も 青青 冬や楽しむらし
 
                 蜜柑一つ 梢に 木守り蜜柑か
 
                  蜜柑一つ 路上に 木守りの亦の姿か
 
               金柑や 未だ青き実 葉下蔭
 
               
              萎れたる コスモス哀れ 冬の朝
 
               萎れおり 夜露の雫 秋桜
 
 
                                             平成30年11月 30日
                                <10首>
           縮かみて 集いぬ紅葉 溝の底
 
            枯れ寂(さび)ぬ 小苑(こその) 藪蘭 青青と
 
             枯れ寂ぬ 雀飛び来ぬ 一羽来ぬ
 
                 綿毛飛び行く 愈よ 枯れ穂の 枯れ芒
 
             芒枯れぬ 花穂枯れ 葉枯れ 秋然(さ)らば
 
              鴨脚樹(いちょう)葉葉 さんざめく庭 冬日和
 
                 散らばりぬ 鴨の脚跡 鴨脚樹下
 
          ”いちょう” の漢字  どちらを選ばぬ 銀杏 鴨脚樹
 
 
            入日差す 南天の実 朱(あか)く 朱く
 
 
          
                          平成30年12月 1日
                                   <24日>
            枯れぬとも 猶 小紫な 小紫*
                              ⋆草花、紫式部の近縁種
           まぁ 綺麗 金水引きの 草紅葉
 
             紅葉の 金水引きや またの華やぎ
 
           見上げれば玉椿の実房 黒々と
 
             啄まれねば 玉椿 暫しの安楽
 
            雪柳も 枯れ紅葉 冬の綾
 
 
             枯れ葉色 紅葉(もみじ)一葉 溝の底
 
             常緑樹 濃き暗き庭 通り過ぎ
 
               枯れ葉散リ 枯れ木枯れ枝 シルエット
 
            谷間の 冬や 沈沈(しんしん) せせらぎの音
 
 
              日向かいて 野菊ら 小さき雛向日葵(ひなひまわり)*
                                 *姫向日葵に非ず
 
            プラタナス バッサリ伐採 鈴懸の実は?
          
              枯れ桜木 残るる紅葉(こうよう) 色優し
 
               生垣の 姫椿や 独り咲き
 
                    良く見れば 此処にも 笑顔の姫椿  
 
                        葉蔭にも もう一輪 蕾もあり
 
         
                           
              それにしても 銀杏(ぎんなん)見ぬとは 哀しけれ
 
                もう 疾(と)っくに 銀杏落下や 遅かりし
 
             銀杏の一つだになき 寂しけれ
       
                          ーー昨秋 路上の銀杏を想い出し
                 ぐにゃ 銀杏踏み付け たじろぎぬ
 
                臭(くさ)っ たじろぎぬ あの銀杏の臭気
 
                  されど今 来週の再会を願いぬ 銀杏と
 
 
               すいすい*も 生垣の傍の 日溜まりに
                     *紫酢漿草の俗称
 
                 虎杖(いたどり)も 未だ咲き残りおり 石垣に
 
 
                    
                                 平成30年12月2日  
                                        <17首>
                 葉蔭になりぬ 花梨の実 師走なり
 
 
                  冬日和 日差し長閑やか 潺(せせらぎ)も
 
                    野菊 笑み 小蜂ら せっせ 密集め
 
                     冬麗ら 人影の無く 鳥影も
 
                       松の樹も 影落として 閑 冬麗ら
 
                               ーー沢山の雀が桜の枝枝に
                                        止まりおるを見て
                     桜木や もう梢に蕾 雀のお宿
 
                       紅葉木立ち 今を盛りと 燃えに燃え
 
                        黄 黄橙 橙朱 朱赤*に燃える 紅葉麗し
                                  *漢字全て一語扱い
 
                        紅葉枯れ葉 積りて路傍 ふわふわに
 
                     紅葉の吹き寄せ 唯眺むるも 豪奢〔豪奢)の一つ
 
                   南天の実房 赤赤 葉もや 紅葉
 
                     常磐樹の 枝枝 透しぬ 紅葉あり
 
                  傘形のオブジェの 紅葉樹 まだ盛り
 
                   松と紅葉 松や 紅葉の引き立て役
 
 
                   辺り辺り 姫椿花盛りの 師走
 
                     大輪の菊 葉や色付きぬ 花色に
                               ーー 菊の色と同系統の紅紫に
 
                 枯れ木に柿 一 二 三(ひ ふ み) も〔う〕一つ 乾涸びて
 
 
 
                                  平成30年 12月3日
                                          <6首>
                         我(あ)が庭も 草紅葉や 辺り辺り
 
                       鬱鬱と 沈みぬ 冬庭 我(あれ)も亦
 
                        草紅葉 遠くなりけり 初冬なれば
 
                          冬日和 一日変われば 薄曇り
 
                       微動だにせむ 枯れ草 僅か揺れ
 
                     闇に灯ぶ 山里 冬寒寒し
 
 
 
                                  平成30年12月4日
                                         <10首>
                     朝晴天 喜べど 昼下がりや 曇り空
     
                      冬空に 一喜一憂の 我(あれ) 哀れ
 
                       諦めり 今日(けふ)の逍遙 冬曇り
 
 
                     草紅葉 枯れるる庭に 紅一点                      
              
                     庭の鴨脚樹 唯今 黄葉 萩枯れ葉
 
                        紅に燃えぬ 紅葉ぞ 今や 枯黄橙色
 
                          紅葉枯れ 南天の実ばかり 照り映えり
 
 
                      非榊(ひさかき)の実 まだ小さきや 青きまま
                     
                       累々と黒果 連なりぬ実や 非榊の
  
                        丸々の黒紫の実あり 秋始め
 
 
 
                                      平成30年 12月5日
                                               <13首>
              もこもこもこ 叢雲の如 尾花の綿毛
 
                山の向こう 碧空 白雲 冬麗ら
 
                眩し 困り顔 夕化粧日中
 
                    まあ嬉し 黄花夕化粧 やっと会えり
 
 
              棕櫚実生え こんな処に 坂路脇
 
               棕櫚 七本 懐かしき哉 庭の景
 
 
                 薄き皮 剥くや 蜜柑の懐かしき
 
                 皮薄き 形(なり)小さきが 嘗(かつ)ての蜜柑
 
                  袋ごと 食めば蜜柑の あの美味さ
 
                     陳皮にせむと 窓辺に吊るしぬ 皮蜜柑
                   
 
                 桜木の蘖(ひこばえ) 紅葉 こころ(うら)楽し
 
                    白色の花弁(はなびら) 哀し 落ち椿
 
                  蔦紅葉 常緑の中 這い 燃えぬ
 
 
                                                                 平成30年 12月6日
                                         <16首>
           紅葉 黄葉 落葉 冬ざるる
 
            櫨(はぜ) 色鮮やか 枯れ木立
 
             ぽつ ぽつり 雨滴 聞ゆ 傘の内
 
            傘透かせば 雨粒滴る 冬来る
 
             
               刈らるるも 生垣の姫椿 紅艶やか
 
                 皐月躑躅(さつきつつじ) 花や時忘れ 今 極月
 
 
             芽吹きあり 梢 梢に 桜樹の
 
              姫椿 花弁敷きぬ 溝底に
 
                葛(くず)黄葉 谷間覆いぬ 何処までも
 
                  葛 黄葉 暗色枯色 愈々よ 冬
 
                   輝かぬ 今季の黄葉 想わざる   
 
                蕾とや 萼とや 惑いぬ 枇杷の冬
 
                 枇杷の萼 塊り挙りて 冬忍や
 
        
              咲き継ぬ 小振りになりぬも 仙人草
 
                 十字形の白花 咲かせぬ 健気かな
 
           
              西明る間に 帰りなむ 冬の坂
 
 
 
                          平成30年 12月7日
                                  <9首>
              瑞兆(ずいちょう)や 黒猫来たる 冬の庭
 
                 と思いきや 四周四方 薄墨の景
 
                  銀色の陽 ハレーション 冬の雲
                
               雲間より 陽 覗きぬ 一瞬の輝
 
 
                    曇り霞 忽ち下がりぬ 鬱の緞帳
 
 
                 障子の影絵 すさ(荒/遊)ぶ 草木 北颪(きたおろし)
 
                  これ どうぉ と君のお薦め ルイボス・ティー
 
                   鬱払いに ならむことを 願わくば      
 
 
 
                               平成30年 12月8日
                                         <5首>
 
          ヒュゥ~ ヒュ~ 北風響き 草木揺れ
 
 
            冬麗ら 四方(よも)見渡せば 青空下
 
             空青く 輝きぬ 今日(けふ)の冬空
 
               鬱続きぬ この青空の下 何故(なにゆえ)に
 
            陽射し入る 窓辺や 心暖かき
 
            
 
                            平成30年 12月9日
                                     <10首>
             彼(あれ)は何(な)ぞ 白く光りぬ 石垣に
 
               霜や霜 霜月なればと 頷きぬ
                            ーー12月は、旧暦では、ⅰ1月、霜降り月
               
            ふわりふわり 一片(ひとひら) 二(ふた) 風花舞う
 
             石垣を被う 白きや 初雪とは 
 
               想われぬ  あの霜や 初雪とは
 
             三日前 小春日和 今日(けふ) 真冬
 
               この移ろい 合わせ難き 我(あれ)の身は
 
                ふわりふわり 降るるも青空 冬怪し
 
                   陽射しあり 辺り穏やか 昼下がり
  
                 昼下がり 庭の枯れ草 晴れ景色
 
 
 
                            平成30年 12月10日
                                     <9首>
            反り返り 五弁(いつひら)の花に 蜜柑の皮
 
              こんなにも 紅艶やかとは 姫椿
                   
               障子窓 冬日差し込む 容赦なく
 
 
              触るれば 凍るるが如 玻璃の窓
 
               寒波襲来 草縮かみ 我(あ)炬燵守 
 
      
             遠吠えや 遠く響きぬ 寒空に
 
              遠吠えや 寒空にエコー/echo 何時まで
 
                 重なりぬ 犬 犬の遠吠え 高く 低く        
      
                ウォ~ン ウォ ウォ 遠吠え 続きぬ クォ~ン クォ~ン 
 
 
 
                               平成30年 12月11日
                                         <15首>
              蔓桔梗 蔓だけ垂れぬ 寒寒し
 
               枯れ木 裸木 落葉荒ぶ 弥よ 荒寥
 
 
                 パンジー もう笑顔見せる 春まだに
        
                デイジーも 一寸笑顔 恥じらい気
 
                  デイジーよ 今咲かずとも 今は冬
 
                    シクラメン 花色とりどり プランター
 
                      シクラメン 篝火(かがりび)焚きぬ 辺り辺り
                                 
                水仙花芽(かが) 横顔みせり 伏し目勝ち
   
                   水仙の花 葉叢に 見え隠れ
 
 
              枝枝伐られ プラタナス 裸木に おぉ 寒!
 
               プラタナス 斑(まだら)模様の 幹ばかり
 
                木守り(きもり)柿 独り いえ 二(ふた) おかしゅう見ゆ
 
                           --路上で、啄みぬ山鳩に出会いて
             山鳩番(つがい) 餌探しおり それぞれに
 
              山山の 実りの秋や 終わりしか
 
 
 
                                平成30年 12月12日
                                        <14首>
            五・六輪 枯れ木の賑わい 木瓜(ぼけ)の花  
 
              南天紅葉 紅(あか)き実 隠るるほどに
 
               破れ障子 洩るる日差しや 冬日和
 
             青空見* 破れ障子にも 風情あり
                   ⋆梅見、花見を捩って
 
 
                 あっ 胡蝶 枯れ庭過(よぎ)る 黒き影
 
              寒風や 手櫛 解(ほつ)れる 乱れ髪
 
                   冬逍遥 行くか行かぬか 手櫛入れ
 
                     手櫛入れ 思案巡らす 冬逍遥
 
    
              こくり こくり 猫も居らぬに 炬燵守り
 
 
               柚子 樹に樹熟し 黄金色に輝けり
 
               一雨毎 暖かき哉 冬怪し
 
                萩 銀杏黄落せしも 黄葉 何の樹
 
                  枯れ庭や 藪蘭 青青 今更に
 
                    枯れ枝に 朱 朱 木瓜(ぼけ)や 狂い咲き
 
 
                        
                               平成30年 12月13日
                                        <11首>
             電線に 福良雀ら 並びおり
      
            薄墨の冬空 向こうや 仄か明る
 
             馬酔樹(ばすいぼく) 蕾茎(らいけい) 垂れ垂れ 暗紅の
 
                  雪柳 紅葉続きぬ 庭の華
 
 
            裏山に 紅葉の訪れ見ぬ いと侘し
 
              裏山や 枯れ木も賑わぬ 枯れ葉錦
 
              燃え盛るよ〔う〕な紅葉 山に見ぬ
 
         
              暮るるれば 鬱仕度(したく)の冬 しかたなし           
            
                枯れ庭や 藪蘭 愈よ 深緑
 
                 鬱陶しき 冬の微睡(まどろみ) 昼下がり
 
              冬草や 風に荒びぬ 枯れ草や
 
 
                             
                                 平成30年 12月14日     
                                       <15首>
 
               冬曙 東方 漸う 仄明るる
 
                冬曙 灯 消えゆく 一つ 二つ ・・・
 
                  白妙えの きぬ〔衣/絹〕棚引きぬ 空 冬曙
 
 
              隙間風 細く 冷たく 流るる 今朝
 
                細く 忍び寄る冷気や 冬の朝
 
                  誰も来ぬ 雀も 猫も 庭の冬
 
           
              北颪 愈よ 草木すっかり 枯れ果てぬ
 
                陽射し強し 北颪吹くも 陽や強し
 
 
        
 
                                平成30年 12月15日
                                      <10首>
                 碧空や 北風 白雲 吹き飛ばしぬ
 
                   碧空や 湧き立ちぬ白雲 冬弥よ 
 
                    寒風に 尾花や震え 枯野震え
 
                 炬燵から 手伸ぶ脚伸ぶ 猫背伸び
 
                     ぽかぽかの 日差し恋しき 冬寒し
 
 
                      早乙女花* 金茶の実塊 柵に垂れ
                         *屁糞葛の別称
                    早乙女花 隣り合いおり 黒紫の実房
 
                      何(な)の葛(かずら) 黒紫の実房 撓わ生り
 
                      黒紫の実 啄まれぬ間に 乾涸びぬ
 
                       小鳥何れも 知らずや 黒紫の実房
 
 
 
                                 平成30年 12月16日                     
                                         <18首>
                     寒風に 散るるとも散らす 紅葉かな
 
                   寒椿 やはり 寒いの 寒そうね
 
                   柿撓わ 未だ残りおり 夕日映え
 
                     二十八個 渋柿とも見え 夕間暮れ
 
   
               ふうわり ぽっかり 寒空(さむぞら) 絹雲が
 
                 にこにこ小菊 冬日差し柔らか
 
 
                  冬日伸ぶ 炬燵に蜜柑 枯れ尾花
 
                  月耿耿 枯れ尾花映えぬ 庭沈沈(しんしん)
 
                   月煌煌 冴え渡る 今宵 極月 
 
 
                 木守(きもり)蜜柑 金柑 色づくを 見守りおり
 
                  金柑撓わ 浅緑から黄緑まで
      
                   花やか哉 花椿 桃花色
 
                   八つ手の花 白小毬衝くように 手を開き
 
                  ガーベラ花茎 低く低く 冬仕様
 
                    緑生う 更地も今や 枯れ野かな
 
                 柿蘖(ひこばえ) 紅葉 二葉 寒空に
 
                 蘖は もう芽吹きあり 寒空に
 
                  水仙も 枯草より 緑剣 突き出し
 
 
 
                             平成30年 12月17日
                                    <13首>
 
             茫茫の枯れ草 刈れど 万両見ぬ
 
              万両や 姿を消しぬ いつの間に
 
                十両* 木下蔭に 朱き実を
                    *藪柑子(やぶこうじ)の別称
 
              藪柑子 藪より出でて 我(あ)が庭へ
 
 
               寒風の荒ぶ庭へ出で 枯れ葉拾い
 
               枯れ草下 ロゼット其処此処 緑に萌え/燃え
 
                引っ張れど 枯れ草 踏ん張り 我(あ) ギヴ・アップ
 
             見渡せば冬雲茜 夕迫りぬ
 
 
              月や何処 月見ぬ冬夜 愈よ 寒寒
 
               濃藍の 闇夜に仄か 冬の声
 
                   闇夜にや 聞こゆる仄か 冬の調べ
 
            しんしんと 迫り来 闇夜 冬の音  
 
 
 
                       平成30年 12月18日
                               <13首>
                寒風に 小鳥も我(あれ)も 沈まれり
           
              寒風に 残り紅葉* 独り華
                           *残り月(明け方猶残るる月)を捩って
 
               花壇の蔭 マリー・ゴールド 陽を呼びぬ
 
              空耳か 閑古鳥鳴く 枯れ木立
 
              空高く 飛ぶ鳥 何の鳥 冬鳥か
 
 
                       ーー突然、ピラカンサの株が伐採され                            
 
               寄り添いて 篠 ピラカンサに 何語る
 
                頑張ってネ 篠 囁くや 伐り株に
 
                少しずつ 蘖(ひこばえ)芽生えぬ ピラカンサ伐り株
 
                
              椿 紅葉 花と見紛う 花やかさ
 
                の薊のロゼット見つけり 枯れ野辺に
 
                 十(とお)余り 野薊ロゼット 数えれば
 
 
               
                        平成30年 12月19日
                                <9首>
               夕日映え 枯れ尾花 綿毛映え
 
             枯れ尾花 気持戦ぎぬ 夕映えに
 
               草紅葉 また 紅葉あり 枯れ草中
 
 
              御多福南天* 繁し庭 賑わいあり
                        *漢字一語扱い     
 
               南天の実残り 疎なり 冬の暮れ
 
                額紫陽花 愈 枯れるるも 芽吹きあり
 
              非榊は 実の小さきまま 熟しぬ冬
 
 
 
 
                        平成30年 12月20日
                                <10首>
            昼になれば 鬱強まるる 朝 極月の
      
             鬱強し 動かぬ 我(あ)が身 情けなし
 
              立ち上がるも 蹌踉(よろ)ける我(あ)が身 情けなし
 
            無理は無理 逍遙諦め 冬冷たし
 
             当るまじ 天気予報や 怨めしい  
 
               予報的中 制度の高さの 怨めしい
 
            極月や 暮色広がりぬ 未だ 真昼
 
             愈よ 濃き 薄墨の空 冬鬱陶し
 
              どんよりな 雲 吹き飛ばす 北颪 欲し
 
                  暖冬に 碧空見ぬば 心 鬱陶し
 
  
 
 
                              平成30年 12月21日            
                                       <14首>
            今朝 碧空 ほんに移り気 冬空も
 
              鬱散じ* には 陽と青空よ 君は言い
                     *気散じ を捩って
 
               古びたる蜘蛛の巣に 乾涸びたる実
 
             大きく歪つ 実椪柑(ぽんかん) 三つ 黄金映え
 
 
            小菊残菊 白 淡紅 淡紫* 移ろいぬ
                             *漢字一語扱い
 
              陽の当たる お多福南天 赤く燃え
 
            チロリアン・ランプ 紅く灯ぶ 冬麗ら
 
            陽眩し 避ければ ひゅう 寒風抜け
 
 
            源平小菊 石垣に ほっこり 冬日蔭
 
             枯れ尾花 ピラカンサの実 垣間見え
 
               高砂百合 莢枯れ立つも 風姿 凛々し
 
                                枯れ莢茎 ドライフラワーに如何 高砂百合
 
            青き空 飛び交う二羽の 冬鳥 誰(た)ぞ
 
 
              龍舌蘭 逞しき哉 冬の精/勢
 
    
                      
                       平成30年 12月22日
                               <11首>
           霧立ちぬ 辺り 朦朧 春めきぬ
 
             霧立ちぬ 秋めきにけり 冬暖か
 
              定まらぬ 冬空 秋に似たる哉
 
                 振り回さるる 暖かき 冬の変
 
            暖かき 冬の変事や 耐え難し
 
             鬱立ちぬ 我身何処へ ベッドなり      
 
                 鬱に開き 鬱に閉じぬる 冬一日(ひとひ)
 
                暮れるとも 暮れぬる 鬱や 疎ましき 
 
 
             霧に靄 南天の実や 雫垂れ
           
               草紅葉 今朝 黄葉に衣替え
 
                霧雨や 枯れ草しっぽり 佇みぬ
 
      
 
                           平成30年 12月23日
                                  <10首>
               日差し強し あっ 忘れおり 冬日傘
 
                冬日傘 季語にも 人影にも なかりけり
 
 
              万年青(おもと)に葉牡丹 もう初春 備び
 
               万年青の実 朱(あか)朱(あか)映えぬ 冬の暮れ
 
               小菊らよ このまま咲き継ぎ 年越すの
 
 
               水仙の 真白き花冠 笑顔見せぬ
 
                 愈々なり 水仙咲きぬ 待ち侘びし
 
                  寒むからむ デイジー パンジー 春の花
 
               黄花酢漿草 花弁(はなびら)捲きぬ 春待つや
 
 
                 皐月躑躅 黄 橙 朱に 冬紅葉
 
       
                          
                         平成30年 12月24日
                               <10首>
               見紛いぬ 舞下がりぬ 枯れ葉 小鳥かと
 
                雪柳 一斉 橙葉 紅葉せり
 
                    雪柳 橙紅葉 冬の華
 
               寒椿の花 と見しや 要黐の紅芽
 
               紅葉落葉 吹き寄せられ 溝の底
 
                姫椿の 花弁(はなびら)混ざりぬ 枯れ落ち葉
 
             日溜まりに 佇みおれば 寒風遊(すさ)び
 
             明星 瞬く宵や 尾花の影
 
               枯れ木立 紅葉透け見ぬ 秋の名残り
 
 
              しめやかな 夜雨の温かき 冬晦日(みそか) 
 
                
 
 
                                平成30年12月25日  
                                     <9首>
              木通(あけび)哀れ 萎れ落ちおり 緑のまま
 
               木守蜜柑(きもりみかん) 此処にも 二つ 冬麗ら
 
              寒椿 葉緑なか 紅咲かせ
 
 
               チィ~ チィッ 振り向けど見ぬ 鳥の声
              
                ヒマラヤ杉 棕櫚のお庭や 唯 懐かしき
 
            
                枯れ夏蔦 伝い這う壁 通り過ぎ
 
                 ふくよかな 花梨 思わず 触りたく
 
 
               歳末の賑わい何処 静かの街角
 
                鴨脚樹(いちょう)落葉 鴨脚意匠の 街路かな
 
 
              
                            平成30年12月26日
                                  <11首>
               細き冬葉 百葉連ねる 源平小菊
 
                極月に 紅葉見せり 御多福南天
 
                  お多福南天 紅べに付きぬは 霜枯れか
 
               葉蘭 生き残りおり  南天のの奥
 
                 日影に植えし 葉蘭 枯れ果てぬ 哀
 
                
                 草紅葉 未だに変化(へんげ) 美しかな
 
                裸木となりぬ 最後の一葉も 落ち 〔花水木〕
 
 
                 甦りぬ 額紫陽花や 夜露に濡れ
 
                   花も葉も 霜枯れ 紫褐色になれど
 
                 唐胡麻も とうとう黄葉 枯れ色に          
 
                 鈍色に光ぬ太陽 初冬の空
 
 
 
                           平成30年12月27日
                                  <20首>
          冬山や 今 紅葉なり 秋山に
 
           大晦日(おおつごもり) 四日前ひや 山紅葉
 
 
            残月の 白き冬空 明け烏
  
           木枯らしや 我(あ)も枯らすらむ この寒さ
 
           残り菊 一輪白く 夕日映え
 
 
            金水引き 未だ緑のまま 葉 実 茎も
 
             我(あ)が庭の 金水引きや 紅葉変化へんげ)
 
            水仙の 小さく咲きぬ 山辺かな
 
               水仙の 蕾(らい)咲かずば 寒知らず
             
                黄花マーガレット 黄菊に代わりて 冬咲きぬ
 
           落葉踏み締め 入れば 此処は、もう山中
 
              八つ手 三本 日影に映えぬ 山の辺や
 
            椿もや 山辺に 濃緑の葉 映えぬ
 
             姫椿 白き 花 花  清々し
 
               枇杷 蘖(ひこばえ) 未だ 花見ぬも 葉 凛凛
 
            
            雪柳 紅葉小葉に 白小花
 
              雪柳花 時や春やと 覚えしか
 
        
             日溜まりに 枯れ葉溜まりの源平小菊
 
              ほ〔っ〕こり に〔っ〕こりこり 落葉に纏われ 源平小菊 
 
             落葉溜まり 源平小菊の ふかふか蒲団
 
 
 
                           平成30年 12月28日
                                    <12首>
            風花舞いぬ 年の瀬に 相応しく
 
              と見しや 小米雪 となり 吹雪くほどに
 
              見る見る間 草木に積もりぬ 小米雪
 
            小米雪 枯れ庭も ほ〔ん〕に 薄化粧
 
              小米雪 束の間のこと もう 碧空が
 
 
              積雪あり 石垣の下 一か処なれど
 
               雪止みぬ 後の 青空の 眩しきこと
 
               何時までかと 憂う間もなく 青空が
 
               亦 降り始む 此度は あらら 牡丹雪
 
                 牡丹雪 草木 忽ち 綿帽子
 
                枯れ草も 冬草も 雪冠(ゆきかむり)せり
 
 
 
            
                                         平成30年 12月29日
                                <13首>
 
               天空や 春めきたるも 地や雪化粧
 
                 彼(あれ)は 霜 いえ 雪 薄すら積もりたる
 
 
              花椰菜〔はなやさい/カリフラワー〕
                     大きな〔緑〕葉巻きぬ 小さき〔しろ〕蕾
     
                         ーー寒波襲来 天候超不調なれば
              一文字(ひともじ)*や 寒波に腰折れ しどけなし
                          *一文字は、葱の女房言葉
 
             葱 昨日(きそ) 生き生き、今日(けふ) 総崩れ
 
             黄花穂揺れぬ 背高泡立草や 忘れ花
 
                秋明菊 萎えて 萎れて 冬暗菊
 
                 残り草* 寒波にも絶え 秋残しぬ
                      * 寒菊の異称、
 
              氷霰 きらきら キララ 雲母の如
 
               車道の霰 砕かれ 砕かれ 雪片に
 
     
             シクラメン 哀れ 萎れり 垂れおりぬ
 
              シクラメン 篝火焚けぬ 寒波襲来
 
 
                小米雪 チラホラ チララ 急ぎ足
 
 
 
                         平成30年 12月30日
                              <7首>
                 今朝は また 穏やかな歳の瀬 冬日和
 
                  青空に ほっと一息 冬麗ら
 
 
                  冬空の 眩しき許りの 青さ哉
 
                    戸外へ出で 青空の 感触 確かめむ
 
                  青空に 誘われ出では 寒風強風
 
 
                   残照あり 暮色に包まる 歳の暮れ
 
                暮色 憂色に変わりぬ 暮れの鬱
 
      
 
                           平成30年 12月31日
                                 <9首>
 
           雪氷 見ぬ 我(あれ)が身も 凍りつきぬ
 
             風花やみぬ さあ 戌年最後の 少逍遙
 
           おぉ 寒(さぶ)っ 出で寒風に 縮み上がり
 
 
             炬燵守り 我(あ)が身に 似合う 年越しかも
 
              侘しき哉 剥く蜜柑の無き 炬燵守り
 
              寒波 まだ去(い)ぬか 戌年 大晦日(おおつごもり)
 
             草木 静か 知るや知らずや 大晦日
 
           
             雪柳 葉紅葉の上 六花(むつのはな)
 
 
              
 
                             平成31年 1月1日
                                 <14首>
                               
              初明かり 草木 いまだ 居眠りおり
   
                 初茜 小鳥 連れ合い 何方へ
 
 
              大空 青く晴れ 初春 穏やか
 
                歳暮とは 打って変わりぬ 初春哉
 
                    昨年(こぞ)の暮れ 雪 颪 晴 目まぐるしき
 
 
                目出度さは どの位 我(あ)が初春
          
                 初春や 平穏無事こそ 目出たけれ
 
                      
                        ーーTVの画像を観つつ
                初詣 作法確かめぬ 炬燵守り
                     
                久し振り 初詣の路 覚束ず
 
                 見上げれば 桜木芽生えぬ 初詣
 
                  突き出でぬ 梢に一輪 姫椿
 
                 姫椿 独り 祝うや 初詣
 
 
                  いつもの路 初春亦の 感慨あり
 
 
 
                        平成31年 1月2日
                            <10首>
              寒空に 漫ろ歩きも 又の興
 
 
               翼広げ 天空を 優雅な舞い
 
                白き鳥 彼(あ)や 白鷺 小鷺かも
 
                彼(あれ)ぞ 小鷺 今年の瑞兆に あらむことを
 
               越して方 山里三十年目の吉兆 ならむ
 
                小鷺 何方(いずち)へ飛び行くか 川辺 
 
 
              荒寥たる 溝底 初春二日
 
                荒寥たる 谷間の枯樹木 眠りおり
 
                  裏山や 茜に燃えぬ 紅葉の一瞬(ひととき)
 
              朱実結びぬ 万年青(おもと) 初春の慶事
 
 
           
 
                            平成31年 1月3日            
                                 <10日>
                三箇日(さんがにち) 晴天続き ほんに 目出たき
   
                 絹雲 麗ら 初春の 春気色
 
 
                   眩しき哉 正午の太陽 初春〔冬〕逍遙
 
                少しずつ 上衣 脱ぎぬ 初春〔冬〕逍遙
                                
                 空光る 光り渡りぬ 茅渟(ちぬ)の海
 
                  枯れ木立 墨絵(/シルエット)浮かびぬ 青き空
 
               いつも来る 路 寒風の 荒ぶ路
 
                荒寥たる 野辺に 芽生えや 密やかに
 
 
                 冬の野辺 独り 座するや 古新聞     
 
                   ぽつねんと 姫椿の紅 ベンチ脇
    
 
               唐辛子 採られぬ間に 枯れ果てぬ
 
                朱色から枯れ色へ 唐辛子の初春
                                  (はる)
 
 
                                    
                        平成31年 1月4日
                               <13首>
            穴三つ 初春の庭の 怪事件
 
              根こそぎなり 蓬ほ冬芽 誰(た)に仕業
 
              猪の 初仕事らし 祝い膳?
 
      
             丈高し 渋茶の風姿 何の草花(そうか)
 
              誰(た)ぞ 黄花コスモスの 枯れ姿 哀れ
 
               秋桜 残して名札 枯れ去りぬ
 
   
                寒風に 葉牡丹震え 撫子も
 
 
              薺(なずな) 繁縷(はこべ) 仏の座 鉢の賑わい
 
            
           窪に生きう 石蕗(つわぶき) ぶきぶき 冬日影
 
           姫千葉黄 花弁散りぬ 寒空に
 
            菊花枯れ 葉牡丹枯れるも 紅葉〔色付き〕 美し
 
              寒菊も 葉紅付きて 黄花映え
 
 
           白木蓮 はや白めきぬ 蕾等よ
 
        
 
                  平成31年 1月5日
                         <10首>
 
            藤蔓 枯れ 蔓渡り*する 雀も見ぬ
                         ⋆枝渡りを捩って
 
              初春の静寂(しじま) 破りぬ声の あり
                      ―― 詩吟の声
 
            石垣や 初春の 草屏風(くさびょうぶ)の如  
 
              水流る 冷たく光る   溝の初春  
                                (はる)
 
            オギザリス 重なり群れるる 初春の庭
 
             寒寒し 枯れ木となれば 薔薇の木も 
 
            見つけたり 冬薔薇(ふゆそうび) 一輪 フェンス奥
 
              溝底に 鬼田平子 咲くを見るゆ
 
          
             篠(ささ)戦ぎ 潺(せせらぎ)の音 初霞
 
 
             殻斗無き 枯れ団栗 独り 大樹下
 
 
 
 
                          平成31年 1月6日
                                 <11首>
             木守柿(きもりがき)の 姿見ぬ 枯木 侘しき
 
               烏一羽 枯れ枝に 閑か 木鶏の如  
                                 
 
              水仙の 笑顔振りまく 静寂(しじま) あり
 
               侘しき哉 唯水仙の花 香しき
 
 
              衝羽根空木(つくばねうつぎ) 刈tられ 衝く羽根のなき
                                    初春
                                    (はる)
               紫陽花(しようばな) 枯茎に 蕾 三つ 五つ
 
                綿毛飛び 枯れ尾花 愈よ 枯淡の景
 
                  枯れ葉なか 白菊映えぬ 冬日影
 
               寒菊 残菊 三輪 静か 垣根奥
            
        
               初草 草 端端(はつはる)に出ず いと愛らし
 
                初蝶とや 見しや 枯れ葉や 風に舞う
 
 
 
                           平成31年 1月7日
                                <21首>
   
               七草粥 一草も無きぞ 哀しき
 
                 春の野に出で 若菜摘みぬは 遠き昔
 
    
              指折れば 三草出会いぬ 前(さき)の逍遙
 
                薺(なずな) 繁縷(はこべ) 余りの幼なに 摘み難く
 
                 鬼田平子も 摘むに摘み難て 幼気(いたいけ)で
 
   
              初草の萌えぬ 初春 荒涼たり
 
                狗尾草 枯れ 枯れ 枯るる 初春哉
 
                 小苑 悉皆(しっかい) 枯色に覆わる 初春や
 
 
              冬草の はつはつの野辺 枯れ 禿草(はぐさ)*
                                * 狗尾草の別称
 
                真っ直ぐに 君が代蘭や 枯茎伸ばし
   
                 君が代蘭 邂逅 想わぬ 初春の慶
 
                  枯れ芙蓉 秋の盛りや 今何処
 
                   ピラカンサ 実の大きに 見紛いぬ
 
                     実の大きに 此れ 何(な)の樹と 訝しく
 
 
               不意に現る 其処は山中の如 雑木林
 
                  右 山中 左 舗装路 誰ぞ棲む
 
                 棲むは誰 山の精霊?  猪(しし)や棲む
 
  
               御屋敷跡? 棕櫚(しゅろ)聳えるぬ 懐かしき
 
              
                 風露草 門扉の脇に 門番風
 
                   古樹に依り掛り 橙 実撓わ 枝伸ばしぬ
 
                              道路の端(は) 一輪 そっと 寒白菊
 
 
 
 
                                                   平成31年 1月 8日
                                  <5首>
 
              花弁(はなびら)萎れ 枯色に縮みぬ しどけなき
 
               青き痩果 ぷっくり 膨らみぬ 茎の頂
 
                  冠毛開きぬ 蒲公英の如 放散 次々と
 
                 真ん丸の綿毛や 何時の日 大空へ
 
 
               石蕗(つわぶき)の一生 一つの叢に 見ゆ
 
 
 
                            平成31年 1月9日
                                   <10首>
 
              ふと見れば 窓外 小米雪の舞い
 
                青空より 小米雪振りぬ 寒の入り
 
                 六花(むつのはな) 舞い 舞いて 6×無数
 
                牡丹雪も 混ざりぬ 空や 茜雲
 
                 空 青と薄墨の朝 雪 鬩ぎ合い
 
              雪雲 彼方(かなた) 碧空 此方(こなた) 冬の妙
 
 
              雪暫し もや 降り止みぬ 俄か雪*か
                                俄か雨を捩って
 
                晴れ間あり と思う間も無く 雪降りぬ
     
                 小米雪 小苑 はんなりと 薄化粧
 
              雪雲 流れ 四方(よも) またも 春日和
 
 
 
             
                           平成31年 1月10月
                                 <11首>
           
            デイジー揺れぬ 春を待ち侘び 揺れぬ哉
 
               パンジー プリムラ 黄と淡桃や 春の色
 
              そ〔っ〕と二輪 ミニ・シクラメン 葉牡丹蔭
 
              
                         ―― 葉牡丹の新種に出合いて
               小葉牡丹 ちんと座りて 笑い合い
 
                  小葉牡丹 五輪 五輪と 並び合い
 
                始めて見ゆ 縮み葉牡丹 豪華咲き
 
                縮み葉牡丹 縁飾りフリルの 黒紅紫
 
                   踊り葉牡丹 踊り出しおり 九輪も
 
                       踊り葉牡丹 小さきは根元 縮こまり
 
                  小型に纏われ 大型葉牡丹 擽った気
 
                  乳白色の葉牡丹 おっとり 春めきぬ
          
    
 
                                                          平成31年 1月11日
                                    <11首>
 
      庭の千草 愈よ 紅葉 雪焼けか
 
          風花と見しは 我(あ)が飛蚊症の 銀の色
 
            寒小菊 此処にも 独り 耐寒し
 
         花鉢の菊 刈り取られ もう若葉
 
         冬日和 静寂(しじま)に 烏の一声 あり
 
 
          冬葵 仰ぎ見たるは もう昔
                       --石垣の上に咲きたるを
 
          濃紅を 冬葵の花茎 縦に付けおり
 
 
            枝枝(ええ)掃われ 紅葉(もみじ)樹 冬のオブジェ
 
            枯れ木立 一葉も残りぬ 紅葉なる
 
             生垣の 皐月躑躅 映え 冬日影
 
      
 
                            平成31年 1月12日
                                <16首>
            冬旱(ふゆひでり) 冬草萎るも 猶 青き
 
              萎れもせず 勢張る冬草 なんとまあ
 
            寒の内 雛菊震え 我(あ)も震え
 
            温室に入れて上げたき デイジー パンジー
 
 
              花咲かぬ 冬の花壇や それもそれ
 
                花を見ぬ 冬の花壇も 花壇の内
 
            侘びぬるる 花壇の精霊 寒小菊
 
            
             春の花 夢見るも楽しみ 冬花壇
      
               春の花 咲くは やっぱり 春が佳き
 
               寒小菊 やはり寒むそう 震えおり
     
                命懸け咲く 寒小菊 懸命に
 
 
            紅 白 黄 橙 紫* 色やカラフル 金魚草
                        *漢字一語扱い
 
               寒中かな 花冠伏し目勝ち 金魚草
 
               ペテュニア 咲く 日溜まりや 春の匂い
 
                 寒風よ 避けて吹きたも 日溜まりを
 
                ペテュニア 何故 寒中に 咲き続く
 
 
 
                                                   平成31年 1月13日
                                 <5首>
        
              雨粒に 打ちたれる葉葉 寒雨なく
 
                  曇り空 寒雨 誘わぬ 曇り空
 
                 すらり すら 花茎 黄花酢漿草*(きばなかたばみ)
                              *漢字一語扱い
                    懐かしく
 
                    息呑みぬ 野辺埋め尽くしぬ 檸檬色
 
                     黄花酢漿草 姉様の如 紫の
                           ーー酢漿草、別称:すいすい
 
                  その後は知らぬ 黄花酢漿草 南米産まれ
 
    
  
 
 
                             平成31年 1月14日                  
                                    <16首>
                  
              小蕪の若葉 置けば 窓辺は キッチン・ガーデン
 
                昨日より ぐんと伸びたり 小蕪の若葉
 
                  小蕪嫩葉 美(うま)し フリルの 縁飾り
 
                哀れ 早や 垂れ 萎びぬ 小蕪若葉
 
                  葉水(はみず)打つ 願いつ 甦らむととを
 
     
                 侘しさの 愈よ増しにけり 寒の夕
 
                  寒中や 何処も同じ 枯れ小苑
 
                  寒三日月(かnみかづき) 観月 何をや想うらむ
 
                 凍るる月 誰をぞ待つらむ 夜更けまで
 
      
                 少寒にも 慣れるや 我(あれ)と庭の草
 
                  寒の入り 福良雀や 飛び来たり
 
                  水涸るる溝に 枯葉や 寒の内
 
 
                  夕辺には  日差し柔らか 寒の夕
 
                    暮れ泥む 山里の気配 春めきぬ
      
          
 
                             平成31年 1月15日
                                 <7首>
      
 
                寒雨 冷雨 無くも 鬱陶し 曇り空
    
                 出そびれぬ 寒空見れば 為し遂げぬ
 
                  愈 寂びれぬ 冬庭 馬酔木 花芽数多
 
                非榊(ひさかき)は 実青きまま 腐(くた)りおり
 
                雪柳 枯葉散り 蕾 萌葱
 
                啄まれず 南天の実 実 朱(あか) 朱と
 
 
                 曇り空 明るぬままに 暮れぬ 寒(の内)
 
 
 
 
                            平成31年 1月16日      
                                  < 12首> 
                                    
            おぉっ 寒! 三寒四温も 寒に入り?
 
              頬撫でる 寒風 何時に 甘風*に
                      ―― 枕草子より
 
            今日(けふ)も 亦 出そびれぬ 寒や強き
 
              息潜めぬ 寒風荒びぬ 過ぐを待つ
 
               課せ止むも 亦 出辛しき 寒の午下
 
             冬ざるも 野辺 未だ 草紅葉 あり
 
 
              夕烏 一羽も飛ばぬ 冬茜
 
                音も無く 戦ぐ枯れ苑 冬茜
 
                 冬凪や 仄か聞こゆる  潺(せせらぎ)の音
 
               煌々たる月影 独り 寒の中
 
             月独り 後は 闇夜の 寒夜かな
 
                 星屑の一つだに無き 寒月夜
 
 
 
                            平成31年 1月 17日
                                   <10首>
            ぐんぐん伸ぶ 豌豆の葉茎 寒空 突く
 
             花を見ぬ 豌豆 春まで 待たれたし か
 
               カリフラワー 一株残りぬ 寒の内
 
             
            サワサワと 騒ぐ木の葉 葉 寒の内
          
             マフラーは、手袋は、何処 寒逍遙
 
              冬帽子 被り直すも 出そびれぬ
 
                 明日こそは と 今日(けふ)の逍遙 諦めぬ
 
 
            とうとう 来たりぬ 冬籠りの 日日よ
 
            筆(ぺん)と紙 冬籠りせり 炬燵守り
 
             炬燵守り 冬の行事 我(あれ)独りの
 
 
        
                         平成31年 1月18日
                              <8首>
           仄か 吹く 寒の風 温かく
 
             日差し温 三寒四温の 温来る
 
            また 寒や 空の気色の 厳しきに
   
             朝凪に ほっこり ゆったり 寒の庭
 
 
            入日差す 窓辺の柑皮(かんぴ) 黄金色
  
              入日差す 冬苑の葉 葉 きらきらら
 
 
             蕭条たり 茜雲の下 冬の苑
 
              夕闇に隠るる 冬苑 気色あり
 
 
 
                          平成31年 1月19日
                                <12首>
               如何あらむ 水仙 葉ばかり 花を見ぬ
 
              姫椿 落花 花弁(はなびら)溝底に
 
               杉木立 枯るる 風姿や 気色あり
 
              フード(food)外し 仰げは 碧空 冬日和
 
               冬木立ち 暗く沈まりぬ 日和にも
 
                早や小さき 実結びぬ 枇杷の樹かな
 
 
             日脚伸ぶ 猫や脚伸ぶ 背中反る
 
                日脚伸ぶ 庭の枯れ草 光りあり
 
                 南天の葉蔭 障子に 日脚伸ぶ
 
 
                            冬茜 仄か 残りぬ 山の際
 
                 
 
                        令和31年1月20日
                                <17首>
                冬雨小雨 この一雨こそ 温き哉
 
                 冬霞 山際仄か 沈沈哉
  
                      糠雨の 霞立ちたる 冬山の端(は)
 
                   冬曇り 唯 眺めおりぬ 朝と昼
 
                    佇みぬ庭 冬日煌めく 昼下がり
 
                 
               彼(あ)は 白鷺 白影飛び行く 川辺指し
 
                 白雲のぽ〔っ〕かり浮かびぬ 春めきぬ 
 
                  震えおり 一輪 小さきが 秋明菊
 
 
                 姫踊り子草 春や待つらむ こんな処*
                               ⋆道路の縁で
 
                   チィッー チッチ 彼(あ)は冬鳥か 何(な)の鳥ぞ
 
                 眩しき哉 冬の坂路 入日差す
 
 
                 生垣の 煌めく葉 葉 葉 濃緑(こいみどり)
 
                   陽当たりの良き路 拾いつ 冬逍遥
 
               冬木立ち 路覆いぬ 影落としぬ
 
 
                   水仙花 右に左に 晴れやかに
  
                   水仙花 可愛らしくも 凛々しき哉
     
                    水仙の葉面未だ見ぬ 和w(あ)が庭 寂し
 
                   
 
                                平成31年 2月21日
                                       <8首>
                 碧空の 覗く雲間や 春気色
 
                  春光る 白雲光る 小鳥の声
 
                   吸い込みたり 春の華やぎ 曇り空
 
 
                 枯れ草の 果つる小苑 広き哉
 
                 渋茶色 変わり果てたる 覚束なぬ*
                          ー*野草の誰か(名前)が分からぬことに
 
 
                馬酔木(ばすいぼく) 花釣鐘形や 咲き始みぬ
 
                 梅や如何 梅の便りや 聞かぬれば
              
                 山里の 梅見は未だ 暫し待つらむ
 
 
       
                                平成31年 2月22日
                                      <11首>
               枯れ芒 独り揺れ揺ら 春風に
 
               薹(とう)立ちぬ 葉牡丹の景 猶 をかし
 
                万年青(おもと) 実 朱色黄ばむも 盛りあり
 
 
             パンジー デージー 漸う 我が世 来たりなむ
 
                  枯れ木立 芽吹きて春の 装い哉
 
                 水仙の花冠 六輪 勢揃い
 
                  冬水仙 花弁(はなびら)縮かみ 心(うら)寂し気
 
                酢漿草(かたばみ)嫩芽(どんが) 百に重なり 叢おりぬ 
 
 
                野豌豆 幼な葉や 愛らし 烏も雀も*
                         -*烏野豌豆、雀野豌豆の略称
 
                  野豌豆 若葉柔らな春日影
 
                   風露草 嫩芽 突き出しぬ 岩間かな
 
 
               
                                 平成31年2月23日
                                      <10首>
                  スペアミント 縮緬嫩葉 石畳み
 
                    ミント嫩葉 挙りて八重に 叢生いぬ
 
                     一叢(ひとむら)だけ ’離れ小島’を ミント嫩葉
 
                  
                  蔓桔梗 葉 深緑映え 蔓伸びて
 
                  小花五輪 蔦葉海蘭(つたばうんらん) 薄紫の
 
                   浅緑 嫩芽萌えぬ蔦 立ち上がりぬ。
 
                  青木嫩芽 芽鱗(がりん)外るるも 花芽(かが)や未だ 
 
                    源平小菊 見ぬ間に 若草 春の叢
 
        
                 春の日や 終日(ひねもす) のたり怠けもの
 
                   バタ バタッバタ 春一番か 窓荒ぶ/遊ぶは
 
 
     
                                
                            平成31年 2月24日
                                    <22首>
             母子草 もう薹立ちぬ 春風に
 
 
               梅の樹苔 灰緑の衣 岩覆いぬ
 
              青空に映えぬ 白梅の清らな風姿
 
                浮世絵に 見たるが如き 梅の新枝(にいえ)
 
              枝垂れ梅 淡紅 八重はまだ 少な
 
                 枝垂れ梅 か細く華奢な 大樹や何時に
 
                             
              チッ チイ チ~ 振り向けば 飛び去る 小鳥の影
              
              彼(あ)の地鳴き 鶯に非ぬ 目白らし 
 
                梅には目白 花蜜 いと好きなれば
 
 
              立ち枯れぬ 赤松 梢に まだ松毬
 
               枯れ赤松 松葉 松毬 落ちずに 春を〔待つや〕
 
                痛ましき 赤松の枯れ行きぬ 姿こそ
 
 
                            ーー 梅の小公園まで遠出して
             見渡せば 咲くは白梅 ばかりなり
 
             白梅や 花 未だ三分 心(うら)寂し
 
              白梅に目立つは 梅の樹苔 ばかりなり
 
               梅の樹苔 梅の樹には 吉であらむことを
  
              五分咲きの 白梅の間(はざま)に 紅の輝
 
                   白花続き 紅見ぬば虚し 梅公園
 
                   梅の樹下 姫椿の紅の鮮やか
 
 
               垣根の躑躅 嫩芽 嫩芽 春備い
 
                ピラカンサ ひっそり残りぬ 橙色の実
 
                啄ばまれず 実ピラカンサ 春や待つ
 
 
                           平成31年 2月25日
                                  <14首>
 
           早かりし 昨日(きそ)の梅見 もう一度行かむ
 
 
             幾年も 出会いぬ 黄花 何(な)の樹の花
 
             山の辺の 眠り醒ますや 鮮黄花
 
           六弁(むひら)に咲く 黄花の名こそ 黄梅とぞ
      
            八重に咲く 雲南黄梅 にも似たる 
 
              一重も八重も 幻惑な 黄梅哉
 
             黄梅や 花冠散らしぬ 山辺の賑わい 
 
              黄梅や 梅に似たるも ジャスミン属
 
 
               梅見月 咲く花なれば 黄梅とぞ〔想う〕
 
             春来る とぞ想いなむ 黄梅哉
 
        
              初見なり 海桐(とべら)の裂果 赤色の種子
                          -ー 海桐の実 秋に熟すが習い                     
                               次の春迄残るとは
 
                 熟したる海桐の実見たり 如月の庭
 
 
 
                           平成31年2月26日
                                 <15首>
           玉椿 啄むは目白? 白輪 見えぬ
 
           椿の樹 満面 紅の花芽(かが) 花芽 花芽
 
            点 点 点 緑の小叢 何の嫩芽
 
             唯独り 咲き残りたり 寒白菊
          
            枯れ草の 山辺 虚空(こむ)なり 唯 潺(潺)
 
              鶯なむ 玉椿の実 啄んだは
 
              淡紅梅 見越しの土塀 通り過ぎ
 
              侘助 ひっそり 庭の奥向こうに
 
 
              コスモスの 名札色褪せぬ プランター 
 
                千草萌え プランター今 春の目覚め
 
            ダイアンサス〔西洋撫子〕 白 濃紅 薄紅咲きぬ 花壇縁
 
               一見枯れ野 よく見れば 嫩芽千草
 
                嫩芽 余りも幼な 名や分かぬ        
 
                 烏や雀や 野豌豆の 幼な姿
    
                あの嫩芽 雀の槍や いえ 針よ
 
 
  
                                                 平成31年 2月27日
                                 <12首>
 
               七重八重 若葉 萌えぬ 花酢漿草(はなかたばみ)
        
               木瓜(ぼけ)の花 紅梅かとぞ 如月末
 
 
                黄水仙 今春も咲きぬ 君亡きも
 
                  黄水仙 君見ずとも 艶やかに
   
 
                満開の紅梅 隣りぬ 彼岸桜
 
                 今や もう 彼岸桜の 芽吹く候
       
                  彼岸桜 梢 梢に 蕾 蕾
 
 
                 未だ枯れ野 嫩芽 嫩草 生うは未
                    
                   一八(いちはつ)の嫩芽可愛くも 凛々しくも
 
                   姫踊り子草 野辺覆いて ラインダンス
 
                藪椿 紅も絞りも 春つ方
 
                 験の証拠 石段の 春飾り
 
 
 
                            平成31年 2月28日
                                  <9首>
                                   
                 春雨や 四周静か 降り注ぎぬ
 
                    春雨や 目には見えねど 葉に雫
 
                  梅の枝 光る雫や 春が雨    
 
                   糠雨の 霧雨の如き 春雨哉
 
                 春雨に 濡れ葉の椿 艶のあり
 
 
                   春雨止む 春霞込む 春の空
 
                   春雨に 庭朦朧の 気色哉
 
                 玻璃の窓 雫垂るる 春雨の
 
                  春雨や 傘 傘 傘の 通り行き
 
 
                                                     平成31年 3月1日
                                  <13首>
 
               路の上 羽根一本 春の空
 
                誰(た)の羽根ぞ 黒 灰 白の 三色模様
 
       
                逆ハート形の嫩葉や 八重に生い
 
                 逆ハート形の嫩葉の叢や 彼方此方(あちこち)に
 
                這い出(いで)ぬ 繁縷(はこべ)の嫩葉 何方(いずかた)へ
 
                何(な)の野草 人参の葉似の嫩葉 重ね
                
 
                 暖かき 今春一(このはるいち)の暖かさ
 
                 
                 苔生き生き 彼(あれ)苔の花か 夏なくに
 
                   苔こんもり 小さき森の物語
 
                  苔の他(ほか) 草草まだ眠りぬ 春の縁
 
 
                 春や春 長実雛罌粟*の ロゼット見たり
                                 ーー*漢字一語扱い
 
                 蓬生う 石段にも 春日影
 
                  蓬生うも 懐かしき哉 春の山辺
 
 
 
                              平成31年3月2日
                                    <24首>
 
                 白花と見しや 春陽(はるひ)の 雫(しずく)哉
 
               夏蔦は 未だ蔦ばかり 枯れ気色(けしき)
 
              春風未だ 冷たき哉 春日影
 
               スカーフを 巻き且つ外しぬ 春逍遙
 
                咲く程に 緑がかりぬ 白梅は
 
              日向ぼこ 石段の下 春の野芥子
 
 
                  鵯(ひよ)飛び来 何啄むや 樫の枝
 
                    鵯 もう一羽 鶯サイズ 雌鳥か
 
                  
               春の野芥子 黄花一輪 孤高の春
 
                白花蒲公英(しろばなたんぽぽ)若柔らか 
                            ほんに 若菜
            
              白花蒲公英 若葉伸びやか 花茎や未だ
                
               関西蒲公英 未だ見ぬ 時未だらし
 
                 姫踊り子草 日影日蔭 選ばぬとは
 
 
                 黄梅か 黄梅擬きか 確かめ難(がた)
 
                   黄梅は 一重にも八重にも見え 紛らわし
                            ーー*黄梅擬きは八重らし
 
                  山辺に咲く 黄花 何(な)の花 確かめに
 
                   遅かりし 黄梅 既に 散りおりぬ                             
         
 
                枯れ草の 間に間にしっかり 水仙生う
 
                 若草と共に生う 水仙 春気色     
 
                春さりや 水仙〔花〕盛り ここかしこ
 
                  水仙花 どこもかしこも 笑顔 笑顔
 
               ひっそりと 水仙咲きぬ 大樹の陰                  
            
                水仙咲きぬ そっと大樹に 身を寄せつ
 
                  枯れ野にも 水仙独り 輝けり
 
                 水仙花 のびのび のんびり 春日影
 
                    姫椿 花弁(はなびら)散るも 艶のあり
 
                枯れ草に 水仙の花やぎ 春さりなり
    
            
                すらりすら 葉水仙伸びぬ 小苑の
 
                 花未(いま)だ いついつまでも 待つらむや                            
      
                    諦めし 水仙見たり 嬉し 楽し
 
 
 
                              平成31年 3月3日
                                    <11首>
 
                           --幼き日を思い出しつ
                    爪先立ちつ 雛壇に 鮒飾り
 
                     緋毛氈 掛けられ 雛壇 雛待ちぬ
 
                             何処からか 童の歌声 雛祭り
 
                      雛霰 桃 白 緑 と消えて行き
 
 
                   薄曇り 我(あ)が雛祭り 晴れ*の無き
                                                                   ーー * 褻(け)に対する
                     何も無し 菱餅 白酒 桃の花
                                      
                        桃の花枝 気付かず過ぎぬ 花売り場
 
                    白梅咲きぬ 桃の節句に 我(あ)が庭は
 
                     日向ぼこ 雛祭りの華やぎ 今 遠く
 
                      雛祭り 散らし寿司 思い立ちぬ
 
                       何か面倒(めんど) 座したるまま 炬燵守り
 
 
 
                                 平成31年3月5日
                                     <11首>
                       八つ手 小珠 蕾と見しは 青き実
 
                    小珠集め 小手毬となりぬ 八つ手の実
 
                     八つ手の実 白緑から紫黒は 何時?*
                                         --*秋
 
                     八つ手の嫩葉 何時か 天狗の団扇
 
                     
                      春の野芥子 黄花 にっこり 花芽伴ない 
 
                    花芽一斉 笑顔 笑顔 春の野芥子
 
         
                     もしかして 彼(か)の小鳥 雲雀かも
 
                      天高く 舞い上がる 小鳥 汝(な)は誰(たれ)ぞ
             
                      歌に聞き 詩(うた)にみゆ許り 揚げ雲雀
             
                      雲雀 もう 幻の小鳥となりぬ
 
 
 
                           平成31年3月6日
                                 <12首>
                    御多福南天の奥 葉蘭 五葉
           
                     葉蘭の嫩葉 細きが 一葉魅せ
 
              
                   春の野芥子 黄花咲きぬ 葉霜枯れるまま
            
                    芙蓉に嫩芽 まだ幼なの木なのに
 
 
                   石垣の 春の野芥子 野豌豆 仏の座 春のトリオ
 
                    チューリップ嫩葉 処狭しと プランター
 
                    クリスマスローズ 咲きぬ 俯き加減
 
                  サワサワと 篠の葉騒ぐ 春の目覚め
 
                   淡紅梅 一樹 ぱぁ~と 庭の奥
 
 
                  鬱陶しい 鬱襲来 疎ましき
        
                   辛うじて 鬱に耐えぬる 春一日(ひとひ)
    
                  黄花詰め草 枯れ草に隠れ 春や待つ
 
        
 
                                 平成31年3月4日
                                      <9首>                                       
 
                     白梅の1輪 2輪の 温かさ
 
                      白梅の 咲きたる今朝の 暖かき
 
 
                      白梅や 馥郁たる香遣すや 今朝の雨
 
                     白梅に 暫しの宿り 春時雨
 
                      ポツポツと 笑みだす白梅 いと愛し
 
                      
                  ふと見れば 白梅満開 垣根越し
 
                   白梅に 枝移りせり 目白あり
 
                    また曇り 実(げ)に 春に三日の晴れのなし
 
                      鬱陶しき 梅雨の如きな 梅見月
 
 
                   
                            平成31年 3月7日
                                  <15首>
                  曙や 春眠覚えぬ 鬱歳し
 
                  寝覚めても 且つ 寝入りぬ 春曙
 
                   うつらうつ 夢見心地の無き 春の鬱
 
                  曇り空 庭の草木も 曇りおり
 
                  漸うに 光差したる 春の午
 
                  仏の座 淡紅紫の花 溝の縁
 
               若草のブランケット 落葉の吹き寄せは
 
                  紅梅の 花満つる庭 空青く
 
                   桜木の 花芽の開花や 何時のこと
 
                 水仙や 白花の乱れ咲き 春野の宴
 
                   枯れ野原 緑少なに 若草萌え
 
 
                  水溜り 残りぬ 今朝の春雨の
 
                  茫茫なり 石垣は未だ 枯れ蔓 枯れ草 
 
                   紫陽花(しようばな) 嫩芽開きぬ 萌黄色
 
                   すらりすらり 剣状葉 黄菖蒲の
 
                  遠見には、ぼう~と浮かびぬ 花樹のあり                                   
 
                   梅や 桃や 梅見 雛祭りの どちら
 
         
                                 
                                  平成31年3月8日
                                       <12首>
                  切れ葉野葡萄 新蔓 新芽 未(いま)だ 見ぬ
 
                   哀れ 水仙 総崩れ 花も 葉も
 
                  春爛漫 まだ一か月先 と言うに
 
                    岩の紋〔こけ〕 広がりぬるや 春故や
 
                     朝曇り 今 真っ青な 春の空
 
                  春陽 陽葉 ヒサカキ 夭夭(ようよう)
 
                                どの鉢も ノース・ポール〔寒白菊〕や 花盛り
 
 
                                  汝(な)は何ぞ 飛び去る鳥影 春の夕
 
 
                   クリスマス・ローズ 亦出会えり 今は春
 
                    名に負わぬ クリスマス・ローズ 春までも〔咲き〕
 
                  薹たちぬ 葉牡丹の風姿 風趣あり
 
                  様々な立ち姿 葉牡丹 楽し
 
   
 
                            平成31年 3月9日
                                  <18首>
                   石垣下 藪蘭消えぬ 春哀し
 
                 春風駘蕩 何故(など)か冷たき 春風哉
         
                 日溜まりの 春の微温(ぬる)きに 身を置きぬ
 
                  馬酔木(ばすいぼく)花爛漫 馬も酔うらん
 
                   三色菫 今 花盛り 取り取りに
       
                  紫 紅紫 橙 白 黄 淡紫 淡紅*
                        パンじー 七色超え
                                --*漢字一語扱い
 
                   プリムラ 哀れ はや 盛り過ぎたる風情
 
                   セネッティ* 始めての花 始めての春
                                   ーー*サイネリアの新種
                 
                   ベゴニア花 夢では〔花〕盛り 現〔うつつは〕 萎れり
 
                
                     葉牡丹の 闌けり葉姿 夫々愛し
 
                     夫々や ユニークな風姿 春の葉牡丹
 
                      立ち上がりぬ 葉牡丹の枯れ花茎 太し
           
                       頂頭葉 まだ開きおりぬ 葉牡丹 二年越し
 
                     直ぐ側に チューリップの嫩芽 萌え盛り
 
 
                     雲南黄梅 春風に揺れ 揺れぬ
 
              
                     ボリューム増しぬ 冬の寄せ植え 春日影
 
                  ストック 葉牡丹 プリムラ パンジー 金盞花
                           春の寄せ植えとなりぬ
 
  
                      幻に非ず 関西蒲公英 此処に咲きぬ
 
                    何時もの処 見ぬ もう幻かとぞ
 
       
 
                                   平成31年3月10日                           
                                         <9首>
                  薄雲や 一切れ浮かぶ 春麗けし
       
                     スペアミント 縮み葉 重ね 濃く深く
 
                   未だ茫茫 源平小菊 フェンス下
 
                    華奢 か細く 小鬼田平子* 春風に
                                 * 漢字一語扱い
 
                     路傍に落つ 登美と見しは 蒲公英の花
 
                      辺り辺り 咲く黄なるや皆 春告げ花      
      
                       余寒咲き貫き 今萎る プリムラ 哀
 
                     プリムラ 萎れぬ 春爛(たけなわ) 知らぬまま
         
 
                    夕日差す 小公園 唯 長閑か
 
 
            
                                 平成31年3月11日
                                       <9首>
                     夜来の雨 上がり 春草 生々と
 
                     雨粒や 静 天雲(あまぐも) 晴れ 何処も 春空晴れやかな
 
                    雨音の 聞こゆるる玻璃窓 春空消(け)ぬ
 
       
                      波打つ跡 段々模様の岩 丸臥(まろぶ)しぬ
 
                      古(いにしえ)は、汀(みぎわ)にあらむ 此処山中*
                             ーー*此処六甲山系の中腹、
                                  開発された住宅街
 
                 海石(うみいし)や 苔生しおりぬも 猶 海石
 
                   梅の樹苔 生すを見たりぬ 海石に
 
                    海石や 枯れ山水の如 春山に
 
                  
                 海石や 今日(けふ)も恋ふるや 遥かの海
 
 
              
                                平成31年3月12日
                                       <10首>                     
                 このロゼット 何(な)の根生葉 蒲公英や
 
                   蔦葉海蘭(つたばうんらん) 打ち重なりぬ 緑なる
                 
                    花韮の 幼きが咲きぬ 心細そ気
 
                 黄なる花 蔓桔梗の 黄葉 春先の
 
                  ラッキー・クローバー* 打ち重なりぬ 四つ葉ばかり
                              * オキザリスの一品種の名称
 
                  蔦葉海蘭 蔓 にゅう にゅう 四方八方
 
                   溝の壁 梅の樹苔 居心地 如何
 
                    流されぬよう 蓬の小叢 溝底の
     
                     萌え出づる 隈篠(くまざさ)の まだ幼きが 
 
             
                      金柑の実 落ちてうらぶれ 溝の底
 
                   石垣は 若草のミーティング 例年(いつも)のように
 
                    酢漿草に混じりて 薺(なずな)の 小さきが