令和2年 6月5日
<9首>
胡蝶 舞いぬ 一匹 二匹 また 一匹
揚羽蝶 同じ意匠の 番舞(つがいまい)
春夏仕様 混ざりて舞いぬ 胡蝶らは
紋白蝶 舞いぬ我(あ)が庭 はる野となりぬ
春野の如 紋白蝶舞えば 菜の花なくも
何故に 蝶と蛾 総出の賑わいは
地に白 白地に黒 蝶や蛾や 夫々が
蝶も 蛾も 飛び舞いぬ風姿の華 やかな
蒸し暑き 何(な)ぞ この気候 今 水無月
令和2年 6月6日
<13首>
桃の花甘美な風姿皐月躑躅(さつきつつじ)
不思議あり 葉ばかりと見しが 花芽あり
皐月躑躅 花芽 (かめ) 葉陰にひそり 隠れん坊
清々し ミントの青葉 何時見ても
驚嘆 ミントの勢い 施肥せぬに
自然生い ミント蓬生い 猛猛し
蓬生い ミントの簇や 手拱(こまね)きぬ
まぁ 綺麗 ポピー花 咲きぬ 裏山に
裏山の 万緑に映えぬ ホビーの花花(かか)
裏山に 簪(かんざし)の如 ポピー花 黄と橙
黄橙花ポピー 数えれば 百余輪
寝覚めれば 真夜中 彼 (あれ) は 夢世界
然れど楽し 思わずえがお頷きぬ
令和2年6月7日
< 10 首>
5・6倍 木蔦の葉形 もうお化け
薄の細葉 絡みぬ若蔓 もう秋意匠
ーー襖絵に見る
ぽつねんと 小判草の枯穂 薄叢
茫茫ミント 腋芽や 一斉噴出
ミントもう 花芽 いえ腋芽 小落胆
打ち続きぬ夏日 萎るる花鉢 哀れあり
萎れおりぬ プランターの花 夏日下午
紫陽花も ため息哉 初夏の夏
ぱっと 晴れやか 蕺(どくだみ)花
初夏の暑夏
夕来れば 微風(そよかぜ)通りぬ
あぁ 涼し
令和2年6月8日
< 14首 >
さり気無く 人目を惹きぬ 蕺(どくだみ)花
春野芥子 黄花 みな皆 綿毛となりぬ
綿毛とびぬ 後の寂しき 春野芥子
ひっそりと 咲き続きぬ 雪の下愛し
彼 (あれ) や何 (な) ぞ 鳥影 葉影 早春の庭
幻覚も 楽しけれ 見紛いぬ気色よ
皐月躑躅(さつきつつじ) 腐(くた)す暑さよ
水無月の
さんざめきぬ 涼風吹き渡る 青葉木立
凌霄花 (のうぜんかずら) 葉覆い尽くすや
欄干を
紫陽花(あじさい)花(か)
紫に染め初みぬ 石垣上
春野芥子 も綿毛哉 夏日続けば
白蝶草 涼風に揺れぬ 白蝶の舞い
柏葉紫陽花* 触れむばかりに 花穂突き出しぬ
ーー*漢字一語扱い
令和2年 6月9日
<12首>
枇杷の樹や 実の一つだに無き 水無月かな
緋陰では また涼しきかな 夏日最中
芝桜 消えぬ花壇や 虚しき水無月
芝桜 あの花盛り 一時の栄華
彼(あ)の花は? 近づき見れば 卯木(うつぎ)の花
梅の実を 見ぬ少苑や 小寂しき
葉ばかりの 茂るる梅樹 驚かし
額紫陽花 透かす躑躅の香しき
見後れし シャスタデージー野 枯れ景色
せめてもと 枯れ頭花 二つ三つ
今日(けふ)捲きぬ 枯頭花の種子 我(あれ)が庭
一輪でも 来春の出会い 願いつつ
令和2年 6月10日
<12首>
あらっ 揚羽 窓格子に四羽 もう二羽も
止まりて 勝 亦舞い戻りぬ 揚羽蝶
要黐(かなめもち) 若葉筋だけ 喰んだは誰(た)
要黐 革質の葉 喰む歯や 強靭
俄か雨 入梅の知らせか あぁ
ゆらゆらと 延ぶ葛や 当て所なく
南天越え 要黐越え 葛(つる)何処へ
早乙女花(さおとめかずら)
蔓延び絡みぬ おどろおどろ
御免なさい と言いつつ 葛 引き抜きぬ
年毎の 狂おし気ばかりの 繁茂の故に
一夜にて 咲き揃いたり 皐月躑躅(さつきつつじ)
魔訶不思議 皐月躑躅の 咲きっ振り
令和2年 6月11日
<9首>
南天の葉 露 露 宿りぬ 梅雨の今朝
四方一変 鬱陶しき哉 梅雨の入り
じっとりと 湿るる四方(よも)や 雨季の憂き
梅雨一日 もう恋し気金 夏空の青
胡蝶 小鳥 とんと見掛けぬ 梅雨の入り
雨宿り 何方(いずち)何処に 入梅なれば
蝸牛 紫陽花の葉 姿見ぬ
蝸牛 青蛙も見ぬ 久しけり
令和2年 6月12日
<12首>
夕霧も 朝霧も 梅雨の贈り物?
ー―昨夕は 霧立ちぬ 今朝もまた
曇り空 高く飛び燕 晴れ間の兆し
彼(か)や鳶(とんび) 梅雨空に鳶とは
如何なコンビ
入梅に 草木(くさき)生き生き 何時までか
長引けば 草木腐し*に ならむことも
ーー*’卯の花腐し’に倣って
薄墨四方(よも) 紅一点 皐月躑躅
梅雨空や 躑躅艶然 唯独り
五月躑躅 一時の輝き 命尽きぬか
ひらひらら 躑躅素通り 紋白蝶
やはり菜の花 皐月躑躅の 花よりも
うろうろと 忙し気 蟻何方へ
小さき小さき 蟻 儚きも 強き哉
令和2年 6月13日
<12首>
草木は 蔓垂れ 枝垂れ 梅雨に耐え
霧たちぬ 湿気立ちぬ 梅雨疎まし
曇天晴天 揺蕩う梅雨 我(あれ)も
梅雨入りぬ 鬱始まれり うつうつと
あっ 揚羽蝶 黒地に白紋 お洒落な意匠
夏型哉 大型の揚羽 大きな舞い
揚羽の幼な 柑橘系の 葉や好み
柑橘系の 樹木や無き 我(あれ)が庭
柑橘系 他処の庭には それそれに
蜜柑 柚子 橙 金柑 見越しの塀
なれど 葉喰む 幼虫 見ぬ我(あれ)なり
有難う 優雅な舞いを 揚羽蝶
柑橘系 無き我(あ)が庭へ 訪(おとな)いを
令和2年 6月14日
<14首>
四方 陰鬱 梅雨の今朝 あぁ鬱陶し
梅雨、南天井、白の反射
ポツリ ポツリ 梅雨の雫や 紫陽花(しようばな)
彼黄の枝梢(ししょう) 光る雫や 梅雨の今朝
あじさい の花 Yu Ying えぬ
霧込みぬ 皐月躑躅や 腐り勝(が)て
ーー TVの紫陽花園を眺めつつ
紫陽花や 咲き溢るる 映像 七色映え
何(な)も見えぬ 靄に隠るる 裏山よ
何(な)どて うろうろ 蟻 我(あ)が机上に
梅雨空に 方向感覚 狂ったの
溺れおり 蟻一匹 グラスの中
助無とや もう一匹 寄り添いおり
指差し入れば 無事移り来たり 二匹とも
そっとそっと 窓際まで 蟻二匹
令和2年6月15日
< 14 >
梅雨の晴れ間 こんなにも 明るきとは
楽し気に 戦ぎぬ 草木 梅雨の晴れ間
眩し気哉 梅雨の晴れ間の 碧き空
ベゴニア花 ほんに笑顔の 梅雨の晴れ間
兎菊梅雨の晴れ間に 黄金映え
マリゴールド 野薊も 甦りぬ 梅雨の晴れ間
滴り落つ水 胡蝶 止まり来 渇いたか
ーー 喉が渇いたのかと訝しく
疎らに咲きぬ ベゴニア花 また 美し
密に咲きぬ ベゴニア花も また 美事
梅の実や 転がり 寄りおり 路の縁(へり)
見渡せど 梅の樹見えぬ 不思議あり
三つばかり 拾いたり 梅の実 珍し
二つは谷間に 返しぬ アデュー/adieu
ご機嫌よう
小逍遙 帰り来ぬ我(あ)に 紋白蝶
お帰りなさい 御無事でと 迎えられたよう
令和2年6月16日
< 17首
紫陽花花(あじさい か) 淡青 淡紫 石垣上
濃淡の紅 嬉し 紫陽花 此の植え込みの
白、青、紫、薄赤、紫陽花、花(か) グラデーション
酔い痴れぬ 紫陽花の花 豪華咲き
すらりすらり アガパンサスの 苞茎の
三角 の蕾つんとお洒落な 紫君子蘭*よ
—-*アガパンサスの和名
漢字一語扱い
苞破れぬ 紫蕾噴き出づ アガパンサスの
そこはかとも 匂わぬ花や 梔子(ふちなし)の
梔子の匂わぬ 哀し 老いの身は
梔子の花 梅雨晴れに 一景あり
立ち去りぬ その時 芳香 匂い来ぬ
梔子の芳香遣(お)こしぬ 微風(そよかぜ)優し
胡蝶飛ぶ 低く飛びぬ 一陣の風
飛ばせれぬよう 低く飛ぶは 胡蝶の智慧?
あっ 蜻蛉 見るや失いぬ 梅雨ぞ 悲し
何(な)の花ぞ 百合似の 五弁(いつひら)
植え込みの
純白映え 漏斗状花 梅雨晴れに
令和2年 6月17日
<12首>
清楚可憐哉 姫女苑一輪
韮の茎 花も実もあり 溝底から
若葉白葉 問う芽には 白蝶の舞い
胡蝶ホヴァリング 燕(つばくらめ)滑空
胡蝶翅広ぐ 梅雨晴れに 翅干*(はねほし)
ーー*’甲羅干し’に倣って
ちらり見るゆ フェンスの向こう 赤色紫陽花
赤色紫陽花 何と魅惑的な
紫酢漿草(むらさきかたばみ)
梅雨に相応し風姿 小寂しき
ランタナ花色 しろかr紅 未だ移ろわぬ
移ろえば 黄から橙紅への 七変化*(しちへんげ)
—-*ランタナの和名
あらま欲し 白から淡紅 我(あ)が嗜好
ランタナ花 フェンス一杯 絶佳(ぜっか)哉
令和2年 6月18日
<8首>
唯独り 南天の花房 白色映え
降りそうで 降らぬ梅雨空 四方(よも)薄墨
燕見ぬ 雀すら見ぬ 梅雨空 侘し
湿っぽき 我(あれ)が庵(いお)
猶 我(あれ)が身も
微風(そよかぜ)よ 吹き飛ばしてたも 梅雨湿気
梅雨濡(そぼ)つ 草木夫々に しじまあり
庭の草 薄青青 梅雨や慈雨
梅雨や慈雨 何時まで続く と 案ずる我(あ)
令和2年 6月19日
<14首>
露*光るる 光 光 光と 草光る
ーー*梅雨も懸けて
梅雨寒や 慌て探しぬ 上襲(うわがさね)
何という 湿気 清涼さや 失せにけり
こんな処 蛍袋白 花壇の外
藪萱草(やぶかんぞう) まだ見ぬ もう見ぬ
我(あ)焦りおり
鮮黄色 梅雨空に映えり 藪萱草
—-昔日を思い出して
三十余茎 アガパンサスの苞茎 賑賑
アガパンサス 今咲かむとす 蕾茎も
木通(あけび) 紫勝ちたる嫩葉 花の如
苗代苺 実見ずに終わりぬ 猶
苗代苺 花の如 実零るる 後(のち)の萼
下野(しもつけ)や 実ばかりとなりぬ 花腐(くた)り
沸き立ちぬ 雲の嶺や 墨絵の如
令和2年6月20日
<12首>
―-切れ葉野葡萄を眺めつつ
野葡萄や 此処にも 彼(あ)のユニークな葉姿
大小の曲線円(まどか)に切れる葉 野葡萄や
梔子(くしなし)や また 蕾葉隠れ 葉影
埋め尽くしぬ 虎杖(いたどり)の緑 野辺一変
栗の雄花 朽ちて腐(くた)りぬ 露の路上
アガパンサス 苞葉破れぬ 今や時
ーー蕾から花への
雌を奪う 凌霄花(のうぜんかずら)の橙黄花
凌霄花 毒々しきまでの 花色哉
移ろいぬ 紫陽花の花色 紅紫から緋紫へ
ペチュニア 花色とりとり 咲きおりぬ
小鳥の戯れと見しは 枯れ葉の舞い
令和2年 6月21日
<12首>
紫酢漿草(むらさきかたばみ〕小叢に咲きぬ
其処彼処(そこかしこ)
インパチェンス 緋と橙艶やか 露の空
薔薇 茎頂に蕾 紅勝ちの
篠竹若竹 伸び伸びぬ 真竹の如
雨後の筍 見ぬ間に伸びぬ 若竹に
丈屏風 透かして聞こゆ せせらぎの音
甘草や 花蝶形 萩の花似
甘草や 花房盛り いと愛らし
萱草や 鮮黄色 独り 大輪を
一日花 夕に冴え冴え 花萱草
梔子(くちなし)や 未だ一輪 白色映え
定家葛(ていかかずら) 柏木覆いぬ 我が世の梅雨
—-’我が世の春’に倣って
定家葛 巴 巴に 咲き誇りぬ
令和2年 6月22日
<22日>
杉菜叢 杉木立の如 ミニミニの
アディアンタム 杉菜(すぎな) それそれ 溝の壁
弓形(ゆみなり)に 撓う 花茎 汝(な)や誰(たれ)ぞ
犬芥(いぬからし) 藪枯(やぶからし) 藪蝨(やぶしらみ)*
なんと不粋な 命名なこと
ーー*漢字一語扱い
三野草 名にし負わぬ 可憐な花姿(かし)
ちょこなんと 塀の窪みに ペチュニア花
甦りぬ 源平小菊 梅雨晴れに
生温かき風や 梅雨晴れの 夕逍遙
アマリリス 何処でも朱緋花 朱夏の景
狗尾草(えのころぐさ) 花穂未だ直立 微風にも
胡蝶の如 胡瓜 トマトの 黄花(きか)楽し気
令和2年 6月23日
<10首>
命長し 五輪蕾の 兎菊
三弁(みひら)の白花 梅雨空の華とぞ
何(な)の花ぞ 梅雨草に似たる 花葉姿
樹陰の奥 光るる日影 梅雨晴れの
朝顔の葉に似たる葉の蔓草 誰(た)ぞ
土鳩番も 夫々啄みぬ 梅雨の路
驚きて飛び去りぬ 土鳩 シンクロナイズ
立ち酢漿草(かたばみ) 葉紅葉しつつも 立ち尽くしぬ
衝く羽根空木*(つくばねうつぎ) 白花延々 生垣の
ーー*漢字一語扱い
いつの間に 野葡萄 浅緑の蕾(らい)
令和2年 6月24日
<13首>
涼風に戦ぐ 夏蔦 我(あれ)も亦
涼風に 拭かれ 坂路 筒晴れの
涼風に 日傘畳みぬ 逍遙路
チッ チッ チョ 緑陰から囀るは 誰(た)
通る毎 聞ゆ囀り ラヴコール
木漏れ日の 揺るる坂路 梅雨晴れの
下草や 緑増したり 梅雨晴れに
下草や 濃緑の莚 木合仔細漏れ日が
三変化(へんげ) 五変化の色彩 紫陽花花
大手毬のような 白色 紫陽花花哉
匂い来ぬ 甘酸っぱきが 梔子(くちなし)や
やはり 梔子 だらりの花弁(はなびら) 生垣の
此処にも独り 生垣の隅 梔子花
令和2年 6月25日
<9首>
夏蔦や 何処まで 這い出づ 路上まで
つと舞い出づる 小影や彼(あれ) 小灰蝶(しじみちょう)
舞い交わす 胡蝶や番(つがい) 梅雨の空
何(な)の萱(かや)ぞ 綿毛飛ばしぬ 梅雨空へ
紫陽花や 鮮やか 艶やか 崖の上
紫陽花や 愈(いよよ) 円熟 円円と
凌霄花(のうぜんかずら) 浮かぶや朧ろ 梅雨の奥
彼(あ)の花色 緋 橙 黄や 何方へ
近づけば 一蔓に十三輪塊 初見なり
令和2年 6月26日
<7首>
薄墨を刷くが如くや 梅雨の四方(よも)
しっぽり しっとり 濡るる 草草 梅雨の朝
湿度高し 雨傘差すらむ 室内で
湿気籠(こ)む 蔦葉に滴るる 今朝の梅雨
蛞蝓(なめくじ)も 厭うらむや この湿気
蟻ら忙し この湿気 厭わずに
胡蝶舞いぬ 屈託無きや 梅雨空を
令和2年 6月27日
<12首>
さやさやと 吹きぬ涼風 盗人萩
さわさわと 涼風に吹かる 盗人萩
萱草(かんぞう) 真っ黄な花色 彼方にも
切れ葉野葡萄 増しにけり 蕾 蕾 蕾
真紅のミニ薔薇 塊りてそっと咲きぬ
緋橙花 檜扇(ひおうぎ)艶やか 梅雨の空
檜扇や 大きく開きて 梅雨の舞い
見つけたり 山葡萄 蕾穂 青葉蔭
あっ 黒影 烏揚羽(からすあげは)や 舞い去る
紫陽花に紋白蝶 などか似合わぬ
姫向日葵 此方(こちら)向きおり 太陽(ひ)や
彼方(あちら)
更地 再び 小さき自然や 消えにけり
柿の蘖(ひこばえ) 皆切りとられり あぁ 無情
令和2年 6月28日
<.9首>
梅雨の今 暫くの晴れ間の 訪いあり
花冠 いえ 白目の若芽 盗人萩の
蕾見たり 実紫(みむらさき)のや 梅雨の朝
浅緑 実紫の蕾色
低く延びぬ 実紫の 枝枝(ええ)四方
サルトリ茨? 山帰来(さんきらい)?
やはり サルトリ茨 棘の有り
ジグザグにうねりつ 延ぶ茎 サルトリ茨
ゆうらりゆらり サルトリ茨 巻き髭を
捲き付かれ 額紫陽花や 渋き顔
令和2年 6月29日
<9首>
つくづくと 眺めいるる 少苑 梅雨の下午(かご)
夏蔦や もう紅葉したる 猶 可笑し
枯れるるも 姫女苑* 猶 白花盛り
ーー*漢字一語扱い
身悶えるような 腐(くた)る花 梔子(くちなし)
吉無し花 腐(くた)りつも 猶 咲き続きぬ
芳香も 遣したる 梔子の垣根
っつゆ
少し浮きぬ 木道* 踏み締め 梅雨の空
—-*本格的な ’木路’に非ず
木板敷 ちょっとお洒落な
木道や 歩めば 庭石菖(にわせきしょう)の
忘れ花
梔子の花 腐(くた)るるも 猶 蕾や見ゆ
令和2年 6月30日
<16首>
しとしとと 一日中(ひとひなか) ほんに 梅雨らし
湿るる哉 我(あれ)が心 我(あれ)が身も
湿気にも 蟻ら忙し 窓辺這いぬ
絶え間無き 潺(せせらぎ)の音 梅雨の音
窓を打ち 滴る雨滴 窓拭きぬ
凌霄花(のぜんかずら) 今年や豪華 花盛り
凌霄花 もう腐(くた)し落花 侘し
艶やかな 緋橙の花 もう腐し初む
黄白色の 凌霄花や 久し振り
フェンス越え 伸ぶ凌霄花* 大樹の風姿
ーー*漢字一語扱い
凌霄花 薄紫見たは 何時の事
ーーかなり昔 とあるお庭で
薄薄紫の凌霄花を垣間見たを
思い出して 詠める
盗人萩*野となりぬ はや 秋の風情
ーー*漢字一語扱い
姫女苑 疎ら 盗人萩野中
クローバー 小さき葉叢や 野辺の隅
撫子や 生垣陰に ひっそりと
令和2年 7月1日
<8首>
此の花 名は? 夏来る度に 首傾げ
名や 未央柳(びようやなぎ) 美容柳とも
彼方此方(あちらこちら) 未央柳や 今や時
逍遙路 歩きぬ向こうに 未央柳
雄芯(おしべ)揺れ 花弁(はなびら)戦ぎぬ
未央柳
ぱぁ~と綺麗 未央柳の 黄花かな
咲きにけり アガパンサス花 淡青紫
アガパンすす十輪 美麗 咲きにけり
薄青紫 小薬玉のような花 アガパンサス
令和2年 7月2日
<10首>
姫檜扇(ひめひおうぎ)夕化粧に隠れつ 姿見せ
夕化粧 桃紅花 咲き初む 夕間暮れ(ゆうまぐれ)
思いっ切り 伸びぬ 若竹 風清(さや)か
若竹の 青緑色 鮮やかな
未央柳(びようやなぎ) もう腐り始む 時速し
路の縁(みちのふち) 野葡萄生いぬ 野辺でなく
野草や強し 蓬や猶 路の縁
木漏れ日に 白蝶草 舞いぬ 逍遙路
邂逅せり 黄花夕化粧 我(あ)が好み
一夜明け もう窄みぬ 夕化粧 哀
令和2年 7月3日
<10首>
晴れるとも 晴れぬとも分かぬ 梅雨空や
時折に 葉葉揺らしぬ 梅雨や雫
三つ葉 もう五つ葉 南瓜元気
元気一杯 手広げぬ 南瓜の子
緑映えぬ 狗尾草(えのころぐさ)
虎杖(いdたどり)も
梢掠め 飛び去るる影 彼(あ)や燕(つばめ)
継子の尻拭い なんと残酷な名付け
花見れば 白に縁紅 可憐な姿
犬芥子(いぬからし) 今季や大振り 葉も花も
俯(うつむ)きぬ 犬芥子の白花 何(な)や想う
令和2年 7月4日
<17首>
忙しく 行き交う 蟻ら 行列を
梅雨冷えや 臥具(がぐ)弄(まさぐ)り
引き寄す真夜
何もかも 湿り湿りて いと厭まし
梅雨滴(つゆしずく) 飛ばす風あり もっと吹け
梅雨滴 数える窓辺や 託(かこ)ち顔
亦一寸 伸びたり 野草 梅雨最中
雀飛び来 餌(えさ)探しや 梅雨最中
蟻も猶 忙し気かな 梅雨最中
我(あれ) 独り? 梅雨最中の 託ち言
梅雨と晴れ間 一喜一憂の 我(あれ)のあり
つと訪れり 梅雨の晴れ間の 淡青色
ーー 夕方に 急に晴れ間が
梅雨の晴れ間色の空や 眩しき
これ程に 懐かしきとは 淡藍のそら
雲間から 覗きぬ淡藍 懐かしき
姫女苑も 揺るる優し気 梅雨の晴れ間
藪蝨(やぶしらみ) 白花晴れやか 梅雨晴れ間
草草 悉皆 嫋やか 梅雨晴れ間
物皆泰然 揺蕩(たゆた)うは 我(あれ)のみか
令和2年 7月5日
<21首>
梅雨曇り 梅雨に蛞蝓(なめくじ) 見ぬや如何
やはり 出会えり 蛞蝓や 久し振り
立ち枯れの 草茎哀れ 小夜梅雨冷え
雪ノ下 未だ咲き残りぬ 石段下
ベゴニアの 花籠仕立て 淡紅の
折鶴蘭(おりづるらん) 蔓や横走 彼方此方
折り鶴蘭 蔓垂れ小苗(こなえ)も 折り鶴の如
折り鶴蘭 花と見しや 小苗なり
折り鶴蘭 六弁(むひら)段々 蔓に咲きぬ
花酢漿草 紅酢漿草となるも 花桃花色
ーー どういう訳か 年毎に 矮小化
とうとう 二分の一に
擁壁や 鼬萩(いたちはぎ)の夏野 となりぬ
鼬萩 大揺れ小揺れ 夏夕風
擁壁覆いぬ 鼬萩 戦ぐ夏夕風
露草や 茎伸び延びぬ 青花まだ
バーベナ生いぬ 路の縁(ふち)でも やはり美女
―-バーベナの和名は 美女桜
蛍袋 暗紅も白も 咲き続きぬ
紫蘭)しらん)もうとなりぬ 知らん間に
梅雨茸(つゆたけ)や 淡橙勝ちたる 妖しの色
白黒の意も匠 梅雨茸 面白し
雛を見ぬ 燕の空き巣や 空(むな)しき哉
燕飛ぶ 高く飛びぬ 巣残しつ
令和2年 7月6日
<11首>
木槿(むくげ) 三輪咲きぬ 紅桃色
朱夏近し 木槿花三輪も 咲けば
夜半も 日中も しとしと ほんに 梅雨
実紫(みむらさき) 小花散らしぬ 薄紫の
この葛(かずら) ゆらゆら彼方此方 蔓伸ばしぬ
あぁ この臭い 早乙女花(さおとめかずら)*の
彼(あ)の臭い
ーー* 早乙女花の別称 屁
懐かしくも 疎ましき匂い 早乙女花の
木槿 もう 凋み初みぬ 一日花
一輪や 咲き残りぬ 梅雨の夕
淡紅の花芽 見ゆ 木槿 向こう側
木槿の花芽 明日(あす)朝を 待つらむや
令和2年 7月7日
<8首>
高く低く 細流(せせらぎ)絶えぬ 梅雨の小夜
彼(あ)の細流 大雨の知らせと ならぬことを
明けぬれど せせらぎ続きぬ 梅雨深し
今朝四輪 木槿や笑顔 梅雨の今朝
木槿花 何と聞いたか 彼(あ)のせせらぎ
なんとまあ 梅雨らしき梅雨 今日(けふ)一日(ひとひ)
背に激痛 梅雨冷えや 我(あ)が身 襲いぬ
七夕祭り 遠くなりぬ 今はもう
令和2年 7月8日
<16首>
野草繁し 緑のジャングル 蟻ん子には
梅雨や 慈雨 野草愈よ 繁し哉
紋白蝶 ミント草叢 縫い舞いぬ
もしかして 野薊のロゼット 此んな処
紫陽花枯れり 嘗(かつ)ての栄華 今何処
アガパンサス花 一斉放ちぬ 青紫色
30余輪 夫々美し アガパンサス
潺(せせらぎ)や 最早 轟音 谷間は
ーー梅雨が大雨になりて
マリゴールド 黄色一色 梅雨空映え
今年もまた 苗代苺の朱美 見ぬとは
苗代苺 花と見紛う 萼も見ぬ
あな 珍し 蝿が手を擦る 脚を擦る
陽射しぬ 影法師と戯るる 梅雨晴れ間
たんぽぽや 倒れつも黄花 健気かな
羽広げり 揚羽や見せり 黒白意匠
黒に白 横縞日本 鮮やか 揚羽の羽
令和2年 7月9日
<11首>
濃霧籠みぬ 裏山朧ろ 梅雨の朝
我(あれ)が庭 草草沈みぬ 乳白色
明かりけり 梅雨昼下がり 胡蝶舞いぬ
小灰蝶(しじみちょう) ミントの葉陰 雨宿り
猛猛(たけだけ)しき 濃霧も穏やか 梅雨晴れ間
忙しくも 蟻ら 挨拶 忘れずに
群がりぬ ずらり蟻の輪 蜜小皿
オリゴ糖 小皿に入れて アントテーブル*
ーー*バードテーブルに倣って
動かぬ蟻 仲間寄り添い 心配気
如何にあらむ 我(あ)も 心配 覗き込みぬ
一休みらし 働き蟻にも 必要らし
令和2年 7月10日
<11首>
木槿 十輪 梅雨空 何のその
梅雨忙し 朝昼夜と 衣替え
ーー朝 露寒(つゆさむ)
昼 夏日 夜 涼風
傘差したり 窄めたり 梅雨路歩めば
紫陽花花 しどけなし風姿 風雅なし
露草や 目の覚めるよう 青 一輪
歩み行けば もう一輪 露草花
金蚉(かなぶん)や 銀緑色映え 草叢に
早乙女花 覆い尽くすか 空木の垣根
屁糞葛 花見ぬば 屁糞 あの臭い
ーー 花は可憐 可愛い 内紅の
立ち酢漿草(かたばみ)黄花一輪 聳えおりぬ
ミント叢 飛蝗(ばった)飛び込みぬ 梅雨晴れに
令和2年 7月11日
<8首>
雨音を 聞かぬ夜の朝(あした)の清々し
と思えど 聞こゆ 猶 せせらぎの音
なんとま 梅雨らしき梅雨 室内湿度 88%
瑞瑞みずみず)し 水水し 梅雨の草草
茫茫のミント 小花 小花 小花
淡紫が白へ ミントの小花 移ろい笑む
桃花色 残りぬ一輪 皐月躑躅(さつきつつじ)
夏蔦や 路へ這い出づ 轢かれぬように
令和2年 7月12日
<10首>
インパチェンス 出倍胡瓜 苦瓜 葉では分からぬ
紫 白 桔梗咲きぬ 秋まだまだに
紅薔薇 一輪 凛然咲きぬ 梅雨空に
篠竹 若竹 真っ直ぐ 真直ぐ伸ぶ
せせらぎ 通す 若竹 出梅の兆し
兎菊 此処は 野の如 黄花揺れ
燕(つばくらめ) 他かう飛びぬ 無音の梅雨空
夕烏も 一斉も無く 飛び去りぬ
烏揚羽 空木の白花を 次から次
令和2年 7月13日
<10首>
我(あれ)が庭 緑歌かな 野草の庭
野草らや 押し合い圧し合い 伸び放題
南瓜 葉 平に広げ 梅雨受けぬ
南瓜の お盆に出来そうな 大きな葉
南瓜葉茎 一体何処まで 伸ぶのやら
屁糞葛 花咲けば早乙女花
ーー屁糞葛の別称、早乙女花
花見れば 清楚可憐な 屁糞葛
実紫 小花次々 薄紫の
令和2年 7月14日
<10首>
梅雨濃霧 山荘ムード 我(あれ)が庵(いお)
濃霧籠(こ)む 梅雨空や空恐ろし
ーー大雨の予報あり
滴り落つ 窓の模様や 梅雨模様
梅雨鬱陶し 此の世もとは 思わねど
打ち続きぬ せせらぎ不気味 大雨警報
非難準備 擦る間に 四方鎮静せり
梅雨深し 我(あれ)腐(くた)るるも 草生生
大雨濃霧 過ぎれば 早や 梅雨晴れ間
早や 胡蝶舞いぬ なんという 静穏さ
草木無音 唯 涼風に戦ぎぬ
今日(けふ)の空 青空 白雲 朱夏の空
令和2年 7月15日
<8首>
出梅(つゆあけ)かと 浮かれるような 碧空哉
四方 静穏 大雨濃霧 一過すれば
我(あ)が庭や 光長閑な 春野の如
吹く風も 優し 狗尾草(えのころぐさ)戦ぐ
驚きぬ 狗尾草* 大雨に繁るとは
--*漢字一字扱い(3語)
ボリューム増せり 我(あれ)が庭の緑
碧空に 木槿花(きんか)窄みぬ 未だ真昼
ーー大雨中咲き続き 笑顔ばかりが
令和2年 7月16日
<11首>
出梅 (つゆあけ)近し 今日(けふ)碧そら澄藁りぬ
碧と白 共映えの空 出梅か
草木閑 一休みあり 大雨一過
一休み? 木槿の花 や 唯 三輪
大雨に 槿花(きんか)咲き続きぬ 二十余輪
蟻も亦 仲間少なく はい回る
紅差しぬ 紫陽花の 枯れ花弁(かべn)
一趣蟻 これからや 亦の趣き
出梅(つゆあけ)や 雲間に映えぬ 茜色
茜色 広がり行きぬ 夕焼け空
久し振り 夕焼け空の 眩しきは
令和2年 7月17日
<10首>
紅指しぬ 姫蔓蕎麦の葉 華となりぬ
トリミング 空木すっきり 小寂しき
茫茫の衝羽根空木(つくばねうつぎ) もう懐かしき
バッサリと 藪枯らしも 早乙女花も
枯れ紫陽花 紅差したり 一趣ぁり
何時出せり 信濃撫子 何方から
彼(か)の果実 紫蘭の果ての 実姿なり
犬鬼灯 小さきが独り 路の縁(へり)
三葉残し 蘖(ひこばえ)哀れ 切り取られぬ
令和2年 7月18日
<11首>
薄墨の空 続きぬ まだ 梅雨最中
曇天に 四方沈まれり 梅雨の景
姫向日葵 全方向に 笑顔向けぬ
入梅も 出梅にも 姫向日葵 笑顔哉
外壁を這い上がる木蔦 亦 一寸(葯3センチ)
雨上がり毎 木蔦一寸 伸を美優
大雨も 木蔦には やはり 慈雨ら
兎菊 倒るるも猶 咲続きぬ
光輝 光輝 草木悉皆 出梅(つゆあけ)か
さんさんと 輝ききぬ 窓辺や 朱夏の景
あっ 彼’あれ)や 鱗雲や 未だ梅雨明けぬに
令和2年 7月19日
<9首>
今日(けふ)青空 昨日(きそ)も青空 出梅らし
蒲公英(タンポポ)のロゼット 点点 夏の景
紫酢漿草 溢るる如 花鉢から
夕化粧 ’今晩は’には まだ暫く
まだ昼下が もう咲きぬや 夕化粧
君が代蘭 実生え見つけり 更地縁(へり)
ーー 数年前 近くの大株が伐採されり
強し 逞し 君が代蘭 フレー フレー
朝顔の もう咲きぬ路 夕逍遙
見上げれば 燕三十余羽 電線に
飛び行くも 飛び帰ぬも 朱夏の夕空
令和2年 7月20日
<11首>
実紫 小花散らしぬ もう出梅
淡紫に 移りぬ小花 美しき
瑠璃色の花穂 四方八方 瑠璃虎の尾
虎の尾とは見難し花穂 瑠璃虎の尾
大木な葉 七洋従え 南瓜蔓 何処まで
蔓二本 アンテナの如 四方(よも)眺め
南瓜の葉 緑のトレイ 誰(た)が為に
裏山燃ゆ いえ 夕焼けの 大パノラマ
夕焼け映えぬ 裏山 黒影の景
燃え続きおりぬ 梅雨明けの茜空
見惚れおりぬ 梅雨明けの 夕焼け空
令和2年 7月21日
<13首>
凌霄花(のうぜんかずら) 淡橙黄の大輪 垂る
逍遙路
凌霄花* 花房 振れ 揺れぬ 夕風に
ーー*漢字一語扱い(3語)
長く垂る 花房 円錐 凌霄花の
落椿の如 凌霄花の花冠 逍遙路
舞い来たり 淡橙黄の花冠 黒揚羽
黒に白斑 揚羽 羽広げぬ 出梅(つゆあけ)空
真夏日となりにける哉 今日(けふ)の熱暑
真夏日も 団扇の無くば 凌も来ぬ
--エアコンの故障なれば
微風(そよかぜ)の通じて 夕暮の涼しさ哉
夏は夕 あの暑気 湿気の過ぎ去れば
金蚉(かなぶん)飛び来 止まる今宵 夕涼み
蝉の声 一声も聞かぬ 夕涼み
令和2年 7月22日
<14首>
咲き乱れぬ 槿花(きんか) 涼し気 笑顔あり
涼風に 庭の草草 漣(さざなみ)を
涼風に 草木ご機嫌 我(あれ)も亦
定家葛(ていかかずら)猶 咲き続きぬ 小振りでも
にっこりと 独り咲き残りぬ マーガレット
不意に飛び去る 蜻蛉や小鳥や 朱夏逍遙
やっぱり 蜻蛉 見定む間もなく 飛び去りぬ
彼(あ)の蜻蛉 昔よく見た 灰青色
出会えたり 今は想い出の 蜻蛉に
白百合や 茎頭に 津踏み 三つ 二つ
溝底に生う 白百合 高砂*や鉄砲や*
ーー*高砂百合 鉄砲百合
何処z8いずこ)でも 処構わす 咲きぬ百合
白百合 今年見たり多く 蕾とは言え
多く咲きぬ 明くる年こそ 恐ろしき
ーー白百合の数多咲きたる翌年
阪神淡路大震災
令和2年 7月23日
<11首>
未央柳(びようやなぎ)枯れ紫陽花の奥
そっと咲きぬ
黄 黄 黄色 未央柳花 飽きるほど
倦む程に 咲き誇るるは 一時の栄華
彼(か)の花(か)の名は?淡紫 円錐の花房の
花房可憐 二・三輪好し 二・三十輪も
ほんに沢山 もう咲終わりぬと 思い氏が
一か月余 咲続きぬとは 梅雨時に
鼬萩(いたちはぎ) 刈り取られ消えり あぁ 無念
鼬萩 擁壁に繁茂 誰(た)が為に 故に
種を撒く 刈り取る どちらも 人の業
共に生う白百合まで 同じ運命とは あぁ
令和2年 7月24日
<10首>
まぁ 美事 槿花(きんか) 十七輪 夏日
狗尾草 揺れ 槿花(きんか)揺れる 夏日
何時の間に 藪蘭の花穂 槿の木下
淡紫の花穂 伸び且つ垂(しだ)る 藪蘭の
ひらひらり 紋黄蝶舞う 夏草縫い
雲行き妖し 紋黄蝶 何処か 雲隠れ
ーー’葉隠れ’ かも
此度(こたび)の雨 驟雨(しゅうう)それとも戻り梅雨
四方(よも)静か 唯 草草打ちぬ 雨音のみ
此の匂いは? 通り雨の後 匂い立ちぬ
通り雨 過ぐれば 仄か 陽光あり
令和2年 7月25日
<9首>
昨夜(きそ)の大雨 轟く雷鳴 もう梅雨明け
青薄 大雨に打たれ 垂(しだ) 垂れ
静かさや 大雨の後の 青芒
ーー ’嵐の前の静かさ’を捩って
南天の 白花映えり 雨上がり
南天の葉 透かせば 未の青き小さきが
紅暈し 南天の青き実 最早や
葉南瓜 大皿の如が 九毎に
二手(ふたて)に分かれぬ 南瓜の蔓
何方(いずかた)へ
夏草越え 延ぶ行く先や 槿木下
令和2年 7月26日
<14首>
久し振り 蛞蝓(なめくじ)の幼な 一人旅?
蟻ら集まりぬ 蜜の小皿に 溺れそう
姿見ぬ 幼な蛞蝓 何方(いずかた)へ
蟻ら皆 何事もなさ気 忙し気
切れ葉野葡萄 溝一面に 小葡萄園
花ばかり見ぬ 実も見たし 切れ葉野葡萄
狗尾草(えのころぐさ) ふわふわの花穂
我(あれ)が庭
夕べの窓辺 蛞蝓(なめくじ)現る 倍の姿
もう一匹 蛞蝓二匹 中と小
二匹は 姉妹? 兄弟? 仲良しの
のたり のたり 蛞蝓二匹 小皿の縁
浜木綿(はまゆう)の咲く 逍遙路 夏日の香
浜辺に咲く 浜木綿に出会う 山辺あり
令和2年 7月27日
<5首>
今朝はもう どうしたことか 槿の花
唯独り 咲きおりぬ 槿花(きんか)
小寂し気
槿木も 一休みらし 花一輪しか 見ぬ
藪蘭の 花穂退色 哀れ見ゆ
実紫 薄紫の花盛り 梅雨知らず
令和2年 7月28日
<16首>
今朝 二匹 蛞蝓(なめくじら)の姿見たり
連れ去られたか 巣へ 幼な蛞蝓(なめくじ)
明け遣らぬ 梅雨の一日(ひとひ)に 閉じ籠めらるる
今日(けふ)こそはと 待てど 出梅の兆しなし
微風に くくもる湿気 出梅や何時
微風も 湿気遣しぬ 出梅前
門を出で 即 戻り来ぬ 梅雨怨めし
我’あれ)が庭 夏草野草の 庭と生りぬ
盗人萩 庭の夏草 背比べ
盗人萩 伸び伸び生いぬ 三尺余
雨上がり じっとり 濡れおり 青薄
青薄 垂(しだ)れ 垂れつ 生い貫きぬ
犬鬼灯(いぬほうずき) 白花の小さきが
我(あれ)が庭
三年振り 姿見せたり 犬鬼灯
三年間 如何にあり屋や こと問わむ
犬鬼灯 何処に潜みおりしかや
令和2年 7月29日
<7首>
出梅 待てぬか 槿花 白一輪
眺めおりぬ 木槿の白花 梅雨空を
とんと見ぬ 底紅の槿花 君愛でぬ
西方に 薄ら青空 蜻蛉飛びぬ
青空広がりぬ 此度こそ 梅雨明けか
蝶二匹 揚羽と紋白 出梅の舞い
久し振り 幼な蛞蝓(なめくじ) 一人旅
令和2年 7月30日
<11首>
真っ黄色 大きな花冠 南瓜よ
蔓南瓜 伸び着く先や 雪柳
百日紅(さるすべり) 桃花色花 枝枝(ええ)の先
木芙蓉 蕾 彼方此方(あちこち) 葉影にも
珠簾 白色一輪 花壇隅
夕化粧 花冠愈々 朱夏の夕
苞に包まれ 韮の花 咲くを待ちぬ
俯き加減 何時もの風情 犬鬼灯
金平糖のような 可愛い花頭
ーー名こそ許すまじ ’継子の尻拭い’
蜂飛び来 密の小皿 蟻集まるる
微風に吹かれ 微睡む 朱夏の下午(かご)
涼風の 吹き抜ける朱夏 また 高湿度
令和2年 7月31日
<12首>
葉蔭から そっと南瓜 梅雨空を
――眺めおりぬ
伸びのび伸びぬ 庭の千草や 何処まで
千草 丈伸び伸びぬ 協奏曲
若芽抱きぬ 盗人萩 伸び行きぬ
背高泡立草*(せいたかあわだちそう)
ーー*漢字一語扱い
背丈高く我(あ)越えぬ 一尺余
おはようと 窓から覗きぬ 背高泡立草
あの青空 梅雨明けの空と ならむことを
又 飛び来 蜂 小皿*に 蟻ら知らん顔
--蜜入れた小皿 アント・テーブル
バード・テーブルならぬ
争うでもなく 睦むでもなく 蟻と蜂
令和2年 8月1日
<5首>
青き空 出梅の空 晴れ晴れし
白雲一片(ひとひら) ふんわり 出梅の空
空高く 燕飛び交いぬ 出梅哉
出梅や 草木晴れやか 我(あれ)も亦
いざ行かむ 梅雨明けの空 夕逍遙
ーー結局、 行かず
令和2年 8月2日
<13首>
むくむくむく 朱夏の夕空 雲むくむく
夏の空 広く広く 果てし無く
燕一羽 二羽 纏めて 百余羽 電線に
出梅の空 燕ら 暫し 羽干し*らし
ーー* ’甲羅干し’に倣って
軒の下 雀の巣見ぬ 如何なること
皆立派 成長の燕 雛や何処
裏山か 雛燕の巣 何方(いずかた)に
カナ カナ カナ 細くき聞こゆる 夕逍遙
驚きぬ 出梅にもう 蜩(ひぐらし)とは
ーー蜩は 晩夏の朝と夕に鳴く蝉の筈
突然 蜻蛉 暫しそのまま 青薄上
つくづくと 蜻蛉眺めり 久し振り
やはり 灰青色 昔見たと同じ
令和2年 8月3日
<21首>
ーー 我(あ)が庭のどんどん伸び行きぬ
南瓜の実生えを眺めつつ
葉蔭から 解き出づ 蕾 咲くは何時
白木槿 三輪向こう向き 小寂しき
降りそうで 降らぬ 雨雲 梅雨の戻り?
あな嬉し 青空見たり やはり出梅
なんとせむ 梅雨明けの この気怠さよ
羽広げぬ 揚羽の舞いを 梅雨明けの空
小灰蝶(しじみちょう) 愈よ 小振りに
朱夏仕様
高く低く 太く細く 藪蘭の花姿
淡紫映え 藪蘭の花穂 我(あれ)が庭
豊満な風情 藪蘭 艶めかし
頭頂に 蟻ら登り来 背高泡立草*
--*漢字一語扱い
何故蟻ら 花も蜜も まだ無きに
1cm余 細長の 幼虫 背高泡立草に
ひょっとして 天道虫のや 珍しき
万両の小花鈴生り 梅雨明け空
万両小花 小さきが笑顔 笑顔哉
小灰蝶(しじみちょう)も ひらひらふらふら 出梅空
姫柘榴 赤橙花三つ 見え隠れ
白蝶草 すらり涼し気 朱夏の夕
微風(そよかぜ)に 微か戦ぎぬ 白蝶草
白に紅 混ざりぬ花色 白蝶草
令和2年 8月4日
<10首>
今朝はまた 鱗雲かな 秋景色
四方(よも)はまだ 朱夏暑気の 今朝なれど
出梅は もう初秋とは 此は如何に
野芥子 今 鬼の如 葉 鮫の歯の如
白百合や 此処にも独り ぽつり生い
蕾まだ? いえ もう長く 垂るるも有り
細く華奢 白百合 朱夏の 暑気には
ーー 如何ばかり
姫女苑 存え 早乙女花*に 纏われぬ
ーー*漢字一語扱い 〔さおとめばな〕
早乙女花 蔓 当て所(あてど) 有りや無しや
姫女苑 茎 曲げられぬ 早乙女花に
令和2年 8月5日
<7首>
朝夕の涼風 もう初秋ぞ 想わるる
出梅に もう秋の気配 此は如何に
梅雨明け十日 朱夏の暑さよ と君は言い
鬱続きぬ 鬱 鬱 鬱 出梅の空
ーー気候不順 ’涼暑’の差 甚だし
梅の枝 貫き這い出ず 蔓草 誰(た)ぞ
花芽(かが)花芽 花芽
白きが上向き 朱夏の空
彼(か)の蔓草 花十字形 仙人草か
令和2年 8月6日
<13首>
涼風に くしゃみ 三つも 朱夏の上午
上午 初秋 下午や 暑熱に茹だる 朱夏
蝉時雨 降り頻るる 炎暑かな
あらっ 枯れ葉 ドアに貼り付きぬ 朱夏の朝
蝶 いえ 蛾 枯れ葉意匠の 渋好み
翅(はね)の幅 約一寸 枯れ葉色の蛾
翅の縁 ぎざぎざひらひら 枯れ葉仕様
然かれども ドアや白色 蛾の留まるる
辺りもや 夏蔦 木蔦 皆緑
保護色とは 如何なこと と 蛾に問うらむや
するするる 窓辺走るる 蛍似 誰(た)ぞ
夕暮れに 光るを 彼(か)の虫 未だ見ぬ
一匹と見しや もう一匹 ランデ・ヴー*?
ーー* 5>-vous
令和2年 8月7日
<16首>
今朝 南瓜二輪 並んで笑顔
もう一輪 南瓜咲きぬ 葉隠れに
淡紅も 白も 槿花や不死身に 咲き
槿花 まだ咲継ぬ 炎天
ミンミンミン スタッカ-トの声 ミンミン蝉の
縷紅草(るこうそう) 同じフェンスに 何年振り?
夏薔薇*(なつそうび) 衛士(えいし)の如 門扉脇
ーー*冬薔薇に倣って
新塗りの白壁 夏蔦 もう青青
白百合 やっと 蕾垂れおりぬ 用水路
百日紅(さるすべり) 紫勝ち樽が 山野辺に
紫君子蘭 三日見ぬ間 実となりぬ
此処にも一輪 白百合独り 夕逍遙
広いたり 三つ 毬栗の まだ小さきを
見渡せば もう枯れ色おの毬(いが) 生垣下
少しずつ 咲き初む 夕べ 夕化粧
夕化粧 白に紅絞り 夕暮の精
令和2年 8月8日
<8首>
定め無く 戦ぐ草草 秋立ちぬ
草草戦ぎぬ 風の涼しきにぞ 驚きぬ
狗尾草(えのころぐさ) 伸伸 揺揺 風に戦ぎぬ
縦横に 飛び行く蜻蛉(とんぼ) 初秋浮かれ?
如何なこと 萎れるが 三輪 南瓜の今朝
大犬蓼(おおいぬたで) 花茎すらりの
初秋の景
白槿花 回りて見れば 十余輪
十余輪の 花やかさや 初冬の景
此方側 二・三輪ばかりの 小さき秋
令和2年 8月9日
<13首>
ぶ~ん ぶん あっ嫌!虻(あぶ)は 朱夏最中
彼(あれ) 蜻蛉(とんぼ) 姿形や 実に同じ
翅 震わせ 音立てる蜻蛉 初見なり
蝉時雨 ばかりなり 朱夏に聞くは
蝉時雨 と 聞きしは 我(あ)が耳から
枯れて 黄色の花色 南瓜の下葉
紋基調 素通り したり 同色なのに
南瓜花(なんきんか) 雄花ばかり 如何なりか
白雲の棚引きぬ 青空 爽やかな
ーーもう 立秋過ぎたる日
陽陰りぬ 蝉時雨静か 夕静か
令和2年 8月11日
<12首>
白百合や 今朝咲いたのか 路の縁
佇みおり 白百合独り 野草最中
此処にも ひっそり 白百合 か細気な
裏山如何 白百合 咲くや 乱るるや
高く飛び 餌(え)追うや 燕 曇天にも
出会えたり 小さき懸崖花 仙人草の
薄紅の 芙蓉 一輪 小さけれど
艶やかに咲く 芙蓉 一輪なれど
ぱっと艶やか 此の世を愛でる そんな顔
時折の夕風 夏草のさんざめき
涼しきかな 日傾けば 初秋の気配
風涼し 真昼の熱気 今何処(いずこ)
令和2年 8月12日
<16首>
南瓜下葉 枯れぬ 葉色 黄の花色
黄花と見紛うや 紋黄蝶 舞い来たり
南瓜に 米の磨ぎ汁 雌花望み
--我(あ)が庭に実生いの
雄花ばかり
満開かな 白花芙蓉 大輪多数
蜜ばかり 淡紅芙蓉も 咲き初みぬ
ようように 出会えり 槿花(きんか) 底紅の
底紅の 白花槿(むくげ) 懐かしき
蔓伸ばしぬ朝顔 水色 次々と
朝顔花 空色小さき 小さき空
夕化粧 もう窄みたるも 初(そ)むも 今朝
兎菊 猶咲き継ぬ 晩秋哉
千日紅 小さきポンポン/pompom ぽんぽんと
高く低く ポンポンの花茎 可愛い晩夏
右左 狗尾草(えのころぐさ)や 風吹けば
アディアンダム 此んな処に 排水孔
令和2年 8月13日
晩夏は朝 涼風の 吹き渡るる
裏山を 覆い立つ白雲 秋立ちぬ
むっと来る 夕凪の暑気 まだ朱夏の気
黄昏や 涼風遣しぬ もう初秋
仙人草の 白花浮かびぬ 晩夏黄昏
夕焼けや 仙人草の 晩夏映え
向こう側 如何なりや 仙人草の
狗尾草(えのころぐさ) 枯れて
一花穂(ひとかほ) 白茶色
藪蘭 十花穂(とかほ) 奥に 三花穂(みかほ)
木下蔭(こしたかげ)
緑中(みどりなか) 独り 枯れおり 狗尾草
何時までぞ 熱帯夜の続きぬ 晩夏
令和2年 8月 14日
<14首>
芙蓉窄み 夕化粧 開き初みぬ
思わぬ処 白百合ひっそり 佇みぬ
彼方此方(あちら こちら) 白百合 神出鬼没
聳え立ちぬ 白百合 花芽 五つ垂れ
向日葵は 緋おちたれば 此方(こちら)向き
見下がりおりぬ 向日葵 千日紅を
凌霄花(のうぜんかずら)まだ 咲き続きぬ 赤橙色
百日紅 花頭枝 八方 突き出しぬ
毬栗(いがぐり) 落ち枯れ 累々(るいるい)
路の縁(へり)
淡紅の 芙蓉花 爛漫 晩夏の空
紅芙蓉 萎みて 凋みて 紅毬に
浅緑 梔子(くちなし)の実 艶のあり
紅絞り 白も紅も 夕化粧花
同じ株 三色の花冠 夕化粧
珠簾 前栽(せんざい)の縁飾り 晩夏の景
令和2年 8月15日
<8首>
まあっ 綺麗 でも雄花ばかり 今朝の南瓜
一朝(ひとあさ)に 南瓜三輪 豪華咲き
萎れ 且つ 甦るる葉 南瓜の
黄小花 段々連なりぬ 秋の麒麟草*
ーー*漢字一語扱い(3語)
秋の麒麟草 小苑の庭に 小さな秋を 我(あれ)が庭s
秋の麒麟草 今季は独り と思わず問い
昨秋は 倦むほどの 花盛り 我(あれ)が庭
大犬蓼 清楚な風情 秋や呼ぶ
令和2年 8月16日
<8首>
樹*を覆う 仙人草や 今花盛り
--*こしんまりと 剪定されぬ 梅の樹を
仙人草花 十文字 十文字に 樹を覆う
垂れ下がるる 蔓一条にも 白花盛り
真上から 見ま欲しき 十文字白花
猛暑にも 仙人草花 日影映え
近づけば 繊細なフリル 花百日紅(さるすべり)
映える青空 百日紅の花 朱夏のこんとらすと
茹だるような 槿も 芙蓉も 残暑哉
令和2年 8月17日
<9首>
日影にも 日陰にも 咲き木槿(むくげ)哉
夏草や 処処(ところどころ)に 紅葉見ゆ
ーー オリゴ糖の小皿を窓際に
這い回りぬ 蟻 餌探すや 蜜や此処
あっと言う間 蜜に群がる蟻 300余匹
蜜の回り 黒山の蟻集り(ありだかり) ばかり
ーー* ’黒山の人集(だか)り’に倣って
それにしても あの働き蟻振り 驚嘆
蟻 独り 何処からか あの活力
ゴキブリは 引っ繰り返って 帰らぬ虫*に
ーー* ’帰らぬ人’
彼の虫 熱暑には 弱いよう
令和2年 8月18日
<10首>
白き胸 青き空飛びぬ 燕(つばくらめ)
強き哉 槿花(きんか) 猶 咲き続き
炎暑哉 然(さ)しもの槿花 げんなりと
目眩(めくる)く 熱暑 蟻ら 物ともせぬ
夏草も 枯れ行きぬ 劇暑というに
早乙女花(さおとめばな)* 可憐な花冠
窄めおりぬ
ーー* 屁糞葛の別名
雀来ぬ 何処(いずこ)へ避暑に 行ったやら
木陰下 藪蘭の花穂 避暑の情
風時折 大犬蓼(おおいぬたで)* の花穂
仄か揺れ
ーー* 花の名の漢字 3語扱い
大犬蓼 花穂の か細き 佇まい
夕涼み と洒落るも出来ぬ この炎暑
令和 2年 8月19日
<8首>
漂いぬ白雲 今朝 初秋の興(きょう)
打ち続きぬ 濃厚な陽射し 晩夏にも
見渡せば 何処も同じ 酷暑の夕
萎れ萎れぬ 夏草萎るる 晩夏の庭
夏草叢 等しく同じく 萎れ
ぱたっと止まりぬ 朝の蝉時雨
一瞬の涼風 一瞬の秋
どっぷりと暮れれば 山里 初秋の気
令和2年8月20日
<13日>
槿花(きんか)白 愈よ 白色 朝日映え
今朝も亦 雄花ばかりの 南瓜かな
白花茎(しろかけい) すらりすっきり 水引*の
ーー*タデ科の多年草
紅何処(いずこ) 見ぬは 名に負わぬ水引*の
ーー* 贈り物の飾り紐としての水引
にも 草花のにも 紅白あり
紅と白 混じり生いもあり 御所水引きた
彼方此方(あちこち)に 離れ生いも 紅白水引
離れ生いも また をかし 紅の白水引
蕾と花 次々と 紫式部
紫に 移ろう白花 紫式部
金水引* 独りも晴れやか 黄(/気)や 放ち
ーー* バラ科の多年生 花穂が黄色の小花の集まり
想い出す 木蔭に佇む 金水引
瑠璃色に 暫く見ぬ間に 実野葡萄
浅緑 水色 碧 瑠璃 目眩(めくるめ)く
実野葡萄
令和2年 8月21日
<13首>
ーー 昨日(きそ)の夕空を思い出しつ
ふと見れば 淡藍の空 茜雲
棚引きぬ 晩夏の夕空 茜雲
茜雲 愈よ 染め行きぬ 晩夏の夕空
夕焼け 小焼け 大焼けもあり 晩夏の夕空
茜の雫 此処彼処(ここかしこ) 我(あ)が庭の
ーー 昨夜(きそ)を思い出しつ
俄か雨 風も 晩夏真夜に 有り
一陣の風 雨も告げるや 夏の末
晩夏の熱暑 破る雷鳴 突然に
瞬く間 四方(よも)雷(いかづち)と稲光
カラ カラ カンラ 雷神の 笑い声
四方(よも)爆(は)ぜぬ 落雷やと 我(あれ)が庭
然(さ)にあらす 唯 雷鳴の激しさよ
厳しき哉 朱夏の末告ぐ 雷(いかづち)は
令和2年 8月 22日
<12首>
莢やかな なんと爽やかな 初秋(あき)の空
驟雨あり 暫し躊躇の 沈黙あり
驟雨過ぎぬ 夕涼みと洒落 夕逍遙
蔓桔梗 長し短し 蔓 垂るる
白壁に 垂るる 蔓桔梗 十余条
浅緑 野葡萄の 小珠(実) ちんまりと
倒れるも まだ花も綿毛も
姫昔蓬(ひめむかしよもぎ)
白蝶草 逸出遠出 何処までか
底紅見せり 花木槿(はなむくげ)に 夕日影
白百合 四輪 東西南北 四方咲き
杉菜生う ミニ杉木立の如 夏の末
狗尾草(えのころぐさ)叢 風に戦ぎぬ 初秋野に
令和2年 8月23日
<10首>
今朝 夏蝶 秋蝶に 涼しきに
薄縫い 舞いぬ 胡蝶や 涼し気に
花芙蓉 喜色満面 薄紅の
花芙蓉 知るや知らずや 一日花を
なんてこと 桔梗萎れり 初秋というに
白百合二輪 二人静(ふたりしずか)に 寄り添いぬ
小さくも 咲きぬ 白百合 いと愛し
狗尾草 枯れ行く花穂や 白茶色
白茶の花穂 風に戦ぐも 猶 をかし
うおお~ん 犬の遠吠え 初秋の夕べ
令和2年 8月24日
ポロッ ポロ ポロォ~ 山鳩の声 初秋の声
残暑にも いといと小さき 蝶舞い来
大犬蓼(おおいぬたで) 花穂か細きが 危ぶまれ
溝に生う 犬蓼(いぬたで)の花穂 まだ 一輪
源平小菊 春先は 哀れ 枯れおりし
外壁に 半月の薬玉の如 源平小菊
昼下がり まだまだ酷暑 陽射し酷く(/濃く)
秋の声 聞かまほし 熱暑に飽(あ)きぬ
令和2年 8月25日
<16首>
上下に 左右に 笑顔笑顔の 淡紅芙蓉花(か)
石垣に 渋紅の小珠 枯芙蓉花
芙蓉花(ふようはな) 小珠に 窄みぬ またの華
源平小菊 白小花一面 緑葉上
兎菊 とうとう枯れぬ 初秋の否
炎天下 艶やかに咲き続きしが
秋来ぬに 枯るるとは 何(な)の定め
兎菊 もう渋茶の 実となりぬ
夏蔦も 衰え初む 初明(はつはき)かな
椿の実 独り 外塀見越しおり
バサッ バサ 飛蝗(ばった)飛び込みぬ
我(あ)が居室へ
飛蝗まさか 間違えたのか 草叢と
ひょっとして 年少飛蝗の 大冒険
桃 黄 橙(とう き とう)
何時見ても愛らし 藪枯らし花(か)
荒れる庭 唯 藪枯らしの 繁し哉
月白見ゆ 淡藍の夕空 燕 何方(いずち)へ
令和2年 8月26日
<8首>
露草生いぬ 此んな処に 彼んな処に
露草や 下茎横這い 彼処(あちら) 此処(こちら)
露草や 彼方此方へ延ぶ 花も又
露草や 二枚貝のような 苞葉出しぬ
未だ見ぬ 露草の鮮青色の花
朝に露 夕に消ぬ 露草の花
もう昔 露草青花 愛でし頃
ーー我(あ)が庭で
何時に間にか 姿や消しぬ 露草 哀
令和2年 8月27日
<10首>
胡蝶舞いぬ 爽やか哉 今朝の空
薄の花穂 天突く勢い 初秋の勢
風なくば 芒の花茎 直立不動
薄ややはり 風に戦ぐる 優雅さが
薄の花茎 戦ぐを 見れば 初秋やきぬ
あっ 場違い 蛾 驚き慌て 飛び去りぬ
蛾や 枯れ葉色 庭の草木 未だ緑
背高泡立草* 優に 七尺越えの 初秋
ーー* 漢字一語扱い(5語)
背高泡立草 蟻も登らぬ 背丈哉
白壁や 朝焼け映えの 初秋哉
令和2年 8月28日
<13首>
ようように 明るみぬ空や 初秋の情
飛び込みぬ 木蔦の葉蔭 汝(な)や 飛蝗(ばった)
四方 鎮まりぬ 初秋の朝凪
微動だにせぬ 狗尾草 朝凪に
天 爽やかの青 地 未だ熱気満つ
まあ 愛らし 幼な雲は愛らし 入道雲も
もう綿毛 薄の花穂や 物侘し
凌霄花(のうぜんかずら) 花色艶やかしどけなく
百日紅(ひゃくじつこう/さるすべり)
剪定にも早や 芽 枝出しぬ
今や 初秋 蕾塊 と 花塊 見え隠れ
朝焼け美し 夕焼け美し 初秋の一日(ひとひ)
灯(ともしび) 彼方此方 宵闇迫るる
宵闇 朧(おぼろ) 歩みぬ 我(あ)が影法師
令和2年 8月29日
<12首>
しょぼくれり 山里かくも また初秋
物皆 萎るる 初秋ぞ 物侘し
見上げれば ほんに 長閑な 春の空
枯白百合 物侘しき 初秋の情
ペチュニア花(か) 花色色々 五色の秋
一日花 長し 短し 芙蓉の花(か)
韮 白小花の茎 連連と
連連と 韮の華茎 フェンス沿い
姫昔蓬 綿毛もあれば 花も蕾も
狗尾草野 戦げば其処や 夢幻の野
止まりたり 逍遙の足 残暑の夕
ようように 涼風微(わず)か 残暑の夕
令和2年 8月30日
<9首>
枯れりけり とうとう我(あ)が庭の 仙人草
煌めきぬ 白花鏤(ちりば)めし 仙人草
枯にけり 仙人草 噫(あぁ) 哀惜
欄干下 透け見ゆる 彼(あ)や 仙人草
懸崖菊の如 仙人草 猶 花盛り
残暑にも 花盛りとは 仙人草 感嘆
あぁ 揚羽(蝶) ふらふら舞いぬ 我(あ)が目睫
揚羽に問う 何時まで続くや この残暑
揚羽去りぬ 存じませぬと 言わんばかり
令和2年 8月31日
<14首>
ーー 昨日、8月30日の夕方を思い出しつ
むっと来ぬ 熱気や嫌な 予兆のよう
俄か雨 見る間に土砂降り 四方(よも)霞む
久し振り 御湿りに 一寸ほっとせり
バサッ バサ 屋根打ちぬ音 驟雨の音
もう止みぬ とんでもない ざんざ降り
弥(いよ)激し ざんざ降り 心地違う
暴雨(はやさめ)に 草木も撓るる 恐ろしき
驟雨や 荒るる風音 いと激し
弥よ増しぬ 驟雨に 雷鳴の轟き
用水路 潺(せせらぎ)も 奔流の如
轟く雷鳴 慌て照明 消すばかり
甚雨(じんう) 湿り大急ぎ あの窓この窓
身構えるるも 暴雨はやさめ)一時 もう静けさ
また戻りたり 残暑の熱気 ばかりなり
涼しき哉 昨日(きそ)の大荒れ
明日(あした)の今日(けふ)
令和2年 9月1日
<7首>
鱗雲 薄の穂波 愈 秋色
ポロッ ポロロォ~ 山鳩の声 秋や呼びぬ
今日(けふ)こそが 残暑 最後であらまほし
一陣の涼風 尾花に 我(あ)にも
雷(いかづち)の 遠く響きぬ 長月始め
長月や 最早秋 雷さらば
蜂 一匹 細き細きや 残暑の所為や
咲く前に 枯れり秋の華(か) 背高泡立草*
ーー* 漢字一語扱い(5語)
令和2年 9月2日
<8首>
曇り急ぎぬ 秋空 何の予兆
もう晴れり 目紛るしきは 秋の空
秋の空 白雲 ふんわり 晴れやかに
留まれ暫し 颱風の前ならば
留まりぬ 小蛾 此は何ぞと 蟻来る
近づけば蟻(あり) 蛾吃驚(びっくり) 飛び去りぬ
夏蝶の 最後の舞いや 枯れ狗尾草*
ーー*漢字一語扱い
昨日小蜂 今日大鉢 何の所為
令和2年 9月3日
<8首>
綿毛もあり 咲く花もありぬ 尾花かな
この生温さ 不穏な気配 颱風や
背高泡立草* 姫昔蓬** 秋の背比べ
ーー* ** 漢字一語扱い
此の実や何ぞ 蓬 いえ 豚草のよう
両方とも 春には見分けの つかぬ野草(くさ)
豚草哀れ 嫌われるる 秋の野辺
ーー 花粉症の原因と見られし
帰化植物
笑顔笑顔 淡紅花芙蓉 通りすがり
秋暑し 虫の音もまだ 聞かぬほど
令和2年 9月4日
<14首>
秋雲も 愁雲となりぬ 上午の空
ーー 颱風の予報あれば
あぁ 暑い 探すも何処 秋扇
秋さぶる 盗人萩の 花芽(かめ)や見ゆ
実野葡萄 愈 丸く 熟すを待つ
大もあり 小もあり 実野葡萄 初秋の賑わい
杉木立 覗きぬ 百日紅の 淡紅花
虎杖(いたどり)の花 今(いま)に咲くとは 忘れ草?
ーー ’虎杖の花’の季語は夏
秋茜 飛び去り 飛び来 夕の空
唯(ただ)独り 昔や群舞の 秋茜
葛(くず)の花芽穂(かめほ)
つと浮き出おり 帰り路
頭垂れ 萎れる 向日葵 哀れあり
秋日傘 差そうか 差ささぬか 帰り路
急ぎ足 秋の黄昏の 訪れは
ようように 涼風遣しぬ 初秋の夕べ
令和2年 9月5日
<19首>
涼風に 靡くが如の 尾花かな
ようように 茜立ちたる 秋雲の
秋ざるる 白壁映えの 朝焼け哉
高く飛び交いぬ 燕の 秋の空
春や 秋や 紋黄蝶や 舞う小苑
嵐や呼ぶ 生温かき風 雷鳴も
秋雨呼ぶ 雷(いかずち)の声 然(さ)許りか
雨宿り? 蜂 緊急避難? 我(あ)が居室
それにしてお 一寸五分*の大型蜂 女王蜂?
ーー* 約5㎝
一 二 三(ひい ふう みい)
蛞蝓(なめくし) 三匹 窓際に
ぬるり ぬるり 蛞蝓ら ぬたり ぬたり
また 一匹 また一匹 小さきが 合計五匹
蛞蝓ら 角出し 何を探すのや
何故に 突とに 現れり 蛞蝓ら
案じおりしが 我(あ)に 大丈夫と
告げに来しか
ーー7月頃 姿を見せり 幼なきが
彼や如何と思いおりし
金蚉(かなぶん)の 金緑色の背 浅鍋に
もう一匹 金蚉動かぬ どうしたこえとか
ーー次の朝 飛び立つぬ 姿見ぬ(後記)
秋さるる 虫等(ら)ぞろぞろ 出づるとは
ーー 啓蟄は 春の初め筈
秋ざるる 虫の音(ね)こそや 聞かぬれど
令和2年 9月6日
<14首>
ようように 秋ざるる 此の爽やかさ 涼やかさ
涼から冷 秋風に 驚かれぬぬる
涼風や 何方(いずち) 此方(こちら)青空
秋ざるる
澄み渡るる 碧空美し 秋色哉
また 熱暑 まだ残暑 秋ざるるに
あっ 揚羽 漆黒の舞い 秋空に
ひらひらひら 葉蔭 日影を 烏揚羽
見つけたか(しら) 小さな秋 小さき蝶
残暑の庭の 千草縫い舞いぬ 紋黄蝶
もう暮れ色 まだ 九月 六日十七日
暮れ初む 急ぎ足哉 秋の足
胡蝶舞い去りぬ 今宵の宿りや 何処
亦 蛞蝓ら 此処彼処 四匹 窓際に
令和二年 9月7日
<15首>
朝蜘蛛に 出会えり 秋の吉兆?何何(な)の
朝蜘蛛よ 巣は張らないで 此処はキッチン
秋風に戦ぎぬ 大犬蓼* 我(あれ)が庭
ーー* 漢字一語扱い
しなり しなり 弓形(ゆみなり)の
花芽穂(かがほ) 大犬蓼の
大犬蓼 花芽穂や 小さく 優しき哉
紅花芽穂に 白小花 ぱっちり 大犬蓼
白小花 秋見たか(しら) 大犬蓼の
先祖返り? 大犬蓼の花穂 犬蓼似
大犬蓼 揺れ 盗人萩 揺れる 秋風に
大揺れ 小揺れ 尾花もまた 我(あれ)が庭
盗人萩 蝶形花や咲く 萌しあり
何時咲くの 明日(あす) 明後日(あさって)
盗人萩
我(あれ)が庭 二か処 秋愛でぬ 盗人萩*
ーー* 漢字一語扱い
紅槿 花開き 彼(か)眺む如何
仙人草 もう結実 移ろい速し
枯れつつも 猶 白小花を 姫女苑
令和2年 9月8日
<17首>
-- 秋草に 影落としつ舞う 誰(た)そ 揚羽(あげは)
紋黄蝶 春を探すや 秋の野辺
伐られたり 野葡萄哀れ 我(あれ) 哀惜
瑠璃色の実 もう直ぐねと 待ちおりしが
夕化粧 凋みたる朝(あした) もの侘し
--
突き上げり 小さきポンポン 千日紅
紅に白 淡紅もあり 千日紅
百日草 花色 色々 秋の色*
ーー* 季語は秋なれど
ジニア(百日草) 咲き揃いぬ 秋の今
角虎の尾 淡紫(うすむらさき)花(か) 角 角と
朝顔の 一輪 ひっそり 青色あおいろ)が
他や皆 朝顔茶系の 小珠となりぬ
秋茜 彼方(あっち)に 一匹 此方(こっち)にも
カナカナカナ あらっ蜩(ひぐらし) 秋来たるらし
と聞きしが 置き時計の アラーム音
ハックション 嚏(くさめ) 一回 秋ざるる
微風(そよかぜ)に 暫しの微眠 秋ざるる
令和2年 9月9日
<10首>
今日(けふ)の朝 めっきり 小寒くなりにけり
手水(ちょうず)も 小冷たき哉 今朝の秋
今朝もまだ 咲き継ぎぬ槿 色深く
源平小菊*生** 密林の如 蟻らには
ーー*漢字一語扱い
** 蓬生(よもぎう)に倣って
犬蓼や 花穂 花穂 花穂 淡耿の
犬蓼花芽 昔は童 飯事(ままごと)に
花芽 赤飯(あかまんま)と呼びて 遊んだらし
赤飯を語りぬ 老女の童顔(わらべがお)
朝昼晩 秋の涼ある 一日(ひとひ)哉
朝から昼 晩まで秋の 涼のあり
令和2年 9月 10日
<8首>
おはようさん 盗人萩花 玻璃戸越し
蝶形花 盗人萩や 秋の舞い
秋の麒麟草*(きりんそう) 盗人萩*に隠れつ
こんにちは
ーー* 漢字一語扱い
昨日(きそ)までは 夕涼みもならぬ 夕べの熱気
今日(けふ)や もう 夕涼みには 小寒きに
いざ行かむ 夕涼みがてらの 小逍遥
ようように 夕涼みが 秋の夕べ
黄昏に 霞みぬ 尾花も 夕涼み
叢雲の 朧ろな宵闇 月や何処
令和2年 9月11日
<213首>
秋日和とは ほんに爽(そう) 今日(けふ)の朝
有り難き哉ほど 爽快哉 秋日和
もう曇天とは 怨めし許りの秋
ポツリ ポツ 秋の雫に 千草揺れ
天仰ぐ 尾花や仰ぐ 我(あれ)のあり
丈高く 何処まで伸ぶるや 彼(か)の尾花
降りそうな 秋の空睨み 降らなきよう
秋日傘 差したり ついたり 老いの坂
秋薔薇(あきそうび)* 淡紅一輪 垣根越し
ーー*冬薔薇(ふゆそうび)を捩って
折鶴蘭 小苗(こな)え 垂らしぬ 小鶴のような
幾つもの小鶴 飛び出したり 折鶴蘭
茸二種 白と橙 山の辺に
朽ち切り株 此処にも 茸 白と橙
令和2年 9月12日1 <11首>
明くる朝 茜雲映え 明け烏
さわさわと 秋風に 大犬蓼
花酢漿草 鮮桃花色 忘れ花
捲き花弁 聞こうかどぅしよ 迷い花
取り残され 独りぽつねん 花壇隅
花木槿 底紅鮮やか 青き空
滴 滴 滴 あらッ 村雨 掌(てのひら)に
急いで 急いで 驟雨(/秋雨)の 降らぬ間に
胡蝶二匹 舞い交わす庭や 秋の庭
今夜も また 何時まで続くや 熱帯夜
ああ 熱暑 熱の戻り*や 熱帯夜
ーー*’寒の戻り’を捩って
令和2年 9月13日
<17首>
いと 可愛い 盗人萩の 蝶形花
そっと覗きぬ 盗人萩が 我(あ)が居室
思わず笑み 零るるような 可愛さよ
盗人萩 盗みたくなるような 可愛さよ
そうとは言え やはり野に置け 盗人萩
咲き乱るる 盗人萩野 見たし我(あれ)
明月草(めいげつそう) 虎杖(いたどり)の
紅花を 言うと知る
名月が 零れて紅花に 白花虎杖に
明月草 咲く野辺見ゆ 亦見ま欲(ほ)し
藪蘭白花 鉄柵より 覗きおり
兎菊 独り 楽し気 秋優し
秋日映え 黄花コスモス 花壇映え
酢漿草(かたばみ)や 葉も花も 小さい秋
殻斗(かくと)脱ぎぬ 樫の実ころころ 小公園
鱗雲 何処までも蒼天 広く高く
秋日和 夕日に誘われぬ 夕逍遙
秋日和 影法師伸びぬ 十等身
蜜ありや 蟻群がりおりぬ 凌霄花(のうぜんかずら)
令和2年 9月14日
<14首>
葛(くず) 葉 葉許り ほんに 屑ね
遺憾あり 葛 葉と蔓許り なれば
葉分ければ ひっそり 逆さ藤の 紅紫色
谷間 壮観 葛葉に 覆わるる
此な処 仙人草や 花盛り
早乙女花 実鈴生り 実(みのり)の秋
梔子(くちなし)の実 口無しのまま 熟し行き
此処はもや 虎杖の野となりぬ 白花の
紅花* 何処(いずこ) 見ぬば 恋しさ優りけり
ーー*板取に 紅花あり 明月草
秋の夕 淡藍の空 海も亦
急ぎ足 秋の夕暮れ 人も亦
令和2年 9月15日
<10首>
根こそぎ抜かれぬ 野葡萄哀れ 我(あれ)傷心
傷心の 野葡萄探しの 逍遙路
出会えるも 花も実も 幼なな野葡萄
やはり 此処 野葡萄生いぬ 溝底に
ーー 数年前まで 例年見かけり場処
実やまだ小珠 熟すはこれから 白から瑠璃
百日紅(さるすべり) 丸刈りせり 我(あれ)がっくり
諦めしが 淡桃色が 杉木立奥
新枝四方 夫々に 花百日紅
百日紅 例年のように 咲乱れぬ
揚羽蝶 羽搏き来(く) 大きく 雀かとぞ
令和2年 9月16日
<11首>
めっきりと 朝夕涼し 秋や知る
此の花は 野老(ところ)のそれや 葉はハート形
蟻往ったり 来たり 蔓野老や 綱渡り
姫柘榴 鮮橙色の 花冠 花冠
秋牡丹 白色優し 秋の庭
大犬蓼*(おおいぬたで) 盗人萩* 狐の牡丹*
秋の三重奏
ーー* 漢字一語扱い
小灰蝶(しじみちょう) 以外に長し 蜜や吸いぬ
ーー 長いので 思わず見惚れり
此方 蜜吸い 彼方 対舞い(デュエット)
小灰蝶の秋
梅檀草 花弁(はなびら) 三弁(みひら) 蜜あるらし
盗人萩 咲き続きぬ野辺 秋楽し
遠く 聞こゆ 虫の音 誰(たれ)ぞ 秋夜長
令和2年 9月17日
<10首>
盛夏 晩夏 初秋」咲き継ぬ 槿(むくげ) 見事
今朝もまた まだ 咲きぬ木槿 凄みあり
彼方此方 青色の笑顔 露草の
秋の空 此処に零れり 露草花
犬蓼が 花穂深紅の 面長の
露草 犬蓼 仲良く叢生(むらおい) 溝底に
ひょっとして この頭状花 葹(おなもみ) 懐かしの
登り来たりぬ 蟻にや聞くかむ 彼(あ)や 葹
昔うんざり 今唯 懐かしき くっつきむし
くっつきし くっつき虫や 葹の実
くっつき虫 何処さ迷うらむ 秋の野辺
令和2年 9月18日
<12首>
千草薙ぎ 吹き入る 我(あ)が庵(いほ) 木枯らしが
木枯らしにも 泰然自若な 槿花かな
大揺れ 小揺れ 狗尾草(えのころぐさ)の
枯れ穂揺れ
さわさわと 野辺の千草の さんざめき
見渡せば 四方(よも)物寂し 木枯らし一過
見渡せば 秋の静けさ 小逍遥
零れ初みぬ 白萩花びら もの寂し
白花のネリネ咲きぬ 愁雲
秋風に揺れる ネリネや 苞茎 五輪
紅白の水引き 離れて生うも 亦の景
ちょぼちょぼ 花茎に疎ら 紅白水引き
去年(こぞ)の秋 咲き誇りし 水引きが
金水引き 独り ポツリ 去年(きそ)の 栄華は
令和2年 9月 19日
<11首>
もうユニークの 莢の小さきが 盗人萩
姫溝蕎麦(ひめみぞそば) 葉叢にちらほら 紅葉が
夏蔦も 紅葉見ゆる 欄干の
涼風と 秋知るる花 紫苑(しおn)哉
紫苑 薄紫の 頭花群 豪華
鶏頭の 燃え立つような頭花 秋陰」に
想い出しぬ 野老(ところ)の雄花 噴き出(いず)る
野老の雄花 透かせば 彼方(かなた) 茅渟の海
今は見ぬ 野老の花雌雄 零余子(むかご)や 猶
見つけたり 蔓 雄花の いと小さきを
出会いたり 掌状葉 唐胡麻の
令和2年 9月20日
<11首>
ここ数年 唐胡麻と見しは 葹((おなもみ)らし
おどろしくも 妖艶かな 葛(くず)の花
葛の花 露ほども見ぬ 今秋
葛の花 見ぬば 秋とは 思ほえず
今日(けふ)も 愈 小紫たる 実紫*
ーー*紫式部の別称
懸崖菊の如 垂るる 虎杖(いたどり)白花 水路壁
もう ロゼットが 兎菊 枯れぬれば
紫苑 まだ 疎(まばら)咲き 暫し待たむ
縷紅草(るこうそう) 巻き蔓
彼処(あちら)から此処(こちら)まで
紅橙色 悉皆 (しっかい) 凋(しぼ)みぬ 縷紅草
亦 咲くは何時 何時まで待てば 縷紅草
令和2年 9月21日
<11首>
盗人萩 なんと優しき 秋の色
と 愛でる間もなく 萎れるるとは あぁ
もう 萎れおりぬ 盗人萩や 一
刈萱(かるかや)の 白毛ふわり 秋風に
茅(ちがや)や 春 白毛穂映えぬ 野辺美し
栴檀草(せんだんぐさ) 葉葉広げれば
秋のテーブルクロス
繊細な葉姿(はし) 透かし模様の 栴檀草
柄(へい)先の 黄花びら少な 秋侘し
実や痩果(そうか) 鉤ありの くっつきに
誰(た)にくっつき 何処へ運ばれや 実栴檀草
令和2年 9月22日
<14首>
白秋の 零るる 坂路 ゆうるりと
咲き溢るる 小萩や白秋 知らぬ間に
白萩や サワサワ さやさや 朝風に
紅芙蓉 二輪 晴れやか 朝の顔
狗尾草(えのころぐさ)枯れぬ 白毛穂叢も 一興あり
柄(へい)の先 小黄花小揺るる
栴檀草(せんだんぐさ)
花柄黄小花 四方散らしぬ 栴檀草
山牛蒡(やまごぼう) 小さきは素朴 鄙の情
鉄柵から 小さきが覗きぬ 山牛蒡
踏ん張りぬ 姫昔艾*(ひめむかしよもぎ)
絡まれるも 縷紅草*に
ーー縷 紅草は、蔓草なれば
想い出しぬ 襖絵の意匠 秋草の
ーー 薄に絡みぬ 早乙女花
縷紅草 朝咲き居りぬ 通りすがり
朝顔 何処(いずこ) 小顔の朝顔 縷紅草
令和2年 9月23日
<12首>
青空の 何処までも 広き 白き秋
花柄も 花穂も 垂(しだ)れ垂れの 蓬哉
白百合 も 莢となりぬ 秋なれば
まっ 見事 真っ黄の大輪 南瓜の
唯一輪 願わくば もう一輪
ーー 雌花雄花の組み合わせに
瑠璃虎の尾 優雅に揺るる 脚風に
おどろおどろし 虎の尾想えば 瑠璃虎の尾
曼珠沙華(まんじゅしゃげ) 見ぬ 初秋 いと侘し
青薄 今や 尾花の盛りなり
頭垂れ 枯れぬ向日葵 夏恋し
盗人萩 淡紅戦ぎぬ 秋甘やか
月やあらんむ 秋月見ぬ夜や いと侘し
令和2年 9月24日
<5首>
今朝二輪 南瓜咲きぬ 彼処(あちら)と此処
胡蝶知るや 南瓜の二輪咲き
知らぬ気な 胡蝶も 蜂も 花南瓜
盗人萩 三日天下の 花盛り
曇天を 飛び去るる小鳥 何を急ぐ
令和2年 9月25日
<10首>
南瓜不運 大雨の朝 大輪二輪
雨宿り 南瓜花冠に 来(こ)ぬ胡蝶
潺(せせらぎ)の 愈増しぬ 響き 愁思あり
彼(あ)の潺 秋声とも想えぬ 不穏あり
滴り落つ 雨粒静か 秋の山里
雨に濡るる 槿花淡紅 愈映えり
あっ 秋月 と見れば もう早や 雲隠れ
四方(よも)闇夜 虫の音聞かぬ 秋静か
蟋蟀(こおろぎ)の声聞かぬ 小夜 久しけり
令和2年 9月26日
<12首>
昼下がり に 咲きぬ 槿花(きんか) 朝寝坊?
毬栗(いがぐり)二つ 未だ青きが 枝の先
ぽっかり 開きぬ 落ち毬(おちいが)* 実や何処
ーー*’落ち椿’を捩って
偲ば迫 縷紅草(るこうそう)の実 ポッケトへ
黄花コスモス 独りひっそり 咲き居りぬ
白花ネリネ 一花茎 粛然 秋の山辺
円錐花穂 咲き初みぬ 盗人萩*此処の
ーー*漢字一語扱い
辛夷(こぶし)忘れ咲き 一輪 戸惑い顔
ーー 辛夷の花期は 早春
ーー 秋の選定に
刈り取られぬ 衝く羽根空木*(つきばねうつぎ)
すっきり 秋風に
ーー*漢字一語扱い
藪枯し も刈取られぬ 枯(あ)の愛らし花見ぬは 哀し
曼珠沙華 邂逅一輪 通り掛り
彼岸花 出会えり 今日(けふ)や 彼岸過ぎ
令和2年 9月27日
<16首>
アディアンタム 蘇りぬ 秋付けば
其処 此処に 戦ぐ 秋の野辺 アディアンタムs
大地縛り 消えそうで 消えぬ 春の花
ーー 秋の野辺で
白花ネリネ 今時めきぬ 花盛り
蒲公英 咲き倒る姿 秋付けば
何の果実 色付きぬ 秋色に
ひょっとして 木香薔薇(もっこうばら)の実 あのアーチ
狗尾草野 揺れ 亦揺れる 風走る
木芙蓉 実生えぬ 石垣の危なき処
高く低く 潺(せせらぎ)の音 山逍遥
椎の実や 転(まろ)びて 我(あ)が手に 山逍遙
50メートル 秋山に入りぬ 感慨あり
水引きや ひっそり紅が 山の辺に
令和2年 9月28日
<9首>
まったりと咲くきぬ 南瓜 真っ黄色
柿色に色付きぬ 柿の実 ふと見れば
楽し気に 渋柿 剥きぬ 君遠く
柿の実や 郷愁誘いぬ 鄙の景
青紫色 胡蝶舞来ぬ 葛(くず)の花蔭
淡紫の 雲浮ぶが如 紫苑咲きぬ
ーー背高く咲く紫苑を見上げつつ
高みから望む紫苑や 秋如何(いかが)
三寸豊か 露草の叢 驚きぬ
尾花縫い 胡蝶三匹 鬼ごっこ?
令和2年 9月29日
<10首>
山鳩の遠く 聞こゆ声 秋さるる
伸び伸びぬ 背高泡立ち草 三尺超え
栴檀草 実同志くっつき どうする気
ーー動物にくっつかずに
白萩の 咲き乱るるや 雪冠〔の如き〕
狐の牡丹 の実やくっつき虫 幼き日の
あぁ 落胆 彼(あれ)狐の牡丹に 非ず
彼処此処(あちこち)に 実生(みば)え 葹(おなもみ)
実やなかなか
令和2年 9月30日
<17首>
久し振り 幼な蛞蝓(なめくじ) のろり べたり
吃驚せり 大きく成りぬ 一夜明け
此や別の 蛞蝓(なめくじら) パパとママらし
ーー 蛞蝓は、雌雄同体
小皿下 幼な蛞蝓 隠れおりぬ
小蛞蝓 遠出 冒険? 親心配おは
見つけられたり 小蛞蝓の冒険や
昼下がり 姿消ぬ 蛞蝓親子
あっ 蟷螂(かまきり) 襖に止るる 珍妙な
熟(つくづく)と 見ればユーモラスな 風姿なり
蟷螂は 大きな目くりくり 眺めおり
芙蓉花 萎むも 咲くも 実も蕾も
姫溝蕎麦 紅葉 愈よ 溝の華
枯れ果てり と見しも 兎菊 帰り咲き
曼珠沙華叢 黄色ネリネや 一輪映え
赤芽柏 葉や紅葉 秋暈し
露草や 秋空写しぬ 鮮青色
天狗の団扇や 唐胡麻の葉 秋山辺
彼岸花 咲くや次々 彼岸後も
令和2年 10月1日
<10首>
唯 独り 枯れ行きぬ 花水木 何故に
紅葉も 結実もなき 花水木
日影 日蔭 何れが良しや 花水木
春も秋も 日影に花水木 我(あ)が庭の
栴檀草*(せんだんぐさ) 痩果 盗人萩* 豆果
ーー*漢字一語扱い
実りの秋
大犬蓼(おおいぬたで)も 花穂ほっそりかr
ふっくらへ
よく観れば 栴檀草 2種 我(あれ)が庭
探さむと 狐の牡丹 秋逍遙
帰りきぬ 狐の牡丹 探しあぐね
悄然なり 狐の牡丹 何処(いずこ)にも
ーー 狐の牡丹の実は、くっつき虫と
知り、 幼き日懐かしく
令和2年 10月2日
<10首>
何(な)の果実 緋色がポトリ 岩苦菜(いわにがな)に
黄花一輪 蒲公英(たんぽぽ)似が 岩苦菜の
大地縛り(おおじしばり) すらりすらりと 秋日和
刈茅の 長穂の白毛 夕日映え
白蝶草 舞い舞い 揺れ揺れ 秋日影
山吹八重 萎れつも 一輪咲き 残りぬ
無椀無椀 白花ネリネ 胸一杯
此処 其処に 白花ネリネ 秋謳歌
お多福南天 紅葉 落葉 若葉萌え
此や如何に お多福南天* 秋の 衣替え
ーー*漢字一語扱い
令和2年 10月3日
<17首>
黄葉あり 盗人萩に 大犬蓼に
亦 三輪も 兎菊や 返り咲き
紅二輪 草叢に 野中の薔薇
花酢漿草 桃花色 まだこれからね
石垣から 垂(しだ)るる 白萩 夕日映え
垂(しだ)るる 虎杖(いたどり)雄花 連連と
虎杖雄花 三翼菱形の穂 垂(しだ)れ
鵯(ひよ)番(つがい) 彼方と此方 屋根と塀
飛び立ちぬ 鵯番 ”比翼の鳥”や
千日紅 まだまだ咲くらし 秋楽し
黄花マーガレット 咲き乱るるも萎るも 秋
姫向日葵 彼方向いたり 此方にも
萱草花 小寂し気な 谷間の
潺(せせらぎ)や 咲き残りのエレジー
萱草の
鶏頭の 背高き哉 空高し
柿撓(たわわ) 垂(しだ)るる枝に つっかい棒
葉や落葉 ひらひらひらと 胡蝶の舞い
令和2年 10月4日
<8首>
咲き継ぐも 雄花ばかりの 南瓜なり
首傾ぐ 小白花 犬鬼灯似の
白小花 近づけば 唐辛子*の朱実
ーー*漢字一語扱い
ペテュニア花 紅 白 淡紅 石垣沿い
あらっ 此んな処にも 曼珠沙華
姫向日葵 花弁(はなびら)映えぬ 秋の夕日
金木犀(きんもくせい) 芳香遣さぬ 橙黄色
匂えぬ我(あ) 哀しき哉 金木犀
令和2年 10月5日
<10首>
枯行くか いえ 紅葉初みぬ 花水木
今度(こたび)は独り 曼珠沙華 少し揺れ
おやっ 蚊蜻蛉 止まり来るや 畳の上
半月の 吊り鉢に咲く如 権平小菊
野芥子 綿毛 飛ばしぬ 探すや春を
木枯らしの 吹きすさぶ小夜こそ 寂しけれ
柿剥けば 秋の夜長も 亦 美(うま)し
山葡萄 葉も実も 色付きぬ 山の辺かな
紅葉の葉隠れの 実総や 黒紫色
熟し実や 幾つ集めば 猿酒に
令和2年 10月6日
<9首>
蕾と実 仲良し子良し 椿の樹
芳香 遣しぬ金木犀や 今日(けふ)の朝
秋寒むや 少しずつ勢失せり 我(あれ)が庭
秋さむや もう 恋うるるや 炬燵かな
水引きや 白花茎 三つ 長月初
出会う度 花茎 増しぬ 白水引き
細き花茎 伸ばし咲きぬ 白水引き
紅や何処(いずこ) 探すが如
延ぶ 白水引き
水引き紅や 木下蔭(こしたかげ)に
ひっそりと
令和2年 10月7日
<14首>
柿紅葉(もみじ) 一夜 いえ 二夜寒(にやさむ)続き
照り葉こそ 秋思わるる 柿の葉の
実や 照葉に隠るる哉 柿の木
金木犀 匂わぬ哀し 樹下通るも
通り過ぎ 芳香遣しぬ 金木犀
酢漿草(かたばみそう)叢 黄花一輪 小寂しき
秋草叢 黄花ちらほら 岩苦菜
ほろほろろ 落葉転(まろ)びつ来(く)
ほろほろろ
此処にも 韮(にら)何処にも生いぬ 春夏秋野
ぺしゃんこに 轢かれ潰され 銀杏哀れ
二つばかり無事 拾いぬ 銀杏樹下
橙花コスモス 繚乱 崖に生う
秋桜 出会えぬ 秋や物侘し
朝顔の 項(うなじ)垂れ 萎れる夕べ
令和2年 10月8日
<8首>
黄葉 橙葉 狗尾草や 枯れぬれば
南瓜花 真っ黄一輪 蕾五輪(いつりん)
背高泡立草*(せいたかあわだちそう)
花穂聳え立ちぬ 秋の空
ーー *漢字一語扱い
咲き咲き初みぬ 背高泡立草
今日(けふ)や 佳き日
朝露の 白銀映えの 尾花かな
総南天 夫々の実 白銀映え
令和2年 10月9日
<10首>
物憂きに 唯 霧雨を 眺むべきや
物憂き秋日 長くもあれば 短くも
狗尾草花穂 闌ければ枯れ毛虫
悍(かん/おぞまし)
柿の実や 弥(いよ)柿色に 秋色に
実南天 鳥渡 紅付きぬ 実椿も
まだ咲くや 底紅の 雛形槿花(きんか)
一ヵ処 此処だけ
例年(いつも)咲きぬ 雛槿花
絶え間なき 潺(せせらぎ)の音 秋風一陣
今日(けふ)一日(ひとひ)秋吟(しゅうぎん)
多き一日哉
令和2年 10月10日
<13首>
秋雨に打たれ アーチに
背高泡立草*(せいたかあわだちそう)
ーー*漢字一語扱い
背高き*が 垂れ哀れあり 背高泡立草
ーー 見上げる許りの3メートル余
アーチ形 潜れば 雨滴 適 適 適
低きや皆 そのまま屹立 背高泡立草
秋風に 大揺れ小揺れ 背高泡立草
黄金色 花穂一斉に 背高泡立草
胡蝶舞い 小鳥飛びぬ 空 爽やか
風に戦ぎぬ 尾花 今日は 今日は
御所水引き 此処だけに 例年(いつも)のように
海桐(とべら)の実 紅付きぬ秋や 物侘し
葉紫陽花 秋色付きぬ 小逍遥
鈴懸(すずかけ)の落葉 ほろほろ 何処まで
鈴懸の実 青き拾いぬ 秋逍遙
令和2年 10月11日
<11首>
男郎花(おとこえし) ひっそり佇みぬ 山野辺に
女郎花(おみなえし)何処 見渡せど見ぬ 哀
秋の七草 久しく見ぬは 女郎花
藤袴(ふじばかま) 久しく見ぬば 花姿も覚えぬ
胡蝶舞いぬ 冷気忍ぶる 秋野原
秋風に 黄金(おうごん)の大波 背高泡立ち草
葉落ちぬ 柿の大きな実 三(み)つ二つ
玉簾(たますだれ) 一輪ぽつねん 路の縁
葉の狭間(はざま) 唐辛子の朱美 見え隠れ
姫溝蕎麦(みぞそば) 紅葉の側(そば)に
淡桃花色
屁糞葛(へくそかずら)* 尾花に絡みぬ
可憐な小花」
ーー 別称は、早乙女花(さおとめばな)
令和2年 10月12日
<12首>
秋日和 誘われぬども 誘われて
誘わるる 程ほどもなくとも 秋逍遙
蔦葉海蘭(つたばうんらん) 淡紫紅の小花 柵の縁
外壁の夏蔦 紅葉の錦となりぬ
静 静 静 四方 眺むや 静かの秋
紅葉一葉 舞いぬ 葉桜の葉
花酢漿草(はなかたばみ)花弁(はなびら)閉じぬ
秋小寒む
曼珠沙華 枯れれば哀れ 物の哀れ
吹き抜けるる 夕風莢か 小逍遥
令和2年 10月13日
<12首>
盗人萩野 一面 淡紅色
胡蝶舞いぬ 盗人萩野 青い空
歩む咲 盗人萩の 叢のあり
何処から 芳香遣しぬ 主(ぬし)ぞ誰(たれ)
芳香は 姫梔子(ひめくちなし) 忘れ花
たんぽぽの 黄花彼処履き履き此処(あちこち) 大地縛り
あらっ 団栗 1 2 3 (ひい ふう みい)
もうお仕舞い
酢漿草(かたばみ)黄花 其処だけ 未(いま)だ朱夏
ひょっこり 真ん丸綿毛 大地縛り
ふっくら膨よか 玉椿の実総
木立の奥 実撓(たわわ)の柿の木が
令和2年 10月14日
<11首>
小鬼田平子(おにたびらこ) 溝底に 春や待つ?
ーー 鬼田平子は、春から咲きぬ花
吹き寄せられぬ 花びらのラグ 金木犀
白百合の 実 もう弾けそう 秋深し
小灰蝶(しじみちょう) 花から花へ 千日紅の
夕化粧 まだ窄(つぼ)みおり 昼下がり
韮の花 もう実となりぬ 亦の景
メタセコイア 実独りぶらり 下がりおり
近づけば 蒲公英の綿毛 秋の野辺
蜜に夢中 揚羽〔蝶〕 覗く我(あ)に気付かぬ
立ち酢漿草 独りすくっと 草叢から
栴檀草(せんだんぐさ) 枯実 弾(はじ)けり 花火の如
令和2年 10月15日
<7日>
戦ぐ 戦ぐ 金波* 銀波** 秋の景
ーー *背高泡立ちの黄花穂
** 尾花の枯れ穂
背高泡立草* 花穂黄金に映えぬ 今朝
ーー*漢字一語扱い
ア―チのまま 背高泡立草花穂 黄に咲きぬ
背高泡立草 虻や纏わりつきおりぬ
ーー 雄のこと、花蜜を
舐めるのみ
紋白蝶 水引きの紅花茎 潜り抜けぬ
水引の 紅花茎 鮮やか 四方(よも)及ぶ
水引き 紅白交代 秋継ぎぬ
令和2年 10月16日
<14首>
百日草 もうそろそろ 百日目?
夏から秋まで 咲き続きぬ 百日草
不図見れば 丸(まぁる)く青き 蜜柑の実
蜜柑実 の未だ青きの 朝日映え
金柑も 青きが小さく 光りおり
露草 苞膨らみぬ 二枚貝の如
種子(たね)抱き 露草の苞 二枚貝の如
青紫色 野紺菊とて 山の辺に
姫椿 もう咲き初みぬ 淡紅色
ほんのりと 紅さしぬ蕾も 姫椿
藪枯らし もう蔓伸ばし 垣*覆いぬ
ーー*衝く羽根空木の垣根
藪枯し 名にし負う哉 藪枯らし
衝く羽根空木 と共に刈られし 藪枯らし
令和2年 10月17日
<6首>
ポトり ポト 花水木の紅葉 また落ちぬ
今朝の 秋雨 驟雨にならむことを
ーー ここ暫く日照り続き
少しづつ 庭の草木(そうぼく) 紅葉せり
軒超えぬ 南天の木 葉ばかりが
子蛞蝓(こなめくし)3匹 秋の夜の散歩?
濃藍の宵 漆黒の真夜 秋の夜長
令和2年 10月18日
<10首>
突如の冷え 暫し待て 秋の夜(よ)よ
今朝やもう 冷気に震うる 二羽の千草
朝ぼらけ 浮かぶ公孫樹(いちょう)のシルエット
紅葉の 柿の綾なしぬ 黄 橙 緋色
美(うま)し哉 柿の葉の彩 朱 橙 黄
ひらり また 散りぬ柿の葉 碧き空
見事哉 実紫*の実 葉枯れ行くも
ーー*クマツヅラ科の紫式部の別称
狗尾草(えのころぐさ) 戦ぎぬ風姿 枯れ色ダンス
此方や緑 狗尾草*の景 色々
ーー*漢字一語扱い
大犬蓼 枯るる風姿や いと侘し
陰鬱な 一日(ひとひ) 秋日和 何方(いずち)
令和2年10月19日
< 14 >
小さく 淡紅に咲くきぬ 今朝の槿花
のろり のろり 蜂 窓辺に 秋冷えに
秋の空 何と広き哉 何処までも
杉菜の叢 今を盛りと 今 や秋
秋牡丹 白花映えぬ 脚風に
秋風に 花びら 零れる 秋牡丹
白ベゴニア 夏季様(よう)今や 秋の宴
出会えたり 葹(おなもみ)の壷実* 累々の
ーー* 壺形の果実
くっつき虫 鉤付きの実 葹の
枯紫陽花 暗紅色や 秋の趣
雀一羽 飛び来たりぬ 山辺の秋
群れてまた 来たり 餌求めてか
実生え 芙蓉 白花くっきり 夕辺の野辺
白芙蓉 皆窄みおりぬ 寂しき夕
令和2年10月20日
< 9 >
枯れ行きぬ秋野 飛び交いぬ虫 汝(な)や誰(た)ぞ
高く 低く 秋虫の 遊飛*見ゆ
ーー* 遊泳を捩って
垂(しだ)るるも 猶 咲き誇るる 背高泡立草*
ーー*漢字一語扱い(5語)
背高き故 頭頂の花穂 支え切れぬ 哀
キラキラと 煌めきぬ 銀糸や 蜘蛛の糸
胸痛あり 小逍遥躊躇いぬ 秋日和
三日月の煌めきぬ 秋の夜 虫の声
静寂(しじま)あり 秋の夜長の 静寂なり
音も無く ほんに静かな 秋の夜半(よは)
星一つ煌々 三日月雲隠れ
令和2年10月21日
< 9 >
石蕗(つわぶき)や 蕾突き出しぬ 元気な子
酢漿草(かたばみ)の 黄小花や笑顔 秋日影
このロゼット 何(な)ぞ 野薊や 秋野芥子や
金木犀 まだ咲き続きぬ 秋楽し
仙人草 亦出会えたり 意想外
もう見納めぬと 覚えしが 仙人草
花 蕾 まだまだ 生き生き 仙人草
縷紅草(るこうそう) 哀れ実も蔓も 乾涸びぬ
万緑の叢中 花酢漿草の紅
ちらほらと 野菊の白花 山の辺に
青紫色 鏤(ちりば)むるる秋草 汝(な)や誰ぞ
令和2年10月22日
< 7首 >
一段と 紅葉増せり 庭の千草
もの侘し 紅葉も枯葉の 序〔曲〕なれば
中には 緑保ちぬ 秋草も
悠然と 風に揺らぎぬ 尾花かな
尾花の天下 今暫く 続くらし
落葉踏み 栗拾いぬ 秋日和
あっ痛っ 毬栗踏んだ 遠き昔
令和2年10月23日
< 14 >
背高泡立草* 両側から 垂れ 通せん坊
ーー*漢字一語扱い
あらっ黄花 と見しは枯れ葉 黄葉の
彼(あ)や セージ紅紫色の花穂 秋風と
秋水流る 川藻を潜り 流る
山葡萄 紅葉や 別離の色や
花びら 零しぬ金木犀* 黄橙色の
ーー*漢字一語扱い
アディアンタム 叢増やしぬ 秋謳歌
此のロゼット もう 蒲公英の根生葉
逆光線 垂るる黒影 胡瓜や苦瓜や
時鳥草(ほととぎすそう) まだ時に非ずや
蕾のまま
秋飾りぬ 紅紫の斑入り 時鳥草
半日影 時鳥草 ひっそりと
木香薔薇*(もっこうばら)実 ほの朱(あか)きが
秋逍遙
ーー*漢字一語扱い
葉桜も 紅葉し初みぬ 山里も
令和2年 10月24日
<11首>
何故(なにゆえ)に 心弾まぬ 秋日和
心ならぬ 身の重苦 如何にせむ
大空は 果てし無きまでの 秋日和
微風(そよかぜ)に戦ぐ 尾花や 秋日和
絶え間なく 漣(さざなみ)立ちぬ 秋の草叢
夏過ぎぬ 猶 咲き続きぬ 犬鬼灯
何時まで咲き続きぬ 犬鬼灯 不思議あり
項(うなじ) 垂るる白小花 犬鬼灯の
ーー ふと、昔日の小さきトマト畑を
想い出して
真っ朱(まっか)な トマトの熟し実 朱夏の色
青味より 朱味が好み トマトの実
熟し実見ぬ 萎れぬ葉茎 トマト畑
令和2年 10月25日
<12首>
千切れ雲 流れぬ 雲無き 秋の空
青きかな 天空の果てまでか 青一色
尾花靡(なび)く 白銀から白枯色
庭の千草 紅葉黄葉 枯葉となりぬ
草叢の蔭 柿の蘖(ひこばえ) まだ
存(なが)らえおりぬ
葹(おなもみ)の実 くっつき合いぬ 秋の野辺
くっつき虫 誰も通らぬ 秋の野辺
鈴生りの 葹の実や 憂い顔
木漏れ日の 影揺るる 山路かな
山路踏み締めるる音や 潺(せせらぎ)の音
朝顔花(か) 紫と紅棚の 上から下に
姫溝蕎麦叢 淡紅花一面 秋の景
令和2年 10月26日
<11首>
亦 出会えり 白十字花 仙人草の
あれは 長月〔九月〕 仙人草の花盛り
姫女苑 優しく強く 秋の野を
春女苑も 見つけたり 姫の隣り
蒲公英似 大地縛りの黄花も 其処にあり
草叢に 松毬一つ 秋のアクセント
ランタナ花 黄から赤 移ろいぬ 美〔び/うつくし〕
カンナの花頭 朱赤鮮やか 聳えおり
我(あ)が庭の 黄花カンナや 疾(と)く昔
衝羽根空木*(つくばねうつぎ)
淡紅の花こそ いと愛し
ーー*漢字一語扱い
姫椿 雷 雷 雷(らい らい らい)や
咲き備(もよ)い
令和2年 10月27日
<7首>
ランタナや 花色 淡から濃 紫の
花びら 一つ濃紅の 姫椿
紅 紅 紅花 姫椿 今真っ盛り
白花ベゴニア 晴れやかな笑み 生垣下
紅水引き 花茎生き生き まだら咲き
秋日和 行楽の当て無き身 哀〔あい/かなし〕
物寂しき秋 物皆静か哉
令和2年 10月28日
<14首>
草紅葉 黄葉愈よ 我(あれ)が庭
日一日(いちにち))愈よ深みぬ 草紅葉
色深みぬ 草紅葉 黄橙色
朝日映え 大犬蓼(おおいぬたで)の
黄葉 橙葉
槿の葉葉 檸檬色の暈し染め〔/グラデーション〕
コスモス何処にも 一輪も見ぬ 哀
黄花コスモス 何処も彼処(かしこ)も
彼(か)ばかり
やっと出会えり 紙上*に揺るる 秋桜
ーー*新聞紙上の写真を見
パッ パッパ 栴檀草*(せんだんぐさ)の枯実
炸裂 四方八方
ーー*漢字一語扱い
花火の如 弾けり 栴檀草の枯瘦果
まっ 凄い 南瓜の雌花 次々と
実南瓜も 小玉が次々 我(あれ)が庭
如何な事 訝る庭は 夢の内
ーー 我(あ)が庭に実生えせり
今年の南瓜は
枯れにけり 我(あれ)が南瓜 実見ぬ間に
まっ 凄い 南瓜の雌花 次々と
実南瓜も 小玉が次次 我(あれ)が庭
如何な事と 訝る庭や 夢の内
ーー 我(あ)が庭の実生えの
南瓜は
枯れにけり ああ哀れ 実や見ぬままに
令和2年 10月29日
<9首>
幽玄かな 戦ぐ尾花や 銀色映え
枯れ行きぬ 夏草 尾花や独り映え
見つけたり 花水木の朱美 二つ三つ
ーー始めての事 我(あ)が庭では
傘重ね 茸 ひょっこり 山の辺に
太い脚(茎) 元気な男の子のような 茸
薄茶色 椎茸でもなし 何の茸
橙朱の傘 御伽の国の茸や何方(いずち)
幾年か前 つと出会いぬ あの茸
出会いぬは この辺りと 見渡せど・・・
令和2年 10月30日
<9首>
木枯らしも 小憩らし 空青し
尾花 佇みぬおっとりと 風なくば
金銀に戦ぐ 尾花や 昼日影
あれ程に さわめきぬ尾花 今 鎮静
雀来ぬ 何方へ行楽 秋日和
熟し柿 独り梢に 冬烏
ふと見れば 蒲公英 一輪 秋の縁
打ち伏しぬ 風姿や 蒲公英の 秋の智慧
ーー秋風、秋雨から見を守る
もの寂し 蒲公英の花の 淡き色
令和2年 10月 31日
<12首>
日影追い 橋過ぐれば 野紺菊
ランタナ花(か) 暗紅に変化(へんげ) 秋深み
実や緑から 黒紫へ ランタナの
夫々の 花酢漿草に 秋日影
大地縛り 黄花 一輪 もう一輪
柏葉紫陽花 紅葉渋くも 華のあり
梔子の実 ほんに何時までも 開かぬらし
すいすいと 線葉リボン 水仙の
一捻(ひとひね)りもあり 水仙のリボン葉
花酢漿草 独り晴れやか 木下蔭
吹き寄せられぬ 枯葉 紅葉の錦なり
鼠黐(ねずみもち) 鈴生りの黒実 誰に告ぐ
令和2年 11月 1日
<11首>
風に吹かれ さんざめきぬ 枯れ狗尾草*
ーー*漢字一語(3語)
団栗 独り ひっそり 塀の上
団栗の 生垣上のお椀(殻斗) いとおかし
今秋 凶作? 団栗見ぬこそ 寂しけれ
山も凶作 ならば 猪 如何
例年は 団栗びっしり 踏み入る場無きに
そういえば 網入りの栗も 見ぬ侘し
ーー 店頭で
柿紅葉(かきもみじ) 愈よ 覚えり 秋深し
紅葉 二葉 肩寄せ合いおり 路の縁(へり)
扱き混ぜぬ 桜木の葉葉 黄 橙 紅
灯(ともしび)や ぽつりぽつりと 秋の宵
令和2年 11月2日
<9首>
枯れ葉垂(た)る 内に蓑虫(みのむし)の
幼なが
葉衣一枚 寒からずや 幼な蓑虫
枯れ葉集め 綴るらし 蓑虫の巣作り
枝(え)から垂れ 地上の枯れ葉集めや 如何に
何時の日か 立派な巣を 我(あ)見つけむを
襲われり 鬱陶しき哉 秋の気鬱
今日(けふ))の庭 秋の侘しさ 優りけり
心成し 尾花も華やぎ 失せにけり
曇り空 うんざり げんなり 昼下がり
令和2年 11月3日
<12首>
蜜柑 実一つ 枝迫り出しぬ 柵の下
葹(おなもみ)の実や 撓わ 茎重たそう
そうよ あの実 幼き日の 困りもの
ーー実や 鉤実 刺のある
今は 唯懐かしきばかり 葹の実
時鳥草(ほととぎすそう) 花びら 今にも飛び立ちそうな
時鳥草 渋き出で立ち 何方へ
棒となりぬ 柿のぬ蘖(ひこばえ) 紅葉落とし
柿の実一つ 枯枝に下がりぬ 木守柿
木守り柿 独り のんびり 昼下がり
紅葉落葉 柿の実 露わ 白光映え
三つ 四つ 柿の実映えり 山路行き
キラキラ映え 柿の実それぞれ 落葉後
令和2年 11月4日
<9首>
一重の薔薇 いえ 風に戦ぎぬ 秋牡丹(/秋明菊)
姫溝蕎麦(ひめみぞそば)淡紅花 揃いぬ 陽当たりに
秋の路 などか間伸びの ベゴニア花鉢
石蕗や 黄色の花茎 すらり すらり
アスパラガス 緑の偽葉に 黄小花の秋
紅紫色 小菊咲きぬ もうそ〔ん〕な時季
白光の 秋野に咲きぬ 彼(か)の花(か) 誰ぞ
素朴 爽やかな風姿の 男郎花
瞬く間 昔懐かし 秋の情(趣)
令和2年11月5日
< 11 >
姫柘榴(ざくろ) 丸〔果〕実 ぽっかり 橙朱色が
中身覗きぬ 姫柘榴の実 ぽっかり裂け
大丸も小丸と結びぬ 姫柘榴
嫁菜の花 薄紫が 山の辺に
簪(かんざし)を差したが如 姫柘榴の裂花
障子の影絵 柏の枝葉 秋風に〔揺るる〕
玻璃(はり)* 向こう 秋苑や 春麗
ーー*ガラス窓の意
玻璃覗けば 栴檀草(せんだんぐさ)の枯れ裂果
玻璃の外 蕭条(しょうじょう) 秋の小苑
秋冷も 秋風も覚えぬ 玻璃の此方〔側〕
鉄柵から 石蕗(つわぶき)黄花(きばな) 上下に
ペチュニア花(か) 鉢一杯 淡紅の
令和2年11月6日
< 9 >
白雪の咲いたが如 花椿
ハイビスカス淡い赤のラウンドの簡単な道
ーー 咲き残りぬを観て
逍遙疲れ 癒しの一輪 芙蓉花
癒されり 逍遙疲れの 我(あ)が老骨
岩 ぽつねん 黙然 盗人萩*野中
ーー*漢字一語扱い
橙朱に 燃えぬども 美し メタセコイヤ
曙杉⋆とは 実に名にし負いぬ メタセコイア
ーー メタセコイアの和名
(あけぼのすぎ)
一 二 三(ひい ふう みい)・・・
栗の実 五っも 枯毬(いが)離れの
初めて見たり 小さきの 枯実なれど
令和2年11月7日
< 10 >
今 散りぬ 紅葉の葉 瑞々し
猶 ひらり 音無し散りぬ 紅葉見たり
黄 橙 朱 暈(ぼか)しの 紅葉 美し
姫溝蕎麦 淡紅 鏤めぬ 溝の底
待つ宵草 萎みぬ日中(ひなか) 忘れ花の
昨夜(きぞ)の冷え 嘸(さぞ)辛からむ 待宵草
ーー待宵草の花期は、5~8月
バサッ 落葉一葉 鈴掛けの径
目凝らせど 彼(か)の蓑虫見ぬ 如何在らむ
野葡萄の 実の色 色々 水色から
小鳥の声 野葡萄の瑠璃色 帰り路
ーー昨日の小逍遥を想い出しつ
鈴懸の樹 一斉黄葉 一夜冷え(ひとよひえ)
ーー11月6日の真夜 急な冷え込みあり
赤柏 紅葉し初みぬ 一夜冷え
男郎花(おとこえし)咲き誇りぬ 一夜冷え
野菊もまた 笑顔や多き 一夜冷え
一夜冷え 黄花 噴き出ず 芥子薊
一夜冷え映え 男郎花* 野菊* 姫溝蕎麦*
ーー*漢字一語扱い
(合計 9語)
令和2年 11月9日
<10首>
至る処 姫溝蕎麦 日向ぼこ
夏蔦の 小さきも 紅葉(もみじ) 秋深み
芥子薊 黄花一斉 此処も 彼方(あすこ)も
姫溝蕎麦(ひめみぞそば)まだ此処にも
我が世の秋*や
ーー*我が世の春を捩って
いと愛らし 野芥子の 小黄花 総出演
枯棒となりぬ 柿の蘖ひこばえ) もう 芽吹き
何の実ぞ ピラカンサスの 背高く設えしの
桜紅葉(さくらもみじ) 束の間の輝き もう散り果てりぬ
山葡萄 残り紅葉葉(もみじは) 有終(/憂愁)の美
マリゴールド 黄花(おうか) 橙花(とうか)や 秋の華
令和2年 11月10日
<11首>
萩 黄葉 白花に優るとも 劣らずとも
ゼラニュウム 花震え 葉震えぬ 秋風に
蕭条 秋庭の千草 枯れ姿
柿紅葉 悉く落葉 裸木となりぬ
で
一葉残らぬ 木守り柿も見ぬ 哀
まあっ 碧空 行楽日和 コロナ禍に
我(あ)が行楽 我(あ)が庭で 落葉拾い
落葉焚き 白煙一条 青き空
ーー昔日を想い出しつ
落葉焚き 薩摩芋焼いたは 何時のこと
食(は)めば ゴリッ 炭のような 焼き芋に
令和2年 11月11日
<11日>
黄葉せり 葹(おなもみ)の花実 見ぬ間(あいだ)に
振り返れば 葹 実つけおりぬ 三秋も
葹何処(いずこ) 実見ぬ秋や 心(うら)寂し
思いがけ無(ぬ) 葹と出会り 秋の野辺
あっけらかん 葹 人の気も 知らぬ気に
そして今 鈴生りの実 色付きおりぬ
そのままおり くっつく相手の 通らぬ野
驚きぬ 絶滅危惧種とは 葹が
外来種*に 押され追われり 種子(たね)や少なに
ーー*大葹のこと
外来種 は嫌われ者 ほんに 不憫
異郷に 運ばれ 懸命に存えしが 哀
令和2年 11月12日
<15首>
紅小花 疎(まば)らの水引き まだ勢い
紅水引き 未だ勢いあり 暮れの秋
白花水引き 愈よ 枯れおり 暮れの秋
鶏頭も 独り残るも 花穂 鮮紅
鶏頭花 tお 独り 何(な)想う 愁雲
少しづつ 枯れ草払い 今日(けふ)もまた
そこはかと ミントの香(かおり) 枯れ草払い
枇杷落葉 払えば 蛇の髭 久し振り
竜の髭 重ね落ちぬ 枯れ葉の下に
南瓜双葉 四つ葉となるを 見たり今日(けふ)
時知らずや 南瓜芽出ずは 初夏の候
今 神無月 南瓜双葉 擡げぬとは
小鳥の餌(え)にと 撒きし種 我(あ)が庭に
おぉ 寒ぶっ と震えつ今朝も 窓際に
元気一杯 双葉広げり 南京幼な
令和2年 11月13日
<12首>
秋風に竦(すく)みたる 若木あり
ーー新しく設えつつある 庭の隅で
秋風 哀調 四方 荒寥
寄せ植えの 花 花 其処だけ 小春日和
石垣を 飾る石蕗(つわぶき) 黄〔花〕と深緑
震えおりぬ 溝底から咲きぬ 鬼田平子
鈴懸の実 何処に掛けようか 思案あり
黄葉の 戦ぐ崖あり 暮れの秋
鼬萩(いたちはぎ) 黄葉の枝枝 戦ぎ合い
大きな幡(はた) はためく如く 鼬萩
侘し気に 咲きぬ一八(いちはつ) 此処や何処
夢世界 寝覚めて覚えぬ 悲哀あり
昨年の秋 ジャーマン・アイリス*払われり**
ーー *一八の英語名
** 根共(ねごと)更地にされぬ
令和2年 11月14日
<12首>
蜜柑と柚子 色付き初みぬ もう初冬
此方の蜜柑 蜜柑色映え 鈴生りの
こじんまり 枝払われ 芙蓉冬備え
谷間 今 葛落葉 秋侘し
四方(よも)埋め尽くしぬ 葛の葉葉
いま何処(いずこ)
燃えるような紅葉(こうよう) 彼(か)や桜や
紅葉(もみじ)や
枯れ毬栗(いがぐり) 独り のんびり 日向ぼこ
石垣窪 こっそり一輪
小鬼田平子(こおのたびらこ)
もう ロゼット 蒲公英(たんぽぽ) 野芥子 鬼田平子
花酢漿草 桃花色映え 生垣下
紅葉一葉 花と見紛いぬ 生垣上
仄か 端紅(つまくれない)の 姫椿の蕾
令和2年 11月15日
<11首>
苗代苺 茎這い出づる 今 神無月
三出複葉 葉付け茎 出づる 苗代苺
這い出でて 踏み躙(にじ)られるも 葉生き生き
花咲き 実(みの)るは 初夏の候
何故(なにゆえ)に 生き生き この秋冷に
猶 増せり 小菊 野路菊 木下蔭*
ーー*木下闇を捩って
もう夕暮れ 釣瓶落としの 秋の暮れ
鶴瓶落とし 唯 南天の実の 赤く
蓑虫や 何処探し歩む 山の辺を
枯れ葉綴り 衣縫うたや 蓑虫幼な
葉の裏表 探れども見ぬ 蓑虫の衣
令和2年 11月16日
<12首>
朝まだき 釣瓶落としも 朝寝坊?!
朝まだき 白雲の間(はざま)に 残り星
淡き白き 叢雲 明けの明星(あかぼし)
漸うに 茜差す朝 晩秋
消えにけり 明けの明星 また今宵
玻璃越しは 小春日和や 今日(けふ)の朝
地上這はいぬ 蔓草も紅葉 黄 橙 紅
まっ 綺麗 少し見ぬ間に 公孫樹(いちょう)黄葉
黄色にも 色々ありぬ 黄葉の
戸惑いぬ 小春日和が ふんわりと〔我(あ)を包む〕
ーー 11月以降 寒さ厳しくなるばかり
だったので
昼下がり 不意に 暖かに 小春日和
令和2年 11月17日
<15首>
仙人草 咲き続ぬ 白十字花
見上げれば 蕾も見えり 仙人草
蔦と共 行く秋惜しむや 仙人草
白壁に 蜜柑の影絵 小春日和
水流る 溝底キララ 小春日和
小春日和 風も穏やか 小逍遥
黄葉や 花 実は来秋 葹(おなもみ)よ
梔子(くちなし)の実 口無しのまま 小春日和
一葉 また 一葉 散り来る 紅葉かな
吹き寄せの 枯れ葉に紅葉 紅一点
鈴懸の落葉 転(まろ)びつ
路最中(みちもなか)へ
あっ 危な! 車や疾走 落葉や無事
白に紅暈し 姫椿や妖し
妖艶可憐 姫椿の花気色
紅葉や華 幾つも落ちぬ 生垣上
令和2年 11月18日
<10首>
枯れ尾花 綿毛飛ばしぬ 朝日映え
宴の後に 似たり尾花の 枯れ景色
栴檀草(せんだんぐさ) 黄花もあれば 枯れ果実も
不思議哉 紅水引 未だ生生
枯れ草も 枯れ葉も 悉皆 朝日映え
野葡萄も 実 実 未だ 瑠璃色映え
実紫 実や紫映え 枯れ行くも
男郎花(おとこえし)野葡萄 野路菊
蕭条(しょうじょう)
葹(おなもみ)も 黄葉落としぬ 四方(よも)静か
花を見ぬ 晩秋野辺こそ 寂しけれ
令和2年 11月19日
<26首>
瓦葺き 白銀色映え 小春日和
白銀花穂 燃え立つような 枯れ尾花
紅葉(ももじ)の樹 漸うに 薄化粧(薄紅葉)
山里は
黄橙朱 綯い交ぜ 櫨(はぜ)の葉や錦(にしき)
鼬萩(いたちはぎ) 黄葉騒めきぬ 冬近し
萩 黄金色(おうごんいろ) 落葉の坂路
濃緑の 篠屏風 通り過ぎぬ 秋の末
一つ 三つ 谷間の柿の 残りおり
紅葉(もみじ)の間(はざま) 公孫樹(いちょう)黄葉
ちらほらと
彼(か)の公孫樹 もう落葉 黄葉みぬ間に
蜜柑の実 啄む鳥なく 捥ぐ人も
網被らず 橙(だいだい)丸く 大きく成りぬ
小灰蝶(しじみちょう)
彼(か)の影も舞いぬ デュエットね
源平小菊 はんなり ゆったり 秋日影
カンナ 一輪 咲き残りぬ 暮れの秋
歩く度 小菊の紅紫(こうし) 見え隠れ
黄小菊 たんと 大盛り 大鉢に
黄花マーガレット 四季咲き?
今日(けふ)も御機嫌
花酢漿草 勢い失せり 秋の哀
蟹仙人掌(かにさぼてん) 深紅の花芽 末の秋
ネリネ一輪 スラリ 花鉢の間に
鶏頭や 伸びに伸びたり 五尺超え
鶏頭の 一人天下や 枯れ花壇
忘れ花 芝桜の花 淡紫の
逆光を 避け見れば 彼(か)や 何(な)の花ぞ
ーー ブーゲンビリアの花 まさか!
ハラハラり 静心なく 枯れ葉散りぬ
令和2年 11月20日
<8首>
ーー昨夜を想い出しつ
濃藍から漆黒へ 三日月 煌煌
三日月に 星一つ出づ 晩秋
明くる朝 小春日和に 小雨あり
草紅葉 朱に映えぬ 彼方此方(あちらこちら)
草の錦 淡緑 朱橙黄に
匂い立ちぬ 草紅葉や 汝(な)や誰ぞ
薄曇り 光や仄か 暮れの秋
静まれり 四方(よも)の草木 我(あれ)も亦
令和2年 11月 21日
<17首>
裏山が 色付きぬ 錦秋には 遠くも
時折吹き去る 風の冷たき哉
吹く風の 冷たき強き 此(こ) 木枯らし
日差し強し 秋日傘と小逍遥
黄花小菊 色鮮やかなも 数少く
年毎に 花少くなの 小菊 小寂し
山辺には 青色の小さきが 少し見え
近づけば 露草の花 咲遅れ
二輪あり 連れ合い 或いは ぞれぞれ道
ロゼットとの 居並ぶ秋路 酸葉(すいば)らし
鈴懸の落葉 踏み分け 歩む径
敷き詰められぬ 絨毯の如 鈴懸の落葉
吹き寄せられぬ 鈴懸の落葉 七重あちこち
鈴懸の 落葉転(まろ)びつ 何方へ
見上げれば 鈴懸の実 枝の間に間に
見たり 見たり 鈴懸の実 三つ見たり
令和2年 11月22日
<13首>
公孫樹(いちょう)の葉 黄金映え無く 落葉とは
公孫樹 落葉 溝底に集いぬ 亦の景
姫椿 紅色映えぬ 逍遙路
彼方此方(あちこち)の 実南天
朱(あか) 赤(あか) 紅(あか)と
まっ 綺麗 黄葉(こうよう)の 美しの色
何(な)の樹ぞ と思うままに 通り過ぎぬ
葹(おなもみ)枯れり 葉も果実も 渋茶色
姫槿花(ひめきんか) 咲き残りおりぬ 三輪も
櫨(はぜ)の木 独り 紅葉鮮やか 下草枯れり
背高泡立ち草*低き 小さきが 咲き残りぬ
ーー*漢字一語扱い (5語)
時鳥草 此んな処に 庭の隅
鬼田平子 鉢独り占め 主や何処
か細げな 花茎 戦ぎぬ 知らぬ気に
令和2年 11月23日
<9首>
玻璃越しは 初冬の景色 増しにけり
小春日和 吹き通るる風 枯れ芒
寒冷哉 猛々しく吹きぬ 木枯らしらし
木枯らしの 吹き過ぎぬ下午 小春日和
小春日和 吹き抜けるる 木枯らし哉
紅水引き 枯れりと見しが 生き生きし
葉も花も 夫々 新生 紅水引き
御多福南天 紅葉美し 朝日影
令和2年 11月24日
<9首>
葉銀杏(いちょう) 黄金色に映えり 朝日影
独り立ちぬ すらりの薄(すすき) 朝日影
鬼田平子 ロゼット 点々 花茎もあり
ひたひたと 迫るる 初冬の忍び足
空鉢(あきばち)に仏の座 幼な葉 集め
落葉寄せ 焚くは何処や 昼下がり
落葉焚き難(がた) 枯草覆いぬ 我(あ)が庭
落葉焚きの香り 仄か 何処から
落葉焚き 晩秋の景 初秋の景
令和2年 11月25日
<13首>
実紫 花落ち 枯れ萼 花となりぬ
枯れ萼や 花冠の如く 実紫
枯れ草も 冬草も 野辺に山辺に
光る朱実 花水木に 一つ他は?
数えたり 朱実 二つ 花水木の初冬*
ーー*花水木の季語は 夏
吹き寄せられ 青草囲む 落葉あり
落葉集いぬ 囲むや青草端(あおくさばた)*
ーー*囲炉裏端に倣って
波紋 残しつ 落葉消えけり 池の畔
浮き世や 憂き世や 初冬の雲翳(うんえい)
四方(よも) 雲翳 黄塞ぎぬ 黄葉にも
鴨の脚* 散りて彼処此処(あちこち) 散歩らし
ーー*鴨脚樹(いちょう)の葉の意
黄葉の鴨の脚 此処にも 一脚〔一葉〕
姫椿 淡紅ぽぉ~と 夕間暮れ
令和2年 11月26日
<9首>
彼方此方に 黄葉映えぬ 山里の
雪柳 紅葉したり 石垣の
真っ黄っ黄 柚子熟れるまま 枝に生り
韮枯れぬ 黒紫の実の 艶やかな
縮みたる 落葉集いぬ 路の縁
溝底に 散りて縮みて 冬紅葉(ふゆもみじ)葉
紫陽花の 枯れ葉悠然 溝底に
枯れ果てりぬ 狗尾草や また来年
枯れ芒 手折り 払いて 冬始め
令和2年 11月27日
<15首>
散りにけり メタセコイヤ の橙葉も
はらりはらり 散りぬる紅葉 冬近し
野葡萄の実 色移ろいぬ 白から瑠璃
鬱蒼たる 街路樹 もう冬備え
躓きぬ 松毬其処此処 松並木
石段に 紅葉一葉 また 一葉
柿の実が 彼方(あちら)に一つ 此方にも
十三個 柿色映えの 実美(うま)し
夕化粧 もう咲き備い 未だ咲くや
ーー もう冬近し、なのに
令和2年 11月28日
<12首>
ざわざわと 葹(おなもみ) 銀杏(いちょう) 枯れ尾花
雲間より 陽の振り注ぎぬ 枯れ尾花
石段を 喘ぎ上れば 冬紅葉
葉紫陽花 青青生生 冬日影
もう木枯らしの 吹き荒ぶ 野辺となりぬ
咲き残りぬ ペチュニア花 震え咲き
枯れ尾花 枯れ刈萱 戦ぐ 我(あれ)が庭
緑中 紅姫椿 夕日映え
紅葉映え 彼方此方(あちらこちら)の 防護壁
水仙の もう咲くを見たり 冬花壇
彼方(あちら)にも水仙 三輪 横顔を
此方また 山際自生の 水仙
令和2年 11月 29 日
<12首>
黄葉は 暖かき色 春の色
黄葉は 其処 此処 彼処(あすこ)
四方(よも) 溢る
はらはらら 紅葉時雨や 谷間は
紅葉落葉 転(ころ)びつ 転(まろ)びつ
鬼ごっこ
春野芥子 黄小花 咲きぬ 初冬路
木漏れ日に 落ち紅葉*映え 下草も
彼(か)や 鉄線 八重の大輪 藤色の
ーー鉄線(クレマチス)の花の
季語は夏
姫椿 生垣の其処此処 深紅花
夏蔦枯れぬ 紅葉一葉 下がりおり
紅葉の樹 あの紅葉見ぬ 何方へ
柿実る 一つは熟しぬ 吊るし柿
令和2年 11月30日
<11首>
紅葉の夏蔦 散りぬ 黒紫の実
胡蝶の 二人舞いと 見しは 枯れ葉の
久しけり 狐の牡丹 実を見ぬは
出会えねば 懐かし 狐の牡丹* 今何処
ーー*漢字一語扱い (4語)
狐の牡丹 実一番の くっつき虫
ーー此は 幼き日の思い出
狐の牡丹 独り 実乗り出し くっつきぬ
ーー葹(おなもみ)は塊生りに
狐の牡丹 葉姿 牡丹似 栴檀草(せんだんぐさ)も
尖(とんが)て 刺しに来るる 栴檀草の実
くっつかぬ 狐の牡丹ほどにも 栴檀草の実
源平小菊*や 姫溝蕎麦と 日向ぼこ
ーー*漢字一語扱い(4語)
青空に 柿の実 高き 通りすがり
令和2年 12月1日
<12首 >
玻璃越しは 軽風に見ゆ 木枯らしも
春野芥子 早や 霜枯れ いえ まだ紅葉
冬日差しぬ 欄干の影踏み 小逍揺
姫踊り子草 小さきが次々 石垣下
仏の座も 小さきが御座(おわ)す 初冬の縁
今咲かむ とばかり水仙 首傾げぬ
黄小菊や などか侘し気 冬初め
侘しさも 一興 一情 冬花壇
どうして今 黄花マーガレット 戸惑い顔
ーー咲いたのか・・・ 花期は夏 今初冬
転(まろ)びつ吹かる 枯れ葉と歩みむ 我(あれ)
止まりたる 枯れ葉横目に 通り過ぎ
夕焼けや 見ぬ間に夕闇 初冬 寂
令和2年 12月2日
<11首>
朝焼けや 白雲飛ぶ 小鳥も飛ぶ
鴨の脚* 今日(けふ)は何処まで 散るのやら
ーー*鴨脚樹(いちょう)の葉の意
鴨の脚 何処へ散ろうか 思案顔
鴨脚樹の下 屯(たむろ)するもあり 鴨の脚
散らぬまま さんざめき合う 鴨の脚
鴨の脚 散らず残りぬ 梢 賑(しん/にぎやか)
今度(こたび)もまた 実結ばぬ 銀杏(いちょう) 雄花らし
蕭条(しょうじょう) 我(あ)が庭 枯れ草の庭
枯れ草に 南瓜幼な 葉一杯
思案しつ お米の磨ぎ汁 幼南瓜へ
ーー自然に委ねるが良いかと。。。
入日受け 薄すら輝きぬ 枯れ銀杏(いちょう)
令和2年 12月 3日
<7首>
白き雲 ほんのり浮かびぬ 初冬の朝
茜映え》白壁 白塀 白き雲
柚子映えり 黄金色の実 初冬(はつふゆ)に
夏蔦も 枯蔦となりぬ 初冬かな
枯れ草叢 背高泡立草*独り 緑(みどり)映え
ーー*漢字一語扱い
遅れ咲き 背高泡立草(せいたかあわだちそう)
四方(よも)見渡しぬ
令和2年 12月4日
<10首>
あぁ 寒ぶっ! 昨夜(きそ)一番の冷え込み とか
玻璃越しの 庭 春想わるる 春想色
黄葉せり 一葉残らず 庭の萩
吃驚せり 虎杖(いたどり)の丈 マキシマム
七尺超 虎杖もはや 竹の如
虎杖 五茎 ミニ竹林の如
共生(ともおい)の 紫陽花今や 枯れ姿
紫陽花の 精吸い上げたのかや 虎杖よ
例年は 二人(/二種)生え とんとんに
何故(なにゆえ)に 何の兆しや この珍事
令和2年 12月 5日
<10首>
白き月 未だ残るる 初冬の朝
青木(あおき)の朱実(あけみ)
此処 其処 それから 彼処(あすこ)にも
見つけたり 葉隠れに 一つ 青木の朱実
野茨の 朱き実一つ 枯れ蔓に
朝 木枯らし 昼 小春日和 此の方が好(こう)
ゆくりなく(/思いがけず) 出会いぬ
金蓮花(きんれんか)の小さきに
黄小花*や 独り石垣 にっこりと
ーー* 春野芥子らし
冬日差し 眩しきに 目伏せぬ 逍遥路
- 足元や 枯葉 コロコロ 落葉 コロ
枯れ葉 朽ち葉 落ち葉 溝底に幾重にも
令和2年 12月6日
<10首>
残月の 猶輝きぬ 初冬(はつふゆ)の
寝覚めたや 庭の枯れ草 残月に
白み行きぬ 大空 侘しむ 枯れ尾花
女郎蜘蛛 虫の飛び路*や 通せん坊
ーー*’雲の通い捩って捩って
哀れ 虫 蜘蛛の巣に掛り 翅(はね)ばかり 伝えあり
枯実爆ぜ 栴檀草*(せんだんぐさ)や
やんちゃ坊主の如
ーー*漢字一語扱い
くっつくや 栴檀草や くっつき虫
未だ黄花咲きぬ 枯実隣りに 栴檀草
黄花 寒そう 栴檀草の 初冬哉
ーー栴檀草の花期は、8~10月頃
零羽2年 12月7日
<7首>
黄と橙 万寿菊(まんじゅぎく)*や 冬霞(ふゆかすみ)
ーー*マリゴールドの和名
遠目には 万寿菊や 春景色
大丈夫? 初冬に咲くとは 万寿菊
と問えば 頷きぬ 健気 万寿菊
もう 初冬 の感深まれり 枯れ草刈り
刈り取れば 何(な)どか寂しき 枯れ芒
枯れ芒 まだ緑もあり 我(あれ)が庭
令和2年 12月8日
<9首>
朝まだき 冬灯残れり 三つ二つ
はっくしょん 冷え込み増しぬ 今日(けふ)の朝
もう一枚 冬衣 羽織るる 今日(けふ)の朝
思わすに 手引っ込めぬ 水の冷たさ
ーー 蛇口からの水
暫し待つらむ 温水の出づるまで
枯れ草刈り 少しづつや 姥の仕事
夕間暮れ 枯れ芒や 幽霊立ち*
ーー*仁王立ちに倣って
黄葉せり 葹(おなもみ) 実生(な)りや待たづ
今はもう 葹 最後の一葉*もなく
ーー* 0.ヘンリーの短編集
「最後の一葉」に倣って
令和2年 12月9日
<14首>
冬蔦の 緑 深まりぬ 雲淡く
孔雀羊歯 窪みで 生き生き 冬備え?
女郎蜘蛛 三重(みえ)に網掛けぬ 雌のアート
複雑な 立方体 初冬の網
生垣から 萌え出づ紅葉(もみじ) 紅葉(こうよう)映え
刈られても 猶 嫩葉見ゆ 苗代苺
未だ散らぬ 枯葉さんざめきぬ 初冬のメロデイ
鮮やかな 紅葉 彼方の紅葉 此方のも
我(あ)が紅葉狩り 二本の樹の間 通り過ぐ
姫椿 遠め 近めも 深紅花
三色菫 初冬の華に 冬花壇
小刻みに 震えり パンジー 哀れあり
ひらひらひら 梢の一葉 冬日映え
影法師 伸び 伸び 伸びぬ 冬日影
柿食はめば 烏の鳴き声 夕間暮れ
令和2年 12月10日
<10首>
くるくるくる 枯葉の舞や 蜘蛛の糸{にぶら下がり}
くるくる くる 右へ左へ 留めなく
白き胸 翻し飛び去るる 小鳥誰(た)ぞ
雀には見えぬ お洒落な 尾長の風姿
朝日差しぬ 草 紅葉 枯れ草にも
女郎蜘蛛 御免なさいと 巣払おうと
せむと思えど せむで 枯れ草刈りを
漸うに 雪柳や 紅葉せり
花水木 紅葉あれば 枯葉(こよう)もあり
橙 錆色 雪柳紅葉(もみじ) 枯葉に非ず
令和2年 12月11日
<9首>
冷え込むも 裏山紅葉の 錦ならず
裏山は 紅葉見ぬ間に 枯れ茶色
か細き梢 紅葉(もみじ)葉 か細く揺れぬ
ネリネ 独り 鮮桃花色 咲き続き
枯葉一葉 丸く縮みぬ 柵の狭間
女郎蜘蛛 どんと座りぬ 巣の真中
女郎蜘蛛 女王にも見え 老女にも
熟れ 熟れの 南京実総 そのままに
誰も未だ 啄みに来ぬ この不思議
令和2年 12月12日
<12首>
もう嫩芽(どんが) さくらの梢 紅葉(もみじ)葉散れば
桜木や 嫩芽 嫩芽の 冬の空
もう蕾 桜の梢に 膨らみが
仙人草 華枯れるる 白期蕾
メタセコイヤ 実の丸きが 丸々と
哀れ拉げぬ 枯れ毬栗 路の縁
冬日溜まり 酢漿草(かたばみ)生き生き
紫陽花萌え
冬草や 青青点々 路の縁
寂しき哉 タンポポのロゼット 見ぬは
例年は この路縁に 並び
実や何処 梔子の垣根 口割らぬ
黄 紅 白 笑顔振り撒く 小菊鉢
令和2年 12月13日
<11首>
門脇に 葉牡丹飾り もう師走半ば
葉牡丹 知るや知らずや もう師走半ば
葉牡丹は 大形 一色 食傷気味 ーー
ーー 数年前まで そうでした
今や 葉牡丹 形 様々 大小高低
色も色々 紅紫 白緑 黒紫
遠回り いつもの路を 探紅葉*
ーー* 探梅に倣って
十数歩 片アーチの紅葉 潜り抜け
紅葉探 難し 近間(ちかま)も 老女には
紅葉見は 遠見に 浮かぶを見るばかり
燃えるような 紅葉(もみじ)の紅葉 見ま欲しき
令和2年 12月14日
<9首>
飛び来る 雀冬野に 落穂ひろい
躓きぬ 老いの身哀し 初冬の坂
彼(あ)の綺麗な 草紅葉 誰(た)ぞ大犬蓼
白秋も 枯れ柴となりぬ 初冬かな
芝を刈る 爺さまの姿 疾くに見ぬ
ーー 昔話: ’お爺さんは、山へ芝刈りに・・・’
椿
紅葉一葉 枯れ草に 紅葉映え
水仙 一輪 四方(よも) もう 冬景色
熟れおりぬ 零れむばかりの 実 実 実なり
縮かみぬ 落ち姫椿* 路の縁
ーー* 落ち椿に倣って
令和2年 12月15日
<11首>
溝底の 紅葉(もみじ)葉 何処より 飛び来る
遠方より? 見渡せど見ぬ 紅葉の樹
遠方より 遊覧飛行や 紅葉〔樹〕の紅葉〔葉〕
ゼラニュウム 赤花震えり 北颪
春野芥子 綿毛となるも 飛ばぬまま
北颪 吹かず優し 春野芥子に
おぉ 寒っ 思わず縮かみぬ我(あれ)が身かな
悴みぬ指 息吹きかけり 北颪
幼き日の 習い思い出したり 今朝
北颪 枯れ尾花戦ぎぬ 朝日映え
白木蘭 蕾膨らみぬ 白く白く
令和2年 12月16日
<9首>
冷え込みや 朝まで続きぬ もう真冬
一歩 二歩 冷気纏わる 今朝の冬
今冬一番の冷え 二度目の予報
此の冷気 向後の冬季 思い遣らる
冷たき指 冷たき蜜柑 炬燵守り*
ーー* 子守りを捩って
玻璃戸越し 陽光注ぎぬ 暖ったかそう
ウオーキング 3歩で 底冷え 腰痛が
北颪にも 枯れ庭曄く 陽光に
花水木 実三つ 北颪と陽光に
令和二年 12月17日
<12首>
餌探し 群れ来ぬ 小鳥 この寒空に
昨日(きそ)も 今日(けふ)も 群れきぬ小鳥
梅の樹に
あっ 彼(あ)の姿 鶯かとも 雀とも
鶯 群れ来(く) 梅の一樹に 我(あ)が庭の
梅に鶯 ほんに誠(まこと) 柏木 素通り
ーー 12月15日の小逍遥を
想い出しつ
チャッ チャッ チャ また聞こゆ 誰(た)ぞ
小鳥の地鳴き
鳴きつる方や 姿見ぬ 初冬路
思えば あの地鳴き 神無月の下旬から
あの地鳴きや 鶯の 笹鳴きとは
ーー 鶯は 初冬には 山奥から
里へ帰り来ぬとか
あの笹鳴き ひと恋しの アピールかも
笹鳴きは 唯今の挨拶 お帰りなさい
来春には また谷渡り 聞こゆかも
令和2年 12月18日
<13首>
朝風か いえ そろり吹く風 師走の
冬紅葉 一葉飾りぬ 逍遙路
転び行く 枯葉や速き 北颪
忘れ咲き 背高泡立草* や 黄花穂映え
ーー*漢字一語扱い
草紅葉 未だ残れり 大犬蓼
非榊(ひさかき)の実? いえ 南天の 潜りたる
もう 冬芽 まだ紅葉(こうよう)の 雪柳
月冴え冴え 極月や 枯れ芒
令和2 12月19日
<14首>
白らみ行きぬ 冬空 明け烏 一羽 かぁ~
白き月 明け烏 枯れ草の野
末央柳(びようやなぎ) 今紅葉せり 遅れ馳せ
渋紅紫 未央柳葉 冬気色
実葛や 枯れ色 フェンスに絡みたるまま
穏やかな 冬日差しぬ 木枯らしなくば
吹き寄せらるる 枯葉溝底 七重八重
ハート形 重なり叢がりぬ 汝(な)や誰ぞ
青青と 春想わせる ハート形
水仙花 少し 羞恥(はじらい)の 気色あり
咲き急ぎ 水仙の 花期は これからよ
寒菊の 鉢並ぶ路 通り路
枯れ菊の 侘びし風姿 哀れあり
裾捲くれ 枯れ行く菊茎 哀し気な
黄 萌黄 燃え立つよな花 山吹の
令和2年 12月 20日
<9首>
衝羽根空木*(つくばねうつぎ)
刈り込まるるも直ぐ白小花
ーー*漢字一語扱い
花散れば 萼そのまま 小さき 衝く羽根
衝く羽根と羽子板 正月遊びのセット
羽根突けば あぁっ もう鳥渡(ちょっと) 羽子板よ
羽根衝けば 羽子板 右に左にと
あぁ しんど~ 羽根突き 鳥渡中休み
頬紅潮 羽根突き楽しき 正月遊び
花穂枯るるとも 葉まだ青き 背高泡立ち草んん
朱美 ポトリ 対馬れぬまま 南天の
令和2年 12月21日
<11首>
濃密な 陽射し 冬とは覚えぬ 輝
白雲や ふんわり ぽっかり 寒空に
玻璃越しには 春気色演出 白き雲
次いで現わる 白雲 飛行船の如
白雲や 二つとも消ぬ 木枯らし吹
飛行船雲 何処(いずこ) 遥か彼方に ふんわりと
点々と 散りおりぬ 紅葉(もみじ)葉 路に 溝に
落ち紅葉 型染めの如 路に 溝に
紅葉散りぬ 実八つ手 独り 拳骨(げんこ)振り
八つ手の実 拳骨突き付けぬ 枯れ草野
花水木 小さき 擬宝珠(ぎぼし) 梢 梢に
令和2年 12月22日
<16首>
北颪 花穂揺りおりぬ 霞の樹*
ーー*洋名は、スモーク ツりー
紅葉(もみじ)の樹 唯独り 紅葉 枯れ木立
枯れ紫陽花 紅葉もなく 灰枯色
谷間荒涼 木守り柿 もう見ぬ
姫椿も もう散りおりぬ 命短か
姫椿散りぬ 一瞬の栄華
吹き寄せらるる 紅葉黄葉 朝日映え
溝底の 冬草しっとり 朝日映え
蓬 もう 嫩葉 若葉 や 朝日映え
悴む指 紅葉葉 透かして 朝日映え
未だ散らぬ 桜紅葉や 朝日映え
寒木瓜(かんぼけ)や 三輪寄り添い 何(な)の相談
青色も やがて鈍色 孟不輸の空
柚子 愈よ 黄金映えに 枝撓る
夏蔦の まだ彼遣らぬ 一興あり
蔓桔梗 垂る壺垂れの如 白壁を
冬薔薇(ふゆそうび) 突っ支い棒され 冬備え
木仕立て(ぼくしたて)の 冬薔薇 蕾まだ
姫溝蕎麦 のんびり にっこり 冬日影
白壁 に 棚引きぬ 枯蔦 紅葉三つ
阿多福南天 紅葉鮮やか 我(荒れ)が庭
良く見れば 黄葉の楓* なんとまあ
ーー* 葉団扇楓
撫子健気 咲き続きぬ 唯今初冬
パンジー元気 花弁(はなびら)ひらひら
今日(こんにち)は
紅葉散りぬ 枯れ木立透かしぬ 潺(せせらぎ)の音
令和2年 12月24日
<11首>
薄曇り 枯れ尾花や 銀色映え
薄曇り 枯れ草靡きぬ 静けさに
垂れおりぬ 枯れ葛の枯れ実 薄曇り
そこはかと 匂う柊の花 逍遙路
柊の花(か) 懐かしき哉 逍遙路
万両の実 赤 朱赤 葉隠れに
万両の実見ぬ 我(あ)が庭 小寂しむ
垣間見たり 千両の赤実 帰り路
初春を飾りぬ 葉牡丹 薹や立ち
伸び伸びぬ 葉牡丹 迎春如何ばかり
令和2年 12月25日
<11首>
蓬の花穂 白き 泡塊 誰の巣ぞ
)
ーー* 秋から見かける白泡
谷間は 流水光るる 枯れ木立
如何なりや 枇杷の花見ぬ おかしき哉
枇杷の梢 蕾と見しは 屈みの嫩葉
露光る 青草 彼方此方(あちこち)
路の縁(みちのふち)
寒風の 坂路 上るる ゆるゆると
石垣の 実生の楓 枯れ紅葉
姫椿 此処でも 萎れり 哀れあり
白に淡紅 今は 枯色 姫椿
宝石の如 石英片* 夕日映え
ーー*石垣の石英片
令和2年 12月26日
<14首>
花(か)も蕾’らい)も 見ぬ枇杷の樹 今冬の怪
今冬は もう諦めるべきか 枇杷の花
そっと葉を 押し上げれば 青木の朱実
未熟も 実熟も 緑から赤まで 〔青木の実〕
青木の実 二十やも 何時の間に
一つ 二つ 数えれば 葉隠れにも実
塊りて 三つ五つにも 青木の
あっちこっち 誰(た)の枝移り 冬の庭
玻璃越しは 冬日も温か 小春日和の如
飛び去りぬ 雀の一群れ 鶯何処
ーー 晩秋には、 鶯の訪れあり
我(あれ)が庭
帰り来たり 鶯色の背 枝移り
光るる葉 寒椿 花やまだ見ぬ
枯れ花穂*に 未だ青き葉 冬日映え
ーー* 背高泡立ち草の
薄墨の 雲に輝き 冬日差し
令和2年 12月27日
<7首>
明るみぬ 冬 漸う 正午前
急降下 餌見つけたか 枯れ冬庭
山辺へ 一斉飛び行く 鶯 何故に
差し込みぬ 隙間風 我(あれ)震えぬ
近づけば 実数多(あまた) 垂るる 万両の
実万両 実南天 朱の共演
目凝らせば 万両の実や 幻夢なり
令和2年 12月 28日
<11首>
射干玉(ぬばたま)の 冬夜 灯一つ 星一つ
静けきかな 冬夜の深みに 填まるれば
木枯らしの 息潜そるる小夜 静と寂
無音なり 冬夜更け行く その寝所
冬の小夜 無念無想の 鐘響きぬ
伸び伸びぬ 南天今や 庇(ひさし)越え
実生の 南天 其処は 隅 我(あ)が庭の
半日影 南天の お気に入りとは
彼(か)の南天 葉ばかり 生々 如何なるや
実を見ぬば 観葉も 一つの景
とは言えど 実一つ無きは 哀しけれ
令和2年 12月29日
<15首>
水仙叢 もう花咲きぬ 桜樹の元
黄小菊 1輪笑顔 夕日影
白菊の 小さきが彼方此方 冬の山辺
枯草叢 冬草(/青草)がそっと 彩りを
鈴懸の実 一つ ちょこなん 石垣上
酢漿草の葉 七重八重生いぬ 防寒か
葉牡丹や 独り勢あり 迎春備え?
ゆるゆると 歩む足元 根生葉
野豌豆 小さき 小さは いと愛愛らし
烏 雀 分からぬ 小さき野豌豆
長実雛罌粟(ながみひなげし) 小さきロゼット
冬日影
冬麗ら スカーフ 外しぬ 帰り路
静かさと寒さ 綯い交ぜ 冬の小夜
眠英れぬ 冬夜 過ごしぬ 無為無策
入眠待つ 冬の夜長のぉぉ 長きかな
まぁ 綺麗 お花畑や 夢幻の景
令和2年 12月30日
<9首>
射干玉*(ぬばたま)の 黒き実見たり 非榊(ひさかき)の
ーー* 射干玉のは、黒に掛かる枕詞
確かめり 我(あ)が庭に出で 非榊を
実生えなり 知らぬ間に 我(あ)が庭に
非榊の種子 誰(た)が運び来るや 日よ雀
花や春 白色鐘形 垂る横向き
実探せば まだ緑 紫がかるる
暫く待たむ 射干玉の黒き実を
白露の 滴る朱実 南天の
槿花(きんか)狂い咲き いえ 黄葉の白化映え
令和2年 12月 31日
<11首>
闇夜に 薄っすら 白光 柏の日影
よく見れば 雪 雪冠の 我(あ)が庭に
音も無く 降り積もりたり 闇夜の雪
いつの間に積りたる 闇夜の雪よ
闇夜に雪 月影も 星影も無く
玻璃越しの 真夜の雪見や 寒慄かな
積雪 約半寸 立派な 雪世界
ーー当地、神戸は温暖、
雪降るは、稀なれば。
枯れ尾花 雪冠りすれば またの景
昨日(きそ)積りたる 雪そのまま 大晦日
大掃除 出来ぬ間に 大晦(つごもり)
除夜の鐘 聞くも聞かぬも 百八つ
令和3年 1月1日
(10首)
初春や 淡藍の空 小鳥一羽
白雲の沸き出る 初春の空
初春の光り 草木や 晴れやかな
寒忍び寄りぬ とはいえ今 初春
初春の お祝い膳には お餅なく
平穏に過ぐる 初春 無上の幸
いつもの通りこそ 初春のめでたさ
白雲の のんびり おおどか 初春の下午
年経(へ)れば 年毎に減(へ)りぬ 年賀状
射干玉(ぬばたま)の真夜 灯(とう) 一つ
令和3年 1月2日
<8首>
初夢や 思い出せぬ 老いの身 哀〔あい/かなし〕
今一度 初夢を 初春二日の夜に
ーー 初夢は、初春二日目の夜の夢とぞ
青草上 凍るる晦日(みそか)の初雪や
長閑(のど)けき哉 初春の光り 降り注ぎぬ
枯れ庭や 初春の風もや やわらかに
初雀 昨日(きそ)と変わらじ 餌探し
初春の祝に 餌播きぬ 昨日(きそ)のように
シクラメン 小さきや愛らし いずれも哉
令和3年 1月3日
<9首>
薄日差す 初春の坂 ゆるり ゆるり
流る水 初春を寿き 猶 流る
水仙花(か) 数 増しにけり 初春路
谷川光る 枯木立 透かし光る
黄花マーガレット 咲きぬ 寒そう 可哀そう
桜草 小さきが 三輪 逍遙路
寒小菊 枯れつつも猶 華のあり
綿毛飛ばしぬ 枯れ尾花の 細きこと
夕間暮れ 初春最後の* 茜色
‐‐*’正月三が日最後の’の意味
令和3年 1月4日
<7首>
晴青色 裏山の空 ほ〔ん〕に 初春
初春の 茅滞(ちぬ)の海 晴暈しの
坂上りぬ 遥拝したり 東方を
初詣 今年も成らず 今年や如何に
初茜 拝む我(あれ) 我(あ)が初詣
坂下りぬ ポストへ年賀状 晴れ晴れし
零話3年 1月5日
<7首>
日溜りの 公園のベンチ 人影なく
刈り取られぬ 枯れ草 冬景色
枯れ草も 冬の賑わい 亦 楽し〔からずや〕
蕭条(しょうじょう)も 一趣 冬なれば
あらっ 雪の花 いえ 雪柳の忘れ花
雪柳 紅葉葉残りぬ 初雪の苑
蕾もや 霜枯れ紅葉 点々と
令和3年 一月6日
<9首>
白き月 ぽっかり中空 初春の〔朝〕
刈り込れぬ 槿や越年 すっぱりと
まぁ 晴れやか パンジー 撫子 春気色
春野芥子 霜枯れるるも 紅葉色
蕾 蕾 満目蕾の 寒椿
土筆 いえ 枯れ狗尾草の 小さきの
冬苺 霜枯れにも せい〔(精/勢〕 強し
アガパンサス 剣状葉 緑 冬日映え
蕭条 花鉢すっかり 枯れ抜かれ
令和3年 1月7日
<8首>
曇り空 霙に降る雪 北颪
雪降りぬ 霙から変化(へんげ) 寒の入り
おぉ 寒い 玻璃戸の外側 内側も
もう止みぬ 雪降り3分 ほっとせり
もう晴れぬ と見るに 霙や 一滴 二滴
明るみぬ 西方より 春の色
若菜摘み 外へ出でぬも 余りにも〔寒し〕
七草粥 幼き日の 彼(あれ)薺(なずな)らし
令和3年 1月8日
<8首>
室温1℃ 細き雫や 水栓の
指先の 凍るる今朝や 大寒波
この寒風 この寒気ぞ 寒の入り
掛けてみる 熱湯 凍るる 水栓に
少しばかり 太くなりたり 水栓の雫
青空の 怨めしくも見ゆ 今朝の寒気
縮こまり カールしており 庭の冬草
りラックス 縮かむ冬草 陽戻りぬ
令和3年 1月9日
<9首>
さんざめきぬ 稚児笹 キラキラ 冬日影
白雲の ぽかり またぽかり 小寒の
北颪 吹かれ おわれぬ 転ばぬように
踏ん張りぬ 吹き荒ぶ北颪 寒(さぶ)ぶ!
北颪 吹きぬきぬ方(かた) 枯木立
北颪 追い抜かるる 吹き抜かるる(あ)
プラタナス* 鈴の音も聞かぬ 小寒
ーー 和名は 鈴懸の樹
枯れ小珠(鈴) 梢に寂し 鈴懸の樹
枯葉 独り下がりおりぬ 鈴懸の高枝
令和3年 1月10日
<11首>
小寒(しょうかん)といえど 大寒(おおさむ)
今朝の四方(よも)
息吹きぬ 縮かむ指先 昔のように
大寒波 福良雀が 玻璃の外
水涸れる 寒風荒ぶ 枯れる冬草
有難き 湯水や流る 水栓よ
ーー給湯器凍結にもかかわらず
寒波見えぬ 玻璃越しや 陽射し4あり
纏わり付きぬ 寒気振るにも 振れぬ
薙ぎられたような木蔦 寒波一過*
ーー*’台風一過’ に倣って
あぁ 無残 深緑の木蔦 ぺっしゃんこ
薄明り 障子の向こう 如何あらむ
雪や見ぬ 唯寒々 小寒の庭
令和3年 1月11日
<8首>
明けやらぬ 冬空 明け烏 一羽
雀二羽 飛び来 飛び去る 寒の庭
膨(ふく)ら雀 我(あ)も着膨れ 寒の空
悄然たり 庭の枯れ草 冬草も
遂に終えり 背高泡立草⋆黄花 愛と哀
ーー*漢字一語扱い
ミント哀れ 萎れるまま そのままに
ーー寒波に見舞われて
甦りぬ 常盤の木蔦(きづた) 逞しき
令和3年 1月12日
< 31首>
ふんわりと 雪積りりぬ 柏葉に
甍の雪ばかり映えぬ 雪日和
降り止まるどころか 降り続く 今朝の雪
室温4℃ 雪の日 意外 温かき
枯れ草もすっかり 今朝や 雪化粧
傾ぎおりぬ 南天の片側 雪冠
雪花 雪花 皐月躑躅や 雪(花)盛り
今日(けふ)の大雪 幾年振りの 大事哉
枯れ庭にも 雪積り来ぬ 一驚一興
枯れ庭や 雪野原となりぬ 今朝
雪世界 一瞬の 雪花の世界
雪解ければ また荒寥 真冬の庭
福良雀 この大雪に 餌探し
小鳥飛ぶ 雪日和に飛び行く 何処へ
露滴り光る 雪解けるる 枯枝
木蔦 緑そのまま 庇(ひさし)の下
稚児笹 葉撓りぬ 雪や重きや
枯れ尾花 雪冠りしたり
雪降りの路 足跡消えり 雪冠り
キシュ キッシュ 聞こゆ 雪踏む 足の音
降り続きぬ 積雪 五分(ごぶ)から 一寸へ
勢いづき 降りたる雪や 生き物の如
雪の路 足跡新た 何方へ
南天朱実 雪冠りより 雪塗(まみ)れ
細雪 牡丹雪から 細雪
静穏に 昏(く)るる今日(けふ)や 炬燵守
四方(よも)の雪 消え 甍に 少しばかり
嵐の如 来(き)去りぬ 雪 今 沈沈
雪降り続くも 雪冠り消えり
ーー 四方 暖(ゆる)みたる所為のよう
パサッ ポトリ 落ちぬ またポトリ 雪落ちたり
無惨な風姿 枯れ庭や 雪解けぬれば
令和3年 1月13日
<9首>
今日(けふ)や 早や 小冬日和*っての暖かさ
ーー*’小春日和’ に倣って
一切れの 白雲も見ぬ 冬日和
有り難き哉 雲一つ無き 冬日和
ーー 昨日(きそ)や’大雪’なれば
朝凪や 四方無音の 冬日和
枯れ草も 柏葉も猶 冬日映え
いつの間にか 浮かびぬ絹雲 冬日和
冬日和 青木の朱実(あけみ) 葉の間(はざま)
哀れ ミントの小叢 悉皆 枯れぬ
滾らせり ミントの嫩葉(どんが) 枯れ叢下(か)
令和3年 1月14日
<9首>
玻璃の内 暖か冬日 温室の如
今日(けふ) もう 三寒四温の始まりか
微風(そよかぜ)に 枯れ草戦ぎぬ 冬光*差しぬ
ーー*’春光’に倣って
雪一転 淡藍の空 春の空
こんなにも 違うや 空の色 二日の差
ーー 一昨日の大雪、今日(けふ)の陽気
二日の差 如何に覚えなむ 小寒の
陽光に 戦ぎぬ枯れ草 冬深しも
庭の縁(へり) 雪凍るるまま 消えやらで
絹雲 千切れぬ 何方へ 春色の空
令和3年 1月15日
<18首>
欄干に絡む 枯れ蔦 縺れ舞
紫陽花 葉 枯れるも 蕾抱(いだ)きぬ
今日(けふ)出会いぬは 嫩芽や 花芽や 枇杷の樹の
梳(けず)られし荒れ野に もう 蓬萌え
悉く 枯れ草 刈られり 斯くばかり
冬の野辺 松葉松毬も 灰茶系
水仙の 小叢 其処此処 花や未だ
垣根越し 柿悉く落果 侘び
逍遙疲れ ベンチの老女 冬日差し
影法師も 一休み哉 冬日影
庇上 鳩三羽 日向ぼこ
実生(みばえ)枇杷 幼きがもう 嫩芽抱き
未央柳(びようやなぎ) 葉や暗紅紫 霜枯れ前や
彼方此方で 出会えり山茶花 紅花の
山茶花 三裂枯れ実 道路上
ぽっかり割れぬ 山茶花枯れ実 種子何処
令和3年 1月16日
<11種>
曇天なり 終日(ひねもす)のたりの 冬日なり
無為もまた 楽しき哉 冬一日(ひとひ)
寒からず にも 寒きかな 冬一日
もう半月(はんつき) 冬の日の 暮るるの速き哉
照りもせず降りせず 冬空 鈍色(にびいろ)薄墨色
微睡みぬ間に 碧空 寒冬の空
まっ 眩し 甍や映えぬ 冬日あり
日向ぼこ 庭の枯れ草 枯れ木まで
日向ぼこ 姫溝蕎麦花(か) 薄日中
枯れ尾花 こくり こっくり 日向ぼっこ
令和3年 1月17日
<16首>
朝凪にも 風の残りぬ 冬日には
玻り越しは 四方(よも)春めきぬ 淡色
なんとまぁ 晴れやかな空 温の五日目*
ーー *’三寒四温’の後の日
龍の髭 まだ 蛇の髭 冬日影
ーー 龍の髭の別名は、 蛇の髭
龍の髭 嫩葉 其処此処 石畳
現の証拠 葉広げおりぬ 葉蘭下(した)
菫草 冬草に紛れぬ 密やかに
菫草 何処? 私 此処よ と路の縁
此処其処に 紅花弁(はなびら)や 山茶花の
紅転(まろ)びぬ 山茶花の花弁
姫柘榴 枯れ実 そのまま 枯れ枝に
夕間暮れ 何処か懐かし 冬の山里
夕間暮れ 仄か 艶やか 山茶花 花(か)
夕間暮れ 残照映えぬ 枯れ尾花
残照 柿の枯れ枝 葉一枚
令和3年 1月18日
<12首>
淡く 薄く 白雲ふわり 春未だ
淡き雲 何に譬えむ この冬景色
穏やかに 四方広がるる 雪の空
齧ったは 誰(た)ぞ 金柑少しばかり
三つ 二つ 金柑 落ちぬままの 路
槌の音 谷間より響きぬ 不可思議な
枯れ花鉢 さあ~と浚(さら)いぬ 寒の風
石垣に 揺るる 黒影 何の樹ぞ
冬薔薇(ふゆそうび)
哀れ枯れ枝 枯れ木(ぼく)に
チロリアンランプ 寒風に震え 寒気に耐え
柚子?橙? 黄金色映え 常緑樹
彼岸桜 影 伸び伸びぬ 路上絵に
令和3年 1月19日
<19首>
雨戸開ければ まぁ 小雪 静かの舞
朝ぼらけ 小雪降り初むるとは
小雪 降りおり 風花より 音無しの
路踏ぬ 雪置きぬ 今朝の路を
雪化粧 あっという間に 枯れ草木
枯れ尾花 小雪降り降り 頭振り
雪化粧 南天の葉葉 朱実房
朝日影 止みぬと見れば 降る小雪
眩しきかな 雪晴の空 淡青」の空
小雪 もう 霙混じりに 四法(よも)舞いぬ
枯れ庭や 雪解ければ 陽光映え
六花(りっか) 舞い積るる 五月(さつき)躑躅哉
雪の花 花吹雪の如 舞いぬ
キラキララ 白露 路上の スターダスト*
幼蓬 キラキラ白露 冬日影
雪冠りするや 解け初みむ 蓬叢
令和3年 1月20日
<9首>
縮かみぬ 白薔薇 哀れ 寒の内
小鬼田平子(こおにたびらこ)*黄花窄みぬ 今寒中
ーー*春の七草の一つ、仏の座の別名
白百合の枯れ莢 図太く 寒を突く
青も斑入りも 萎るるばかりの 万年青(おもと)なり
朱実や何処(いずこ) 葉元にや見ぬ 万年青
朱実や秋 冬まで残るる ものも有り
暗紅 暗暗紅 お多福南天 寒風の
枯れ草の 間に間にお目見得 仏の座
此処や昨年(こぞ) 野葡萄の生いぬ 石垣
思い出しぬ 淡青 藍 紫* 実野葡萄
ーー* 漢字一語扱い
令和3年 1月21日
<9首>
ぽかぽかの 陽気とは言うわで 春近し
今日(けふ) 大寒 なれど 春日の日差しあり
春めきぬ 誘われ出ずも 春や未だ
春に追う 四方(しほう)悉皆(しっかい) 天も地も
陽光に 誘われ出でば 四方(よも) 春気色
野辺に出で 春草摘むらむ 薺(なずな)何処
飛び去るる 寒雀一羽 何方(いずかた)へ
小鳥*三羽 楠より来 春近し
ーー* 雀より大きいが目
また一羽 鶯色の背 翻しつ
令和3年 1月22日
<11首>
白露の 滴るる 南天朱実総
そぼ降る寒雨 枯草 煌々 朱褐色
この煌煌 朝日や見ぬに 枯れ草の
細雨に濡るる 枯れ草 濡れ草映え
細雨に濡るる 枯れ草 艶置きぬ
霞籠む 裏山眠りぬ 今日(けふ)の朝
霞籠む 裏山も空も 朦朧なり
今朝 ”温”*に入りぬ 温きかな
ーー*”三寒四温”の温は、10℃ 寒は1℃、
神戸山際では
やっぱり寒(さむ)っ 悴む指先 温探し
小鳥 一羽も飛ばぬ 四周温いきに
ポロッ ポロオ~ 山の鳩の声 冬空遠(と)く
令和3年 1月23日
<13首>
温あるも やはり寒あり ”四温”かな
ーー”三寒四温”の
枝戦ぎ 葉戦ぎぬ 楠(くすのき)の”温”
寒緩み 温緩き気色 (あれ)が庭
生温き 冬空 小鳥 飛び去りぬ
彼等 誰 (山)鳩より小さ 雀より大き
一斉に飛び立ちぬ 一群 楠樹から
もう一群 飛び立ちにけり 冬の空
群れ離れ 小鳥のんびり 石垣上
見渡しおりぬ 一羽小鳥* 世は如何
ーー* ”一匹狼”に倣って
そぼ降る雨 鈍色の空 冬終日(ひねもす)
令和3年 1月24日
<7首>
一段と 温き哉 ”温”の四日目
雨温き 風温き哉 寒の”温”
四日目 もう うんざりな 梅雨モード
今日(けふ)も 亦 長雨((ながめ)眺めつ 炬燵守
そぼ降る雨 夕星(ゆうづつ)も見ぬ 冬の宵
ぽつりぽつ 浮かぶ灯(ともしび) 冬の宵
冬灯 裏山 遠く シルエット
令和3年 1月25日
<14首>
モード一転 昨日(きそ)まで小雨 今日(けふ)小春
久しぶり 春空 白雲 小冬日和*な
ーー* ’小春日和’ に倣って
四方(よも)晴れやか 我(あれ)もまた 小冬日和
日傘持つも 差さず小逍遙 小冬日和
ーー日差し強しと見て
堰堤に集め 轟く 雨水の音
瀧の如 落ちて激しや 水流よ
白き泡 落つ 瀧の音 早春の声
ほろほろと 枯れ葉転(まろ)びぬ 小冬日和
チューリップ 萌出づを待たむ 今少し
溝底の 幼な蓬や 小冬日和
蕾六つ 空突く勢い 水仙花(か)
すらすらり 水仙の葉叢 花や未だ
水仙花(か) 彼処此処(あちこち)楽し気
小冬日和*
ーー*小春日和に倣って
木下蔭(こしたかげ) 水仙独り はんなりと
令和3年 1月26日
<11首>
明け鴉 また一羽 羽搏き去りぬ 冬の空
縮かみぬ 寒風の今朝の 我(あ)が身哉
東の空 眩耀(げんよう)哉 冬の今朝
忙し気 小鳥飛び去りぬ 冬野哉
天淡き春空 地未だ枯れ野なり
陽光や 春想わるる 長閑(のど)やかさ
やはりまだ 冬日哉 玻璃の外
寒風の 冷たき哉 春草 如何
暗紅葉 霜枯れせずの 葉南天
常緑樹 透かす 紅色 北颪
透かす紅 汝(な)や誰(たれ)ぞ
山茶花(さざんか)花(か)や
令和3年 1月27日
<19首>
小さき 小さき 黒果実 散(さん/ちりぬ) 冬公園
黒果実 彼(か)の主や 誰(た)ぞと 大樹に問い
頷きぬ 葉葉ひらひらと 楠が
ぶしゅッ ぶしゅ 踏みつけり 黒果実 嗚
少し残りぬ 竹林通りぬ 寒風よ
また聞こゆ 小鳥の地鳴き 寒の空
枯れ 萎れ 花鉢の真冬 蕭条
かくも 心(うら)侘しきか 寒冬花壇
芝桜 忘れ咲き 二輪 心(うら)侘し
冬薔薇(ふゆそうび) 小さきが小さく 残り八
嗚(あぁ)これや 万年青(おもと)の枯れ姿 哀れ
チューリップ 若芽に非ず 冬深し
白木蓮 蕾(らい)尖んがりぬ 少しばかり
枯れ花壇 水仙花冠 白色映え
濃緑 黒緑 冬の木蔦の葉葉
枯色 白化 枯尾花の 美(うま)し色
衝かれたり 寒風衝きぬ 小逍遙
あっ 危な!坂路躓き 止まりぬ
緩(ゆ)うるりと 遠回りを 冬の坂
令和3年 1月28日
<11首>
横切りぬ 冬の朝陽 鴉一羽
浅緑 小珠 連なるる 雪柳
花芽(かが) 嫩芽(どんが) 雪柳 孰れ
白小花 三つ密に咲きぬ 枝のあり
いずれにせよ 春や匂いぬ 気色哉
四方(よも) 温き 三寒四温の 温ならすも
今日(けふ)からは ”寒”に 予報も 同じなり
亦 うつらうつ 終日(ひねもす)真冬の 今日(けふ)
何故かくも あり 冬眠 一日(ひとひ)覚えずか*
ーー*’春眠を暁覚えず’に
倣って
冬季鬱 されど 句作や 怠らぬ 驚
喜楽あり 我(あれ)驚きぬ 句作への執心
令和3年 1月29日
<11首>
”寒”再び 底冷えの昨夜(きそ)今朝も亦
冷たき哉 息吸う度の 今朝の冷え
濃緑映え 這い上がる木蔦 ”寒”の今朝
震えおり 枯れ草 千草 寒の今朝
朝焼けの 白壁美し 寒の今朝
枝移り 鵯(ひよどり)つつきぬ 実南天
熟し 熟し 実南天 零れむばかりに
ーー 初冬から熟し初めて
ようように 鵯(ひよ)飛び来ぬ 実南天
風凪て 青空光りぬ 柏葉も
くっつきぬ 渋茶色の枯実 栴檀草の
枯れ枯るる 栴檀草や 渋茶色
引っ張れど なかなか取れぬ 栴檀草枯れ実
令和3年 1月30日
<10首>
”寒”の空 晴れやか哉 玻璃の外
室温2℃ 雪の兆しや 我(あれ)震え
時折吹く 風も 雪の兆しかも
雪降らぬ 雪雲の空 春の色
玻璃越しや そよとも吹かぬ 枯れ庭哉
何方へ 小鳥飛び行く 寒空を
動けど 猶動けぬ我(あ)が身 鬱モード
春色が 怨めしく見ゆ ”寒”の内
”寒”の内 光差し込む 玻璃の内
令和3年 1月31日
<10首>
水流るる 溝光るる 冬日和
ふらり外へ 冷たき哉 冬逍遙
小さき春 見つけたり 爪草の花芽
小さき黄花 誰(た)ぞ 蒲公英 春野芥子
蒲公英(タンポポ)似の 春野芥子花 寒そうに
嗚呼(あぁ)無惨 水仙の小叢 萎れ枯れ
蕭条なり 枯れ葉枯れ草 山の辺の
蔦葉海蘭 そっと這い出ず 石垣下
山茶花 一輪 笑む 枯紫陽花に
青空を 広く透かしぬ 冬木立
令和3年 2月1日
<11首>
白雲と碧空の綾 如月の妙
苔のように 霜へばりつきぬ 石畳
枯れ草 透かし見ゆ 蓬萌え出づ
枯れ芝中 プリムラ ご機嫌 春待つらむ
一 二 三 (ひい ふう みい)
寒小菊 笑む 花鉢の
篝火草* 紅に燃え立ちぬ 冬花壇
ーー* シクラメンの和名
葉牡丹や 愈よ 葉盛り* いま如月
ーー* 花盛りに倣って
初春祝い もうと(っ)くに 過ぎたと言うに
葉牡丹の 葉色 色色 葉盛りの
南天の朱実 消え行きぬ 少しずつ
飛び去りぬ 鳥影 彼(か)や 鵯(ひよどり)か
令和3年 2月2日
<12首>
鶯の らしき背見たり 梅の枝
鶯は 春告げ鳥 梅知るや
梅の枝枝 まだ固き 花芽(かが)ばかり
初春三日 過ぐるより 鶯が
一羽でも 群れでも飛び来 梅の枝
緑葉に 白落としぬ 主や誰(た)ぞ
背 灰緑 胸白色 鶯か
目白 鮮鶯色の背 今年まだ見ぬ
鶯 目白 鳴かねば分かぬ いずれかは
せっせっせ 啄む小鳥 バードテーブル
玻璃越しに 眺む我(あれ)には 気付かずに
雀らは直ぐ気付き飛び去りぬれば
然れば 嘴長鶯(はしながうぐす)* 恐れを知らぬ
ーー*この種類の鶯 小振りで懐っこい
令和3年 2月3日
<11首>
すっからかん 南天朱実 一粒も
立派な体躯 鵯 羽搏き 飛び去りぬ
南天朱実 平らげたるは 鴉か鵯か
寒寒(さむざむ)し 食べつくされり 実南天
実南天 お腹に一杯 何方(いずかた)へ
鵯の行き方に 南天実生え ありや
糞となり 落とされ実生うは 何時のこと
ようように 茜付きぬ 冬空 美し
枯れミント 乗り越え何方へ 蔓桔梗
花かとぞ 要黐(かなめもち)の若芽の紅
暗紅色 芽吹きぬ 彼方此方 要黐
令 令和3年 2月4日
<10首>
微風(そよかぜ)の 未だまだ 寒き 如月哉
枇杷や未だ 花や見ぬ もう如月〔というに〕
枇杷の葉や 常緑も落ち葉あり
散り掛かる 枇杷の葉 三色 黄 緑 枯茶
枇杷黄葉 緑の斑入り 枝にあり
バサッ 枇杷の枯れ葉の 落ちぬ音
枇杷に若芽 梢に小花見ぬ内に
悉く 青木の朱実 消えにけり
ーー 鵯飛び去をを見たり
青木の実 青きが独り 葉隠れに
朱実なき 青木に若芽 春隣り
令和3年 2月5日
<9首)
双葉の 小さきが点々 春隣り
ミントらし 枯れ草叢の 実生えらし
額紫陽花 渋紅嫩葉 如月に
見る度に 小白花笑みぬ 雪柳
ようように 射干玉(ぬばたま)の 黒きに
ひさかきの実
花芽(かが)穂 垂(しだ)れ 愈よ暗紅
馬酔木(ばすいぼく)
石垣の 窪みに座します 仏の座
ーー花水木の花芽を擬宝珠に見立てつ
数増えり 小さき擬宝珠(ぎぼうし) 花水木
嫩葉もまた 小さき梢に 花水木
令和3年 2月6日
<16首>
浅緑の苔 連連 枯れ草と
泡巣の主 一体誰ぞ 姿見ぬ
此の泡巣 蓬の茎に 昨秋より
アディアンタマム(adiantum)
窪みにも 溝底にも
まぁ 久しぶり しかも 和風の桜草
淡紅の 色も懐かし 桜草
石垣の窪に生う 草 霜枯れにも
若蓬 さんざめきおりぬ 冬日影
春草の 点々萌え出ず 道の縁
< 春草や 枯れ草衝きつ 萌え出(いづ)る
姫踊り子草 踊り出せずや 寒天に
ーー 数日前の”寒”の日に
今日(けふ)はもう 踊り出しそうな 踊り子草
落ち葉 落ち毬栗(いが) 山の辺 心(うら)寂し
蕭条たる せせらぎの音 春遠し
令和3年 2月7日
<8首>
満天春空 我(あ)が庭 枯庭 如月の
春霞とぞ 冬空の 長閑さよ
玻璃越しは 長閑(のど)けき哉 今朝の外
微風(そよかぜ)も 春めく匂い 遣しおり
心なしか 梅の蕾や ふっくらと
枯れ葛 梅の枝(え) 誰も 訪れぬ
梅の枝に 白粉 やはり 鶯や
梅咲けば 訪(おとな)い来るや 目白かも
ーー目白らも梅の花蜜好みらし
令和3年 2月8日
<10首 >
春気 淀みぬ 今日(けふ)も 昨日(きそ)も同じ
温かくも 寒くもなく 玻璃戸の内
朱実まだ 下がりおりぬ 万両の
次々と 小白花増しぬ 雪柳
渋褐色 幽鬼の如く 枯れ栴檀草*
ーー*漢字一語使い
冬色靡く 風に靡く 亦靡く
枯れ尾花 四方(よも)春気色 何想う
春気 愈よよ増せり 今日(けふ) 我(あれ)が庭
光る光る 常盤木の葉葉 光る
玻璃の外 風の冷たきに 縮かみぬ
令和3年 2月9日
<11首>
雪?霙? 残るる今朝の 石畳
ジャリ ジャリリ 霜絡む 小石 踏み
あらっ 霰(あられ) いえ 霙(みぞれ)
今日(けふ)の夕間暮れ
亦 ”寒”の始まり ”三寒四温”の
悴みぬ 指先摩る今朝 おぉ 寒い
春や何処(いずこ) 何方(いずかた)へ
去りぬや 春
春空をながめり 玻璃(はり)越し 炬燵守り
長閑やかな 春色戻りぬ 昼下がり
空晴れり 白雲くっきり 昼下がり
春を告ぐ小鳥見ぬ 小苑(こその) 小寂しき
鶯の訪れ 我(あれ)待つ 梅 如何
令和3年 2月10日
<10首>
ここ暫く 鶯の姿見ぬ 哀
笹鳴きも 地鳴きも 聞かぬ 小逍遙
小鳥らの 声聞かぬ小逍遙 小寂しき
笹薮も 草藪も枯れ 山の辺 哀れ
あらっ 黄梅 黄花連連 枝垂れ枝に
観黄梅* 春気漂う 楽しさよ
ーー*観梅に倣って
ーーとは言え
まだ寒き 黄梅も寒気(さむけ) 心なし
なんと蕭条 如月の小逍遙
千草枯れぬ 溝底 枯草の落ち葉寄せ
右左(みぎひだり) 少し戦ぎぬ 枯れ栴檀(草)
令和3年 2月11日
<11首>
枯草刈り 蕭条増せり 路の縁
溝底の ”野草の苑” も 沈黙せり
唯 仏の座のみの 姿のみあり
花韮(はなにら)の幼葉(ようよう)漸う 萌え出(いづ)る
霜枯れの 万年草にも 草色が
春草の幼なが 一寸見8ちょっとみ) 枯れ草に
枯れ柘榴 梢の此処 其処 彼処(あすこ)にも
高く 低く 万両の朱実 我(あれ)が庭
知らぬ間に 銀杏 芙蓉も 枯木となりぬ
枯れ実すら 見ぬ芙蓉の侘び姿
冬空に 屹立 公孫樹(いちょう)の 枯れ姿
令和3年 2月12日
<20首)
溝底の幼葉 何れ 薺(なずな) 野豌豆
龍の髭 幼なは生き生き 髭伸ばしぬ
野豌豆 蔓小さきが 這い出(いづ)る
水流る 溝底に流る 早春のメロディー
水仙は 枯れつも 花芽抱きおりぬ
ハート形の 葉葉重ね生う 草花 誰(た)
匂い菫 今春も 亦待つらむ
ーー和菫の天下になって久しく
野豌豆 酢漿草 幼葉(ようよう/漸う) 春を告げ
幼きは 皆愛し 早春の野辺
小さき 小さきロゼット 汝(な)や 誰(たれ)ぞ
酢漿草の葉葉 幾重の早春あり
こんもりと 盛り上がりぬ葉葉 酢漿草の
彼処此処(あちこち)に 小(ちい)さい春見(みい)つけた
今日(けふ)はもう 若草出会ったように萌え
ーー数日前 四方枯れ草 ばかりの景色
何時見ても 葉牡丹笑顔 早春の
寒小菊 雛菊 早春の鉢
紫陽花 枯木(こき)の梢に 花芽それぞれ
早咲きは もう萎れ 哀れ 水仙花
1
令和3年 2月13日
<7首>
暖かき 温かき哉 今日の真昼
なんという 今冬一の 温暖さ
温よりも暖 早春の陽気越え
枯れ草まで 煌めくような 陽気哉
玻璃の内 より外庭の 陽気(あ) 惣卜
あぁ 暖ったか 思わず背伸び我(あ) 草木も
上衣脱ぎ 四方(よも)見渡しぬ 陽気かな
令和3年2月14日
<22首>
やっぱり 鶯 我(あ)が庭への 来訪者
緑褐色の背 慌て飛び去りぬ
ーー 玻璃戸の内に我(あ)姿見つけつ
何時も独り 一匹鶯*なりや
ーー*’一匹狼’に倣って
まだ幼な 残る背(せな)見せ 飛び去りぬ
群れより離れ 独り(一羽)冒険 楽しからずや
群れはもう 山奥へ去りぬ 鶯ら
門(かど)出でば 四方(よも)暖かき 春の夕
小擬宝珠(ぎぼし) 亦数増やせり 花水木
ーー花水木の蕾形は 小さな擬宝珠の如
枯れ山や 仄か萌黄に 春気色
野辺はまだ 一面 枯色 冬景色
枯れ野中(のなか) 水仙独り 緑あり
白木蓮 ふっくら色めく 春色に
紅梅や 綻び初みぬ フェンス奥
上る坂 蕭条 早春の
谷間は 枯れ木立 潺(せせらぎ)の音
忙(いそが)し気 潺の音 小鳥一声
山椿 紅が一輪 はんなりと
他(ほか)蕾 数多 梢に 葉隠れに
チッ チアァ ァ 鋭き地鳴き 主や誰
白壁に映えぬ 鳥影 彼(か)のものか?
鳥影や 素早く滑空 樹木の奥
彼(か)や鵯 大きく飛び去る 早春の空
落日の 山際 僅か茜雲
令和3年 2月15日
<9首>
雨粒の 愈よ大きく 吹く風不気味
囁くような 潺(せせらぎ) 何(な)や囁く
玻璃を打ち 雨脚激し 春嵐
薙ぎ倒さるる 枯草 春嵐の兆し
一陣の風の他(ほか) 沈黙不気味
晴れ行きぬ 曇り空 我(あ)に 鬱(うつ)移しぬ
一転晴天 春嵐や 兆しのみや
春嵐の兆し 去れば 陽気煌めく四方(よも)
陽射し 眩し 春の玻璃戸の外も内も
令和3年 2月16日
<9首>
寒さ哉 今朝の坂路 寒の戻りの
寒風に 急がれ 転(まろ)びそ〔う〕 下り路
寒風に 窄みにけるか 咲き初むが
梅の花芽(かが) 綻び損ねるる 寒の戻り
寒風や また 春風に 還えらむことを
縮かんで 慌て戻りぬ 春炬燵
晴れた日の藩の戻りや 鬱の戻り
天空四方 匂い立ちぬや 春の色
、
なれど地上沁み渡りぬ 寒の戻り
令和3年 2月17日
<11首>
昨日(きそ)春空 今日(けふ)風花舞う 早春は
ふわり ふわ 白きものども 玻璃の外
よく見れば 雪 風花の舞い 玻璃の外
牡丹雪 四方八方 風に舞い
ふうわり ぼたん 牡丹雪 舞い散りぬ
藪蘭に 雪花 早春の景色
瞬く間 若草 枯れ草 雪化粧
雪冠り 皐月躑躅に 馬酔木(ばすいぼく)
雪柳 枝枝(ええ)に雪冠 噴雪花*
ーー*雪柳の漢名
吹雪や束の間 もう解け初みぬ四方(よも)
晴天戻りぬ 昨日(きそ)と同じ 春の色
令和3年 2月18日
<10首>
歩き去りぬ 枯れ草叢に 鳥の影
素早くも トコトコ 二の足 愛嬌な
ーー 二足歩行は鳩類の特徴
汝(な)や誰ぞ 背(せな) 茶褐色 黒斑入り
雀より大 雉鳩の’年少さん’?
ポロッ ポロポォ~ 地鳴きの声は聞かぬれど
我(あ)が庭の 直か撒きテーブル 賑わいあり
また見たり 緑灰色の 飛び去りぬ
ーー鶯らし
もう一羽 此(こ)や 小雀や 背や黄褐色
ーー小鳥らは
風花舞う 寒の戻りも なんのその
侘びいりぬ 温から寒への激変に 我(あ)は
令和3年 2月19日
<6首>
またちらほら 牡丹雪や 早春の景
南へ二羽 北へ二・三羽 この寒空を
慌ただし気 寒空飛び行きぬ 何故に
小刻みに 柏葉震えり 寒の戻り
白梅花 三つ 二つ 飛び去る鳥影
木瓜の花 暗朱を二つ 三つばかり
令和3年 2月20日
<14首>
伐(き)り込まれぬ 紅梅 今や花 花 花
苔青々 水流るる 溝の春
真っ黄色 一輪晴れやか 春野芥子
まぁ 菫 白花菫や 山の辺に
首傾げおりぬ ハート形の葉 誰のもの
今日(けふ)やまた 打って変わりぬ 春日和」」
春陽に 誘われ菫 揃い咲き?
彼処にも 一株 ひっそり 白菫
若草も 生生 点々 石垣下
姫踊り子草 唇形の花筒 ちらり見せ
春隣り 野豌豆の 生う見れば
此処まだ 彼ののまま 春やまだ
柿の蔕(へた) 枯れ木の梢に 枯れおりぬ
柿の枯木 一見瀟洒な 佇まい
令和3年 2月21日
<15首>
打ち置れり 冬コートや 春隣り
もう見たり 蟻一匹 道横切る
石垣に 真っ黄一輪 春野芥子
春風に 揺るる 小黄花 小鬼田平子
砂防壁 春草 萌え出づ 枯れ草下
紋白蝶 春草縫いつ 独り舞い
カラカラカラ 枯れ柴の枯れ音 揺れる枯葉
南天伐られ 瀟洒な木(ぼく)姿
人気無き 門扉に リース* 枯れ揺れる
ーー*打ち置かれし クリスマス? ・リース
大空を 飛び行く小鳥 春の行方
チャッ チャッチ 揺れ動く鳥影 杉木立
飛び去りぬ 小鸟や 莺 雀や
翼広げ 飛び回るる 小鳥 今日(けふ)や春
ーー2月18日までは、寒の戻り
ふらつきぬ 小鳥飛ぶ春空 見惚れれば
令和3年 2月22日
<13首>
早春を冷たきと 覚えず 今日 (けふ)の小逍逍
紅梅花 梢に連連 艶然と
淡紅の 小振りの梅花 愛らしき
白梅や 紅梅の奥 見え隠れ
梅三樹 揃いて笑顔 春麗
春陽や 賑やかに 溝底も萌え
溝底や 若草の苑/宴 タンポポ 薺
若草の 賑わい賑やか 溝の底
若草は 皆柔らか 誰(た)のご馳走
木瓜の花芽(かめ) 暗朱色 密に集い
木瓜蕾 もう二つ三つ 綻びおり
畑の葱 すいすい 早春に浮かれたか
ふ(っ)くら 膨らみぬ花芽(かが) 彼(か)や 彼岸桜
令和3年 2月23日
<6首>
おぉ 寒い! 北からまた 風の坊やが
昨日(きそ〕卯月の陽気 今日(けふ) 如月の寒気
雪柳 小珠(嫩芽) 解けぬ 小白花
まぁ 雪花 いえ 白小花 雪柳
去年(こぞ)蕾穂 今 淡紅 馬酔木(あせび)の花穂
長閑(のど)やかに 暮るる春の日 おぉ寒(さぶ)!
令和3年 2月24日
<11首>
蔦葉海蘭(つたばうんらん) 嫩葉萌え出づ 路の縁
石垣にも 萌え垂るるや 蔦葉海蘭飛び去りぬ
此方にも 緑の小叢 蔦葉海蘭
登るほど 坂路苦し 春の風
プリムラ花 にっこり はんなり 春日影
彼岸花 綻ぶ初むる 一分咲
鴉 一羽 悠然 春空 飛び去りぬ
此処や昨年(きそ) 柿の実熟し 垂れおりぬ
今やもう 柿の木定かならぬ 嗚呼
令和3年 2月25日
<12首>
外皮剝がれ 萌黄の嫩芽 額紫陽花
他所の紫陽花 渋紅の外皮のまま
春や如何 萌黄の嫩芽の額紫陽花
枯れおりぬ 源平小菊や 萌え出(いづ)る
朱実落ちぬ 青木に嫩葉 真っ直ぐに
喇叭水仙 独り項垂れ 春隣り
水仙花 白映え独り 艶然と
水仙の嫩葉 すいすい 此処から 此れから
もう咲きて 萎るるばかりの 水仙も
クリスマスローズ やっと出会えり 垣根越し
毎年の出会いの無きに 訝しく
白花の クリスマスローズ ひっそり
令和3年 2月26日
<11首>
我(あれ)が庭 飛び来たるるは 鶯 雀 山鳩*
ーー* 漢字一語扱い
鶯 やはり 一羽 いえ 複数羽も
帰り来たり 雀 五・六羽 群れとなり
ーー*鶯に遠慮してか、暫く
姿見せず
鶯の声聞かぬ 唯 枝に白粉(糞)
枯薄に 梅の花 春の妙
枯れ薄 枯れに枯れるも 背やしゃんと
まだ固き 梅の蕾や 我(あれ)が庭
梅一輪 膨らみぬ気色 春気色
着々と 叢(むら)広げぬ 蓬の嫩葉
蒲公英(タンポポ) 黄花二輪 春寒に
蒲公英 茎低く縮かみぬ 春寒し
令和3年 2月27日
<9首>
ゆらゆらら 春風に揺るる 枝枝よ
木通(あけび) 嫩葉侘しくも 花芽丸々
木通の嫩葉 勢い得れば 蔓もまた
春風の冷たきに遊ばれ ”春(はぁる)よ来い..."
鼠黐 柄(へい)と(けい) 啄んだは 誰(た)ぞ
柴刈られ 枯れ草 枯葉ばかりなり
野茨と切られ 孼(ひこばえ) 寒寒と
初夏には 野茨の白花の 半アーチ
野茨や見たし あの猛猛しくも 優美な風姿
卯の花も 櫱(ひこばえ)さえも見ぬ 哀れ
令和3年 2月28日
<10首>
長実雛罌粟 小さきロセット 生垣奥
此や 酸葉(すいば)のロゼットらし 石垣下
-
霜焼けつも 暗紅のロゼット 春野芥子
待宵草も 小さき小さき ロゼットが
幾宵待てば 宵待草よ 花咲くまで
黄水仙 小さく低く 春風 寒く
項(うなじ)垂れ 咲き続くや可憐 黄水仙
枯れ葉 吹かれ 転(ま)ろびつ 春草へ
そよとも吹かぬ 朝凪 朝日かな
ゆるゆると 揺るる 草木の 長閑さよ
令和3年 3月1日
<14首>
ミント の双葉 もう四つ葉 春気色
啄ばまれ 柄と茎とばかり 南天 哀れ
葉まで落ち 南天細身 心細そう
痩身(そうしん)の南天 何(な)語るや 枯薄
花も実も 成らぬ 南天 嫩葉萌え
暗紅色 南天嫩葉 萌えに萌え
梅の樹下 南天の實生え 白化粧
お白紛(しろい)は 鶯の紛 止まり来ぬ
春来るらし 四方(よも)柔か パステルカラー
春や春 辺り見渡し 脱ぐ上衣(うわごろも)
見渡せば 光る草木 柔らかな
ゆらゆらと 揺るる 陽炎(かげろう) 春の野辺
唐突なり 春の訪れ 胡蝶令和3年 舞う
包まるる 四方 柔らかな春陽
令和3年 3月2日
<14首>
我(あ)が目覚め 八時過ぎおりぬ ほ(ん)に *
ーー”春眠 暁を覚えず”
しっとりと 庭の草木 春雨に
春風(しゅんぷう) 寒気遺しぬ 嗚呼 寒(さむ)!
一陣の風 春一番らし 驚
絶え間なき 潺(せせらぎ)の音 春の音
何方に 春の宿りを 雀らは
ーー*我(あ)が庭に飛び来 雀ら
驚きて 飛び去る 鶯 声は無く
まだ聞かぬ 鶯の声 姿ばかり
雨上がり 四方 長閑か 夕間暮れ
穏やかに 暮るる 山里 春の情
夕日射す 我(あ)が庭長閑 枯薄
令和3年 3月3日
<17首>
春草の ロゼット 彼処此処(あちこち) 逍遙路
淡紅花(か) 小珠 一輪 姫溝蕎麦
此(こ)は 何(な)のロゼット 兎菊? 春野芥子?
彼(か)や 酸葉(スイバ)のロゼット 出会いや二度目
溝の底 小黄花 ゆらゆら 小鬼田平子(オニタビラコ)
細き細きが すいすい立ちぬ 薄の若生え(わかはえ)
蔦葉海蘭 繋ぎ目飾りぬ 石垣の
耳菜草 白花咲かせぬ 路の縁
少しずつ 枯れマーガレット 嫩葉萌え
冬薔薇(ふゆそうび)萌えるるも もう春薔薇
チューリップの嫩葉萌え出るづ 何故(など)か懐かし
曲線に生う チューリップの嫩葉 悩まし気(げ)
此処でもチューリップ 嫩葉が にゅうと
隈笹(くまざさ)の葉 隈白く 緑濃く
笹の葉 光る さわさわ光る 風光る
今日(けふ)もまた 風寒し 春来ぬと思えど
雛祭り 雛も霰もなく 終わりぬ
令和3年 3月4日
<8首>
枇杷の樹下 落ち葉拾いの 春日かな
花芽見ぬ間に 枇杷の樹や 嫩葉萌え
昨年(きそ)の初冬 いつもの初冬に 見ゆれども
一つ違うは 枇杷に花芽 花芽を見ぬ不思議
つやつやつや 木蔦艶あり 春の色
冬の日は 木蔦もどこか 勢の無く
ーー木蔦は常緑
慎ましや 俯き加減 白梅花
小さく固き 蕾や 梅の 枝枝(えだえだ)に
令和3年 3年5日
<11首>
寝覚めれば ただ閑静の 春の真夜
春一番や 春嵐や 何方に
春嵐 彼方らし 此方沈沈
此や 春嵐の兆しか 怖(こわ)!
玻璃戸 揺るがす 風音一つ またびくっ!
明けぬれば 穏やかな 春の暁
穏やかな 昼中 春陽の 庭に立ち
長閑やかな陽光 飲み込みぬ 何もかも
曇りとも 晴とも見ゆる 春気色
麗らかな 日中佇む 梅の樹下
佇めば 春のときめき 仄(ほの)聞こえ
令和3年 3月6日
<20首>
春風に 戦ぎぬ 野芥子 野豌豆
苔青々 連連 欄干の下
紅と白 デージー愛らし 花壇の縁
飛び出しぬ(逸出) デージー 楽し気 花壇外
岩苦菜 葉いと小さきが 岩蔭に
如何なこと 春水仙の しょぼいこと
黄喇叭水仙* ミニ十余輪 春風に
ーー*漢字一語扱い
黄喇叭水仙 大輪も咲く 春景色
姫踊り子草 踊り出さむばかり 楽し気な
白花菫 咲き広がりぬ 辺り辺り
白花のの蒲公英 ロゼット柔かな
ひょっこり出会えり 関西蒲公英* 幾年振り
繊細 華奢 優雅な葉姿 関西蒲公英
此の路や 蒲公英通り 我(あ)の気に入x>
姿見ぬ 今や無機質の 舗装路
春二番? 追い風に追わるる 帰り路
ーー*今季の春一番は、3月2日
春風は 然程(さほど)に 強く冷たきとは
立ち往生 春風強し 橋の上
向い風 衝く力無き身に 容赦なく
暫し待て 吹くを春風 我(あ)が帰り路
令和3年 3月7日
<5首>
ようように 咲きぬ 白梅 恥らい気
咲き遅れ 我(あ)が庭の 白梅は
はんなりと 白梅一輪 夕闇に
梅が花 春告げ花と呼ばむ哉
春告げ鳥(鶯) 春告げ魚(鰊)があるならば
令和3年 3月8日
<7首>
朝月夜 見ぬ春空 薄墨色
朝月夜 四方(よも) 茜に移ろいぬ
雪柳 小白花咲い出(いづ)る 連連と
白壁映えぬ 春の朝(あした) 清々し
夏蔦も 芽生えぬ 彼方此方 枯れ蔦に
夏蔦の 枯るる風姿や 一興あり
やはり 芽吹きや 春の日や 楽しけれ
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い
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首
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3芒も